特開2015-122193(P2015-122193A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-122193(P2015-122193A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20150605BHJP
   H05K 13/06 20060101ALI20150605BHJP
【FI】
   H01B13/00 513Z
   H05K13/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-265169(P2013-265169)
(22)【出願日】2013年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠真
(57)【要約】
【課題】コネクタの電線への絡まりやくぐりを低減して、ワイヤーハーネス製造の作業効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】凹部41を形成する取付治具40の先端面43S,43Sに、コンベックスバンド30を配置する。そして、複数の電線11およびコンベックスバンド30を、取付治具40の凹部41内に進入させ、複数の電線11にコンベックスバンド30を巻き付ける。さらに、コンベックスバンド30が取り付けられた複数の電線11を、取付治具40の凹部41から取り出す。この際、凹部における入口部分よりも幅広となっている接続部分45の内側を、コネクタ付電線10のコネクタ13が通ることで、コネクタ付電線10が取付治具40から取り外される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ付電線を布線板上で布線することによって、ワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネス製造方法であって、
(a) 前記コネクタ付電線における複数の電線に、断面が樋状であってかつ薄板状に延びる金属製のコンベックスバンドを巻き付ける工程、
を含む、ワイヤーハーネス製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス製造方法において、
(b) 前記(a)工程の前において、前記コネクタ付電線を、前記複数の電線が垂れ下げられている状態で保持する工程、
をさらに含む、ワイヤーハーネス製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワイヤーハーネス製造方法において、
前記(a)工程は、
(a−1) 前記複数の電線が延びる方向に直交する方向から、当該複数の電線を内部に挿入可能な凹部を形成する取付治具の先端に、前記薄板状に延びるコンベックスバンドを配置する工程と、
(a−2) 前記(a−1)工程の後、前記複数の電線および前記コンベックスバンドを、前記取付治具の凹部内に進入させ、前記複数の電線に前記コンベックスバンドを巻き付ける工程と、
(a−3) 前記(a−2)工程にて、前記コンベックスバンドが取り付けられた前記複数の電線を、前記取付治具の凹部から取り出す工程と、
を含む、ワイヤーハーネス製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤーハーネス製造方法において、
前記取付治具は、前記凹部の幅が奧側において幅広となっており、
前記(a−3)工程は、前記幅広となっている部分を、前記コネクタ付電線のコネクタが通ることによって、前記複数の電線が前記取付治具から取り出される工程である、
ワイヤーハーネス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布線板(または、図板)上に配置された複数の治具を利用して、複数の電線を既定の経路に布線し、結束等することによって、所要の形状に構成されたワイヤーハーネスを製造する方法が知られている。本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1では、電線を色つきの輪ゴムなどで束ねておくことによって、布線作業中に埋もれた電線が、どのシステムの電線かをわかりやすくすることで、後入れ端子の誤挿入を減らす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−25781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、布線作業中において、コネクタが他の電線に絡まったり、他の電線をくぐったりした場合、電線を引っ張るなどしてもコネクタが他の電線に引っかかってしまい、容易に解くことができない場合があった。この場合、コネクタの電線への絡まりやくぐりを解く手間が増えてしまい、ワイヤーハーネス製造の作業効率が著しく低下する場合があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、コネクタの電線への絡まりやくぐりを低減して、ワイヤーハーネス製造の作業効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、コネクタ付電線を布線板上で布線することによって、ワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネス製造方法であって、(a)前記コネクタ付電線における複数の電線に、断面が樋状であってかつ薄板状に延びる金属製のコンベックスバンドを巻き付ける工程、を含む。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス製造方法において、(b)前記(a)工程の前において、前記コネクタ付電線を、前記複数の電線が垂れ下げられている状態で保持する工程、をさらに含む。
【0009】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係るワイヤーハーネス製造方法において、前記(a)工程は、(a−1)前記複数の電線が延びる方向に直交する方向から、当該複数の電線を内部に挿入可能な凹部を形成する取付治具の先端に、前記薄板状に延びるコンベックスバンドを配置する工程と、(a−2)前記(a−1)工程の後、前記複数の電線および前記コンベックスバンドを、前記取付治具の凹部内に進入させ、前記複数の電線に前記コンベックスバンドを巻き付ける工程と、(a−3)前記(a−2)工程にて、前記コンベックスバンドが取り付けられた前記複数の電線を、前記取付治具の凹部から取り出す工程とを含む。
【0010】
また、第4の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネス製造方法において、前記取付治具は、前記凹部の幅が奧側において幅広となっており、前記(a−3)工程は、前記幅広となっている部分を、前記コネクタ付電線のコネクタが通ることによって、前記複数の電線が前記取付治具から取り出される工程である。
【発明の効果】
【0011】
第1から第4の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、コンベックスバンドによって、複数の電線の広がりを抑えることができる。これによって、コネクタ付電線のコネクタが、電線に絡まることが低減される。したがって、ワイヤーハーネス製造の作業の効率を向上させることができる。
【0012】
第2の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、複数の電線が垂れ下げられた状態でコネクタ付電線が保持されるため、複数の電線にコンベックスバンドを容易に取り付けることができる。
【0013】
第3の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、取付治具を用いて、コンベックスバンドを複数の電線に容易に取り付けることができる。
【0014】
第4の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、取付治具からコネクタ付電線を確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る複数のコネクタ付電線を保持する電線保持具の正面図である。
図2】実施形態に係るコンベックスバンドを、取付治具を用いて複数の電線に取り付ける様子を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る取付治具からコネクタ付電線を取り外す様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0017】
図1は、実施形態に係る複数のコネクタ付電線10を保持する電線保持具20の正面図である。
【0018】
コネクタ付電線10は、複数の電線11と、当該複数の電線11の先端部に取り付けられたコネクタ13とで構成されている。図示の例では、複数の電線11の両端のそれぞれに、コネクタ13が取り付けられている。電線保持具20は、複数のコネクタ付電線10を横一列に並べて保持することが可能に構成されている。
【0019】
より詳細には、電線保持具20は、横方向に延びる板状部21、および、該板状部21おいて所定の間隔を空けて配置されている複数のゴム部23を備えている。ゴム部23には、縦方向にスリットが設けられており、当該スリットに複数の電線11が差し込まれることによって、電線保持具20がコネクタ付電線10を保持する。
【0020】
なお、各コネクタ付電線10は、その複数の電線11の端部(すなわち、コネクタ13が取り付けられ部分)の近傍が、離間した2つのゴム部23,23によって、保持される。このため、図1に示されるように、電線保持具20は、コネクタ付電線10を、その複数の電線11が垂れ下がっている状態で保持する。
【0021】
図1に示されるように、電線保持具20に保持されたコネクタ付電線10には、コンベックスバンド30が取り付けられる。コンベックスバンド30は、図2に示されるように、長手方向に沿って中央部が凹んでいることによって、断面が樋状である肉薄の板状部材である。コンベックスバンド30は、凹んだ側の面(凹面30S)の一部が谷状に折り曲げられることによって、自然に筒状に丸まる。また、コンベックスバンド30は、丸められた状態から広げられることによって、再び薄板状に形状復帰することが可能となっている。
【0022】
なお、コンベックスバンド30の表面は、例えば、ゴムや樹脂等で覆われていてもよい。例えば、コンベックスバンド30の表面のうち、複数の電線11が主に接触する面である凹面30Sや、その端縁部分をゴムや樹脂等で覆うことによって、コンベックスバンド30の接触による電線11の損傷を効果的に抑制できる。
【0023】
図2は、実施形態に係るコンベックスバンド30を、取付治具40を用いて複数の電線11に取り付ける様子を示す斜視図である。また、図3は、実施形態に係る取付治具40からコネクタ付電線10を取り外す様子を示す斜視図である。
【0024】
図2に示されるように、取付治具40は、その中央部に凹部41を形成する平面視にてU字状に形成されている。凹部41は、複数の電線11が延びる方向に直交する方向から、当該複数の電線11を内部に挿入可能に構成されている。また、凹部41には、後述するように、複数の電線11とともにコンベックスバンド30が挿入される。
【0025】
より詳細には、取付治具40は、所定の間隔を隔てて互いに平行に延びる一対の平行部分43,43と、一対の平行部分43,43の端部同士を接続する接続部分45とで構成されている。図2に示されるように、一対の平行部分43,43は、凹部41の入口部分を形成しており、接続部分45は、凹部41の底部分を形成している。また、一対の平行部分43,43の先端部分は、面一となる平坦な先端面43S,43Sを形成している。
【0026】
このような取付治具40を用いて、コネクタ付電線10にコンベックスバンド30を取り付ける場合、まず、図2に示されるように、一対の平行部分43,43の先端面43Sに、コンベックスバンド30が配置される。なお、先端面43S,43Sが平坦な面ではなく、内側に凹んだ凹面を形成してもよい。例えば、コンベックスバンド30の形状に対応して、先端面43S,43Sを凹ませることによって、コンベックスバンド30の上下方向の位置を容易に固定できるため、取付作業が行いやすくなる。
【0027】
また、先端面43S,43Sに粘着性を持たせておくことによって、コンベックスバンド30が先端面43S,43Sに取り外し容易に貼り付くようにしてもよい。あるいは、先端面43S,43Sを磁石とすることで、磁性によって、コンベックスバンド30が先端面43S,43Sに接着するようにしてもよい。
【0028】
なお、一対の平行部分43,43の先端面43Sにおける縦方向(一対の平行部分43,43が対向する方向に垂直な方向)の長さは、特に限定されるものではない。しかしながら、コンベックスバンド30の幅よりも大きくすることによって、取付治具40に対してコンベックスバンド30を配置できる範囲を広げることができる。これによって、コンベックスバンド30をコネクタ付電線10に取り付けやすくなる。
【0029】
コンベックスバンド30が所定位置に配置されると、コネクタ付電線10の複数の電線11が、コンベックスバンド30に当てられ、コンベックスバンド30とともに凹部41へ押し込まれる。これによって、コンベックスバンド30が、折り曲げられて丸まり、内側に複数の電線11が挿通された筒状体となる。
【0030】
なお、取り付けられるコネクタ付電線10は、上述したように、電線保持具20によって、複数の電線11が垂れ下がった状体で保持されている。このため、複数の電線11を束ねて凹部41に挿入することは、比較的容易である。ただし、コンベックスバンド30が取り付けられる前のコネクタ付電線10は、必ずしも電線保持具20によって保持されていなくてもよい。
【0031】
筒状体となったコンベックスバンド30の内径が、複数の電線11で構成される電線束の太さよりも十分に大きい場合、コンベックスバンド30は、自重によって、電線11に沿って落下する。コンベックスバンド30が落下しない場合は、コンベックスバンド30を電線11に沿って滑らせ、所要の位置まで移動させてもよい。
【0032】
次に、凹部41に挿入された、コンベックスバンド30付きのコネクタ付電線10を、取付治具40から取り外す工程について説明する。図2に示されるように、接続部分45の内周部分の幅の最大値(W2)は、一対の平行部分43,43の間隔W1よりも大きくなっている。すなわち、凹部41における奥側の部分は、入口部分よりも幅広となっている。また、接続部分45の内周部分の幅は、コネクタ13が通過可能な幅とされている。このため、図3に示されるように、コンベックスバンド30が巻き付けられた複数の電線11およびコネクタ13を接続部分45の内側を通過させることで、取付治具40の凹部41から、コネクタ付電線10を取り出すことができる。
【0033】
W1をできるだけ小さくすることによって、取付治具40を、より短いコンベックスバンド30にも対応させることができる。また、W2をできるだけ大きくすることによって、コネクタ13を通り抜けやすくすることができる。ただし、凹部41における入口部分から底部分にかけての幅が均一となるように、取付治具40が形成されていてもよい。すなわち、W1がW2と等しくなるように、取付治具40が構成されていてもよい。
【0034】
なお、コネクタ付電線10が電線保持具20に保持されている場合、コネクタ付電線10が、電線保持具20のゴム部23にから抜き取られる。この状態で、取付治具40からコネクタ付電線10が取り外される。また、取付治具40から取り出されたコネクタ付電線10は、電線保持具20のゴム部23に取り付けられる。
【0035】
コンベックスバンド30が取り付けられたコネクタ付電線10は、詳細を省略するが、例えば、布線板(図板とも称される。)上で、既定の経路に沿って布線される。これによって、複数のコネクタ付電線10を所望の形状に整形されたワイヤーハーネスが製造される。この布線工程においては、コネクタ付電線10が、電線保持具20から取り外されて、布線される。なお、布線工程の前に、複数のコネクタ付電線10を1つの電線束とする、いわゆる仮結の製造が行われてもよい。仮結を製造する場合に置いても、コンベックスバンド30が取り付けられていることによって、上記と同様の効果が得られ、作業効率を向上させることができる。
【0036】
本実施形態では、コンベックスバンド30がコネクタ付電線10に取り付けられているため、複数の電線11を1つに束ねることができる。このため、図1に示されるように、複数の電線11のうち、一部の電線110が、残りの電線から膨らんで広がっていたとしても、コンベックスバンド30を取り付けることで、広がりを直たり、広がりを抑制したりすることができる。したがって、コネクタ付電線10を電線保持具20から取り外した際に、コネクタ付電線10におけるコネクタ13側の部分を誤って電線11の中に落としても、電線11への絡まり、あるいは、くぐり等が発生することを効果的に低減できる。このため、ワイヤーハーネス製造の作業効率を向上させることができる。
【0037】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 コネクタ付電線
11,110 電線
13 コネクタ
20 電線保持具
30 コンベックスバンド
30S 凹面
40 取付治具
41 凹部
43 平行部分
43S 先端面
図1
図2
図3