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特開2015-123437油脂含有排水の処理方法及び処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-123437(P2015-123437A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】油脂含有排水の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20150609BHJP
【FI】
   C02F3/12 F
   C02F3/12 V
   C02F3/12 U
   C02F3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-271466(P2013-271466)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(74)【代理人】
【識別番号】100114638
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 寛也
(72)【発明者】
【氏名】新庄 尚史
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
(72)【発明者】
【氏名】塚本 敏男
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】塚本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028AA04
4D028AB00
4D028AC01
4D028AC06
4D028AC09
4D028BA00
4D028BB02
4D028BB06
4D028BB07
4D028BC14
4D028BC18
4D028BC28
4D028BD12
4D028BD16
4D028CA04
4D028CA07
4D028CC04
4D028CC07
4D028CD01
(57)【要約】
【課題】油脂分を短時間で分解でき、余剰汚泥が生じ難い、油脂含有排水の処理方法の提供。
【解決手段】油脂含有排水の処理方法であって、油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施し、前記第一処理で得た処理水に好気性処理を施す第二処理をすることを特徴とする油脂含有排水の処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水の処理方法であって、
油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施し、前記第一処理で得た処理水に好気性処理を施す第二処理をすることを特徴とする油脂含有排水の処理方法。
【請求項2】
油脂含有排水に濃縮処理を施し、前記濃縮処理で得た濃縮物に第一処理をすることを特徴とする請求項1に記載の油脂含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記第二処理において発生した汚泥を、前記油脂含有排水、前記濃縮処理をする工程のうち少なくとも一つへ返送し、
返送汚泥に、前記油脂含有排水、前記濃縮物のうち少なくとも一つ以上と共に第一処理をする、請求項1又は2に記載の油脂含有排水の処理方法。
【請求項4】
前記第二処理で発生する泡を除去する、請求項1〜3のいずれかに記載の油脂含有排水の処理方法。
【請求項5】
前記第二処理で発生する泡を前記第一処理の工程に導入する、請求項4に記載の油脂含有排水の処理方法。
【請求項6】
前記第一処理、及び/又は前記第二処理を2回以上行う、請求項1〜5のいずれかに記載の油脂含有排水の処理方法。
【請求項7】
油脂含有排水の処理装置であって、
油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施す第一処理手段と、
前記第一処理手段で得た処理水に好気性処理を施す第二処理手段と、
を備える、油脂含有排水の処理装置。
【請求項8】
前記第一処理手段の上流に、油脂含有排水に濃縮処理をする濃縮手段を備える、請求項7に記載の油脂含有排水の処理装置。
【請求項9】
前記第二処理において発生する汚泥を、前記油脂含有排水、前記濃縮手段のうち少なくとも一つへ返送する返送手段を備える、請求項7又は8に記載の油脂含有排水の処理装置。
【請求項10】
前記第二処理において発生する泡を除去する泡除去手段を備える、請求項7〜9のいずれかに記載の油脂含有排水の処理装置。
【請求項11】
前記第二処理で発生する泡を前記第一処理の工程に導入する手段を備える、請求項10に記載の油脂含有排水の処理装置。
【請求項12】
前記第一処理手段、及び/又は前記第二処理手段を2つ以上備える、請求項7〜11のいずれかに記載の油脂含有排水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有排水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場排水や生活排水等の油脂分を多く含む排水は、下水配管の閉塞等の種々の問題を引き起こす。このような油脂分を含有する排水を対象とした処理方法や処理装置として、従来、例えば特許文献1及び2に記載のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、油脂含有有機性廃水の処理において、該廃水を予め油脂分と分離水に分離し、分離水は生物処理工程で処理し、油脂分は生物学的に分解する好気的分解工程で処理し、得られた分解工程の微生物含有液を前記分離水あるいは前記分離水の生物処理工程に注入することを特徴とする油脂含有有機性廃水の処理方法が記載されている。そして、油脂分のみを分離し処理するため、浄化槽汚泥中の夾雑物を分離するスクリーンの目詰を防止することができ、また、活性汚泥沈殿槽表面に浮上していた油を含有したスカム等がなくなり、油脂分に起因するトラブルを解消することができたと記載されている。
【0004】
特許文献2には「原水中の汚濁物質を活性汚泥処理するに当たり、予め原水100部にたいして返送汚泥(反応汚泥)を1から30部好ましくは3から15部を混合撹拌したのち、反応汚泥を加圧浮上濃縮分離して、0.5%以上好ましくは2%以上の固形分を含む汚泥(吸着濃縮反応汚泥)と処理原水とを得る。処理原水は、活性汚泥曝気槽で返送汚泥といっしょに曝気処理後固液分離して、最終放流水と返送汚泥とを得る。吸着濃縮反応汚泥は、濃厚汚泥消化槽で嫌気・好気消化し、反応汚泥が吸着した汚濁物質は微生物分解して、消化汚泥を得る。そして、余剰汚泥として消化汚泥を引き抜き除去する活性汚泥処理方法。」が記載されている。そして、「濃厚汚泥消化により効率よく微生物分解を行い未分解物質量が少ないため、汚泥の消化が進行するため、発生汚泥固形分量が少なく、かつ凝集脱水するに当たり凝集剤消費量が少なくて安定で良好な凝集が得られるため脱水機の脱水効率が上がり、得られた脱水ケーキの含水率が低いため脱水ケーキ量が少ないのみならず腐敗しにくいので悪臭の発生が少ないため作業環境問題が少ない。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−235799号公報
【特許文献2】特開平6−315695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来法では多量の余剰汚泥が発生した。例えば特許文献1には実施例として、活性汚泥曝気槽5から排出された濃縮汚泥の一部が余剰汚泥として系外に排出される有機性廃水の処理装置が記載されている。また、特許文献2には、脱水機によって脱水することで、悪臭の少ない活性汚泥が得られると記載されている。
また、従来法は、排水に含まれる油脂分を短時間で分解することが困難であった。例えば特許文献2に記載の方法は嫌気消化と好気消化とを組み合わせた方法であり、嫌気消化のみでも、通常、30〜60日程度の処理時間が必要となる。
さらに、従来法は、処理の過程で油脂残渣が発生し易かった。油脂残渣としては、例えばオイルボールがある。油脂残渣は分解し難いため、分解処理に非常に時間がかかった。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、油脂分を短時間で分解でき、余剰汚泥が生じ難い、油脂含有排水の処理方法及び処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記のような課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(12)である。
(1)油脂含有排水の処理方法であって、
油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施し、前記第一処理で得た処理水に好気性処理を施す第二処理をすることを特徴とする油脂含有排水の処理方法。
(2)油脂含有排水に濃縮処理を施し、前記濃縮処理で得た濃縮物に第一処理をすることを特徴とする上記(1)に記載の油脂含有排水の処理方法。
(3)前記第二処理において発生した汚泥を、前記油脂含有排水、前記濃縮処理をする工程のうち少なくとも一つへ返送し、
返送汚泥に、前記油脂含有排水、前記濃縮物のうち少なくとも一つ以上と共に第一処理をする、上記(1)又は(2)に記載の油脂含有排水の処理方法。
(4)前記第二処理で発生する泡を除去する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の油脂含有排水の処理方法。
(5)前記第二処理で発生する泡を前記第一処理の工程に導入する上記(4)に記載の油脂含有排水の処理方法。
(6)前記第一処理、及び/又は前記第二処理を2回以上行う、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の油脂含有排水の処理方法。
(7)油脂含有排水の処理装置であって、
油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施す第一処理手段と、
前記第一処理手段で得た処理水に好気性処理を施す第二処理手段と、
を備える、油脂含有排水の処理装置。
(8)前記第一処理手段の上流に、油脂含有排水に濃縮処理をする濃縮手段を備える、上記(7)に記載の油脂含有排水の処理装置。
(9)前記第二処理において発生する汚泥を、前記油脂含有排水、前記濃縮手段のうち少なくとも一つへ返送する返送手段を備える、上記(7)又は(8)に記載の油脂含有排水の処理装置。
(10)前記第二処理において発生する泡を除去する泡除去手段を備える、上記(7)〜(9)のいずれかに記載の油脂含有排水の処理装置。
(11)前記第二処理で発生する泡を、前記第一処理の工程に導入する手段を備える上記(10)に記載の油脂含有排水の処理装置。
(12)前記第一処理手段、及び/又は前記第二処理手段を2つ以上備える、上記(7)〜(11)のいずれかに記載の油脂含有排水の処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油脂分を短時間で分解でき、余剰汚泥が生じ難い、油脂含有排水の処理方法及び処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の装置を説明するための概念図である。
図2】本発明の装置の好適態様を説明するための概念図である。
図3】実施例において用いた本発明の装置の好適態様を示す概略図である。
図4】実施例において用いた本発明の装置の好適態様を示す別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。本発明は、油脂含有排水の処理方法であって、油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施し、前記第一処理で得た処理水に好気性処理を施す第二処理をすることを特徴とする油脂含有排水の処理方法である。このような処理方法を、以下では「本発明の方法」ともいう。
また、本発明は、油脂含有排水の処理装置であって、油脂含有排水に含まれる油脂分に、嫌気性環境又は微好気性環境の下、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、又は好気性菌のうち少なくとも一つによる、分解、乳化又は分散のうち少なくとも一つの作用をさせる処理である第一処理を施す第一処理手段と、前記第一処理手段で得た処理水に好気性処理を施す第二処理手段と、を備える、油脂含有排水の処理装置である。このような処理装置を、以下では「本発明の装置」ともいう。本発明の方法は、本発明の装置を用いて行うことが好ましい。
【0012】
以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の方法及び本発明の装置の両方を意味するものとする。
【0013】
本発明について図を用いて説明する。
図1は、本発明の装置を示す概略図である。
図1において本発明の装置1は、油脂含有排水2に第一処理を施して第一処理水4を排出する第一処理手段3と、第一処理水4に好気性処理を施して第二処理水7を排出する第二処理手段5とを有する。
【0014】
<油脂含有排水>
本発明の処理対象物である油脂含有排水について説明する。
本発明において油脂含有排水は油脂分を含む水を意味する。油脂分として動植物性油脂(トリグリセリドやその部分分解物)が挙げられる。具体例として、食品工場や厨房から排出される排水や生活排水が例示される。油脂含有排水は、油脂分以外の成分(例えば窒素成分(アンモニア性窒素、有機性窒素等))をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明において油脂含有排水は、ヘキサン抽出物濃度の下限が30mg/L、好ましくは50mg/L、より好ましくは100mg/Lであってよく、上限が、50,000mg/L、好ましくは30,000mg/L、より好ましくは10,000mg/Lであってよい。
【0016】
ここで油脂含有排水のヘキサン抽出物濃度は、工場排水試験方法(JIS K0102 24)に基づき測定して得た値を意味するものとする。
以下の説明においてヘキサン抽出物濃度は、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0017】
本発明では、油脂含有排水に前処理を施したものに第一処理を施すことができる。したがって、油脂含有排水に前処理を施したものは、本発明において油脂含有排水に該当するものとする。本発明における油脂含有排水の一態様として、例えば、油脂含有排水に前処理を施したもの、後述の油脂含有排水に濃縮処理を施して得られた濃縮物、油脂含有排水に分散処理を施して得られる分散水があげられる。
【0018】
<第一処理手段>
本発明の装置1が有する第一処理手段3について説明する。第一処理手段3は油脂含有排水2に第一処理を施して第一処理水4を排出する。
【0019】
第一処理について説明する。本発明において第一処理とは、嫌気性環境下又は微好気性環境下において、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを、油脂含有排水に含まれる油脂分に作用させることで、主として、これらの菌が生産するバイオサーファクタント等の代謝産物によって油脂分の乳化や分散を促進したり、リパーゼなどの酵素によって一部分解させたりする処理であって、原則として、絶対嫌気性菌であるメタン生成菌による分解に伴うガス(メタンガス、炭酸ガス等)の発生を伴わない処理を意味する。したがって、本発明において第一処理は、従来の嫌気消化(例えば特許文献2に記載の嫌気消化)とは異なる処理である。
【0020】
嫌気性環境下又は微好気性環境下とは、溶存酸素濃度(DO)が0〜0.3mg/L、酸化還元電位が+50mV以下の状態を指す。
【0021】
従来、嫌気性処理(嫌気性生物処理)とは、嫌気性環境下で生育する嫌気性菌の代謝作用によって、有機物をメタンガスや炭酸ガスに分解する生物処理方法を意味する。また、ここで有機物からメタンガスへの分解経路は3段階からなると考えられており、具体的には、有機物の加水分解による可溶化、低分子化を行う第1段階、次に、低分子物質の酸発酵による揮発性脂肪酸、アルコール類の生成を行う第2段階、最後に、酢酸又は水素と二酸化炭素からメタンガスを生成する第3段階という3段階からなると考えられている。
本発明における第一処理は、このような従来の嫌気性処理における第3段階に相当する分解反応(メタンガス生成反応)を原則として含まないため、メタンガスは発生しない。また、第2段階に相当する分解反応(酸発酵)もほぼ含まないと本発明者は推定している。さらに、第1段階に相当する分解反応(加水分解)は、少なくとも油脂分の一部について進行している可能性がある。
【0022】
本発明における第一処理は、例えば、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを油脂含有排水2に作用させる条件(時間、pH、温度等)を調整することで行うことができる。
以下のような条件のもとで行うと、バイオサーファクタント等の代謝産物による油脂分の乳化や、リパーゼなどの酵素による部分分解が進行する傾向にあるため、好ましい。
【0023】
第一処理において、油脂含有排水2に嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを作用させる時間の下限を20時間とすることが好ましく、2日とすることがより好ましく、3日とすることがさらに好ましい。また、この時間の上限を15日とすることが好ましく、10日とすることがより好ましい。従来公知の嫌気消化における処理時間は30〜60日程度であるが、本発明における第一処理は、メタン発酵の反応を行わないためより短時間とすることができる。
なお、後述するように2段階以上の第一処理を施す場合、各段階における処理時間の合計が、上記のような、油脂含有排水2に嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを作用させる時間に相当するものとする。
【0024】
第一処理は、油脂含有排水2(第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その槽内容物)のpHを7.2以上として行うことが好ましい。また、このpHは11.0以下として行うことが好ましく、8.8以下として行うことが好ましい。
【0025】
第一処理は、油脂含有排水2(第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その槽内容物)の温度を20℃以上として行うことが好ましく、30℃以上として行うことがより好ましい。また、この温度を58℃以下として行うことが好ましく、47℃以下として行うことがより好ましい。
【0026】
第一処理は、油脂含有排水2へ硫酸イオンを含有させて行うことが好ましい。また、油脂含有排水2における硫酸イオンの濃度を10〜3,000mg/Lとすることが好ましく、10〜2,000mg/Lとすることがより好ましく、30〜300mg/Lとすることがさらに好ましい。
【0027】
微好気性菌、好気性菌又は通性嫌気性菌を油脂含有排水2へ作用させて第一処理を行う場合、例えば従来公知の曝気処理とは異なる、制限された酸素供給を油脂含有排水2(第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その槽内容物)に対して行うことが好ましい。このとき、油脂含有排水2の酸化還元電位が+50mV以下、より好ましくは−50mV以下、さらに好ましくは−50〜−250mVとなるように調整して第一処理を施すことが好ましい。
【0028】
なお、嫌気性菌を油脂含有排水2へ作用させて第一処理を行う場合は、油脂含有排水2(第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その槽内容物)の酸化還元電位が好ましくは−200mV以下、より好ましくは−300mV以下となるように調整して第一処理を施す。
【0029】
なお、本発明において酸化還元電位は白金電極によるORP電極法により測定して得られた値を意味するものとする。
【0030】
第一処理における油脂含有排水2の受入れ可能なヘキサン抽出物濃度は30〜30,000mg/Lとすることが好ましく、30〜20,000mg/Lとすることがより好ましく、30〜10,000mg/Lとすることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の装置1が有する第一処理手段3は、上記のような第一処理を油脂含有排水2に対して施して第一処理水4を排出できる手段であれば特に限定されない。例えば、嫌気性環境下において生息する嫌気性菌を内部に有する密閉容器内に油脂含有排水2を受け入れ、これに嫌気性菌を作用させて第一処理水4を排出するものが挙げられる。また、例えば、微好気性環境下において生息する嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを内部に有する容器であって、油脂含有排水2を内部に受け入れ、これに嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つを作用させて第一処理水4を排出するものが挙げられる。いずれの容器を用いた場合でも、その内部を撹拌できる装置を有することが好ましい。
【0032】
第一処理手段3として、嫌気性固定床法、嫌気性流動床法、UASB法、EGSB法等の従来公知の処理を行う装置を利用することは可能である。ただし、上記のように、本発明における第一処理は原則としてメタン生成菌による分解(メタン発酵)が進行しない条件で処理するため、メタンガスを貯留するためのガスホルダや脱硫処理装置等の付帯設備はなくてもよい。
【0033】
第一処理手段3は、上記のように油脂含有排水2(第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その槽内容物)のpH、温度、酸化還元電位を調整できる手段をさらに有するものであることが好ましい。pHや温度は公知の酸、アルカリ添加手段や、加熱手段によって調整することができる。酸化還元電位は、油脂含有排水2に対して適量の酸素を供給しながら第一処理を施すことで調整することができる。
また、上記のように、油脂含有排水2へ硫酸イオンを添加できる手段をさらに有するものであることが好ましい。硫酸イオンは公知の添加手段によって添加することができる。
【0034】
第一処理手段3は、2段階以上の第一処理を施すものであることが好ましい。
ここで2段階の第一処理とは、第一処理を2回施すことを意味する。例えば、密閉容器を前段部と後段部との2つの部分に仕切り、油脂含有排水2に前段部で第一処理を施した後、さらに後段部で第一処理を施す態様が挙げられる。また、例えば、2つの装置を用い、油脂含有排水2に1つ目の装置にて第一処理を施した後、さらに2つ目の装置にて第一処理を施す態様が挙げられる。
第一処理手段3は、3回以上の第一処理を施す態様のものであってよい。
このように2段階以上の第一処理を油脂含有排水2に施すと、得られた第一処理水4についてさらに第二処理手段5を施すことで、より水質が優れる第二処理水7が得られるからである。
【0035】
第一処理手段3において油脂含有排水2について第一処理を施すと、油脂残渣は発生し難い。発生するとしても、その量は、従来法と比較して格段に少ない。油脂残渣が発生した場合、後述する分散手段によって油脂残渣を処理することが好ましい。
【0036】
第一処理手段3は、第二処理手段5において発生する返送汚泥を受け入れることができるように構成されていることが好ましい。返送汚泥を受け入れて油脂含有排水2とともに処理すると、得られた第一処理水4についてさらに第二処理手段5を施すことによって、より水質が優れる処理水が得られるからである。
【0037】
本発明の方法が備える第一処理は、上記のような第一処理手段3によって行うことができる。
【0038】
<第二処理手段>
本発明の装置1が有する第二処理手段5について説明する。第二処理手段5は第一処理水4について好気性処理を施して第二処理水7を排出する。
【0039】
好気性処理について説明する。本発明において好気性処理とは、好気性環境下において生息する好気性菌を主体とした微生物を、第一処理で得た第一処理水に作用させて分解する処理を意味する。
【0040】
好気性環境下とは酸素が存在する環境下であり、溶存酸素濃度(DO)が0mg/L以上の状態を指す。
【0041】
本発明の好気性処理として、例えば従来公知の好気性生物処理を適用することができる。具体的には、第一処理水4を槽内に受け入れ、撹拌しながら曝気する処理が例示される。より具体的には、従来公知の浮遊生物処理法(回分式活性汚泥法、連続式活性汚泥法等)や生物膜処理法(回転円板法、好気性ろ床法、流動床法等)が例示される。
【0042】
また、好気性処理は、複数種類の処理を含むことが好ましい。例えば、第一処理水4に連続式活性汚泥法を適用した後、流動床法を適用する処理であることが好ましい。また、第一処理水4に曝気処理を施した後、連続式活性汚泥法を適用する処理であることが好ましい。また、前記のプロセスに脱窒素工程を組み込んでも良い。
【0043】
好気性処理が複数種類の処理を含む場合、そのうちの1つとして従来公知の活性汚泥処理を含むことが好ましい。このような場合、最終的に得られる第二処理水7の清浄度がより高まり、下水道法に規定される下水放流基準値を満足するヘキサン抽出物濃度の第二処理水7が得られるからである。
【0044】
本発明における好気性処理は、例えば、好気性菌等を第一処理水4に作用させる条件(時間、pH、温度等)を調整することで行うことができる。
【0045】
好気性処理において、第一処理水4に好気性菌等を作用させる時間の下限を3時間とすることが好ましく、3日とすることがより好ましく、4日とすることがさらに好ましい。また、この時間の上限を14日とすることが好ましく、7日とすることがさらに好ましい。第一処理水4に好気性菌を作用させる時間がこのような範囲であると、より清浄度の高い第二処理水7が得られるからである。
なお、後述するように2段階以上の好気性処理を施す場合、各段階における処理時間の合計が、上記のような、第一処理水4に好気性菌を作用させる時間に相当するものとする。
【0046】
好気性処理は、第一処理水4(第二処理手段5において反応槽を用いる場合、その槽内容物)のpHを7.2以上として行うことが好ましく、7.5以上として行うことが好ましい。また、このpHは11.0以下として行うことが好ましく、9.0以下として行うことが好ましい。このような範囲のpHとして第一処理水4に好気性処理を施すと、より清浄度の高い第二処理水7が得られるからである。
【0047】
好気性処理は、第一処理水4(第二処理手段5において反応槽を用いる場合、その槽内容物)の温度を20℃以上として行うことが好ましく、30℃以上として行うことがより好ましい。また、この温度を58℃以下として行うことが好ましく、47℃以下として行うことがより好ましい。このような範囲の温度として第一処理水4に好気性処理を施すと、より清浄度の高い第二処理水7が得られるからである。
【0048】
好気性処理は、第一処理水4における油脂分の質量と窒素原子の質量の比(窒素原子/油脂分)を0.05以上として行うことが好ましく、0.1〜0.5として行うことがより好ましい。
好気性処理は、第一処理水4における油脂分の質量とリン原子の質量の比(リン/油脂分)を0.01以上として行うことが好ましく、0.05〜0.1として行うことが好ましい。
このような窒素、リン及び油脂分の質量比となるように、好気性処理の際に窒素源等の栄養素を補給することが好ましい。
【0049】
後述するように、第二処理手段5が2段階以上の好気性処理を施すものである場合、第1段目の好気性処理は、第一処理水4(第二処理手段5において反応槽を用いる場合、その槽内容物)における溶存酸素量(DO)が2mg/L以下となるように行うことが好ましく、1.0mg/L以下となるように行うことがより好ましく、0.6mg/L以下となるように行うことがさらに好ましい。第2段目以降の第一処理水4(第二処理手段5において反応槽を用いる場合、その槽内容物)における溶存酸素量(DO)は1.0mg/L以上となるように行うことが好ましく、2.0mg/L以上となるように行うことがより好ましく、3.0mg/L以上となるように行うことがさらに好ましい。より清浄度の高い第二処理水7が得られるからである。
なお、溶存酸素量は従来公知のDOメーターにて測定することができる。
【0050】
本発明の装置1が有する第二処理手段5は、上記のような好気性処理を第一処理水4に対して施して、第二処理水7を排出できる手段であれば特に限定されない。例えば、酸素が存在する好気性環境下において生息する好気性菌を内部に有する容器内に第一処理水4を受け入れ、これに好気性菌を作用させて、第二処理水7を排出するものが挙げられる。このような容器の内部を撹拌できる装置を有することが好ましい。
【0051】
第二処理手段5として、浮遊生物処理法(回分式活性汚泥法、連続式活性汚泥法等)や生物膜処理法(回転円板法、好気性ろ床法、流動床法等)等の従来公知の処理を行う装置を利用することが可能である。
さらに、第二処理手段5では、上記のように、第一処理水4(第二処理手段5において反応槽を用いる場合、その槽内容物)のpH、温度、窒素、リン、溶存酸素量等を調整できる手段をさらに有するものであることが好ましい。pHや温度は従来公知の酸、アルカリ添加手段や、加熱手段によって調整することができる。窒素、リン及び溶存酸素量は、従来公知の窒素源等の補給手段を用いることができる。
【0052】
第二処理手段5は、2段階以上の好気性処理を施すものであることが好ましい。
ここで2段階の好気性処理とは、好気性処理を2回施すことを意味する。例えば、容器を前段部と後段部との2つの部分に仕切り、第一処理水4に前段部で好気性処理を施した後、さらに後段部で好気性処理を施す態様が挙げられる。また、例えば、2つの装置を用い、第一処理水4に1つ目の装置にて好気性処理を施した後、さらに2つ目の装置にて好気性処理を施す態様が挙げられる。
第二処理手段5は、3回以上の好気性処理を施す態様のものであってよい。
このように2段階以上の好気性処理を第一処理水4に施すと、より水質が優れる第二処理水7が得られるからである。
【0053】
第二処理手段5における好気性処理では、処理中に処理液の表面から泡が発生する場合がある。泡が発生すると、汚泥が流出する、又は、第二処理手段5が備える配管等を閉塞する可能性があり、好ましくない。このような場合、第二処理手段5は、さらにこの泡を除去する泡除去手段を備えることが好ましい。
泡除去手段として、好気性処理にて消泡剤を添加することが挙げられる。消泡剤を添加すると泡の発生を抑制することができる。消泡剤として、非イオン性の界面活性剤の消泡剤を用いることが好ましい。
【0054】
また、別の泡除去手段として、処理中の液面の上部空間に、発生する泡を付着させることができる構造物を用いることができる。このような構造物を処理中の液面の上部空間に設置すると、泡が構造物の表面に膜状に付着していくので、泡を液面から分離することができる。そして、好気性処理における油脂分の処理速度を向上することができる。構造物として、例えばシート状のフィルターを垂直方向に配置したユニットなどが挙げられる。
さらに別の泡除去手段として、発生した泡を第二処理工程から分離・移送する方法がある。
本発明の方法は、このような泡除去手段を用いて行うことができる泡除去工程をさらに備えることが好ましい。
【0055】
本発明の方法が備える第一処理は、泡除去工程において分離した泡と共に前記油脂含有排水に第一処理を施す処理であることが好ましい。
上記のように、泡除去手段として、処理中の液面の上部空間に発生する泡を付着させることができる構造物を用いる場合、回収した泡を前記油脂含有排水及び/又は第一処理手段の工程に加えることで、分離した泡と共に前記油脂含有排水に第一処理を施すことができる。
他の態様として、第二処理工程で発生する泡を、第一工程に移送する手段を備えることで、回収した泡と共に前記油脂含有排水に第一処理を施すことができる。
また、例えば、好気性処理を行う反応槽を密封構造とし、第一処理を行う反応槽から越流された反応液(第一処理水4)を、好気性処理を行う反応槽に導入する構造とすることで、分離した泡を第一処理を行うための反応槽(第一処理手段3)へ供給して、分離した泡と共に前記油脂含有排水に第一処理を施すことができる。このような場合、第一処理を行う反応槽から越流する反応液と、エアレーションによる排気と共に排出される泡とが対抗する流れが形成され、泡の少なくとも一部を第一処理に供する反応槽内に供給することができる。第一処理を行う反応槽内に供給された泡は、反応槽内の撹拌流により消滅する。
【0056】
第二処理手段5において第一処理水4に好気性処理を施すと、油脂残渣は発生し難い。発生するとしても、その量は、従来法と比較して格段に少ない。油脂残渣が発生した場合、後述する分散手段によって油脂残渣を処理することが好ましい。
【0057】
第二処理手段5は、返送汚泥を受け入れることができるように構成されていることが好ましい。返送汚泥を受け入れて第一処理水4と共に好気性処理を施すと、より水質が優れる処理水が得られるからである。返送汚泥の発生箇所等については後述する。
【0058】
第二処理手段5は、内部に汚泥が貯留される場合がある。よって、これを返送汚泥として排出できる構成を備えていることが好ましい。
また、第二処理手段5は、固液分離手段を含んでいることが好ましい。この場合、第二処理手段5において貯留される汚泥の排出をすみやかに行うことができる。上記のように、本発明における好気性処理は活性汚泥処理を含むことが好ましい。活性汚泥処理は、通常、曝気槽及び沈殿槽からなる装置を用いる処理であって、沈殿槽によって活性汚泥のフロックを自然沈降によって分離する手段を含む。そのため、このように第二処理手段5が活性汚泥処理を行うための沈殿槽のような固液分離手段を含むことが好ましい。もちろん、活性汚泥処理を含まない第二処理手段5において、固液分離手段を含むことも好ましい。
第二処理手段5から排出された汚泥は返送汚泥として用いることができる。返送汚泥の供給箇所等については後述する。
【0059】
本発明の方法が備える好気性処理は、上記のような第二処理手段5によって行うことができる。
【0060】
本発明の装置は、上記のような第一処理手段3と、第二処理手段5とを有し、さらに、濃縮手段、分散手段及び返送手段からなる群から選ばれる少なくとも1つの手段を有することが好ましい。
【0061】
第一処理手段3と、第二処理手段5とを有し、さらに、濃縮手段、分散手段及び返送手段を有する本発明の装置の好適例について、図2を用いて説明する。
【0062】
図2は、本発明の装置の好適態様(装置10)を示す概略図である。
装置10は、第一処理手段3及び第二処理手段5の他に、さらに、返送手段11、濃縮手段18、分散手段19、返送手段23及び返送手段26を有する。また、装置10は、油脂含有排水2にPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加するPAC添加手段12及び凝集ポリマを添加する凝集ポリマ添加手段13を有する。
以下では装置10について、図1に示した本発明の装置1と異なる箇所について詳しく説明する。なお、図2では装置10について、図1に示した本発明の装置1と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0063】
返送手段11について説明する。
返送手段11は、第二処理手段5において発生した返送汚泥28を、油脂含有排水2へ添加する手段である。返送手段11として、例えば、第二処理手段5における返送汚泥28の排出口から、濃縮手段18の前段に配置した油脂含有排水2を貯留する槽までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥28を移送し、返送汚泥28を油脂含有排水2へ添加する手段が例示される。返送手段11による油脂含有排水2への返送汚泥の添加量は、添加後のSS濃度が50〜500mg−SS/Lとなる量であることが好ましい。
【0064】
本発明の装置(装置10)が、油脂含有排水2へ返送汚泥を添加する返送手段11を有すると、格段に油脂残渣が発生し難くなることを、本発明者は見出した。また、油脂分の分解がより容易になり、より清浄度の高い第二処理水7が得られることを、本発明者は見出した。後述するように、分散手段19において返送手段23によって返送汚泥を添加する場合や、第一処理手段3において返送手段26によって返送汚泥を添加する場合と比較して、濃縮手段18の前段階にて油脂含有排水2へ返送手段11によって返送汚泥を添加する方が、より油脂残渣が発生し難くなり、さらに油脂分の分解がより容易になることを、本発明者は見出した。
油脂含有排水2へ返送汚泥を加えた後、加圧浮上槽等の濃縮手段18を施すと、濃縮物21(フロス等)が油脂の塊ではなく、返送汚泥の表面に油脂分が吸着して分散した状態になるため、続く第一処理における反応性が向上し、油脂残渣の発生が抑制され、油脂分も分解されやすくなるものと本発明者は推定している。
【0065】
本発明の方法は、前記好気性処理において発生した返送汚泥28を、油脂含有排水2へ供給する汚泥返送工程をさらに備え、前記第一処理において、返送汚泥28を、油脂含有排水2又はこれをさらに処理して得た濃縮物21もしくは分散水25と共に処理することが好ましい。このような汚泥返送工程は、返送手段11によって行うことができる。
【0066】
PAC添加手段12及び凝集ポリマ添加手段13について説明する。
PAC添加手段12によって所望量のPACを油脂含有排水2へ添加することができる。また、凝集ポリマ添加手段13によって所望量の凝集ポリマを油脂含有排水2へ添加することができる。PAC及び/又は凝集ポリマを油脂含有排水2へ添加すると、装置10から排出される第二処理水7の清浄度が高くなる傾向がある。また、本発明の装置が濃縮手段18を備える場合、PAC及び/又は凝集ポリマを油脂含有排水2へ添加すると、濃縮手段18において分離効率がより高まり、濃縮物における油脂分の濃度がより高まる傾向があり、装置10から排出される第二処理水7の清浄度が高くなる傾向がある。凝集ポリマとしてカチオンポリマ又はアニオンポリマを用いることができる。
【0067】
PAC添加手段12及び凝集ポリマ添加手段13の各々は、専用タンク内にPAC又は凝集ポリマを溶液又は分散液として貯留し、ポンプの作用によって配管を通じて所望の供給量で油脂含有排水2へ供給することができるものが例示される。
【0068】
装置10が調整槽をさらに備える場合、PAC添加手段12及び/又は凝集ポリマ添加手段13からのPAC及び/又は凝集ポリマや、前記の返送汚泥28を前記の調整槽又は調整槽から濃縮手段18への移送工程へ導入し、油脂含有排水2と混合した後、所望の排出量にて濃縮手段18等の後工程へ排出することが好ましい。
なお、調整槽は油脂含有排水2を貯留できる貯留部を有するものであれば、その構造物の形態は特に限定されない。
【0069】
濃縮手段18について説明する。
濃縮手段18は、油脂含有排水2(返送汚泥、PAC又は凝集ポリマを含む場合もある)を受け入れ、油脂含有排水2に含まれる油脂分を濃縮し、濃縮物21として排出し、また、濃縮物21以外の部分を分離水22として排出する手段である。
濃縮物21は分散手段19へ供給できるように構成されている。分離水22は第二処理手段5における好気性処理の過程又はその流入口付近もしくは流出口付近へ供給できるように構成されている。
第二処理手段5における好気性処理が活性汚泥処理を含む場合、活性汚泥処理を行う直前、例えば、活性汚泥槽の流入口付近へ、分離水22を供給することが好ましい。
濃縮手段18によって、油脂含有排水2に含まれる油脂分の濃度を10倍以上に濃縮した濃縮物21を得ることが好ましい。この濃縮の程度は、40〜50倍が好ましい。
濃縮手段18として加圧浮上槽を用いることが好ましい。加圧浮上槽を用いた浮上分離処理による濃縮物をフロスともいう。
【0070】
本発明の装置が濃縮手段18を有すると、油脂含有排水2に含まれる油脂分を高濃度に含む濃縮物21について第一処理手段3を施し、さらに第二処理手段5を施すことになるので、第一処理及び好気性処理における微生物の濃度が高くなり、油脂分と微生物との接触効率が高くなることで、分解速度が高くなるので好ましい。
また、油脂含有排水2に対して第一処理を施す場合と比較して、濃縮物21に対して第一処理を施す場合の方が、処理対象物の体積が格段に小さくなる。そのため、第一処理手段3において反応槽を用いる場合、その反応槽の体積当たりの処理時間(滞留時間)を長くすることができて好ましい。
本発明の方法は、前記第一処理が、油脂含有排水2に濃縮処理を施して濃縮物21と分離水22とを得た後、濃縮物21に第一処理を施す処理であることが好ましい。このような濃縮処理は、濃縮手段18によって行うことができる。
【0071】
分散手段19について説明する。
分散手段19は、濃縮物21を受け入れ、これを撹拌し、分散水25として排出する手段である。また、分散手段19は油脂残渣24及び返送手段23からの返送汚泥28を受け入れることができるように構成されている。したがって、分散手段19は、必要に応じて油脂残渣24及び/又は返送汚泥28を受け入れ、これらと共に濃縮物21を撹拌し、分散水25として排出する。
【0072】
分散手段19における撹拌は、機械撹拌等の物理的な撹拌手段であることが好ましい。また、アルカリpH条件下における機械撹拌、高温条件における機械撹拌、リパーゼなどの分解酵素作用環境下における機械撹拌、乳化剤などの界面活性物質共存下における機械撹拌、オゾン、化学酸化剤などの酸化剤作用環境下における機械撹拌などであると、良好な分散状態が得られるのでさらに好ましい。分散手段19は、例えば、撹拌装置を備える貯留部を有する構造物が例示される。本発明の装置が分散手段19を有すると、油脂残渣が発生した場合に、これを効率的に分解することができるので好ましい。
【0073】
本発明の方法は、さらに、油脂含有排水2及び/又は濃縮物21に分散処理を施して分散水25を得る分散工程を備え、前記第一処理が、分散水25に第一処理を施す処理であることが好ましい。
また、このような分散工程が、前記第一処理及び/又は前記好気性処理において発生した油脂残渣24に、油脂含有排水2及び/又は濃縮物21と共に分散処理を施して分散水25を得る工程であることが好ましい。
このような分散工程は、上記の分散手段19によって行うことができる。
【0074】
返送手段23について説明する。
返送手段23は、第二処理手段5において発生した返送汚泥28を、分散手段19において濃縮物21へ添加する手段である。
返送手段23として、前述の返送手段11と同様の態様のものを挙げられる。例えば、第二処理手段5における返送汚泥28の排出口から、分散手段19までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥28を移送し、返送汚泥28を濃縮物21へ添加する手段が例示される。返送手段23による濃縮物21への返送汚泥の添加量は、添加後のSS濃度が500〜5,000mg−SS/Lとなる量であることが好ましい。
【0075】
本発明の装置(装置10)が、濃縮物21へ返送汚泥を添加する返送手段23を有すると、油脂残渣が発生し難くなることを、本発明者は見出した。また、油脂分の分解がより容易になり、より清浄度の高い第二処理水7が得られることを、本発明者は見出した。後述するように、第一処理手段3において返送手段26によって返送汚泥を添加する場合と比較して、分散手段19において濃縮物21へ返送手段23によって返送汚泥を添加する方が、より油脂残渣が発生し難くなり、さらに油脂分の分解がより容易になることを、本発明者は見出した。
【0076】
本発明の方法は、前記好気性処理において発生した返送汚泥28を、油脂含有排水2の一態様である濃縮物21へ供給する汚泥返送工程をさらに備え、前記第一処理において、返送汚泥28を、濃縮物21又はこれをさらに処理して得た分散水25と共に処理することが好ましい。このような汚泥返送工程は、返送手段23によって行うことができる。
【0077】
第一処理手段3について説明する。
第一処理手段3は、図1に示した態様と同様であってよい。第一処理手段3は、濃縮物21及び/又は分散水25を受け入れ、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用によって第一処理を行い、第一処理水4を排出する。
また、第一処理手段3は、返送手段26によって返送汚泥28を受け入れることができるように構成されている。また、前述のように、油脂残渣24が発生した場合に、これを回収して分散手段19へ供給することができるように構成されている。
油脂残渣の回収は、例えば水面に浮上した油脂残渣を、掻き寄せ機で回収し、人力又は一般的な搬送手段(例えばコンベア等)で移送するという手段によって行うことができる。第二処理手段5においても同様の方法で油脂残渣を回収することができる。
【0078】
返送手段26について説明する。
返送手段26は、第二処理手段5において発生した返送汚泥28を、第一処理手段3において濃縮物21及び/又は分散水25へ添加する手段である。
返送手段26として、前述の返送手段11及び返送手段23と同様の態様のものを挙げられる。例えば、第二処理手段5における返送汚泥28の排出口から、第一処理手段3までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥28を移送し、返送汚泥28を濃縮物21及び/又は分散水25へ添加する手段が例示される。返送手段26による濃縮物21及び/又は分散水25への返送汚泥の添加量は、添加後のSS濃度が500〜5,000mg−SS/Lとなる量であることが好ましい。
【0079】
本発明の装置(装置10)が、濃縮物21及び/又は分散水25へ返送汚泥28を添加する返送手段26を有すると、油脂残渣が発生し難くなることを、本発明者は見出した。また、油脂分の分解がより容易になり、より清浄度の高い第二処理水7が得られることを、本発明者は見出した。
【0080】
本発明の方法は、前記好気性処理において発生した返送汚泥28を、油脂含有排水2の一態様である濃縮物21及び/又は分散水25へ供給する汚泥返送工程をさらに備え、前記第一処理において、返送汚泥28に、濃縮物21及び/又は分散水25と共に第一処理を施すことが好ましい。
このような汚泥返送工程は、返送手段26によって行うことができる。
【0081】
第二処理手段5について説明する。
第二処理手段5は、図1に示した態様と同様であってよい。第二処理手段5は、第一処理水4を受け入れ、好気性菌の作用によって好気的処理を行い、第二処理水7を排出する。また、第二処理手段5は分離水22を受け入れることができるように構成されている。また、前述のように、油脂残渣24が発生した場合に、これを回収して分散手段19へ供給することができるように構成されている。
【0082】
さらに、第二処理手段5は沈殿槽等のような固液分離手段を含むことが好ましい。
固液分離手段は沈殿物を返送汚泥28として排出し、上澄みを第二処理水7として排出できるように構成されている。
第二処理手段5から排出された返送汚泥28は、油脂含有排水2、分散手段19又は第一処理手段3へ返送汚泥として供給することができるように構成されている。
第二処理手段5が固液分離手段を含むと、より清浄度の高い第二処理水7が得られるので好ましい。
【0083】
また、第二処理手段5が2段階以上の好気性処理を施すものである場合、前段側の処理において発生する汚泥を、返送汚泥として用いることが好ましい。また、ここで得られた汚泥を、濃縮手段18にて処理する前に返送汚泥として油脂含有排水2へ添加して用いることが好ましい。例えば、第二処理手段5が好気槽、活性汚泥槽及び沈殿槽をこの順で有する態様である場合、前段側である好気槽にて発生する汚泥を返送汚泥として用いると、後段側である沈殿槽にて発生する汚泥を返送汚泥として用いた場合と比較して、より清浄度の高い第二処理水7が得られるので好ましい。
【実施例】
【0084】
本発明について実施例を用いて説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
実施例において用いた実験装置について図3及び図4を用いて説明する。実施例では、以下に説明する実験装置30(図3)又は実験装置90(図4)を用いた。
【0086】
実験装置30について説明する。
図3に示す実験装置30は、調整槽32、加圧浮上槽34、分散槽36、第一処理槽38、好気槽40、活性汚泥槽42及び沈殿槽44を有する。
【0087】
加圧浮上槽34は、本発明の装置が有することが好ましい濃縮手段に相当する。
分散槽36は、本発明の装置が有することが好ましい分散手段に相当する。
第一処理槽38は、本発明の装置が有する第一処理手段に相当する。
好気槽40、活性汚泥槽42及び沈殿槽44は、本発明の装置が有する第二処理手段に相当する。
【0088】
調整槽32は油脂含有排水50を貯留するものであり、本実験装置30では貯留部を有する構造物を用いた。この調整槽32内へ油脂含有排水50を受け入れて貯留し、所望の供給量で加圧浮上槽34へ供給することができるように構成されている。
また、調整槽32の内部へ返送手段52、PAC添加手段54及び凝集ポリマ添加手段56によって、返送汚泥、PAC及び凝集ポリマを供給できるように構成されている。具体的にPAC及び凝集ポリマは、各々、専用タンク内に溶液又は分散液として貯留され、ポンプの作用によって配管を通じて所望の供給量で調整槽32へ供給することができるように構成されている。
また、具体的に返送手段52は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、調整槽32までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を調整槽32の内部の油脂含有排水50へ添加することができるように構成されている。
【0089】
加圧浮上槽34は、調整槽32から供給された油脂含有排水50(返送汚泥、PAC又は凝集ポリマを含む場合もある)を受け入れ、浮上分離処理を行い、フロス58と分離水60とを排出する。また、フロス58を分散槽36又は第一処理槽38へ供給できるように構成されている。さらに、分離水60を活性汚泥槽42の流入口又は流出口へ供給できるように構成されている。
【0090】
分散槽36は、油脂残渣64及び/又は返送汚泥を受け入れ、これらと共にフロス58を撹拌し、分散水66として排出する。
分散槽36は貯留部とその内部の撹拌装置を有していて、撹拌装置によって貯留部内を撹拌できるように構成されている。また、分散槽36は油脂残渣64及び返送手段62による返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段62は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、分散槽36までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を分散槽36の内部のフロス58へ添加することができるように構成されている。
【0091】
第一処理槽38は、分散水66及び/又はフロス58を受け入れ、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌及び好気性菌からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用によって第一処理を行い、第一処理水68を排出する。
第一処理槽38は、貯留部を有し、かつその貯留部が密閉可能に構成されたものであり、内部を撹拌できるように撹拌機が備えられている。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。なお、メタン発酵させない条件で処理するため、メタンガスを貯留するためのガスホルダや脱硫処理装置等の付帯設備はなくてもよく、本実験装置30では設けていない。
また、第一処理槽38は、返送手段70によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段70は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、第一処理槽38までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を第一処理槽38の内部のフロス58又は分散水66へ添加することができるように構成されている。
また、第一処理槽38は、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。
【0092】
好気槽40は、貯留部を有し、その貯留部内へ空気を供給することができるように構成されたものである。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。好気槽40は、第一処理水68を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、反応液の一部を返送汚泥76として排出し、残りの反応液を好気処理水72として排出する。
また、好気槽40は、返送手段74によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。具体的に返送手段74は、好気槽40及び沈殿槽44における返送汚泥76及び汚泥80の排出口から、好気槽40までを配管で繋ぎ、ポンプの作用によって返送汚泥76及び汚泥80を移送し、返送汚泥76及び汚泥80を好気槽40の流入口付近へ添加することができるように構成されている。
また、好気槽40は、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。さらに、好気槽40は、流出口付近の反応液を返送汚泥(返送汚泥76)として移送し、排出することができるように構成されている。
【0093】
活性汚泥槽42は、内部へ空気を供給することができ、また、撹拌することができるように構成された構造物であり、内部は3分割されている。活性汚泥槽42は、好気処理水72(分離水60を含む場合もある)を受け入れ、従来公知の活性汚泥処理を行い、活性汚泥処理水78を排出する。
【0094】
沈殿槽44は活性汚泥処理水78(分離水60を含む場合もある)を受け入れることができるように構成されている。そして、沈殿物を汚泥80として排出し、上澄みを第二処理水82として排出できるように構成されている。
【0095】
次に、実験装置90について説明する。
図4に示す実験装置90は、調整槽32、分散槽36、第一処理槽38、第1好気槽401、第2好気槽402及び沈殿槽44を有する。
図4に示す実験装置90と、図3に示した実験装置30とは一部が異なる。具体的には、実験装置90は加圧浮上槽34及び活性汚泥槽42を有さないが、2つの好気槽(第1好気槽及び第2好気槽)を有する。2つの好気槽(第1好気槽及び第2好気槽)ならびに沈殿槽44が本発明の装置が有する第二処理手段に相当する。調整槽32、分散槽36、第一処理槽38及び沈殿槽44は、図3に示した実験装置30と同様である。
以下では実験装置90について実験装置30と異なる箇所について詳しく説明する。なお、図4では実験装置90について、図3に示した実験装置30と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0096】
図4に示す実験装置90は加圧浮上槽34を有さないので、調整槽32から排出された油脂含有排水50(返送汚泥、PAC又は凝集ポリマを含む場合もある)は、分散槽36及び/又は第一処理槽38に供給される。分離水60は発生しない。
【0097】
第1好気槽401及び第2好気槽402は、各々、実験装置30が有する好気槽40と同様の態様である。すなわち、各々は、貯留部を有し、その貯留部内へ空気を供給することができ、また、内部を撹拌することができるように構成されたものである。また、内部を2分割又は3分割に仕切ることが可能なように構成されている。
第1好気槽401は、第一処理水68を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、第1好気処理水73を排出する。また、第2好気槽402は、第1好気処理水73を受け入れ、好気性菌や通性嫌気性菌などの作用によって好気的処理を行い、第2好気処理水79を排出する。
また、第1好気槽401は、返送手段74によって返送汚泥を受け入れることができるように構成されている。また、前述のように、油脂残渣64が発生した場合に、これを回収して分散槽36へ供給することができるように構成されている。さらに、第1好気槽401は、流出口付近の反応液を返送用返送汚泥76として移動できるように構成されている。返送汚泥76は、実験装置30が有する好気槽40と同様に、返送手段52、62、70、74によって返送汚泥として利用可能に構成されている。
【0098】
沈殿槽44は図1に示した実験装置30が有する沈殿槽44と同様の態様である。第2好気処理水79を受け入れ、沈殿物を汚泥80として排出し、上澄みを第二処理水82として排出できるように構成されている。
【0099】
このような実験装置30又は実験装置90を用いて、食品工場から排出された油脂含有排水50を種々の条件にて処理した。なお、油脂含有排水50を加圧浮上槽34によって処理する工程のみ回分式とし、その他の工程は連続した処理を行った。
【0100】
<実施例1>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。連続処理における処理水量は3L/日とした。
【0101】
実施例1では、調整槽32へ、好気槽40から発生した返送汚泥を添加し(すなわち、返送手段52によって返送汚泥76を返送汚泥として添加し)、さらにPAC添加手段54及び凝集ポリマ添加手段56によってPAC及び凝集ポリマを添加した。ここで返送汚泥の添加量は、返送汚泥を添加した後の調整槽32内の油脂含有排水50のSS濃度が150mg−SS/Lとなる量とした。また、PACの添加量は、調整槽32内の油脂含有排水50に対して300mg/Lとした。さらに凝集ポリマの添加量は、調整槽32内の油脂含有排水50に対して1mg/Lとした。
【0102】
次に、返送汚泥、PAC及び凝集ポリマを添加された油脂含有排水50を加圧浮上槽34にて処理した。そして、得られたフロス58は、全量を第一処理槽38へ供給した。この際、フロス58と分離水60との体積比は1:39であった。なお、実施例1では分散槽36による分散処理は行わなかった。
分離水60は全量を活性汚泥槽42の流入口へ供給した。すなわち、好気処理水72へ分離水60を合流させた後、活性汚泥槽42にて処理した。
【0103】
第一処理槽38では槽を密閉し、槽内pHが8.5となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに内部を機械撹拌した。また、第一処理槽38における滞留時間は4日間とした。
【0104】
好気槽40では槽内pHが8.0となるようにNaOH又は硫酸を適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに槽内液の溶存酸素濃度が0.5mg/Lの設定条件で通気しながら、撹拌した。また、好気槽40における滞留時間は5日間とした。
【0105】
活性汚泥槽42では槽内pHが7.8となるようにNaOH又は硫酸を適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに槽内液の溶存酸素濃度が3.0mg/Lの設定条件で通気しながら、撹拌した。また、活性汚泥槽42における滞留時間は6時間とした。
【0106】
実施例1では第一処理槽38及び好気槽40における仕切の数を調整して、第1表に示すような4つのケースについて処理を行った。具体的には、実施例1−1では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を仕切なしとし、実施例1−2では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を2分割とし、実施例1−3では第一処理槽38を仕切なし、好気槽40を3分割とし、実施例1−4では第一処理槽38を3分割、好気槽40を3分割とした。なお、ここでいう仕切りなしとは、槽を分割しないことをいう。
また、比較のため、第一処理槽38による処理を行わず、好気槽40のみの処理を行うケース(比較例1−1)と、好気槽40による処理を行わず、第一処理槽38のみの処理を行うケース(比較例1−2)とを行った。なお、比較例1−1では好気槽40を3分割し、比較例1−2では第一処理槽38を3分割した。
【0107】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例及び比較例の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、第一処理水68、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
なお、ヘキサン抽出物濃度の測定方法は前述のとおりである。
結果を第1表に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
第1表に示すように、全ての実施例において第二処理水82のヘキサン抽出物濃度が下水放流基準値である30mg/Lを満足した。また、全ての実施例において、第一処理槽38及び好気槽40において油脂残渣の発生は認められなかった。
これに対して、2つの比較例では、いずれも第二処理水82のヘキサン抽出物濃度が高く、下水放流基準値を満足しなかった。また、比較例1−1では油脂残渣が発生した。
【0110】
このような実施例1の結果より、第一処理と第二処理とを組み合わせる生物処理によって、油脂残渣を発生させずにフロスを効率よく処理することが可能であると考えられる。また、第一処理槽及び/又は好気槽に仕切を設けることで、水質を改善させることが可能と考えられる。フロスの第一処理では曝気処理を行わないため、油脂残渣の発生を防止することが可能と推定され、また、嫌気性微生物や微好気性環境で生育可能な微生物が生産するバイオサーファクタントによる乳化作用や、両微生物群がフロス中に含まれる油脂分を低分子化する作用によって油脂分の可溶化が進行することで、後段の好気性処理での処理速度を向上させることができると推定される。実施例1のようなフロスの第一処理では、一般的なメタン発酵を主反応とする嫌気消化は行われず、油脂分の減量化はほとんど進行しないものの、後段の好気性処理との組み合わせによって油脂分の分解を達成することができると考えられる。
【0111】
<実施例2>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例2ではフロスの生物処理工程における反応効率を促進するため、返送汚泥の必要性、返送汚泥の供給源及び供給先の影響について調べた。
実験は、分散槽36による分散処理を行うこと、返送汚泥の供給源及び供給先の条件以外は、実施例1−4と同様とした。
ここで、分散処理条件について説明する。分散槽36では、受け入れたフロス58へ適宜NaOHを加えて槽内pHを8.5〜9.5に維持した。また、槽内温度を50℃に保持した。さらに内部を機械撹拌した。また、分散槽36における滞留時間は1時間とした。
そして、次のように返送汚泥を用いて油脂含有排水50を処理した。
【0112】
実施例2−1では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段52によって調整槽32へ供給した。
実施例2−2では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段52によって調整槽32へ供給した。
実施例2−3では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段62によって分散槽36へ供給した。
実施例2−4では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段62によって分散槽36へ供給した。
実施例2−5では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段70によって第一処理槽38の流入口付近へ供給した。
実施例2−6では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段70によって第一処理槽38の流入口付近へ供給した。
実施例2−7では、好気槽40から排出された返送汚泥76を返送手段74によって好気槽40の流入口付近へ供給した。
実施例2−8では、沈殿槽44から排出された汚泥80を返送手段74によって好気槽40の流入口付近へ供給した。
実施例2−9では返送汚泥76及び汚泥80のいずれをも用いなかった。
【0113】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例の合計9つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。また、油脂残渣の発生量を測定した。
なお、油脂残渣の発生量として、発生した油脂残渣を回収して質量を測定した。
結果を第2表に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
第2表に示すように、実施例2−1及び実施例2−2において油脂残渣の発生は認められなかったが、その他の実施例では油脂残渣が発生した。
このような結果より、フロスの生物処理における反応効率の向上及び油脂残渣の発生防止のために、汚泥返送を使用することが好ましいと考えられる。また、返送汚泥の供給源として好気槽40や沈殿槽44の汚泥が有効であり、特に前者の好気槽40の汚泥は、油分処理の促進及び油脂残渣の発生を防止するためにより効果的であると考えられる。好気槽40では、油分の分解能力が特に高い微生物種が高濃度で存在することや、これらが油分を分散させるためのバイオサーファクタント(微生物界面活性剤)を分泌することで高い効果が得られると考えられる。
【0116】
さらに、返送汚泥の供給先は、調整槽32が最も効果的であり、次いで分散槽36、第一処理槽38の順で効果が認められる。これに対して好気槽40への返送手段74による返送汚泥の供給の効果は高くなかった。このような効果は、返送汚泥の供給先を加圧浮上槽34の前段とすることで、フロスに含まれる油分の分散性を最適化することができるためと推定される。また、返送汚泥の供給先を加圧浮上槽34よりも前段として返送汚泥に含まれる水分を分離水60とすることで、第一処理及び好気性処理の対象物の体積を小さくし、第一処理槽及び好気槽における滞留時間を長くすることが可能であるためと推定される。
【0117】
<実施例3>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例3ではフロス58を第一処理に供する前処理工程として設置する分散槽36の効果について調べた。
実施例3−1は実施例2−3の条件を基本とし、フロス58を分散槽36へ供給し、さらに好気槽40から排出された返送汚泥76を分散槽36へ供給し、排出された分散水66を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64を回収し、分散槽36へ供給した。
実施例3−2は実施例2−3の条件と同一であり、フロス58を分散槽36へ供給し、さらに好気槽40から排出された返送汚泥76を分散槽36へ供給し、排出された分散水66を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64の分散槽36への供給は行わなかった。
実施例3−3は実施例2−7の条件を基本とし、好気槽40から排出された返送汚泥76を好気槽40の流入口付近へ供給した。そして、フロス58は分散槽36へ供給せず、全量を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64を回収し、分散槽36へ供給した。
実施例3−4は実施例2−7の条件を基本とし、好気槽40から排出された返送汚泥76を好気槽40の流入口付近へ供給した。そして、フロス58は分散槽36へ供給せず、全量を第一処理槽38へ供給した。また、第一処理槽38及び好気槽40で発生した油脂残渣64の分散槽36への供給は行わなかった。
【0118】
このような実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理し、実施例の合計4つのケースの各々において第一処理槽38及び好気槽40における合計の油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第3表に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
第3表に示すように、実施例3−1及び実施例3−2において油脂残渣の発生は極わずかとなった。
また、分散槽36にてフロス58を処理することで、油脂残渣の発生を顕著に抑制することができると考えられる。
また、第一処理槽38及び好気槽40にて発生した油脂残渣を回収し、分散槽36で処理を施すことにより、油脂残渣の発生量を抑制することができると考えられる。
【0121】
<実施例4>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例4は、調整槽32へ供給する返送汚泥の量の影響について実験を行った。実験は実施例2−1の条件を基本として実施した。
実施例4−1では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が20mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−2では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が50mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−3では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が100mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−4では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が300mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−5では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が1000mg−SS/Lとなるようにした。
実施例4−6では、調整槽32において返送汚泥を加えた後の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が2000mg−SS/Lとなるようにした。
【0122】
そして、実施例4の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水66、好気処理水72及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第4表に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
第4表より、調整槽32への汚泥返送の供給量の最適値は、調整槽32において汚泥を加えた後の油脂含有排水50における返送汚泥濃度が50〜1000mg−SS/Lとなる供給量であると考えられる。
【0125】
<実施例5>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例5ではフロスの第一処理におけるpHの影響について調べた。実験は、実施例1−4の条件を基本とし、第一処理槽38における槽内pHを調整した。
実施例5−1では第一処理槽38における槽内pHを7.2に調整した。
実施例5−2では第一処理槽38における槽内pHを7.8に調整した。
実施例5−3では第一処理槽38における槽内pHを8.3に調整した。
実施例5−4では第一処理槽38における槽内pHを8.8に調整した。
実施例5−5では第一処理槽38における槽内pHを9.5に調整した。
【0126】
そして、実施例5の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第5表に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
第5表より、第一処理槽38の槽内pHは7.2〜8.8が好ましいと考えられる。
【0129】
<実施例6>
図4に示す実験装置90を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例6では第一処理槽38内の温度の影響について調べた。なお、連続処理における処理速度は3L/日とした。
【0130】
実施例6では、調整槽32へ、第1好気槽401から発生した返送汚泥76を添加した(すなわち、返送手段52によって返送汚泥76を返送汚泥として油脂含有排水50へ添加した)。ここで返送汚泥の添加量は、返送汚泥を添加した後の調整槽32内の油脂含有排水50の返送汚泥濃度が500mg−SS/Lとなる量とした。
【0131】
次に、返送汚泥が添加された油脂含有排水50の全量を分散槽36へ供給した。尚、PAC及び凝集ポリマの添加は行わなかった。
分散槽36では受け入れた油脂含有排水50へ適宜NaOHを加えて槽内pHを8.5〜9.5に維持し、槽内温度を50℃に保持した。さらに内部を機械撹拌した。また、分散槽36における滞留時間は1時間とした。
【0132】
第一処理槽38では槽を密閉し、槽内pHが8.5となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。さらに内部を機械撹拌した。また、第一処理槽38における滞留時間は20時間とした。
【0133】
第1好気槽401では槽内pHが8.0となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、第1好気槽401における滞留時間は6時間とした。
【0134】
第2好気槽402では槽内pHが8.0となるようにNaOHを適宜加えて調整した。また、槽内温度が37℃となるように調整した。また、第2好気槽402における滞留時間は6時間とした。
【0135】
そして、第一処理槽38における槽内温度を変更した実験を行った。
実施例6−1では第一処理槽38における槽内温度を20℃に維持した。
実施例6−2では第一処理槽38における槽内温度を30℃に維持した。
実施例6−3では第一処理槽38における槽内温度を37℃に維持した。
実施例6−4では第一処理槽38における槽内温度を47℃に維持した。
実施例6−5では第一処理槽38における槽内温度を58℃に維持した。
【0136】
そして、実施例6の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、第一処理水68、第1好気処理水73、及び第2好気処理水79についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第6表に示す。
【0137】
【表6】
【0138】
第6表より、第一処理槽38の槽内の温度は20〜58℃が好ましいと考えられる。
また、実施例6では全ての条件で油脂残渣の発生は認められなかった。
【0139】
<実施例7>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例7ではフロスの第一処理及び好気性処理における反応効率を促進するため、第一処理における硫酸添加及び通気(酸素投入)の影響について調べた。実験は、実施例1−4の条件を基本とし、第一処理槽38における反応条件等を調整した。また、第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位を白金電極によるORP計を用いて測定した。
【0140】
実施例7−1では第一処理槽38を密閉して通気は行わなかった。また、硫酸は添加しなかった。
実施例7−2では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を30mg/Lとした。
実施例7−3では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を1,000mg/Lとした。
実施例7−4では第一処理槽38を密閉して通気は行わず、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を3,000mg/Lとした。
実施例7−5では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−250mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸は添加しなかった。
実施例7−6では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−180mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸を添加して槽内の硫酸イオン濃度を30mg/Lとした。
実施例7−7では第一処理槽38の槽内の液中における酸化還元電位が−50mVとなるように槽内液の表面へ空気を吹き付けた。また、硫酸は添加しなかった。
【0141】
そして、実施例の合計7つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、第一処理水68、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第7表に示す。
【0142】
【表7】
【0143】
第7表より、第一処理における硫酸添加及び通気(酸素投入)によって処理性能が向上すると考えられる。
【0144】
<実施例8>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例8では第一処理水68の好気性処理におけるpHの影響について調べた。実験は、実施例1−3の条件を基本とし、好気槽40における槽内pHを調整した。
実施例8−1では好気槽40における槽内pHを7.2に調整した。
実施例8−2では好気槽40における槽内pHを7.5に調整した。
実施例8−3では好気槽40における槽内pHを8.5に調整した。
実施例8−4では好気槽40における槽内pHを9.0に調整した。
実施例8−5では好気槽40における槽内pHを10.0に調整した。
実施例8−6では好気槽40における槽内pHを11.0に調整した。
【0145】
そして、実施例の合計6つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水60、好気処理水72、及び第二処理水82についてヘキサン抽出物濃度及び油脂残渣の発生量を測定した。
結果を第8表に示す。
【0146】
【表8】
【0147】
第8表より、好気槽40の槽内pHは7.5〜11.0が好ましいと考えられる。
【0148】
<実施例9>
図4に示す実験装置90を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例9では好気槽内の温度の影響について調べた。実験は、加圧浮上槽34による固液分離を行わないという条件以外は、実施例1−3の条件を基本とし、第1好気槽401及び第2好気槽402における槽内温度を調整した。
実施例9−1では槽内温度を20℃に維持した。
実施例9−2では槽内温度を30℃に維持した。
実施例9−3では槽内温度を37℃に維持した。
実施例9−4では槽内温度を47℃に維持した。
実施例9−5では槽内温度を58℃に維持した。
【0149】
そして、実施例の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、第一処理水68、第1好気処理水73、及び第2好気処理水79についてヘキサン抽出物濃度を測定した。
結果を第9表に示す。
【0150】
【表9】
【0151】
第9表より第1好気槽401及び好気槽402の槽内の温度は30〜58℃が好ましいと考えられる。
また、実施例9では全ての条件で油脂残渣の発生は認められなかった。
【0152】
<実施例10>
図3に示す実験装置30を用いて油脂含有排水50を処理した。
実施例10は、好気槽40における仕切り設置場所の影響、好気槽40の水面上に構造物(微生物膜を形成するための微生物膜ユニット)を設置した場合の影響、及び好気槽40で発生した発泡物を前段の第一処理槽38に流出させたときの影響について調べた。
ここで微生物膜ユニットはポリエチレン製の不織布を垂直方向に複数枚垂らすように配置したものである。
なお、実験は、実施例1−2を基本条件とした。
【0153】
実施例10−1では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:2となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−2では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−3では、好気槽40における前段と後段との容積比率が2:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置せず、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送も行わなかった。
実施例10−4では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。そして、好気槽における液面の上部に微生物膜ユニットを設置した。なお、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送は行わなかった。
実施例10−5では、好気槽40における前段と後段との容積比率が1:1となる位置に仕切りを設置した。微生物膜ユニットは設置しなかった。しかし、好気槽40で発生した発泡物の第一処理槽38へ返送を行った。
【0154】
そして、実施例の合計5つのケースの各々において、油脂含有排水50、フロス58、分離水66、及び第二処理水82、ならびに好気槽40における前段部及び後段部の各々におけるサンプル水についてヘキサン抽出物濃度を測定した。また、好気槽40における前段部及び後段部の各々におけるサンプル水についてMLSSを測定した。さらに、好気槽40における前段部におけるサンプル水について溶存酸素量(DO)を測定した。
なお、溶存酸素量の測定方法は溶存酸素電極を用いた酸素電極法により行った。
また、MLSSの測定方法は工場排水試験方法(JIS K0102 14)に基づく。
結果を第10表に示す。
【0155】
【表10】
【0156】
第10表より、好気槽40に設置する仕切は、槽を均等に区分する位置に設置するとより良い水質の第二処理水82が得られると考えられる。また、好気槽40における前段の溶存酸素濃度が0.6mg/L以下の条件では、好気槽40内のMLSS濃度を高く維持でき、処理性能を向上することが可能であった。
好気槽40に微生物膜ユニットを設置した場合、油分の除去性能が最も高い結果が得られた。
好気槽40で発生した発泡物を第一処理槽38に導入することで、消泡剤の添加が不要となり、かつ、油脂残渣の発生が無く、良好な水質の処理水を得ることができた。
【符号の説明】
【0157】
1 本発明の装置
2、50 油脂含有排水
3 第一処理手段
4、68 第一処理水
5 第二処理手段
7、82 第二処理水
10 装置
11、23、26、52、62、70、74 返送手段
12、54 PAC添加手段
13、56 凝集ポリマ添加手段
18 濃縮手段
19 分散手段
21 濃縮物
22、60 分離水
24、64 油脂残渣
25、66 分散処理水
28、76 返送汚泥
80 汚泥
30、90 実験装置
36 分散槽
38 第一処理槽
40 好気槽
401 第1好気槽
402 第2好気槽
42 活性汚泥槽
44 沈殿槽
58 フロス
72 好気処理水
73 第1好気処理水
78 活性汚泥処理水
79 第2好気処理水
図1
図2
図3
図4