【課題】第2の回転軸周りに周回する空隙を通じてアーム要素の内部から外部に粉塵が放出される事態を防止・抑制してクリーン度を高めることが可能な多関節ロボットを提供する。
【解決手段】第1回転軸53として、第1回転軸53の貫通孔53aと第2回転軸63の外周面との隙間である軸間空隙S7に連通し且つ第1回転軸53の径方向に直線状に延伸する通気孔535を放射状に複数形成したものを適用し、各通気孔535を、第2アーム要素4の内部に形成され且つ負圧とされた吸引経路Kに狭小空隙S5を介して連通させるように構成した。
ベースを基点として相対位置変更可能に設けられたアーム要素と、当該アーム要素の先端部に設けられ且つ高さ方向において相互に略平行な下側ハンド及び上側ハンドとを備える多関節ロボットであって、
前記アーム要素により回転自在に支持され且つ前記下側ハンドに接続されて当該下側ハンドと一体的に回転する筒状の第1回転軸と、
前記アーム要素により回転自在に支持され且つ前記第1回転軸の軸心に形成された貫通孔に挿通されるとともに前記上側ハンドに接続されて当該上側ハンドと一体的に回転する第2回転軸とを備え、
前記第1回転軸に、前記貫通孔と前記第2回転軸の外周面との隙間である軸間空隙に連通し且つ当該第1回転軸の径方向に直線状に延伸する通気孔を放射状に複数形成し、
前記各通気孔を、前記アーム要素の内部に形成され且つ負圧とされた吸引経路に直接または他の空隙を介して連通させていることを特徴とする多関節ロボット。
前記第1回転軸の軸心周りの外周面を内周面とし且つ当該内周面に対して前記第1回転軸の径方向に所定距離隔てて対向する面を外周面とするリング状の配線配管収容部を備え、当該配線配管収容部の内部空間を直接または他の空隙を介して前記吸引経路に連通させている請求項1に記載の多関節ロボット。
前記アーム要素の上カバーと前記第1回転軸との隙間である第1回転軸周り空隙と、前記各通気孔とを、前記アーム要素の内部における共通の空隙を介して前記吸引経路に連通させている請求項1又は2に記載の多関節ロボット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係る多関節ロボット1は、
図1に示すように、半導体製造に用いる円板状のワークであるウェーハWを搬送するワーク搬送ロボットとして構成したものである。多関節ロボット1は、クリーンルーム内に設けられ、ベース2を基点として、アーム1Aを構成する複数のアーム要素3、4、及びハンド5,6を順次回転可能に接続したものである。
図1には、多関節ロボット1のうちハンド5,6を含むアーム1A全体をベース2に対して最も伸展させた状態を示し、本実施形態においては、このアーム1Aの延びる方向を前側(先端側)として、これと反対側を後側(基端側)として定義する。
【0024】
図1及び
図2(
図2は、多関節ロボット1の側断面図を示すものであり、同図では、断面部分に付す平行斜線(ハッチング)を省略している)に示すように、ベース2は、固定ベース2Aと、この固定ベース2Aにより昇降可能に支持された可動ベース2Bとから構成されている。可動ベース2B上では、第1アーム要素3がその基端部3aにおいて支持されており、鉛直方向に設定された回転軸心STを中心として回転可能とされている。そして、第1アーム要素3の先端部3bでは、第2アーム要素4がその基端部4aにおいて支持されており、鉛直方向に設定された回転軸心SRを中心として回転可能とされている。さらには、第2アーム要素4の先端部4bでは、下側ハンド5と上側ハンド6とが上下に平行に配置されつつ、同一の回転軸心SHを中心として回転可能に支持されている。下側ハンド5及び上側ハンド6は、それぞれウェーハWを載置するための載置プレート52,62と、載置プレート52,62を支持する支持フレーム51,61とを備え、クランプ機構7A,7B(
図2参照)によって載置プレート52,62上でウェーハWをそれぞれ保持することが可能となっている。
【0025】
可動ベース2Bは、
図2に示すように、固定ベース2Aの内部において昇降機構2Eを介して接続されている。第1アーム要素3は、可動ベース2Bによって回転自在に支持されるとともに、可動ベース2Bの内部に設けられた駆動機構3Rによって回転可能とされている。また、第1アーム要素3の先端部3bには第2アーム要素4が支持されるとともに、これを回転させるための駆動機構4Rが第1アーム要素3の内部に収容されている。さらに、第2アーム要素4の先端部4bには下側ハンド5と上側ハンド6が同一の回転軸心SHを中心に回転可能に支持されるとともに、これらを回転させるための駆動機構5R,6Rが第2アーム要素4の内部にそれぞれ収容されている。また、各ハンド5,6は、それぞれクランプ機構7A,7Bを備えている。
【0026】
第1アーム要素3は、フレーム31を中心として、上カバー32及び下カバー33が着脱自在に取り付けられており、これらを取り外した際には上記駆動機構4Rを露出させることができるようになっている。また、第2アーム要素4は、フレーム41を中心として、上カバー42及び下カバー43が着脱自在に取り付けられており、これらを取り外した際には上記駆動機構5R,6Rを露出させることができるようになっている。さらに、下側ハンド5と上側ハンド6における支持フレーム51,61にも、カバー51a,61aが着脱自在に設けられており、これらカバー51a,61aを取り外した場合にはクランプ機構7A,7Bの全体を露出させることができるようになっている。
【0027】
ベース2は、
図3(同図は、多関節ロボット1におけるベース2及びベース2の近傍を拡大して示す側断面図である)に示すように、底壁211及び底壁211から立ち上がる立壁212を有する側断面視逆T字状のフレーム21の前側に前面カバー21aを配置し、フレーム21の後側に背面カバー21bを配置するとともに、フレーム21の側方に(同図における紙面奥行き方向)に図示しない側面カバーを配置することで外周を覆い、上方が開放された内部空間2A1を有する枠体状の固定ベース2Aと、フレーム22を中心としてカバー22aを設けることで内部空間2B1を形成した枠体状の可動ベース2Bとを備え、固定ベース2Aに対して可動ベース2Bを昇降可能に構成したものである。
【0028】
可動ベース2Bのフレーム22は、固定ベース2Aの立壁212と平行に配置された立壁221と、略水平姿勢で配置される上部壁222とを備えている。また、ベース2は、固定上下方向に延びるガイドレール23bと、ガイドレール23bに噛み合うリニアブロック23aとによって構成するリニアガイド23を備え、可動ベース2Bの立壁221に固定したリニアブロック23aを、固定ベース2Aに設けたガイドレール23bに噛み合わせた状態で、可動ベース2Bがガイドレール23bに沿って上下方向に直動するように構成している。
【0029】
また、固定ベース2Aには、ボールネジ24を構成するネジ軸24aが上下方向に沿って配置され、このネジ軸24aと噛み合うガイドブロック24bを可動ベース2Bに固定して取り付けている。したがって、ネジ軸24aが回転することによって可動ベース2Bを固定ベース2Aに対して昇降移動させることができる。より具体的には、ネジ軸24aの下端にはプーリ25が一体的に設けられるとともに、ネジ軸24aと平行にモータ26が配置され、この軸先端に設けたプーリ26aと上記プーリ25とが無限軌道体である無端ベルト27によって接続されている。こうすることで、モータ26を駆動してネジ軸24aを回転させることにより、ガイドブロック24bをネジ軸24aに沿って移動させ、ガイドレール23bに沿って可動ベース2Bを昇降させることができる。
【0030】
このように、本実施形態の多関節ロボット1では、リニアガイド23、ボールネジ24、モータ26、プーリ25,26a及び無端ベルト27によって、可動ベース2Bを昇降させる昇降機構2Eを構成している。
【0031】
ここで、モータ26が、リニアガイド23およびボールネジ24を挟んで、可動ベース2Bのフレーム22とは反対側に設けられていることから、高出力が得られる大型のものとした場合であっても、可動ベース2Bの内部空間2B1に影響を及ぼすことなく、この内部空間2B1を広く確保することが可能となっている。
【0032】
また、可動ベース2Bのフレーム22における上部壁222の上面には、減速機35が設けられ、上部壁222より下方に向けて突出させた減速機35の入力軸35aにプーリ36を一体的に設けている。さらに、このプーリ36の軸心と平行となる姿勢でモータ37が配置され、モータ37の軸先端に設けたプーリ37aと上記プーリ36とを無限軌道体である無端ベルト38によって接続するようにしている。減速機35の上部にある出力軸35bは、円筒状に形成された回転軸34に接続され、この回転軸34の上端部に、第1アーム要素3を構成するフレーム31を接続している。すなわち、モータ37が回転することによって、プーリ36を介して減速機35の入力軸35aに駆動力が伝達され、減速機35の出力軸35bと回転軸34及び第1アーム要素3とが一体となって回転するようになっている。
【0033】
このように、本実施形態の多関節ロボット1では、減速機35、モータ37、プーリ36,37a、無端ベルト38によって第1アーム要素3を回転させる駆動機構3Rを構成している。
【0034】
可動ベース2Bの内部空間2B1には、モータ37、及び図示しない配線配管を収容している。ここで、配線配管とは、駆動用電力または検出信号を伝達するための電気配線ケーブルや、シリンダ等の駆動に用いるエアやオイル等を供給あるいは吸引するための配管チューブのうちのいずれか一方、あるいは双方を合わせて称するものである。
【0035】
上部壁222の上方には、減速機35と、第1アーム要素3を支持する回転軸34とを配置し、回転軸34の内部空間34aには、第2アーム要素4を駆動するためのモータ46を収容している。
【0036】
上述したように、可動ベース2Bの昇降に用いるモータ26が、リニアガイド23及びボールネジ24を挟んで可動ベース2Bのフレーム22とは反対側に配置されていることから、可動ベース2Bにおける内部空間2B1を広く確保することが可能になっているため、この内部空間2B1に、モータ37、減速機35、回転軸34、モータ46及び図示しない配線配管を、余裕を持たせつつ配置することが可能となっている。そのため、高出力・高速化を目的にモータ37,46として大型のものを用いた場合でも、ベース2の高さ寸法が大きくなることを避けることができる。こうすることで、ウェーハWが大型化した場合であっても、可動ベース2Bが最も低い位置になった場合におけるアーム1Aの最低高さを低くすることができ、搬送するウェーハWを保管するためのFOUP等の搬送ラックの高さ寸法の増大を防ぐことが可能となる。
【0037】
次に、第1アーム要素3と第2アーム要素4との間の接続構造について、
図4(同図は、多関節ロボット1における第1アーム要素3と第2アーム要素4との接続部分近傍を拡大して示す側断面図である)を用いて説明を行う。本実施形態では、第1アーム要素3側より駆動力を与えることで第2アーム要素4を回転させることができるように構成している。ここで、第1アーム要素3と第2アーム要素4との関係に着目すると、第1アーム要素3に対して第2アーム要素4を相対回転させるための駆動力のみを与えた場合、第1アーム要素3は、回転動作を行わない固定側アーム要素であり、第2アーム要素4は、回転動作を行う相対回転側アーム要素であると捉えることができる。
【0038】
第1アーム要素3を構成するフレーム31の先端部3bにおいては、上下方向に軸方向を一致させた円筒状に形成された円筒壁部31aと、上下方向、すなわち第1アーム要素3における厚み方向の中心よりやや下方で略水平に形成された中間壁部31bとを備えている。
【0039】
円筒壁部31aの内部には、第2アーム要素4を支持するための回転支持体としての減速機44を収容するための内部空間31Sが形成されており、この内部空間31Sは、第2アーム要素4側に向けて開放、すなわち開口が形成されたものとなっている。円筒壁部31aの内部においては、中間壁部31bの上面に減速機44を設け、この減速機44の入力軸44aを、中間壁部31bに形成した中心孔31b1を通じて下方に突出させてプーリ45に接続している。また、減速機44の出力軸44bは、上方に突出し、第2アーム要素4を構成するフレーム41の底壁41aに接続され、第2アーム要素4と一体となって回転可能となっている。なお、図中における減速機44は模式的に示したものに過ぎず、実際の断面構造とは異なるものである。
【0040】
この減速機44の入力軸44aに駆動力を与えるものは、
図3に示す上述のモータ46である。モータ46は、第1アーム要素3を構成するフレーム31の一部に固定されており、その回転軸にはプーリ46aが設けられている。そして、このプーリ46aと
図4に示すプーリ45とが無限軌道体である無端ベルト47によって接続されている。こうすることで、モータ46を駆動することにより、プーリ46a,45が無端ベルト47を介して同期回転し、減速機44の出力軸44bと一体に第2アーム要素4を回転させることが可能となっている。
【0041】
このように、本実施形態の多関節ロボット1では、モータ46、プーリ45,46a、無端ベルト47、減速機44によって、上述した第2アーム要素4を回転させるための駆動機構4Rを構成している。
【0042】
駆動機構4Rは内部において転がり又は摺動する部分を備えているため、摩耗による粉塵が発生することになり、こうした傾向は汎用品を用いる限り高出力・高速になるにつれて顕著になっていく。本実施形態では、無端ベルト47及びプーリ45を中間壁部31bよりも下方に配置し、この配置空間を下カバー33によって封止しているため、無端ベルト47とプーリ45との間の摩擦に起因する粉塵が、第1アーム要素3の外部へ放出する事態を防止・抑制することができる。
【0043】
ところで、第1アーム要素3に対する第2アーム要素4の相対回転動作を円滑に行えるように、第1アーム要素3と第2アーム要素4との間、より具体的には、
図4に示すように、内部空間31Sを構成する円筒壁部31aと第2アーム要素4を構成するフレーム41における底壁41aとの間に空隙Xが形成される。この空隙Xを通じて、減速機44の内部で生じる粉塵が外部(クリーンルーム内)に放出される可能性がある。減速機44は、一般的な構成として内部のグリスを保持するためのオイルシール(図示省略)を備えているものの、回転時における摺動部分からの発塵を効果的に抑制することはできず、上述したような高出力・高速化に対応する場合、さらには半導体の高精細化に対応する場合には、発塵対策として不十分といえる。そのため、本実施形態においては、第2アーム要素のうち底壁41aの下面においてリング状のシール部材49を設け、このシール部材49を円筒壁部31aの上端に近接する位置に配置することによって、空隙Xを小さくしている。
【0044】
また、中間壁部31bには、円筒壁部31a近くの位置に吸引部として機能する貫通孔31b2を形成し、この貫通孔31b2に接続された図示しない配管チューブ(吸引配管)を介して内部空間31S内の気体を吸引できるように構成している。この配管チューブは、第2アーム要素4から第1アーム要素3内へと引き込まれた配線配管CTと一緒になって第1アーム要素3内を引き回され、ベース2を通じて多関節ロボット1の外部であってクリーンルーム内のクリーン管理に悪影響を与えない場所へと引き出されている。こうすることで、貫通孔31b2から吸引された気体は、多関節ロボット1の外部に設けられた所定の排出先へと排出されて処理され、多関節ロボット1の存在する周辺環境(クリーンルーム)へ粉塵を放出しないようにすることが可能である。また、内部空間31Sの気体を吸引することによって内部空間31Sにおける圧力を下げることにもなるため、内部空間31Sの気体及びこれに含まれる粉塵が、第1アーム要素3と第2アーム要素4との空隙Xを通じて外部(クリーンルーム内)に放出されることを一層抑制することが可能となっている。
【0045】
次に、第2アーム要素4と、第3アーム要素となる下側ハンド5及び上側ハンド6との間での接続構造について
図5及び
図10(
図5は、下側ハンド5及び上側ハンド6を回転させるために第2アーム要素4内に設けた駆動機構5R,6Rを拡大して示す側断面図であり、
図10は、多関節ロボット1における第2アーム要素4と下側ハンド5及び上側ハンド6との接続部分近傍をさらに拡大して示す側断面図である)を用いて説明を行う。
【0046】
本実施形態では、第2アーム要素4側より駆動力を与えることで下側ハンド5及び上側ハンド6を回転させることができるように構成している。第2アーム要素4を構成するフレーム41は、先端部4bにおいて、上下方向に軸方向を一致させた円筒状をなす円筒壁部41bと、上下方向、すなわち第2アーム要素4における厚み方向(高さ方向)の中心よりもやや上方の位置で略水平に形成された中間壁部41cとを有するものである。
【0047】
下側ハンド5を構成する支持フレーム51は、略円筒状に形成された第1回転軸53に接続されている。第1回転軸53は、円筒壁部41bの内部において、軸受54aを介して中間壁部41cに回転可能に支持されている。そして、第1回転軸53の下端にはプーリ54を接続し、プーリ54の回転とともに第1回転軸53及び下側ハンド5が一体的に回転するようになっている。
【0048】
第1回転軸53の軸心に形成された貫通孔53aと連通するように、支持フレーム51にも孔部51dが形成されており、これら貫通孔53a及び孔部51dに第2回転軸63を、軸心が第1回転軸43と同一になる姿勢で挿通して配置している。第2回転軸63の下端は、第1回転軸53の下端に接続したプーリ54よりも下方にまで延び、このプーリ54の下方に平行に配置されたプーリ64と接続されている。第2回転軸63の下端に接続したプーリ64は、円筒壁部41bの下端近傍において軸受64aを介して回転可能に支持されている。そのため、プーリ64の回転とともに第2回転軸63及び上側ハンド6が一体的に回転するようになっている。第2回転軸63は、第1回転軸53と軸心が同一になるように配置されていることから、上側ハンド6は下側ハンド5と共通の回転軸心SH(
図2参照)を中心に回転するようになっている。
【0049】
本実施形態の多関節ロボット1では、軸受54a,64aとして、外輪側をフレーム41に対し固定されて内輪側を回転自在とされたクロスローラベアリングを適用している。これにより、第1回転軸53,第2回転軸63をその下端近くの1箇所のみでそれぞれ支持しているにもかかわらず効果的にモーメントを受けることが可能となっており、各ハンド5,6の先端が垂れ下がるようにして回転中心が傾く現象を抑制することが可能となっている。なお、クロスローラベアリングに代えて4点接触玉軸受を用いて同様の構成とすることも可能である。
【0050】
各ハンド5,6を回転させるため、第1回転軸53,第2回転軸63とそれぞれ一体化されているプーリ54,64に対して駆動力を与える機構は、次のように構成されている。
【0051】
すなわち、
図5に示すように、第1回転軸53に対して駆動力を与える第1モータ56は、第2アーム要素4の内部における基端部4aに近い位置に設けられている。そして、このモータ56の駆動力が第1中間伝達軸55を介して第1回転軸53に伝達されるようになっている。また、第2回転軸63に対して駆動力を与える第2モータ66は、第2アーム要素4の内部において上記第1モータ56よりもやや先端部4b側の位置に設けられている。そして、この第2モータ66の駆動力が、第2モータ66と第1中間伝達軸55との間に配置された第2中間伝達軸65を介して第2回転軸63に伝達されるようになっている。
【0052】
なお、第1モータ56、第2モータ66、第1中間伝達軸55、及び第2中間伝達軸65は、
図6及び
図7(
図6は上カバー42を取り外した第2アーム要素4の拡大平面模式図であり、
図7は下カバー43を取り外した第2アーム要素4の拡大底面模式図である)に示すように、平面視においてこれらが設けられている第2アーム要素4の延在する方向に沿って、上側ハンド6及び下側ハンド5の共通の回転軸心SHに向かって同一直線上に配置されている。
【0053】
第1モータ56及び第2モータ66は、同一の仕様のものを用いており、それぞれをブラケット56c,66cを用いて第2アーム要素4のフレーム41に固定している。この際、双方のモータ軸56a,66aはともに上方向に延びる向きとしているが、第1モータ56が第2モータ66に対して若干、上側に位置するようにしている。また、これらのモータ軸56a,66aには、同一直径のプーリ56b,66bがそれぞれ設けられている。
【0054】
第1中間伝達軸55及び第2中間伝達軸65は、それぞれの軸本体55s,65sを軸受ユニット55c,65cを用いてフレーム41に固定し、この軸受ユニット55c,65cによって上方向に突出した位置において大径プーリ55a,プーリ65aを設けるとともに、軸受ユニット55c,65cより下方向に突出した位置において、小径プーリ55b,65bを設けている。なお、第1回転軸53,第2回転軸63にそれぞれ設けたプーリ54,64は、上述した大径プーリ55a,65aと同一の直径としている。軸受ユニット55c,65cは、それぞれ内部に軸受を備えていることで、軸本体を55s,65sを回転自在に支承することができる。
【0055】
第1中間伝達軸55は、具体的には、
図8(同図は、
図6に示すA−A断面矢視図を模式的に示す図である)に示すような形態でフレーム41に取り付けられている。フレーム41は、第2アーム要素4が延在する方向に直交する平面で切断する場合において略H形の断面形状をしているとともに、中間壁部41cの中心に開口41dが形成されており、この開口41dを上下に挿通させるように第1中間伝達軸55を設けている。すなわち、第1中間伝達軸55における軸本体55sを回転自在に支持する軸受ユニット55cを下方から中間壁部41cに対してネジ止めすることで、中間壁部41cを挿通する形態で軸本体55sを起立させる。そして、この軸本体55sの上端に大径プーリ55aを設け、下端に小径プーリ55bを設けることにより、中間壁部41cよりも上方に大径プーリ55aを配し、中間壁部41cよりも下方に小径プーリ55bを配する。
【0056】
同様に、第2中間伝達軸65は、
図9(
図6に示すB−B断面矢視図を模式的に示す図である)に示すような形態でフレーム41に取り付けられている。略H形の断面形状をなすフレーム41の中間壁部41cの中心に開口41dが形成されており、この開口41dを上下に挿通させるように第2中間伝達軸65を設けている。すなわち、第2中間伝達軸65における軸本体65sを回転自在に支持する軸受ユニット65cを中間壁部41cに対して下方からネジ止めすることで、中間壁部41cを挿通する形態で軸本体65sを起立させる。そして、この軸本体65sの上端に大径プーリ65aを設け、下端に小径プーリ65bをそれぞれ設けることにより、中間壁部41cよりも上方に大径プーリ65aを配し、中間壁部41cよりも下方にプーリ小径65bを配する。
【0057】
第1中間伝達軸55は、
図5及び
図10に示すように、第2中間伝達軸65に対してやや上方にずらして配置されており、この第1中間伝達軸55に設けている大径プーリ55aは、第1モータ56に設けたプーリ56bと上下方向に対応する位置(同じ高さ位置)とされ、両者の間は無端ベルト57によって接続されている。同様に、第2中間伝達軸65に設けている大径プーリ65aは、第2モータ66に設けたプーリ66bとの間で上下方向に対応する位置(同じ高さ位置)とされ、両者の間は無端ベルト67によって接続されている。
【0058】
また、第1中間伝達軸55において軸受ユニット55cを挟んで、大径プーリ55aと反対側に設けられた小径プーリ55bは、第1回転軸53に設けたプーリ54と上下方向に対応する位置(同じ高さ位置)に配されており、両者の間は無端ベルト58によって接続されている。同様に、第2中間伝達軸65において軸受ユニット65cを挟んで、大径プーリ65aと反対側に設けられた小径のプーリ小径65bは、第2回転軸63に設けたプーリ64と上下方向に対応する位置(同じ高さ位置)に配されており、両者の間は無端ベルト68によって接続されている。
【0059】
このようにして、4つの無端ベルト57,58,67,68は、第1回転軸53,第2回転軸63の軸方向にそれぞれ異なる位置にずらして配されていることから、互いに干渉することがないようになっている。
【0060】
図6及び
図7に示すように、上述した4つの無端ベルト57,58,67,68のうち、第1中間伝達軸55に設けた大径プーリ55aと第1モータ56に設けたプーリ56bとを接続する無端ベルト57と、第2中間伝達軸65に設けた大径プーリ65aと第2モータ66に設けたプーリ66bとを接続する無端ベルト67は、フレーム41における中間壁部41cよりも上側に配置され、第1中間伝達軸55に設けた小径プーリ55bと第1回転軸53に設けたプーリ54とを接続する無端ベルト58と、第2中間伝達軸65に設けた小径のプーリ小径65bと第2回転軸63に設けたプーリ64とを接続する無端ベルト68は、中間壁部41cよりも下側に配置されている。すなわち、組み立て時においてはフレーム41の上方向から2つの無端ベルト57,67を取り付けたり、調整することができ、フレーム41の下方向から2つの無端ベルト58,68を取り付けたり、調整することができ、作業性が良く、組み立て工数を減らすことが可能となっている。
【0061】
より具体的には、
図6に示すように、第2アーム要素4の延伸方向において、第2モータ66に設けたプーリ66b、及び第2中間伝達軸65に設けた大径プーリ65aは、第1モータ56に設けたプーリ56bと、第1中間伝達軸55に設けた大径プーリ55aとの間に配置されるとともに、これらのプーリ56b,55aより低い位置に設定されている。そのため、下方の無端ベルト67の取り付け・調整を行った後に上方の無端ベルト57の取り付け・調整を行うことで、簡単に作業を行うことができる上に、無端ベルト57,67の相互干渉を防止することも可能となっている。
【0062】
また、
図7に示すように、第1中間伝達軸55に設けた小径プーリ55bは、第2中間伝達軸65に設けた小径のプーリ小径65bと、第2回転軸63に設けたプーリ64との間に配置されるとともに、これらより高い位置、すなわちフレーム41の中間壁部41c寄りの位置に設定されている。そのため、上方の無端ベルト58の取り付け・調整を行った後に下方の無端ベルト68の取り付け・調整を行うことで、簡単に作業を行うことができる上に、無端ベルト58,68の相互干渉を防止することも可能となっている。
【0063】
上記のように、
図5に示す第1モータ56が無端ベルト57によって第1中間伝達軸55と接続されるとともに、第1中間伝達軸55がプーリ54を介して無端ベルト58によって第1回転軸53と接続されていることから、第1モータ56の駆動力によって、第1回転軸53及び下側ハンド5を回転させることが可能となっている。すなわち、第1モータ56及びプーリ56b、並びに、第1中間伝達軸55、プーリ54、無端ベルト57,58は、下側ハンド5を回転させるための駆動機構5Rを構成している。
【0064】
同様に、第2モータ66は無端ベルト67によって第2中間伝達軸65と接続されるとともに、第2中間伝達軸65がプーリ64を介して無端ベルト68によって第2回転軸63と接続されていることから、第2モータ66の駆動力によって、第2回転軸63及び上側ハンド6を回転させることが可能となっている。すなわち、第2モータ66及びプーリ66b、並びに、第2中間伝達軸65、プーリ64、無端ベルト67,68は、上側ハンド6を回転させるための駆動機構6Rを構成している。
【0065】
このようにハンド5,6を回転させるに際し、第1モータ56,第2モータ66の回転がそれぞれ2段階で大きく減速されて伝達されることになるため、減速機等の特殊な装置を用いる必要がなく、汎用的な部品を用いて低コスト化を図るとともに、高出力を得ながら、高い位置決め精度を得ることが可能となっている。
【0066】
ここで、ハンド5,6は、上述したウェーハWを保持するためのクランプ機構7A,7Bを備えていることから、これを動作させるための複数の配線配管CTが各ハンド5,6の内部、具体的には各支持フレーム51,61の内部に引き回される。そして、これら配線配管CTは、第2アーム要素4の内部を通り、第1アーム要素3の内部を経由して、ベース2にまで引き回されるようになっている。
【0067】
先端部が上側ハンド6の支持フレーム61における所定箇所に接続される複数の配線配管CT(上側ハンド6に付帯する配線配管であり、以下では「上側ハンド配線配管CT(6)」と称す)は、
図10に示すように、第2回転軸63の高さ方向に貫通し且つ中心が第2回転軸63の軸中心(回転中心)と一致するように形成した貫通孔63aを通じて、第2回転軸63の下方向に引き出され、第2アーム要素4の内部に至るようになっている。このように上側ハンド配線配管CT(6)を貫通孔63a、すなわち上側ハンド6の回転中心及びその周辺空間に配することにより、上側ハンド6の回転によっても、上側ハンド配線配管CT(6)と第2アーム要素4との相対位置は変化することがない。したがって、上側ハンド配線配管CT(6)の引き回しを容易に行うことができるとともに、他の部品への引っ掛かりや上側ハンド配線配管CT(6)同士の絡まりを抑制して、損傷を防ぐことが可能となっている。
【0068】
一方、下側ハンド5の回転中心及びその周囲には第2回転軸63を配置しているため、先端部が下側ハンド5の支持フレーム51における所定箇所に接続される配線配管CT(下側ハンド5に付帯する配線配管であり、以下では「下側ハンド配線配管CT(5)」と称す)は、下側ハンド5の回転中心に通すことができないため、本実施形態の多関節ロボット1では次のような構成を採用している。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る多関節ロボットは、
図10に示すように、第1回転軸53の軸心周りの外周面を内周面81とし且つ当該内周面に対して第1回転軸53の径方向に所定距離隔てて対向する面を外周面82とするリング状の配線配管収容部8を備え、この配線配管収容部8に、下側ハンド5から引き込んだ下側ハンド配線配管CT(5)を渦巻き状に収容して第2アーム要素4の内部へ引き出すように構成している。
【0070】
配線配管収容部8は、
図15(同図は
図10の要部拡大図である)に示すように、第1回転軸53の外周に配置され且つ上方に開放された有底円筒状の収容ケース48を主体として構成されたものである。この収容ケース48は、第1回転軸53が挿通可能な開口部481を中央に形成した底壁482と、底壁482の外周縁から起立する起立壁483とを一体に備えたものであり、起立壁483の内周面が、配線配管収容部8の外周面82として機能する。収容ケース48は、第2アーム要素4の前端部分における内部に固定されている。
【0071】
本実施形態では、第1回転軸53として、第1回転軸本体531と、第1回転軸本体531の上端部分から径方向外側に突出させた上端側鍔部532と、第1回転軸本体531の下端部分から径方向外側に突出させた下端側鍔部533とを一体に有するものを適用している。そして、第1回転軸本体531の外周面が、配線配管収容部8の内周面81として機能し、下端側鍔部533の上向き面が、収容ケース48のうち底壁482の上向き面と共に配線配管収容部8の底面83として機能する。つまり、収容ケース48は、底壁482の中心部に形成した開口部481の開口縁を、第1回転軸53が有する下端側鍔部533の外周面に僅かな隙間を介して近接させた状態で、第1回転軸53の外周に配置されている。
【0072】
第1回転軸53が有する下端側鍔部533の上向き面と、収容ケース48が有する底壁の上向き面とによって形成される配線配管収容部8の底面83は、全体的に略フラットな平滑面であるが、「配線配管収容部8の底面83のうち内周面81に連続する内輪部分84」、つまり、下端側鍔部533の上向き面のうち第1回転軸本体531の外周面に連続する部分と、「配線配管収容部8の底面83のうち外周面82に連続する外輪部分85」、つまり、底壁482の上向き面のうち起立壁483の内周面に連続する部分を、それぞれ他の部分よりも高くなるようにテーパ形状に設定している。
【0073】
具体的には、下端側鍔部533の上向き面のうち第1回転軸本体531の外周面に連続する部分を、第1回転軸本体531の外周面に近付くにつれて漸次高くなる直線状のテーパ面に設定している。また、収容ケース48が有する底壁482の上向き面のうち起立壁483の内周面に連続する部分を、起立壁483の内周面に近付くにつれて漸次高くなる直線状のテーパ面に設定している。ここで、内輪部分84の勾配と、外輪部分85の勾配は、同じであってもよいし、相互に異ならせてもよい。なお、収容ケース48の起立壁483は、内周面が円周面を形成するように構成している限り外周面側の形状を問わず、第2アーム要素4内に収まるならば如何なる形状としてもよい。
【0074】
配線配管収容部8は、第2アーム要素4の内部に配置されている。配線配管収容部8の内部空間である配線配管収容空間8Sは、内周面81(第1回転軸本体531の外周面)と、底面83(下端側鍔部533の上向き面,底壁の上向き面)と、外周面82(起立壁の内周面)とによって仕切られ、さらに、第1回転軸53の上端側鍔部532の下向き面と、径方向において上端側鍔部532に隙間無く接触した状態で固定される第1シール部材53cの下向き面とによって略封止されている。
【0075】
第1シール部材53cは、概略リングをなし、中心部に上端側鍔部532の外周面に嵌合する開口部53caを形成したものである(
図15参照)。本実施形態では、上端側鍔部532として、外周面のうち下端部分から径方向に突出する突出固定部534を一体に有するものを適用し、第1シール部材53cとして、突出固定部534に載置した状態でねじ止めにより固定される上段部53c1と、上端側鍔部532の下向き面(突出固定部534の下向き面を含む)と略面一となる下向き面を有する下段部53c2とを一体に備えたものを適用している。
【0076】
また、本実施形態の多関節ロボット1は、下側ハンド5の内部から配線配管収容空間8Sに引き込む下側ハンド配線配管CT(5)が挿通可能な引込孔53b(
図10参照)と、配線配管収容空間8Sからアーム要素4の内部へと引き出される下側ハンド配線配管CT(5)が挿通可能な引出孔48b(後述する
図12参照)とを備えている。
【0077】
引込孔53bは、
図10に示すように、第1回転軸53のうち上端側鍔部532に形成された高さ方向に貫通する孔である。この引込孔53bは、下側ハンド5のうち支持フレーム51の内部空間に連通し、この引込孔53bを通じて支持フレーム51の内部空間から配線配管収容空間8Sに引き込んで渦巻き状に配される下側ハンド配線配管CT(5)のうち、最も配線配管収容部の内周面81(第1回転軸53の外周面)に近い位置で巻かれる部分(最も内周の巻き部分)の少なくとも一部が配線配管収容部8の内周面81に添接し得るように、本実施形態では、平面視において配線配管収容部8の内周面81に連続する位置又は極めて近い位置に引込孔53bを形成している。したがって、この引込孔53bを介して下側ハンド5における支持フレーム51の内部空間から配線配管収容空間8Sのうち内周面81に接触又は近接するスペースへと下側ハンド配線配管CT(5)を引き入れることができる。
【0078】
本実施形態の多関節ロボット1は、複数本(図示例では3本)の下側ハンド配線配管CT(5)を有しており、各下側ハンド配線配管CT(5)のうち配線配管収容空間8Sに収容される部分を、所定方向に並べた形態で接着処理等によって帯状に束ねたフラットチューブ(フラットケーブル、或いはハイブリッドケーブルとも称される)の形態にし、引込孔53bから配線配管収容空間8Sに引き入れたフラットチューブ状の下側ハンド配線配管CT(5)が、高さ方向に各下側ハンド配線配管CT(5)が並ぶ姿勢で渦巻き状に配されるように構成している(
図10参照)。特に、本実施形態では、配線配管収容空間8Sに渦巻き状に配される下側ハンド配線配管CT(5)(フラットチューブ)のうち最も内周の巻き部分の全部又は一部が、配線配管収容部8のうち上述のテーパ形状に設定した内輪部分84に接触するように構成している。
【0079】
引出孔48bは、
図12及び
図16(
図12は
図10におけるC−C断面を模式的に示す図であり、
図16は
図12におけるP−P断面を模式的に示す図である)に示すように、配線配管収容空間8Sの外周面82側の位置において、配線配管収容部8の外周面82(収容ケース48が備える起立壁483の内周面)に開口し且つ第2アーム要素4の内部空間に連通する孔である。本実施形態では、配線配管収容部8の外周面82に開口する引出孔48bの開口下縁を、上述のテーパ形状に設定した外輪部分85のうち最も高い位置(頂部)と同じ高さ位置に設定し(
図16参照)、配線配管収容部8に渦巻き状に配される下側ハンド配線配管CT(5)のうち少なくとも引出孔48bから配線配管収容空間8S外に引き出される直前の部分が、外輪部分85に接触するように構成している。この引出孔48bを介して下側ハンド配線配管CT(5)を配線配管収容空間8Sから第2アーム要素4の内部に引き出すようにしている。本実施形態では、引出孔48bとして、収容ケース48の起立壁483に形成され且つ第2アーム要素4の長手方向に沿って貫通する孔を適用している(
図12参照)。特に、本実施形態では、起立壁483のうち外周面側の平面形状を、前端側部分に設定した部分円弧形状と、後端側部分に設定した方形状とを組み合わせた形状に設定している。すなわち、収容ケース48の平面形状は、先端側部分に設定した円形と、後端側部分に設定した方形とを組み合わせた形状であり、後端の左右2箇所には角部484がある。これにより、起立壁483の後端側部分は、起立壁483の前端側部分よりも分厚くなり(前後方向における肉厚部分の寸法が大きくなり)、起立壁483の後端側部分では、収容ケース48の角部484に近い部分ほど分厚くなる。本実施形態の引出孔48bは、起立壁483の後端側部分であって且つ収容ケース48のうち一方の角部484に近い部分を前後方向に貫通するように形成されている。なお、本実施形態では、収容ケース48のうち他方の角部484に近い部分に、高さ方向に貫通する吸引配管用貫通孔48cを形成し、この吸引配管用貫通孔48c内に吸引ノズルN及び吸引ノズルに接続した吸引配管を配置している。なお、吸引ノズルNは適宜の手段を介して上カバー42に支持されている。
【0080】
そして、本実施形態の多関節ロボット1では、複数本の下側ハンド配線配管CT(5)を、帯状に束ねたフラットチューブ状にして引込孔53bから配線配管収容空間8Sに引き込み、フラットチューブ状にある複数本の下側ハンド配線配管CT(5)のうち最も下側に配される下側ハンド配線配管のみが配線配管収容部8の底面83に接触し得る姿勢で第1回転軸53を中心に例えば1周半ほどゼンマイバネのように渦巻き状に配し、配線配管収容部8の外周面82(起立壁483の内周面)に開口する引出孔48bから第2アーム要素4の内部に引き出すように構成している。
【0081】
本実施形態の多関節ロボット1では、下側ハンド5が、
図12に示す基準位置にある場合、配線配管収容空間8Sに配置される下側ハンド配線配管CT(5)のうち最も内周の巻きの多くの部分がテーパ形状の内輪部分84に接触するとともに、引出孔48bから配線配管収容空間8S外に引き出される直前の部分がテーパ形状の外輪部分85に接触するように設定している。なお、配線配管収容空間8Sに収容される下側ハンド配線配管CT(5)の長さは、以下に説明する下側ハンド5の回転動作に左右されることなく略一定となるように、下側ハンド配線配管CT(5)は引込孔53bや引出孔48bに対して固定されている。
【0082】
また、配線配管収容空間8Sにおいてフラットチューブ状に束ねられている複数の下側ハンド配線配管CT(5)は、引出孔48bの出口近傍でフラットチューブ状ではなくなり、下側ハンド配線配管個CT単位で個別に扱えるようにされている(
図12参照)。
【0083】
また、下側ハンド5が、
図13に示すように、
図12に示す基準位置に対して平面視時計周りに回転した場合、引込孔53bの位置も下側ハンド5の回転中心軸SH周りに相対的に移動して、下側ハンド配線配管CT(5)のうち引込孔53bから引き込まれる位置(引込位置)も変化し、配線配管収容空間8S内における第1回転軸53周りの下側ハンド配線配管CT(5)の周回数は減少するが、渦巻き状に配されていた配線配管CTが配線配管収容部8の外周面82(収容ケース48が備える起立壁の内周面)に向かって広がるように位置を変化することから、引込孔53bの位置変化、すなわち下側ハンド配線配管CT(5)の引込位置の変化による影響を吸収することができる。下側ハンド5が平面視時計周りに回転した場合において、配線配管収容空間8Sに配置される下側ハンド配線配管CT(5)のうち巻き始めの部分がテーパ形状の内輪部分84に接触するとともに、配線配管収容部8の外周面に近い位置で周回する部分であって且つ引出孔48bから配線配管収容空間8S外に引き出される直前の部分までがテーパ形状の外輪部分85に接触する。
【0084】
また、下側ハンド5が、
図14に示すように、
図12に示す基準位置に対して平面視反時計周りに回転した場合、引込孔53bの位置も下側ハンド5の回転中心軸SH周りに相対的に移動して、下側ハンド配線配管CT(5)のうち引込孔53bから引き込まれる位置(引込位置)も変化し、配線配管収容空間8S内における第1回転軸53周りの下側ハンド配線配管CT(5)の周回数は増加するが、渦巻き状に配されていた配線配管CTが配線配管収容部8の内周面81(第1回転軸53の外周面)に巻き付くように内側に向けて位置を変化することから、引込孔53bの位置変化、すなわち下側ハンド配線配管CT(5)の引込位置の変化による影響を吸収することができる。下側ハンド5が平面視反時計周りに回転した場合において、配線配管収容空間8Sに配置される下側ハンド配線配管CT(5)のうち、最も内周の巻き部分の略全部がテーパ形状の内輪部分84に接触するとともに、配線配管収容空間8S外に引き出される直前の部分がテーパ形状の外輪部分85に接触する。
【0085】
このように、下側ハンド5の回転に伴う引込孔53bの位置変化、すなわち下側ハンド配線配管CT(5)の引込位置の変化に伴って、渦巻き状に配されている下側ハンド配線配管CT(5)の収容状態が変化する場合であっても、配線配管収容空間8Sで渦巻き状に配される下側ハンド配線配管CT(5)が、あたかもゼンマイバネのように第1回転軸53の径方向に拡縮させるように渦巻き状の形態を変化させることで対応することができる。また、引込孔53b,引出孔48bに対して下側ハンド配線配管CT(5)は固定されていることから、配線配管収容空間8Sよりも外側の空間、具体的には、下側ハンド5の内部空間、第2アーム要素4の内部空間で下側ハンド配線配管CT(5)の位置は変化することがなく、これら下側ハンド5の内部空間、及び第2アーム要素4の内部空間の部分における配線配管CTの擦れや引っ掛かりを抑制することが可能となっている。
【0086】
特に、本実施形態では、下側ハンド5の回転動作に伴って、下側ハンド配線配管CT(5)の引込位置が変化した場合であっても、配線配管収容空間8Sに配置される下側ハンド配線配管CT(5)のうち最も内周の巻き部分の全部又は一部(巻き始めの部分)がテーパ形状の内輪部分84に接触するとともに、少なくとも引出孔48bから配線配管収容空間8S外に引き出される直前の部分がテーパ形状の外輪部分85に接触するように構成している。そして、これら内輪部分84及び外輪部分85が、何れも配線配管収容部8の底面83の他の部分よりも高く設定されたテーパ面を有するものであるため、
図16乃至
図18(
図17は、
図13におけるQ−Q断面を模式的に示す図であり、
図18は、
図14におけるR−R断面を模式的に示す図である)に示すように、渦巻き状に配された下側ハンド配線配管CT(5)のうち、これら内輪部分84と外輪部分85に接触している部分以外の部分は、配線配管収容部8の底面83に接触し難く、渦巻き状に配された下側ハンド配線配管CT(5)全体が配線配管収容部8の底面83に接触する態様と比較して、配線配管収容部8の底面83に対する下側ハンド配線配管CT(5)の接触面積を減少させることができ、下側ハンド配線配管CT(5)の摩耗を低減し、摩耗に起因する発塵を防止・抑制することができる。
【0087】
さらに、本実施形態では、複数本の下側ハンド配線配管CT(5)を並列させて帯状に束ねたフラットチューブを配線配管収容空間8Sに配するように構成しているため、渦巻き状にした際の形態がより安定化するとともに、配線配管CT(5)相互の擦れ等による損傷を抑えることが可能であるとともに、フラットチューブの剛性により、渦巻き状に配される下側ハンド配線配管CT(5)のうち、内輪部分84と外輪部分85に接触している部分を除く部分を、内輪部分84や外輪部分85と接触している部分と略同じ高さ位置に保持して、配線配管収容部8の底面83から浮いた状態に維持することができる。その結果、配線配管収容部8の底面83に対する下側ハンド配線配管CT(5)の接触する部分を、内輪部分84に接触している部分と、外輪部分85に接触している部分のみに限定することができ、より一層の摩耗低減を図ることができ、発塵を防止・抑制することができる。また、フラットチューブ(フラットケーブル)状にすることにより、複数の下側ハンド配線配管CT(5)が一体化され、単独の下側ハンド配線配管CT(5)に比べて高い剛性を有していることから、上記ゼンマイバネのような変形をより円滑に行うことも可能である。
【0088】
本実施形態の多関節ロボット1は、第1回転軸53の外周面(具体的には上端側鍔部532の外周面)に密着させた状態で第1回転軸53に固定した第1シール部材53cによって、配線配管収容空間8Sを封止できるように構成している。しかしながら、第1回転軸53のスムーズな回転動作を確保するためには、第1シール部材53cを収容ケース48の起立壁483の上端に密着させる構成は積極的に採用することができない。したがって、本実施形態では、第1シール部材53cを、起立壁483の上端よりも僅かに上方に配置している。その結果、第1シール部材53cと起立壁483の上端との間には、
図15及び
図19(
図19は
図15の一部拡大図である)に示すように、第2アーム要素4の内部空間に連通する僅かな空隙(以下では「収容ケース空隙S1」と称す)が形成される。
【0089】
さらにまた、本実施形態の多関節ロボット1では、第2アーム要素4における上カバー42を、基端側上カバー42aと先端側上カバー42bとを用いて構成し、先端側上カバー42bを第1回転軸53の外周に配置している。そして、第1回転軸53のスムーズな回転動作を確保すべく、先端側上カバー42bと第1回転軸53との間には、
図15及び
図19に示すように、第1回転軸53周りに周回する空隙S2(以下では、第1回転軸周り空隙S2)と称す)が形成される。この第1回転軸周り空隙S2は、第2アーム要素4の内部空間から多関節ロボット1の外部(クリーンルーム内)に至る空隙であり、第2アーム要素4の内部空間に存在する粉塵が、第1回転軸周り空隙S2を通じて外部であるクリーンルーム内に放出される可能性がある。特に、第1回転軸周り空隙S2が通じる外部は、ハンド5,6によって保持するウェーハWに近い空間であり、第1回転軸周り空隙S2から外部に放出された粉塵がウェーハWに付着するおそれがある。ここで、上述の収容ケース空隙S1は、第2アーム要素4の内部空間に連通する空隙であるため、配線配管収容空間8Sにおいて下側ハンド配線配管CT(5)の摩耗により発生した粉塵が、収容ケース空隙S1を通じて第2アーム要素4の内部空間に放出された場合、その粉塵が、第1回転軸周り空隙S2を通じて多関節ロボット1の外部へ放出され得る。
【0090】
そこで、本実施形態の多関節ロボット1では、第1回転軸周り空隙S2を通じて多関節ロボット1の外部へ粉塵が放出する事態を抑制すべく、以下のような構成を採用している。
【0091】
すなわち、本実施形態の多関節ロボット1では、径方向において第1回転軸53の外周面に隙間無く密着した状態で固定される上述の第1シール部材53cを、高さ方向において先端側上カバー42bに近接する位置に設け、第2アーム要素4の内部空間から第1回転軸周り空隙S2に通じる空間を狭めるようにしている。
【0092】
さらにまた、本実施形態の多関節ロボット1は、第1シール部材53cとして、上述したように、第1回転軸53の上端側鍔部532に備えた突出固定部534に載置した状態でねじ止めにより固定される上段部53c1と、上端側鍔部532の下向き面(突出固定部534の下向き面を含む)と略面一となる下向き面を有する下段部53c2とを一体に備えたものを適用している。そして、
図19に示すように、下段部53c2の上向き面には、第1回転軸53の軸心を中心とし且つ上方に突出するリング状の上方突出円環部53ctを形成している。本実施形態の第1シール部材53cは、同心円状に複数(図示例では3つ)の上方突出円環部53ctを下段部53c2の上向き面に一体に形成したものである。さらに、本実施形態の多関節ロボット1は、第1シール部材53cの上方突出円環部53ctに対して、第1回転軸53の径方向においてあそびをもった状態で嵌合する下方突出円環部42ctを下向き面に形成した第2シール部材42cを備えている。
【0093】
第2シール部材42cは、
図20に示すように、第1シール部材53cの上段部53c1が挿通可能な上段部用挿通孔42c1を有し、また、
図19に示すように、第1シール部材53cの下段部53c2を上方から被覆する部分の下向き面に、複数(図示例では3つ)の下方突出円環部42ctを同心円状に形成したものである。第2シール部材42cの平面形状は、上述の収容ケース48が有する起立壁483のうち外周面側の形状に対応した形状、つまり、先端側部分に設定した円形と、後端側部分に設定した方形とを組み合わせた形状であり、後端の左右2箇所には角部42c2が形成される。本実施形態では、第2シール部材42cの後端における左右2箇所の角部42c2のうち、一方の角部42c2近傍に、厚み方向(高さ方向)に貫通する吸引用貫通孔42c3を形成するとともに、第2シール部材42cの上向き面に、径方向において上段部用挿通孔42c1に連続し且つ上段部用挿通孔42c1よりも一周り大きい径で周回するリング状凹部42c4と、リング状凹部42c4から吸引用貫通孔42c3に通じる溝状の吸引通路42c5を形成している。これら吸引用貫通孔42c3、リング状凹部42c4及び各吸引通路42c5は、先端側上カバー42bによって蓋封される空間である。本実施形態では、吸引用貫通孔42c3を、収容ケース48に形成した上述の吸引配管用貫通孔48cに連通する位置に形成し、これら吸引用貫通孔42c3及び吸引配管用貫通孔48cに、共通の吸引ノズルNを挿入して装着し、吸引ノズルNの先端(吸引口)が吸引用貫通孔42c3内において上方に向かって露出するように構成している。この吸引ノズルNは、吸引配管用貫通孔48c内において図示しない配管チューブ(吸引配管)に接続され、これら吸引ノズルN及び吸引配管を介して、吸引用貫通孔42c3を終端とする吸引経路K、及び吸引経路Kに通じる空間の圧力を下げて、吸引用貫通孔42c3に通じる空間内の気体を吸引して、その気体及び気体に含まれる粉塵を上述した吸引部31b2(
図4参照)と同一の所定の排出先、つまり、クリーンルームのクリーン度に悪影響を与えない場所へと排出できるように構成している。
【0094】
本実施形態の多関節ロボット1は、相互に連通するリング状凹部42c4、吸引通路42c5及び吸引用貫通孔42c3と、これらリング状凹部42c4、吸引通路42c5及び吸引用貫通孔42c3を上方から被覆する先端側上カバー42bとによって仕切られた吸引経路Kを形成し、リング状凹部42c4を吸引経路Kの始端として捉え、吸引用貫通孔42c3を吸引経路Kの終端として捉えた場合、第1回転軸53を周回する360度の範囲において吸引経路Kの始端を形成し、リング状凹部42c4から吸引通路42c5を経由して吸引用貫通孔42c3に至る吸引経路Kを積極的に吸引することができる。
【0095】
特に、本実施形態では、
図11(同図は第2アーム要素4と各ハンド5,6との接続部分であって先端側上カバー42bを省略した図である)及び
図20に示すように、吸引経路Kの終端を1箇所で集合させ且つ吸引経路Kの始端側に向けて複数の管状に分岐させている。具体的には、リング状凹部42c4における相互に異なる複数の位置(図示例では、リング状凹部42c4の外周面における略等角3箇所)からそれぞれ共通の吸引用貫通孔42c3に通じる複数の吸引通路42c5を形成し、各吸引通路42c5が吸引用貫通孔42c3に連通するように構成している。ここで、各吸引通路42c5のうち少なくとも吸引経路Kの始端であるリング状部42c4に開口している部分の高さ位置は、第1回転軸53の外周面のうち通気孔535の高さ位置と略同一である。
【0096】
そして、本実施形態の多関節ロボット1は、吸引経路Kの始端であるリング状凹部42c4から管状部分である複数の吸引通路42c5を経由して終端である共通の吸引用貫通孔42c3に至る全ての吸引経路Kを積極的に吸引できるように構成されている。本実施形態では、吸引経路Kにおける管状部分を形成する吸引通路42c5を複数設けることにより、吸引通路42c5が1つである場合と比較して、吸引経路Kを多く確保することができるのみならず、吸引経路Kの始端であるリング状凹部42c4から終端である吸引用貫通孔42c3に亘って連続的に形成された広がった空間を通じて吸引する構成と比較して、第1回転軸53の軸心を中心とするリング状凹部42c4のうち相対的に吸引用貫通孔42c3から遠い位置に作用する吸引力を、リング状凹部42c4のうち相対的に吸引用貫通孔42c3に近い位置に作用する吸引力と同等な程度に維持することができ、吸引力の均等化、つまり吸引効率の向上を実現している。
【0097】
第2シール部材42cは、
図19に示すように、先端側上カバー42bの下面に取り付けられ、先端側上カバー42bを第2アーム要素のフレーム41に固定した状態で、第1シール部材53cの上方突出円環部53ctと、第2シール部材42cの下方突出円環部42ctが、第1回転軸53の径方向において僅かな隙間を介して連続するように相互に隣り合う。また、本実施形態では、第1回転軸53の回転動作に支障を来さないようにすべく、第1シール部材53cと第2シール部材42cが高さ方向においても相互に密着しないように、僅かな隙間を確保している。このような第1シール部材53と第2シール部材42cとの間において形成され且つ第1回転軸53の径方向において凹凸状の空隙S3(ジグザグに折れ曲がった形態の空隙S3)は、上方突出円環部53ct及び下方突出円環部42ctが第1回転軸53の径方向に僅かなあそびを介して相互に隣り合った断面串歯状をなす極めて狭い空隙(以下では、「ラビリンス状空隙S3」と称す)となり、高いシール機能を発揮する。
【0098】
また、本実施形態の多関節ロボット1では、上方突出円環部53ctと下方突出円環部42ctとの隙間であるラビリンス状空隙S3が、
図19に示すように、第1シール部材53cの上段部53c1の外周面と、第2シール部材42cの上段部用挿通孔42c1との空隙S4(以下では、「シール部材軸周り空隙S4」と称す)に連通し、このシール部材軸周り空隙S4が、第2シール部材42cの上向き面と先端側上カバー42bの下向き面との間に形成した吸引経路Kの始端、つまり、リング状凹部42c4に通じるように構成している。したがって、ラビリンス状空隙S3を通過し、さらに、シール部材軸周り空隙S4を通過した気体及びそれに含まれる粉塵は、吸引経路K(リング状凹部42c4、吸引通路42c5、吸引用貫通孔42c3)を通じて積極的に吸引される。
【0099】
なお、リング状凹部42c4は、
図19に示すように、先端側上カバー42bと、この先端側上カバー42bに近接する位置に配置した第1シール部材53cとの間に形成される僅かな隙間である狭小空隙S5(本発明における「共通の空隙」)にも連通し、この狭小空隙S5が、先端側上カバー42bと第1回転軸53との間に形成される第1回転軸周り空隙S2に連通しているため、ラビリンス状空隙S3を経由してリング状凹部42c4に到達した気体に含まれる粉塵が第1回転軸周り空隙S2を通じて外部であって且つクリーンルーム内におけるウェーハW近傍の空間へ放出される事態が懸念される。
【0100】
しかしながら、本実施形態において、ラビリンス状空隙S3を通過してリング状凹部42c4に到達した気体及びそれに含まれる粉塵は、吸引経路Kに沿って積極的に吸引されるため、リング状凹部42c4から先端側上カバー42bと第1シール部材53cとの隙間である狭小空隙S5に向かって粉塵が流れる事態を防止・抑制することができる。
【0101】
以上の構成により、第2アーム要素4の内部空間に存在する粉塵が、先端側上カバー42bと第1回転軸53との間において第1回転軸53周りに周回する第1回転軸周り空隙S2を通じて外部に放出される事態を防止・抑制することができる。
【0102】
上述の構成を採用した本実施形態の多関節ロボット1は、配線配管収容空間8Sにおいて下側ハンド配線配管CT(5)が摺動することによる粉塵が生じ、この粉塵が、収容ケース空隙S1から第2アーム要素4の内部空間に流出したとしても、第2アーム要素4の内部空間から第1回転軸周り空隙S2を通じて外部(クリーンルーム内)へ放出される事態を効果的に防止・抑制することが可能である。
【0103】
さらに、本実施形態では、第2シール部材42cを、上カバー42を構成する基端側上カバー42aと先端側上カバー42bとの接続部分を下方から被覆する位置に配置しているため、寸法誤差等に起因して基端側上カバー42aと先端側上カバー42bとの接続部分に隙間が生じた場合であっても、この隙間を第2シール部材42cによって封止することができ、この隙間から粉塵が外部(クリーンルーム内)へ放出される事態も防止・抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態の多関節ロボット1では、プーリ54を介して第1回転軸53を回転自在に支持する軸受54aを比較的下方に位置付けて、第2シール部材42c,第1シール部材53cから大きく離間した位置に軸受54aを配置していることから、粉塵の放出を一層抑制することも可能となっている。さらに、本実施形態の多関節ロボット1では、プーリ54を軸受54aよりもさらに下方に配置していることから、プーリ54と無端ベルト58との間での摺動に伴う粉塵の放出も、効果的に抑制することが可能となっている。
【0105】
そして、本実施形態の多関節ロボット1では、
図15及び
図19に示すように、上側ハンド6を一体回転可能に支持する第2回転軸63を、下側ハンド5の孔部51d、及び孔部51dに連通する第1回転軸53の貫通孔53aに挿通した状態において、第2回転軸63のスムーズな回転動作を可能にすべく、第2回転軸63の外周面と、下側ハンド5の孔部51d及び第1回転軸53の内周面(貫通孔53a)との間に空隙S6(以下では、「第2回転軸周り空隙S6」と称す)を形成している。また、第1回転軸53の下端に設けた上述のプーリ54と第2回転軸63の外周面との間にも第2回転軸周り空隙S6は形成されている。この第2回転軸周り空隙S6は、第2回転軸63周りに周回するリング状に形成され、且つプーリ54の下縁から孔部51dの上縁に至るまで高さ方向に延伸する。プーリ54と、第2回転軸63の下端に設けた上述のプーリ64とは、高さ方向に所定の空隙(以下では、「プーリ間空隙」と称す)を介して高さ方向に並び、プーリ間空隙がプーリ54,64の外周側において第2アーム要素4の内部空間に連通していることから、この第2回転軸周り空隙S6は、プーリ間空隙を介して第2アーム要素4の内部空間に連通する空隙である。以下の説明では、第2回転軸周り空隙S6のうち、第2回転軸63の外周面と第1回転軸53の内周面(貫通孔53a)との空隙を「軸間空隙S7」と称す。
【0106】
ここで、上側ハンド6と下側ハンド5との間には、
図19に示すように、各ハンド6,5の相対回転動作をスムーズに行えるように、高さ方向に所定寸法の空隙S8(以下では、「ハンド間空隙S8」と称す)が形成され、このハンド間空隙S8は、上述の第2回転軸周り空隙S6に連通する空隙である。したがって、第2回転軸63や、プーリ64を介して第2回転軸63を回転自在に支持する軸受64aから生じる粉塵が、第2回転軸周り空隙S6からハンド間空隙S8を通じて外部(クリーンルーム内)へ放出され得る。
【0107】
そこで、本実施形態の多関節ロボット1では、軸間空隙S7を上昇する気体に含まれる粉塵がハンド間空隙S8から外部へ放出される事態を回避すべく、
図19に示すように、第1回転軸53として、軸間空隙S7に連通し且つ第1回転軸53の径方向に直線状に延伸する通気孔535を放射状に複数有するものを適用し、通気孔535を上述の吸引経路Kに連通させている。本実施形態では、
図21(同図は、第2アーム要素4の先端部4bのうち通気孔535を通る所定高さ位置で切断した状態を模式的に示す図であり、同図では第1シール部材53c及び第2シール部材42cを省略している)に示すように、第1回転軸53のうち、上述の上端側鍔部532に複数の通気孔535を形成している。周方向における通気孔535同士の間隔は均等であってもよいが、本実施形態では周方向においてランダムな間隔で計11本の通気孔535を形成している。特に、本実施形態の第1回転軸53では、上端側鍔部532の所定箇所に上述の引込孔53bを形成しているため、この引込孔53bを形成した領域に対して第1回転軸53の軸心を挟んで対向する部分に形成する通気孔535の数を、他の領域よりも多く設定している。
【0108】
通気孔535を有する第1回転軸53の回転動作によって、各通気孔535における気流は、第1回転軸53の径方向に沿って内周から外周へ向かう流れになる。各通気孔535は、
図19に示すように、内周側において、第2回転軸63の外周面と第1回転軸53の貫通孔53aとの隙間である軸間空隙S7に連通し、外周側において、上端側鍔部532の突出固定部534に固定した第1シール部材53cと先端側上カバー42bとの隙間である上述の狭小空隙S5に連通している。ここで、狭小空隙S5は、第2シール部材43cと先端側上カバー42bとの間で形成される吸引経路Kの始端、つまり、リング状凹部42c4に連通している。したがって、通気孔535は、狭小空隙S5を介して吸引経路Kに連通している。そして、本実施形態の多関節ロボット1では、吸引経路Kの圧力を下げていることによって、軸間空隙S7から通気孔535を経由して狭小空隙S5に到達した気体及びその気体に含まれる粉塵を吸引経路Kに積極的に吸引することができる。
【0109】
このような構成を採用した本実施形態の多関節ロボット1によれば、第2アーム要素4の内部で生じる粉塵を、軸間空隙S7、通気孔535、狭小空隙S5、リング状凹部42c4、吸引通路42c5をこの順で流れる気体と共に吸引用貫通孔42c3(吸引ノズルN)に吸引することができ、上側ハンド6と下側ハンド5との間で形成されるハンド間空隙S8から外部への粉塵の放出を防止・抑制することが可能である。
【0110】
なお、上述したように、第1シール部材53cと先端側上カバー42bとの隙間である狭小空隙S5は、先端側上カバー42bと第1回転軸53との間に形成される第1回転軸周り空隙S2に連通している。したがって、軸間空隙S7及び通気孔535を経由して狭小空隙S5に到達した気体及びそれに含まれる粉塵が、第1回転軸周り空隙S2を通じて外部へ放出される事態が懸念される。しかしながら、狭小空隙S5は、吸引経路Kの始端であるリング状凹部42c4に連通しているため、軸間空隙S7及び通気孔535を経由して狭小空隙S5に到達した気体及びそれに含まれる粉塵は、吸引経路Kに沿って積極的に吸引され、第1回転軸周り空隙S2から粉塵が放出される事態を防止・抑制することができる。
【0111】
また、本実施形態では、軸間空隙S7に沿って上昇した気体が、通気孔535に向かって流れ易くするように、気体の流れ方向に沿って見た通気孔535の開口面積を、軸間空隙S7のうち少なくとも通気孔535が交差する部分における気体の流れ方向に沿って見た開口面積よりも大きく設定している。さらに、軸間空隙S7のうち、通気孔535が交差する部分よりも上方の部分における気体の流れ方向に沿って見た開口面積を、他の部分よりも小さく設定する(狭める)ことによって、軸間空隙S7に沿って上昇した気体が、通気孔535に向かってより一層流れ易くなるように構成している。
【0112】
さらにまた、本実施形態の多関節ロボット1では、ラビリンス状空隙S3及び軸間空隙S7の両方が直接又は他の空隙を通じて共通の吸引経路Kに連通するように構成しているため、ラビリンス状空隙S3に連通する吸引経路Kと、軸間空隙S7に連通する吸引経路Kとを別々に設ける態様と比較して、吸引経路K毎に必要な吸引ノズル及び吸引配管の組み合わせ数が1つで足りることになり、構造の簡素化を図ることができるとともに、吸引配管が増えることに起因するアーム要素4や各ハンド5,6の回転動作時の抵抗の増加や配管の引き回し処理の煩雑化を解消することが可能である。
【0113】
また、第2アーム要素4の内部において、駆動機構5R,6Rや軸受54a,64aの転がりや摺動に伴って生じる粉塵、或いはプーリ54,64と無端ベルト58,68との間での摺動に伴って生じる粉塵は、駆動機構5R,6R等の駆動によって暖められた上昇気流になる気体と共に上方へ、つまりハンド5,6に向かって流れる。このような粉塵を含む気体の流れは、第2アーム要素4の先端部4bにおいて上述のラビリンス状空隙S3又は軸間空隙S7に進入しようとする流れとなる。このうち、第2要素4の先端部4bにおいて軸間空隙S7に向かう流れは、
図9及び
図15に示すように、第1回転軸53に取り付けたプーリ54と第2回転軸63に取り付けたプーリ64との隙間、及び第1回転軸53と第2回転軸63との隙間を通過する流れになる。本実施形態では、高さ方向に対向するプーリ54の下向き面とプーリ64の上向き面との間の隙間、及び高さ方向に対向する第1回転軸53の下向き面と第2回転軸63の上向き面との間の隙間を、それぞれ部分的に狭めるラビリンス構造を採用している。
【0114】
具体的には、高さ方向に対面するプーリ54,64同士の間に第1ラビリンス形成部材9(A)を配置し、高さ方向に対面する第1回転軸53と第2回転軸63との間に第2ラビリンス形成部材9(B)を配置している。各ラビリンス形成部材9(A),9(B)は、ラビリンス形成部材9(A),9(B)を配置する隙間において高さ方向に向かい合う面のうち相対的に上方の面(第1回転軸53に取り付けたプーリ54の下向き面、第1回転部材53の下向き面)に接触する円環状の平板円環部と、平板円環部の内周縁から下方に垂下させた内周側垂下片と、平板円環部の外周縁から下方に垂下させた外周側垂下片とを一体に備えものである。このような各ラビリンス形成部材9(A),9(B)を、内周側垂下片及び外周側垂下片の下端が、ラビリンス形成部材9(A),9(B)を配置する隙間において高さ方向に向かい合う面のうち相対的に上方の面(第2回転軸63に取り付けたプーリ64の上向き面、第2回転部材63の下向き面)に近接する位置に取り付けることによって、プーリ54,64の外周側から内周側に向かって延伸するプーリ54,64同士の隙間を部分的に狭めたり、プーリ54,64同士の隙間と軸間空隙S7との間に形成される隙間を部分的に狭めることができる。
【0115】
本実施形態では、各ラビリンス形成部材9(A),9(B)の平板円環部に、所定ピッチで複数のネジ孔を形成し、このネジ孔に下方から挿入したボルトによって、各ラビリンス形成部材9(A),9(B)を、プーリ54や第1回転軸53に固定している。特に、高さ方向に対向するプーリ54の下向き面とプーリ64の上向き面との間の隙間に配置するラビリンス形成部材9(A)に関しては、このラビリンス形成部材9(A)を固定するボルトによってプーリ54を第1回転軸53に固定することもできる。なお、各ボルトのボルト頭は、内周側垂下片及び外周側垂下片の下端よりも高い位置に収まり、径方向においてこれら内周側垂下片及び外周側垂下片によって被覆されている。したがって、各ラビリンス形成部材9(A),9(B)は、スペーサとして機能するとともに、ボルトカバーとしても機能する。
【0116】
このような各ラビリンス形成部材9(A),9(B)を配置することによって、第2アーム要素4の先端部4bにおいてプーリ54,64同士の隙間から軸間空隙S7に向かって気体及びそれに含まれる粉塵が流れ難くなり、結果として、軸間空隙S7を経由して上側ハンド6と下側ハンド5との間のハンド間空隙S8を通じて粉塵が外部へ放出する事態をより一層高い確率で防止・抑制することができる。
【0117】
以上に述べた外部への粉塵の放出を防止・抑制可能な構成を有する本実施形態に係る多関節ロボット1において、特に、第1回転軸53に、第1回転軸53の貫通孔53aと第2回転軸63の外周面との隙間である軸間空隙S7に連通し且つ第1回転軸53の径方向に直線状に延伸する通気孔535を放射状に複数形成し、各通気孔535を、第2アーム要素4の内部に形成した吸引経路Kに狭小空隙S5を介して連通させているため、軸間空隙S7の下端から上端に向かって上昇する気体及びそれに含まれる粉塵は、吸引経路Kに連通して負圧となっている通気孔535に流れることになり、軸間空隙S7の上端からさらにハンド5,6側へ粉塵を含む気体が流れることを防止・抑制することができる。
【0118】
さらに、本実施形態の多関節ロボット1は、第1回転軸53の回転の遠心力により、通気孔535における気流を内周から外周に向かう流れにすることができ、このような気流となる通気孔535を放射状に複数して形成していることによって、第2回転軸63の外周面を周回する軸間隙間S7から通気孔535へ通過して吸引経路Kに向かうスムーズな流れを簡単な構成で実現することができ、気体及びそれに含まれる粉塵を効率良く吸引することができる。
【0119】
特に、本実施形態の多関節ロボット1は、配線配管収容部8の内部空間8Sをラビリンス状空隙S5及びシール部材軸周り空隙S4を介して吸引経路Kに連通させる構成であるため、配線配管収容部8の内部で生じた粉塵が配線配管収容部空間8Sから第アーム要素4の内部に流れ出た場合であっても、その粉塵を、配線配管収容空間8の直上に形成したラビリンス状空隙S3によって、さらに上方へ流れていくことを防止・抑制することができ、たとえ粉塵がラビリンス状空隙S3を通過したとしても、吸引経路Kを通じて吸引して、所定の排出先へ排出することができ、多関節ロボット1の外部に放出された粉塵がウェーハWに付着したり、クリーンルームのクリーン度を低下させる事態を回避することができる。
【0120】
加えて、本実施形態の多関節ロボット1では、配線配管収容空間8Sが連通する吸引経路Kと、第1回転軸53に形成した通気孔535が連通する吸引経路Kとを共通のものに設定しているため、例えば配線配管収容空間8Sが連通する吸引経路と、通気孔535が連通する吸引経路とを第2アーム要素4の内部に個別に設ける構成と比較して、構造の単純化を図ることができるとともに、吸引に要するパーツ(吸引ノズルNや吸引配管)の数を最小限に抑えることができ、コスト面においても有利である。
【0121】
また、本実施形態の多関節ロボット1では、第1回転軸周り空隙S2及び各通気孔535が、アーム要4素の内部における共通の狭小空隙S5を介して吸引経路Kに連通するように構成しているため、第2アーム要素4の内部の気体及びそれに含まれる粉塵が、第1回転軸周り空隙S2に到達するよりも前に、吸引経路Kに連通している狭小空隙S5に到達することによって、第1回転軸周り空隙S2に向かわずに、吸引経路Kに向かう気流に乗って吸引され、第1回転軸周り空隙S2を通じて多関節ロボット1の外部に放出される事態を回避することができる。
【0122】
さらに、本実施形態に係る多関節ロボット1では、終端を1箇所で集合させた吸引経路Kとし、吸引経路Kのうち終端から始端側に向かって延伸する複数の管状部分を分岐させて形成した構成を採用しているため、実際の吸引に必要なパーツである吸引ノズルNや吸引配管の組み合わせ数を最小限に抑えることができ、部品点数の削減及びコスト面において有利であるとともに、第1回転軸53に形成した各通気孔535から吸引経路Kの始端(リング状凹部42c4)に到達した気体を、広がった共通の空間における所定の1箇所に設定した集合させた終端で吸引する場合であれば生じる不具合、つまり、その吸引経路を構成する空間の広さが広いほど、吸引経路の終端から遠い位置での吸引力が吸引経路の終端から近い位置での吸引力よりも大きく低下するという不具合を解消することができ、複数に分岐された狭い空間である各管状部分における吸引力をできるだけ均等にすることが可能となり、このような各管状部分を経由して1箇所に集合する終端で効率良く吸引することができる。特に、本実施形態では、凹溝状の吸引通路42c5と、吸引通路42c5を上方から被覆する第2アーム要素4の上カバー42とによって仕切られた管状の空間を簡単に形成することができる。
【0123】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1回転軸に形成する各通気孔が、アーム要素の内部に形成した吸引経路に直接するように構成することも可能である。
【0124】
また、配線配管収容部の内部空間を吸引経路に直接連通させる構成であっても構わない。この場合、配線配管収容部の内部空間が連通する吸引経路と、各通気孔が連通する吸引経路とを別々にアーム要素の内部に設けた構成を採用することができる。
【0125】
上述した実施形態では、第2シール部材に形成したリング状凹部、吸引通路、及び吸引用貫通孔と、これらを上方から被覆するアーム要素の上カバーとによって仕切られた空間を吸引経路として活用する態様を例示したが、吸引通路の本数を増減させたり、リング状凹部、吸引通路、吸引用貫通孔の形状を変更したり、何れかを省略したり、或いは他の部分を追加して吸引経路を形成する等、仕様等に応じて適宜設計変更することが可能である。
【0126】
さらにはまた、配線配管収容部の具体的な構成も適宜変更することができ、例えば収容ケースの底壁の上向き面のみによって配線配管収容部の底面を構成する態様を採用したり
、配線配管収容部の底面全体をフラットに形成した態様(内輪部分及び外輪部分をテーパ形状に設定しない態様)を採用することもできる。
【0127】
また、アーム要素の数を適宜増減させるように変更して構成することも可能である。
【0128】
また、本発明に係る多関節ロボットを、ウェーハ以外の物品をワークとして取り扱うロボットとすることも可能である。
【0129】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。