【解決手段】複数のコネクタ付電線90を規定の経路に沿って布線してワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネス製造方法において、コネクタ付電線90の電線部91が通される開口21が形成されており、コネクタ付電線90のコネクタ部91を内部に収容する中空の収容部材10を、前記コネクタ付電線に取り付ける工程を含む。収容部材10は、開口21に向かって先細りとなるように形成されている。また、コネクタ部93における電線部91が取り付けられている取付面93Sの最大幅が、開口21の最大開口幅よりも大きくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の布線作業においては、コネクタ付電線が、束になっている他の電線間に絡まって挟まってしまう事態が生じていた。コネクタ部の形状が、電線部と接続される部分が、電線部の接続方向に対して垂直な方向に広がっている場合、コネクタ付電線を抜き取ために、その電線部を引っ張ることで、コネクタ部が他の電線間に引っかかってしまう場合があった。このため、コネクタ部を他の電線間から抜き出す作業が必要となり、布線作業の効率が大幅に低下する場合があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、電線間に挟まったコネクタ部を抜けやすくすることで、布線作業の効率を改善する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、複数のコネクタ付電線を規定の経路に沿って布線してワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネス製造方法であって、(a)前記コネクタ付電線の電線部が通される開口が形成されており、前記コネクタ付電線のコネクタ部を内部に収容する中空の収容部材を、前記コネクタ付電線に取り付ける工程と、(b)前記(a)工程にて前記収容部材が取り付けられたコネクタ付電線を含む複数の電線を規定の経路に沿って布線する工程とを含み、前記収容部材は、前記開口が形成されている部分に向かって先細りとなるように形成されており、前記コネクタ部における前記電線が取り付けられている取付面の最大幅が、前記開口の最大開口幅よりも大きい。
【0007】
また、第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス製造方法であって、(c)前記(b)工程の後、前記収容部材を前記コネクタ付電線から取り外す工程、をさらに含む。
【0008】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係るワイヤーハーネス製造方法において、前記収容部材の両端部のそれぞれに、前記開口が形成されている。
【0009】
また、第4の態様は、第1から第3の態様までのいずれか1態様に係るワイヤーハーネス製造方法において、前記収容部材における、前記開口を形成する部分の縁部にゴム部材が取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
第1から第3の態様によると、コネクタ部の取付面における縦横の長さの最大値が、前記開口の縦横の開口幅よりも大きいため、開口からコネクタ部が抜けることが抑制され、収容部材の内部にコネクタを保持することができる。また、コネクタ付電線が他の電線間に挟まれたとしても、コネクタ付電線を引っ張ることで、他の電線間から収容部材を抜くことができる。したがって、布線作業の効率を向上することができる。
【0011】
また、第2の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、収容部材を取り外すことによって、コネクタ部を露出させることができる。
【0012】
また、第3の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、収容部材の両端部に設けられた2つの開口のどちらからも、コネクタ付電線の電線部を通すことができる。
【0013】
また、第4の態様に係るワイヤーハーネス製造方法によると、収容部材との接触による電線部の損傷を、ゴム部材によって抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1. 実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0016】
図1は、実施形態に係る閉状態の収容部材10の正面図である。
図2は、実施形態に係る閉状態の収容部材10の側面図である。
図3は、実施形態に係る開状態の収容部材10の側面図である。
図4は、実施形態に係る開閉構造部31の部分を拡大して示す収容部材10の部分側面図である。
【0017】
収容部材10は、略球体状を有する中空の樹脂製部材である。収容部材10は、コネクタ付電線90の電線部91を外部に露出させつつ、コネクタ付電線90のコネクタ部93をその内部に収容可能に構成されている。なお、図示の例では、コネクタ付電線90は、電線部91と、電線部91の先端に取り付けられた電装品に装着されるコネクタ部93とで構成されている。図示の例では、コネクタ部93の背面(すなわち、電線部91が取り付けられている取付面93S)は、電線部91の接続方向(もしくは、電線部91の延びる方向)に対して、垂直な面を形成している。
【0018】
収容部材10は、収容部材10の上側を構成する上側半球部11と、収容部材10の下側を構成する下側半球部13と、上側半球部11の縁部および下側半球部13の縁部を連結する曲げ変形可能なヒンジ部15とを備えている。
図3に示されるように、収容部材10は、ヒンジ部15を支点にして、上側半球部11および下側半球部13が分離または接近することで、開閉可能に構成されている。
【0019】
なお、以下の説明に置いては、上側半球部11の側を収容部材10の上側とし、下側半球部13の側を収容部材10の下側とする。また、「内側」および「外側」をいうときは、特に断らない限り、閉状態における収容部材10の内側または外側を指すものとする。
【0020】
図1または
図2に示されるように、閉状態における収容部材10の両端部には、収容部材10の内部空間10Rを外部に連通させる開口21が形成されている。このため、収容部材10は、筒状体となっている。開口21には、コネクタ付電線90の電線部91が通される(
図1または2参照)。
【0021】
図2または
図3に示されるように、上側半球部11および下側半球部13における、開口21を形成する縁部には、ゴム部材23がそれぞれ取り付けられている。ゴム部材23を取り付けることによって、収容部材10との接触による電線部93の損傷を抑制することができる。なお、ゴム部材23は、開口21を形成する部分の縁部の全部に設けられていてもよいが、その一部に設けられていてもよい。
【0022】
開口21の開口幅は、コネクタ付電線90のコネクタ部93が抜けないように設計されている。より詳細には、コネクタ部93の電線部91が取り付けられている取付面93Sの最大幅が、開口21の最大開口幅よりも大きくなっている。例えば、コネクタ部93の取付面93Sが正方形状または長方形状であって、開口21が直径R1の円形状である場合を想定する。すると、取付面93Sの対角線の長さは、取付面93Sの最大幅(=W1)となり、開口21の最大開口幅はR1となる。したがって、この場合には、W1>R1を満たすように、開口21の開口幅が設定される。これによって、コネクタ部93が開口21を通り抜けることを抑制できるため、コネクタ部93を収容部材10の内部に適切に保持することができる。
【0023】
次に、収容部材10の開閉を実行するための開閉構造について説明する。開閉構造部31は、下側半球部13の縁部であって、ヒンジ部15とは反対側の端部に固定されている。開閉構造部31は、下側半球部13の縁部から、閉状態における上側半球部11に重なるように、上下に延びている。
【0024】
開閉構造部31は、周囲部分に対して、弾性的に傾動する傾動部33を有している。傾動部33の上側先端部331および両側の側部333は、開閉構造部31における他の周囲部分35から切り離されている(
図1参照)。そして傾動部33は、その下側基端部335において、周囲部分35と連結されている。上側先端部331の内面331S(収容部材10の内側に向かう方向の面)は、閉状態の収容部材10における、上側半球部11の外面に当接する。また、上側先端部331の外面331S(収容部材10の外側に向かう方向の面)は、周囲部分35の外面35Sに対して、外側に突出している。
【0025】
また、上側半球部11の外周面には、凸部111が設けられている。閉状態の収容部材10においては、凸部111は、開閉構造部31における、傾動部33の上方に設けられた空間33Rの内部に納められている。これによって、凸部111が、開閉構造部31に係止されるため、上側半球部11の開放が抑制される。
【0026】
閉状態の収容部材10を開放する場合には、傾動部33の外面333Sが内側に押し込まれる。これによって、傾動部33における上側先端部331が、下側基端部335を支点にして内側へ傾動し、内側へ入り込む。すると、上側半球部11が、上側先端部331に押されることによって弾性変形し、その外周面が内側へ押し込まれることとなる。その結果、上側半球部11の凸部111が開閉構造部31の空間33Rから抜け出し、係止が解除される。これによって、
図4に示されるように、収容部材10が開状態となる。
【0027】
収容部材10にコネクタ付電線90を収容する場合、
図3に示されるように、開状態とされた収容部材10の内部に、コネクタ付電線90のコネクタ部93が、収容部材10の内部に納められ、コネクタ部93から延びる電線部91が、下側半球部13(または上側半球部11)の開口21を形成する切欠き部分に納められる。この状態で、上側半球部11を下側半球部13に押し当てて、凸部111を開閉構造部31の空間33Rに導入する。これによって、収容部材10が、コネクタ部93を内部に収容した状態で閉じられることとなる。
【0028】
上述したように、収容部材10の両端部に開口21,21が形成されているため、どちらの開口21からも電線部91を通すことができる。このため、コネクタ付電線90に対する収容部材10の取り付け作業を効率よく行うことができる。また、図示を省略するが、1つのコネクタ部93から二方向に分かれて電線部91が延びているようなコネクタ付電線についても、収容部材10を取り付けることが可能である。
【0029】
<ワイヤーハーネス製造方法>
次に、ワイヤーハーネスの製造方法について説明する。
【0030】
図5は、実施形態に係るワイヤーハーネスを製造する流れを説明する図である。本実施形態に係るワイヤーハーネス製造方法は、
図5に示されるように、収容部材取り付け工程S1と、布線工程S2と、収容部材取り外し工程S3とで構成されている。
【0031】
まず、収容部材取り付け工程S1は、コネクタ付電線90に収容部材10を取り付ける工程である。収容部材10の取り付け方法については、
図1〜
図4において説明したため、ここでは詳細を省略する。この収容部材10の取り付けは、完成品であるワイヤーハーネスに用いられるコネクタ付電線90のうち、全てに対して行われてもよいが、一部に限定して行われてもよい。収容部材取り付け工程S1が完了すると、次に、布線工程S2が実行される。
【0032】
図6は、実施形態に係る布線工程を説明するための図である。
図6に示されるように、収容部材10が取り付けられた複数のコネクタ付電線90が、布線板41上に一時的に仮置きされる。布線板41上には、複数の治具43が立設されている。治具43は、複数のコネクタ付電線90を規定の経路に沿って配索するため道具であり、コネクタ付電線90の電線部91を保持するU字状部分を備えている。布線板41上に仮置きされた複数のコネクタ付電線90は、各治具43のU字状部分に載置され、規定の経路上に配索された後に、適宜結束される。なお、
図6においては、仮置きされたコネクタ付電線90が実線で示されており、規定の経路上に配索されたコネクタ付電線90が仮想線(2点鎖線)で示されている。
【0033】
この布線工程S2においては、作業者が配索しようとするコネクタ付電線90が、他の電線95,95間に挟まってしまう場合がある(
図1参照)。このとき、作業者が、コネクタ付電線90を抜きとるために、電線部91を矢印D1の向き(コネクタ部93から離れる方向)に引っ張ったとすると、収容部材10が、他の電線95,95に接触することとなる。このとき、収容部材10は、上述したように、略球体状に形成されているため、他の電線95が収容部材10の外周面に沿って移動することができる。このため、コネクタ付電線90を引っかかった他の電線95,95から容易に抜き取ることができる。このように、コネクタ付電線90のコネクタ部93を、あらかじめ収容部材10で覆っておくことによって、布線作業の効率を向上することができる。また、電線部91を無理に引っ張ることによって発生するキンクを抑制することができる。
【0034】
また、収容部材10によって、コネクタ部93を他の部材との衝突から保護できるため、布線作業中におけるコネクタ部93の破損を抑制することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、収容部材10を略球体状としているが、収容部材10の形状は、略球体状に限定されるものではない。収容部材10が、内側の方から開口21が形成されている端部に向かって、先細りとなるように形成されておればよい。つまり、収容部材10において、開口21の部分が、最も細くなっており、そこから収容部材10の内側へ進むにしたがって、収容部材10がコネクタ部92を収容可能な程度にまで徐々に太くなるように形成される。このように、開口21が形成されている端部に向けて先細りとすることによって、電線部11を引っ張ったときに、収容部材10が他の電線95,95間で引っかからずに、くぐりぬけやすくすることができる。
【0036】
図5に戻って、布線工程S2が完了すると、収容部材取り外し工程S3が実行される。なお、収容部材10をコネクタ付電線90から取り外す方法については、
図4等において説明したため、ここでは説明を省略する。収容部材取り外し工程S3において、収容部材10が取り外されることによって、コネクタ部93を外部に露出させることができる。これにより、電装品に接続することが可能なワイヤーハーネスを得ることができる。
【0037】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0038】
例えば、
図7に示されるように、略卵状の収容部材10Aを用いることも可能である。この場合、
図7に示されるように、正面視にて長径をとる両端部の位置に開口21を形成することによって、収容部材10Aの中央部の太さ(断面の面積)を小さくすることができる。
【0039】
また、
図8に示されるように、2つの錐台の下面(錐台における、対向する2つの面のうち、面積が大きい方の面)に相当する部分同士を重ね合わせた立体形状の収容部材10Bを採用することも考えられる。この場合、
図8に示されるように、各錐台の上面(錐台において、対向する2つの面のうち、面積が大きい方の面)に相当する部分のそれぞれに、開口21が形成される。なお、図示の例では、円錐台であるが、角錐台であってもよい。
【0040】
また、収容部材10,10Aおよび10Bに、それぞれの中心から開口21に向かう方向に関して、太さが均一となる部分を形成してもよい。
【0041】
また、収容部材10の形状を、単一の錐台からなる立体の形状としていてもよい。この場合、錐台の上面に相当する部分に、開口21が形成される。
【0042】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。