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特開2015-123561ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-123561(P2015-123561A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20150609BHJP
【FI】
   B24B37/00 D
   B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-271103(P2013-271103)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】板倉 慧
(72)【発明者】
【氏名】三隅 宝
【テーマコード(参考)】
3C058
【Fターム(参考)】
3C058AA07
3C058AC01
3C058CA06
3C058CB03
3C058CB10
3C058DA11
(57)【要約】
【課題】研磨により過熱する研磨ホイールの温度を磁石の磁束密度が低下する温度以下に制御するガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置を提供する。
【解決手段】ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールを回転させ、研磨スラリーと端面とを接触させて、端面を研磨する研磨工程と、研磨により過熱する研磨ホイールの温度が、一対の磁石の磁束密度が低下する温度以下となるよう研磨ホイールを冷却する冷却工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
磁力体に保持された磁性体を含む研磨スラリーを一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールを回転させ、前記研磨スラリーと前記端面とを接触させて、前記端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨により過熱する前記研磨ホイールの温度が、前記一対の磁石の磁束密度が低下する温度以下となるよう前記研磨ホイールを冷却する冷却工程と、を備える、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記一対の磁石は、少なくともネオジムを含有し、
前記冷却工程では、前記研磨により過熱するネオジムを冷却する、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨スラリーは、水を含有し、
前記冷却工程では、前記研磨スラリーに含有される水の割合が10%〜30%となるよう冷却する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造装置であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールと、
前記研磨ホイールを回転駆動させ、前記研磨スラリーと前記端面とを接触させて、前記端面を研磨する駆動部と、
前記研磨により過熱する研磨ホイールの温度が、前記一対の磁石の磁束密度が低下する温度以下となるよう前記研磨ホイールを冷却する冷却部と、を備える、
ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板の製造工程は、ガラス基板を切断して形成される端面を面取りする工程を含む。端面の研磨加工技術としては、特許文献1に記載されるように、ガラス基板の端面の研磨加工に磁性体を含む研磨スラリーを用いて、端面を鏡面状に研磨する技術が知られている。この研磨加工技術では、磁性体粉と非磁性体の水分(液体)を含む遊離砥粒とを含むスラリー状の磁性流体である研磨スラリーを、一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールが用いられる。ガラス基板の端面を研磨スラリーに接触させた状態で、端面と研磨スラリーとを相対的に移動させることで、端面を研磨している。
【0003】
研磨スラリーを用いて端面の研磨を長時間続けると、端面と研磨スラリーとの摩擦により研磨ホイールが過熱し、熱によって研磨ホイールが保持する磁石の磁束密度が低下し、研磨効率が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/067587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、研磨により過熱する研磨ホイールの温度を、磁石の磁束密度が低下する温度以下に制御するガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
磁力体に保持された磁性体を含む研磨スラリーを一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールを回転させ、前記研磨スラリーと前記端面とを接触させて、前記端面を研磨する研磨工程と、
前記研磨により過熱する前記研磨ホイールの温度が、前記一対の磁石の磁束密度が低下する温度以下となるよう前記研磨ホイールを冷却する冷却工程と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記一対の磁石は、少なくともネオジムを含有し、
前記冷却工程では、前記研磨により過熱するネオジムを冷却する、ことが好ましい。
【0008】
前記研磨スラリーは、水を含有し、
前記冷却工程では、前記研磨スラリーに含有される水の割合が10%〜30%となるよう冷却する、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様は、ガラス基板の端面を研磨してガラス基板を製造するガラス基板の製造装置であって、
磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを一対の磁石の間の空間に保持する研磨ホイールと、
前記研磨ホイールを回転駆動させ、前記研磨スラリーと前記端面とを接触させて、前記端面を研磨する駆動部と、
前記研磨により過熱する研磨ホイールの温度が、前記一対の磁石の磁束密度が低下する温度以下となるよう前記研磨ホイールを冷却する冷却部と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、研磨により過熱する研磨ホイールの温度を磁石の磁束密度が低下する温度以下に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガラス基板の端面を研削する方法を示す図である。
図2】実施形態1にかかる研磨装置の構成を示す図である。
図3】(a)は、ガラス基板の端面加工を説明するための図であり、(b)は、(a)のII−II線に沿う断面図である。
図4】研磨時間と研磨ホイールの温度との関係を示す図である。
図5】研磨ホイールの温度と研磨ホイールが備えるネオジム磁石の残留磁束密度の残存率との関係を示す図である。
図6】研磨ホイールの変形例1を示す図である。
図7】研磨ホイールの変形例2を示す図である。
図8】実施形態2にかかる研磨装置の構成を示す図である。
図9】端面を研磨する時の駆動部の駆動時間と駆動部に流れた電流値との関係を示す図である。
図10】駆動部が駆動して研磨が繰り返されたことにより、駆動部に流れる電流が変化した状態を示す図である。
図11】検出部が検出した電流値と研磨スラリーが含む液体の量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本実施形態のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置について説明する。
ガラス基板の製造方法は、熔解工程と、清澄工程と、均質化工程と、供給工程と、成形工程と、徐冷工程と、切断工程と、研削工程と、研磨工程と、を主に有する。この他に、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0013】
ガラス基板の製造装置は、主に熔解装置と、成形装置と、切断装置と、を有する。熔解装置は、熔解槽と、清澄槽と、攪拌槽と、ガラス供給管と、を有する。
熔解工程では、熔解槽内に供給されたガラス原料を、火焔および電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程は、ガラス供給管、清澄槽において主に行われ、清澄槽内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれるO等の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程では、ガラス供給管を通って供給された攪拌槽内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程では、ガラス供給管を通して熔融ガラスが成形装置に供給される。
【0014】
成形装置では、成形工程及び徐冷工程が行われる。
成形工程では、熔融ガラスをシート状ガラスに成形し、シート状ガラスの流れを作る。シート状ガラスの成形方法として、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、フロート法、リドロー法等が挙げられる。徐冷工程では、成形されて流れるシート状ガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように冷却される。
切断工程では、切断装置において、成形装置から供給されたシート状ガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、コーナーカット及びガラス主面の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0015】
ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板(例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板)、カバーガラスや磁気ディスク用などの強化ガラス用ガラス基板、ロール状に巻き取られるガラス基板、半導体ウエハ等の電子デバイスが積層されたガラス基板が挙げられる。また、ガラス基板を保護するための所定の保護膜が形成されたガラス基板、アクリル板、ポリカーボネート板でもよい。
【0016】
次に、所定のサイズに切断されたガラス基板を研削する研削工程について説明する。図1は、ガラス基板Gの端面を研削する方法を示す図である。研削工程では、ガラス基板Gの端面を、研削ホイールを所定の速度で回転させながら研削を行う。研削装置30は、ガラス基板Gの両端面が、図示しない回転軸により自転する第1研削ホイール31と第2研削ホイール32とに接触するように、ガラス基板Gを移動させる。研削装置30は、第1研削ホイール31と第2研削ホイール32とを回転させ、ガラス基板Gの長辺側の端面33を加工した後、短辺側の端面33が第1研削ホイール31と第2研削ホイール32と接触するように、ガラス基板Gを移動、回転させ、短辺側の端面33を加工する。研削ホイールは、ダイヤモンドホイール等の公知のものが用いられ、特に制限されない。
【0017】
次に、ガラス基板Gの端面33を研磨する研磨工程について説明する。長辺側、短辺側のガラス基板の端面33の研削を終えたガラス基板Gが、研磨装置による研磨を行う位置まで搬送され、研磨装置を用いてガラス基板Gの端面33について鏡面研磨が行われる。図2は、本実施形態にかかる研磨装置40の概略図である。また、図3(a)は、ガラス基板Gの端面加工を説明するための図であり、図3(b)は、図3(a)のII−II線に沿う断面図である。研磨装置40は、磁力体に保持された磁性体と液体とを含む研磨スラリーを保持する研磨ホイール36と、研磨ホイール36を回転駆動させる駆動部(モータ)41と、研磨ホイール36及び/又は研磨スラリーの温度を測定するに測定部42と、測定部42が測定した温度を判定する判定部43と、研磨ホイール36を冷却する冷却部44と、を備える。
ここで、磁性体を含む研磨スラリーとは、磁性体が主として研磨砥粒として作用する磁性体砥粒や、磁性体が主として研磨砥粒を運ぶためのキャリアとして働く磁性流体を含むものである。例えば、研磨スラリーは、磁性粒子(カルボニル鉄、酸化鉄、窒化鉄、炭化鉄、二酸化クロム、低炭素鋼、ケイ素鋼、ニッケル、コバルト、及び/又は、これらの組合せ)、非磁性砥粒(酸化セリウム、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア、ダイヤモンド、及び/又は、これらの組合せ)、界面活性剤、及び/又は、腐食防止剤を、含んでもよい。
また、液体とは、水、炭化水素、エステル類、エーテル類、フッ化水素、鉱油、合成油、プロピレングリコール、及び/又は、エチレングリコールを含むものである。また、液体は、水を主成分とし、炭化水素、エステル類、エーテル類およびフッ化水素等が添加された液体であってもよい。
また、磁性体砥粒の粒子形状は、例えば、球状、角部を有する不定形状であってもよく、また、磁性体砥粒の粒子径は、粒子形状によって任意変更できる。
【0018】
まず、研磨装置40は、ガラス基板Gを図示しないステージ上に移動させて、ガラス基板Gの端面33が研磨スラリーを有する研磨ホイール36に接触するよう搬送する。次に、研磨装置40は、駆動部41を駆動させて、回転軸35を中心として研磨ホイール36を回転させる。研磨ホイール36は、例えばネオジム、鉄、ホウ素等を含む永久磁石及び電磁石等の磁石から構成され、回転軸35の長さ方向に平行に設けられた円盤状の磁力体36a、36bの隙間(磁場形成部ともいう)に磁性体砥粒37(研磨メディア、研磨スラリーともいう)が設けられて構成されている。ここでは、磁性体を含む研磨スラリーが用いられ、鏡面研磨される。磁力体36a、36bにより磁場がかけられた磁性体砥粒37に、ガラス基板Gの端部33が食い込んで、ガラス基板Gの端面33が磁性体砥粒37と接触した状態で研磨ホイール36が回転する。これにより、磁性体砥粒37とガラス基板Gの端面33とが相対的に移動して、ガラス基板Gの端面33が、磁場形成部の形成する磁場により拘束された磁性体砥粒37によって研磨される。なお、研磨工程では、磁性体を含む研磨スラリーを用いた公知の手法でガラス基板Gの端面を研磨することができ、また、特願2013−065191号に記載される内容を含み、当該内容が参酌される。
【0019】
次に、図2に示す研磨装置40の動作について説明する。
駆動部41は、モータ等から構成され、ユーザからの指示に基づいて研磨ホイール36を回転駆動させる。研磨ホイール36は、図3(b)に示すように、一対の磁力体36a、36bに挟まれた磁性体と液体とを含む研磨スラリー(磁性体砥粒37)を有し、磁力体36a、36bの表面を覆って、磁力体36a、36bを冷却する冷却部40が設けられている。また、研磨ホイール36は、駆動部41からの指示に基づいて、回転駆動し、研磨スラリーとガラス基板Gの端面33とを接触させて、端面33を鏡面研磨する。研磨ホイール36が回転駆動することにより、端面33の研磨が繰り返されると、端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗により、端面33と研磨スラリーとが過熱され、研磨スラリーが含む液体、及び、過熱された研磨スラリーから熱が伝わり研磨ホイール36も加熱される。研磨スラリーが含む液体の温度及び研磨ホイール36の温度は、研磨によりともに上昇し、温度上昇によって研磨効率が低下するため、どちらの温度も所定の基準値以下にする必要がある。以下では、研磨ホイール36の温度を制御することにより、研磨スラリーが含む液体の温度も制御できるため、研磨ホイール36の温度を制御する方法について説明する。図4は、研磨時間と研磨ホイール36の温度との関係を示す図である。同図に示すように、冷却部44が冷却を開始する時間tより前では、研磨時間が長くなると摩擦抵抗による加熱量が増大し、研磨ホイール36の温度が上がっていく。
【0020】
ここで、加熱される研磨ホイール36(磁力体36a、36b)はネオジム磁石等から構成されるが、ネオジム磁石には、熱によって磁束密度が低下していく減磁が見られる。減磁による研磨効率の低下を防ぐために、研磨ホイール36の温度を研磨に適した温度となるように制御する必要がある。図5は、研磨ホイール36の温度と研磨ホイール36が備えるネオジム磁石の残留磁束密度の残存率との関係を示す図である。残留磁束密度の残存率とは、研磨ホイール36を加熱する前の残留磁束密度を100%とした場合の加熱後の残留磁束密度の割合である。同図に示すように、研磨ホイール36の温度を上げていき、研磨ホイール36の温度が温度T以上になると磁束密度が低下していく減磁が見られる。このため、研磨ホイール36が備える磁石の磁束密度が低下する温度未満、すなわち、研磨ホイール36の温度が温度T未満となるように、研磨ホイール36を冷却する必要がある。なお、温度Tは、研磨ホイール36が備えるネオジム磁石の分量、磁石の組成方法等によって磁束密度が低下していく温度が異なるため、任意である。
【0021】
測定部42は、例えば、測温抵抗体の温度センサー、熱電対の温度センサー、熱膨張式の温度センサー、赤外線測定方式の温度センサー等から構成され、研磨ホイール36の温度を測定する。測定部42は、例えば、研磨ホイール36が備える磁力体36a、36bの表面、内部の一地点又は複数地点の温度を測定し、測定した温度情報を判定部43に渡す。なお、測定部42が温度を測定する位置、位置数は任意であり、研磨スラリーの温度を測定することもできる。
【0022】
判定部43は、測定部42が測定した温度に基づいて、後述する冷却部44により研磨ホイール36を冷却するか否かを判定し、判定結果を冷却部44に渡す。図5に示すように、研磨ホイール36の温度が温度T以上になると減磁していくため、判定部43は、測定部42が測定した温度が温度T未満であるか否かを判定する。判定部43が判定する温度は任意であり、例えば、測定部42が測定した一地点の温度でもよく、複数地点の温度の平均値、最高値、最低値でもよい。
【0023】
冷却部44は、例えば、冷媒が流れる冷却管、ヒートシンク、冷却ファン、ペルティエ素子等から構成され、研磨ホイール36から熱を吸収し、研磨ホイール36を冷却する。冷却部44は、判定部43が研磨ホイール36の温度が温度T以上である、つまり温度T未満でないと判定した場合、研磨ホイール36の冷却を開始する。冷却部44が冷却を開始すると、研磨ホイール36の温度は低下していく。図4に示すように、研磨ホイール36の冷却を開始した時間t以降では、研磨ホイール36の温度は、図4の点線で示した温度とはならず、図4の実線で示した温度となる。このため、研磨ホイール36の温度が減磁していく温度以下となるため、研磨ホイールの磁束密度を一定に保つことができ、研磨効率の低下を防ぐことができる。また、研磨ホイール36を冷却することにより、研磨ホイール36と接触する研磨スラリー、研磨スラリーと接触するガラス基板Gの端面33を冷却することができるため、端面33のヤケを防ぐことができる。また、研磨スラリーが含む液体も冷却することができるため、液体の揮発を抑制することもできる。
【0024】
冷却部44は、研磨ホイール36を一定時間冷却した後、冷却を停止する。なお、冷却部44が冷却を停止するタイミングは任意であり、研磨ホイール36の温度が所定の温度(例えば、測定開始時の温度、300K)以下になった場合、冷却を開始してから所定の時間が経過した場合に、冷却を停止することもできる。なお、冷却部44は、研磨ホイール36の温度が一定になるように、研磨ホイール36を冷却し続けることもできる。また、冷却部44は、研磨ホイール36を冷却することにより、研磨スラリー及び研磨スラリーが含む液体を冷却することもできる。研磨スラリーが含む液体は、上述したように主に水であり、水が揮発するのを防止するために、冷却部44は、研磨スラリーの温度を100度以下になるよう冷却することもできる。
【0025】
以上説明したように、長時間研磨しても製品不良が起きないようにすることができる。また、研磨ホイールの磁束密度の低下を防ぐことができるため、研磨効率を一定に維持することができる。また、研磨スラリーに含まれる液体の揮発を抑制することができるため、研磨スラリーの粘度を、研磨に適した粘度に維持することができる。
【0026】
(変形例1)
図6は、研磨ホイール36の変形例1を示す図である。なお、上述と共通する構成については説明を省略する。
変形例1の研磨ホイール36は、磁力体36a、36bの側面側に冷却部44を備えている。冷却部44を研磨スラリーに近い位置に設けることにより、研磨ホイール36だけでなく、研磨スラリーについても急速に冷却することができる。このようにすることで、研磨スラリーに含まれる水等の成分が揮発することを抑制でき、研磨スラリーの粘度を、研磨に適した粘度に維持することができる。
【0027】
(変形例2)
図7は、研磨ホイール36の変形例2を示す図である。なお、上述と共通する構成については説明を省略する。
変形例2の研磨ホイール36は、回転軸35、磁力体36a、36bの内部に冷却部(冷却管)44を備えている。この冷却管44には冷却液、冷却気体が流れ、冷却液等を循環させることにより、冷却管44を冷却し、冷却管44に接した回転軸35、磁力体36a、36bを冷却することができる。このようにすることで、磁力体36a、36b全体を冷却することができるため、研磨ホイール36を効率よく冷却することができる。
【0028】
(実施形態2)
次に、研磨ホイール36を冷却すること加えて、研磨スラリーに液体を供給することにより、研磨スラリー及び研磨ホイール36を冷却する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0029】
図8は、実施形態2にかかる研磨装置の構成を示す図である。研磨装置40は、冷却部44等に加えて、研磨スラリー及び/又は研磨ホイール36に液体を供給する供給部45と、研磨ホイール36の回転駆動の負荷を検出する検出部46と、を備える。
【0030】
供給部45は、液体を蓄えるタンクと、研磨スラリー及び/又は研磨ホイール36に液体を供給するノズルとを備える。供給部45は、液体の量が所定の基準量になるよう研磨スラリーに液体を供給し、研磨スラリーの粘度を調整する。ここで、所定の基準量とは、研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%をいい、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に維持できる液体の量である。液体を含む研磨スラリーを保持する研磨ホイール36が回転駆動すると、ガラス基板Gの端面33と研磨スラリーとの摩擦により研磨スラリーが過熱し、研磨スラリーに含まれる液体が揮発することにより、液体が減少していく。液体が減少すると研磨スラリーの粘度が上昇し、端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が増すため、端面33にキズが発生する場合がある。また、摩擦抵抗によって端面33の温度が上昇することにより、端面33の一部でヤケが発生する可能性もある。さらに、研磨ホイール36に含まれるネオジムは、熱によって磁力が低下する熱減磁を生じやすいため、研磨ホイール36の温度が上昇すると、磁力が低下して研磨効率が低下する場合がある。このため、供給部45は、液体の量が所定の基準量になるよう、研磨スラリーの粘度が一定の範囲内となるよう、また、研磨スラリー、端面33、研磨ホイール36の温度が一定温度以上に上昇しないよう、液体を供給する。
なお、所定の基準量は、研磨スラリーに含まれる液体の割合が10%〜30%に限定されず、10%未満でもよく、30%を超えてもよい。液体の割合が10%〜30%である場合、研磨スラリーがペースト状になり、磁力体36a、36bの隙間(磁場形成部)に磁場が形成されていない状態、すなわち、磁場による拘束がない状態であっても、磁場形成部において形状を保持することができる。
【0031】
検出部46は、研磨ホイール36が回転する負荷を検出するセンサー等を備える。検出部46は、例えば、研磨ホイール36を回転駆動させる駆動部41に流れた電流値を検出し、判定部43は、検出部46が検出した電流値を記録し、電流値の変化量に基づいて、液体を供給するタイミングを判定する。この電流値は、研磨ホイール36にかかる負荷の程度によって変化する。研磨ホイール36が端面33に接触していない状態、つまり、非研磨時では、研磨ホイール33に負荷がかかっていないため、駆動部41には定常状態の電流が流れる。一方、研磨ホイール36が端面33に接触した状態、つまり、研磨時では、研磨ホイール33に負荷がかかるため、この負荷がかかった状態であっても研磨ホイール33を回転させるために、駆動部41には定常状態より電流が流れる。このため、研磨時の電流値は、非研磨時の電流値より高くなる。判定部43は、このように変化する電流値を記録することにより、電流値の履歴を作成する。そして、判定部43は、検出部46が検出した電流値、電流値の履歴に基づいて、研磨時、非研磨時を判定する。例えば、判定部43は、検出部46が検出した電流値がほぼ0又は履歴の最大電流値(電流値のピーク)より一定値以上小さい場合、非研磨時と判定し、検出した電流値が履歴の最大電流値とほぼ等しい又はより大きい場合、研磨時と判定する。
【0032】
図9は、端面33を研磨する時の研磨ホイール36を駆動させる駆動部41の駆動時間と駆動部41に流れた電流値との関係を示す図である。また、図10は、駆動部41が駆動して研磨が繰り返されたことにより、駆動部41に流れる電流が変化した状態を示す図である。図9、10を参照しながら、電流値の変化について説明する。まず、駆動部41に電流が流れると研磨ホイール36が回転し始める。回転直後は非研磨時であるため駆動部41には一定(定常状態)の電流が流れている。そして、ガラス基板Gが搬送されて、研磨ホイール33が端面33を研磨し始めると、研磨ホイール33への負荷が増すため、駆動部41には非研磨時より多くの電流が流れる。ガラス基板Gが搬送されて研磨が終了すると、駆動部41に流れる電流は定常状態に戻るため、研磨時より電流値が下がる。非研磨、研磨を繰り返し、端面33の研磨が終了すると、駆動部41に流す電流が止められて、研磨ホイール36の回転が停止する。本実施形態では、ガラス基板Gを搬送方向に搬送しながら研磨を行った後、ガラス基板Gを搬送方向と反対方向に搬送しながら研磨を行うことで、ガラス基板Gが一往復して端面33は2回研磨されるため、研磨時が2回ある。ここで、判定部43は、検出部46が検出した電流値に基づいて、研磨時、非研磨時を判定する。判定部43は、検出部46が検出した電流値が、0であるとき及び最大電流値より低く定常状態であるとき、非研磨時と判定する。また、判定部43は、検出部46が検出した電流値が、履歴の最大電流値とほぼ等しいとき及び履歴の最大電流値より大きいとき、研磨時と判定する。図9において、判定部43は、電流値が、0及び最大電流値より小さい値を示す3つの時期を非研磨時と判定し、電流値がピークにある2つの時期を、研磨時と判定する。
【0033】
研磨が繰り返されると、研磨スラリーが摩擦抵抗により発熱することにより、研磨スラリーが含む液体が揮発し、液体の量が減少していく。研磨スラリーが含む液体の量が減少すると研磨スラリーの粘度が上昇し、端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が増す。摩擦抵抗が増すことにより端面33にキズが発生する可能性があり、また、摩擦熱の増大により端面33の一部でヤケが発生する可能性もある。また、熱によって研磨ホイール36の磁力が低下して研磨効率が低下する場合もある。このため、研磨スラリーが含む液体の量が所定の基準量となるよう制御する必要がある。液体の量は、駆動部41に流れる電流値を検出することにより、検出(測定)される。この電流値は、研磨時、非研磨時によって変化するが、研磨スラリーの粘性、つまり、液体の量によっても変化する。これは、液体の量によって端面33と研磨スラリーとの摩擦抵抗が変化するためであり、端面33の研磨時間、駆動部41の駆動時間が増えていくことによって、図10に示すように、駆動部41に流れる電流値(検出部46が検出する電流値)が大きくなっていく。ここで、判定部43は、例えば、電流値の履歴に基づいて、検出部46が検出した電流値が、履歴の最大電流値より一定値以上大きくなっているか否か、又は、研磨時の電流値を時間で積分することにより求まる電荷を、研磨を開始した直後の研磨時の電荷と比較して、一定値以上大きくなっているか否かを判定する。判定部43は、検出部46が検出した電流値が、履歴の最大電流値(例えば研磨直後の最大電流値)より一定値以上大きくなっている等と判定した場合、液体の量が減少して研磨スラリーの粘度が高くなったと判定できるため、供給部45を稼働させて、研磨スラリーに液体を供給する。判定部43の判定結果に基づいて、供給部45が研磨スラリーに液体を供給するため、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に維持されて、キズ及びヤケの発生を抑制することができる。また、液体を供給することにより、端面33、研磨スラリー、研磨ホイール36の過熱を抑制でき、研磨効率の低下を防止することができる。
【0034】
また、判定部43は、検出部46が検出した電流値から、研磨スラリーの粘度が研磨に適した粘度であるか否か、つまり、研磨スラリーが含む液体の量が所定の基準量であるか否かを判定する。研磨スラリーの粘度は、研磨スラリーが含む液体の量によって定まるが、この液体の量は、駆動部41の駆動時間(研磨時間)が増加していくと、また、研磨時における検出部46が検出する電流値が大きくなっていくと、当初の量より減少した量になっている。図11は、研磨時における検出部46が検出した電流値と研磨スラリーが含む液体の量との関係を示す図である。同図に示すように、駆動部41の駆動時間(研磨時間)が増えて、検出部46が検出する電流値が徐々に増加した場合、研磨スラリーが含む液体の量は徐々に減少する。液体の所定の基準量は研磨スラリーに含まれる割合の10%〜30%であり、液体が減少していくと、同図の点線に示すように、液体の量が所定の基準量から外れる。すると、研磨スラリーの粘度が研磨に適した粘度でなくなり、研磨効率が低下する。磁性体を含む研磨スラリーを用いた一般的な研磨では、研磨スラリーが含む液体(水)の割合は30%以上である。このような場合、研磨によって液体が揮発しても、研磨スラリーの粘度変化は小さく、また、液体が冷却剤の役割を果たしているため、研磨スラリーの温度及び研磨ホイールの温度も上昇しにくい。このため、液体の減少による研磨効率の低下は緩やかである。これに対し、本実施形態では、研磨スラリーが含む液体(水)の割合は10%〜30%であるため、液体の減少による研磨効率の低下は一般的な場合と比較して大きい。そのため、研磨効率の低下を防ぐためには、研磨スラリーが含む液体の割合を、10%〜30%に維持し続ける必要がある。このため、供給部45は、液体の量が所定の基準量になるよう研磨スラリーに液体を供給する。研磨時の電流値と液体の量とは一対一の対応関係があるため、判定部43は、検出部46が検出した電流値に基づいて、研磨スラリーが含む液体の量を求め、求めた液体の量と初期の液体の量との差から、供給する液体の量を求める。そして、供給部45は、判定部43が求めた供給する液体の量だけ、研磨スラリーに液体を供給する。同図の実線に示すように、研磨スラリーに液体を供給することにより、液体の量が所定の基準量になり、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度にすることができる。つまり、研磨スラリーの粘度は研磨スラリーが含む液体の量により規定でき、液体の量が基準量となるように液体を供給して、研磨スラリーの粘度を研磨に適した粘度に保つことによって、研磨スラリーが含む磁性体砥粒の磁束密度と透磁率とが一定になり、研磨効率の低下を防止することができる。
なお、研磨に適する研磨スラリーの粘度は、研磨スラリーが含む磁性体砥粒の成分、粒子形状、粒子径等、及び、ガラス基板Gの硬度、厚さ等によって変化するものであり、任意である。
また、研磨時の電流値と液体の量との関係は、予め測定しておくことにより求めてもよく、また、研磨前の研磨スラリーの粘度、研磨時間、履歴の電流値とから求めてもよい。また、研磨時の研磨ホイール36にかかる負荷量は、駆動部41に流れた電流値に対応し、この電流値は、研磨スラリーが含む液体の量に対応するため、検出部46は、負荷量に対応付けられた、供給する液体の量を求めることができる。
【0035】
以上説明したように、長時間研磨しても製品不良が起きないようにすることができる。また、研磨スラリーの粘度を、研磨に適した粘度に維持することができる。また、研磨スラリーに液体を供給することにより、研磨スラリー、ガラス基板の端面、研磨ホイールを冷却でき、端面のヤケを防止することができる。また、研磨ホイールが備える磁石の熱減磁を抑制できるため、研磨効率の低下を防止することができる。
【0036】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0037】
供給部45が供給する液体の量、タイミングは任意であり、例えば、判定部43により液体を供給すると判定された場合に所定量供給することもでき、また、検出部46が検出した電流値が一定値を超えた場合に所定量供給することもできる。また、研磨スラリーが含む液体は自然揮発もするため、研磨装置40が所定期間以上動作しておらず、液体が揮発している場合、供給部45は、研磨スラリーに液体を所定量供給することもできる。また、供給部45が供給する液体の温度は任意であるが、研磨スラリーを冷却する役割を有するため、研磨スラリーの温度より低いことが好ましい。
【0038】
検出部46が負荷を検出する方法は任意であり、例えば、研磨スラリーの粘度、端面33の温度を測定し、粘度、温度が所定値以上、上昇した場合に、負荷が増大したと検出することもできる。
【0039】
判定部43は、研磨時、非研磨時と判定した電流値の移動平均値、加重平均値、最高値又は最低値と、履歴のそれぞれの値とを比較することにより、液体を供給する時期を判定することもできる。
【符号の説明】
【0040】
40 研磨装置
36 研磨ホイール
41 駆動部
42 測定部
43 判定部
44 冷却部
45 供給部
46 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11