(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-123528(P2015-123528A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/10 20060101AFI20150609BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20150609BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20150609BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20150609BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20150609BHJP
【FI】
B24B9/10 D
B24B1/00 D
B24B49/16
C03C19/00 Z
G11B5/84 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-269066(P2013-269066)
(22)【出願日】2013年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】板倉 慧
(72)【発明者】
【氏名】三隅 宝
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
4G059
5D112
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB56
3C034BB83
3C034BB92
3C034CA17
3C034CB20
3C034DD07
3C034DD08
3C049AA07
3C049AA09
3C049AC02
3C049AC04
3C049BA06
3C049BB02
3C049BC02
3C049CA06
4G059AA08
4G059AB01
4G059AB03
4G059AB09
4G059AB11
4G059AC03
5D112AA02
5D112BA03
5D112BA09
5D112GA02
(57)【要約】
【課題】研磨スラリーが含む液体を所定の基準量に制御するガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置を提供する。
【解決手段】ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを端面に接触させて、端面を研磨する研磨工程と、研磨により減少する液体の量を検出する検出工程と、検出工程で検出した液体の量が所定の基準量となるよう液体を供給する供給工程と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを前記端面に接触させて、前記端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨により減少する液体の量を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した液体の量が所定の基準量となるよう前記液体を供給する供給工程と、を備える、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程では、前記端面と前記研磨スラリーとが接触して発生した摩擦熱により前記液体が揮発し、
前記検出工程では、前記液体が揮発し、前記研磨スラリーの粘度が増加することにより上昇する負荷量を検出し、
前記供給工程では、前記負荷量に対応付けられた量の液体を供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記液体は、少なくとも水を含み、
前記所定の基準量は、前記研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造装置であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを前記端面に接触させて、前記端面を研磨する研磨ホイールと、
前記研磨ホイールによる研磨により減少する液体の量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した液体の量が所定の基準量となるよう前記液体を供給する供給部と、を備える、
ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板の製造工程は、ガラス基板を切断して形成される端面を面取りする工程を含む。端面の研磨加工技術としては、特許文献1に記載されるように、ガラス基板の端面の研磨加工に磁性体を含む研磨スラリーを用いて、端面を鏡面状に研磨する技術が知られている。この研磨加工技術では、磁性体粉と非磁性体の水分(液体)を含む遊離砥粒とを含むスラリー状の磁性流体である研磨スラリーを、一対の磁石の間の空間に保持する。そして、ガラス基板の端面を研磨スラリーに接触させた状態で、端面と研磨スラリーとを相対的に移動させることで、端面を研磨している。
【0003】
研磨スラリーの粘度は液体の含有量によって定まり、この研磨スラリーの粘度によって研磨効率が異なってくるため、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に維持する必要がある。しかし、研磨スラリーを用いて端面の研磨を長時間続けると、端面と研磨スラリーとの摩擦により研磨スラリーが過熱して、研磨スラリーが含む液体が揮発して、研磨に適した研磨スラリーの粘度を維持できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/067587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、研磨スラリーが含む液体を所定の基準量に制御するガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを前記端面に接触させて、前記端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨により減少する液体の量を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した液体の量が所定の基準量となるよう前記液体を供給する供給工程と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記研磨工程では、前記端面と前記研磨スラリーとが接触して発生した摩擦熱により前記液体が揮発し、
前記検出工程では、前記液体が揮発し、前記研磨スラリーの粘度が増加することにより上昇する負荷量を検出し、
前記供給工程では、前記負荷量に対応付けられた量の液体を供給する、ことが好ましい。
【0008】
前記液体は、少なくとも水を含み、
前記所定の基準量は、前記研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%である、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様は、ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造装置であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを前記端面に接触させて、前記端面を研磨する研磨ホイールと、
前記研磨ホイールによる研磨により減少する液体の量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した液体の量が所定の基準量となるよう前記液体を供給する供給部と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、研磨スラリーが含む液体を所定の基準量に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ガラス基板の端面を研削する方法を示す図である。
【
図3】(a)は、ガラス基板の端面加工を説明するための図であり、(b)は、(a)のII−II線に沿う断面図である。
【
図4】端面を研磨する時の駆動部の駆動時間と駆動部に流れた電流値との関係を示す図である。
【
図5】駆動部が駆動して研磨が繰り返されたことにより、駆動部に流れる電流が変化した状態を示す図である。
【
図6】検出部が検出した電流値と研磨スラリーが含む液体の量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置について説明する。
ガラス基板の製造方法は、熔解工程と、清澄工程と、均質化工程と、供給工程と、成形工程と、徐冷工程と、切断工程と、研削工程と、研磨工程と、を主に有する。この他に、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0013】
ガラス基板の製造装置は、主に熔解装置と、成形装置と、切断装置と、を有する。熔解装置は、熔解槽と、清澄槽と、攪拌槽と、ガラス供給管と、を有する。
熔解工程では、熔解槽内に供給されたガラス原料を、火焔および電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程は、ガラス供給管、清澄槽において主に行われ、清澄槽内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれるO
2等の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程では、ガラス供給管を通って供給された攪拌槽内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程では、ガラス供給管を通して熔融ガラスが成形装置に供給される。
【0014】
成形装置では、成形工程及び徐冷工程が行われる。
成形工程では、熔融ガラスをシート状ガラスに成形し、シート状ガラスの流れを作る。シート状ガラスの成形方法として、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、フロート法、リドロー法等が挙げられる。徐冷工程では、成形されて流れるシート状ガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように冷却される。
切断工程では、切断装置において、成形装置から供給されたシート状ガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、コーナーカット及びガラス主面の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0015】
ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板(例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板)、カバーガラスや磁気ディスク用などの強化ガラス用ガラス基板、ロール状に巻き取られるガラス基板、半導体ウエハ等の電子デバイスが積層されたガラス基板が挙げられる。また、ガラス基板を保護するための所定の保護膜が形成されたガラス基板、アクリル板、ポリカーボネート板でもよい。
【0016】
次に、所定のサイズに切断されたガラス基板を研削する研削工程について説明する。
図1は、ガラス基板Gの端面を研削する方法を示す図である。研削工程では、ガラス基板Gの端面を、研削ホイールを所定の速度で回転させながら研削を行う。研削装置30は、ガラス基板Gの両端面が、図示しない回転軸により自転する第1研削ホイール31と第2研削ホイール32とに接触するように、ガラス基板Gを移動させる。研削装置30は、第1研削ホイール31と第2研削ホイール32とを回転させ、ガラス基板Gの長辺側の端面33を加工した後、短辺側の端面33が第1研削ホイール31と第2研削ホイール32と接触するように、ガラス基板Gを移動、回転させ、短辺側の端面33を加工する。研削ホイールは、ダイヤモンドホイール等の公知のものが用いられ、特に制限されない。
【0017】
次に、ガラス基板Gの端面33を研磨する研磨工程について説明する。長辺側、短辺側のガラス基板の端面33の研削を終えたガラス基板Gが、研磨装置による研磨を行う位置まで搬送され、研磨装置を用いてガラス基板Gの端面33について鏡面研磨が行われる。
図2は、研磨装置40の概略図である。また、
図3(a)は、ガラス基板Gの端面加工を説明するための図であり、
図3(b)は、
図3(a)のII−II線に沿う断面図である。研磨装置40は、磁性体を含む研磨スラリーを保持する研磨ホイール36と、研磨ホイール36を回転駆動させる駆動部(モータ)41と、研磨ホイール36に液体を供給する供給部42と、研磨ホイール36の回転駆動の負荷を検出する検出部43と、検出部43が検出した結果を判定する判定部44と、を備える。
ここで、磁性体を含む研磨スラリーとは、磁性体が主として研磨砥粒として作用する磁性体砥粒や、磁性体が主として研磨砥粒を運ぶためのキャリアとして働く磁性流体を含むものである。例えば、研磨スラリーは、磁性粒子(カルボニル鉄、酸化鉄、窒化鉄、炭化鉄、二酸化クロム、低炭素鋼、ケイ素鋼、ニッケル、コバルト、及び/又は、これらの組合せ)、非磁性砥粒(酸化セリウム、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア、ダイヤモンド、及び/又は、これらの組合せ)、界面活性剤、及び/又は、腐食防止剤を、含んでもよい。
また、液体とは、水、炭化水素、エステル類、エーテル類、フッ化水素、鉱油、合成油、プロピレングリコール、及び/又は、エチレングリコールを含むものである。また、液体は、水を主成分とし、炭化水素、エステル類、エーテル類およびフッ化水素等が添加された液体であってもよい。
また、磁性体砥粒の粒子形状は、例えば、球状、角部を有する不定形状であってもよく、また、磁性体砥粒の粒子径は、粒子形状によって任意変更できる。
【0018】
まず、研磨装置40は、ガラス基板Gを図示しないステージ上に移動させて、ガラス基板Gの端面33が研磨スラリーを有する研磨ホイール36に接触するよう搬送する。次に、研磨装置40は、駆動部41を駆動させて、回転軸35を中心として研磨ホイール36を回転させる。研磨ホイール36は、例えばネオジム、鉄、ホウ素等を含む永久磁石及び電磁石等の磁石から構成され、回転軸35の長さ方向に平行に設けられた円盤状の磁力体36a、36bの隙間(磁場形成部ともいう)に磁性体砥粒37(研磨メディアともいう)が設けられて構成されている。ここでは、磁性体砥粒37として磁性体を含む研磨スラリーが用いられ、鏡面研磨される。磁力体36a、36bにより磁場がかけられた磁性体砥粒37に、ガラス基板Gの端部33が食い込んで、ガラス基板Gの端面33が磁性体砥粒37と接触した状態で研磨ホイール36が回転する。これにより、磁性体砥粒37とガラス基板Gの端面33とが相対的に移動して、ガラス基板Gの端面33が、磁場形成部の形成する磁場により拘束された磁性体砥粒37によって研磨される。なお、研磨工程では、磁性体を含む研磨スラリーを用いた公知の手法でガラス基板Gの端面を研磨することができ、また、特願2013−065191号に記載される内容を含み、当該内容が参酌される。
【0019】
次に、
図2に示す研磨装置40の動作について説明する。
駆動部41は、モータ等から構成され、ユーザからの指示に基づいて研磨ホイール36を回転駆動させる。研磨ホイール36は、ガラス基板Gの端面33と接する位置に、磁性体を含む研磨スラリーを有し、駆動部41からの指示に基づいて、回転駆動し、研磨スラリーとガラス基板Gの端面33とを接触させて、端面33を鏡面研磨する。なお、研磨ホイール36の回転数を適宜変更することができる。
【0020】
供給部42は、液体を蓄えるタンクと、研磨スラリー及び/又は研磨ホイール36に液体を供給するノズルとを備える。供給部42は、液体の量が所定の基準量になるよう研磨スラリーに液体を供給し、研磨スラリーの粘度を調整する。ここで、所定の基準量とは、研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%をいい、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に維持できる液体の量である。液体を含む研磨スラリーを保持する研磨ホイール36が回転駆動すると、ガラス基板Gの端面33と研磨スラリーとの摩擦により研磨スラリーが過熱し、研磨スラリーに含まれる液体が揮発することにより、液体が減少していく。液体が減少すると研磨スラリーの粘度が上昇し、端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が増すため、端面33にキズが発生する場合がある。また、摩擦抵抗によって端面33の温度が上昇することにより、端面33の一部でヤケが発生する可能性もある。さらに、研磨ホイール36に含まれるネオジムは、熱によって磁力が低下する熱減磁を生じやすいため、研磨ホイール36の温度が上昇すると、磁力が低下して研磨効率が低下する場合がある。このため、供給部42は、液体の量が所定の基準量になるよう、研磨スラリーの粘度が一定の範囲内となるよう、また、研磨スラリー、端面33、研磨ホイール36の温度が一定温度以上に上昇しないよう、液体を供給する。
なお、所定の基準量は、研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%に限定されず、10%未満でもよく、30%を超えてもよい。液体の割合が10%〜30%である場合、研磨スラリーがペースト状になり、磁力体36a、36bの隙間(磁場形成部)に磁場が形成されていない状態、すなわち、磁場による拘束がない状態であっても、磁場形成部において形状を保持することができる。
【0021】
検出部43は、研磨ホイール36が回転する負荷を検出するセンサー等を備える。検出部43は、例えば、研磨ホイール36を回転駆動させる駆動部41に流れた電流値を検出し、判定部44は、検出部43が検出した電流値を記録し、電流値の変化量に基づいて、液体を供給するタイミングを判定する。この電流値は、研磨ホイール36にかかる負荷の程度によって変化する。研磨ホイール36が端面33に接触していない状態、つまり、非研磨時では、研磨ホイール33に負荷がかかっていないため、駆動部41には定常状態の電流が流れる。一方、研磨ホイール36が端面33に接触した状態、つまり、研磨時では、研磨ホイール33に負荷がかかるため、この負荷がかかった状態であっても研磨ホイール33を回転させるために、駆動部41には定常状態より電流が流れる。このため、研磨時の電流値は、非研磨時の電流値より高くなる。判定部44は、このように変化する電流値を記録することにより、電流値の履歴を作成する。そして、判定部44は、検出部43が検出した電流値、電流値の履歴に基づいて、研磨時、非研磨時を判定する。例えば、判定部44は、検出部43が検出した電流値がほぼ0又は履歴の最大電流値(電流値のピーク)より一定値以上小さい場合、非研磨時と判定し、検出した電流値が履歴の最大電流値とほぼ等しい又はより大きい場合、研磨時と判定する。
【0022】
図4は、端面33を研磨する時の研磨ホイール36を駆動させる駆動部41の駆動時間と駆動部41に流れた電流値との関係を示す図である。また、
図5は、駆動部41が駆動して研磨が繰り返されたことにより、駆動部41に流れる電流が変化した状態を示す図である。
図4、5を参照しながら、電流値の変化について説明する。まず、駆動部41に電流が流れると研磨ホイール36が回転し始める。回転直後は非研磨時であるため駆動部41には一定(定常状態)の電流が流れている。そして、ガラス基板Gが搬送されて、研磨ホイール33が端面33を研磨し始めると、研磨ホイール33への負荷が増すため、駆動部41には非研磨時より多くの電流が流れる。ガラス基板Gが搬送されて研磨が終了すると、駆動部41に流れる電流は定常状態に戻るため、研磨時より電流値が下がる。非研磨、研磨を繰り返し、端面33の研磨が終了すると、駆動部41に流す電流が止められて、研磨ホイール36の回転が停止する。本実施形態では、ガラス基板Gを搬送方向に搬送しながら研磨を行った後、ガラス基板Gを搬送方向と反対方向に搬送しながら研磨を行うことで、ガラス基板Gが一往復して端面33は2回研磨されるため、研磨時が2回ある。ここで、判定部44は、検出部43が検出した電流値に基づいて、研磨時、非研磨時を判定する。判定部44は、検出部43が検出した電流値が、0であるとき及び最大電流値より低く定常状態であるとき、非研磨時と判定する。また、判定部44は、検出部43が検出した電流値が、履歴の最大電流値とほぼ等しいとき及び履歴の最大電流値より大きいとき、研磨時と判定する。
図4において、判定部44は、電流値が、0及び最大電流値より小さい値を示す3つの時期を非研磨時と判定し、電流値がピークにある2つの時期を、研磨時と判定する。
【0023】
研磨が繰り返されると、研磨スラリーが摩擦抵抗により発熱することにより、研磨スラリーが含む液体が揮発し、液体の量が減少していく。研磨スラリーが含む液体の量が減少すると研磨スラリーの粘度が上昇し、端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が増す。摩擦抵抗が増すことにより端面33にキズが発生する可能性があり、また、摩擦熱の増大により端面33の一部でヤケが発生する可能性もある。また、熱によって研磨ホイール36の磁力が低下して研磨効率が低下する場合もある。このため、研磨スラリーが含む液体の量が所定の基準量となるよう制御する必要がある。液体の量は、駆動部41に流れる電流値を検出することにより、検出(測定)される。この電流値は、研磨時、非研磨時によって変化するが、研磨スラリーの粘性、つまり、液体の量によっても変化する。これは、液体の量によって端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が変化するためであり、端面33の研磨時間、駆動部41の駆動時間が増えていくことによって、
図5に示すように、駆動部41に流れる電流値(検出部43が検出する電流値)が大きくなっていく。ここで、判定部44は、例えば、電流値の履歴に基づいて、検出部43が検出した電流値が、履歴の最大電流値より一定値以上大きくなっているか否か、又は、研磨時の電流値を時間で積分することにより求まる電荷を、研磨を開始した直後の研磨時の電荷と比較して、一定値以上大きくなっているか否かを判定する。判定部44は、検出部43が検出した電流値が、履歴の最大電流値(例えば研磨直後の最大電流値)より一定値以上大きくなっている等と判定した場合、液体の量が減少して研磨スラリーの粘度が高くなったと判定できるため、供給部42を稼働させて、研磨スラリーに液体を供給する。判定部44の判定結果に基づいて、供給部42が研磨スラリーに液体を供給するため、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に維持されて、キズ及びヤケの発生を抑制することができる。また、液体を供給することにより、端面33、研磨スラリー、研磨ホイール36の過熱を抑制でき、研磨効率の低下を防止することができる。
【0024】
また、判定部44は、検出部43が検出した電流値から、研磨スラリーの粘度が研磨に適した粘度であるか否か、つまり、研磨スラリーが含む液体の量が所定の基準量であるか否かを判定する。研磨スラリーの粘度は、研磨スラリーが含む液体の量によって定まるが、この液体の量は、駆動部41の駆動時間(研磨時間)が増加していくと、また、研磨時における検出部43が検出する電流値が大きくなっていくと、当初の量より減少した量になっている。
図6は、研磨時における検出部43が検出した電流値と研磨スラリーが含む液体の量との関係を示す図である。同図に示すように、駆動部41の駆動時間(研磨時間)が増えて、検出部43が検出する電流値が徐々に増加した場合、研磨スラリーが含む液体の量は徐々に減少する。液体の所定の基準量は研磨スラリーに含まれる割合の10%〜30%であり、液体が減少していくと、同図の点線に示すように、液体の量が所定の基準量から外れる。すると、研磨スラリーの粘度が研磨に適した粘度でなくなり、研磨効率が低下する。このため、供給部42は、液体の量が所定の基準量になるよう研磨スラリーに液体を供給する。研磨時の電流値と液体の量とは一対一の対応関係があるため、判定部44は、検出部43が検出した電流値に基づいて、研磨スラリーが含む液体の量を求め、求めた液体の量と初期の液体の量との差から、供給する液体の量を求める。そして、供給部42は、判定部44が求めた供給する液体の量だけ、研磨スラリーに液体を供給する。同図の実線に示すように、研磨スラリーに液体を供給することにより、液体の量が所定の基準量になり、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度にすることができる。つまり、研磨スラリーの粘度は研磨スラリーが含む液体の量により規定でき、液体の量が基準量となるように液体を供給して、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に保つことによって、研磨スラリーが含む磁性体砥粒の磁束密度と透磁率とが一定になり、研磨効率の低下を防止することができる。
なお、研磨に適する研磨スラリーの粘度は、研磨スラリーが含む磁性体砥粒の成分、粒子形状、粒子径等、及び、ガラス基板Gの硬度、厚さ等によって変化するものであり、任意である。
また、研磨時の電流値と液体の量との関係は、予め測定しておくことにより求めてもよく、また、研磨前の研磨スラリーの粘度、研磨時間、履歴の電流値とから求めてもよい。また、研磨時の研磨ホイール36にかかる負荷量は、駆動部41に流れた電流値に対応し、この電流値は、研磨スラリーが含む液体の量に対応するため、検出部43は、負荷量に対応付けられた、供給する液体の量を求めることができる。
【0025】
以上説明したように、長時間研磨しても製品不良が起きないようにすることができる。また、研磨スラリーの粘度を、研磨に適した粘度に維持することができる。また、研磨スラリーに液体を供給することにより、研磨スラリー、ガラス基板の端面、研磨ホイールを冷却でき、端面のヤケを防止することができる。また、研磨ホイールが備える磁石の熱減磁を抑制できるため、研磨効率の低下を防止することができる。
【0026】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0027】
供給部42が供給する液体の量、タイミングは任意であり、例えば、判定部44により液体を供給すると判定された場合に所定量供給することもでき、また、検出部43が検出した電流値が一定値を超えた場合に所定量供給することもできる。また、研磨スラリーが含む液体は自然揮発もするため、研磨装置40が所定期間以上動作しておらず、液体が揮発している場合、供給部42は、研磨スラリーに液体を所定量供給することもできる。また、供給部42が供給する液体の温度は任意であるが、研磨スラリーを冷却する役割を有するため、研磨スラリーの温度より低いことが好ましい。
【0028】
検出部43が負荷を検出する方法は任意であり、例えば、研磨スラリーの粘度、端面33の温度を測定し、粘度、温度が所定値以上、上昇した場合に、負荷が増大したと検出することもできる。
【0029】
判定部44は、研磨時、非研磨時と判定した電流値の移動平均値、加重平均値、最高値又は最低値と、履歴のそれぞれの値とを比較することにより、液体を供給する時期を判定することもできる。
【符号の説明】
【0030】
40 研磨装置
36 研磨ホイール
41 駆動部
42 供給部
43 検出部
44 判定部