【解決手段】本発明は、磁性構造体(44)と共振子(46)との間の相対角速度を調節するためのデバイスに関し、磁性構造体及び共振子は互いに磁気結合されて磁気式脱進機を画定する発振子(42)を形成する。磁性構造体は、磁性材料で形成された少なくとも1つの環状経路(52)を有し、この磁性材料の1つの物理的パラメータは、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関している。磁性材料は環状磁性経路に沿って設けられ、これにより前記物理的パラメータは角度方向に周期的に変動する。環状経路は各角度区間に、発振子の磁気ポテンシャルエネルギを蓄積する領域(56)を有し、これはインパルス領域に径方向に隣接している。磁性材料は各蓄積領域において、上記磁性材料の物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減するように配設される。
磁性構造体(44;86;114;154;198;214;240,242)と共振子(46;116;117;119;148;158;158A;158B;158C;174;182,184;202;238)との間の相対角速度(ω)を調節するためのデバイス(42;84;112;152;168;172;180;190;196;210;236;260;270;280)であって、
前記磁性構造体と前記共振子とは互いに対して磁気結合されて前記調節デバイスを形成する発振子を構成し、
前記磁性構造体は、前記磁性構造体又は前記共振子の回転軸(51,51A)上にセンタリングされた少なくとも1つの環状磁性経路を有し、
前記磁性構造体及び共振子は、前記磁性構造体又は前記共振子に駆動トルクが印加されると、前記回転軸の周りで互いに対して回転するように配設され;
前記共振子は、前記環状磁性経路への少なくとも1つの磁気結合要素(50;126,127;149;164,165;177,178;230,231)を有し;
前記環状磁性経路の少なくとも一部は、前記発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関しているものの前記磁気ポテンシャルエネルギとは異なる少なくとも1つの第1の物理的パラメータを有する第1の磁性材料(45)で形成され、
前記第1の磁性材料は、前記環状磁性経路に沿って配設され、これにより前記発振子の前記磁気ポテンシャルエネルギは、前記環状磁性経路に沿って周期的に角度方向に変動して前記環状磁性経路の角度区間(Pθ)を画定し;
前記磁気結合要素は、前記磁性構造体の側に位置する活性端部を有し、
前記活性端部は、前記環状磁性経路に磁気結合され、これにより、前記共振子の共振モードのある1つの自由度に沿った発振を、前記磁性構造体又は前記共振子に印加される有効駆動トルク範囲内に維持し、また前記環状磁性経路の各前記角度区間における前記相対的な回転中に、所定の整数回の前記発振が発生するようにして、前記発振子の周波数によって前記相対角速度が決定されるように構成し;
前記共振子は、前記結合要素の前記活性端部の少なくとも大部分が、前記環状磁性経路によって画定される幾何学的主平面への正投影において、前記発振の各期間における実質的に最初の1回の振動中に前記環状磁性経路に重なるように、及び前記最初の振動の前記磁気結合要素の移動軌跡が、前記幾何学的主平面に対して略平行となるように、前記磁性構造体に対して設けられ、
前記自由度に沿った前記環状磁性経路の寸法は、前記自由度に沿った前記磁気結合要素の前記活性端部の寸法より大きい、調節デバイスにおいて、
前記調節デバイスは:
前記有効駆動トルク範囲内において、前記環状経路及び前記磁気結合要素は、各前記角度区間において、前記環状経路及び前記磁気結合要素の相対角度位置並びに前記結合要素のその自由度に沿った位置によって画定される前記環状経路及び前記磁気結合要素の相対位置に応じて、前記発振子の磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域(63,65)を画定すること;並びに
前記第1の磁性材料は、各前記角度区間において、前記環状磁性経路に対する前記磁気結合要素の相対位置に関して前記活性端部に少なくとも部分的に磁気結合される前記第1の磁性材料の1つの領域において少なくとも、前記物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減するように配設され、かつ各前記角度区間内の前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域の少なくとも一部に対応すること
を特徴とする、調節デバイス。
磁性構造体(304;358)と共振子(302;322;322A;174A;352)との間の相対角速度(ω)を調節するためのデバイス(300;320;330;340;350)であって、
前記磁性構造体と前記共振子とは互いに対して磁気結合されて前記調節デバイスを形成する発振子を構成し、
前記磁性構造体は、前記磁性構造体の又は前記共振子の回転軸(51)上にセンタリングされた少なくとも1つの環状磁性経路を有し、
前記磁性構造体及び共振子は、前記磁性構造体又は前記共振子に駆動トルクが印加されると、前記回転軸の周りで互いに対して回転するように配設され;
前記共振子は、前記環状磁性経路への磁気結合のための少なくとも1つの磁気結合要素(310;326,328;326A,328A;344,345;354,356)を有し;
前記環状磁性経路の少なくとも一部は、第1の磁性材料で形成され、
前記第1の磁性材料は、前記発振子の前記磁気ポテンシャルエネルギが、前記環状磁性経路に沿って周期的に、角度方向に変動して、前記環状磁性経路の角度区間(Pθ)を画定するよう配設され;
前記磁気結合要素は、前記磁性構造体の側に位置する活性端部を有し、
前記活性端部は、前記発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関しているものの前記磁気ポテンシャルエネルギとは異なる少なくとも1つの物理的パラメータを有する第2の磁性材料で形成され、また前記活性端部は、前記環状磁性経路に磁気結合され、これにより、前記共振子の共振モードのある1つの自由度に沿った発振を、前記磁性構造体又は前記共振子に印加される有効駆動トルク範囲内に維持し、また前記環状磁性経路の各前記角度区間における前記相対的な回転の間に、所定の整数回の前記発振が発生するようにして、前記発振子の周波数によって前記相対角速度が決定されるようにした、調節デバイスにおいて、
前記調節デバイスは:
前記環状磁性経路は、前記磁気結合要素の前記自由度に沿った寸法を有し、前記寸法は、前記自由度に沿った前記磁気結合要素の前記活性端部の寸法より大きいこと;
前記共振子は、前記活性端部の少なくとも大部分が、前記活性端部によって画定される幾何学的主平面への正投影において、前記発振の各期間における実質的に最初の1回の振動中に、前記環状磁性経路の中央を通過する幾何学的円によって横断されるように、前記磁性構造体に対して配設されること;
前記有効駆動トルク範囲内において、前記環状経路及び前記磁気結合要素は、各前記角度区間において、前記環状経路及び前記磁気結合要素の相対角度位置並びに前記結合要素のその自由度に沿った位置によって画定される前記環状経路及び前記磁気結合要素の相対位置に応じて、前記発振子の磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域(63,65)を画定すること;並びに
前記第2の磁性材料は、前記磁気結合要素に対する前記環状磁性経路の相対位置に関して前記環状磁性経路に少なくとも部分的に磁気結合される、前記第2の磁性材料の1つの領域において少なくとも、前記物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減するように配設され、かつ各前記角度区間内の前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域の少なくとも一部に対応すること
を特徴とする、調節デバイス。
前記磁気結合要素及び前記環状磁性経路は、前記相対的な回転の間、前記磁気結合要素が、前記磁気結合要素の静止位置の周りの自由度に沿ってインパルスを受けるよう配設され;
前記インパルスは、前記環状磁性経路に対する前記磁気結合要素の相対位置に応じて、かつ前記調節デバイスに送達される前記有効駆動トルク範囲に関して、前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域に隣接する中央インパルス領域に実質的に局在化されたインパルス領域(68,69)を画定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の調節デバイス。
前記磁性構造体は、前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域内の前記磁気ポテンシャルエネルギの平均角度勾配が、前記自由度に沿った前記インパルス領域における平均磁気ポテンシャルエネルギ勾配未満となり、かつ同一の単位となるように配設されることを特徴とする、請求項3に記載の調節デバイス。
各前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域(63,65)内の前記磁気ポテンシャルエネルギは、前記共振子の有効共振モードの自由度に沿って実質的に変動しないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の調節デバイス。
前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域に対応する各磁性領域における前記物理的パラメータの漸増又は漸減は、前記環状磁性経路の前記角度区間の20%より大きい前記回転軸に対する角距離に亘るものであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の調節デバイス。
前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域に対応する各磁性領域における前記物理的パラメータの漸増又は漸減は、前記環状磁性経路の前記角度区間の40%より大きいか又は略40%の前記回転軸に対する角距離に亘るものであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の調節デバイス。
前記物理的パラメータの前記変動は、前記発振子の前記磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域にそれぞれ対応する前記第1の磁性材料の複数の領域において、角度に関するもののみであることを特徴とする、請求項1に従属する請求項16に記載の調節デバイス。
前記発振子の各磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域に対応する前記第2の磁性材料の領域における前記物理的パラメータの前記変動は、主に前記結合要素の前記自由度に対して直交する方向であることを特徴とする、請求項2に記載の調節デバイス。
前記第1及び第2の結合要素は、前記環状磁性経路と共に、同一の前記ゼロ位置円を画定することを特徴とする、請求項16に従属する請求項21〜24のいずれか1項に記載の調節デバイス。
【背景技術】
【0003】
共振子と磁性ホイールとの間の磁気結合(磁気接続とも呼ばれる)を介して、ホイール(ロータとも呼ばれる)の角速度を調節するためのデバイスは、時計学の分野では古くから知られている。この分野に関連する複数の特許が、C.F.Cliffordの発明に関してHorstmann Clifford Magnetics Ltdに付与されている。特に特許文献1を挙げることができる。これらの文献に記載された調節デバイスは様々な欠点を有し、特に非等時性(等時性を有さないと定義される、即ち等時性の欠如)、即ちロータに印加される駆動トルクに応じたロータの角速度の有意な変動に関する問題を有する。この非等時性の原因は、本発明につながる開発に組み入れられてきた。これらの原因は、本発明に関する説明を読むことにより後で明らかとなるであろう。
【0004】
また、特許文献2、3、4から、共振子と、ディスクで形成されたホイールとの間の直接的な磁気結合を備えた磁気脱進機が公知である。特許文献2、3では、非磁性ディスクの矩形孔を高い透磁率を有する粉末又は磁化材料で充填している。このようにして2つの隣接した同軸環状経路が得られ、これらはそれぞれ、所定の角度区間で規則的に配設された矩形磁性領域を有し、第1の経路の前記領域は、第2の経路の前記領域に対して、前記角度区間の半分だけオフセット又は位相変移されている。このようにして、共振子の磁気結合要素又は磁気結合部材の静止位置(ゼロ位置)に対応する円の両側に交互に分布する磁性領域が得られる。この結合部材又は結合要素は、場合に応じて磁化材料又は高透磁率材料で作製された開ループによって形成され、この開ループの2つの端部の間でディスクが回転駆動する。特許文献4はこれの代替案について説明しており、ここではディスクの磁性領域は、高透磁率材料の独立した複数のプレートによって形成され、その後磁性共振子結合要素が磁化される。特許文献2、3、4に記載の磁性脱進機は、特に
図1〜4に基づいて以下に説明する理由から、等時性を有意に改善することはできない。
【0005】
図1は、特許文献2、3、4に記載されたタイプの磁性脱進機2を形成する発振子の概略図であるが、
図5に示す本発明の実施形態とよりよく比較できるようにするため、及び本発明による利益を客観的に実証するために、ホイール4の磁性歯14、16は、発振区間の半分に亘ってそれぞれ延在する環状セクタを画定する点、及び共振子のために丸型又は角型の端部を有する結合要素を選択する点について既に最適化されている。ホイール4は、第1の列の孔15によってそれぞれ分離された第1の列の歯14を有し、これらは第1の環状経路を形成する。このホイールは更に、第2の列の孔17によってそれぞれ分離された第2の列の歯16を有し、これらは共に第2の環状経路を形成する。歯14、16は高透磁率材料、特に強磁性材料で形成されている。これら2列の歯は、それぞれ同一の磁性材料で形成された外側リング18及び内側リング19によって接続されている。2つの環状経路は隣接しており、円20によってその範囲を画定されている。この円20は、ホイール4の全ての角度位置に関する、共振子6の磁石12の中央に位置するこの磁石12の静止位置に対応しており、即ち共振子が有する弾性変形エネルギが最小になる位置に対応している。
【0006】
共振子は、弾性定数と、共振子の質量及び構造によって定義される慣性10とによって定義される共振子の弾性変形能力に対応するばね8によって記号的に表されている。共振子は、磁石12が径方向に発振する少なくとも1つの共振モードにおいて、固有周波数で発振できる。共振子6のこのような概略的な図示は、本発明の範囲内において共振子6がいくつかの特定の変形例に限定されるものではないことを意味していることを理解されたい。本質的なことは、共振子が、
図1に示す例では角速度ωの反時計回り方向の駆動トルクによって回転駆動するホイール4の磁性構造体に共振子を磁気結合するための少なくとも1つの磁気結合要素12を含むことである。従って磁石12はホイール4の上側に配置され、円20上に位置するゼロ位置の付近で径方向に発振できる。磁性歯14、16は中央の円20の両側に交互に配置された磁気相互作用領域を形成するため、これらは、第1及び第2の角度経路それぞれの角度区間に対応する所定の角度区間P
θを有する波状磁性経路を画定する。共振子がホイールに対して磁気結合され、磁石12が、ホイールによって定義された波状磁性経路に沿って発振する場合、ホイールの角速度ωは実質的に、共振子の発振周波数によって定義される。
【0007】
図2は、ホイール4の一部における、発振子2の磁気ポテンシャルエネルギ(磁気相互作用ポテンシャルエネルギとも呼ばれる)の概略図であり、これはホイールの磁性構造体によって角度方向及び径方向に変動する。等位線22は、様々な磁気ポテンシャルエネルギのレベルに対応している。これらは等ポテンシャル曲線を画定する。所定の地点における発振子の磁気ポテンシャルエネルギは、磁性共振子結合要素がある所定の位置にある(前記結合要素の中心がこの所定の位置にある)場合の発振子の状態に対応する。これは1つの定数の範囲内として定義される。一般に、磁気ポテンシャルエネルギは、関連するデバイス(この場合は発振子)の最小ポテンシャルエネルギに対応する基準エネルギに対して定義される。散逸性の力が存在しない場合、このポテンシャルエネルギは、磁石を最小エネルギ位置から所定の位置へと移動させるために必要な仕事に対応する。関連するデバイスが発振子である場合、前記仕事は、ホイール4に印加される駆動トルクによって提供される。磁石がホイールの回転軸に対する径方向運動によって(即ち有効共振モードの自由度に従って)、低エネルギ位置、特に最小エネルギ位置へと復帰すると、発振子に蓄積されたポテンシャルエネルギを共振子へと伝達できる。散逸性の力が存在しない場合、このポテンシャルエネルギは、共振子結合要素と磁性構造体との間の磁力の作用により、共振子において運動学的エネルギ及び弾性エネルギに変換される。以上が、ホイールに供給された駆動トルクを用いて共振子の発振を維持し、これによってホイールの角速度を調節することでホイールを制動する方法である。
【0008】
外側環状経路は、交互になった最小エネルギ領域24及び最大エネルギ領域25を画定し、その一方で内側環状経路は、第1の経路に対して角度区間の半分P
θ/2だけ位相変移した状態で、交互になった最小エネルギ領域28及び最大エネルギ領域29を画定する。
図3は、発振子2が動作中であり、従ってホイール4が角速度を調節された状態で回転駆動されている間の磁石12の中心位置を表す、2つのアウトライン32、34を示す。従ってこれらのアウトラインは、ホイールと関連する参照系の範囲内における磁石の2つの異なる振幅の発振を表している。磁気ポテンシャルエネルギの等位線22及び発振32、34を調べることにより、発振子が振動の度に磁気ポテンシャルエネルギを蓄積領域26、30に蓄積することが分かる。共振子磁石に印加される力は、磁気ポテンシャルエネルギの勾配によって表され、この勾配は等位線22に対して垂直である。角度成分(ホイールの自由度)は、径方向成分(共振子の自由度)が共振子結合部材に作用している間、反力としてホイールに作用する。蓄積領域では、角度方向の反力がホイールの回転方向に対向するため、角度方向の力はホイールの制動力に対応する。蓄積領域において磁力が基本的に角度方向である場合、発振子における磁気ポテンシャルエネルギの蓄積は「純粋(pure)」であると言うことができる。
【0009】
図2、3では、純粋蓄積領域は、略環状の領域Z1
ac*、Z2
ac*を画定する。そして蓄積されたエネルギは、中央インパルス領域ZC
imp*において共振子へと伝達される。中央領域ZC
imp*、より正確には磁石の発振が通過するインパルス領域では、磁気ポテンシャルエネルギの勾配は、ホイールの回転と共に漸増する径方向成分を有するが、その一方で角度成分は減少し、最終的にはゼロになる。この勾配は、磁石に対する推力に対応しており、従ってインパルスに対応している。振幅が比較的大きい場合(発振32)、前記推力は、点PE
1と点PS
1との間の中央領域の幅全体に亘って印加されることに留意されたい。振幅がより小さい場合(発振34)、中央領域ZC
imp*を通過する経路は、点PE
2と点PS
2との間の、比較的大きな角距離に亘って延在し、中央領域の交差部分の前半(およそ中央の円20まで)においては発振が実質的に存在せず、交差部分の後半においてのみ、比較的低いエネルギのインパルスが見られる。
【0010】
一般に、「蓄積領域(accumulation area)」は、有効駆動トルク範囲の様々な発振振幅に対して、発振子内の磁気ポテンシャルエネルギが増大する領域を意味し、「インパルス領域(インパルス area)」は、有効駆動トルク範囲の様々な発振振幅に対して、前記磁気ポテンシャルエネルギが減少し、磁性推力が共振子結合要素に対して1つの自由度に沿って印加される領域を意味する。「推力(thrust force)」は、発振する結合部材の運動方向への力を意味する。従ってこの推力は蓄積領域内に既に存在しているものの、本明細書の記載では、インパルス領域は蓄積領域の外側にあるものとする。
【0011】
図2、3に示す等位線を理解するためには、発振子2の実施形態のある重要な態様について、これを機能的なものとするために考察する必要がある。特に時計学の分野では、香箱が供給する駆動トルクは、主ゼンマイの張力のレベルに応じて有意に変動する。時計ムーブメントが十分に長期間に亘って動作することを保証するために、通常は、最大トルクと最大トルクの約半分との間で変動するトルクによってムーブメントを駆動できるようにする必要がある。更に、当然のことながら、最大トルクでの適切な動作を保証することも必要である。実際には、このような動作を保証し、特に発振子が比較的大きな振幅において非連結状態となってしまうのを防止するために、ある特定の角距離に亘って制動領域26、30を延在させる必要があり、これによって制動は必然的に漸進的なものとなる。このような状態は、部分的にホイールの主平面に投影された共振子の磁性結合部材又は要素の角度範囲、及び前記部材とホイールの環状経路の(より広くはロータ又は回転ホイールセットの)磁性構造体との間の比較的大きい空隙に由来する平均化効果によって、従来技術の発振子を用いて得られるが、これは最適な様式ではない。
【0012】
前記平均化は、磁性構造体の面積(そのサイズは、前記主平面に対して平行な磁石の端面のサイズ及び前記空隙のサイズと共に増大する)全体に亘って延在する結合された磁場全体を積分することによって得られる。従って、関連する磁性構造体の開口部に隣接する磁性歯の垂直なフランクは、磁気ポテンシャルエネルギ空間において、前記平均化効果によって増大する角度距離に亘って延在する等位線22を与える。ここで分析したケースは、ホイールの主平面に対して平行な円形又は正方形断面を有する磁石を用いた。この断面に関して選択された寸法、及び選択された空隙は、中央インパルス領域の径方向距離が既に僅かに制限された状態で、制動パッド26、30が十分に広範囲に亘るものとなることを保証するため、発振子の動作のための上述の従来技術によるデバイスよりも好ましい構成を提供する。
【0013】
以上で考察した発振子の挙動を、ホイールに印加される駆動トルクに従って分析すると、このような調節デバイスには少なくとも2つの欠点が観察される。まず、駆動トルクの値の範囲が比較的小さく、有意な非等時性が存在する。これは
図4のグラフに示されており、このグラフは、ホイールに印加される相対トルクM
rot/M
maxに対するホイール4の相対角速度誤差(ω−ω
0)/ω
0(ω
0は公称角速度である)を示したもの(共振子の品質係数は約200)である。角周波数ω
0は、有効共振子の発振の固有周波数F
resと、式ω
0=2πF
res/N
Pによって数学的に関連付けられ、ここでN
Pは、第1及び第2の環状経路の角度区間の数である。様々な点36は、時計用途にとって高い非等時性に対応する曲線38を画定する。実際には、5・10
-4の相対誤差は、極めて重大な、即ち1日あたり約40秒(40s)もの誤差に相当する。次に、点40によって明らかにされているように、相対トルクが80%(0.8)に近づくと、発振子の挙動に不安定性が観察される。従って、時計ムーブメントのために1日あたり10秒未満の精度を得るためには、相対トルクを0.6(60%)〜0.8(80%)という狭い範囲内に維持しなければならない。実用上、時計ムーブメントは、許容可能な最大トルクがホイール4に印加される最大トルクに相当するように考案する必要があり、従ってこの実際的なケースにおいては、前記トルクを80%超に維持しなければならないことになる。この下限に近づくと非等時性が急速に上昇し、下限を通過すると非等時性は異常なものとなる。これは、上述のような磁気脱進機が数十年前から公知であったにもかかわらず成功しなかった1つの重要な理由を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図5〜10を参照して、互いに対して磁気結合されて発振子42を画定する磁性構造体44と共振子46との間の相対角速度ωを調節するためのデバイスの第1の実施形態について説明する。この調節デバイスは有利には、磁気脱進機を形成する。磁性構造体は、磁性構造体の回転軸51上にセンタリングされた第1の環状磁性経路52及び第2の環状磁性経路53を有し、これらは、発振子42の磁気ポテンシャルエネルギEP
mと相関しているもののこれとは異なる少なくとも第1の物理的パラメータを有する磁性材料45で形成されている。回転軸51は磁性構造体の主平面に対して垂直である。前記磁性材料は各環状磁性経路に沿って配設され、これにより物理的パラメータは角度方向に周期的に変動して、磁性経路の角度区間P
θを画定する。なお別の実施形態では、第2の環状磁性経路は、前記磁性材料の別の物理的パラメータの周期的変化を有していてもよく、又は特定の変形例では、これもまた発振子の磁気ポテンシャルエネルギEP
mと相関している別の磁性材料の別の物理的パラメータの周期的変化を有していてもよい。なお、問題となっている物理的パラメータは、磁性構造体と共振子結合部材との間の相対角度位置θとは独立した磁性構造体に固有のパラメータである。しかしながら、この物理的パラメータは、結合部材の空間的位置決めと関連する幾何学的パラメータであってもよい。特に、環状磁性経路内部の所定の半径に関して、この物理的パラメータは、磁性構造体と結合部材との間の相対的な回転中の、磁性構造体と関連する参照系における、磁性材料表面と、結合部材の、その自由度の対応する位置にある活性端部の質量中心によって画定される円との間の距離である。ここで考察するケースでは、一般に磁性構造体と関連する参照系において、物理的パラメータは環状磁性経路と回転表面との間の距離であり、前記回転表面は、磁性構造体の回転軸を回転軸とし、結合要素の前記自由度をこの回転表面の直線母線とするものである。この距離は、磁気結合要素と問題となっている環状磁性経路との間の空隙に、1つの定数の範囲内で略対応する。
【0032】
共振子は、磁性構造体44への磁気結合のための部材又は要素を有する。この結合要素又は部材は、ここでは円筒形又は平行六面体状の磁石50で形成される。更にこの共振子は、弾性定数によって定義される弾性変形能力を表すばね47と、その体積及び構造によって定義される慣性48とによって、符号で表されている。磁石50は、ここでは共振子の最小弾性変形エネルギに対応するその静止位置において、磁石に対する磁性構造体の角度位置θ全てに関して、磁性構造体と対向する結合要素の活性端部の質量中心が、実質的にゼロ位置円20上に位置するように、磁性構造体に対して位置決めされる。「活性端部(active end portion)」は、結合要素の、問題となっている磁性構造体の側に位置する端部を意味し、これを通って結合要素と磁性構造体の間を結合磁束が流れる。ゼロ位置円は、回転軸51上にセンタリングされており、また第1の環状経路の内径及び第2の環状経路の外径に略対応する半径を有し、前記内径及び外径はここでは一致している。換言すると、ゼロ位置円20は、これら2つの同軸の隣接した磁性経路間の境界線によって画定され、即ちこの幾何学的円は、磁性構造体の主平面上における前記ゼロ位置円の投射に対応する。ある変形例では、これら2つの磁性経路は離間しており、全体が同一の媒体で形成された中間領域によって隔てられている。後者の場合、ゼロ位置円は、2つの磁性経路の間の、中間領域の略中央に位置する。このタイプの中間領域は、発振子の容易な動作開始を保証するために有用であり得るが、その幅は様々な理由から小さく維持されることになる。その第1の理由は、結合要素を略ゼロ位置円上に残したまま、発振子が「アイドリング状態」となるのを防止しなければならないことから、ある自由度に沿って回転軸に対して径方向に結合要素に設けられた小さな寸法に関連する。別の理由は、ゼロ位置円に近接し、好ましくはゼロ位置円上にセンタリングされた局所的なインパルスを得ることが目的であるためである。
【0033】
図6A、6Bは、第1の環状磁性経路の中央及び第2の環状磁性経路の中央をそれぞれ通過する2つの円の2つの断面図を示す。これら同軸の第1の環状磁性経路52及び第2の環状磁性経路53は、前記角度区間の半分に等しい角度変移、即ちπ(180°)の位相変移によって隔てられている。図示した変形例では、問題となっている物理的パラメータは、まず、磁石50と、高透磁率材料、特に強磁性材料で形成された磁性材料45との間の空隙に関連する。別の変形例では、磁性材料は、磁石50に対する牽引のために配設された磁化材料であることに留意されたい。別の物理的パラメータ、即ち高透磁率材料の厚さ又は上述の他の変形例では磁化材料の厚さもまた、付随して変動する。より具体的には、環状経路52は、磁性材料が最大厚さを有する環状セクタ54と、磁性材料の厚さが磁石50に対する磁性構造体44の回転方向と対向する方向に漸減する環状セクタ56とを交互に有する。ここに示した変形例では、各セクタ56の角距離は、各セクタ54の角距離と略等しく、その値は実質的に、前記角度区間の半分P
θ/2である。別の変形例では、磁性経路の磁石及び前記結合要素を形成する共振子の磁石は互いに反発するよう配設されている。この変形例では、上述のものと同等の効果を得るために、磁性材料の厚さは各セクタ56において、磁石50に対する磁性構造体の回転方向と対向する方向に漸増する。
【0034】
環状セクタ56では、その厚さは距離V
Pに亘って、最大厚さから略ゼロ厚さまで減少するが、以下に説明するようなその他の厚さも可能である。厚さの変動は、磁石50と、磁石50を牽引するために設けられた、高透磁率材料又は磁化材料で形成された磁性材料45との間を連結する磁場に関する平均空隙の変動を引き起こす。この平均空隙は、各環状セクタ56の角距離に略対応する特定の角度範囲に亘って、磁石50に対する磁性構造体44の回転方向と対向する方向に漸増する。結合要素50及び空隙の広がりがゼロでないことによって起こる、平均化(本発明の文脈では、この平均化は平均空隙の変動も引き起こす)に関する明確性の問題を回避するために、結合部材の活性端部の質量中心と磁性経路との間の、問題となっている磁性経路の主平面に対して垂直な軸に沿った空隙の変動について言及する。
図6A、6Bでは、磁性経路に対向する磁石50の底面は活性端部であり、この底面の幾何学的中心は質量中心である(幾何学的中心と質量中心とはここでは軸方向に整列しているため)。環状経路53は、環状経路52と同様に、磁性材料45が最大厚さを有する環状セクタ55と、磁性材料の厚さが漸減する環状セクタ57とを交互に有する。この環状経路53は環状経路52と略同一であるが、これらは前記角度区間の半分P
θ/2だけ変移されており、これにより既に説明したような磁石50のための波状の磁性経路を形成する。問題となっている物理的パラメータは、ここでは磁石と各環状磁性経路との間の空隙、即ち磁性材料の上面と磁石50の底面との間の距離に関連するが、この物理的パラメータは磁性構造体の特定のパラメータに対応する。実際には、問題となっている物理的パラメータは、磁性構造体の主平面に対して平行な平面59までの距離である。更にこの主平面は、磁石の発振移動軌跡に対して平行でもある。
【0035】
図示していない他の変形例によると、磁性構造体は、2つの上述の物理的パラメータのうち一方又は他方のみ、即ち共振子の磁気結合要素と磁性構造体との間の空隙又は前記磁性構造体の厚さのうち一方又は他方のみが変動するように配設してもよいことに留意されたい。例えば磁性構造体44に対して面対称移動を実施する(これは磁石50の位置を変動させることなく磁性構造体44を反転させることを意味する)ことにより、厚さのみが変動する場合、磁化材料の厚さに応じて磁束強度を容易に変動させることができるため、厚さのみに相関する磁気ポテンシャルエネルギの変動が磁化材料に特に印加されることになることに留意されたい。結合要素は特定の寸法を有するため、前記厚さは、問題となっている磁性経路の、磁性経路の主平面に対して垂直な、結合部材の活性端部の質量中心を通る軸に沿った厚さとして定義される。高透磁率材料の場合、厚さの単純な変動は更に制限される。実際には、問題となっている厚さの範囲は、磁束が流れる磁性材料の可変断面の少なくとも一部において磁束が飽和する状況に対応しなければならない。もしそうでなければ、厚さの変動は発振子の磁気ポテンシャルエネルギに何ら有意な影響を及ぼさないことになる。
【0036】
磁石50は、共振子46の共振モードの1つの自由度58に沿った発振71又は72(
図8)が、磁性構造体に印加される有効駆動トルク範囲内に維持されるように、第1及び第2の環状経路に結合される。発振周波数は、相対角速度ωを決定する。(
図5、7、8の平面に対して平行な)磁性構造体の主平面への投影において、発振71又は72は、それぞれ第1の環状経路52上に重なった第1の領域内の第1の振動71a又は72a、及び第2の環状経路53上に重なった第2の領域内の第2の振動71b又は72bを有する。一般に、共振子結合要素の自由度は、磁性構造体への磁気結合中の、磁気結合要素の発振の第1の振動又は第2の振動における磁気結合要素の移動軌跡が、第1の環状磁性経路又は第2の環状磁性経路の幾何学的主平面に対して略平行となるように選択される。
図5及び以下に説明する
図11に特に対応する第1の主要実施形態では、(1つ若しくは複数の)環状磁性経路によって又は一般に磁性構造体によって画定される幾何学的主平面は、磁性構造体の回転軸に対して垂直な主平面である。
図5、11に示す実施形態では、共振子の自由度は全体として前記主平面に対して平行な平面内にある。よって、磁性結合要素の発振中の移動軌跡全体は、ここでは磁性構造体の主平面に対して平行である。以下に説明する
図28、29に対応する第2の主要実施形態の変形例では、2つの環状磁性経路は、ディスクの側壁を形成し、中心軸が磁性構造体の回転軸となる円筒形表面である幾何学的主表面を画定する。なお、例えば幾何学的主表面が円錐形である磁性経路といった、その他の構成も考えられる。変形例では、発振要素の移動軌跡は実質的に、磁性構造体によって画定される主平面に対して平行な平面内となり;前記移動軌跡は、特に振幅が大きい場合、特に発振の終点において僅かに発散し得る。このような状況は、例えば共振子結合要素が、磁性構造体の主平面に対して平行な回転軸を有する略円形の移動軌跡に沿って発振する場合に起こる。このような場合、好ましくは結合要素の静止位置における自由度によって画定されるその方向は、結合要素の静止位置における活性端部の質量中心の正投影に対応する点において前記幾何学的主平面に接する平面に対して実質的に平行となる。
【0037】
図7、
図8は、磁性構造体44の一部上における発振子42の磁気ポテンシャルエネルギEP
mを示す概略図であり、この磁気ポテンシャルエネルギEP
mは、磁性構造体、即ち2つの環状経路52、53に従って変動する。ここでは、磁力が引力である変形例、特に強磁性材料で形成された磁性構造体に対する引力である変形例について説明する。
図2、3を参照して説明したように、等位線60は、磁気ポテンシャルエネルギの様々なレベルに対応する。
【0038】
図9A、
図9Bは、それぞれ2つの環状磁性経路52、53それぞれの中央に沿った磁気ポテンシャルエネルギのプロファイルを示し;
図9Cは、共振子46の自由度に対応する軸X(
図7)に沿った、磁気ポテンシャルエネルギの径方向プロファイルを示す。共振子結合要素を形成する磁石と反発するように設けられた磁石によって形成された磁性経路を用いて、
図7、8、9A〜9Cに記載したものと同様の状況が得られることに留意されたい。この変形例では、空隙及び/又は磁化材料の厚さの変動は、上述の変形例、特に
図6A、6Bに示す変形例に対して反転する。従って、環状経路は、磁化材料が最小厚さ(ゼロを含む)を有する環状セクタと、磁化材料の厚さが磁石50に対する磁性構造体の回転方向に対向する方向に漸増する環状セクタとを交互に有し、後者の環状セクタは、発振子に磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域を生成する。
【0039】
磁性構造体44を支持するロータに印加される有効駆動トルク範囲において、各環状磁性経路52、53は、各角度区間P
θにおいて、発振子内の有効磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域63又は65を含む。これらの領域63、65は、それぞれ実質的に、第1の環状エネルギ蓄積領域Z1
ac及び第2の環状エネルギ蓄積領域Z2
acに位置する。「有効蓄積領域(useful accumulation area)」は、一般に(有効駆動トルク範囲に対応する)与えられる振幅の全範囲内で様々な振幅で発振する磁石50の磁場が走る領域を意味し、この領域において発振子は、主に後に共振子に伝達されることになる磁気ポテンシャルエネルギEP
mを蓄積する。よってこの領域は、共振子結合要素の、最小の有効トルクに対応する最小発振振幅及び最大の有効トルクに対応する最大発振振幅によってその範囲を画定される。
図7に示す好ましい変形実施形態によると、各有効蓄積領域内の磁気ポテンシャルエネルギは、共振子の有効共振モードの自由度に沿って実質的に変動しない。よって、勾配EP
mは主に有効蓄積領域における角度であり、この角度勾配は、磁性構造体上に作用して全体として制動トルクを生成する制動力に対応する。従って第1の環状領域Z1
ac及び第2の環状領域Z2
acは、ここでは純粋な磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域である。これらの図では、磁気ポテンシャルエネルギは、結合要素の活性端部の質量中心に対応する結合要素のある位置に関して、局所的に図示されていることに留意されたい(結合部材に関して問題となる様々なパラメータに関して同一の基準点が確実に維持される場合は、このような他の基準点を設けてもよい)。よって、蓄積領域及び以下に説明するインパルス領域は、結合要素の活性端部の質量中心の位置を用いて画定され、表される。
【0040】
第1の環状領域Z1
ac及び第2の環状エネルギ蓄積領域Z2
acは、インパルス領域68、69によって画定された中央インパルス領域ZC
impによって隔てられており、インパルス領域68、69では、従来技術に関して既に説明したように、駆動トルクに応じて共振子へのエネルギの伝送が行われる。各インパルス領域68、69は、上述の最小発振振幅と最大振幅との間の様々な発振振幅に関して、磁石50の磁場が走る領域によって画定される。中央インパルス領域は、この中央インパルス領域の略中央に位置するゼロ位置円20を有する。ゼロ位置円は、共振子と磁性構造体との間の相対的な回転中に磁性構造体上に得られる静止位置における結合部材の基準点(ロータ/磁性構造体の極座標の関数として空間内の磁気ポテンシャルエネルギの等ポテンシャル曲線を確立するために使用される基準点)によって描かれる円として定義される。好ましくは、共振子結合部材は、ゼロ位置円が前記結合要素と関連するインパルス領域全ての中央を実質的に通過するように、回転軸に対して径方向に配設される。円Yは、領域Z1
acと領域ZC
impとの間の境界線を画定する。この円Yは、磁性構造体44の回転軸上にセンタリングされ、半径R
Yを有する。
【0041】
図9Cでは、曲線76はEP
mの径方向プロファイルに対応する。この曲線76は、インパルス領域69の幅Z
0を与え、この幅は、インパルス領域68の幅及び中央インパルス領域ZC
impの幅に略対応する。
図9Cは、また有効エネルギ蓄積領域それぞれの幅Z
1、Z
2も与える。これらの幅Z
1、Z
2は、調節デバイスに供給される有効駆動トルク範囲に関する最大振幅発振によって定義される。
図9A、9Bでは、曲線74は、領域Z1
acの略中央におけるEP
mの角度プロファイルを与え、一方で曲線75は、領域Z1
acの略中央におけるEP
mの角度プロファイルを与える。有効蓄積領域63、65は、低ポテンシャルエネルギの領域又は平坦域62又は64と、ここではピークによって定義される高ポテンシャルエネルギの領域又は平坦域との間の、磁気ポテンシャルエネルギの単調増加勾配によって特徴付けられ、これはここでは略直線状である。なお、外側環状経路52のピークの高さは、内側環状経路53のピークの高さより僅かに高くてよい。磁気ポテンシャルエネルギは磁性構造体44と相関しているため、曲線74、75は角度区間の半分P
θ/2だけ角度的に位相変移している。
【0042】
インパルス領域を通過して共振子へと伝送されるエネルギは、発振する磁気結合要素の、前記インパルス領域への入射点EP
IN1、EP
IN2と、前記発振部材の、インパルス領域からの出射点EP
OUT1、EP
OUT2との間のポテンシャルエネルギの差ΔEP
mに略対応する。低ポテンシャルエネルギ領域62、64の全てが略同一の定数値を有し、有効駆動トルク範囲内の発振全てが有効蓄積領域63又は65から低ポテンシャルエネルギ領域へと通過するとすると、インパルス領域を通過して共振子へと伝送されるエネルギは、磁性構造体の主平面への投影において点X
1を通る発振に関する点X
1と点X
2との間のポテンシャルエネルギの差ΔEP
m(
図9C)に略対応する。
【0043】
考えられる変形例において、上昇する磁気ポテンシャルエネルギ勾配は直線状でなくてもよく、例えば二次曲線であってよく、又は異なる傾斜を有する複数のセグメントを有してもよいことをまず注記しておく。次に、低ポテンシャルエネルギ平坦域62、64は、それぞれ他のポテンシャルエネルギプロファイルを有していてもよい。従って例えば、特定の変形例は、下降勾配又はランプ(ramp)と交互になった上昇勾配又はランプ(制動ランプ/ポテンシャルエネルギ領域)によって画定される磁気ポテンシャルエネルギの角度プロファイルを提供する。これらの下降勾配は、角度区間の半分以下に亘って延在していてよく、小さな低ポテンシャルエネルギ平坦域で終端していてもよい。これらの勾配は直線状であってよく、又は異なるプロファイルを有していてもよい。同様に、上昇勾配は、角度区間の半分とは異なる、特に小さい、又は大きい角距離に亘って延在してもよい。この点に関しては本発明の範囲内において、共振子の有効共振モードを維持すること、及びこれに伴い、この共振モードに対して、有効蓄積領域と受信領域との間のゼロ位置円近傍に非ゼロ角測長のインパルス領域、即ち発振結合部材のための通過領域が存在すること以外の制限はなく、前記有効蓄積領域及び前記受信領域は、ポテンシャルエネルギの差ΔEP
mが、各有効蓄積領域とこれに対応する受信領域との間の有効トルク範囲において、発振結合部材に対して正となるように構成される。
【0044】
従って磁性構造体44の磁性材料45は、前記角度区間内の有効磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域に対応する、磁性材料の1つの領域において少なくとも、磁性材料の問題となっている物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減することによって、各有効蓄積領域内の発振子の磁気ポテンシャルエネルギEP
mが、磁気結合要素に対する磁性構造体の回転中に角度方向に増大するように、各角度区間内に配設される。次に、ここで考察している実施形態に関して、また有効駆動トルク範囲のいずれの駆動トルクに関して、磁気結合要素は、インパルス領域のうちの1つを通過するに従って、共振子の発振区間の半分毎に、第1の環状経路又は第2の環状経路の有効蓄積領域から、低ポテンシャルエネルギ領域又は最小ポテンシャルエネルギ領域へと通過する。よってこの磁性構造体は、インパルス領域への結合要素の入射点と前記インパルス領域からの前記結合要素の出射点との間の、発振子の磁気ポテンシャルエネルギの差が、有効範囲のいずれの駆動トルクに対して正となるように配設される。
【0045】
図8と
図3(端部が円形又は正方形の結合要素を備える、最適化された従来技術の実施形態に対応する発振子)との間の差異について考察することにより、
図3において、エネルギ蓄積領域26、30内の磁気ポテンシャルエネルギの角度勾配が、中央インパルス領域ZC
imp*内の径方向勾配と略同様であることが分かる。しかしながら
図8では、端部が円形又は正方形の結合要素を用いても、エネルギ蓄積領域63、65内の磁気ポテンシャルエネルギの角度勾配は、インパルス領域68、69内の径方向勾配よりも大幅に小さい。本発明の範囲内において、磁性構造体のための制動力を画定する純粋蓄積領域における平均角度勾配は、インパルス領域における平均径方向勾配(より一般には共振子の有効共振モードの自由度に沿った平均勾配)よりも大幅に小さく、この平均径方向勾配は、磁石50上の推力を画定し、またこれに伴い、共振子の磁気結合要素(磁石50)のゼロ位置の周りの局所的なインパルスの形態の、共振子に伝達されるエネルギを画定する。この比較のために、平均角度勾配及び平均径方向勾配は、例えばジュール/メートル(J/M)等の同一の単位で計算する。反対に、ここで考察している従来技術の場合においては、中央インパルス領域の平均径方向勾配は、蓄積領域の平均角度勾配と略等しい。
図5〜9に示す実施例では、インパルス領域の平均径方向勾配に対するエネルギ蓄積領域の平均角度勾配の比は、領域Z1
acに関しては30%未満であり、領域Z2
acに関する値40%よりも小さいか又はこれに略等しい。
【0046】
一般に、磁性構造体は、磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域における発振子の磁気ポテンシャルエネルギの平均角度勾配が、共振子結合要素の自由度に沿ったインパルス領域における磁気ポテンシャルエネルギの平均勾配未満となり、かつ同一の単位となるように配設される。特定の変形例では、前記自由度に沿った平均勾配に対する前記平均角度勾配の比は、60%未満である。特定の変形例では、前記自由度に沿った平均勾配に対する前記平均角度勾配の比は、40%未満である。
【0047】
ここで、従来技術に関する
図2では、最大エネルギ領域から最小エネルギ領域まで通過するための角距離は、最小エネルギ領域から最小エネルギ領域までを所定の方向に通過するための角度距離と同一であることに留意されたい。従って、特に内側環状経路の最小エネルギ領域28は小さい。これは本発明の好ましい実施形態には当てはまらない。
【0048】
図7、
図8では、最小エネルギ領域62、64は、比較的大きな角距離に亘って延在し、最大エネルギ領域から最小エネルギ領域への遷移は、先行するエネルギ蓄積領域からの角距離よりも大幅に短い角距離に亘って達成される。インパルス領域における、及びこれに伴って最大エネルギ領域と最小エネルギ領域との間の遷移領域における強い勾配は、磁性構造体の主平面への投影における、結合要素の、共振子の有効自由度に対応する角度磁性経路の径方向における寸法が、従来技術のこれに対応する寸法と比較して削減されていることにより得られることに留意されたい。特に従来技術では、純粋蓄積領域の幅は中央インパルス領域の幅と略等しいか、又はこれより小さくさえあることに留意されたい。これにより有効駆動トルク範囲が小さくなり、また中央インパルス領域の幅が大きいことにより、エネルギの伝達が各発振の大部分に亘って達成されるため、共振子の妨害が比較的大きくなる。対照的に、本発明の特徴により、上述の平均化が不要になるだけでなく、発振子の有効自由度に沿っては望ましくないものにさえなり、従って可能な限り回避される。理論的に最適な場合において、平均化は省略され、これにより殆ど非ゼロの、そして極めて限定されたインパルス領域幅が得られる。実際には、共振子の有効自由度に沿った平均化の削減は、技術的に、及び磁石の磁場が特定の体積を占めるという事実によって制限される。
【0049】
本発明は、各磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域が延在する角距離が、平均化によって決定されるのではなく、問題となっている磁性材料45の物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減することにより、発振子の磁気ポテンシャルエネルギが、EP
mの有効蓄積領域に対応する前記磁性材料の各領域において、磁気結合要素に対する磁性構造体の回転方向に対向する方向に、角度方向に増大するという事実によって決定されるため、平均化効果が存在しないことによって発振子が機能しなくなることがもはや無いという点で特筆すべきものである。このようにして、磁気ポテンシャルエネルギ蓄積段階において、特定の距離に亘って分布するEP
mの制御された上昇が得られる。これは、駆動トルクが比較的高い場合に発振子が非連結状態となるのを防止して、同期を失うことなく比較的大きな動作範囲を得るために重要である。
【0050】
本発明の特徴によって、インパルス領域の幅とEP
mの有効蓄積領域の角距離とは本質的に独立したものとなる。従って、共振子に送達されるインパルスを、磁気結合要素のゼロ位置の近傍に制限でき、また、ポテンシャルエネルギの角度勾配が比較的小さくなり、従って角度θの関数としてのポテンシャルエネルギの傾斜が比較的なだらかになることにより、有効蓄積領域をより広範囲に亘るものとすることができる。共振子のゼロ位置周辺に局在化されたインパルスは、等時性を大幅に改善し、その一方で、駆動トルクが生成するエネルギの蓄積領域に関する比較的広範囲の角度範囲θ
zuにより、より広範囲の有効駆動トルク範囲、及びこれに伴ってより大きな動作範囲を得ることができる。なお、インパルスの局在化は、結合部材の径方向寸法が小さい場合に更に改善される。
【0051】
ロータに送達される相対トルクM
rot/M
maxの関数としての、磁性構造体44を支持するロータの相対角速度誤差の複数の点80を示す
図10(品質係数Q=200)において、本発明の便益が明らかである。相対駆動トルクが50%を超えると殆ど垂直になる動作曲線82が得られる。従って発振子は、50%〜100%の範囲に亘って極めて低い非等時性で動作し、これが40%まで低下した場合、1日あたりの誤差は約4秒(4s)程度である。よって、以上の考察により、従来技術の問題の原因及び本発明から得られる有意な利点が明らかである。
【0052】
変形実施形態によると、インパルス領域の径方向寸法(幅Z
0)と、有効蓄積領域の径方向寸法(Z
1又はZ
2)との間の比は、50%未満であるか又は略50%である。有効蓄積領域の「径方向寸法(radial dimension)」は、有効最大駆動トルクに関する1回の振動に亘る磁気結合要素の発振の最大振幅A
maxを意味し、インパルス領域の幅の半分未満、即ち実質的にZ
2=Z
1=(A
maxZ
0/2)である。上述の比は、調節デバイスの他のパラメータ、例えばZ
0/2A
maxによって定義してもよく、ここで2A
maxは、環状磁性構造体の主平面への投射における発振子の最大振幅によって画定される距離R
maxR
min(1つの区間におけるピーク間距離)に等しい(
図8参照)。従ってこの第1の変形例に関して、比Z
0/(R
maxR
min)は20%未満であるか又は略20%である。第2の好ましい変形例によると、上述の比Z
0/Z
1は30%未満であるか又は略30%である。
【0053】
第3の変形実施形態によると、各磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域における磁性材料の物理的パラメータの漸増又は漸減は、磁性構造体の環状経路の角度区間(ラジアンでP
θ)の20%より大きい角距離(ここではラジアン角で考える)に亘るものである。第4の好ましい変形例によると、前記角度区間に対する第1の物理的パラメータの変動の角距離の比は、40%を超えるか又は略40%である。
【0054】
図11、12を参照して第2の実施形態を以下に説明するが、この第2の実施形態は、発振子84の磁性構造体86が単一の磁気結合要素(磁石)及び単一の環状経路88を含み、ここで前記経路を形成する磁性材料45の物理的パラメータは周期的に変化するという一般的性質を有する。第1の実施形態の外側環状経路に関連する上述の説明の大半が、環状経路88にも当てはまる。この環状経路及びこれに関連する磁気ポテンシャルエネルギの特徴については、ここで再び詳細に説明しない。磁性構造体86は更に、磁性材料45によって連続的に形成された第2の環状経路90を有する。この第2の経路は、環状経路88の環状セクタ52によって画定される低磁気ポテンシャルエネルギ領域と実質的に等しい値を有する環状最小磁気ポテンシャルエネルギ領域を画定する。なお、ある変形例では、環状経路90を、環状経路88に隣接する発振磁石50の下側に配置されかつ共振子46に対して固定された磁性材料の単一のプレートで置換できる。第1の実施形態においてと同様に、共振子46のゼロ位置円20は、実質的に2つの環状経路の境界線Y
0に位置する。円Yは、実質的に環状セクタ56によって画定されたEP
mの有効蓄積領域と、前記有効蓄積領域と上述の環状最小磁気ポテンシャルエネルギ領域との間のインパルス領域との間の境界線に対応する。
【0055】
原理的には、第2の実施形態は、第1の実施形態に関して上述したものと同一の利益を有する。しかしながら、発振磁気結合要素50が環状経路88から均一の環状経路90へと通過する場合に、共振子に対して常に同一方向に、経路88の角度区間P
θあたり1つのインパルスが与えられる。経路90の上側の発振の振動は、共振子と磁性構造体との間の相互作用にいずれの変動もなく発生し、従って振動は自由である。
図12は、発振磁気結合要素を通る円形軸Yの交差に応じた、EP
mの差(ΔEP
m)を示す。なお、曲線94は、発振子84において維持できる関連する共振モードの複数の発振のセットを単に実際に表している。この複数の発振のセットは本質的に、ΔEP
mの有効範囲R
Uによって決定される円形軸Yの範囲R
Y内に位置し、この範囲R
Uは、磁性構造体86が送達する有効駆動トルク範囲に対応する。
【0056】
上述の2つの実施形態において、各環状磁性経路の径方向寸法、及びこれに伴って共振子の自由度に沿った寸法は拡張され、その一方で共振子の各結合部材の寸法は、磁性構造体の回転軸に対して径方向に削減されることに留意されたい。これら2つの実施形態では、磁性構造体の環状磁性セクタの径方向寸法は、共振子の各結合部材の径方向寸法よりも大きい。特に、環状磁性セクタの径方向寸法は、振動の最大振幅(この場合結合部材が磁性経路に結合されている)に関して結合部材が全体的に磁性経路上に重なるように選択される。純粋磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域を有する好ましい変形例では、結合部材が、有効トルク範囲全体を通して、即ち結合部材が有する最大振幅までの全ての発振振幅に関して、ポテンシャル勾配が共振子の自由度に対して垂直となる。
【0057】
図13〜
図15は、本発明による磁性構造体の環状経路の3つの変形実施形態の概略図である。これらの変形例は、
図6A、6Bで既に説明した変形例の代替例を形成する。環状経路98は、高透磁率材料100の厚さが一定である環状セクタ54Aと、材料100の厚さが角距離V
Pに亘って段階的に漸減する環状セクタ56Aとを交互に有する。各環状セクタ56Aは、複数の段差を有する階段状構成を形成する。この階段状構成では、段差の上面と、環状経路98の主平面に対して平行な平面59との間の距離が、段階的かつ漸進的に変動する。この階段状構成は、上述のように有効ポテンシャルエネルギ蓄積領域を形成するポテンシャルエネルギの単調増加勾配又はランプEP
mを形成する。材料100の問題となる物理的パラメータは、磁石50とこの材料との間の空隙に対応する幾何学的平面59までの距離である。ある変形例では、磁性材料は磁化材料で形成される。磁性構造体の厚さの変動に寄与する経路52、54のプロファイルに関して行った上述のコメントはこの変形例にも当てはまり、また結合要素及び磁性経路が磁化材料で形成される変形例における牽引又は反発構成に関する上述のコメントも同様である。
【0058】
図14の変形例の環状経路102は、一定の厚さの強磁性材料100を有するが、周期的な複数の孔104を備える。孔を有さない環状セクタ54Bは、最小磁気ポテンシャルエネルギ領域を形成する。環状セクタ56Bはそれぞれ、角距離V
Pに亘ってその密度及び/又は断面積が変化する複数の孔を有する。図示した実施例では、同一の比較的小さい直径を有する複数の孔の密度は、漸進的に、連続的に、又はある変形例では段階的に増大する。ここでの強磁性材料の物理的パラメータは、磁性材料の平均透磁率である。
【0059】
図15の環状経路106は、厚さが一定の磁化材料108で形成される。環状セクタ54Cでは、磁化材料が生成する磁場110の強度は略一定である。対照的に、環状セクタ56Cでは、磁場110の強度は、牽引構成(図示した変形例)では角距離V
Pに亘って漸減するが、反発構成では漸増するよう構成されている。この変形例では、問題となる物理的パラメータは、磁化材料が環状磁性経路と回転表面との間で生成する磁場の磁束の強度であり、前記回転表面は、磁性構造体の回転軸を回転軸とし、磁石50の自由度を直線母線とするものである。ある変形例は、高透磁率材料で形成された別の結合要素(磁化された磁石の牽引構成と同様のケース)を提供する。磁気反発の使用には、衝撃を受けた場合に磁石50が環状経路106にくっ付くのを防止できるという利点がある。
【0060】
図16、
図17は、本発明による調節デバイスの第3の実施形態を示す。これは主に以下の特徴に関して第1の実施形態と異なる。発振子112は、直線ばね118によって固定点に接続されたアーム又はレバー120で形成された共振子116を有する。このアーム又はレバー120はその第1の端部において、磁性構造体114の回転軸51と平行な軸124の周りで回転し、その第2の端部には、磁性構造体114に結合された磁気結合要素122を支持する。この要素122は、強磁性材料製の部材125を有し、この部材125は側面がU字型又はC字型形状であり、その2つの分岐はそれぞれ磁性構造体114の上側及び下側に延在している。2つの分岐の各自由端部には2つの磁石126、127が設けられ、これらは、これらの間の空隙に伝播する2つの磁場が回転軸51に対して平行な同一の方向に主に配向されるように配向されている。これら2つの同軸磁石は、共に発振子112の磁気結合要素を形成する。共振子の自由度は円123上であり、この円123は半径がRであり、またアーム又はレバー120の回転軸124上にセンタリングされており、半径Rは、前記回転軸と、2つの磁石126、127の中央を通過する幾何学的軸との間の距離である。
【0061】
本発明の好ましい変形例に従って、有効蓄積領域において共振子116の自由度123に沿って実質的にゼロの磁気ポテンシャルエネルギ勾配EP
mを得るために、この第3の実施形態では、EP
mと相関する磁性材料45の物理的パラメータを、円123に対応する円の弧において略一定とする。換言すると、磁性構造体114の全ての角度位置θに関して、問題となる物理的パラメータは、磁性構造体の主平面への投影において磁石126、127の端部の質量中心が描く経路上において不変である。これは特にセクタ56D、57Dの場合であり、この場合、物理的パラメータが角度方向に変動して有効ポテンシャルエネルギ蓄積領域を画定する。従って、磁性構造体の2つの環状経路を形成するセクタ54D、56D、又はセクタ55D、57Dは、僅かにアーチ状の形状を有する。第1の実施形態に関して上述した様々な変形例を、この第3の実施形態にも適用できる。ここに示す変形例は、セクタ56D、57Dが複数の段差の階段状構成を有する変形例である。
【0062】
図18〜
図20を参照して、本発明の発振子の3つの変形実施形態について以下に簡単に説明する。
図18の発振子はホイール128で形成され、このホイール128はその周に環状磁性構造体98Aを有し、この環状磁性構造体98Aは、上面平面図では磁性構造体98(
図13)と同様であるが、
図13の円形軸上の対称面θに関して前記磁性構造体98を二重にしたものである。よって、各環状セクタ56Aは第1の階段状構成を有し、その下側に、第1の階段状構成の鏡像である別の階段状構成を有する。ホイール128は、非磁性材料製の中心コアを有する。共振子117は、上述の構造122と同様のC字型の磁気結合構造122Aを有する。しかしながらここでは、構造122Aは、強磁性材料の2つの分岐に接続された大きな磁石を有し、前記2つの分岐それぞれの2つの自由端部は、共に共振子を磁性構造体98Aに磁気結合する要素を形成する。
【0063】
図19では、発振子は、非磁性材料の中央コア及び環状磁性構造体106Aで形成されたホイール129を有する。この構造体106Aは、
図15の磁性構造体106と同様の機能を有するが、ここでは材料は磁性構造体106A全体に亘って均一に磁化されており、磁石が生成する磁場の強度の変動、及びこれに伴う結合した磁束の変動は、磁化リングの厚さの変動によって得られる。共振子119は、磁石を含まず、その磁気結合構造体122Bは高透磁率材料の開ループによって形成され、磁化構造体106Aは、このループの開口部を通過する点で特筆すべきものである。ループ122Bは、単に磁化構造体の磁場のための磁気抵抗が低い経路を形成する。別の変形例では、ホイール129を
図18の磁気結合構造体122A(牽引又は反発構成)と組み合わせることができる。
【0064】
図20では、発振子は強磁性材料の2つのプレート132、134で形成されたロータ130を特徴とする。下側プレート132は、その周囲に、上述したものと同様の、強磁性材料で形成された2つの環状経路52、53を有する磁性構造体を有する。上側プレート134は、下側プレートと同様のものであるが反転されており、即ち2つのプレートの中央の面を通る対称面に関する底部プレートの像である。従って、この上側プレートは、環状経路52、53と同様であるが、これらとは対向する2つの環状経路52A、53Aを有する。これら2つのプレートは中央領域において接合され、共振子46の磁石50の磁場のための、磁気抵抗が低い経路を形成する。なお
図18、
図20に示した変形例は、力が共振子結合要素に対して軸方向に印加されるのを防止できるという利点を有する。
【0065】
図21は、本発明による調節デバイスの更に別の変形実施形態を示す。このデバイスは、2つの磁性構造体106A、106Bを有し、これらは同軸であり、機械的に独立している(機械的手段によって、一体としてではない回転をする)点で特筆すべきものである。下側磁性構造体106Aは、
図19に記載したものと同様のホイール129によって支持され、このホイールは軸線51上に位置合わせされたアーバ140と一体である。上側ホイール142は、アーバ140の周りに自在に設置されたパイプ144に接続された非磁性材料と、構造体106Aと同様であるもののこれら2つのホイールの中央の面を通る対称面に関する構造体106Aの像である磁性構造体106Bとによって形成されている。共振子148は、ばね151と、非磁性材料のアーム150の端部に配設された強磁性材料の磁気結合要素149とによって表される。2つの構造体106A、106Bにおいて磁性は同一方向に設けられている。第1の変形例では、2つのホイール129、142はそれぞれ同一の機械的エネルギ源、特に主ゼンマイによって駆動する。第2の変形例では、これら2つのホイールは、それぞれ2つの異なる機械的エネルギ源、特に時計ムーブメント内に配設された2つの香箱によって駆動させられる。磁性構造体に関して上述したその他の変形例は、ここでも提供可能である。なお、磁気結合要素はここでも磁石であってよい。
【0066】
図22は、本発明による調節デバイス152の第4の実施形態を示す。この実施形態は、特に、磁性構造体154が、上述のような交互の環状セクタ54、56で形成された単一の環状経路156を有する点で他とは異なる。なお、この実施形態及び以下に記載する実施形態では、上述の実施形態と同様に、斜線が付けられていないセクタが低磁気ポテンシャルエネルギ領域又は最小磁気ポテンシャルエネルギ領域に対応し、斜線付きのセクタが、本発明による磁気ポテンシャルエネルギが角度方向に増大する領域に対応する。これらの斜線付きのセクタでは、使用される磁性材料は、共振子磁気結合要素が環状磁性経路に磁気結合されている場合に、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関する少なくとも1つの物理的パラメータを有する。斜線を付けられていないセクタそれぞれの磁性材料は、問題となる物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減することによって、発振子の磁気ポテンシャルエネルギが、磁性構造体に対する共振子の意図した相対的な回転中に角度方向に増大するように配設されている。またこの実施形態及び以下に説明する第8の実施形態以外の実施形態では、磁性材料は、問題となる物理的パラメータが径方向には一定であるものの角度に関して漸進的に変動して、共振子結合要素の発振振幅に左右される比較的広範囲の制動各距離全体に亘って磁気ポテンシャルエネルギが漸進的に蓄積されることを保証するよう配設されることにも留意されたい。
【0067】
共振子158は、ヒゲゼンマイ162と関連する剛性テンプ160を備えたゼンマイ−テンプ型の共振子である。テンプは、特に従来の時計ムーブメントにおけるような円形等、様々な形状であってもよい。テンプは軸163の周りで枢動し、磁性構造体154の回転軸51に対して角度変移されている2つの磁気結合部材164、165(正方形の断面を有する磁石)を有する。これら2つの磁石164、165の角度変移及び構造体154に対するこれらの位置は、共振子が静止状態(非励起状態)となって、これら磁石が整数個の角度区間P
θに半区間分を加えたものに等しい角度変移θ
Dを有する場合に、これら2つの磁石が共振子のゼロ位置円20上となるように配設されている。従って、これら2つの磁石はπの位相変移を呈する。円20は、環状経路156の外側限界に略対応し、又はある変形例ではこの環状経路の内側限界に略対応する。好ましくは、テンプの回転軸163は、ゼロ位置円上の2つの結合部材164、165によって画定される2つの点に対するゼロ位置円20の2本の接線の交点に位置決めされる。なお、テンプは釣り合いがとれていることが好ましく、より具体的にはその質量中心がテンプの軸上にあることが好ましい。当業者は、この重要な特徴を有する様々な形状のテンプを容易に構成できるだろう。従って、図示した様々な異なる変形例は概略的なものであり、共振子の慣性の問題はこれらの図が含む具体的な項目によって対処されるのではなく、これらの図は本発明の様々な特徴を示すものであることが分かるであろう。更に、天真上に径方向及び軸方向に作用する磁力が結果的にゼロとなることが保証される構成が好ましい。ある変形例では、ゼンマイ−テンプの代わりに、仮想回転軸を画定する可撓性ストリップをテンプに設ける、即ちテンプが枢動しない。
【0068】
2つの磁気結合部材の存在により、共振子158は、これら2つの部材のいずれか一方によって環状経路156に連続的に磁気結合されることに留意されたい。各テンプ発振期間において、テンプは2回のインパルスを受ける。これらのインパルスを生成する物理的現象は、2つの磁石及び環状経路に関して上述したものと同一である。実際には、一方の磁石が環状セクタ56においてポテンシャルエネルギ勾配又は、ランプを上昇させて円20の方向に戻り、他方のマグネットはポテンシャルエネルギが最小の環状セクタ54の上側の位置に到達する。このようにして、この実施形態では2つの相互作用を組み合わせた効果が発生する。ある変形実施形態では、第2の実施形態と同様の様式で、高透磁率材料の単純なリングを環状経路156の外側に隣接させて設ける。このようにすると、この単純なリングはその表面全体に亘って、発振子に対して同一の低ポテンシャルエネルギを画定する。従って、このリングは、磁性構造体154と一体であってもよく、又は共振子158に対して固定して設けてよい。後者の場合、機能的に、軸51に対する2つの共振子磁石の2つの径方向にそれぞれ配設された2つの強磁性プレートで十分である。
【0069】
図23もまた別の変形実施形態を示し、この実施形態では、発振子168で形成された調節デバイスは、上述した磁性構造体44及び上述した共振子158を有する。この変形例は、環状経路156に対応する環状経路53に加えて第2の環状経路52を備える構成において、
図22の変形例とは異なる。この構成の結果として、各磁石164、165は、中央インパルス領域に入る際にインパルスを受ける。従って、
図22の変形例では、全体で1回のインパルスしか受けないのに対して、ここでは二重のインパルスが存在する。
図23の変形例は特に効率的であり、比較的広い動作範囲を有する。その結果、この実施形態は、上述の2つの実施形態の場合と同様に、
図22の変形例及び第1の実施形態と比べて、共振子と磁性構造体との間の二重の磁気結合を呈する。
【0070】
図24は本発明の第5の実施形態を示す。発振子172は、上述の構造体44と同様の磁性構造体44Aを有し、これは偶数個の角度区間P
θを有する。共振子174は、2つの発振分岐を有する音叉176で形成される。2つの分岐それぞれの2つの自由端部は、それぞれ回転軸51に関して直径方向に対向した2つの円筒形磁石177、178を支持する。角度区間P
θを偶数にするというこの選択の理由は、音叉の基本共振モードにおいてこれら2つの分岐が反対の相で、即ち対向する方向に発振するという事実に結びついている。各共振子磁石は、第1の実施形態に関連して上述したものと同様の磁性構造体44Aと相互作用する。従って、各磁石は発振の維持に寄与し、従って音叉176の振動の維持に寄与する。
【0071】
図25は、本発明の第6の実施形態を示す。発振子180は、主に共振子182の2つの磁石177、178がバー185によって堅固に接続されていること、及び磁性構造体44Bが奇数個の角度区間P
θを有することにより、先行する共振子とは異なる。各磁石は、基部186に繋留された弾性ピン183又は184の端部に設けられる。ある変形例では、前記2つの堅固に接続された磁石と共に、
図24と同様に音叉を使用できる。よって、共振子182の有効共振モードは、2つの磁石の間を堅固に接続したことによる、これら2つの磁石の同相発振を画定する。これが、ここで磁性構造体44Bが奇数個の角度区間P
θを含む理由である。各共振子磁石は、第1の実施形態に関連して上述したものと同様の磁性構造体44Bと相互作用する。従って、各磁石は対応する弾性ピンの発振の維持に寄与し、従って共振子182の振動の維持に寄与する。
【0072】
図26は、本発明による調節デバイス190の第7の実施形態を示す。この実施形態は、2つの共振子191、192に磁気結合された磁性構造体44Bを有し、これら2つの共振子191、192は、磁性構造体を介した磁気結合を除いて互いに独立している点で独特であり、かつ有利である。各共振子は、第1の端部に繋留されて磁石177又は178を支持する弾性ピン183又は184によって概略的に表される。従って、各共振子は固有周波数を有する。従って、磁性構造体44Bと一体のホイールの角速度ωに関して、2つの固有周波数の一種の平均化が存在し、磁性構造体44Bは追加の微分関数を有する。2つの選択した固有周波数は、近いか又は実質的に同一でなければならないことは明らかである。しかしながら2つの発振子は、周囲条件が変動した場合に好ましくは一方が他方のドリフトを補償するように、周囲条件に対して異なる様式で反応してもよい。なお、2つの発振子は対向する方向に配向され、これによってこれらの方向への重力の影響を補償できる。ある変形例では、2つの他の共振子を、
図26に示す2つの共振子に対して垂直な方向に沿って対向する方向に設け、これによりこの垂直方向の重力の影響を補償できる。
【0073】
図27は、本発明の第8の実施形態を示す。調節デバイス196は、主に2つの具体的な側面において先行する複数の実施形態とは異なる。まず、磁性構造体198は、支持体又はプレート200上に固定して設けられ、その一方で2つの発振子191A、192Aは、2つの剛性アーム205、206を含むロータ202に供給される駆動トルクによって角速度ωで回転駆動され、前記2つの剛性アーム205、206それぞれの自由端部に2つの発振子が配設される。駆動トルクが印加されるデバイスに関するこのような反転は、(1つ又は複数の)共振子と上述の(1つ又は複数の)磁性構造体との間の磁気相互作用を全く変化させないため、このような反転は他の実施形態の変形例として実装できることに留意されたい。なお、ここでは、磁性構造体198を備える発振子をそれぞれ画定する2つの共振子が提供される。しかしながら別の変形例(図示せず)では、単一の共振子が提供される。
【0074】
本実施形態の第2の特定の態様は、磁石177又は178がゼロ位置円20と交差する場合に、発振がロータ202の回転軸51Aに関して径方向とならない、という事実に由来するものである。上述の複数の実施形態と同様に、各共振子の結合要素の自由度は実質的に、共振子の弾性ピンの長さLと略等しい半径を有し、共振子アーム上のピンの繋留地点にセンタリングされた円上に位置する。本発明の好ましい変形例に従って、磁気ポテンシャルエネルギ勾配EP
mの有効蓄積領域において、各共振子(2つの共振子は幾何学的軸51Aの周りで軸対称である)の自由度に沿って実質的にゼロのEP
mを得るために、本実施形態は、磁性構造体198の磁性材料の物理的パラメータが、結合要素によって画定される前記幾何学的円に対応する円の弧において略一定となることを提供する。換言すると、ロータ202の全ての角度位置に関して、問題となる物理的パラメータは、固定された磁性構造体の主平面への投影において磁石177、178が描く経路上において、不変である。これは特に、物理的パラメータが変動してEP
mの有効蓄積領域を画定するセクタ56E、57Eの場合である。なお、磁性構造体の2つの環状経路を形成する環状セクタ54E、56E又は55E、57Eは、アーチ形状を有し、内側環状経路の交互になったセクタは、外側環状経路のセクタに対して僅かに角度変移している。
【0075】
図28、29は、本発明による調節デバイスの第9の実施形態の平面図及び断面図を示す。発振子210はホイール212を有し、その少なくとも周縁環状部分は、高透磁率材料で形成される。このホイールの側面は、円筒形磁性構造体214を形成するように構成される。この磁性構造体は環状のままであるが、軸方向に延在しており、ホイールの主平面内には延在していない。他の実施形態では、共振子と磁性構造体との間の磁気結合は軸方向であり(主成分が回転軸に対して平行であり)、その一方で前記磁気結合は径方向である。構造体214は、上述の環状経路同等の2つの円筒形経路218、219を画定する。従って、先行する複数の実施形態に関する本質的な考察を、本実施形態の様々な可能な変形例にも応用できる。図示した変形例では、各経路は、磁性構造体の角度区間P
θを画定する一連の非対称な歯によって形成されている。各歯は、平坦な部分又は小さな円筒形部分215と、これに続く、ランプ/傾斜平面216を形成する窪みとを有する。下側経路219の歯は、上側経路218の歯に対して半区間P
θ/2だけ角度変移されている。この磁性構造体は、他の実施形態において共振子220に関して説明したものと同様の様式で作用する。この共振子は好ましくは強磁性材料製の光構造体221を有する。この構造体221は、ホイール212の回転軸51上にセンタリングされたアーバ224に関して直径方向に配設された2つの弾性アーム222、223を有する。共振子はアーバ上に固定して設置され、構造体221はアーバと一体のディスク225に対して固定される。2つの弾性アームはそれぞれその自由端部において、2つの軸方向分岐226、227によって延長されており、これら分岐226、227はそれぞれ下側端部に磁石230、231を備える。これら2つの磁石は、これらが互いに生成する磁場が主に径方向となるように配設される。この磁場は、共振を利用するように配設され、2つの弾性アーム222、223が軸方向に振動し、これが磁石230、231の軸方向発振を引き起こす。ホイールを共振子とは独立して回転させるために、ホイール212に中央孔を設け、アーバはこの孔を自在に通過する。また、ホイールは、例えば主ゼンマイからの駆動トルクによってホイールを駆動するために使用されるピニオン228と一体であることに留意されたい。当業者であれば、ホイール212と共に、特にねじれた状態で動作するタイプの共振子といったその他の共振子を設けてもよいことが想定できるであろう。
【0076】
時計ムーブメント234に設けられた本発明の第10の実施形態について、
図30を参照して以下に説明する。調節デバイス236は共振子238を有し、この共振子238は第1の端部で固定され、自由端部に磁石を備える弾性ピン又はストリップによって概略的に示される。磁性構造体は、それぞれ横に並べて配設された2つのホイールセット240、242によって支持された本発明による2つの磁性経路241、243によって形成されている点で独特である。各環状磁性経路は、各ホイールセットのプレートの周縁領域に配設される。これら2つの経路はここでは同一の幾何学的平面内に位置し、第1の実施形態の環状セクタ54、56とそれぞれ同様の交互になった環状セクタ245、246を有する。2つのプレートの直径が同一である場合、これら2つのホイールセットは、共振子磁石の静止位置(ゼロ位置)が、それぞれの回転軸に対して垂直な直線の中央に位置してこれら2つの回転軸と交差するように設けられる。より一般には、結合要素はその静止位置において、2つのホイールそれぞれの2つの回転軸を接続する直線上の、前記幾何学的平面への投影における前記2つの経路の境界線又はこれらの中央に位置し、これら2つの経路は前記直線上において角度区間の半分の変移を示す。
【0077】
前記2つのホイールセット240、242は、駆動トルクを受承するピニオン254と一体の駆動ホイール252によって回転可能に連結されている。ホイール252は、第1のホイールセット240の、そのプレートの下側に位置するホイール248と噛合し、この第1のホイールセットを所定の回転方向に直接回転駆動する。ホイール252は、また前記第2のホイールセットの、そのプレートの下側に位置するホイール250と噛合する中間ホイール256を介して、第2のホイールセット242に駆動トルクを伝達する。従って第2のホイールセットは、第1のホイールセットに対して反対方向に回転する。前記2つの環状経路は同一の外径を有し、これらのギヤ比は、2つのホイールセットの角速度が同一となるように設定される。ある変形例では、これら2つのホイールセットは、ギヤによって互いに対して直接連結でき、2つのホイールセットのうち少なくとも一方が、動作中にトルク力を受承する。時計ムーブメントの組み立て中、これら2つの環状経路は、磁石のゼロ位置点においてこれらがπの位相変移(
図30に示すような半区間の変移)を有するように確実に位置決めされる。
【0078】
なお、この第10の実施形態の利点は、2つの磁性経路が同一の寸法を有し、同一の幾何学的平面に配設される点である。これにより、共振子の2つの振動において、共振子と磁性構造体との間に、磁気相互作用の完璧な対称性が得られる。特定の変形例では、2つのホイールセットは、同一の時計ムーブメントに組み込まれた2つの香箱からの2つの駆動トルクによって駆動される。なお、図示していない変形例では、共振子は少なくとも2つの結合要素を備え、これらはそれぞれ第1の経路及び第2の経路に連結され、また2つの回転軸を接続する上述の直線上のいずれかの位置に配置される。第1の結合要素が第1の磁性経路から離れると、第2の結合要素が第2の経路と相互作用し始め、またその逆も達成されることが保証される。この後者の変形例は、発振子の構成、及び特に2つのホイールセットの構成において、複数の更なる自由度を許容できる。例えば、2つの磁性経路をそれぞれ2つの平行なプレート上に、異なる高さに配設することも可能である。
【0079】
図31は、
図22の第1の変形例である本発明による発振子260を示す。この変形例は、共振子158Aが剛性テンプ160Aを有し、このテンプ160Aがその2つのアームそれぞれに2つの磁石164、264、又は165、265を備える点で、
図22の実施形態とは異なる。各アームの2つの磁石は、環状磁性経路156と同時に磁気相互作用する。これらは角度区間P
θだけ位相変移している。従って、静止位置にある問題となる共振子に関する所定のゼロ位置円上において、対応する磁性経路に対して同一の運動(即ち同一の自由度および同一の運動方向)をする結合要素間に、N・P
θ(Nは正の整数)に等しい角度変移(N・360°の位相変移に対応)を提供することによって、結合要素の個数を増大させることができる。
【0080】
図32は、
図22の第2の変形例である本発明による発振子270を示す。この第2の変形例は、共振子158Bのテンプ160Bの同一のアームと関連する2つの結合要素がそれぞれ、環状磁性経路156によって、即ちこの経路を画定する外側円および内側円によって、静止位置にある問題となる共振子に関して画定される、2つのゼロ位置円20、20A上に位置決めされている点で、第1の変形例とは異なる。この場合、2つの結合要素164、266、又は165、267は、これらの間にP
θ/2(即ち180°)の角度位相変移を有する。共振子が静止位置にある場合、所定の環状経路に関して、1つ又は複数の結合要素を、前記経路によって画定される2つのゼロ位置円それぞれの上に位置決めできることが理解される。テンプのアームに関して、第1のゼロ位置円に関連する第1の結合要素は、第2のゼロ位置円に関連する第2の結合要素から、(N+1)・P
θ/2(ただしN>0)だけ角度変位する。
【0081】
図31、
図32の実施形態から得られる教示を組み合わせ、複数の環状磁性経路を用いることによって、本発明に従って様々な発振子、特に
図33に示す発振子280を提案できる。この発振子は、テンプ160Cによって形成される共振子158Cを有し、前記テンプ160Cは2つのアーム282、284を有し、これらアーム282、284は、それぞれ磁性構造体44の実質的に1つの角度区間(2つの磁性経路52、53それぞれの区間)に亘って分散された4つの結合要素を備える。ここで、磁性構造体の3つの連続する半区間それぞれにおいて磁性構造体と相互作用する結合要素が存在し、同一のテンプのアームと関連する前記4つの結合要素はこの磁性構造体の上側に同時に延在する。斜線付きのセクタそれぞれにおける問題となる物理的パラメータの変動は角度に関するものとなる(いずれの所定の半径に亘る径方向変動は存在しない)ため、ゼンマイ−テンプの回転の中心163は、中間分岐286又は288との交点における前記ゼロ位置円20の接線上に位置し、これら中間分岐286、288は、径方向に位置合わせされた2つの結合要素を支持する。従って、これら結合要素は、それぞれ
図33の実施形態で使用される3つのゼロ位置円20、20A、20B周辺に局在化されたインパルス領域の外側の小さな径方向力のみを受ける。このタイプの実施形態は、結合要素の径方向寸法を小さいままとしながら共振子と磁性構造体との間の磁気結合を増大させ、局在化されたままのインパルスを共振子に送達できるという利点を有する。
【0082】
上述の調節デバイスに関して反転した技術を用いた実施形態について、以下の図面を参照して説明する。先行する実施形態では、環状磁性経路は、少なくとも意図した(1回の振動に亘る)最大発振振幅を包含できる程度に広範囲に亘るものであり、その一方で共振子結合部材は、これら共振子と関連する環状磁性経路の径方向において比較的小さい寸法を有している。しかしながら、磁性経路の磁性セクタの寸法と、共振子結合部材の寸法とを反転させることによって、同様の相互作用及び本発明の利益を得ることができる。
【0083】
図34は、
図11の一般的な実施形態を技術的に反転させたものに相当する第11の実施形態のある変形例の概略図である。調節デバイス300は磁性構造体304を有し、この磁性構造体304はホイールを形成し、また磁石308で形成された環状磁性経路306を有し、磁石308は径方向寸法が削減されており、円312に沿って周期的に配けられる。従って、この円は、実質的に磁石の中心又は磁石の質量中心を通過する。一般に環状磁性経路は、その主平面への軸方向投影において、経路の中央に径方向に配置され、又は前記磁性経路を形成する複数の磁性要素の質量中心を実質的に通過する幾何学的円を画定する。この円は、また先行する複数の実施形態からの類推によりゼロ位置円と呼ばれる。共振子302は径方向発振するように設けられる。その結合要素310は磁性材料で形成され、磁性構造体に対向する磁化セクションを画定する前記結合要素310の活性端部は、磁性経路の主平面に対して平行な平面への軸方向投影において、略長方形の領域内に延在し、その内側角度方向縁部、即ちホイールの角度方向の内側縁部は、共振子が静止位置(最小ポテンシャルエネルギ)にある場合に、前記軸方向投影において実質的にゼロ位置円を辿る。この略長方形の領域は、磁性経路306の半区間(P
θ/2)に略等しい円312上の角距離を有し、また結合要素の1回の振動に亘る最大発振振幅に少なくとも等しい径方向距離を有し、ここで結合要素は磁性経路306に結合されている。共振子は、有効トルク範囲内の駆動トルクが(共振子及び磁性構造体で形成された)発振子に送達された際に、結合要素の各発振期間の実質的に最初の1回の振動中に、軸方向投影において円312が結合要素310の活性端部を横断するように、磁性構造体に対して設けられる。結合要素の磁化材料は、磁石308のような幾何学的軸51に沿って軸方向に配向された磁石を形成し、磁石308はここでは反転した磁極性を有し、結合要素磁石と反発するよう配設される。
【0084】
結合要素の磁化材料は、磁性共振子結合要素が環状磁性経路306に磁気結合されている場合に、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関する少なくとも1つの物理的パラメータを有する。一般に、この第11の実施形態による調節デバイスは:有効駆動トルク範囲内において、環状磁性経路及び磁性結合要素が、各角度区間において、発振子内の磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域を、これらの相対角度位置θ及び自由度に沿った結合要素の位置に応じて画定すること;及び結合要素の磁性材料が、各角度区間の磁気ポテンシャルエネルギ蓄積領域の少なくとも一部に関して磁気経路に磁気結合された磁性材料の1つの領域において少なくとも、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関する物理的パラメータが角度方向に漸増又は漸減するように配設されることを特徴とする。物理的パラメータの正又は負の変動は、駆動トルクの作用下での共振子と磁性構造体との間の相対的な回転中に、発振子の磁気ポテンシャルエネルギが角度方向に増大するように選択される。様々な変形例によると、問題となる物理的パラメータは、特に空隙又は上述のように結合要素磁石によって生成される磁場の磁束である。
【0085】
図35、
図36に、第12の実施形態を概略的に示す。調節デバイス320は、
図5の調節デバイスを技術的に反転させたものに対応する。磁性構造体304は、
図34に示したものと同一である。共振子322はプレート324を有し、このプレート324は、環状磁性経路306の中心に対して径方向に発振子、また前記プレートに堅固に固定された2つの結合要素326、328を支持する。これら2つの結合要素は2つの磁化セクション326、328によって形成され、これらはそれぞれ、磁性経路306の半区間P
θ/2に略等しい円312上の角距離に亘って延在し、また半区間分だけ角度変移されている(180°の位相変移)。更にこれらは、共振子が静止位置にある場合に、磁化セクション328の内側角度方向縁部及び磁化セクション326の外側角度方向縁部が、軸方向投影において、ゼロ位置円312を辿るように径方向に変移される。2つの結合要素を形成する磁化材料は、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関する物理的パラメータを有する。各結合要素の少なくとも特定の角距離に亘って、この物理的パラメータは角度方向に漸増又は漸減し、これにより発振子のポテンシャルエネルギは相対的な回転中に角度方向に増大する。この物理的パラメータは、プレート324の下側表面とプレートの幾何学的主平面325との間の距離である。この幾何学的主平面は、磁性構造体304の上面に対して、従って磁性構造体304の主平面に対して平行である。更に、このプレートの発振時の移動軌跡もまた、平面325に対して平行である。なお、この技術的に反転させた実施形態の場合、結合された磁石が反発するように配設されている
図36の断面図に示すように、ポテンシャルエネルギは磁性構造体304の相対的な回転方向に増大するはずである。
【0086】
図35に示す調節デバイスの一変形例の磁性領域は、角度区間の中央、環状経路及び結合部材の中央、
図5に示す結合部材50の2つの磁性経路52、53の角度区間の中央に配置された径方向軸に沿った軸対称によって得ることができる。次に、このようにして転写される磁性部材は、磁性経路の全ての区間に再現される。しかしながら得られる結果は、ポテンシャルエネルギ蓄積領域における磁化材料の問題となる物理的パラメータの変動に関して最適ではない。よって、
図35に示す好ましい変形例では、磁化領域326、328は、各蓄積領域の磁気ポテンシャルエネルギが、共振子の有効自由度に沿って実質的に変動しないように軸対称に従って修正されている。これが、
図35において、問題となる物理的パラメータの変動がプレート324の発振方向に対して垂直となる理由である。従って、発振子の磁気ポテンシャルエネルギは、
図7、8、9A〜9Cを参照して上述したものと同様である。
【0087】
少なくとも1つの径方向に延在する磁性経路と、径方向寸法が小さい結合要素又は整数個の角度区間分だけ変移された複数のこのような結合要素を有する1つの共振子とを備える、これまでに説明した全ての実施形態は、本方法を各結合要素に適用して、場合に応じて
図34のように単一の環状セクタ(磁性を有する半区間)又は
図35のように2つの環状セクタ(磁性を有する1つの区間)を転写することによって、反転させた実施形態を提供できることに留意されたい。第1の実施形態と比較して、第12の実施形態による調節デバイスの1つの利点は、広範囲に亘る磁性領域326、328が共振子上にあり、従って同一の寸法、磁気ポテンシャルエネルギ蓄積勾配又はランプを生成する問題となる物理的パラメータの同一の線形変動、及び結合部材の自由度に正確に沿った曲線を有する側縁部を有することができるという事実に由来する。別の利点は、発振子の製造が大幅に簡単になる点である。実際には、所望の周期的な磁気ポテンシャルを得るために、磁性構造体を形成する磁性材料の物理的パラメータに一切の変動を発生させることなく、磁性構造体(少なくとも1つの磁性経路を有するホイール)を製造できる。これというのは、発振子の磁気ポテンシャルエネルギと相関する物理的パラメータの角度変動を呈する磁性材料を用いて、共振子の広範囲に亘る(1つ又は複数の)結合要素を形成するだけで十分であるためである。(1つ又は複数の)環状磁性経路の角度区間の個数に対して、共振子結合要素の数を更に制限すれば、これを更に容易に達成できる。
【0088】
図37は、
図35の変形例を示す。調節デバイス330は、共振子322Aのプレート324A上に配設された2つの結合要素326A、328Aが、磁性構造体に面する端部に、磁性経路に対して平行な平面への軸方向投射において正方形又は長方形の領域を有する点で、
図35の実施形態とは異なる。特に、環状領域328Aの内側角度方向縁部及び環状領域326Aの外側角度方向縁部は直線状である。角度区間が比較的小さいままであり、特に45°未満である限りにおいて、この変形例は
図35の実施形態に極めて近い機能を果たし、環状磁性経路に対する発振子の静止位置を効果的に調整できる。これにより良好な等時性、及び比較的広範囲に亘る適切な動作範囲を得ることもできる。
【0089】
図38、38Aは、牽引による磁気相互作用を備えた本発明の第13の実施形態に関する。この場合、ゼロ位置円の他方の側にあるエネルギ蓄積領域に対して径方向に対向して配置された領域に磁性材料を導入することにより、これらの領域が低磁気ポテンシャルエネルギ又は最小磁気ポテンシャルエネルギを有するようにする必要がある。調節デバイス332は、上述の環状磁性経路306及び概略的に図示した共振子334を有し、共振子334は、所望の共振周波数で発振する強磁性材料のプレートを有する。プレート336は主平面325に延在し、2つの領域326B、328Bを有し、これら2つの領域326B、328Bから前記主平面までの距離又はこれら2つの領域326B、328Bと磁気経路との間の空隙は、磁気経路の回転方向に増大して、それぞれ比較的大きい角距離に亘るポテンシャルエネルギ蓄積領域を生成する。更にこのプレートは、2つの相補的領域337、338を有し、これらもまた強磁性材料製であり、磁性経路との最小空隙を有する。従って、共振子334の発振を維持するためのインパルスを得ることができる。なお、プレートの角度方向寸法は、好ましくは2つの連続する磁石308の中心間の直線距離に等しくなるように設定される。これにより、プレートと重なった領域の外側において磁石が高いポテンシャルエネルギを有するという事実に関連する問題が克服される。実際、この角距離により、磁石が前記重なった領域から離れると、次の磁石が同時に前記重なった領域に入り、プレート336上の角度方向力と互いにキャンセルし合う。従って、初めの10個の実施形態及びこれらの考えられる変形例に関して、技術的に反転させた実施形態を実装できることが理解される。
【0090】
図39は、
図24の調節デバイスに対して、上述したような技術的反転方法を適用した第14の実施形態の概略図である。このようにして、音叉176Aで形成された共振子174Aを有する調節デバイス340が得られ、この音叉176Aはその2つの自由端部に、
図37で示すプレート324A又は
図38で示すプレート33と同様の2つの磁性プレート344、345を有する。これら2つのプレート344、345は反対方向に発振し、それぞれ、
図37、
図38の磁性領域326A、328A又はある変形例では磁性領域326B、328Bと同様の2つの結合要素を有する。磁性構造体304は上述のものに相当する。(2つのプレートのうちの1つを、ゼロ位置円に略接する対称軸の周りでの軸対称に供することによって)音叉が完璧な対称性を有する有利な変形例では、奇数個の結合要素308をホイール304上に設けなければならない。
【0091】
図40は、
図34から説明し始めたタイプの第15の実施形態を示す。この実施形態は、構造体上に径方向寸法が小さい同心の2つの磁性経路を備える場合に関する。調節デバイス350は、
図32に示す実施形態と同様の機能を果たす。この調節デバイス350は、ゼンマイ−テンプタイプの共振子352、及び調節デバイスを組み込んだ時計ムーブメントが提供する駆動トルクによって幾何学的軸51の周りで回転駆動するホイールを形成する磁性構造体358を有する発振子によって形成される。従って、共振子は、ヒゲゼンマイ162又はその他の適切な弾性要素及びテンプ160Dを有し、テンプ160Dは2つのアームを有し、各アームの2つの自由端部は、それぞれ2つの結合要素354、356を支持する。各結合要素は、
図34に示す要素310と同様の磁化領域によって形成される。磁性構造体358は、上述の第1の磁性経路306及び第1の磁性経路と同心の第2の磁性経路360を有し、第2の磁性経路360は規則的に分散された複数の磁石362で形成され、第1の磁性経路と同一の角度区間を有するものの半区間分だけ角度変移されており、従ってこれら2つの経路は180°の位相変移を有する。図示した変形例では、磁石308、362は2つの磁化領域354、356に対して反発するように配設されている。第1及び第2の磁性経路は、2つのゼロ位置円312、312Aが、それぞれ2つの磁化領域354、356それぞれの内側及び外側角度方向縁部に対して略垂直に配置されるように配設されている。これら2つの磁化領域は、角度θ
D=P
θ・(2N+1)/2(ただしNは整数)だけ変移されている。
【0092】
なお、
図40に示す実施形態は、
図32から説明し始めた技術的反転を適用し、磁石164、266を支持する第1のテンプのアームを用いて前記技術的反転を適用することによって得られる。次に、第2のアームの磁石165、267は第1のアームの磁石に対して180°位相変移されているため、磁性構造体上に既に配設されている磁石を用いて、第1のアームに適用される軸対称によって同等の状況を得るためには、共振子上に転写された磁性経路の斜線付きの領域を180°位相変異させなければならない。このようにして、発振子内の磁気相互作用は
図32に示すデバイスと
図40に示すデバイスとに関して同等となる。
【0093】
最後に、磁性構造体の磁性領域と共振子の磁性領域の寸法とを反転させることからなる第2の方法を用いて、
図23の発振子から発振子350を得ることもできることに留意されたい。磁性経路の斜線付きの領域はそれぞれ、斜線付きの領域の中央にある径方向幅が小さい磁石に置き換えられ、2つの共振子磁石は、
図23に示す発振子の1つの経路の斜線付きのセクタの寸法を実質的に有する2つの磁化領域に置き換えられる。第1及び第2の技術的反転方法を使用することにより、当業者は、共振子に支持された広い径方向範囲に亘る磁性セクションを有する、その他の調節デバイスを容易に製造できる。