特開2015-121304(P2015-121304A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-121304(P2015-121304A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】多板ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20150605BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20150605BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20150605BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20150605BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20150605BHJP
【FI】
   F16D65/18
   F16D55/40 F
   F16F1/18 E
   F16D121:04
   F16D125:06 A
   F16D125:06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-266662(P2013-266662)
(22)【出願日】2013年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 祥司
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅俊
【テーマコード(参考)】
3J058
3J059
【Fターム(参考)】
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA70
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA62
3J058BA64
3J058BA67
3J058CC03
3J058CC76
3J058DD05
3J059AD02
3J059AD03
3J059AE04
3J059BA23
3J059BA24
3J059BB01
3J059BD01
3J059CA08
3J059CA14
3J059GA13
3J059GA14
(57)【要約】
【課題】部品点数が少なく、径方向と軸方向の双方にコンパクトな多板ブレーキを提供すること。
【解決手段】多板ブレーキ10は、リターンスプリングである皿ばね20が、プッシャプレート32aとピストン14との間にスナップリング28で抜止めされることにより配設され、その内径側の一方の面は、ピストン14の内径側の一部に接し、外径側の他方の面は、スナップリング28に接し、押圧部16が貫通する貫通孔24を有するから、部品点数が少なく、その径方向有効長さを比較的長くすることができ、その径方向及び軸方向のコンパクト化を図ることができるので、多板ブレーキ全体としても、径方向及び軸方向にコンパクトにすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケース及び回転可能なハブと、
前記ケースの外径壁部の内側にスプライン嵌合し、プッシャプレートを含む相手部材と、
前記ハブに取付けられ、前記相手部材と摩擦係合する摩擦板と、
前記ケースの内部に設けられている油圧室と、
前記油圧室に嵌合され、該油圧室に作動油が供給されることにより前記ケースの軸方向に作動するピストンと、
前記ピストンに連動し、前記プッシャプレートを前記ケースの軸方向に押圧する押圧部と、
前記ケースの外径壁部の内側であって、前記プッシャプレートとピストンとの間にスナップリングで抜止めされ、前記ピストンを前記押圧部と前記プッシャプレートが非接触の位置まで付勢する皿ばねを有する多板ブレーキにおいて、
前記皿ばねが、前記押圧部が貫通する貫通孔を有することを特徴とする、
多板ブレーキ。
【請求項2】
前記ピストン、押圧部、皿ばね、相手部材、及び摩擦板が、前記ケースの外径壁部に沿って直線状に配設されている、請求項1の多板ブレーキ。
【請求項3】
前記ピストン、押圧部、皿ばね、相手部材、及び摩擦板のセットが軸方向に複数設けられている、請求項1又は2の多板ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンのリターンスプリングに皿ばねを用いる多板ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
制動又はトルク伝達を目的として、交互に設けられた摩擦板と相手部材とを摩擦係合させる摩擦係合装置は、その摩擦係合を実現させるために、一般的には、油圧式のピストンを用い、油圧でピストンを作動させ、ピストンと連動する(ピストンに設けられている場合を含む。)押圧部によって相手部材のプッシャプレートを軸方向に押すという構成が採用されている。また、油圧を解放した際、摩擦板と相手部材との摩擦係合を解除させるために、ピストンを元の位置に押戻すばね(リターンスプリング)が設けられている。このような構成の摩擦係合装置は、例えば、自動車の変速機でクラッチやブレーキとして使用されており、その例として、以下に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−170442号公報
【0004】
特許文献1には、環状のピストンであって、一方の面に周方向に間隔を空けて設けられた円弧状の押圧部と、ピストンの周方向であって押圧部の間に設けられる複数のピンが設けられたピストンと、当該ピストンと略同径の環状のスプリングリテーナであって、ピストンの押圧部と対応する位置に、押圧部が貫通可能なスリットが設けられ、ピストンのピンと対応する位置にコイルばねが設けられているスプリングリテーナとで構成される摩擦係合装置が開示されている。
【0005】
一方、図4(a)に示す多板ブレーキ100(径方向半分の要部のみが表されている。)は、ケース130の外径壁部134の内側にスプライン嵌合している複数の相手部材132と、相手部材132の間にそれぞれ位置するようにハブ140に取付けられている摩擦板142と、相手部材132に面する側面の周方向に間隔を空けて設けられた円弧状の押圧部116(図4(b)参照。)を具え、油圧室112に嵌込まれている環状のピストン114と、ピストン114と相手部材132との間であって、ケース130の外径壁部134の内側にスナップリング128で抜止めされている皿ばね120を有する。皿ばね120は、内径側切片126の一方の面がピストン114に接し、ピストン114を油圧室112の方向へ付勢している。図4(b)に示されているように、皿ばね120(径方向半分が表されている。)は、周り止めとして、その外径側にスプライン122が設けられ、内径側には、複数のスリット124が設けられており、ピストン114が軸方向に移動したとき、ピストン114に設けられている押圧部116がスリット124を通じて相手部材132のプッシャプレート132aを押圧できるように構成されている。
【0006】
特許文献1に示す摩擦係合装置は、スプリングリテーナ、スプリングリテーナに固着する複数のコイルばね、ピストンに設けられるピン等を必要とするため、部品点数が比較的多くなり、構造も複雑化する。このため、組付工数の増加、製造コストの増大を招くという問題があり、また、主にコイルばねの設計上、軸方向の寸法が大きくなるという問題もある。
【0007】
一方、多板ブレーキ100の場合は、コイルばねタイプのものに比べて、軸方向のコンパクト化を図ることができる。しかし、多板ブレーキ100の皿ばね120は、スリット124を要するので、スリットを有さない皿ばねに比べて、ばね定数が低下する。そこで、ばね定数を増加させ、ピストン114を十分に付勢するために、スリット124を極力浅くするということも考えられるが、ピストン114の押圧部116は、プッシャプレート132aに対するブレーキ締結時の摩擦面の面圧分布がなるべく均等になるように、その面積・径方向位置等を決めなければならないので、これには限界がある。このような制約の下、ピストン114を付勢するのに十分な荷重を実現するためには、皿ばね120とスナップリング128の接点から皿ばね120とピストン113の接点までの軸方向寸法を小さくする、皿ばねの径方向有効長さR′(スリット124の底部から皿ばねの外径端(スプライン122を除く)までの寸法)を長くする、又は皿ばねの板厚を厚くする、というような措置を講じる必要がある。しかし、このような措置は、設計上困難な場合があり、皿ばねの径方向内側のスペースを損ない、或いは皿ばねの製造コストが増大するという問題を惹き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、部品点数が少なく、径方向と軸方向の双方にコンパクトな多板ブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円筒状のケース及び回転可能なハブと、
前記ケースの外径壁部の内側にスプライン嵌合し、プッシャプレートを含む相手部材と、
前記ハブに取付けられ、前記相手部材と摩擦係合する摩擦板と、
前記ケースの内部に設けられている油圧室と、
前記油圧室に嵌合され、該油圧室に作動油が供給されることにより前記ケースの軸方向に作動するピストンと、
前記ピストンに連動し、前記プッシャプレートを前記ケースの軸方向に押圧する押圧部と、
前記ケースの外径壁部の内側であって、前記プッシャプレートとピストンとの間にスナップリングで抜止めされ、前記ピストンを前記押圧部と前記プッシャプレートが非接触の位置まで付勢する皿ばねを有する多板ブレーキにおいて、
前記皿ばねが、前記押圧部が貫通する貫通孔を有することを特徴とする多板ブレーキによって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皿ばねが押圧部の貫通孔を有し、押圧部が貫通孔を通じて相手部材を押圧するので、皿ばねの内径側にスリットを設ける必要がないから、その分、径方向有効長さ(皿ばねの内径端から外径端(スプラインを除く)までの寸法)を長くすることができる。従って、本発明は、従来のようなスリットを有するタイプの皿ばねを適用させたものに比べて、ばね定数が高く、必要な荷重を実現するのが容易で、皿ばねの径方向長さ(皿ばねの内径端から外径端(スプラインを含む)までの径方向寸法)を短くすることができるから、結果として、多板ブレーキ全体の径方向及び軸方向のコンパクト化に資することができる。また、スリットを有するタイプの皿ばねと同じ外径・ばね定数とした場合、本発明の方が皿ばねの径方向長さを短くすることができ、径方向内側のスペースを大きく確保できるから、皿ばねの内径内に配設する部品等のレイアウト設計の自由度を向上させることができる。また、皿ばねの製造コストを比較的削減することもできる。なお、従来のコイルばねのリターンスプリングを用いた多板ブレーキに比べて、軸方向にコンパクトにでき、部品点数が少ないという利点を有することは言うまでもない。
【0011】
また、ピストン、押圧部、皿ばね、相手部材、及び摩擦板が、ケースの外径壁部に沿って直線状に設けられている構成とすれば、径方向内側に多くのスペースを確保することができるので、ケースの内径側に他の部品を配置し易くなる。
【0012】
また、ピストン、押圧部、皿ばね、相手部材、及び摩擦板のセットを軸方向に複数設けることにより、別々のハブに対し、ブレーキ・解除を実現できる多板ブレーキとすることで、軸方向、径方向ともにコンパクトなレイアウトを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態の多板ブレーキの径方向半分の要部を示す縦断面図。
図2】本発明の第一実施形態の多板ブレーキの皿ばねと押圧部の関係を軸方向から見た径方向半分の概略図。
図3】本発明の第二実施形態の多板ブレーキの径方向半分の要部を示す縦断面図。
図4】(a)は、従来の多板ブレーキの径方向半分の要部を示す縦断面図、(b)は、その皿ばねと押圧部の関係を軸方向から見た径方向半分の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を、図1〜3を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の第一実施形態の多板ブレーキの径方向半分の要部を示す縦断面図である。多板ブレーキ10は、ハブ40,40′の回転軸(図示省略。)に対して対称をなしている。なお、図に示されていない多板ブレーキ10の他の構成は、従来の多板ブレーキと同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0016】
多板ブレーキ10のケース30は、その外径側に位置する外径壁部34を有し、外径壁部34の内側には、スプラインが設けられ、ピストン14側から順に、プッシャプレート32a、中間プレート32b、エンドプレート32cからなる環状の相手部材32がスプライン嵌合している。相手部材32のそれぞれの間には、ハブ40の外周側に取付けられている環状の摩擦板42が配設されている。なお、摩擦板42には、通常、摩擦材が貼付けられる。ケース30の内部には、油圧室11を形成する油圧シリンダ18が設けられており、油圧シリンダ18には、ピストン14が嵌め込まれている。ピストン14には、これと連動する押圧部16が形成されている。押圧部16の形状、径方向位置は、プッシャプレート32aに対するブレーキ締結時の摩擦面の面圧分布を考慮して、適宜決定される。また、ケース30の外径壁部34の内側に、環状の皿ばね20の外径側に設けられたスプライン22(図2参照。)が嵌合し、スナップリング28で抜止めされることにより、プッシャプレート32aとピストン14との間に皿ばね20が配設されている。皿ばね20の内径側の一方の面は、ピストン14の内径側の一部に接し、外径側の他方の面は、スナップリング28に接しているので、皿ばね20は、ピストン14を油圧室11の方向(相手部材32と反対方向)に付勢することができる。ここで、皿ばね20がピストン14を押圧部16とプッシャプレート32aが非接触の位置まで付勢し、多板ブレーキ10の非摩擦係合状態を実現できるように、皿ばね20のばね定数、そして、皿ばね20、スナップリング28、ピストン14との相対位置が決められる。
【0017】
多板ブレーキ10の皿ばね20は、押圧部16が貫通する貫通孔24を有する。貫通孔24の形状は、押圧部16の形状に応じて決められる。図2に示されているように、本発明の皿ばね20は、貫通孔24を有しているから、従来のように、その内径側に押圧部16を通すための大きなスリットを設ける必要がない。従って、スリットが設けられている皿ばねに比べて、径方向有効長さR(皿ばねの内径端から外径端(スプライン22を除く)までの寸法)を比較的長くすることができる分、大きな荷重を容易に実現することができるので、皿ばねの径方向長さS(皿ばねの内径端から外径端までの径方向寸法)を逆に小さくし、板厚を薄くすることもできる。このため、内径側にスリットを有する皿ばねに比べて、径方向及び軸方向のコンパクト化を図ることができるので、多板ブレーキ全体としても、径方向及び軸方向にコンパクトにすることができる。
【0018】
また、内径側にスリットを有する皿ばねの場合、その構造上、押圧部は皿ばねの内径側、すなわち、ケースの内径側に位置するように設計されなければならなかったが、本発明のように、皿ばね20に貫通孔24を設ける構成とすれば、押圧部16を、ケース30の比較的外径側に位置するように設計することができる。従って、ピストン14と油圧シリンダ18の径方向寸法Tを小さくすることもでき、ケース30の内径側に、より多くのスペースを確保することができる。
【0019】
次に、多板ブレーキ10の作動について説明する。プッシャプレート32a及び中間プレート32bは軸方向に可動で、多板ブレーキ10は、相手部材32と摩擦板42との摩擦係合状態、及び非摩擦係合状態の2つの状態を実現できるように構成されている。図1に示されている状態は、相手部材32と摩擦板42とが非摩擦係合の状態であり、この状態から、油圧室11に作動油が供給されると(作動油の供給経路については省略している。)、ピストン14が軸方向(図1で左方向。)に移動し、皿ばね20を圧縮するとともに、押圧部16が貫通孔24を通じてプッシャプレート32aを軸方向に押す。プッシャプレート32aに加えられた押圧力は、摩擦板42、中間プレート32bを通じてエンドプレート32cまで伝わり、相手部材32と摩擦板42とが摩擦係合する。かくして多板ブレーキ10の摩擦係合状態が実現され、ケース30又はハブ40,40′の回転が制動される。この状態から、作動油が解放されると、皿ばね20の弾性力により、皿ばね20がピストン14を油圧室11の方向に押し戻すので、相手部材32と摩擦板42との摩擦係合が解除され、非摩擦係合状態に戻る。多板ブレーキ10では、このような動作がなされるので、貫通孔24は、皿ばね20の非圧縮時から圧縮時までの全範囲において、押圧部16が干渉しない大きさにするのがよい。
【0020】
ここで、図1に示すように、ピストン14、押圧部16、皿ばね20、相手部材32、及び摩擦板42が、ケース30の外径壁部34に沿って直線状に配設されている構成とすれば、ケース30の内径側に、スペースを最大限確保することができる。この構成は、本実施形態のような、ケース30の内径側に多くの部品を配設する必要がある多板ブレーキとして本発明を適用する場合に、特に有効である。
【0021】
また、図1のように、ピストン14、押圧部16、皿ばね20、相手部材32、及び摩擦板42とは別の、ピストン14′、押圧部16′、皿ばね20′、相手部材32′、及び摩擦板42′のセットを軸方向に並べて設けることもできる。この場合、径方向のコンパクト性を維持したまま、別々のハブ40,40′に対し、ブレーキ・解除を実現できる多板ブレーキとすることができる。当然、ピストン、押圧部、皿ばね、相手部材、及び摩擦板を軸方向にさらに設けてもよい。
【0022】
また、図3に示すように、押圧部16と相手部材32との間に、クッションスプリング36を設けることもできる。これにより、押圧部16と相手部材32が接触する際の衝撃を緩和することができる。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、部品点数が少なく、径方向と軸方向の双方にコンパクトな多板ブレーキを提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 多板ブレーキ
11 油圧室
14 ピストン
16 押圧部
20 皿ばね
24 貫通孔
30 ケース
32 相手部材
32a プッシャプレート
34 外径壁部
40 ハブ
42 摩擦板
図1
図2
図3
図4