【実施例】
【0045】
(実施例1)
上記接着剤の漏出予測方法の実施例について、
図1〜
図8を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、ハウジング2と、導電体3と、接着剤4とを有している。
図3に示すように、導電体3は、ハウジング2に埋設された埋設部32と、ハウジング2の開口端211から外方に突出した2箇所の接続部31とを一体に有している。また、接着剤4は、埋設部32とハウジング2との間に存在する隙間5の一部に配され、隙間5を封止するよう構成されている。
【0046】
接着剤4の漏出予測方法は、開口端211から接着剤4に到達するまでの流路51の長さd(mm)を設計図から取得するステップと、
温度Tにおいて接着剤4の開口端211側の端部41に生じる圧縮応力p
(T)(Pa)を数値解析に基づいて算出するステップと、
温度Tにおける流路51の断面積S
(T)(mm
2)を数値解析に基づいて算出するステップと、
温度Tにh時間保持する熱処理を施された接着剤4の、温度Tにおける粘度μ
(T)(Pa・s)を準備するステップと、
p
(T)の値、S
(T)の値、μ
(T)の値及び流路51の長さd(mm)の値を用いて上記数式(1)により接着剤4の流量Q
(T)(mm
3/s)を算出するステップとを有している。
【0047】
そして、接着剤4の漏出予測方法は、流量Q
(T)の値が0.019mm
3/s未満である場合に接着剤4が漏出しないと判定し、上記流量Q
(T)の値が0.019mm
3/s以上である場合に接着剤4が漏出すると判定するよう構成されている。以下、詳説する。
【0048】
本例においては、表1に示すように、温度Tにh時間保持する熱処理が施された端子台1における接着剤4の漏出の有無の予測を、上記接着剤の漏出予測方法により行った。また、端子台1を実際に作製し、表1に示す条件で熱処理が施された後の接着剤4の漏出の有無を目視により確認した。
【0049】
圧縮応力p
(T)(Pa)を算出するステップにおいては、上述した解析モデル101を作成した。また、初期状態(温度20℃)において、導電体3、樹脂成形部21及び接着剤4は、互いに接触しており、接触面における摩擦係数が0となるように設定した。その他は上述した方法の通りである。
【0050】
流路51の断面積S
(T)(mm
2)を算出するステップにおいては、端子台1の設計図に基づいて3次元有限要素モデルを作成した。また、初期状態(温度20℃)において、導電体3及び樹脂成形部21は互いに接触しており、接触面における摩擦係数が0となるように設定した。また、接着剤4は、上記3次元有限要素モデルから省略した。その他は上述した方法の通りである。
【0051】
図6及び
図7に、導電体3及び樹脂成形部21が変形した状態の上記3次元有限要素モデルの一例を示す。
図6に示すように、導電体3及び樹脂成形部21には、熱膨張係数の差や構造的な要因等によって湾曲等が生じることがある。この場合には、
図6及び
図7に示すように、導電体3と樹脂成形部21との間の隙間5の形状が断面の位置によって変化することがある。そのため、本例において用いた断面積S
(T)の値は、樹脂成形部21の開口端211における流路51の断面積の値とした。
【0052】
接着剤4の粘度μ
(T)(Pa・s)は、レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント社製「ARESレオメータ」)を用いて、接着剤4の粘度を予め測定して準備した。レオメータの測定条件は以下の通りである。その他は上述した方法の通りである。
【0053】
測定モード:ずりモード(Auto strain制御)
昇温速度:3℃/分
測定周波数:1Hz
測定ジオメトリー:パラレルプレート φ25mm
測定雰囲気:窒素雰囲気
【0054】
粘度測定結果の一例として、
図8に、150℃に1000時間保持する熱処理が施された接着剤4の粘度測定結果を示す。
図8の縦軸は粘度μ
(T)(Pa・s)の値であり、対数表示されている。また、
図8の横軸は温度T(℃)の値である。例えば、150℃に1000時間保持する熱処理が施された後の端子台1からの接着剤4の漏出の有無を予測しようとする場合には、
図8において、温度Tが150℃であるときの粘度μ
(T)の値(7500Pa・s)を読み取り、この値を上記数式(1)に代入すればよい。
【0055】
以上により得られた圧縮応力p
(T)の値、断面積S
(T)の値、粘度μ
(T)の値及び流路51の長さdの値を用いて流量Q
(T)の値を算出した。その結果を表1に示す。また、表1には、端子台1を実際に作製し、熱処理が施された後の接着剤4の漏出の有無を目視確認した結果を示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より知られるように、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s未満である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出は確認されなかった。一方、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s以上である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出が実際に確認された。
【0058】
(実施例2)
本例は、実施例1における端子台1の形状を変更するとともに、接着剤4から接続部31までの流路51の長さdを実施例1よりも大きい4.5mmにした例である。それ以外は、実施例1と同様である。
【0059】
表2に、本例において算出された圧縮応力p
(T)の値、断面積S
(T)の値、粘度μ
(T)の値、流路51の長さdの値及び流量Q
(T)の値を示した。また、表2には、端子台1を実際に作製し、熱処理が施された後の接着剤4の漏出の有無を目視確認した結果を示した。
【0060】
【表2】
【0061】
表2より知られるように、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s未満である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出は確認されなかった。一方、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s以上である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出が実際に確認された。
【0062】
(実施例3)
本例は、実施例1における端子台1の形状をさらに変更するとともに、接着剤4から接続部31までの流路51の長さdを実施例2よりも大きい5.5mmにした例である。それ以外は、実施例1と同様である。
【0063】
表3に、本例において算出された圧縮応力p
(T)の値、断面積S
(T)の値、粘度μ
(T)の値、流路51の長さdの値及び流量Q
(T)の値を示した。また、表3には、端子台1を実際に作製し、熱処理が施された後の接着剤4の漏出の有無を目視確認した結果を示した。
【0064】
【表3】
【0065】
表3より知られるように、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s未満である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出は確認されなかった。一方、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s以上である熱処理条件においては、端子台1からの接着剤4の漏出が実際に確認された。
【0066】
実施例1〜実施例3に示したように、上記接着剤の漏出予測方法は、上記数式(1)により算出されたQ
(T)の値が0.019mm
3/s未満であれば、端子台1の形状等によらず接着剤4の漏出の有無を予測することができる。それ故、上記接着剤の漏出予測方法を用いることにより、実際に試験体を作製する前に、接着剤4の漏出抑制に有効なハウジング2の形状等をある程度絞り込むことができる。
【0067】
その結果、上記接着剤の漏出予測方法によれば、低コストかつ短期間に接着剤4の漏出の有無を確認することができる。
【0068】
そして、上記接着剤の漏出予測方法により、使用が想定される最高温度T
maxにおける流量Q
(Tmax)の値が0.019mm
3/s未満となるように構成された端子台1は、想定される使用条件のうち、最も厳しい条件において接着剤が漏出しないように予め設計されたものとなる。従って、かかる構成を有する端子台1は、使用が想定される温度範囲及び期間内に接着剤4の漏出がなく、優れた品質を有する。また、端子台1は、上記接着剤の漏出予測方法に由来して設計期間の短縮及び試作コストの低減が容易なものとなり、ひいてはより安価に提供可能なものとなる。