特開2015-121263(P2015-121263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-121263(P2015-121263A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】磁性流体シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/82 20060101AFI20150605BHJP
   F16J 15/43 20060101ALI20150605BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20150605BHJP
【FI】
   F16C33/82
   F16J15/40 A
   F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-265312(P2013-265312)
(22)【出願日】2013年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 靖幸
【テーマコード(参考)】
3J016
3J042
3J701
【Fターム(参考)】
3J016AA02
3J016BB23
3J016BB25
3J016CA02
3J016CA03
3J042AA04
3J042AA09
3J042BA04
3J042DA02
3J042DA10
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701CA14
3J701CA33
3J701CA34
3J701EA68
3J701EA74
3J701FA60
3J701GA55
3J701GA57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気密室側への磁場の漏洩を抑制した磁性流体シール装置を提供する。
【解決手段】ハウジング3内にポールピース6で挟んだ状態で偶数個の磁石5を組み込む。回転軸2は、ハウジング3の中空部3a内にあって、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6よりも気密室1寄りにある任意の部位を境界とし、それよりも気密室1寄りの領域を非磁性材料で形成する。ハウジング3は、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6と接触する部位から気密室1寄りの領域を磁性材料で形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密室内に一部領域が挿入される回転軸を、前記気密室内の気密性を保持したまま支持する磁性流体シール装置であって、
前記気密室とその外部空間とを仕切る境界部に設けられるとともに、前記回転軸を挿通する中空部を有するハウジングと、
前記ハウジングへ軸方向に任意の間隔をおいて並べて組み込まれる複数個の磁石と、
前記複数個の磁石を挟み込むように前記ハウジングに組み込まれ、且つ径方向の内側端面を前記回転軸の周面と対向して配置された複数個のポールピースと、
前記ポールピースにおける径方向の内側端面と前記回転軸の周面との間に充填される磁性流体と、を備え、
前記磁石は、各磁石の対向する軸方向の端面を同じ極として偶数個を前記ハウジングへ組み込み、
前記ポールピースは、磁性材料で形成し、
前記回転軸は、前記ハウジングの中空部内にあって、前記気密室にもっとも近い位置にあるポールピースよりも気密室寄りにある任意の部位を境界として、当該境界部位よりも外部空間寄りの領域を磁性材料で形成するとともに、当該境界部位よりも気密室寄りの領域を非磁性材料で形成し、
前記ハウジングは、前記気密室にもっとも近い位置にあるポールピースと接触する領域から、当該領域よりも外部空間寄りであってかつ当該ポールピースと隣接するポールピースには接触しない領域までの任意の部位を境界として、当該境界部位よりも気密室寄りの領域を磁性材料で形成するとともに、当該境界部位よりも外部空間寄りの領域を非磁性材料で形成したことを特徴とする磁性流体シール装置。
【請求項2】
前記磁石は、前記ハウジングに2個又は4個組み込んであること特徴とする請求項1の磁性流体シール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気密室内に一部領域が挿入される回転軸を、気密室内の気密性を保持したまま支持する磁性流体シール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界においては、内部が気密に遮蔽された空間内を外部の圧力と異なった圧力状態、すなわち差圧状態に保持し、その差圧状態下において種々の処理を行うようにした各種の装置が存在する。また、その差圧状態に加えて内部を防塵状態、あるいは特殊なガス雰囲気状態に保持した状態で種々の処理を行う場合もある。例えば、半導体ウエハの減圧処理装置、真空乾燥機、回転対陰極形式のX線発生装置や電子顕微鏡の内部等においては、真空に減圧された防塵状態下で所定の処理が行われる。磁性流体シール装置は、それらの所定の処理が行われる空間領域(気密室内)と大気圧領域との2つの空間領域を互いに遮蔽するために用いられる。
【0003】
従来の磁性流体シール装置は、筒状をしたハウジングの両端付近の内壁に軸受を組み込み、これらの軸受で回転軸を回転自在に支持している。さらに、ハウジング内に磁石を内蔵し、磁石と回転軸の間の隙間に磁性流体を充填して密閉性を高めた構成となっている。磁性流体は、磁石の周囲に生じた磁場によって磁石と回転軸の間の隙間に保持される。
特許文献1は、この種の構造を備えた従来の磁性流体シール装置を開示している。
【0004】
さて、上述したように磁性流体シール装置は磁石を内蔵しているために、磁石の周囲に磁場が生じることは避けられない。ところが、磁性流体シール装置が適用される対象装置によっては、この磁場が同対象装置の性能に悪影響を及ぼすおそれがあった。例えば、電子線を使用する電子顕微鏡や、電子銃から対陰極(ターゲット)に向かって電子を衝突させて対陰極の表面からX線を発生させるX線発生装置などを対象装置とする場合である。これらの装置では、気密室の内部で電子が取り扱われるため、磁性流体シール装置の磁石によって発生した磁場が対象装置の気密室内へと漏洩した場合、電子の軌道が漏洩磁場によって本来の軌道から逸れてしまう等の悪影響が危惧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−166633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、気密室側への磁場の漏洩を抑制した磁性流体シール装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、気密室内に一部領域が挿入される回転軸を、気密室内の気密性を保持したまま支持する磁性流体シール装置であって、
気密室とその外部空間とを仕切る境界部に設けられるとともに、回転軸を挿通する中空部を有するハウジングと、
ハウジングへ軸方向に任意の間隔をおいて並べて組み込まれる複数個の磁石と、
複数個の磁石を挟み込むようにハウジングに組み込まれ、且つ径方向の内側端面を回転軸の周面と対向して配置された複数個のポールピース(磁極片)と、
ポールピースにおける径方向の内側端面と回転軸の周面との間に充填される磁性流体と、を備えている。
【0008】
ここで、磁石は、各磁石の対向する軸方向の端面を同じ極として偶数個をハウジングへ組み込まれている。
また、ポールピースは、磁性材料で形成されている。
そして、回転軸は、ハウジングの中空部内にあって、気密室にもっとも近い位置にあるポールピースよりも気密室寄りにある任意の部位を境界として、当該境界部位よりも外部空間寄りの領域が磁性材料で形成され、一方、当該境界部位よりも気密室寄りの領域が非磁性材料で形成されている。
さらに、ハウジングは、気密室にもっとも近い位置にあるポールピースに接触するとともに、当該ポールピースに隣接するポールピースには接触しない部位を境界として、当該境界部位よりも外部空間寄りの領域が非磁性材料で形成され、一方、当該境界部位よりも気密室寄りの領域が磁性材料で形成されている。
【0009】
本発明者らは、このように構成することで、磁石の周囲に発生する磁場の広がり、特に気密室方向への磁場の広がりを抑制することができることを実験的に見出すことができた。
なお、ハウジングの軸方向への寸法拡大による大形化を抑制するために、磁石はハウジングに2個又は4個組み込む構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁石の周囲に発生する磁場の広がり、特に気密室方向への磁場の広がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る磁性流体シール装置の基本構造を示す正面断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る磁性流体シール装置の特徴的構造を説明するための半断面図である。なお、断面を示すハッチングは省略してある(図3図5図7図8も同じ)。
図3】本発明に係る磁性流体シール装置の実験例1を説明するための半断面図である。
図4】実験例1の測定結果を示す表である。
図5】本発明に係る磁性流体シール装置の比較例1を説明するための半断面図である。
図6】比較例1の測定結果を示す表である。
図7】本発明に係る磁性流体シール装置の実験例2を説明するための半断面図である。
図8】本発明に係る磁性流体シール装置の比較例2を説明するための半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔基本構造〕
まず、図1を参照して本発明の実施形態に係る磁性流体シール装置の基本構造を説明する。
本実施形態に係る磁性流体シール装置は、同装置が適用される対象装置の気密室1の壁面1aに装着され、気密室1内に一部領域が挿入される回転軸2を回転自在に支持するとともに、気密室1内の気密性を保持する機能を有しており、ハウジング3、軸受4、磁石5、ポールピース6(磁極片)、磁性流体7を主要な構成部品として備えている。
【0013】
ハウジング3は、磁性流体シール装置の筐体を構成する部品であり、内部に一端から他端に貫通する断面円形をした中空部3aが形成してある。回転軸2は、この中空部3aを挿通して一部が気密室1内に挿入される。また、ハウジング3の一端部外面にはフランジ部3bが形成してあり、このフランジ部3bが図示しないボルト等の締結具を用いて気密室1の壁面1aに固定され、これにより本磁性流体シール装置が、気密室1とその外部空間100とを仕切る境界部に配設される。
【0014】
軸受4は、ハウジング3の両端部近くに、それぞれ中空部3aの周面に支持面を露出した状態で組み込まれている。中空部3aに挿通された回転軸2は、これらの軸受4によって回転自在に支持される。
【0015】
ハウジング3の内部には、偶数個の磁石5が任意の間隔をおいて軸方向に組み込まれている。ここで、偶数個の磁石5は、各磁石5の対向する軸方向の端面が同じ極となるような配置をもって組み込まれている。例えば、2個の磁石5を組み込む場合は、各磁石5の対向する端面がS極又はN極となるように配置する。同様に、4個の磁石5を組み込む場合は、例えば、左から1個目と2個目の磁石5の対向する端面をそれぞれS極(又はN極)とすれば、2個目と3個目の磁石5の対向する端面はそれぞれN極(又はS極)とし、3個目と4個目の磁石5の対向する端面はそれぞれS極(又はN極)とすればよい。
【0016】
さらに、ハウジング3の内部には、複数個の磁石5を挟み込むようにして複数個のポールピース6(磁極片)が組み込まれている。これらのポールピース6は磁性材料で形成してあり、径方向の内側端面を回転軸2の周面と対向して配置されている。
そして、互いに対向するポールピース6の内側端面と回転軸2の周面との間に、磁性流体7が充填されている。この磁性流体7は、非磁性の流体媒体に磁性体の金属微粒子をコロイド状に分散させることによって形成された流体である。例えば、炭化水素、炭化フッ素、あるいは脂肪酸等の流体にフェライトその他の磁性体粉末を分散した流体を用いることができる。
充填された磁性流体7は、磁石5のそれぞれから出て各ポールピース6及び回転軸2の磁性材料部分を通る磁気閉回路を構成する磁束に集中して、磁性流体膜を構成する。こうして形成された磁性流体膜によって気密室1と外部空間100とが遮断され、気密室1内の気密状態が保持される。
なお、図1に示すように、互いに対向するポールピース6の内側端面と回転軸2の周面のいずれか一方又は双方に周方向に延びる複数本の溝を形成し、この溝内に磁性流体7を充填すれば、磁性流体7をいっそう強固に当該箇所へ留めておくことができて好ましい。
【0017】
上述した構成の磁性流体シール装置において、回転軸2と、ハウジング3は、磁性材料と非磁性材料とを組み合わせた構成としてある。ここで、磁性材料というのは、磁石5によって磁化される性質を有する材料をいい、非磁性材料というのは、磁石5を近付けても磁化されない性質を有する材料をいう。
【0018】
具体的には図2に示すように、回転軸2は、ハウジング3の中空部3a内にあって、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6よりも気密室1寄りにある領域S2+S3内に非磁性材料と磁性材料の境界S0が設定されており、その境界S0よりも外部空間100寄りの領域2Xを磁性材料で形成するとともに、その境界S0よりも気密室1寄りの領域2Yを非磁性材料で形成した構成となっている。
また、ハウジング3は、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6と接触する領域H3aから、当該領域よりも外部空間100寄りであってかつ当該ポールピース6と隣接するポールピース6には接触しない領域H3bまでの任意の部位を境界H0として、当該境界H0よりも気密室1寄りの領域3Xを磁性材料で形成するとともに、当該境界部位よりも外部空間100寄りの領域3Yを非磁性材料で形成した構成となっている。
このように回転軸2とハウジング3を構成することで、磁石5から発生する磁力線が回転軸2の磁性材料の領域から、ハウジング3の磁性材料の領域へと導かれて磁石5へ帰還する磁気回路が形成され、気密室1方向への磁場の広がりが抑制される。
【0019】
ここで、回転軸2及びハウジング3の磁性材料部分は、例えば鉄鋼材料によって形成され、非磁性材料部分は非磁性金属材料や合成樹脂等によって形成することができる。両部分の繋ぎ目は、摩擦圧接による拡散接合による接合方法が強固でかつ滑らかな表面を得られて好ましいが、これに限定されず溶接やねじ結合、あるいはその他任意の方法によって接合することができる。
【0020】
〔実験例1〕
次に、図3及び図4を参照して、本発明に係る磁性流体シール装置の実験例1について説明する。
本発明者は、図3に示すように、ハウジング3内に2個の磁石5を、各磁石5の対向する軸方向の端面を同じ極として組み込んだ構成の磁性流体シール装置を用いて、次の(1)(2)に示す条件を適宜変更しながら、回転軸2の気密室側の端面から中心軸に沿って10mmの距離だけ離間した地点Aにおける磁場の強さと、同じく50mmの距離だけ離間した地点Bにおける磁場の強さとを計測した。
(1)回転軸2における次のS1〜S3の領域を、磁性材料か非磁性材料のいずれかに設定する。
S1:ハウジング3よりも気密室1側に露出した領域
S2:ハウジング3の気密室1側端面からフランジ部3bの厚さ分だけ中空部3a内に入り込んだ領域
S3:ハウジング3の中空部3a内であってフランジ部3bよりも外部空間100寄りで、且つ気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6よりも気密室1寄りの領域
(2)ハウジング3における次のH1〜H4の領域を、磁性材料か非磁性材料のいずれかに設定する。
H1:フランジ部3bの形成された領域
H2:フランジ部3bよりも外部空間100寄りで、且つ気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6よりも気密室1寄りの領域
H3:気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6と接触する領域(図2のH3a)
H4:H3の領域端から、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6と隣接するポールピース6と接触する中央部までの領域
【0021】
測定結果は、図4に示すように、回転軸2における磁性材料の領域及び非磁性材料の領域と、ハウジング3における磁性材料の領域及び非磁性材料の領域との組み合わせを適宜変更して、地点A及び地点Bでの磁場の強さとを計測した結果、ハウジング3のH1、H2及びH3の領域(H1+H2+H3)を磁性材料で形成し、その他の領域を非磁性材料で形成するとともに、回転軸2におけるS1及びS2の領域(S1+S2)を非磁性材料で形成し、その他の領域を磁性材料で形成した構造において、地点A及び地点Bともに磁場の強さが著しく低減した(データNo.7)。
【0022】
すなわち、ハウジング3はフランジ部3bだけを磁性材料にしても十分な磁気シールド効果が得られない。気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6に接触する領域まで磁性材料とすることで、磁気回路が閉じるためシールド効果が発揮される。一方、磁性材料の部位が磁石5を跨いでしまうと磁性流体7の磁場が減少(3割減)してしまうため、気密室1にもっとも近い位置にあるポールピース6と隣接するポールピース6とをハウジング3の磁性材料部分で繋ぐことは好ましくない。
回転軸2は、磁性材料部分がハウジング3の中空部3aから気密室1側へ出てしまうと、磁気漏洩先端部がシールド外部にでることになるため漏洩が大きくなる。ハウジング3の中空部3a内で磁性材料と非磁性材料の境界位置を変更しても磁気漏洩に大きな差はないが、磁性流体7よりも気密室1寄りに当該境界を配置したときもっとも磁気漏洩が小さくなる。
【0023】
〔比較例1〕
次に、図5及び図6を参照して、本発明に係る磁性流体シール装置の比較例1について説明する。
本発明者は、図5に示すように、ハウジング3内に1個の磁石5を組み込んだ構成の磁性流体シール装置を用いて、上述した(1)(2)に示す条件を適宜変更しながら、回転軸2の真空室側の端面から中心軸に沿って10mmの距離だけ離間した地点Aにおける磁場の強さと、同じく50mmの距離だけ離間した地点Bにおける磁場の強さとを計測した。
【0024】
測定結果は、図6に示すように、いずれの計測結果も好ましいものではなく、地点A及び地点Bに至る広範囲の磁気漏洩が観察された。
【0025】
〔実験例2〕
次に、図7を参照して、本発明に係る磁性流体シール装置の実験例2について説明する。
本発明者は、図7に示すように、ハウジング3内に4個の磁石5を、各磁石5の対向する軸方向の端面を同じ極として組み込んだ構成の磁性流体シール装置を用いて、回転軸2の気密室側の端面から中心軸に沿って10mmの距離だけ離間した地点Aにおける磁場の強さと、同じく50mmの距離だけ離間した地点Bにおける磁場の強さとを計測した。
回転軸2は、S1+S2の領域を非磁性材料、その他の領域を磁性材料とした。
ハウジング3は、H1+H2+H3の領域を磁性材料、その他の領域を非磁性材料とした。
【0026】
測定結果は、地点Aにおける磁場の強さは68.7μT、地点Bにおける磁場の強さは5.7μTであり、いずれも極めて低い磁場の強さであった。
【0027】
〔比較例2〕
次に、図8を参照して、本発明に係る磁性流体シール装置の比較例2について説明する。
本発明者は、図8に示すように、ハウジング3内に3個の磁石5を、各磁石5の対向する軸方向の端面を同じ極として組み込んだ構成の磁性流体シール装置を用いて、回転軸2の気密室側の端面から中心軸に沿って10mmの距離だけ離間した地点Aにおける磁場の強さと、同じく50mmの距離だけ離間した地点Bにおける磁場の強さとを計測した。
回転軸2は、S1+S2の領域を非磁性材料、その他の領域を磁性材料とした。
ハウジング3は、H1+H2+H3の領域を磁性材料、その他の領域を非磁性材料とした。
【0028】
測定結果は、地点Aにおける磁場の強さは452.4μT、地点Bにおける磁場の強さは73.4μTであり、いずれも極めて大きな磁場の強さであった。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、磁性流体シール装置の細部構造など必要に応じて適宜設計変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1:気密室、1a:気密室の壁面、2:回転軸、2X:磁性材料の領域、2Y:非磁性材料の領域、3:ハウジング、3X:磁性材料の領域、3Y:非磁性材料の領域、3a:中空部、3b:フランジ部、4:軸受、5:磁石、6:ポールピース(磁極片)、7:磁性流体、100:外部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8