【課題】表面に凹溝2を有する化粧板の下地処理を行う場合に、化粧板基材1表面の凹溝2及び平坦部3に均一に下地塗膜を形成して、化粧板の表面を均一にかつ凹溝2の傾斜部2aを十分に下地処理する。
【解決手段】化粧板基材1の表面の凹溝2と凹溝2以外の平坦部3とにスポンジロールでイワタカップ40秒の粘度を有する下地塗料を塗布し、次いで、その平坦部3に塗布された塗料をリバースロールにより欠き取る。その後、塗料がウェット状態のまま、化粧板基材1の表面の凹溝2及び平坦部3にフローコーターによりイワタカップ15〜30秒の粘度を有する下地塗料を塗布する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1のものは、スポンジロールで塗装した後に乾燥する工程があるものの、単にスポンジロールとフローコーターとを組み合わせて塗装しているだけであり、凹状部の肩部(平坦部との境界部分)に塗り残しが生じ、この塗り残しによる基材の隠蔽不足によりいわゆる肩透けが発生するのは避けられない。この肩透けをなくすために、肩部を十分に隠蔽しようとして塗料の塗布量を多くしてもよいが、凹状部が凹溝であればその底部に塗料が溜まり、塗膜の乾燥時間が長くなり、生産効率が低下する。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、化粧板基材に対する処理方法に工夫を加えることにより、化粧板の表面を均一にかつ凹状部の傾斜部を十分に下地処理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的の達成のため、この発明では、スポンジロール及びフローコーターでそれぞれ基材表面に塗布される下塗り塗料の粘度を特定するとともに、フローコーターによる塗布の前に、スポンジロールで基材表面に塗布された下塗り塗料のうち、凹状部以外の平坦部の塗料をリバースロールによって欠き取るようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、表面に、凹溝又は面取り部の少なくとも一方からなる凹状部を有する化粧板の下地処理を行う方法であって、化粧板基材の表面の凹状部と該凹状部以外の平坦部とにスポンジロールでイワタカップ15〜40秒の粘度を有する下地塗料を塗布するスポンジロール塗布工程と、上記平坦部に塗布された塗料をリバースロールにより欠き取る欠き取り工程と、上記塗料がウェット状態のまま、化粧板基材の表面の凹状部及び平坦部にフローコーターによりイワタカップ15〜30秒の粘度を有する下地塗料を塗布するフローコーター塗布工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
尚、本発明では、「凹状部」とは、凹溝又は面取り部の少なくとも一方からなるものとし、平坦部から基材裏側に凹んでいる部分をいうこととする。
【0011】
この第1の発明では、スポンジロール塗布工程において、化粧板基材の表面にスポンジロールでイワタカップ15〜40秒の粘度を有する下地塗料が塗布され、次の欠き取り工程において、基材表面の平坦部に塗布された塗料がリバースロールにより欠き取られる。このとき、リバースロールによって平坦部の塗料が欠き取られるが、凹状部の傾斜部及び肩部に塗布された塗料は、平坦部の塗料ほど欠き取られずに残存している。その後のフローコーター塗布工程では、スポンジロール塗布工程で塗布された下塗り塗料がウェット状態のまま、化粧板基材の表面にフローコーターによりイワタカップ15〜30秒の粘度を有する下地塗料が塗布される。
【0012】
このようにして化粧板基材に下地処理が行われることで、基材の平坦部には、主としてフローコーターにより塗布された塗料による塗膜が形成される一方、凹状部には、スポンジロールにより塗布された塗料と、フローコーターにより塗布された塗料とによる塗膜が形成されることとなる。
【0013】
また、スポンジロール塗布工程の後にリバースロールによって平坦部の塗料が欠き取られるので、次のフローコーター塗布工程で塗料を塗布したときに平滑部の塗膜が厚くなり過ぎることはない。
【0014】
さらに、フローコーター塗布工程では、イワタカップ15〜30秒の粘度を有する下地塗料がフローコーターにより塗布されるので、塗料が乗り難い凹状部の肩部についても、その塗料が凹状部に流れ込まずに残存するようになり、肩部が透けることなく下地処理される。
【0015】
よって、化粧板基材全体として下地塗膜を均一に形成することができ、凹状部の肩部の塗り残しによる隠蔽不足に起因して肩透けが発生することや、凹状部が凹溝である場合の底部へ塗料が溜まることを防止することができる。
【0016】
すなわち、この第1の発明では、スポンジロール塗布工程及びその後のリバースロールによる欠き取り工程と、フローコーター塗布工程とを組み合わせて下地処理を行うことにより、先のスポンジロール塗布工程及び欠き取り工程によって基材の凹状部を十分に隠蔽することができ、このことで、後のフローコーター塗布工程においてフローコーターによる塗布量を凹溝内(凹状部)に塗料が溜まらない程度に少なく絞ることができる。こうして下塗り塗料を、先のスポンジロール塗布工程及び欠き取り工程と、その後のフローコーター塗布工程とで役割分担して塗り分けすることで、速乾性を実現して効率的な生産をすることができる。
【0017】
また、最後のフローコーター塗布工程でフローコーターを使用して基材表面に塗料を塗布するので、基材表面の平坦部に十分な量の塗料を均一に塗布できるだけでなく、平坦部と凹状部とに平滑に塗料を塗布することができ、スポンジロールのみによって塗布したときの塗布面が不安定になるという難点を補うことができる。
【0018】
上記スポンジロール塗布工程で塗布される下塗り塗料の粘度はイワタカップ15〜40秒が好ましく、イワタカップ15秒よりも粘度が低いと、凹状部に塗料が過度に流入してしまい、均一な塗膜が形成されない。一方、イワタカップ40秒よりも粘度が高いと、塗布量を絞ることができず、凹状部に溜り、均一な塗膜が形成されない。
【0019】
また、フローコーター塗布工程で塗布される下塗り塗料の粘度はイワタカップ15〜30秒が好ましく、イワタカップ15秒よりも粘度が低いと、塗料の流れ込みにより凹状部の肩部の隠蔽が不足するほか、塗膜が膜切れを起こすことがある一方、イワタカップ30秒よりも粘度が高いと、表面張力が上がり、塗布量ムラが発生し易い。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、スポンジロール塗布工程では、下地塗料を30〜45g/m
2塗布し、フローコーター塗布工程では、下地塗料を100〜200g/m
2塗布することを特徴とする。
【0021】
この第2の発明では、スポンジロール塗布工程及びフローコーター塗布工程での下塗り塗料の塗布量が適正になり、化粧板全体として下地塗膜をさらに均一に形成することができる。
【0022】
スポンジロール塗布工程でのスポンジロールによる塗布量は、30g/m
2よりも少ないと、塗布量が不足して隠蔽不足になり易い一方、45g/m
2よりも多いと、流れ込みによって凹状部底部に塗料が溜まるので、30〜45g/m
2とされている。また、フローコーター塗布工程でのフローコーターによる塗布量は、100g/m
2よりも少ないと、下地塗料による隠蔽効果が不安定となる一方、200g/m
2よりも多いと、塗料の乾燥性が悪化するので、100〜200g/m
2とされている。
【0023】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、化粧板基材はMDFであることを特徴とする。
【0024】
この第3の発明では、本発明の効果が有効に発揮されるのに最適な基材が得られる。
【0025】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、化粧板基材は、フローコーター塗布工程の後に、表面に色柄がインクジェット印刷されるものであることを特徴とする。
【0026】
この第4の発明では、基材の表面が均一に下地処理されるので、その下地処理された基材表面にインクジェット印刷により色柄を安定して形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明のように、本発明によると、表面に凹状部を有する化粧板の下地処理を行うときに、化粧板基材の表面の凹状部と平坦部とにスポンジロールでイワタカップ15〜40秒の粘度を有する下地塗料を塗布し、その平坦部に塗布された塗料をリバースロールにより欠き取った後、塗料がウェット状態のまま、化粧板基材の表面の凹状部及び平坦部にフローコーターによりイワタカップ15〜30秒の粘度を有する下地塗料を塗布することにより、化粧板基材全体に下地塗膜を均一に形成して、凹状部の肩部の塗り残しによる隠蔽不足に起因する肩透けや凹状部が凹溝であるときの底部への塗料の溜まりを防止でき、乾燥性が向上し、よって基材表面の均一な下地処理及びその下地処理の効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0030】
図1は本発明の実施形態に係る化粧板の下地処理方法の工程を概略的に示している。この方法は、表面に凹溝2(
図2参照)を有する化粧板の下地処理を行う方法であって、スポンジロール塗布工程、欠き取り工程、フローコーター塗布工程及び乾燥工程を備えている。
【0031】
(化粧板基材)
図2に示すように、上記化粧板は、化粧板基材1の表面に下地処理を施された後、例えばその基材1表面に色柄がインクジェット印刷されて化粧板となるものである。
【0032】
化粧板基材1としては、例えばMDF、合板、LVL、パーティクルボード、OSB、木材板、集成材等の木質板、或いは硬質セメント珪酸カルシウム板、石膏スラグ板、珪酸カルシウム板、無機質複層板(例えば大建工業株式会社製の商品名「ダイライト」)等の無機質板等が使用できる。また、上記合板やLVL等の木質板、或いは上記無機質複層板等の無機質板の表面又は表裏両面に、厚さが1〜3mm程度の薄いMDF、木材単板、それに薄葉紙・和紙・クラフト紙等の補強紙を貼着して複合化したもの等も使用することができる。
【0033】
化粧板基材1の表面には、化粧溝としての1条又は複数条の凹溝2が形成されている。この凹溝2は、本発明でいう凹状部を構成するもので、基材1の表面に対して所定の傾斜角度θ(例えばθ=30〜60°、図示例は45°)で傾斜する溝側面としての傾斜部2aを持つ断面V字状とされ、その溝深さは例えば0.3〜2.0mm(図示例は2.0mm)であり、溝幅は例えば0.3〜4.0mm(図示例は4.0mm)である。
【0034】
上記凹溝2の本数は、例えば化粧板基材1が300×300mm角のものであると、縦方向で0〜4本、横方向で0〜6本の範囲で形成されるのが好ましい。すなわち、この範囲の本数を超えると、スポンジロール塗布工程及びフローコーター塗布工程における下地塗料の塗布量がそれぞれ増加して、後述する設定の塗布量、つまりスポンジロール塗布工程で30〜45g/m
2、フローコーター塗布工程で100〜200g/m
2(請求項2の塗布量)の範囲が成立しなくなる可能性があるので、上記本数以内の凹溝2にするのが好ましい。
【0035】
また、上記凹溝2は、その延びる方向が限定されず、例えば基材1の長手方向に沿って延びるもの、基材1の幅方向に延びるもの、これら基材1の長手方向及び幅方向に延びるもの、或いはこれらの組み合わせであってもよい。
図8は1つの凹溝2の途中にこれと直交する他の凹溝2の端部が接続されるように形成された一例を示している。
【0036】
また、凹溝2の形状は断面V字状のものに限定されず、断面U字状や断面コ字状、或いは断面V字状の溝底に底面を設けた断面逆台形状、凹溝の上部が断面コ字状で下部が断面V字状、曲面状、その他任意の断面形状のものに形成することができる。
【0037】
そして、上記凹溝2が形成された化粧板基材1は、その凹溝2内部やそれを除く平坦部3を含む表面全体等を例えばサンディング処理して、凹溝2内部と平坦部3とが接する角部に少し丸味を与えておくこともできる。
【0038】
(スポンジロール塗布工程)
上記スポンジロール塗布工程では、上記化粧板基材1の表面の凹溝2と該凹溝2以外の平坦部3とにスポンジロールで下地塗料を塗布する。この下地塗料は、イワタカップ15〜40秒の粘度(45〜130mPa・s)を有するものが好ましく、この範囲の粘度の下地塗料を使用することで、その塗料が凹溝2内に必要量以上に流れ込まないようになる。すなわち、スポンジロール塗布工程で塗布される下塗り塗料の粘度は、イワタカップ15秒これよりも粘度が低いと、凹溝2内に塗料が過度に流入して均一な塗膜が形成されない。一方、イワタカップ40秒よりも粘度が高いと、塗布量を絞ることができずに凹溝2に溜り、均一な塗膜が形成されない。
【0039】
また、下地塗料の塗布量は30〜45g/m
2塗布することが好ましい。この範囲の塗布量により、塗料が凹溝2内に溜まり難くなる。すなわち、スポンジロールによる塗布量は、30g/m
2よりも少ないと、塗布量が不足して隠蔽不足になり易い一方、45g/m
2よりも多いと、流れ込みによって凹溝2底部に塗料が溜まる。
【0040】
上記下地塗料としては、例えば水性樹脂ワニス、着色顔料、塗膜調整剤、水等を主剤とし、これにイソシアネート硬化剤を混ぜたもの等を使用することができる。
【0041】
(欠き取り工程)
次の欠き取り工程では、上記スポンジロール塗布工程で表面全体に下地塗料が塗布された基材1に対し、その表面のうちの平坦部3に塗布された塗料をリバースロールにより欠き取る。リバースロールは例えば鉄製のものが使用される。
【0042】
このとき、リバースロールによって平坦部3の塗料が欠き取られるが、凹溝2内の傾斜部2a及び肩部2b(平坦部3との境界部分)に塗布された塗料は、平坦部3の塗料ほど欠き取られずに残存している。こうしてリバースロールによって平坦部3の塗料を欠き取ることで、凹溝2の肩部2bと傾斜部2aとのみに塗料が多く乗った状態となる。
【0043】
(フローコーター塗布工程)
フローコーター塗布工程では、上記欠き取り工程を終了した後も上記スポンジロール塗布工程で塗布された塗料がウェット状態にある状態で、化粧板基材1の表面の凹溝2及び平坦部3にフローコーターにより下地塗料を塗布する。このときの下地塗料の粘度は、イワタカップ15〜30秒(45〜95mPa・s)が好ましく、イワタカップ25秒の粘度がより好ましい。この範囲の粘度の下地塗料を使用することで、その塗料が凹溝2の肩部2bに「溜まる」ようになる。すなわち、フローコーター塗布工程で塗布される下塗り塗料の粘度は、イワタカップ15秒よりも粘度が低いと、塗料の流れ込みにより凹溝2の肩部2bの隠蔽が不足するほか、凹溝2に塗料が過度に流入して均一な塗膜が形成されない。一方、イワタカップ30秒よりも粘度が高いと、表面張力が上がり、塗布量ムラが発生し易い。
【0044】
また、このフローコーター塗布工程では、下地塗料の塗布量は100〜200g/m
2が好ましく、115g/m
2がより好ましい。この範囲の塗布量により、下地塗料による良好な隠蔽効果が安定して得られるとともに、塗料の速乾性が確保されて生産性が上がる。すなわち、フローコーター塗布工程でのフローコーターによる塗布量が、100g/m
2よりも少ないと、下地塗料による隠蔽効果が不安定となる一方、200g/m
2よりも多いと、塗料の乾燥性が悪化する。
【0045】
この工程で用いる下地塗料は、上記スポンジロール塗布工程での下地塗料と同じであり、水性樹脂ワニス、着色顔料、塗膜調整剤、水等にイソシアネート硬化剤を混ぜたもの等を使用する。
【0046】
(乾燥工程)
以上のようにして、リバースロールによる欠き取り工程を挟んだ2つの塗布工程で下地塗料を塗布した後、その塗料を乾燥させることで、化粧板基材1(化粧板)の下地処理が終了し、その基材1は均一に下地処理されたものとなる。
【0047】
このようにして化粧板基材1に下地処理が行われることで、基材1の平坦部3には、主としてフローコーターによる塗布された塗料による塗膜が形成される一方、凹溝2の内部には、スポンジロールにより塗布された塗料と、フローコーターにより塗布された塗料とによる塗膜が形成されることとなる。
【0048】
また、化粧板基材1は、特に塗料が乗り難い凹溝2の肩部2bであっても、イワタカップ15〜30秒の粘度を有するある程度の粘度に保持された状態の塗料がフローコーターにより十分な量(乾燥後の膜厚で60μm程度)を塗布されることとなり、塗料が凹溝2内に流れ込むことなく肩部2bに残り、その肩部2bが透けることなく下地処理された状態となる。
【0049】
また、この実施形態においては、スポンジロール塗布工程の後にリバースロールによって平坦部3の塗料を欠き取るので、次のフローコーター塗布工程で塗料を塗布したときに平坦部3の塗膜が厚くなり過ぎることはない。
【0050】
したがって、この実施形態では、化粧板基材1全体として下地塗膜を均一に形成することができ、凹溝2の肩部2bの塗り残しによる隠蔽不足に起因して肩透けが発生することや、凹溝2の底部へ塗料が溜まることを防止することができる。
【0051】
すなわち、この実施形態では、スポンジロール塗布工程及びその後のリバースロールによる欠き取り工程と、フローコーター塗布工程とを組み合わせて下地処理を行うことにより、先のスポンジロール塗布工程及び欠き取り工程によって基材1の凹溝2内を十分に隠蔽することができ、このことで、後のフローコーター塗布工程においてフローコーターによる塗布量を凹溝2内に塗料が溜まらない程度に少なく絞ることができる(凹溝2内に塗料が溜まると、乾燥性が悪くなる)。こうして下塗り塗料を、先のスポンジロール塗布工程及び欠き取り工程と、その後のフローコーター塗布工程とで役割分担して塗り分けすることで、速乾性を実現して効率的な生産をすることができる。
【0052】
また、フローコーター塗布工程でフローコーターを使用して基材1表面に塗料を塗布するので、基材1表面の平坦部3に十分な量の塗料を均一に塗布できるだけでなく、平坦部3と凹溝2とに平滑に塗料を塗布することができ、スポンジロールのみによって塗布したときの塗布面が不安定になるという難点を補うことができる。
【0053】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、凹溝2を凹状部としているが、化粧板基材1の表面側四周縁部に形成される面取り部を凹状部としてもよく、凹溝2及び面取り部の双方をいずれも凹状部としてもよい。面取り部を凹状部としたとき、その肩部とは面取り部において平坦部との境界部分を指している。
【0054】
また、上記実施形態では、化粧板基材1は、その表面に色柄がインクジェット印刷されるものとしているが、一般の化粧板基材に下地処理する場合にも本発明を適用することができる。
【実施例】
【0055】
次に、具体的に実施した実施例について説明する(尚、この実施例の説明では、
図2と同じ部分については同じ符号を付して説明する)。化粧板基材1は、表面に対して45°の傾斜角度θを持つ深さ2mmの凹溝2が形成されたMDFからなり(
図8参照)、この化粧板基材1の下地処理を行った。まず、基材1表面の凹溝2とそれ以外の平坦部3との全体に対し、粘度がイワタカップ40秒の水系塗料を細かめのブチルスポンジからなるスポンジロールにより38g/m
2の塗布量で塗布した。その後、一般的な鉄リバースロールによって平坦部3の塗料を欠き取った。
【0056】
このときの基材1表面部の断面構造を
図3及び
図4に示している。
図3は平坦部3での断面構造を示し、塗料pの膜厚は0〜5μmであった。
図4は凹溝2内の傾斜部2aでの断面構造を示し、塗料pの膜厚は20μm程度であった。すなわち、凹溝2内の傾斜部2aには塗料pが乗っているが、平坦部3には殆ど乗っていない状態となっている。
【0057】
次に、上記塗料がウェットにある状態で、基材1の表面の凹溝2と平坦部3との全体に対し、一般的なフローコーターにより粘度がイワタカップ25秒の水系塗料を凹溝2内に塗料が溜まらないように塗布量を115g/m
2に調整して塗布した。その後、ジェットドライヤで塗料を乾燥させて硬化させた。このときの凹溝2内の傾斜部2aでの断面を
図7に示しており、塗料pの膜厚は75μm程度であった。
【0058】
一方、同様の化粧板基材1の表面の凹溝2と平坦部3との全体に対し、フローコーターのみによって上記と同様の水系塗料を塗布したときの基材1表面部の断面構造を
図5及び
図6に示している。
図5は平坦部3での断面構造を示し、塗料pの膜厚は70μm程度であった。
図6は凹溝2内の傾斜部2aでの断面構造を示し、塗料pの膜厚は50μm程度であった。すなわち、塗料pが乗り難い傾斜部2aの膜厚が平坦部3よりも薄くなっており、両者間で不均一となっている。
【0059】
これに対し、
図7を
図6と比較して判るように、フローコーターによる塗料の塗布に先立ちスポンジロール塗布工程及びリバースロールによる欠き取り工程を経由させることで、凹溝2の傾斜部2aの塗料pの膜厚(75μm程度)も平坦部3の膜厚(70μm程度)と同等になった。
【0060】
このことで、塗料pの膜厚から判断すると、基材1表面の凹溝2内と平坦部3とが均一に下地処理できていることが判る。
【0061】
図8は下地処理された後の基材1の表面を示している。この
図8により、塗料の粘度を特定することにより、塗料が最も乗り難い凹溝2の肩部2bにおいても、基材1の透けが無く、十分な下地処理ができていることが判った。
【0062】
フローコーターで塗料を塗布するときの塗布量を変更した場合、その塗布量が100〜200g/m
2の中でも特に115±15g/m
2(100〜130g/m
2)であれば、凹溝2内の底部に塗料が溜まることはなく、かつ平坦部3の色差もΔE=0.16〜0.71程度であった。つまり、フローコーターでの塗料の塗布量が115±15g/m
2であれば好ましく、凹溝2内の底部に塗料が溜まらず、平坦部3も均一にかつ十分に下地処理できていることとなる。よって、膜厚が平坦部3と同程度になる凹溝2内の傾斜部2aでも均一にかつ十分に下地処理できていることとなる。