【課題】固定子と、回転子と、該固定子を冷却するためにケーシング内に冷却液を噴霧する噴霧装置とを備えた回転電機において、冷却液に起因する回転子のアンバランスの発生を防止可能な構成を得る。
【解決手段】同期電動機(1)は、ケーシング(10)と、固定子(20)と、回転子(30)と、少なくとも固定子(20)の端部を冷却するためにケーシング(10)内に冷却液を噴霧する噴霧装置(14)とを備える。回転子(30)は、回転軸方向に延びる柱状に形成され、少なくとも一方の端部で開口するように前記回転軸方向に延びる回転子スロットを有する回転子本体(30a)と、回転子スロット内に配置された磁石(32)と、回転子本体(30a)における前記少なくとも一方の端部の開口を塞ぐように、該少なくとも一方の端部に配置されたプレート(34)とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1,2に開示されている構成のように、ケーシング内方に向かって冷却液を噴霧する構成では、該ケーシング内に冷却液が充満して、回転子及び固定子の表面に冷却液が付着する。
【0005】
一方、回転電機の一種として、回転子鉄心内に磁石が配置された、いわゆるIPM(Interior Parmanent Magnet)型の回転電機が知られている。このようなIPM型の回転電機では、回転子鉄心の内部に設けられた挿入穴内に磁石が配置されるため、該挿入穴と磁石との間に隙間等が生じる可能性がある。
【0006】
特に、回転子鉄心内に磁石が所定数、配置されているかどうかを確認するために、回転子本体の回転軸方向の少なくとも一方の端部に、前記挿入穴に繋がる開口を設けた場合、冷却液が該開口から挿入穴内に浸入する可能性がある。
【0007】
回転子が高速で回転している間であれば、回転子本体に開口が形成されていても、遠心力及び風圧によって冷却液は該開口内にほとんど進入しない。しかしながら、回転子が停止している間にケーシング内に冷却液を噴霧した場合には、回転子本体の開口から挿入穴と磁石との隙間内に冷却液が浸入する可能性がある。
【0008】
そうすると、挿入穴と磁石との隙間内に浸入した冷却液によって、回転子にアンバランスが生じて軸振動等の原因の一つになる。
【0009】
本発明の目的は、回転子と、固定子と、該固定子を冷却するためにケーシング内に冷却液を噴霧する噴霧装置とを備えた回転電機において、冷却液に起因する回転子のアンバランスの発生を防止可能な構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態にかかる回転電機は、ケーシングと、前記ケーシング内に配置され、該ケーシングに対して固定された固定子と、前記ケーシング内に配置され、該ケーシングに対して回転可能に支持された回転子と、少なくとも前記固定子の端部を冷却するために前記ケーシング内に冷却液を噴霧する噴霧装置とを備える。前記回転子は、回転軸方向に延びる柱状に形成され、少なくとも一方の端部で開口するように前記回転軸方向に延びる挿入穴を有する回転子本体と、前記挿入穴内に配置された磁石と、前記開口を塞ぐように、前記回転子本体における前記少なくとも一方の端部に配置された閉塞部材とを有する(第1の構成)。
【0011】
以上の構成により、噴霧装置によってケーシング内に噴霧された冷却液が、回転子本体の挿入穴内に浸入するのを防止できる。すなわち、回転子本体の少なくとも一方の端部に形成された開口は、閉塞部材によって塞がれるため、該開口を介して挿入穴内に冷却液が浸入するのを防止できる。
【0012】
これにより、回転子本体の内部に冷却液が浸入することによって回転子にアンバランスが生じるのを防止できる。したがって、回転子本体内の冷却液に起因して回転電機の軸振動が増大するのを防止できる。
【0013】
前記第1の構成において、前記回転子本体は、前記回転軸方向に延びる柱状に形成され、前記挿入穴を有する回転子鉄心と、前記回転子鉄心における前記回転軸方向の少なくとも一方の端部に配置され、前記開口としての確認穴を有する押さえ板とを備える。前記閉塞部材は、前記確認穴を塞ぐように、前記押さえ板に取り付けられている(第2の構成)。
【0014】
これにより、回転子鉄心の回転軸方向の端部に押さえ板が配置され、且つ、該押さえ板に回転子鉄心の挿入穴に繋がる開口として確認穴が形成されている構成において、確認穴を閉塞部材によって塞ぐことができる。よって、回転子鉄心内の挿入穴内に冷却液が浸入するのを防止できる。
【0015】
前記第1または第2の構成において、前記閉塞部材は、前記開口を覆うように前記回転子本体における前記少なくとも一方の端部に取り付けられた板部材である(第3の構成)。このように、板部材によって回転子本体の端部の開口を覆うことにより、該開口から回転子本体の内部に冷却液が浸入するのをより確実に防止できる。しかも、閉塞部材を板部材によって構成することで、該閉塞部材にバランス調整用ウェイトを取り付けるなど、該閉塞部材を他の用途にも利用することが可能になる。
【0016】
前記第3の構成において、前記板部材には、バランス調整用ウェイトを取り付けるための取付部が形成されている(第4の構成)。これにより、回転子本体の開口を覆う板部材に、バランス調整用ウェイトを取り付けることができる。よって、上述の構成により、閉塞部材としての板部材によって、回転子本体内への冷却液の浸入を防止できるとともに、回転子のバランス調整も行うことができる。
【0017】
前記第4の構成において、前記取付部は、前記板部材における前記回転子本体とは反対側の面に、前記回転軸方向から見て円形状に形成された取付溝である。前記取付溝は、断面視で、溝底の溝幅が開口側の溝幅よりも大きい台形状に形成されている。前記バランス調整用ウェイトは、前記取付溝内に移動可能に配置されている(第5の構成)。
【0018】
これにより、板部材に形成された取付溝からバランス調整用ウェイトが容易に落下するのを防止できる。よって、回転子のバランス調整の際に、ウェイト等の部品がケーシング内に落下するのを防止できる。
【0019】
前記第3から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記回転子本体には、前記回転軸方向の少なくとも一方の端部に、ねじ式のバランス調整用ウェイトを取り付けるためのねじ穴が形成されている。前記板部材は、前記ねじ穴を利用してねじ部材によって前記端部に固定される(第6の構成)。
【0020】
これにより、板部材を取り付けるためのねじ穴等を回転子本体に設ける必要がない。すなわち、ねじ式のバランス調整用ウェイトを取り付けるためのねじ穴を利用して板部材を回転子本体に取り付けるため、既設の回転電機に対しても板部材を容易に取り付けることができる。
【0021】
しかも、ねじ部材によって板部材を回転子本体に取り付けるため、該板部材を容易に取り外すことが可能になる。これにより、板部材を取り外して、回転子本体の開口から挿入穴内の磁石を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係る回転電機によれば、回転子本体の内部に磁石を有するとともに、噴霧装置によってケーシング内に冷却液を噴霧する構成において、回転子本体の挿入穴の開口を閉塞部材によって塞ぐ。これにより、ケーシング内に噴霧された冷却液が開口から回転子本体内に浸入するのを防止できる。したがって、回転子本体内に浸入した冷却液によって回転子にアンバランスが生じるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る同期電動機1(回転電機)の概略構成を示す図である。この同期電動機1は、略円筒状のケーシング10と、該ケーシング10の内周面に固定された円筒状の固定子20と、該固定子20内に回転可能に配置された回転子30とを備える。同期電動機1は、後述するように回転子30の回転子鉄心31内に磁石32が埋設された、いわゆるIPM(Interior Parmanent Magnet)型の同期モータである。
【0026】
ケーシング10は、
図1及び
図2に示すように、略円筒状に形成されている。このケーシング10の両端の開口は、それぞれ、略円環状のブラケット11によって塞がれている。これにより、ケーシング10及びブラケット11によって、同期電動機1のフレームが構成される。なお、
図2に示すように、ケーシング10の両端の開口を覆う一対のブラケット11は、ケーシング10の両端に複数のボルト15によって固定される。
【0027】
ブラケット11は、
図1及び
図2に示すように、円形状の外径を有するとともに、平面視で中央部分に円形の穴部11aを有する。この穴部11a内には、
図1に示すように、後述する回転子30が固定されたローターシャフト40を回転可能に支持する軸受13が配置されている。詳しくは、ブラケット11の穴部11aの内面上には、軸受支持部12によって軸受13が支持されている。これにより、ローターシャフト40の両端部を、それぞれ、軸受13及び軸受支持部12を介してブラケット11によって支持することができる。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の同期電動機1では、ケーシング10の筒軸方向の中央部分に位置する中央部10aは、端部10bよりも内径及び外径が小さい。この中央部10aの内周面上に円筒状の固定子20が固定されている。すなわち、ケーシング10の中央部10aの内周面上に、固定子20の外周面が接触するように、該固定子20が固定されている。
【0029】
ケーシング10の端部10bのうち、中央部分10aに近い位置には、ケーシング10内に冷却油(冷却液)を噴霧するための噴霧装置14が設けられている。噴霧装置14は、固定子20の軸方向の両端に位置するコイルエンドにそれぞれ対応するようにケーシング10の内面上に設けられている。
【0030】
噴霧装置14は、図示しない外部のタンクからポンプ等を介して供給される冷却油を、ケーシング10内に霧状に噴射する。噴霧装置14は、主に固定子10のコイルエンドを冷却するように、冷却油を噴霧する。噴霧装置14の構成は、従来の構成(例えば、実開平6−36363号公報、実開平7−27270合公報など)と同様なので、詳しい説明を省略する。
【0031】
なお、
図2では、噴霧装置14は、ケーシング10の内周面上に周方向に3つ設けられている。しかしながら、噴霧装置14を2つ以下、または4つ以上設けてもよい。また、噴霧装置14の配置も、同期電動機1のケーシング10内の発熱部分を効率良く冷却可能な位置であれば、どのような配置であってもよい。
【0032】
図1及び
図3に示すように、固定子20は、固定子鉄心21と、該固定子鉄心21に設けられた複数の固定子スロット(図示省略)内にそれぞれ配置された複数の固定子コイル22とを有する。固定子鉄心21は、薄板の電磁鋼板を厚み方向に複数積層することにより、略円筒状に形成される。特に図示しないが、固定子鉄心21の内周面には、軸線方向に延びる溝状の固定子スロットが複数、形成されている。
【0033】
固定子鉄心21は、外周面がケーシング10の中央部分10aの内周面に接触した状態で該ケーシング10に固定されている。
【0034】
固定子コイル22は、固定子鉄心21に設けられた固定子スロット内に、固定子20の軸線方向に延びるように配置されている。固定子コイル22における前記軸線方向の両端部は、固定子鉄心21の軸線方向外方に突出している。固定子コイル22において、固定子鉄心21よりも軸線方向の外方に突出している部分は、いわゆるコイルエンド22aである。すなわち、コイルエンド22aは、固定子鉄心21の両端部の軸線方向外方にそれぞれ位置する。なお、コイルエンド22aは、固定子鉄心21の他の固定子スロット内に配置された固定子コイル22aのコイルエンド22aと電気的に接続されている。
【0035】
回転子30は、固定子20の内方に配置可能で且つローターシャフト40上に固定可能な略円筒状に形成されている。具体的には、回転子30は、ローターシャフト40の外周面上に、該回転子30の内周面が接触するように固定されている。また、回転子30は、その外周面と固定子20の内周面との間にギャップと呼ばれる微小な隙間が形成されるような外径を有する。
図1及び
図3において、符号Pは、回転子30及びローターシャフト40の回転軸である。
【0036】
図1及び
図3に示すように、回転子30は、回転子鉄心31と、該回転子鉄心31に設けられた複数の回転子スロット31a内にそれぞれ配置された複数の磁石32と、回転子鉄心31の両端部に位置する押さえ板33と、該押さえ板33に形成された確認穴33aを覆うプレート34(閉塞部材、板部材)とを有する。なお、回転子鉄心31と押さえ板33とによって回転子本体30aが構成される。
【0037】
図1及び
図3に示すように、回転子鉄心31は、薄板の電磁鋼板を厚み方向に複数積層することにより、回転軸方向に延びる略円筒状に形成される。
図4にも示すように、回転子鉄心31には、回転軸方向に貫通する複数の回転子スロット31a(挿入穴)が形成されている。この回転子スロット31aは、
図4に破線で示すように、断面略矩形状であり、略円形状の固定子鉄心の断面に対し、周方向に等間隔に形成されている。
【0038】
回転子鉄心31に形成された回転子スロット31a内には、回転子30の回転軸方向に延びる直方体状の磁石32が配置されている。磁石32は、上述のように断面矩形状に形成された回転子スロット31a内に、該回転子スロット31aの幅方向中央部分に配置されている。これにより、回転子30を断面で見て、磁石32は、回転子鉄心31内に周方向に等間隔で配置される。なお、特に図示しないが、一つの回転子スロット31a内には、回転軸方向に複数の磁石32が配置されている。
【0039】
また、磁石32は、回転子スロット31a内に図示しない接着剤等によって固定されている。すなわち、磁石32は、回転子スロット31a内に挿入される際に、表面に接着剤等が塗布されるため、回転スロット31a内で、磁石32同士、及び磁石32と回転子スロット31aの内面とが接着剤によって固定される。
【0040】
図1、
図3及び
図4に示すように、回転子鉄心31の回転軸方向の両端には、該回転子鉄心31を構成する電磁鋼板を、積層した状態で積層方向に押さえ込むための押さえ板33が配置されている。押さえ板33は、略円環状に形成されている。この押さえ板33の中央部分には、ローターシャフト40が貫通している。なお、特に図示しないが、回転子鉄心31の回転軸方向の両端にそれぞれ配置された押さえ板33同士は、回転子鉄心31内を貫通するボルト等によって連結されている。これにより、押さえ板33同士の間に、積層された電磁鋼板を挟み込むことができる。
【0041】
図4に示すように、押さえ板33には、回転子鉄心31に設けられた回転子スロット31aに対応して、該回転子スロット31a内の磁石32の有無を確認するための確認穴33aが形成されている。確認穴33aは、一つの回転子スロット31aに対して2箇所ずつ設けられている。押さえ板33に確認穴33aを設けることにより、押さえ板33を回転子鉄心31の両端に取り付けた状態で磁石32の有無を確認することができる。
【0042】
押さえ板33には、周方向に等間隔にねじ式のバランス調整用ウェイトの取付穴33b(ねじ穴)が複数、形成されている。これらの取付穴33bは、内面にねじ溝が形成されている。これにより、ねじ式のバランス調整用ウェイトを取付穴33bに固定することができる。
【0043】
(プレート)
図1及び
図3に示すように、押さえ板33の前記回転軸方向外方(押さえ板33の厚み方向外方)には、該押さえ板33に形成された確認穴33aを覆うプレート34が配置されている。プレート34は、
図2、
図5及び
図6に示すように、押さえ板33と同様、円環状に形成されている。詳しくは、プレート34は、押さえ板33及び回転子鉄心31と同等の外径を有するとともに、該押さえ板33及び回転子鉄心31の各内径よりも大きい内径を有する。
【0044】
プレート34には、押さえ板33のバランス調整用ウェイトの取付穴33bに対応して、周方向に等間隔に複数の取付穴34aが形成されている。プレート34の取付穴34aにボルト35を貫通させるとともに該ボルト35を押さえ板33の取付穴33bに締結させることにより、ボルト35によってプレート34を押さえ板33に固定することができる。このように、押さえ板33のバランス調整用ウェイトの取付穴33bを、プレート34を取り付ける際の取付穴として流用することにより、既設の同期電動機に対してもプレート34を取り付けることが可能になる。
【0045】
このように、押さえ板33にプレート34を取り付けることにより、押さえ板33の確認穴33a内に噴射装置14からケーシング10内に噴霧された冷却油が浸入するのを防止できる。
【0046】
ここで、本実施形態の同期電動機1は、上述のように、ケーシング10内に噴霧装置14によって冷却油を噴霧する構成である。そのため、
図7に示すように、押さえ板33に磁石32を確認するための確認穴33aが形成されていると、該確認穴33aから回転子鉄心31の回転子スロット31a内に冷却油が浸入する(
図7の矢印参照)可能性がある。特に、回転子30が回転していない状態で噴霧装置14によって冷却油を噴霧した場合には、冷却油が回転子30の押さえ板33の確認穴33a内に浸入する可能性がある。
【0047】
そして、回転子30の回転子スロット31aと磁石32との間に隙間が存在すると、その隙間内に冷却油が入り込んで、回転子30のアンバランスを生じる可能性がある。これにより、同期電動機1の軸振動等の問題を生じる可能性がある。
【0048】
これに対し、上述のように、押さえ板33にプレート34を取り付けることにより、プレート34によって押さえ板33の確認穴33aを塞ぐことができる。これにより、確認穴33a内に冷却油が入って、回転子30にアンバランスが生じるのを防止できる。
【0049】
図5に示すように、プレート34には、複数の取付穴34a同士の間に、バランス調整用ウェイト(
図2における符号を38)取り付けるためのウェイト取付穴34b(取付部)が形成されている。これにより、押さえ板33にプレート34が取り付けられた状態で、回転子30全体のバランスを補正するためのバランス調整用ウェイトをプレート34に取り付けることが可能になる。
【0050】
したがって、押さえ板33の確認穴33aを塞ぐプレート34を用いて、回転子30全体のバランス調整を行うことも可能になる。すなわち、プレート34によって、回転子30内への冷却油の浸入を防止しつつ、該回転子30のバランス調整も可能になる。
【0051】
また、プレート34には、一方の面(押さえ板33に取り付けられる側とは反対側の面)に、バランス調整用ウェイトを取り付けるためのウェイト取付溝34c(取付部、取付溝)が形成されている。ウェイト取付溝34cは、プレート34を平面で見て、円形状に形成されている。
図6に示すように、ウェイト取付溝34cは、断面視で、溝底の幅が開口部分の幅よりも広い。すなわち、ウェイト取付溝34cは、断面略台形状に形成された、いわゆるあり溝である。
【0052】
ウェイト取付溝34c内には、該ウェイト取付溝34c内に収納可能な断面略台形状のバランス調整用ウェイト36が配置される(
図2参照)。バランス調整用ウェイト36は、プレート34の径方向に分割されているとともに、分割されている部品同士の間隔を当該部品同士の隙間内に挿入する調整ねじ(図示省略)の締結度合いに応じて変更可能に構成されている。すなわち、バランス調整用ウェイト36は、ウェイト取付溝34c内で該ウェイト取付溝34cの溝幅方向に寸法が変更可能に構成されている。
【0053】
上述のような構成のバランス調整用ウェイト36をウェイト取付溝34c内に配置することにより、該バランス調整用ウェイト36をウェイト取付溝34c内で自由に移動させて、前記調整ねじを締結することによりバランス調整用ウェイト36を所定の位置で固定することができる。一方、調整ねじを緩めてバランス調整用ウェイト36におけるウェイト取付溝34cの溝幅方向の寸法を該ウェイト取付溝34cの開口部分の溝幅よりも小さくすることで、不要なバランス調整用ウェイト36をウェイト取付溝34c内から取り出すことも可能である。
【0054】
このように、バランス調整用ウェイト36がスライド移動可能なウェイト取付溝34cを設けることにより、バランス調整用ウェイト36がプレート34から落下するのをより確実に防止することができる。
【0055】
図5に示すように、プレート34には、ウェイト取付溝34cから径方向外方に向かって延びる複数の排油孔34dが形成されている。詳しくは、排油孔34dは、ウェイト取付溝34cにおけるプレート34の外周側の側面と、該プレート34の厚み方向に延びる側面とを繋ぐように、プレート34内に形成されている。このような排油孔34dを設けることにより、ウェイト取付溝34c内に溜まった冷却油を、回転子30が回転した際の遠心力によってプレート34の径方向外方に排出することができる。
【0056】
図6に示すように、プレート34における押さえ板33側の面には、Oリング37(
図3参照)を配置するための溝34eが形成されている。この溝34eは、特に図示しないが、平面視で略円形状に形成されている。
【0057】
プレート34に設けられた溝34e内にOリング37を配置することにより、プレート34と押さえ板33との間をOリング37によって密封することができる。これにより、プレート34と押さえ板33との間に冷却油が入り込むのを防止できる。したがって、押さえ板33の確認穴33a内に冷却油が浸入するのをより確実に防止することができ、回転子30にアンバランスが生じるのをより確実に抑制することができる。なお、本実施形態では、溝34eは、プレート34に同心円状に2つ形成されている。
【0058】
(実施形態の効果)
以上より、本実施形態では、回転子鉄心31内の回転子スロット31aに磁石32が配置された同期電動機1において、回転子鉄心31の両端に配置された押さえ板33の確認穴33aを塞ぐように、該押さえ板33にプレート34を取り付ける。これにより、押さえ板33の確認穴33aを介して回転子スロット31a内に冷却油が浸入するのを防止できる。したがって、回転子スロット31a内に浸入した冷却油によって回転子30にアンバランスが生じるのを防止できる。
【0059】
しかも、プレート34には、押さえ板33に取り付けられる側とは反対側の面に、バランス調整用ウェイトを取り付けるためのウェイト取付穴34b及びウェイト取付溝34cが形成されている。これにより、プレート34を押さえ板33に取り付けた状態で、回転子30全体のバランス調整を容易に行うことができる。しかも、プレート34を、押さえ板33の確認穴33aを塞ぐ部材としてだけでなく、バランス調整用ウェイトを取り付ける部材としても用いることができる。
【0060】
また、プレート34に設けるウェイト取付溝34cを、いわゆるあり溝に形成することで、ウェイト取付溝34cからバランス調整用ウェイトが容易に落下するのを防止できる。これにより、回転子30の最終のバランス調整を行う際などに、バランス調整用ウェイトが誤ってケーシング10内に落下するのを防止できる。
【0061】
さらに、プレート34と押さえ板33との間にOリング37を配置することにより、該プレート34と押さえ板33との間から冷却液が浸入するのをより確実に防止できる。これにより、押さえ板33の確認穴33aから回転子スロット31a内に冷却液が浸入して回転子30にアンバランスが生じるのをより確実に防止することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
前記実施形態では、押さえ板33の確認穴33aを塞ぐ部材として、プレート34を用いている。しかしながら、この限りではなく、確認穴33aを塞ぐプラグ(栓部材)など、該確認穴33aを塞ぐことができる部材であれば、どのような部材であってもよい。
【0064】
前記実施形態では、プレート34に、バランス調整用ウェイトを取り付けるためのウェイト取付穴34b及びウェイト取付溝34cの両方が形成されている。しかしながら、プレート34に、ウェイト取付穴34b及びウェイト取付溝34cのいずれか一方のみが形成されていてもよい。
【0065】
前記実施形態では、回転子30の両端に配置される押さえ板33にそれぞれ確認穴33aが形成されているとともに、各押さえ板33に対してプレート34が取り付けられている。しかしながら、押さえ板33の一方のみに確認穴33aを形成して、該確認穴33aのみをプレート34によって覆うようにしてもよい。
【0066】
前記実施形態では、固定子鉄心21及び回転子鉄心31を、それぞれ、複数の電磁鋼板を積層することによって構成している。しかしながら、固定子鉄心及び回転子鉄心は、鉄心として機能する構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0067】
前記実施形態では、IPM型の同期電動機の構成について説明したが、IPM型の回転電機であれば、他の構成であってもよい。