【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置を、実施例に基づき詳細に説明する。
以下の実施例においては、電気式回生制動装置を備えている電気自動車を例示して説明するが、本発明は、電気式回生制動装置を備えているハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも適用可能である。
また、制御原理を先に説明し、その後に、この制御原理を適用した具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例の制御原理>
先ず初めに、本実施例の制御原理を説明する。
改正された法規を示す
図3のデータマップを基に点灯又は消灯制御をしようとした場合には、車速がどのようなものであっても、減速度が−1.3m/s
2を上回るとストップランプを点灯させ、減速度が−0.7m/s
2以下になるとストップランプを消灯させることになる。
【0018】
ここで、ストップランプを点灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−1.3m/s
2を、「ストップランプ点灯減速度閾値」と称し、ストップランプを消灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−0.7m/s
2を、「ストップランプ消灯減速度閾値」とする。
【0019】
本実施例では、走行時において各車速での、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」を演算するとともに、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク第1閾値」を演算する。更に、演算により求めたストップランプ点灯回生トルク閾値及びストップランプ消灯回生トルク第1閾値を基に、ストップランプ点灯回生トルク閾値よりも小さくストップランプ消灯回生トルク第1閾値よりも大きいストップランプ消灯回生トルク第2閾値を演算する。
更に走行時において車速と回生トルクを求め、その車速での回生トルクが、その車速におけるストップランプ点灯回生トルク閾値を上回るとストップランプを直ちに点灯させ、その車速におけるストップランプ消灯回生トルク第1閾値以下になるとストップランプを直ちに消灯し、その車速におけるストップランプ消灯回生トルク第2閾値以下になった状態が一定時間を越えて継続するとストップランプを消灯するように制御するものである。
即ち、本実施例では、点灯又は消灯制御の判断基準を、減速度の値ではなく回生トルクの値を採用して点灯又は消灯制御をするようにした。
【0020】
周知のように、電動車両の電気式回生制動装置による減速度は、回生トルクと、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、電動車両を駆動するモータから駆動輪までのギア比と、車輪半径により決定される。したがって、回生トルクは、減速度と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。つまり、fを所定の関数とすると、
回生トルク=f(減速度、車速、走行抵抗係数、車両重量、ギア比、車輪半径)
という関係式が成立する。
【0021】
上記の関係式から、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」は、減速度であるストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算することができる。
また、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク第1閾値」は、減速度であるストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)に換算することができる。
ストップランプ消灯回生トルク第2閾値(Nm)は、上記のようにして換算演算して求めたストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)とストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)を基に、演算して求めることができる。
【0022】
「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク第1閾値」に換算する際に用いる各データ(走行抵抗係数等)としては、次のデータを採用する。
・減速度・・・・・ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)またはストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)。
・車速・・・・・車輪速センサ7より得られる車輪速信号S2を基に車速演算部8により演算される値。
・走行抵抗係数・・試験によって予め計測した値。
・車両重量・・・・仕様によって規定されている空車重量(CW:curb weight)または車両総重量(GVW:gross vehicle weight)。
・ギア比・・・・・仕様によって規定されている値。
・車輪半径・・・仕様によって規定されている値。
なお車両重量は、乗員や荷物によって変動することを考慮し、ここでは、最小重量となる空車重量と、最大重量となる車両総重量を採用した。
【0023】
図4は、車両重量として空車重量(CW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク第1閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図4に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)をストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図4に示すストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLC
OFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON及びストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLC
OFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。
【0024】
図5は、車両重量として車両総重量(GVW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク第1閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図5に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)をストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク第1閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図5に示すストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ON及びストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。なお、車速v、走行抵抗係数a,b、走行抵抗Rとすると、走行抵抗Rは次式から求められる。
R=a×v
2+b
【0025】
本実施例では、
図6に示すように、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインとして空車重量(CW)を用いて換算したストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを採用し、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインとして車両総重量(GVW)を用いて換算したストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFを採用する。
更に本実施例では、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONよりも小さく且つストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFよりも大きい、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2を設定している。
つまり、本実施例では、
図6に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONとストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF及びストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2を用いて、ストップランプの点灯又は消灯制御をする。
【0026】
なお、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2の差の絶対値は、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFとストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2の差の絶対値よりも小さくなるように、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2を設定している。
【0027】
図4,
図5に示す2つのストップランプ点灯回生トルク閾値ラインに着目すると、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ONよりもストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONの方が小さいので、
図6では、小さい方のストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを採用している。
本実施例では、回生トルクがストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを上回った場合に、ストップランプを直ちに点灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が空車重量(CW)のときはもちろん車両総重量(GVW)のときでも、換言すると車両重量が空車重量(CW)から車両総重量(GVW)までのいかなる車両重量であっても、法規を遵守しつつストップランプを適正に点灯させることができる。
【0028】
図4,
図5に示す2つのストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインに着目すると、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLC
OFFよりもストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFの方が大きいので、
図6では、大きい方のストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFFを採用している。
本実施例では、回生トルクがストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF以下になった場合に、ストップランプを直ちに消灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が車両総重量(GVW)のときはもちろん空車重量(CW)のときでも、換言すると車両重量が車両総重量(GVW)から空車重量(CW)までのいかなる車両重量であっても、法規を遵守しつつストップランプを適正に消灯させることができる。
【0029】
なお、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2を用いた本実施例の消灯制御では、回生トルクが第2閾値ラインL
OFF2以下になった状態が、予め決めた一定時間を越えて継続したら、ストップランプを消灯するように制御する。このような消灯制御をすることにより、ストップランプが点灯した後に車両が惰性走行状態(コースト走行、すなわち、アクセル開度が全閉のまま車両が惰性により走行する状態)になって電気式回生制動装置が作動したときに、ストップランプがいつまでも消灯しない事態を回避して、後続車に対して煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0030】
<制御原理を適用した具体的な実施例>
上述した制御原理を適用した具体的な実施例を、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例の電動車両のストップランプ点灯制御装置を搭載した電気自動車1である。この電気自動車1は、車輪2、ストップランプ3、駆動用のモータ4等を備えている。
アクセルペダル5にはアクセルポジションセンサ6が配置されており、アクセルポジションセンサ6はアクセルペダル開度を示すアクセル開度信号S1を出力する。車輪2には車輪速センサ7が配置されており、車輪速センサ7は車輪速を示す車輪速信号S2を出力する。車速演算部8は、車輪速信号S2を基に、車速を示す車速信号S3を出力する。
【0031】
トルク演算部(EV−ECU:車両統合ユニット)9は、アクセル開度信号S1や車速信号S3や、図示しないシフトレバーのシフトポジションを検知するシフトポジションセンサからのシフトポジション信号等の情報を基に、電気自動車1を走行駆動するときには要求トルクを示す要求トルク信号Tdを出力し、回生制動するときには回生トルクを示す回生トルク信号Tgを出力する。
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力するときには、アクセル開度信号S1で示すアクセル開度が全閉になっており、トルク演算部9は回生制動を行うために必要な回路切替のための制御を行う。
【0032】
モータ4は、要求トルク信号Tdを受けると、要求トルク信号Tdで示す要求トルクを発生するように作動し、モータ4の駆動力がギア等の伝達機構を介して車輪2に伝達される。これにより電気自動車1が走行駆動する。
モータ4は、回生トルク信号Tgを受けると、回生トルク信号Tgで示す回生トルクを発生するように発電制動をし、車輪2に制動力を付与する。アクセル全閉によってモータ4から発生される回生トルクは、ガソリンエンジンのエンジンブレーキに相当するように設定されているため、基本的には車速が小さくなるにしたがって減少する。
【0033】
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力して、モータ4が回生制動を行うシステム構成が、「電気式回生制動装置」に相当する。
【0034】
記憶部(ROM)10には、予め決めた次のデータ値が記憶されている。
・走行抵抗係数(試験によって予め計測した値)
・空車重量(仕様によって規定されているCW:curb weight)
・車両総重量(仕様によって規定されているGVW:gross vehicle weight)
・ギア比(仕様によって規定されている値)
・車輪半径(仕様によって規定されている値)
【0035】
ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11には、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)が予め設定されている。このストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11は、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、空車重量(CW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONは、
図6に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON上の値であり、演算時点の車速(
図6の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(
図6の縦軸)を表す。
【0036】
ストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12aには、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)が予め設定されている。このストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12aは、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、車両総重量(GVW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1を演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1は、
図6に示すストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF上の値であり、演算時点の車速(
図6の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(
図6の縦軸)を表す。
【0037】
ストップランプ消灯回生トルク第2閾値演算部12bには、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11からストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONが入力されると共に、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12aからストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1が入力される。
ストップランプ消灯回生トルク第2閾値演算部12bは、予め決めた一定クロックごとに、入力されたストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1を基に、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONよりも小さくストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1よりも大きいストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2を演算する。この場合、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値が、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1とストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値よりも小さくなるような演算(例えば演算関数を用いた演算)をする。
【0038】
ストップランプ点灯判定部13は、一定クロックごとに、トルク演算部9から出力される回生トルク信号Tgを取り込むと共に、一定クロックごとに、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11から出力されるストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONと、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12aから出力されるストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1と、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値演算部12bから出力されるストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2を取り込む。
このようにして取り込んだ、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON,ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1及びストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2とを、予め決めた一定クロックごとに比較判定する。
また、ストップランプ点灯判定部13には、予め決めた「一定時間」が設定されている。
【0039】
なお、ストップランプ点灯判定部13における一定クロックと、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11における一定クロックと、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12aにおける一定クロックと、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値演算部12bにおける一定クロックは同期している。
【0040】
ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回ったら、ストップランプ3を直ちに点灯する制御をする。
【0041】
また、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF以下になったら、ストップランプ3を直ちに消灯する制御をする。このような消灯制御を「第1の消灯制御」と称する。
【0042】
また、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2以下になる状態が、予め決めた一定時間を越えて継続すると、ストップランプ3を消灯する制御をする。このような消灯制御を「第2の消灯制御」と称する。
【0043】
更に、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回ってストップランプ3が一旦点灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が減少してきてストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON以下に推移したときには、ストップランプ3の点灯状態を維持する。
また、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回ってストップランプ3が一旦点灯した状態で、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1以下になってストップランプ3が消灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が増加してきてストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1を上回るよう推移したときには、ストップランプ3の消灯状態を維持する。
【0044】
ここで、「第1の消灯制御」と「第2の消灯制御」が行われる具体的な運転状態を、
図6を参照して説明する。
【0045】
(1) 第1の消灯制御が行われる運転状態の一例
回生トルクの値が、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを上回って点灯状態になった後に、運転者がアクセルペダルを踏んで電気自動車1を加速走行させた場合、回生トルクの値は短時間でストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF以下になる。
このような場合には、第1の消灯制御により、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF以下になった時点でストップランプ3を直ちに消灯させることができる。このような運転状態では、運転者の加速意思に応じて、ストップランプ3を消灯することができ、法規を遵守した消灯制御を行うことができる。
【0046】
(2) 第2の消灯制御が行われる運転状態の一例
回生トルクの値が、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを上回って点灯状態になった後に、回生トルクの値が減少してきて、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON以下になったときに、運転者がアクセルペダルを踏まないまま電気自動車1を惰性走行させた場合、回生トルクの値はなかなかストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF以下にならない。
このような状態のとき、仮に第2の消灯制御を行わないとすると、ストップランプ3が点灯した状態が長時間にわたり継続し、後続車の運転者が、煩わしさを感じてしまう恐れがある。
そこで、第2の消灯制御を行い、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2以下になった状態が予め決めた一定時間を越えて継続したら、ストップランプ3を消灯させている。これにより、後続車に対して煩わしさを感じさせることなく、且つ、法規を遵守して、消灯制御をすることができる。
また、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値が、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1とストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値よりも小さくなるように演算されることから、ストップランプ3が点灯状態になってから第2の消灯制御を行うタイミングをより早めることができ、後続車が感じる煩わしさをより低減できる。
【0047】
このように予め決めた一定クロックごとに、演算制御をすることにより、車両重量に拘わらず、また、どのような車速であっても、ストップランプ点灯判定部13は、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、
図6に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを上回ったら、ストップランプ3を直ちに点灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、
図6に示すストップランプ消灯回生トルク第1閾値ラインLG
OFF以下になったら、ストップランプ3を直ちに消灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が
図6に示すストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2以下になった状態が、予め決めた一定時間を越えて継続すると、ストップランプ3を消灯する。
【0048】
上述した車速演算部8、トルク演算部9、記憶部10、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値演算部12a、ストップランプ消灯回生トルク第2閾値演算部12b、ストップランプ点灯判定部13が協働して、上述したように、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON,ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1及びストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2とを比較判定し、その比較判定結果に応じてストップランプ3の点灯又は消灯制御をするシステム構成が、「電動車両のストップランプ点灯制御装置」に相当する。
【0049】
なお、第2の消灯制御では、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2の差の絶対値(
図6ではストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値ラインL
OFF2の差の絶対値)と、予め決めた一定時間とを、コンピュータシミュレーションや試験走行時の点灯又は消灯制御の状態を勘案して適切に設定している。これにより外乱の影響により、ストップランプ3の点灯・消灯が必要以上に繰り返し行われるチャタリング現象の発生を抑制している。
【0050】
更に第2の消灯制御における予め決めた「一定時間」を車速に応じて可変にすることもできる。
【0051】
例えば、車速が大きくなるほど電気自動車1の減速時に発生する回生トルクが大きくなると共にその発生時間が長くなるので、車速が大きくなるほど回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを長い時間上回り続けやすい傾向となる。言い換えれば、ストップランプ3が点灯している時間が長くなり、後続車が煩わしく感じる可能性が高くなる。そのような可能性を低減するために、回生トルクの値が消灯の判断基準となるストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2を下回ってからの「一定時間」を、車速が大きくなるほど短く設定してもよい。
これにより、車速が大きくなるほどストップランプ3の点灯状態が維持されにくい傾向となり、高速域においてユーザーが違和感を覚えない範囲内で、後続車にストップランプ3の点灯による煩わしさを感じさせることなく注意を促すことができる。
【0052】
また、更にストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONと前記ストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2の差の絶対値を、車速に応じて可変にすることもできる。
【0053】
上述したように、車速が大きくなるほどストップランプ3が点灯している時間が長くなり、後続車が煩わしく感じる可能性が高くなる。よって、そのような可能性を低減するために、例えば、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2の差の絶対値を車速が大きくなるほど小さくなるように設定してもよい。具体的には、車速が大きくなるほどストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2をストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONに近づけるように設定してもよい。
これにより、車速が大きくなるほどストップランプ3が点灯状態になってから第2の消灯制御を行うタイミングを早めることができるので、ストップランプ3の点灯状態が維持されにくい傾向となり、高速域においてユーザーが違和感を覚えない範囲内で、後続車にストップランプ3の点灯による煩わしさを感じさせることなく注意を促すことができる。
【0054】
また、回生トルクの値が消灯の判断基準となるストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2を下回ってからの「一定時間」を、車速が大きくなるほど短くする設定と、車速が大きくなるほどストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2をストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONに近づける設定とを、同時に行って制御してもよい。これにより、車速が大きくなるほどストップランプ3の点灯状態がより維持されにくくなるので、高速域において後続車に与えるストップランプ3の点灯による煩わしさをより低減できる。
【0055】
このように、消灯の判断基準となるストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2を下回ってからの「一定時間」を車速に応じて可変にしたり、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONと前記ストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2の差の絶対値を車速に応じて可変にしたりすることで、ドライバーのニーズに応じた点灯制御が可能となる。
【0056】
次に、制御手順を示すフローチャートである
図2を参照して、ストップランプ点灯判定部13での制御手順を説明する。
【0057】
ドライバーのアクセル操作によって車両(電気自動車1)が加速した後、ある車速でアクセルをOFFにすると、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生し、車両が減速する(ステップ1)。
このとき、回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回るか否かを判定する(ステップ2)。なお、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONは、車両重量が空車重量であるとして、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)を換算演算して求めたものである。
【0058】
ステップ2において、回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回る場合には、ストップランプ3を点灯する(ステップ3)。
ステップ2において、回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回らない場合には、ステップ1に戻る。
【0059】
ステップ3の後、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生することにより、車両が減速する(ステップ4)。
車両が減速することに応じて、回生トルクが減少してくる(ステップ5)。
【0060】
ステップ5の後、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2以下になった状態が、予め決めた一定時間を越えて継続したかどうかを判定する(ステップ6)。ステップ6の判定結果が成立する場合には、ストップランプ3を消灯する(ステップ7)。
【0061】
ステップ6の判定結果が成立しない場合には、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1以下になるか否かを判定する(ステップ8)。なお、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1は、車両重量が車両総重量であるとして、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)を換算演算して求めたものである。
【0062】
ステップ8において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1以下になる場合には、ストップランプ3を消灯する(ステップ7)。
ステップ8において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1以下にならない場合には、ステップ4またはステップ9に戻る。
【0063】
ステップ3の後、またはステップ8の論理が成立しないときに、ドライバーがアクセルを再度踏むと(ステップ9)、トルクが回生から力行に転じる(ステップ10)。
【0064】
ステップ10の後、ステップ6の判定に移り、ステップ6の判定結果が成立しない場合には、ステップ8にて回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1以下になるか否かを判定し、ステップ8の判定が成立する場合には、ストップランプ3を消灯する(ステップ7)。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。
例えば、上述した実施形態では、ストップランプ消灯減速度閾値を−0.7m/s
2、ストップランプ点灯減速度閾値を−1.3m/s
2として説明したが、これらの値は用途に応じて変更してもよい。
また例えば、上述した実施形態では、ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONとストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値が、ストップランプ消灯回生トルク第1閾値P
OFF1とストップランプ消灯回生トルク第2閾値P
OFF2との差の絶対値よりも小さくなるように演算されるものとしたが、これに限られず、これらの差の絶対値の大小は用途に応じて変更してもよい。