【解決手段】エンジン1により駆動される油圧ポンプ210とその油圧ポンプ210からの吐出油で駆動される油圧モータ211,212とを閉回路接続したHST走行回路とを備える作業機械に搭載される省エネ運転支援装置において、少なくとも高負荷モードと、高負荷モードよりもエンジン1の要求回転数の最高回転数が低い低負荷モードとのいずれか一方を選択する作業モードダイヤル5と、オペレータの運転操作が省エネ運転操作であるか否かを評価するHSTコントローラ3と、作業モードダイヤル5により低負荷モードおよび高負荷モードの一方が選択された場合、HSTコントローラ3によってオペレータの運転操作が省エネ運転操作であると評価されたことを報知するモニタ4とを備える。
エンジンにより駆動される油圧ポンプとその油圧ポンプからの吐出油で駆動される油圧モータとを閉回路接続したHST走行回路とを備える作業機械に搭載される省エネ運転支援装置において、
少なくとも、高負荷モードと、前記高負荷モードよりも前記エンジンの要求回転数の最高回転数が低い低負荷モードとの何れか一方を選択する第1選択部材と、
オペレータの運転操作が省エネ運転操作であるか否かを評価する評価手段と、
前記第1選択部材により前記低負荷モードおよび前記高負荷モードの何れか一方が選択されている場合には、前記評価手段によってオペレータの運転操作が省エネ運転操作であると評価されたときに省エネ運転操作された状態にあることを報知し、前記評価手段によってオペレータの運転操作が省エネ運転操作ではないと評価されたときに省エネ運転操作された状態にあることを報知しない報知手段とを備えることを特徴とする作業機械の省エネ運転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1〜7、9を参照して、本発明に係る作業車両の一実施の形態について説明する。
図1は、一実施の形態に係る省エネ運転支援装置を有する作業車両の一例であるホイールローダ100の側面図である。ホイールローダ100は、アーム111、作業機装置であるバケット112、車輪113等を有する前部車体110と、運転室121、エンジン室122、車輪123等を有する後部車体120とで構成される。
【0009】
前部車体110には、上下方向に回動可能にアーム111が連結されており、アーム111はアームシリンダ114の駆動により上下方向に回動(俯仰動)する。アーム111の先端にはバケット112が上下方向に回動可能に連結されており、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。アームシリンダ114やバケットシリンダ115等のアクチュエータには、エンジン1(
図2参照)によって駆動される作業用油圧ポンプ8(
図2参照)から圧油が供給されて、駆動する。前部車体110と後部車体120とはセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態によるホイールローダ100の概略構成を示すブロック図である。ホイールローダ100は、エンジン1と、エンジン1により駆動される走行装置2と、省エネ運転支援装置30を構成するHSTコントローラ3およびモニタ4と、作業モードダイヤル5と、走行圧力センサ6と、アクセル踏込量センサ7と、作業用油圧ポンプ8とを備える。走行装置2は、走行用油圧回路HC1と、トランスミッション22と、プロペラシャフト23と、フロントアクスル24fおよびリアアクスル24r(総称する場合には、アクスル24と呼ぶ)とを有している。エンジン1の動力は、走行用油圧回路HC1へ伝えられ、さらに走行用油圧回路HC1からトランスミッション22、プロペラシャフト23、アクスル24を介して車輪113および123へ伝達される。
【0011】
走行用油圧回路HC1は、両傾転型の可変容量型の油圧ポンプ210と、油圧ポンプ210からの圧油で駆動される可変容量型の第1油圧モータ211と、第2油圧モータ212とを有している。走行用油圧回路HC1は、第1油圧モータ211が管路211a、211b、211cおよび211dを介して油圧ポンプ210に閉回路接続され、第2油圧モータ212は管路211a、211e、211fおよび211dを介して油圧ポンプ210に閉回路接続されたHST回路により構成される。第1油圧モータ211と第2油圧モータ212とは油圧ポンプ210に対して互いに並列に接続されている。上述した管路211a、211bおよび211eを纏めて第1HST回路212aと呼び、管路211c、211dおよび211fを纏めて第2HST回路212bと呼ぶ。
【0012】
油圧ポンプ210は、傾転シリンダと前後進切換弁とを備え、前後進切換弁は前後進切換レバー(不図示)に連動している。エンジン1により駆動されるチャージポンプ210pからの圧油は、前後進切換弁を介して傾転シリンダに導かれる。前後進切換レバーが中立(停止)位置にあるときは前後進切換レバーも中立位置にあり、油圧ポンプ210をゼロ傾転とするように傾転シリンダを制御し、油圧ポンプ210の吐出流量をゼロとする。前後進切換レバーが前進位置あるいは後進位置に切り換えられると、それに応じて前後進切換弁が切り換えられ、傾転シリンダの動作方向を制御して油圧ポンプ210の傾転方向を制御する。
【0013】
油圧ポンプ210は、制御圧力発生回路(不図示)によって生成される制御圧力が前後進切換弁を介して傾転シリンダに供給されることにより、傾転量が制御される。制御圧力発生回路は、エンジン1の回転数に対し、後述する作業モードの種類に応じて比例させて制御圧力を上昇させ、油圧ポンプ210の傾転量(容量)を増加させる。その結果、油圧ポンプ210の吐出流量は、エンジン1の回転数の上昇に応じて滑らかに高い応答性を持って増大し、滑らかで力強い加速走行が可能となる。
【0014】
上記のようにして容量が制御された油圧ポンプ210から吐出された圧油は 前後進切換レバーが前進位置に切り換えられている場合には、第1HST回路212aを通過して第1油圧モータ211および第2油圧モータ212に供給される。第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の駆動に用いられた圧油は、第2HST回路212bを通過して油圧ポンプ210へ戻る。前後進切換レバーが後進位置に切り換えられている場合には、油圧ポンプ210から吐出された圧油は第2HST回路212bを通過して第1油圧モータ211および第2油圧モータ212に供給される。第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の駆動に用いられた圧油は、第1HST回路212aを通過して油圧ポンプ210へ戻る。
【0015】
第1油圧モータ211の出力軸は、トランスミッション22に連結され、第2油圧モータ212の出力軸は、クラッチ213を介してトランスミッション22に連結されている。クラッチ213は、ホイールローダ100の走行速度と牽引力との関係に基づいて、HSTコントローラ3により接続または切断が制御される。
【0016】
図3に、ホイールローダ100の走行速度(すなわちエンジン1の回転数)と牽引力との関係を示す。
図3に示すように、ホイールローダ100の走行速度がV0からV1までの範囲で増加すると、牽引力はP0からP1の範囲で反比例的に減少する。本実施の形態では、HSTコントローラ3は、走行速度が所定の速度Vth未満の場合、すなわち牽引力が必要な場合には、クラッチ213を接続して、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212によりホイールローダ100を走行させる。走行速度が所定の速度Vth以上の場合、すなわち速い走行速度が必要な場合には、HSTコントローラ3は、クラッチ213を切断して、第1油圧モータ211によりホイールローダ100を走行させる。
【0017】
トランスミッション22は、複数の各速度段に対応したソレノイド弁を有する自動変速機であり、各ソレノイド弁は、HSTコントローラ3から出力される制御信号によって駆動され、変速される。なお、本実施の形態におけるトランスミッション22は、一例として、1速〜4速の速度段に変速可能な構成を有している。第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の出力軸の回転は、トランスミッション22により変速され、変速後の回転はプロペラシャフト23およびアクスル24を介して、車輪113、123に伝達され、ホイールローダ100が走行する。
【0018】
HSTコントローラ3は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されている。HSTコントローラ3は、後述する処理を実行して、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212がそれぞれ有する傾転レギュレータ211rおよび212rに制御信号を出力する。この制御信号に応じて、傾転レギュレータ211rおよび212rは、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の傾転量を最少傾転qminと最大傾転qmaxとの間で制御する。
【0019】
HSTコントローラ3には、作業モードダイヤル5、走行圧力センサ6、アクセル踏込量センサ7等の各種のセンサからの信号がそれぞれ入力される。作業モードダイヤル5は、掘削作業時の作業モードを選択する際にオペレータによって操作される操作部材であり、選択された作業モードを示すモード信号をHSTコントローラ3に出力する。作業モードダイヤル5によって、掘削時の走行駆動力の大きな高負荷モード(Pモード)、中負荷モード(Nモード)、低負荷モード(Lモード)、除雪モード(Sモード)のうちの何れかに作業モードが切換えられる。
【0020】
図9にPモードが設定された場合と、Lモードが設定された場合とにおける特性を示す。
図9(a)は、アクセルペダル(不図示)のペダル操作量とエンジン1の要求回転数との関係を示す図であり、実線で示すL10がPモードを、破線で示すL20がLモードを表している。図示の通り、Pモードが設定されている場合には、オペレータによるアクセルペダル(不図示)のペダル操作量の増加に応じてエンジン1の要求回転数が増加して指令値としてエンジン1へ出力される。本実施の形態においては、Pモードにおけるエンジン1の要求回転数の最高回転数は、一例として2450rpmとする。Lモードの場合にはエンジン1の要求回転数の最高回転数は、Pモードにおけるエンジン1の要求回転数の最高回転数よりも低い2150rpmに設定されている。したがって、Lモードでは、アクセルペダルのペダル操作量の増加に伴って要求回転数が増加して2150rpmに達すると、以後、ペダル操作量が増加しても要求回転数は2150rpmで一定となる。
【0021】
図9(b)は、エンジン1の実回転数と油圧ポンプ210のポンプ傾転量との関係を示す図であり、実線で示すL11がPモードを、破線で示すL21がLモードを表している。図に示すように、Pモードでは、エンジン1の回転数の増加に比例して油圧ポンプ210の傾転量が増加されて、ポンプ吐出量が増加する。そして、エンジン1の実回転数がPモードにおける2150rpmに達すると、油圧ポンプ210のポンプ傾転量も最大値の約90パーセントを維持する。Lモードでは、エンジン1の実回転数の増加に比例して油圧ポンプ210のポンプ傾転量が増加するが、増加の割合はPモードの場合と比べて大きい。そして、エンジン1の実回転数が1800rpmに達すると、油圧ポンプ210の傾転量も最大値の約90パーセントを維持する。このようなエンジン回転数に対するポンプ傾転量の設定により、エンジン回転数の全域において、すなわち、アクセルペダルの全踏み込み領域において、ペダル踏み込み量に対するポンプ傾転量はLモードがPモードを上回っている。その結果、とくにLモードで走行しているときに、負荷が大きい場合であってもオペレータに対して加速感の低下を感じさせないようにしている。
【0022】
なお、作業モードとして、PモードとLモードの2つのモードが設定されたホイールローダ、PモードとNモードとLモードの3つのモードが設定されたホイールローダなど、上記の4つのモードのうちの何れか2つ以上の組み合わせが設定されていればよい。また、上記4つとは異なる作業モードを有していてもよい。
【0023】
走行圧力センサ6は、第1HST回路212aの圧力を検出する第1センサ6aおよび第2HST回路212bの圧力を検出する第2センサ6bを有し、検出した圧力を示す圧力信号をHSTコントローラ3に出力する。アクセル踏込量センサ7は、アクセルペダル(不図示)のペダル操作量を検出してアクセル信号をHSTコントローラ3に出力する。
【0024】
図4にモニタ4の表示画面の一例を示す。モニタ4は、たとえば速度メータ、タコメータ、燃料残量メータ等のホイールローダ100の走行または動作状態等を表す各種メータが表示される。また、モニタ4には、後述するように、HSTコントローラ3により制御されて、燃費低減運転(以下、省エネ運転と呼ぶ)が行われていることを示す「ECO」表示600を点灯させ、オペレータに対して省エネ運転が行われているか否かの運転評価を報知する。
【0025】
以下、HSTコントローラ3による第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の傾転量の制御について説明する。なお、以下の説明では、第1油圧モータ211の傾転量の制御を中心に行うが、第2油圧モータ212の傾転量についても同様に制御されるものとする。HSTコントローラ3は、後述する
図5および
図6に示す特性に基づいて、第1油圧モータ211の目標傾転qmを設定する。
【0026】
図5は、第1HST回路212aの回路圧Ptと第1油圧モータ211の目標傾転qmとの間の特性を示す。
図5に示すように、第1HST回路212aの回路圧Ptが所定値P0未満では目標傾転qmは最小傾転qminであり、回路圧Ptが所定値P0以上の圧力領域では目標傾転qmが最大傾転qmaxとなる。
図5に示す特性は、予めHSTコントローラ3の所定の記憶領域に格納され、HSTコントローラ3は、第1センサ6aから入力した圧力信号に基づいて目標傾転qmを演算する。
【0027】
図6は、作業用油圧ポンプ8の吐出圧である作業回路圧Ppと、第1油圧モータ211の傾転量の上限値qlimとの間の特性を選択された作業モードに応じて示す図である。L1はPモードの場合の特性を示し、L2はNモードの場合、L3はLモードの場合、L4はSモードの場合の特性を示す。Pモード、Nモード、Lモードの場合には、作業回路圧Ppが所定値Psに至るまでは、第1油圧モータ211の傾転量の上限値qlimは最大傾転qmaxに等しい。作業回路圧Ppが所定値Psに至ると、そこから上限値qlimは、各モードに応じた最低傾転qlP、qlN、qlLまで直線的に減少する。なお、図より明らかなように、qlP>qlN>qlLである。Sモードの場合には、作業回路圧Ppが所定値Prに至るまで、傾転量の上限値qlimは、作業回路圧Ppが増加するにしたがって、Sモードでの最大傾転qmaxSから最低傾転qlLまで漸減する。
【0028】
図6に示す特性は、テーブルとして予めHSTコントローラ3の所定の記憶領域に格納されている。HSTコントローラ3は、入力した圧力信号と選択された作業モードとに基づいて、テーブルを参照することによって第1油圧モータ211の傾転量の上限値qlimを演算する。そして、HSTコントローラ3は、
図5に示す特性に基づいて演算した目標傾転qmと、
図6に示す特性に基づいて演算した上限値qlimとの値を比較し、小さい方の値を選択し、目標傾転qmとして傾転レギュレータ211rに出力する。これにより、傾転量の最大値が上限値qlimで制限される。
【0029】
HSTコントローラ3は、上記のようにしてホイールローダ100の走行を制御している際に、ホイールローダ100が走行速度2km/hを超える場合にはオペレータの運転による燃費を判断して、省エネ運転が行われているか否かを評価する。HSTコントローラ3は、以下の条件(1)〜(3)が満たされた場合に、省エネ運転が行われていると判断する。
(1)第1HST回路212aの回路圧が第1の閾値以下
(2)第2HST回路212bの回路圧が第2の閾値以下
(3)エンジンの要求回転数が第3の閾値以下
【0030】
なお、本実施の形態では、上記の第1の閾値を20MPa、第2の閾値を20MPa、第3の閾値をLモードにおけるエンジン1の要求回転数の最大値である2150rpmとする。また、第1HST回路212a、第2HST回路212bの最高回路圧は40MPaであり、最高エンジン要求回転数は2450rpmであるものとする。
【0031】
HSTコントローラ3は、第1センサ6aから入力した圧力信号を用いて、第1HST回路212aの回路圧が第1の閾値以上か否かを判断する。同様に、HSTコントローラ3は、第2センサ6bから入力した圧力信号を用いて、第2HST回路212bの回路圧が第2の閾値以上か否かを判断する。さらに、HSTコントローラ3は、アクセル踏込センサ7から入力したアクセル信号を用いて、エンジン1の要求回転数を算出し、算出した要求回転数が第3の閾値以下か否かを判断する。
【0032】
上記の判断処理の結果、条件(1)〜(3)が満たされた場合、すなわちエンジン要求回転数が2150rpm以下であり、回路圧が20MPa以下である場合には、HSTコントローラ3は、ホイールローダ100が省エネ運転されていると判断する。HSTコントローラ3は、ホイールローダ100が省エネ運転であると判断すると、タイマ(不図示)を起動して省エネ運転が継続している時間を計測する。タイマによる計測時間が、たとえば1秒以上経過した場合、HSTコントローラ3は、省エネ運転が行われていることをオペレータに報知する。この場合、HSTコントローラ3はモニタ4に信号を出力して、「ECO」表示600を点灯させる。この結果、オペレータは「ECO」表示600が点灯されることによって、ホイールローダ100が省エネ運転されていると評価されていることを認識することができる。
【0033】
条件(1)〜(3)のうち何れか1つでも条件が満たされない場合には、HSTコントローラ3は、ホイールローダ100は省エネ運転されていないと判断する。この場合、HSTコントローラ3はモニタ4に信号を出力して、「ECO」表示600の点灯を禁止する。すなわち、「ECO」表示600を消灯する。上記のように「ECO」表示600が点灯している最中に省エネ運転がされていないと判断された場合には、「ECO」表示600は消灯される。すなわち、ホイールローダ100の加速時や登坂時や掘削時のようにエンジン1の実回転数が2150rpmを超えて運転操作されるような場合には、「ECO」表示600の点灯が禁止される。この結果、オペレータは「ECO」表示600が消灯されることによって、ホイールローダ100が省エネ運転されていないと運転評価されていることを認識することができる。
【0034】
図7に示すフローチャートを用いて、実施の形態による省エネ運転支援装置30が行う運転評価を報知する処理について説明する。
図7の各処理はHSTコントローラ3でプログラムを実行して行われる。
図7の各処理を行なうプログラムはメモリ(不図示)に格納されて、ホイールローダ100の走行速度が2km/hを超えるとHSTコントローラ3によりプログラムが起動され、実行される。
【0035】
ステップS1では、省エネ運転が継続している時間を計測するためのタイマが起動していることを示すフラグiを0に設定してステップS2へ進む。なお、フラグiは、タイマが起動していない場合には0に設定され、タイマが起動している場合には1に設定される。ステップS2では、走行圧力センサ6を構成する第1センサ6aおよび第2センサ6bから圧力信号を入力し、アクセル踏込センサ7からアクセル信号を入力してステップS3へ進む。ステップS3では、アクセル踏込センサ7から入力したアクセル信号を用いてエンジン1の要求回転数を算出し、算出した要求回転数が第3の閾値以下か否かを判断する。要求回転数が第3の閾値以下の場合には、ステップS3が肯定判定されてステップS4へ進む。要求回転数が第3の閾値を超える場合には、ステップS3が否定判定されて、後述するステップS10へ進む。
【0036】
ステップS4では、第1センサ6aから入力した圧力信号に基づいて、第1HST回路212aの回路圧が第1の閾値以下か否かを判定する。第1HST回路212aの回路圧が第1の閾値以下の場合には、ステップS4が肯定判定されてステップS5へ進む。第1HST回路212aの回路圧が第1の閾値を超える場合には、ステップS4が否定判定されて、後述するステップS10へ進む。
【0037】
ステップS5では、第2センサ6bから入力した圧力信号に基づいて、第2HST回路212bの回路圧が第2の閾値以下か否かを判定する。第2HST回路212bの回路圧が第2の閾値以下の場合には、ステップS5が肯定判定されてステップS6へ進む。第2HST回路212bの回路圧が第2の閾値を超える場合には、ステップS5が否定判定されて、後述するステップS10へ進む。
【0038】
ステップS6では、フラグiが0か否かを判定する。フラグiが0の場合にはステップS6が肯定判定されてステップS7へ進む。ステップS7ではタイマを起動して時間計測を開始するとともに、フラグiを1に設定してステップS8へ進む。フラグiが1に設定されている場合には、ステップS6が否定判定されてステップS8へ進む。ステップS8では、ステップS7でタイマにより時間計測を開始してから1秒が経過したか否かを判定する。1秒が経過した場合には、ステップS8が肯定判定されてステップS9へ進む。1秒が経過していない場合には、ステップS8が否定判定されてステップS2へ戻る。
【0039】
ステップS9では、モニタ4に「ECO」表示600の点灯を指示する信号を出力して処理を終了する。ステップS3、S4、S5が否定判定されてステップS10へ進むと、モニタ4に「ECO」表示600の点灯を禁止する信号を出力して処理を終了する。
【0040】
上述した実施形態のホイールローダは、エンジン1により駆動される油圧ポンプ210とその油圧ポンプ210からの吐出油で駆動される油圧モータ211,212とを閉回路接続したHST走行回路を備える。そして、このホイールローダの省エネ運転支援装置は、少なくとも高負荷モードと、高負荷モードよりもエンジン1の要求回転数の最高回転数が低い低負荷モードとのいずれか一方を選択する作業モードダイヤル5と、オペレータの運転操作に基づいた燃費に関する運転評価、すなわち省エネ運転か否かを評価するHSTコントローラ3と、作業モードダイヤル5により低負荷モードおよび高負荷モードの何れか一方が選択されている場合には、HSTコントローラ3によって省エネ運転と評価されると「ECO」表示600を点灯して報知し、HSTコントローラ3によって省エネ運転ではないと評価されると「ECO」表示600の点灯を禁止するモニタ4とを備える。
【0041】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)HST回路を有するホイールローダ100の省エネ運転支援装置30は、HSTコントローラ3とモニタ4とを備える。HSTコントローラ3は、エンジン1の回転数と、第1HST回路212aの回路圧と、第2HST回路212bの回路圧とを用いて、オペレータの運転が省エネ運転の条件を満足するか否かを判断する。モニタ4は、HSTコントローラ3が省エネ運転条件を満たすと判断すると、オペレータの運転が省燃費運転である評価として「ECO」表示600を表示するようにした。したがって、作業モードの設定状況に関わらず、オペレータが省エネ運転しているか否かを正確に報知できるので、オペレータに対して省エネ運転を促すことに寄与する。
【0042】
(2)HST式ホイールローダは、トルコン式ホイールローダに比べて、アクセルペダルをフルスロットルさせなくても走行性能が発揮できるように設計されている。そのため、モード選択に拘わらず、加速時、登坂時以外(以下、通常運転時と呼ぶ)でも、アクセルペダルをフルスロットルする必要はない。とくにPモード選択時は、通常走行運転時にアクセルペダルが所定値PSを超えて踏み込まれても走行性能が良好にならないばかりか、かえって燃費が悪化する。そこで、本発明等は、HST式ホイールローダの上記走行性能をオペレータに教示してエコ運転を促すための教示手法を鋭意検討し、本発明に想到した。
すなわち、Lモード時に設定されている要求最高エンジン回転数2150rpmの踏み込み操作量PSを越えたペダル踏み込み操作でエコ表示を消灯することとした。HSTホイールローダを熟知するベテランオペレータは、加速時、登坂時、あるいは重掘削時のリフトアップ操作を除いた通常運転時には、モード選択に拘わらず所定操作量PS(要求エンジン回転数2150rpm)以下の領域で運転を行う。加速時や登坂時、あるいは、重掘削時のリフトアップ操作においては、要求される走行トルクや要求されるエンジン回転数が大きいのでペダル踏み込み量が大きいのはやむを得ない。しかし、それ以外の運転時に必要以上にアクセルペダルを踏み込む必要はない。
本発明によれば、たとえば、要求最高エンジン回転数2150rpmの踏み込み操作量PSを越えたペダル踏み込み操作でエコ表示が消灯することを通して、オペレータは、モード選択に拘わらず、アクセルペダル操作量を所定量PSを超えて踏み込むことは省エネ運転ではないことを認識し、必要以上のアクセルペダルの踏み込み操作を極力回避するようになり、エコ運転、すなわち省エネ運転で作業を行うことができ、燃費が改善される。
(3)運転室内に設けられたモニタ4に運転評価を示す「ECO」表示600を行うようにした。したがって、オペレータは自身の運転評価を容易に視認することができる。
【0043】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)変形例1
モニタ4に「ECO」表示600を点灯/消灯させることによって運転評価の報知を行うものに代えて、警告灯を点灯/消灯させてもよい。この場合も、HSTコントローラ3は、省エネ運転が行われていると判断すると、警告灯を点灯させるための信号を出力し、省エネ運転が行われていないと判断すると警告灯の点灯を禁止する信号を出力すればよい。
【0044】
音声を用いて運転評価の報知を行うものについても本発明の一態様に含まれる。この場合、たとえば運転室121内にスピーカを設け、HSTコントローラ3は、省エネ運転が行われていると判断すると、音声信号を出力して、スピーカから警告音やメッセージ等を出力させればよい。
【0045】
(2)変形例2
運転評価を報知する際に、省エネ運転の度合、すなわち燃費低減の達成度合を段階的に報知してもよい。この場合、
図8に示すようなゲージ601がモニタ4に表示される。
図8に示すゲージ601の例では、省エネ運転の度合が4段階に区分され、省エネ運転の度合が高い程、点灯される領域が段階的に増加する。そして、HSTコントローラ3は、検出された回転数や回路圧の各閾値に対する割合を算出し、その値が小さい程省エネ運転の度合が高いと判定する。HSTコントローラ3は、算出した割合が1〜25パーセントの場合にはゲージ601の全領域を点灯表示させ、割合が26〜50パーセントの場合にはゲージ601の0〜75までの領域を点灯表示させ、割合が51〜75パーセントの場合にはゲージ601の0〜50までの領域を点灯表示させ、割合が76〜100パーセントの場合にはゲージ601の0〜25までの領域を点灯表示させればよい。
【0046】
なお、運転室121内にスピーカを備える場合には、ゲージ601により省エネ運転の度合を段階的に表示するものに代えて、省エネ運転の度合に応じてスピーカから出力される警告音を段階的に大きくあるいは小さくさせてもよい。さらには、省エネ運転の度合に応じて、スピーカから出力されるメッセージの内容を変更させてもよい。
【0047】
(3)変形例3
ホイールローダ100をさらに低燃費で動作させるための省エネモードをさらに備え、オペレータは専用の操作部材を操作することにより省エネモードの設定または解除を可能にしてもよい。この場合、HSTコントローラ3は、省エネモードが設定されていると、アクセル踏込センサ7から入力したアクセル信号を用いて算出したエンジン1の要求回転数を減少させ、たとえば要求回転数の90%の回転数でエンジン1を回転させる。さらに、HSTコントローラ3は、エンジン1の回転数の減少量に応じて、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の最小傾転qminを低下させて走行速度の低下を防止する。
【0048】
上記のように省エネモードを設定してエンジン1の回転数と、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212の傾転量とが制御されているとき、HSTコントローラ3は、エンジン1の回転数と、第1HST回路212aおよび第2HST回路212bの回路圧とが上述した条件(1)〜(3)を満たし、省エネ運転が行われているか否かを判定する。そして、省エネ運転が行われている場合には、HSTコントローラ3はモニタ4に設けられた専用のランプ等を点灯させる省エネ表示および「ECO」表示600の点灯を行う。省エネ運転が行われていないと判断した場合には、HSTコントローラ3は、モニタ4に省エネ表示および「ECO」表示600を消灯させる。換言すると、省エネ表示は、省エネモードが設定され、かつ省エネ運転が行われている場合に点灯する。なお、省エネモードが設定されていない場合には、省エネ運転が行われているか否かの判断結果に応じて「ECO」表示600の点灯/消灯が制御されるが、省エネ表示は点灯されない。
【0049】
以上説明した変形例3による省エネ運転支援装置は、上述した実施形態の省エネ運転支援装置にさらに、低負荷モードまたは高負荷モード、すなわちPモード、Nモード、Lモード、Sモードが選択されているホイールローダをさらに低燃費運転する省エネモードを選択する専用の選択部材を設けている。そして、HSTコントローラ3は、NモードやLモードなどの低負荷モードの設定と省エネモードの選択に拘わらず、エンジン回転数およびHST走行回路圧を用いてオペレータの燃費に関する運転評価が所定条件、すなわち上記(1)〜(3)の3つの条件のすべてを満足していれば「ECO」表示600を点灯する。さらに、省エネモードが選択され、燃費に関する運転評価が所定条件を満たす場合に、「ECO」表示600とともに、省エネモードでの省エネ運転であることを示す省エネ表示を行う。
【0050】
(4)ホイールローダ100は、第1油圧モータ211および第2油圧モータ212を備えるものに代えて、第1油圧モータ211のみを備えていてもよい。この場合であっても、油圧ポンプ210と第1油圧モータ211とは閉回路接続されたHST走行回路を構成する。さらに、ホイールローダ100が第2油圧モータ212を備えない場合には、第1油圧モータ211がトランスミッション22に代えてリダクションギアと接続するようにしたものも本発明の一態様に含まれる。
(5)作業車両としてホイールローダ100を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、フォークリフト、テレハンドラー、リフトトラック等、HST回路を有する他の作業車両であってもよい。
【0051】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態または変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。