【実施例】
【0017】
(実施例1)
上記端子台の実施例について、
図1〜
図5を用いて説明する。端子台1は、
図1〜
図4に示すように、ハウジング2と、バスバー3と、接着剤4とを有している。
図1及び
図2に示すように、ハウジング2は、樹脂よりなる樹脂成形部21を有している。また、
図3に示すように、バスバー3は、板状を呈していると共に、樹脂成形部21に埋設された埋設部32と、樹脂成形部21の開口端211から外方に突出した2箇所の接続部31とを一体に有している。また、接着剤4は、埋設部32とハウジング2との間に存在する隙間5の一部に配され、隙間5を封止するよう構成されている。
【0018】
そして、使用が想定される最高温度をT
max(℃)とし、最高温度T
maxにおいて想定される最長使用時間をh
max(時間)としたときに、最高温度T
max℃でh
max時間保持する熱処理を施された接着剤4の、最高温度T
maxにおける粘度が2100Pa・sより大きくなるよう構成されている。以下、詳説する。
【0019】
図1〜
図4に示すように、端子台1のハウジング2は略平板状を呈しており、その中央部に樹脂成形部21が設けられている。また、樹脂成形部21には、複数のバスバー3が貫通配置されている。複数のバスバー3は、埋設部32の幅方向に互いに並んでいる。また、バスバー3は、埋設部32の長手方向がハウジング2の厚み方向を向くように配置されている。なお、以下において、バスバー3の並び方向を「横方向Y」という。また、埋設部32の長手方向を「高さ方向Z」といい、埋設部32の厚み方向を「縦方向X」という。
【0020】
図1及び
図2に示すように、ハウジング2は熱可塑性樹脂よりなる樹脂成形部21を有している。樹脂成形部21は、
図1〜
図3に示すように、バスバー3の埋設部32を覆う流路壁部212を有している。流路壁部212は、隙間5における開口端211から接着剤4に到達するまでの領域よりなる接着剤4の流路51を、縦方向X及び横方向Yの四方から覆っている。また、
図4に示すように、埋設部32の厚み方向(縦方向X)における上記流路壁部の厚み寸法dは3mmである。なお、本例の樹脂成形部21は、ガラス繊維強化された芳香族系ナイロン樹脂より形成されている。
【0021】
バスバー3は板状の金属より構成されており、
図1〜
図3に示すように、樹脂成形部21を貫通すると共にインサート成形により樹脂成形部21に固定されている。本例のバスバー3は、長手方向に直交する断面が幅12.5mm×厚み2.5mmの長方形状を呈している。
【0022】
また、
図3に示すように、バスバー3は、樹脂成形部21に埋設された埋設部32の両端に接続部31を有している。各々の接続部31は、ワイヤーハーネス等を締結するための締結孔311及び締結ナット312を有している。
【0023】
また、
図4に示すように、隙間5における接着剤4と樹脂成形部21の開口端211との間の領域は、接着剤4が漏出する際の流路51となる。すなわち、流路51は、埋設部32の表面321と、樹脂成形部21の内表面213との間の空間より構成されている。開口端211から接着剤4に到達するまで流路51の長さLは1.55mmである。
【0024】
接着剤4は、隙間5の一部に設けられ、埋設部32と樹脂成形部21との間を液密に封止している。なお、本例においては、エピクロロヒドリン系ゴム(ダイソー(株)製、製品名「エピクロマーH」)よりなる接着剤4が用いられているが、接着剤4は、例えばポリエステル系樹脂等より構成されていてもよい。また、インサート成形前における接着剤4の厚みは、0.1mmである。
【0025】
本例において用いた接着剤4は、最高温度T
max℃でh
max時間保持する熱処理を施された後の最高温度T
maxにおける粘度が2100Pa・sより大きい。接着剤4の熱処理方法及び粘度測定方法は、以下の通りである。
【0026】
まず、接着剤4を厚さ2mmのシート状に成形した試験片が作成される。得られた試験片は、加熱炉等を用いて温度Tにh時間保持する熱処理を施される。本例においては、熱処理の条件は、温度Tを150℃とし、保持時間hを1000時間とした。
【0027】
熱処理を施された試験片の粘度の値は、レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント社製「ARESレオメータ」)を用いて測定される。レオメータの測定条件は、以下の通りである。
【0028】
測定モード:ずりモード(Auto strain制御)
昇温速度:3℃/分
測定周波数:1Hz
測定ジオメトリー:パラレルプレート φ25mm
測定雰囲気:窒素雰囲気
【0029】
以上のようにして測定を行った結果を
図5に示す。
図5の縦軸は粘度(Pa・s)の値であり、対数表示されている。また、
図5の横軸は測定温度(℃)の値である。
図5に示すように、150℃に1000時間保持する熱処理を施された接着剤4の粘度は、150℃において7500Pa・sであった。
【0030】
次に、上述した構成を有する端子台1に150℃に1000時間保持する熱処理を施し、熱処理後における接着剤4の漏出の有無を目視にて観察した。その結果、複数のバスバー3の全てにおいて、隙間5からの接着剤4の漏出は見られなかった。なお、端子台1への熱処理は、樹脂成形部21の開口端211を鉛直下方に向けた状態で行った。
【0031】
次に、本例の作用効果について説明する。端子台1は、最高温度T
max℃でh
max時間保持する熱処理を施された後の、最高温度T
maxにおける粘度が2100Pa・sより大きくなるよう構成された接着剤4を有している。そのため、端子台1は、熱処理を施された後に、接着剤4の漏出を防止でき、優れた品質を有する。
【0032】
また、樹脂成形部21の一部は開口端211から接着剤4に到達するまでの流路51を覆う流路壁部212を構成している。そして、埋設部32の厚み方向における流路壁部212の厚み寸法dが3mm以下である。そのため、埋設部32の厚み方向(縦方向X)において隙間5が過度に広がることを抑制し易くなり、ひいては接着剤4の漏出をより抑制し易くなる。その結果、端子台1はより優れた品質を有する。
【0033】
以上のように、端子台1は、低コストかつ優れた品質を有する。そして、端子台1は、低コストかつ優れた品質を有するため、自動車用ワイヤーハーネスを接続する用途に好適に用いることができる。
【0034】
(実施例2)
本例は、ハウジング2の形状及び熱処理の条件を変更したときの、接着剤4の漏出の有無を評価した例である。本例においては、互いにハウジング2の形状の異なる3種の端子台1を試験体(試験体1〜試験体3)として作製した。以下に、試験体1〜3の詳細について説明する。
【0035】
・試験体1
実施例1における端子台1と同一である。
【0036】
・試験体2
実施例1の端子台1において、バスバー3の数を6本から3本に変更した。また、流路51の長さLが4.5mmとなるように接着剤4を埋設部32に設けた。その他は実施例1と同様である。
【0037】
・試験体3
実施例1の端子台1において、バスバー3の数を6本から3本に変更した。また、流路51の長さLが5.5mmとなるように接着剤4を埋設部32に設けた。その他は実施例1と同様である。
【0038】
以上の構成を有する試験体1〜試験体3に対して、表1に示す温度Tにh時間保持する熱処理を施した。その後、接着剤4の漏出の有無を目視により確認した。その結果を表1に示す。
【0039】
また、表1に、温度Tにh時間保持する熱処理を施した接着剤4の粘度を示した。接着剤4の粘度の測定方法は、実施例1と同様である。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、試験体1〜試験体3のいずれについても、接着剤4の粘度が2100Pa・sより大きくなる熱処理条件では、接着剤4の漏出は見られなかった。一方、接着剤4の粘度が2100Pa・s以下となる熱処理条件では、いずれの試験体からも接着剤4が漏出した。
【0042】
このように、熱処理後の粘度が2100Pa・sより大きくなる接着剤4は、端子台の形状を変化させた場合にも、開口端から漏出しにくい。それ故、接着剤4を用いることにより、ハウジング2の形状の検討が大幅に簡略化され、ひいては端子台1の試作コストを容易に低減することができる。
【0043】
(実施例3)
本例は、接着剤4の材質を変更した例である。試験に用いた試験体11は、接着剤4をクロロスルホン化ポリエチレン樹脂よりなる接着剤4に変更した以外は、実施例2の試験体1と同様である。同様に、試験体12は、試験体2の接着剤4をクロロスルホン化ポリエチレン樹脂よりなる接着剤4に変更したものであり、試験体13は、試験体3の接着剤4をクロロスルホン化ポリエチレン樹脂よりなる接着剤4に変更したものである。
【0044】
表2に、温度Tにh時間保持する熱処理を施した後の接着剤4の漏出の有無を目視により確認した結果を示す。また、表2には、温度Tにh時間保持する熱処理を施した接着剤4の粘度を併せて示した。接着剤4の粘度の測定方法は、実施例1と同様である
【0045】
【表2】
【0046】
表2より知られるように、試験体11〜試験体13のいずれについても、接着剤4の粘度が2100Pa・sより大きくなる熱処理条件では、接着剤4の漏出は見られなかった。一方、接着剤4の粘度が2100Pa・s以下となる熱処理条件では、いずれの試験体からも接着剤4が漏出した。
【0047】
実施例1〜実施例3に示すように、熱処理が施された端子台1からの接着剤4の漏出の有無は、ハウジング2の形状によらず、熱処理が施された接着剤4の粘度によって定まる。そして、接着剤4の粘度の値は、予め上記熱処理を施された接着剤のみを用いて測定することができ、ハウジング、導電体及び接着剤を備えた試験体を実際に作製する必要がない。そのため、試作コストを容易に低減することができる。
【0048】
また、端子台1は、上述した特性を有する接着剤4を用いることにより、最大温度T
maxに最長使用時間h
max時間保持する熱処理が施された後に、接着剤4が漏出しないように予め設計されている。すなわち、端子台1は、想定される使用条件のうち、最も厳しい使用条件において接着剤4が漏出しないように予め設計されている。それ故、端子台1は、使用が想定される温度範囲及び期間内に接着剤4の漏出がなく、優れた品質を有する。