【実施例】
【0084】
本発明について実施例を用いて説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
実施例において用いた実験装置について
図3及び
図4を用いて説明する。実施例では、以下に説明する実験装置30(
図3)又は実験装置90(
図4)を用いた。
【0086】
実験装置30について説明する。
図3に示す実験装置30は、調整槽32、加圧浮上槽34、分散槽36、第一処理槽38、好気槽40、活性汚泥槽42及び沈殿槽44を有する。
【0087】
加圧浮上槽34は、本発明の装置が有することが好ましい濃縮手段に相当する。
分散槽36は、本発明の装置が有することが好ましい分散手段に相当する。
第一処理槽38は、本発明の装置が有する第一処理手段に相当する。
好気槽40、活性汚泥槽42及び沈殿槽44は、本発明の装置が有する第二処理手段に相当する。
【0088】
調整槽32は油脂含有排水50を貯留するものであり、本実験装置30では貯留部を有する構造物を用いた。この調整槽32内へ油脂含有排水50を受け入れて貯留し、所望の供給量で加圧浮上槽34へ供給することができるように構成されている。
また、調整槽32の内部へ返送手段52、PAC添加手段54及び凝集ポリマ添加手段56によって、返送汚泥、PAC及び凝集ポリマを供給できるように構成されている。具体的にPAC及び凝集ポリマは、各々、専用タンク内に溶液又は分散液として貯留され、ポンプの作用によって配管を通じて所望の供給量で調整槽32へ供給することができるように構成されている。
また、具体的に返送手段52は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、調整槽32までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を調整槽32の内部の油脂含有排水50へ添加することができるように構成されている。
【0089】
加圧浮上槽34は、調整槽32から供給された油脂含有排水50(返送汚泥、PAC又は凝集ポリマを含む場合もある)を受け入れ、浮上分離処理を行い、フロス58と分離水60とを排出する。また、フロス58を分散槽36又は第一処理槽38へ供給できるように構成されている。さらに、分離水60を活性汚泥槽42の流入口又は流出口へ供給できるように構成されている。
【0090】
分散槽36は、油脂残渣64及び/又は返送汚泥を受け入れ、これらと共にフロス58を撹拌し、分散水66として排出する。
分散槽36は貯留部とその内部の撹拌装置を有していて、撹拌装置によって貯留部内を撹拌できるように構成されている。また、分散槽36は油脂残渣64及び返送手段62による返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段62は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、分散槽36までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を分散槽36の内部のフロス58へ添加することができるように構成されている。
【0091】
第一処理槽38は、分散水66及び/又はフロス58を受け入れ、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用によって第一処理を行い、第一処理水68を排出する。
第一処理槽38は、貯留部を有し、かつその貯留部が密閉可能に構成されたものであり、内部を撹拌できるように撹拌機が備えられている。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。なお、メタン発酵させない条件で処理するため、メタンガスを貯留するためのガスホルダや脱硫処理装置等の付帯設備はなくてもよく、本実験装置30では設けていない。
また、第一処理槽38は、返送手段70によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段70は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、第一処理槽38までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を第一処理槽38の内部のフロス58又は分散水66へ添加することができるように構成されている。
また、第一処理槽38は、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。
【0092】
好気槽40は、貯留部を有し、その貯留部内へ空気を供給することができるように構成されたものである。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。好気槽40は、第一処理水68を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、反応液の一部を返送汚泥76として排出し、残りの反応液を好気処理水72として排出する。
また、好気槽40は、返送手段74によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段74は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、好気槽40までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を好気槽40の流入口付近へ添加することができるように構成されている。
また、好気槽40は、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。さらに、好気槽40は、流出口付近の反応液を返送汚泥(返送汚泥76)として移送し、排出することができるように構成されている。
【0093】
活性汚泥槽42は、内部へ空気を供給することができ、また、撹拌することができるように構成された構造物であり、内部は3分割されている。活性汚泥槽42は、好気処理水72(分離水60を含む場合もある)を受け入れ、従来公知の活性汚泥処理を行い、活性汚泥処理水78を排出する。
【0094】
沈殿槽44は活性汚泥処理水78(分離水60を含む場合もある)を受け入れることができるように構成されている。そして、沈殿物を汚泥80として排出し、上澄みを第二処理水82として排出できるように構成されている。
【0095】
次に、実験装置90について説明する。
図4に示す実験装置90は、調整槽32、分散槽36、第一処理槽38、第1好気槽401、第2好気槽402及び沈殿槽44を有する。
図4に示す実験装置90と、
図3に示した実験装置30とは一部が異なる。具体的には、実験装置90は加圧浮上槽34及び活性汚泥槽42を有さないが、2つの好気槽(第1好気槽及び第2好気槽)を有する。2つの好気槽(第1好気槽及び第2好気槽)ならびに沈殿槽44が本発明の装置が有する第二処理手段に相当する。調整槽32、分散槽36、第一処理槽38及び沈殿槽44は、
図3に示した実験装置30と同様である。
以下では実験装置90について実験装置30と異なる箇所について詳しく説明する。なお、
図4では実験装置90について、
図3に示した実験装置30と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0096】
図4に示す実験装置90は加圧浮上槽34を有さないので、調整槽32から排出された油脂含有排水50(返送汚泥、PAC又は凝集ポリマを含む場合もある)は、分散槽36及び/又は第一処理槽38に供給される。分離水60は発生しない。
【0097】
第1好気槽401及び第2好気槽402は、各々、実験装置30が有する好気槽40と同様の態様である。すなわち、各々は、貯留部を有し、その貯留部内へ空気を供給することができ、また、内部を撹拌することができるように構成されたものである。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。
第1好気槽401は、第一処理水68を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、第1好気処理水73を排出する。また、第2好気槽402は、第1好気処理水73を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、第2好気処理水79を排出する。
また、第1好気槽401は、返送手段74によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。また、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。さらに、第1好気槽401は、流出口付近の反応液を返送用返送汚泥76として移動できるように構成されている。返送汚泥76は、実験装置30が有する好気槽40と同様に、返送手段52、62、70、74によって返送汚泥として利用可能に構成されている。
【0098】
沈殿槽44は
図1に示した実験装置30が有する沈殿槽44と同様の態様である。第2好気処理水79を受け入れ、沈殿物を汚泥80として排出し、上澄みを第二処理水82として排出できるように構成されている。
【0099】
このような実験装置30又は実験装置90を用いて、食品工場から排出された油脂含有排水50を種々の条件にて処理した。なお、油脂含有排水50を加圧浮上槽34によって処理する工程のみ回分式とし、その他の工程は連続した処理を行った。
【0100】
<実施例1>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。連続処理における処理水量は3L/日とした。
【0101】
実施例1では、調整槽32へ、好気槽40から発生した返送汚泥を添加し(すなわち、返送手段52によって返送汚泥76を返送汚泥として添加し)、さらにPAC添加手段54及び凝集ポリマ添加手段56によってPAC及び凝集ポリマを添加した。ここで返送汚泥の添加量は、返送汚泥を添加した後の調整槽32内の油脂含有排水50のSS濃度が150mg−SS/Lとなる量とした。また、PACの添加量は、調整槽32内の油脂含有排水50に対して300mg/Lとした。さらに凝集ポリマの添加量は、調整槽32内の油脂含有排水50に対して1mg/Lとした。
【0102】
次に、返送汚泥、PAC及び凝集ポリマを添加された油脂含有排水50を加圧浮上槽34にて処理した。そして、得られたフロス58は、全量を第一処理槽38へ供給した。この際、フロス58と分離水60との体積比は1:39であった。なお、実施例1では分散槽36による分散処理は行わなかった。
分離水60は全量を活性汚泥槽42の流入口へ供給した。すなわち、好気処理水72へ分離水60を合流させた後、活性汚泥槽42にて処理した。
【0103】
第一処理槽38では槽を密閉し、槽内pHが8.5となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに内部を機械撹拌した。また、第一処理槽38における滞留時間は4日間とした。
【0104】
好気槽40では槽内pHが8.0となるようにNaOH又は硫酸を適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに槽内液の溶存酸素濃度が0.5mg/Lの設定条件で通気しながら、撹拌した。また、好気槽40における滞留時間は5日間とした。
【0105】
活性汚泥槽42では槽内pHが7.8となるようにNaOH又は硫酸を適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに槽内液の溶存酸素濃度が3.0mg/Lの設定条件で通気しながら、撹拌した。また、活性汚泥槽42における滞留時間は6時間とした。
【0106】
実施例1では第一処理槽38及び好気槽40における仕切の数を調整して、第1表に示すような4つのケースについて処理を行った。具体的には、実施例1−1では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を仕切なしとし、実施例1−2では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を2分割とし、実施例1−3では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を3分割とし、実施例1−4では第一処理槽38を3分割、好気槽40を3分割とした。なお、ここでいう仕切りなしとは、槽を分割しないことをいう。
また、比較のため、第一処理槽38による処理を行わず、好気槽40のみの処理を行うケース(比較例1−1)と、好気槽40による処理を行わず、第一処理槽38のみの処理を行うケース(比較例1−2)とを行った。なお、比較例1−1では好気槽40を3分割し、比較例1−2では第一処理槽38を3分割した。
【0107】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例及び比較例の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、第一処理水68、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
なお、ヘキサン抽出物濃度の測定方法は前述のとおりである。
結果を第1表に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
第1表に示すように、全ての実施例において第二処理水82のヘキサン抽出物濃度が下水放流基準値である30mg/Lを満足した。また、全ての実施例において、第一処理槽38及び好気槽40において油脂残渣の発生は認められなかった。
これに対して、2つの比較例では、いずれも第二処理水82のヘキサン抽出物濃度が高く、下水放流基準値を満足しなかった。また、比較例1−1では油脂残渣が発生した。
【0110】
このような実施例1の結果より、第一処理と第二処理とを組み合わせる生物処理によって、油脂残渣を発生させずにフロスを効率よく処理することが可能であると考えられる。また、第一処理槽及び/又は好気槽に仕切を設けることで、水質を改善させることが可能と考えられる。フロスの第一処理では曝気処理を行わないため、油脂残渣の発生を防止することが可能と推定され、また、嫌気性微生物や微好気性環境で生育可能な微生物が生産するバイオサーファクタントによる乳化作用や、両微生物群がフロス中に含まれる油脂分を低分子化する作用によって油脂分の可溶化が進行することで、後段の好気性処理での処理速度を向上させることができると推定される。実施例1のようなフロスの第一処理では、一般的なメタン発酵を主反応とする嫌気消化は行われず、油脂分の減量化はほとんど進行しないものの、後段の好気性処理との組み合わせによって油脂分の分解を達成することができると考えられる。
【0111】
<実施例2>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例2ではフロスの生物処理工程における反応効率を促進するため、返送汚泥の必要性、返送汚泥の供給源及び供給先の影響について調べた。
実験は、分散槽36による分散処理を行うこと、返送汚泥の供給源及び供給先の条件以外は、実施例1−4と同様とした。
ここで、分散処理条件について説明する。分散槽36では、受け入れたフロス58へ適宜NaOHを加えて槽内pHを8.5〜9.5に維持した。また、槽内温度を50℃に保持した。さらに内部を機械撹拌した。また、分散槽36における滞留時間は1時間とした。
そして、次のように返送汚泥を用いて油脂含有排水50を処理した。
【0112】
実施例2−1では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段52によって調整槽32へ供給した。
実施例2−2では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段52によって調整槽32へ供給した。
実施例2−3では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段62によって分散槽36へ供給した。
実施例2−4では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段62によって分散槽36へ供給した。
実施例2−5では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段70によって第一処理槽38の流入口付近へ供給した。
実施例2−6では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段70によって第一処理槽38の流入口付近へ供給した。
実施例2−7では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段74によって好気槽40の流入口付近へ供給した。
実施例2−8では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段74によって好気槽40の流入口付近へ供給した。
実施例2−9では返送汚泥76及び汚泥80のいずれをも用いなかった。
【0113】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例の合計9つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。また、油脂残渣の発生量を測定した。
なお、油脂残渣の発生量として、発生した油脂残渣を回収して質量を測定した。
結果を第2表に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
第2表に示すように、実施例2−1及び実施例2−2において油脂残渣の発生は認められなかったが、その他の実施例では油脂残渣が発生した。
このような結果より、フロスの生物処理における反応効率の向上及び油脂残渣の発生防止のために、汚泥返送を使用することが好ましいと考えられる。また、返送汚泥の供給源として好気槽40や沈殿槽44の汚泥が有効であり、特に前者の好気槽40の汚泥は、油分処理の促進及び油脂残渣の発生を防止するためにより効果的であると考えられる。好気槽40では、油分の分解能力が特に高い微生物種が高濃度で存在することや、これらが油分を分散させるためのバイオサーファクタント(微生物界面活性剤)を分泌することで高い効果が得られると考えられる。
【0116】
さらに、返送汚泥の供給先は、調整槽32が最も効果的であり、次いで分散槽36、第一処理槽38の順で効果が認められる。これに対して好気槽40への返送手段74による返送汚泥の供給の効果は高くなかった。このような効果は、返送汚泥の供給先を加圧浮上槽34の前段とすることで、フロスに含まれる油分の分散性を最適化することができるためと推定される。また、返送汚泥の供給先を加圧浮上槽34よりも前段として返送汚泥に含まれる水分を分離水60とすることで、第一処理及び好気性処理の対象物の体積を小さくし、第一処理槽及び好気槽における滞留時間を長くすることが可能であるためと推定される。
【0117】
<実施例3>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例3ではフロス58を第一処理に供する前処理工程として設置する分散槽36の効果について調べた。
実施例3−1は実施例2−3の条件を基本とし、フロス58を分散槽36へ供給し、さらに好気槽40から排出された返送汚泥76を分散槽36へ供給し、排出された分散水66を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64を回収し、分散槽36へ供給した。
実施例3−2は実施例2−3の条件と同一であり、フロス58を分散槽36へ供給し、さらに好気槽40から排出された返送汚泥76を分散槽36へ供給し、排出された分散水66を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64の分散槽36への供給は行わなかった。
実施例3−3は実施例2−7の条件を基本とし、好気槽40から排出された返送汚泥76を好気槽40の流入口付近へ供給した。そして、フロス58は分散槽36へ供給せず、全量を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64を回収し、分散槽36へ供給した。
実施例3−4は実施例2−7の条件を基本とし、好気槽40から排出された返送汚泥76を好気槽40の流入口付近へ供給した。そして、フロス58は分散槽36へ供給せず、全量を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64の分散槽36への供給は行わなかった。
【0118】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例の合計4つのケースの各々において第一処理槽38及び好気槽40における合計の油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第3表に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
第3表に示すように、実施例3−1及び実施例3−2において油脂残渣の発生は極わずかとなった。
また、分散槽36にてフロス58を処理することで、油脂残渣の発生を顕著に抑制することができると考えられる。
また、第一処理槽38及び好気槽40にて発生した油脂残渣を回収し、分散槽36で処理を施すことにより、油脂残渣の発生量を抑制することができると考えられる。
【0121】
<実施例4>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例4は、調整槽32へ供給する返送汚泥の量の影響について実験を行った。実験は実施例2−1の条件を基本として実施した。
実施例4−1では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が20mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−2では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が50mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−3では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が100mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−4では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が300mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−5では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が1000mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−6では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が2000mg−SS/Lとなるようにした。
【0122】
そして、実施例4の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水66、好気処理水72及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第4表に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
第4表より、調整槽32への汚泥返送の供給量の最適値は、調整槽32において汚泥を加えた後の油脂含有排水50における返送汚泥濃度が50〜1000mg−SS/Lとなる供給量であると考えられる。
【0125】
<実施例5>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例5ではフロスの第一処理におけるpHの影響について調べた。実験は、実施例1−4の条件を基本とし、第一処理槽38における槽内pHを調整した。
実施例5−1では第一処理槽38における槽内pHを7.2に調整した。
実施例5−2では第一処理槽38における槽内pHを7.8に調整した。
実施例5−3では第一処理槽38における槽内pHを8.3に調整した。
実施例5−4では第一処理槽38における槽内pHを8.8に調整した。
実施例5−5では第一処理槽38における槽内pHを9.5に調整した。
【0126】
そして、実施例5の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第5表に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
第5表より、第一処理槽38の槽内pHは7.2〜8.8が好ましいと考えられる。
【0129】
<実施例6>
図4に示す実験装置90を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例6では第一処理槽38内の温度の影響について調べた。なお、連続処理における処理速度は3L/日とした。
【0130】
実施例6では、調整槽32へ、第1好気槽401から発生した返送汚泥76を添加した(すなわち、返送手段52によって返送汚泥76を返送汚泥として油脂含有排水50へ添加した)。ここで返送汚泥の添加量は、返送汚泥を添加した後の調整槽32内の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が500mg−SS/Lとなる量とした。
【0131】
次に、返送汚泥が添加された油脂含有排水50の全量を分散槽36へ供給した。尚、PAC及び凝集ポリマの添加は行わなかった。
分散槽36では受け入れた油脂含有排水50へ適宜NaOHを加えて槽内pHを8.5〜9.5に維持し、槽内温度を50℃に保持した。さらに内部を機械撹拌した。また、分散槽36における滞留時間は1時間とした。
【0132】
第一処理槽38では槽を密閉し、槽内pHが8.5となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに内部を機械撹拌した。また、第一処理槽38における滞留時間は20時間とした。
【0133】
第1好気槽401では槽内pHが8.0となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、第1好気槽401における滞留時間は6時間とした。
【0134】
第2好気槽402では槽内pHが8.0となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。また、第2好気槽402における滞留時間は6時間とした。
【0135】
そして、第一処理槽38における槽内温度を変更した実験を行った。
実施例6−1では第一処理槽38における槽内温度を20℃に維持した。
実施例6−2では第一処理槽38における槽内温度を30℃に維持した。
実施例6−3では第一処理槽38における槽内温度を37℃に維持した。
実施例6−4では第一処理槽38における槽内温度を47℃に維持した。
実施例6−5では第一処理槽38における槽内温度を58℃に維持した。
【0136】
そして、実施例6の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、第一処理水68、第1好気処理水73、及び第2好気処理水79についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第6表に示す。
【0137】
【表6】
【0138】
第6表より、第一処理槽38の槽内の温度は20〜58℃が好ましいと考えられる。
また、実施例6では全ての条件で油脂残渣の発生は認められなかった。
【0139】
<実施例7>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例7ではフロスの第一処理及び好気性処理における反応効率を促進するため、第一処理における硫酸添加及び通気(酸素投入)の影響について調べた。実験は、実施例1−4の条件を基本とし、第一処理槽38における反応条件等を調整した。また、第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位を白金電極によるORP計を用いて測定した。
【0140】
実施例7−1では第一処理槽38を密閉して通気は行わなかった。また、硫酸は添加しなかった。
実施例7−2では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を30mg/Lとした。
実施例7−3では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を1,000mg/Lとした。
実施例7−4では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を3,000mg/Lとした。
実施例7−5では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−250mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸は添加しなかった。
実施例7−6では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−180mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を30mg/Lとした。
実施例7−7では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−50mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸は添加しなかった。
【0141】
そして、実施例の合計7つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、第一処理水68、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第7表に示す。
【0142】
【表7】
【0143】
第7表より、第一処理における硫酸添加及び通気(酸素投入)によって処理性能が向上すると考えられる。
【0144】
<実施例8>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例8では第一処理水68の好気性処理におけるpHの影響について調べた。実験は、実施例1−3の条件を基本とし、好気槽40における槽内pHを調整した。
実施例8−1では好気槽40における槽内pHを7.2に調整した。
実施例8−2では好気槽40における槽内pHを7.5に調整した。
実施例8−3では好気槽40における槽内pHを8.5に調整した。
実施例8−4では好気槽40における槽内pHを9.0に調整した。
実施例8−5では好気槽40における槽内pHを10.0に調整した。
実施例8−6では好気槽40における槽内pHを11.0に調整した。
【0145】
そして、実施例の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第8表に示す。
【0146】
【表8】
【0147】
第8表より、好気槽40の槽内pHは7.5〜11.0が好ましいと考えられる。
【0148】
<実施例9>
図4に示す実験装置90を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例9では好気槽内の温度の影響について調べた。実験は、加圧浮上槽34による固液分離を行わないという条件以外は、実施例1−3の条件を基本とし、第1好気槽401及び第2好気槽402における槽内温度を調整した。
実施例9−1では槽内温度を20℃に維持した。
実施例9−2では槽内温度を30℃に維持した。
実施例9−3では槽内温度を37℃に維持した。
実施例9−4では槽内温度を47℃に維持した。
実施例9−5では槽内温度を58℃に維持した。
【0149】
そして、実施例の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、第一処理水68、第1好気処理水73、及び第2好気処理水79についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第9表に示す。
【0150】
【表9】
【0151】
第9表より第1好気槽401及び好気槽402の槽内の温度は30〜58℃が好ましいと考えられる。
また、実施例9では全ての条件で油脂残渣の発生は認められなかった。
【0152】
<実施例10>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例10は、好気槽40における仕切り設置場所の影響、好気槽40の水面上に構造物(微生物膜を形成するための微生物膜ユニット)を設置した場合の影響、及び好気槽40で発生した発泡物を前段の第一処理槽38に流出させたときの影響について調べた。
ここで微生物膜ユニットはポリエチレン製の不織布を垂直方向に複数枚垂らすように配置したものである。
なお、実験は、実施例1−2を基本条件とした。
【0153】
実施例10−1では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:2となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−2では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−3では、好気槽40における前段と後段との容積比率が2:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−4では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。そして、好気槽における液面の上部に微生物膜ユニットを設置した。なお、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送は行わなかった。
実施例10−5では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置しなかった。しかし、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送を行った。
【0154】
そして、実施例の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水66、及び第二処理水82、ならびに好気槽40における前段部及び後段部の各々におけるサンプル水についてヘキサン抽出物濃度を測定した。また、好気槽40における前段部及び後段部の各々におけるサンプル水についてMLSSを測定した。さらに、好気槽40における前段部におけるサンプル水について溶存酸素量(DO)を測定した。
なお、溶存酸素量の測定方法は溶存酸素電極を用いた酸素電極法により行った。
また、MLSSの測定方法は工場排水試験方法(JIS K0102 14)に基づく。
結果を第10表に示す。
【0155】
【表10】
【0156】
第10表より、好気槽40に設置する仕切は、槽を均等に区分する位置に設置するとより良い水質の第二処理水82が得られると考えられる。また、好気槽40における前段の溶存酸素濃度が0.6mg/L以下の条件では、好気槽40内のMLSS濃度を高く維持でき、処理性能を向上することが可能であった。
好気槽40に微生物膜ユニットを設置した場合、油分の除去性能が最も高い結果が得られた。
好気槽40で発生した発泡物を第一処理槽38に導入することで、消泡剤の添加が不要となり、かつ、油脂残渣の発生が無く、良好な水質の処理水を得ることができた。