(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-123072(P2015-123072A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】担子菌を原料としたβ−グルカン含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/14 20060101AFI20150609BHJP
C12N 1/14 20060101ALN20150609BHJP
【FI】
C12P19/14 A
C12P19/14 Z
C12N1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-272400(P2013-272400)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】服部 武史
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF12
4B064BJ10
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC30
4B064CD22
4B064CE08
4B064DA20
4B065AA71X
4B065BD01
4B065BD08
4B065BD10
4B065BD16
4B065BD44
4B065BD50
4B065CA22
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】特殊装置を必要とせず、簡便な操作で効率的かつ安全にβ−グルカン含量の高い抽出物を得ることができる、担子菌を原料としたβ−グルカン含有組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】担子菌の菌糸体及び/又は子実体に抽出溶媒を加えて加圧処理した後、その加圧処理物に酵素を添加して酵素処理し、その酵素処理物の液部にβ−グルカンを溶出させる。担子菌が霊芝であることが好ましい。また、その酵素処理を、グルカナーゼ単独、又はグルカナーゼ及びキチナーゼを含む酵素を用いて行うことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担子菌の菌糸体及び/又は子実体に抽出溶媒を加えて加圧処理した後、該加圧処理物に酵素を添加して酵素処理し、該酵素処理物の液部にβ−グルカンを溶出させることを特徴とするβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記担子菌が霊芝である請求項1記載のβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記加圧処理を、温度100〜200℃、圧力0.1〜1.0MPaで行う請求項1又は2記載のβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記酵素処理を、グルカナーゼ単独、又はグルカナーゼ及びキチナーゼを含む酵素を用いて行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記加圧処理に先立って、前記担子菌の菌糸体及び/又は子実体を微粉砕処理する請求項1〜4のいずれか1項に記載のβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【請求項6】
前記酵素処理の後、固液分離して抽出液を回収し、次いで、得られた不溶性残渣に、第2の抽出溶媒を加えて撹拌し、再び固液分離して抽出液を回収する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のβ−グルカン含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担子菌を原料としたβ−グルカン含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β−グルカンは、グルコースがβ−結合により多数連結した多糖であり、植物や菌類等によって生産される。β−グルカンは免疫賦活作用を有することが知られており、臨床的にも利用されている。例えば霊芝(マンネンタケ)は、マンネンタケ科に属する担子菌の一種であり、古くから薬用として用いられており、免疫賦活作用、抗癌作用、血液降下作用等の多くの生理活性を有するとされている。これまでの研究で霊芝の示す生理作用の活性本体の一つが多糖体の一種であるβ−グルカンであることが明らかとなってきている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一般に多糖の水に対する溶解性は低く、また、天然物に含まれるβ−グルカンは他成分と結合することにより細胞壁などの構成成分となっていることから、通常の熱水処理などでは十分な抽出効率を得ることはできない。したがって、担子菌を原料にして効率的にβ−グルカンを得るためには、適切な方法で抽出処理を実施する必要があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば霊芝からβ−グルカンを抽出する方法として、下記特許文献1には、飽和蒸気圧以上の圧力で加圧し抽出温度まで加熱した加圧熱水を鹿角霊芝に接触させて加水分解してβ−グルカンを抽出する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、霊芝を熱温水に浸して含水させ、アルカリ水等を使用した加圧熱水抽出と、その抽出後の含水固形分に対する飽和水蒸気による加圧熱処理と、加圧熱処理した含水固形分に対する再度の加圧熱水抽出とを組み合わせてβ−グルカンを抽出する方法が開示されている。また、下記特許文献3には、鹿角霊芝を爆砕処理し、続いて微粉砕した後、微アルカリ性緩衝液中でプロテアーゼの存在下又は非存在下で加温処理してβ−グルカンを抽出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本農芸化学会誌 Vol.58 No.9 (1984) pp.871-880
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−138195号公報
【特許文献2】特開平11−243908号公報
【特許文献3】特開2006−37016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、優れた抽出効率を得るためには、2.0〜5.0MPaの高圧で加圧熱水を霊芝に接触させて加水分解する必要があり、(特許文献1の実施例)、その高圧状態に加圧する特殊な装置が必要であった。また、上記特許文献2の方法では、加圧熱水抽出と、その抽出後の含水固形分に対する飽和水蒸気による加圧熱処理と、更に再度の加圧熱水抽出とを繰り返す操作が煩雑であった。また、上記特許文献3の方法では、原料を爆砕処理し、続いて微粉砕する必要があり、原料の前処理の工程が煩雑であった。また、特殊な爆砕装置を要し、その安全運転面でも労力を要するものであった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、特殊装置を必要とせず、簡便な操作で効率的かつ安全にβ−グルカン含量の高い抽出物を得ることができる、担子菌を原料としたβ−グルカン含有組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のβ−グルカン含有組成物の製造方法は、担子菌の菌糸体及び/又は子実体に抽出溶媒を加えて加圧処理した後、該加圧処理物に酵素を添加して酵素処理し、該酵素処理物の液部にβ−グルカンを溶出させることを特徴とする。
【0010】
本発明のβ−グルカン含有組成物の製造方法によれば、担子菌の菌糸体及び/又は子実体に抽出溶媒を加えて加圧処理するので、これにより担子菌の細胞壁の構成成分に酵素が作用しやすい状態となり、これに酵素を添加して酵素処理するので、その酵素処理物の液部にβ−グルカンが溶出されやすい。よって、特殊装置を必要とせず、簡便な操作で効率的かつ安全に、β−グルカン含量の高い抽出物を得ることができる。
【0011】
本発明のβ−グルカン含有組成物の製造方法においては、前記担子菌が霊芝であることが好ましい。
【0012】
また、前記加圧処理を、温度100〜200℃、圧力0.1〜1.0MPaで行うことが好ましい。
【0013】
また、前記酵素処理を、グルカナーゼ単独、又はグルカナーゼ及びキチナーゼを含む酵素を用いて行うことが好ましい。
【0014】
また、前記加圧処理に先立って、前記担子菌の菌糸体及び/又は子実体を微粉砕処理することが好ましい。
【0015】
また、前記酵素処理の後、固液分離して抽出液を回収し、次いで、得られた不溶性残渣に、第2の抽出溶媒を加えて撹拌し、再び固液分離して抽出液を回収することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のβ−グルカン含有組成物の製造方法によれば、担子菌を原料とし、特殊装置を必要とせず、簡便な操作で効率的かつ安全にβ−グルカン含量の高い抽出物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いられる担子菌としては、菌体の構成成分としてβ−グルカンを含むものであればよく、例えば、霊芝(マンネンタケ)、カワラタケ、スエヒロタケ、シイタケ、マイタケ、エノキタケ、シメジタケ、ヒラタケ、ヤマブシタケ、ハナビラタケ、タモギタケ、メシマコブ、サルノコシカケ、アガリクス、エリンギ、ブナハリタケなど各種のものが挙げられる。特に霊芝が好ましい。
【0018】
担子菌の形態としては、菌糸体であってもよく子実体であってもよい。一般に子実体にはβ−グルカンが豊富に含まれているので、子実体であることがより好ましい。
【0019】
本発明に用いられる抽出溶媒としては、β−グルカンを抽出できるものであればよく、例えば、水、pH調整された緩衝液、あるいは水にエタノール、メタノール、プロパノール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒などの1種または2種以上を混合してなる含水有機溶媒などが挙げられる。後述する酵素処理の好適条件への調整を容易にするためには、酵素の阻害因子を含まないことが好ましく、無機イオン、塩、有機溶媒などは、それらを含まないか又は高濃度に含まないことが好ましい。特に水が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる酵素としては、担子菌からβ−グルカンを抽出するのを容易ならしめるものであればよく、例えば、グルカナーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム、グルコシダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、キシラナーゼ、マンノシダーゼ、キシロシダーゼ、ガラクトシダーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどが挙げられる。酵素は1種を単独で用いてもよく2種以上を同時的に若しくは順次的に併用してもよい。特にグルカナーゼ単独もしくは、グルカナーゼとキチナーゼを併用することが好ましい。
【0021】
担子菌の菌糸体及び/又は子実体は、原料としていずれの形態のものを用いてもよく特に制限はない。例えば担子菌の菌糸体は、適当な培地で固体培養あるいは液体培養し又は適当な発酵条件にて生育させた後に、菌体を分離し又は分離しないで用いることができる。また、担子菌の子実体は、採取した状態のままのもの又は採取した後に乾燥したものを用いることができる。保存性や取り扱いの容易性の観点からは、原料は、乾燥物を用いることが好ましい。
【0022】
担子菌の菌糸体及び/又は子実体は、抽出効率の観点から、粉砕されたものあるいは粉末形態のものを用いることが好ましい。例えば、JIS規格による標準篩を用いて3.5メッシュ(目開き5.5mm)をパスする形態のものを用いることが好ましく、6メッシュ(目開き3.35mm)をパスする形態のものを用いることがより好ましい。更に、後述する実施例で示すように、微粉砕したものを用いることが最も好ましい。この場合は、例えば、JIS規格による標準篩を用いて、全体の90質量%以上が16メッシュ(目開き1.0mm)をパスし、且つ全体の50質量%以上が20メッシュ(目開き0.85mm)をパスする程度に微粉砕したものを用いることが好ましく、全体の90質量%以上が100メッシュ(目開き0.15mm)をパスし、且つ全体の50質量%以上が150メッシュ(目開き0.1mm)をパスする程度に微粉砕したものを用いることがより好ましい。微粉砕の手段としては、機械的粉砕処理が有効であり、具体的には、ハンマーミル、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ロールミル、ディスクミル、ホモミキサー、ピンミル、ジェットミルなどを用いることができる。
【0023】
本発明においては、担子菌の菌糸体及び/又は子実体に抽出溶媒を加えて加圧処理する。担子菌の菌糸体及び/又は子実体の固形分100質量部に加える、抽出溶媒の割合は、300〜3000質量部であることが好ましく、500〜2000質量部であることがより好ましい。加圧条件としては、温度100〜200℃、圧力0.1〜1.0MPaで、0.5〜5時間行うことが好ましく、温度110〜150℃、圧力0.11〜0.5MPaで、1〜3時間行うことがより好ましい。加圧処理の手段としては、特に限定されないが、例えば、密閉型の加熱装置、オートクレーブ、蓋付きの釜炒り用の釜などを用いることができる。なお、この加圧処理の前に及び/又は後には、常圧40〜100℃程度で加温処理を施してもよい。
【0024】
本発明においては、上記の加圧処理後の加圧処理物に、酵素を添加して酵素処理する。その加圧処理物は、加圧処理後のものをそのまま用いて、これに酵素を添加してもよく、酵素反応に影響を与える因子、例えば加圧処理物中の担子菌の菌糸体及び/又は子実体の含有濃度、pH、塩濃度、ミネラル濃度などを適宜調整してから、これに酵素を添加してもよい。酵素の反応条件は、用いる酵素の種類に応じて適宜設定すればよいが、典型的に言えば、用いられた担子菌の菌糸体及び/又は子実体の固形分100質量部に対する添加量として酵素を0.1〜10.0質量部添加し、温度30〜60℃、pH3〜10で、1〜48時間反応させることなどが例示できる。酵素反応時には撹拌や振とうを行ってもよい。
【0025】
本発明においては、上記の酵素処理物の液部にβ−グルカンを溶出させる。ここで、β−グルカンとは、グルコースがβ1,3結合により多数連なった多糖を意味している。ただしその構造以外の構造を伴うものを除く趣旨ではない。例えばグルコースのβ1,4結合や1,6結合などによりに側鎖や分岐などを有するβ−グルカンや、β−グルカンの構成糖のヒドロキシル基の一部に硫酸基、リン酸基、アセチル基、糖鎖等が結合したものも含まれる。また、β−グルカンを溶出させるとは、用いられた担子菌の菌糸体及び/又は子実体から遊離したβ−グルカンを、上記の酵素処理物の液部に回収することを意味している。
【0026】
そして、ろ過、遠心などにより固液分離することにより、用いられた担子菌の菌糸体及び/又は子実体から遊離していない部分(成分)を除くことができる。このようにして得られたβ−グルカン含有組成物には、β−グルカンを固形分中に10〜60質量%含有していることが好ましく、15〜50質量%含有していることがより好ましく、20〜40質量%含有していることが最も好ましい。なお、β−グルカン量は、試料中のグルカンを分解酵素(例えばexo-1,3-β-グルカナーゼとβ-グルコシダーゼ)でグルコースまで分解して、そのグルコース量を定量して求めた総グルカン量から、別途試料中のα−グルカンを特異的に分解する酵素(例えばアミログルコシダーゼ)でグルコースまで分解して、そのグルコース量を定量して求めたα−グルカン量を差し引くことにより算出したり、試料中のα−グルカンを特異的に分解する酵素(例えばアミログルコシダーゼ)でグルコースまで分解して、80%エタノール沈殿により不溶物を回収してそれを硫酸で加水分解して生成するグルコース量を定量してβ−グルカン量を求めたりする方法などにより、定量することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、以下の比較例、実施例において、β−グルカン含量は、β-グルカン測定キット「mushrooom and yeast beta−glucan assay kit」(商品名、Megazyme社)を使用して算出した。
【0028】
<比較例1>
霊芝子実体をミキサーで粉砕し、6メッシュ(目開き3.35mm)を使用して篩過した。この粉砕霊芝子実体5gに対し、50mlの水を添加し、沸騰湯浴中で2時間熱水処理した後に、残査と抽出液を分離した。その後、水35mlを残査に添加し、10分攪拌して均一化した後に、残査と洗浄液を分離した。これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0029】
<比較例2>
比較例1と同様に調製した粉砕霊芝子実体5gに対し、50mlの水を添加し、加圧処理(120℃達温後2時間、圧力0.11〜0.12MPa)を行なった後に、残査と抽出液を分離した。その後、水35mlを残査に添加し、10分攪拌して均一化した後に、残査と洗浄液を分離した。これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0030】
<比較例3>
比較例1と同様に調製した粉砕霊芝子実体5gに対し、50mlの水を添加し、使用した粉砕霊芝重量の1%のβ−グルカナーゼ及び同重量の1%のキチナーゼを添加し、50℃で16時間処理した。反応液を10分煮沸し、酵素を失活した後、比較例2と同様の加圧処理(120℃達温後2時間、圧力0.11〜0.12MPa)を行なった。その後は比較例1と同様にして、抽出液と洗浄液を得、これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0031】
<実施例1>
比較例1と同様に調製した粉砕霊芝子実体5gに対し、50mlの水を添加し、加圧処理(120℃達温後2時間、圧力0.11〜0.12MPa)を行なった。その後、使用した粉砕霊芝重量の1%のβ−グルカナーゼを添加し、50℃で16時間処理した。反応液を10分煮沸し、酵素を失活した後、比較例1と同様にして、抽出液と洗浄液を得、これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0032】
<実施例2>
比較例1と同様に調製した粉砕霊芝子実体5gに対し、50mlの水を添加し、加圧処理(120℃達温後2時間、圧力0.11〜0.12MPa)を行なった。その後、使用した粉砕霊芝重量の1%のβ−グルカナーゼ及び同重量の1%のキチナーゼを添加し、50℃で16時間処理した。反応液を10分煮沸し、酵素を失活した後、比較例1と同様にして、抽出液と洗浄液を得、これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0033】
<実施例3>
霊芝子実体に対し、ジェットミル装置(日本ニューマチック工業株式会社製)で微粉砕処理を施し、メディアン径4.3μmの微粉を調製した。この微粒子霊芝を使用した以外は、実施例2と同様にして、抽出液と洗浄液を得、これら抽出液と洗浄液とを統合した後、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量を算出した。
【0034】
比較例1〜3及び実施例1〜3の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すとおり、比較例1と比較例2との比較から、粉砕霊芝子実体に対し加圧処理を行なうことで、熱水処理と比較し、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.6倍、1.6倍、1.3倍、及び2.1倍に上昇した。
【0037】
表1に示すとおり、比較例2と実施例1との比較から、粉砕霊芝子実体を加圧処理した後、グルカナーゼを作用させることで、グルカナーゼを作用させない場合に比べ、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.2倍、0.9倍、1.4倍、及び1.3倍となり、β−グルカン含量の上昇を伴った収率の増加がみられた。
【0038】
表1に示すとおり、実施例1と実施例2との比較から、粉砕霊芝子実体を加圧処理した後、グルカナーゼに加えてキチナーゼを併用することで、グルカナーゼ単独の場合に比べ、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.0倍、1.4倍、1.0倍、及び1.4倍となり、乾燥収量の上昇を伴った収率の増加がみられた。そして、酵素を作用させなかった比較例2との比較では、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.2倍、1.3倍、1.3倍、及び1.8倍であり、熱水処理のみの比較例1との比較では、それぞれ約1.9倍、2.1倍、1.8倍、及び3.6倍であった。
【0039】
表1に示すとおり、比較例3と実施例2との比較から、グルカナーゼとキチナーゼを、粉砕霊芝子実体に対して加圧処理を行なった後に作用させることで、加圧処理の前に作用させる場合に比べ、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.1倍、1.4倍、1.4倍、及び1.9倍となり、乾燥収量及びβ−グルカン含量の上昇を伴った収率の増加がみられた。
【0040】
表1に示すとおり、実施例2と実施例3との比較から、霊芝に対して微粉砕処理を施すことで、粗砕の場合に比べ、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約1.3倍、0.9倍、1.2倍、及び1.1倍となり、β−グルカン含量は試験例中最大の28%に達した。そして、熱水処理のみの比較例1との比較では、Bx固形収率、乾燥収量、乾燥収量あたりのβ−グルカン含量、及びβ−グルカン収量は、それぞれ約2.5倍、1.9倍、2.1倍、及び4.0倍であった。