【解決手段】CFRPを主材料とするベース部材10と、ベース部材10内に配され導電材料よりなるバスバー30と、バスバー30に接続されるアース端子28と通電時に発熱を伴うフィルタ素子であるコンデンサ22とが設けられるノイズフィルタ20とを備えるアース構造であって、ノイズフィルタ20はベース部材10に取付け用開口部11を開口させて露出したバスバー30上に取付けられる。バスバー30には、ベース部材10から外部に突出する放熱部31が一体に張り出し形成されている
前記ベース部材には、前記アース用導体の本体部を露出させる取付け用開口部が形成され、その内部において前記ノイズフィルタが前記アース用導体に取付け可能となっており、かつ前記ノイズフィルタは、前記ベース部材の外面から内方へ引っ込んだ状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアース構造。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明のアース構造は、前記放熱部が、前記アース用導体の本体部からその長手方向と交差する向きに突出して形成され、前記ノイズフィルタは、前記本体部において前記放熱部が形成されている幅領域とほぼ対応する幅領域内に配され、前記アース用導体の本体部における前記ノイズフィルタの配設領域を前記長手方向から挟む部位には、前記長手方向と交差する向きでの断面積を減じるよう除肉された熱拡散抑制部が設けられる構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、熱拡散抑制部によって本体部の長手方向に向かう放熱経路の断面積が減じられるため、同方向への熱の伝達が抑制される。逆に、放熱部への伝熱が促されるため、放熱効率を高めることができる。
【0011】
(2)また、前記ベース部材には、前記アース用導体の本体部を露出させる取付け用開口部が形成され、その内部において前記ノイズフィルタが前記アース用導体に取付け可能となっており、かつ前記ノイズフィルタは、前記ベース部材の外面から内方へ引っ込んだ状態で取り付けられるようにするとよい。
このような構成によれば、ノイズフィルタのアース用導体に対する接続作業は
取付け用開口部を通して容易に行うことができる。また、取付けられたノイズフィルタはベース部材の外面から引っ込んだ状態となっているため、異物との干渉が回避され損傷から保護される。
【0012】
(3)さらに、ノイズフィルタのアース端子は、前記放熱部に接続されるようにしてもよい。
このような構成によれば、放熱部を利用してノイズフィルタの取付けを行うことができるため、ノイズフィルタ専用の取付け部を確保する必要がない。したがって、アース構造を簡素化することができる。また、放熱経路の短縮化により、放熱性にも優れる。
【0013】
次に、本発明のアース構造を具体化した実施例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<実施例1>
図1乃至
図3は本発明の実施例1を示している。
図1は自動車の車両フレームとしてのベース部材10に対して適用されたアース構造の周辺部分を示している。
図1においては、ベース部材10の一部が示されており、左右方向を長手方向とする長尺の部材となっている。ベース部材10は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を主材料としており、例えばエポキシ樹脂等を母材に、炭素繊維を強化材として用いて成形されたものである。
【0015】
図1に示すように、ベース部材10には長手方向に沿ってバスバー30(アース用導体)が内蔵されている。バスバー30は導電金属製の平板材によって形成されており、
図3に示すように、ベース部材10に対し厚み方向のほぼ中央部に配され、ベース部材10がインサート成形される際に内部に組込まれる。
図1に示すように、バスバー30の本体部33はベース部材10の長手方向に沿って延出している。バスバー30の途中部位には、バスバー30の長手方向とほぼ直交する方向へ向けて放熱部31が張り出し形成されている。放熱部31は後述するコンデンサ22に対する放熱を行うためのものであり、ベース部材10から外方へ突出している。本実施例の放熱部31はベース部材10の長手方向に長い長方形状に形成されている。
【0016】
図1に示すように、ベース部材10の適所の上面には後述するノイズフィルタ20(コネクタ)を取り付けるための取付け用開口部11が表裏両面に開口している。取付け用開口部11は放熱部31が形成されている幅領域(
図1中にWで示された領域)内に配されている。取付け用開口部11は円形形状に形成され、バスバー30の一部をベース部材10の表裏に露出させている。バスバー30のうち、この露出された領域はノイズフィルタ20を取付けてアース端子28を接続するためのアース接続部32となる。
【0017】
次に、ノイズフィルタ20について説明する。
図2に示すように、本実施例のノイズフィルタ20はコネクタとして構成されており、合成樹脂製のハウジング21を有している。ハウジング21の内部はコンデンサ22を収容するコンデンサ収容室23と雌端子金具42を収容するための端子収容室24とから構成されている。
【0018】
コンデンサ収容室23内に収容されたコンデンサ22からは一対のリード27a,27bが導出されている。このうち、一方のリード27bはアース端子28に接続され、他方のリード27aは雄端子金具26に接続されている。コンデンサ22は通電によって発熱し、本願発明のフィルタ素子に相当する。
【0019】
一方、端子収容室24内にはランス25が形成され、雌端子金具42に弾性的に係止して雌端子金具42を抜け止めすることができる。雌端子金具42は端子収容室24内に正規に収容された状態で雄端子金具26と接続可能である。
【0020】
アース端子28はハウジング21から外方へ、具体的には
図2に示すように、コンデンサ22が収容されている側と反対側へ突出している。
図3に示すように、アース端子28がハウジング21から突出する部分はハウジング21の底面とほぼ面一をなし、かつここには円形のボルト孔29が貫通して形成されている。これに対応してアース接続部32にはバスバー側貫通孔34が貫通して形成されている。アース端子28を固定する場合、つまりノイズフィルタ20を固定する場合には、ボルト孔29とバスバー側貫通孔34とを整合させ、ベース部材10の表面側からボルト50を貫通させた状態で、裏面側に配されたナット51へと締め込みがなされる。ノイズフィルタ20の取付けられる向きは、
図1に示すように、コンデンサ22の突出方向に沿っているが、より具体的には、放熱部31に近い側にコンデンサ22が位置し、遠い側にアース端子28の先端部が位置するような向きとしてある。また、バスバー30においてノイズフィルタ20が取付けられている側の面からベース部材10の外面に至るまでの距離(
図3に示すH1寸法)は、ノイズフィルタ20のハウジング21の厚み(同図に示すH2寸法)より大きくしてある(H1>H2)。換言すれば、取付け用開口部11の深さは、ノイズフィルタ20がベース部材10から外部に突出させない設定となっている。
【0021】
さらに、
図1に示すように、取付け用開口部11にはベース部材10の外方へと抜ける電線導出溝12が形成され、雌端子金具42に接続された電線40をベース部材10から導出可能としている。
【0022】
図1に示すように、バスバー30の本体部33においてノイズフィルタ20の配設領域を長手方向から挟む部位、換言すれば本体部33において放熱部31の幅領域に対応する領域(
図1に示すWで示された幅領域)には一対の熱拡散抑制部35が設けられている。両熱拡散抑制部35はバスバー30の本体部33の両側縁からほぼ直角にかつ対向するようにして切り込まれた一対のスリットによってそれぞれ形成されている。このように、両スリットが対向して設けられることにより、バスバー30は長手方向と直交する向きでの断面積が減じられている。なお、対向する両スリット間の間隔は、放熱部31の幅寸法(W)よりも充分に狭くなるように設定されている。
【0023】
次に、上記のように構成された実施例1の作用効果を説明する。コンデンサ22に通電がなされると、電流中に含まれているノイズ成分はコンデンサ22を通じてアース端子28とバスバー30のアース接続部32とのアース接続により除去される。
【0024】
一方、コンデンサ22は通電に伴って発熱する。ベース部材10を構成するCFRPは金属材であるバスバー30に比較して熱伝導性が低いため、コンデンサ22で生じた熱はベース部材10に伝熱するよりも、ハウジング21の底面を介して専らアース接続部32に伝わる。
【0025】
アース接続部32に伝わった熱は、アース接続部32におけるコンデンサ22が設けられた部位を中心に、バスバー30の本体部33の長手方向に沿う双方向及び放熱部31に向かう方向へ拡散しようとする。しかし、本実施例においては、本体部33の長手方向に沿う方向の放熱経路に関しては、両熱拡散抑制部35によって放熱経路が狭められており、かつベース部材10に挟まれていることから、この放熱経路では温度勾配が緩く、伝熱量が低くなっている。これに対し、アース接続部32から放熱部31へ向かう放熱経路は放熱部31の全幅に及び、かつ放熱部31がベース部材10から突出し放熱部31の全体が外部に露出しているため、放熱部31へ向かう経路は相対的に温度勾配が急であり、その分伝熱量が高くなっている。したがって、コンデンサ22で生じた熱は放熱部31へ向かう経路に沿って優先的に伝熱するため、コンデンサ22での発熱を効率よく外部に放熱することができる。
【0026】
また、アース接続部32は放熱部31が形成されている幅範囲内(W寸法内)に設けられているため、放熱経路が短くて済み、このことも放熱効率の向上に寄与する。さらに、同様の観点で、ノイズフィルタ20の取付け姿勢に関し、発熱部材であるコンデンサ22が収容されている側を放熱部31側に向けるようにしているから、一層、放熱効率が高められる。
【0027】
さらに、本実施例の場合、ノイズフィルタ20は取付け用開口部11内においてベース部材10の外面から引っ込んだ状態で取り付けられているから、異物との干渉による損傷を未然に回避する、という効果も得られる。
【0028】
<実施例2>
図4は本発明の実施例2を示している。実施例2はノイズフィルタ20を放熱部31に直接取り付けるようにしたものである。このようにすれば、実施例1に比較して放熱経路がさらに短縮化されるため、より放熱効率を高めることができる。また、ノイズフィルタ20の取付け作業を、開放されたスペースにおいて行うことができるため、取付け作業を円滑に行うことができる。さらに、ベース部材10に取付け用開口部11が形成されないため、ベース部材10の強度を低下させる懸念もない。
他の構成は実施例1と同様であり、もって同様の作用効果を発揮することができる。
【0029】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、フィルタ素子をコネクタ内に組込んだ形式のノイズフィルタ20を例示した。しかし、ノイズフィルタ20自体は必ずしもコネクタ機能を必要とするものではない。ノイズフィルタ20及びアース端子28を単なるケース内に組込み、ケースから引き出された電線40の端末部に外部機器との接続を行うコネクタを設けるような形式であってもよい。
(2)上記実施例では、放熱部31をバスバー30の片側のみに設けたが、両側に設けてもよい。放熱部31に関しては、その設置数、および形状は決して限定されるべきものではない。
(3)上記実施例ではフィルタ素子としてコンデンサ22を例示したが、フィルタ素子はコイルであってもよい。
(4)上記実施例では、ベース部材10に取付け用開口部11を設け、この開口部を通してバスバー30へのノイズフィルタ20の取付けを行った。つまり、バスバー30がベース部材10に内蔵された後にノイズフィルタ20の取付けがなされていた。しかし、この取付け順に限らず、予めノイズフィルタ20をバスバー30に取付けておいた後に、これをベース部材10に組込むようにしてもよく、このようにすれば必ずしも取付け用開口部11を設けなくて済む。
(5)上記実施例では、熱拡散抑制部35を一対のスリットを対向させて放熱経路を絞り込むことで構成したが、スリットに代えて他の構成であってもよい。例えば、バスバー30における当該部位の厚みを減じたりすることが考えられる。
(6)上記実施例では、取付け用開口部11がベース部材10の表裏両面に開口する形式を示したが、片側の面にのみ開口するようにしてもよい。
(7)上記実施例では、ベース部材としてCFRPを主材料として形成された場合を説明したが、他の材料で形成されるようにしてもよい。要は、ベース部材がアース用導体(バスバー)に比較して熱伝導性の低い樹脂材で形成されればよい。