特開2015-123756(P2015-123756A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

特開2015-123756電動車両のストップランプ点灯制御装置
<>
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000003
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000004
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000005
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000006
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000007
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000008
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000009
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000010
  • 特開2015123756-電動車両のストップランプ点灯制御装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-123756(P2015-123756A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】電動車両のストップランプ点灯制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/44 20060101AFI20150609BHJP
【FI】
   B60Q1/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-267206(P2013-267206)
(22)【出願日】2013年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】水井 俊文
(72)【発明者】
【氏名】松見 敏行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷口 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 喬紀
(72)【発明者】
【氏名】初田 康之
(72)【発明者】
【氏名】橋坂 明
(72)【発明者】
【氏名】西田 将人
(72)【発明者】
【氏名】南部 壮佑
【テーマコード(参考)】
3K039
【Fターム(参考)】
3K039AA03
3K039MB10
(57)【要約】
【課題】電動車両の電気式回生制動装置の作動時に、適切にストップランプの点灯消灯制御をする。
【解決手段】ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aは、ストップランプ点灯減速度閾値に対応したストップランプ点灯回生トルク閾値PON1を出力し、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bは、閾値PON1を修正し規定速度以下で一定値となる修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を出力する。ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12は、ストップランプ消灯減速度閾値に対応したストップランプ消灯回生トルク閾値POFFを出力する。ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクが、閾値PON2を上回ったらストップランプ3を点灯し、閾値POFF以下になったらストップランプ3を消灯する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式回生制動装置を備えた電動車両のストップランプ点灯制御装置であって、
ストップランプを点灯させる減速度に応じた点灯閾値及びストップランプを消灯させる減速度に応じた消灯閾値を車速ごとに設定する閾値設定手段と、
前記電動車両の走行状態から求めた減速度に応じた値と、前記点灯閾値及び前記消灯閾値とを比較判定した結果に基づき、ストップランプの点灯または消灯制御をするストップランプ点灯判定部を有し、
前記点灯閾値を車速が小さくなるほど前記消灯閾値に近づけるように設定することを特徴とする電動車両のストップランプ点灯制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記閾値設定手段は、
前記点灯閾値を車速ごとの前記ストップランプ点灯回生トルク閾値として演算するストップランプ点灯回生トルク閾値演算部と、前記消灯閾値を車速ごとの前記ストップランプ消灯回生トルク閾値として演算するストップランプ消灯回生トルク閾値演算部とを備え、
前記ストップランプ点灯判定部は、
前記電動車両の走行状態から発せられる回生トルク信号で示す回生トルクの値がそのときの車速に対応する前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回るとストップランプを点灯し、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値がそのときの車速に対応する前記ストップランプ消灯回生トルク閾値以下になると前記ストップランプを消灯することを特徴とする電動車両のストップランプ点灯制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部により演算された前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を車速に応じて修正するストップランプ点灯回生トルク閾値修正部を更に有し、
前記ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部は、車速が予め決めた規定車速以下で、前記ストップランプ点灯回生トルク閾値が一定値となるように修正することを特徴とする電動車両のストップランプ点灯制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部は、前記電動車両の重量が空車重量であるとして演算をすることにより、前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を演算し、
前記ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部は、前記電動車両の重量が車両総重量であるとして演算をすることにより、前記ストップランプ消灯回生トルク閾値を演算することを特徴とする電動車両のストップランプ点灯制御装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項において、
前記ストップランプ点灯判定部は、
前記ストップランプが点灯状態になっていたときに、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値が前記ストップランプ点灯回生トルク閾値以下に推移した場合には、前記ストップランプの点灯状態を維持し、
前記ストップランプが消灯状態になっていたときに、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値が前記ストップランプ消灯回生トルク閾値を上回るように推移した場合には、前記ストップランプの消灯状態を維持することを特徴とする電動車両のストップランプ点灯制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車両のストップランプ点灯制御装置に関し、電気式回生制動装置を備えている電動車両のストップランプを適切に点灯又は消灯制御するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの電動車両では、駆動源として電動機(モータ)を用いている。このような電動車両では、補助ブレーキとして電気式回生制動装置を備えているものがある。
電気式回生制動装置は、運転者がアクセルペダルの操作をやめアクセル開度が全閉になったときに、車輪の駆動力によりモータが回転し発電機として機能するように、回路切替をして制動力を発生するものである(例えば、特許文献1参照)。なお回生制動により発生した電力はバッテリに充電される。
【0003】
国土交通省が告示した従来の法規では、アクセル操作装置を解除することによって作動する電気式回生制動装置が作動している場合には、いかなる減速度であっても制動灯等の点灯を禁止している。
【0004】
しかし、この法規が改正され、減速度がある一定以上になる場合にあっては、制動灯等の点灯を義務付けることとなった。
減速度と点灯要件の関係は以下の通りである。
(1)減速度が−0.7m/s2以下の場合 :点灯禁止
(2)減速度が−0.7m/s2を上回り、−1.3m/s2以下の場合:点灯任意
(3)減速度が−1.3m/s2を上回る場合 :点灯義務
改正された法規は、平成26年1月30日以降に新たに型式の指定等を受ける自動車に適用される。
【0005】
図4は、改正された法規を図示するものであり、横軸は車速を示しており、縦軸は減速度を示している。また、図4において、「ストップランプ消灯減速度閾値」は「−0.7m/s2」に相当し、「ストップランプ点灯減速度閾値」は「−1.3m/s2」に相当する。
なお、本明細書では、減速度の数値にマイナス符号「−」を付し、減速度の大小を表すときには、減速度の絶対値が大きい方を、減速度が大きいとして表す。例えば、減速度−0・7m/s2に対して、減速度−1.3m/s2の方が、減速度が大きい。
これに合わせ、後述する回生トルクは、回生トルクの数値にマイナス符号「−」を付し、回生トルクの大小を表すときには、回生トルクの絶対値が大きい方を、回生トルクが大きいとして表す。例えば、回生トルク−20Nmに対して、回生トルク−60Nmの方が、回生トルクが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−153294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)を上回ったらストップランプを点灯する制御をすれば、法規の規定は満足する。しかし、運転者がストップランプを点灯して欲しいと感じる減速度と、法規で規定するストップランプ点灯減速度閾値は必ずしも一致しない。
例えば、運転者としては、低速で走行しているときに電気式回生制動装置が作動した場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)よりも小さくても、ストップランプが点灯することを欲する場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、上記の改正法規を遵守しつつ、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングを加味して適切に制動灯(ストップランプ)の点灯又は消灯制御をすることができる、電動車両のストップランプ点灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の構成は、
電気式回生制動装置を備えた電動車両のストップランプ点灯制御装置であって、
ストップランプを点灯させる減速度に応じた点灯閾値及びストップランプを消灯させる減速度に応じた消灯閾値を車速ごとに設定する閾値設定手段と、
前記電動車両の走行状態から求めた減速度に応じた値と、前記点灯閾値及び前記消灯閾値とを比較判定した結果に基づき、ストップランプの点灯または消灯制御をするストップランプ点灯判定部を有し、
前記点灯閾値を車速が小さくなるほど前記消灯閾値に近づけるように設定することを特徴とする。
【0010】
また本発明の構成は、
前記閾値設定手段は、
前記点灯閾値を車速ごとの前記ストップランプ点灯回生トルク閾値として演算するストップランプ点灯回生トルク閾値演算部と、前記消灯閾値を車速ごとの前記ストップランプ消灯回生トルク閾値として演算するストップランプ消灯回生トルク閾値演算部とを備え、
前記ストップランプ点灯判定部は、
前記電動車両の走行状態から発せられる回生トルク信号で示す回生トルクの値がそのときの車速に対応する前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回るとストップランプを点灯し、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値がそのときの車速に対応する前記ストップランプ消灯回生トルク閾値以下になると前記ストップランプを消灯することを特徴とする。
【0011】
また本発明の構成は、
前記ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部により演算された前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を車速に応じて修正するストップランプ点灯回生トルク閾値修正部を更に有し、
前記ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部は、車速が予め決めた規定車速以下で、前記ストップランプ点灯回生トルク閾値が一定値となるように修正することを特徴とする。
【0012】
また本発明の構成は、
前記ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部は、前記電動車両の重量が空車重量であるとして演算をすることにより、車速ごとの前記ストップランプ点灯回生トルク閾値を演算し、
前記ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部は、前記電動車両の重量が車両総重量であるとして演算をすることにより、車速ごとの前記ストップランプ消灯回生トルク閾値を演算することを特徴とする。
【0013】
また本発明の構成は、
前記ストップランプ点灯判定部は、
前記ストップランプが点灯状態になっていたときに、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値が前記ストップランプ点灯回生トルク閾値以下に推移した場合には、前記ストップランプの点灯状態を維持し、
前記ストップランプが消灯状態になっていたときに、前記回生トルク信号で示す前記回生トルクの値が前記ストップランプ消灯回生トルク閾値を上回るように推移した場合には、前記ストップランプの消灯状態を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、減速度に応じた値と、点灯閾値及び消灯閾値とを比較判定した結果に基づき、ストップランプの点灯または消灯制御をする場合に、点灯閾値を車速が小さくなるほど消灯閾値に近づくように設定している。
このため車速が低車速になっている場合に電気式回生制動装置が作動すると、ストップランプが点灯しやすくなり、上記の改正法規を遵守しつつ、運転者のフィーリングに合わせて低速域でストップランプを点灯しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置を示すブロック図。
図2】本発明の実施例1に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置の制御手順を示すフローチャート。
図3】本発明の実施例2に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置を示すブロック図。
図4】告示された法規を、横軸を車速、縦軸を減速度として示す特性図。
図5】横軸を車速、縦軸を減速度として示す法規を、空車重量を用いて換算し、横軸を車速、縦軸を回生トルクとして示す特性図。
図6】横軸を車速、縦軸を減速度として示す法規を、車両総重量を用いて換算し、横軸を車速、縦軸を回生トルクとして示す特性図。
図7】告示された法規を車両重量に拘わらず遵守できるように設定したデータマップであり、横軸を車速、縦軸を回生トルクとして示す特性図。
図8】本発明の実施例1で用いるデータマップであり、横軸を車速、縦軸を回生トルクとして示す特性図。
図9】本発明の実施例2で用いるデータマップであり、横軸を車速、縦軸を減速度として示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置を、実施例に基づき詳細に説明する。
以下の実施例においては、電気式回生制動装置を備えている電気自動車を例示して説明するが、本発明は、電気式回生制動装置を備えているハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも適用可能である。
また、制御原理を先に説明し、その後に、この制御原理を適用した具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例1の制御原理>
先ず初めに、実施例1の制御原理を説明する。
改正された法規を示す図4のデータマップを基に点灯又は消灯制御をしようとした場合には、車速がどのようなものであっても、減速度が−1.3m/s2を上回るとストップランプを点灯させ、減速度が−0.7m/s2以下になるとストップランプを消灯させることになる。
【0018】
ここで、ストップランプを点灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−1.3m/s2を、「ストップランプ点灯減速度閾値」と称し、ストップランプを消灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−0.7m/s2を、「ストップランプ消灯減速度閾値」とする。
【0019】
実施例1では、走行時において各車速での、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」を演算するとともに、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク閾値」を演算する。さらに、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」を修正した「修正ストップランプ点灯回生トルク閾値」を演算する。
【0020】
「修正ストップランプ点灯回生トルク閾値」は、車速が予め決めた規定車速を上回る場合にはストップランプ点灯回生トルク閾値と同じであるが、車速が予め決めた規定車速以下である場合には、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングを加味して、「一定値」にしている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速のときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」のことを意味する。
【0021】
更に走行時において車速と回生トルクを求め、その車速での回生トルクが、その車速における修正ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回るとストップランプを点灯させ、その車速におけるストップランプ消灯回生トルク閾値以下になるとストップランプを消灯するように制御するものである。
即ち、実施例1では、点灯又は消灯制御の判断基準を、減速度の値ではなく回生トルクの値を採用して点灯又は消灯制御をするようにした。
【0022】
周知のように、電動車両の電気式回生制動装置による減速度は、回生トルクと、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、電動車両を駆動するモータから駆動輪までのギア比と、車輪半径により決定される。したがって、回生トルクは、減速度と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。つまり、fを所定の関数とすると、
回生トルク=f(減速度、車速、走行抵抗係数、車両重量、ギア比、車輪半径)
という関係式が成立する。
【0023】
上記の関係式から、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」は、減速度であるストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算することができる。
また、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク閾値」は、減速度であるストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算することができる。
【0024】
「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算する際に用いる各データ(走行抵抗係数等)としては、次のデータを採用する。
・減速度・・・・・ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)またはストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)。
・車速・・・・・車輪速センサ7より得られる車輪速信号S2を基に車速演算部8により演算される値。
・走行抵抗係数・・試験によって予め計測した値。
・車両重量・・・・仕様によって規定されている空車重量(CW:curb weight)または車両総重量(GVW:gross vehicle weight)。
・ギア比・・・・・仕様によって規定されている値。
・車輪半径・・・仕様によって規定されている値。
なお車両重量は、乗員や荷物によって変動することを考慮し、ここでは、最小重量となる空車重量と、最大重量となる車両総重量を採用した。
【0025】
図5は、車両重量として空車重量(CW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、図5に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)をストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、図5に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLCOFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCON及びストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLCOFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。
【0026】
図6は、車両重量として車両総重量(GVW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、図6に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLGONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)をストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが図6に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLGON及びストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。なお、車速v、走行抵抗係数a,b、走行抵抗Rとすると、走行抵抗Rは次式から求められる。
R=a×v2+b
【0027】
図7に示すデータマップは、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインとして空車重量(CW)を用いて換算したストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONを採用し、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインとして車両総重量(GVW)を用いて換算したストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFを採用したものである。
【0028】
図5図6に示す2つのストップランプ点灯回生トルク閾値ラインに着目すると、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLGONよりもストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONの方が小さいので、図7では、小さい方のストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONを採用している。
【0029】
図5図6に示す2つのストップランプ消灯回生トルク閾値ラインに着目すると、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLCOFFよりもストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFの方が大きいので、図7では、大きい方のストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFを採用している。
【0030】
図7に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をすれば、改正された法規を遵守することができる。
つまり、回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONを上回った場合に、ストップランプを点灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が空車重量(CW)のときはもちろん車両総重量(GVW)のときでも、換言すると車両重量が空車重量(CW)から車両総重量(GVW)までのいかなる車両重量であっても、ストップランプを適正に点灯させることができる。
また、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFF以下になった場合に、ストップランプを消灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が車両総重量(GVW)のときはもちろん空車重量(CW)のときでも、換言すると車両重量が車両総重量(GVW)から空車重量(CW)までのいかなる車両重量であっても、ストップランプを適正に消灯させることができる。
【0031】
実施例1では、図7に示すデータマップを更に修正した図8に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をする。
図8のデータマップでは、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFと、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を用いている。
【0032】
図8の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2上の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、一定値になっている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速Vrのときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」のことを意味する。このように車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合に、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCONよりも値の小さい一定値である、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を用いることが、実施例1の特徴の一つである。つまり、ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が小さくなるほど、ストップランプ消灯回生トルク閾値に近づくように設定されている。
また、図8の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2上の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合には、図7に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCON上の値と同一になっている。
【0033】
図8に示すデータマップの修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を基にストップランプの点灯制御をしたときに、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を上回って大きくなったら、ストップランプが点灯される。これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)よりも小さくても、ストップランプが点灯されることになり、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングに合致した点灯制御をすることができる。
【0034】
<実施例2の制御原理>
次に、実施例2の制御原理を説明する。
実施例2では、図9に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をする。
図9に示すデータマップでは、ストップランプ消灯減速度閾値は図4に示すものと同一であり、車速に拘わらず一定である。
一方、ストップランプ点灯用の減速度閾値は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合には、図4に示すストップランプ点灯減速度閾値と同一であり車速に拘わらず一定であるが、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定している。つまり、点灯速度閾値は、車速が小さくなるほど、消灯速度閾値に近づくように設定されている。
図9に示す各速度のストップランプ点灯用の減速度閾値を、修正ストップランプ点灯減速度閾値と称する。
【0035】
更に走行時において車速と減速度を求め、その車速での減速度が、その車速における修正ストップランプ点灯減速度閾値を上回るとストップランプを点灯させ、車速に拘わらず減速度がストップランプ点灯減速度閾値以下になるとストップランプを消灯するように制御するものである。
【0036】
図9に示す修正ストップランプ点灯減速度閾値を基にストップランプの点灯制御をした場合には、車速が規定車速Vr以下になっているときにおいて、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、車両の減速度が修正ストップランプ点灯減速度閾値を上回って大きくなったら、ストップランプが点灯される。これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)よりも小さくても、ストップランプが点灯されることになり、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングに合致した点灯制御をすることができる。
【0037】
<制御原理を適用した具体的な実施例1>
上述した制御原理を適用した具体的な実施例1を、図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例の電動車両のストップランプ点灯制御装置を搭載した電気自動車1である。この電気自動車1は、車輪2、ストップランプ3、駆動用のモータ4等を備えている。
アクセルペダル5にはアクセルポジションセンサ6が配置されており、アクセルポジションセンサ6はアクセルペダル開度を示すアクセル開度信号S1を出力する。車輪2には車輪速センサ7が配置されており、車輪速センサ7は車輪速を示す車輪速信号S2を出力する。車速演算部8は、車輪速信号S2を基に、車速を示す車速信号S3を出力する。
【0038】
トルク演算部(EV−ECU:車両統合ユニット)9は、アクセル開度信号S1や車速信号S3や、図示しないシフトレバーのシフトポジションを検知するシフトポジションセンサからのシフトポジション信号等の情報を基に、電気自動車1を走行駆動するときには要求トルクを示す要求トルク信号Tdを出力し、回生制動するときには回生トルクを示す回生トルク信号Tgを出力する。
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力するときには、アクセル開度信号S1で示すアクセル開度が全閉になっており、トルク演算部9は回生制動を行うために必要な回路切替のための制御を行う。
【0039】
モータ4は、要求トルク信号Tdを受けると、要求トルク信号Tdで示す要求トルクを発生するように作動し、モータ4の駆動力がギア等の伝達機構を介して車輪2に伝達される。これにより電気自動車1が走行駆動する。
モータ4は、回生トルク信号Tgを受けると、回生トルク信号Tgで示す回生トルクを発生するように発電制動をし、車輪2に制動力を付与する。
【0040】
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力して、モータ4が回生制動を行うシステム構成が、「電気式回生制動装置」に相当する。
【0041】
記憶部(ROM)10には、予め決めた次のデータ値が記憶されている。
・走行抵抗係数(試験によって予め計測した値)
・空車重量(仕様によって規定されているCW:curb weight)
・車両総重量(仕様によって規定されているGVW:gross vehicle weight)
・ギア比(仕様によって規定されている値)
・車輪半径(仕様によって規定されている値)
【0042】
ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aには、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)が予め設定されている。このストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aは、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、空車重量(CW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ点灯回生トルク閾値PON1を演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ点灯回生トルク閾値PON1は、図7に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCON上の値であり、演算時点の車速(図7の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(図7の縦軸)を表す。
【0043】
ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bには、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aからストップランプ点灯回生トルク閾値PON1が入力される。そうすると、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bは、入力されたストップランプ点灯回生トルク閾値PON1の値を修正し、修正した修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を予め決めた一定クロックごとに出力する。
【0044】
修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合にはストップランプ点灯回生トルク閾値PON1と同じであり、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、一定値になっている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速Vrのときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」である。この「一定値」は、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bに予め設定されている。
このようにして演算して求めた修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2は、図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2上の値であり、演算時点の車速(図8の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(図8の縦軸)を表す。
【0045】
ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12には、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)が予め設定されている。このストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12は、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、車両総重量(GVW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ消灯回生トルク閾値POFFを演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ消灯回生トルク閾値POFFは、図8に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFF上の値であり、演算時点の車速(図8の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(図8の縦軸)を表す。
【0046】
ストップランプ点灯判定部13は、一定クロックごとに、トルク演算部9から出力される回生トルク信号Tgを取り込むと共に、一定クロックごとに、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bから出力される修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2と、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12から出力されるストップランプ消灯回生トルク閾値POFFとを取り込む。
このようにして取り込んだ、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2及びストップランプ消灯回生トルク閾値POFFとを、予め決めた一定クロックごとに比較判定する。
【0047】
なお、ストップランプ点灯判定部13における一定クロックと、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aにおける一定クロックと、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bにおける一定クロックと、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12における一定クロックは同期している。
【0048】
ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を上回ったら、ストップランプ3を点灯する制御をする。
また、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、ストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になったら、ストップランプを消灯する制御をする。
【0049】
更に、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値POFFを上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する制御をする。
例えば、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を上回ってストップランプ3が一旦点灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が減少してきて修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2以下に推移したときには、ストップランプ3の点灯状態を維持する。
また、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値PONを上回ってストップランプ3が一旦点灯した状態で、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になってストップランプ3が消灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が増加してきてストップランプ消灯回生トルク閾値POFFを上回るように推移したときには、ストップランプ3の消灯状態を維持する。
【0050】
このように予め決めた一定クロックごとに、演算制御をすることにより、車両重量に拘わらず、また、どのような車速であっても、ストップランプ点灯判定部13は、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCON2を上回ったら、ストップランプ3を点灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、図8に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFF以下になったら、ストップランプ3を消灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLCON2以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLGOFFを上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する。
【0051】
実施例1のように、図8に示すデータマップの修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を基にストップランプの点灯制御をした場合には、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を上回って大きくなったら、ストップランプ点灯判定部13により、ストップランプ3が点灯されるように制御される。
これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s2)よりも小さくても、ストップランプ3が点灯されることになり、運転者のフィーリングに合致してストップランプ3の点灯制御をすることができる。
【0052】
なお仮に、図8において、車速が規定車速Vr以下になっている低速域において、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2が水平(修正ストップランプ点灯回生トルク閾値Pon2の値が一定)ではなく、低速域になるほど低減速度側に向かうように傾斜していたとすると、車速が遅いほどストップランプ3が点灯しやすくなる。
このようにした場合には、低速域においてストップランプ3が頻繁に点灯することになり、却って後続車などに煩わしさを感じさせてしまう。
このような観点から、図8において、車速が規定車速Vr以下になっている低速域においては、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLON2を水平(修正ストップランプ点灯回生トルク閾値Pon2の値を一定)にしている。
【0053】
また、車速が規定車速Vr以下になっている低速域においては、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値Pon2の値を一定にしていることにより、その値が車速によって変化する場合に比べて、制御演算が容易になり制御構成をシンプルにすることができる。
【0054】
上述した車速演算部8、トルク演算部9、記憶部10、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11a、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11b、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12、ストップランプ点灯判定部13が協働して、上述したように、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2及びストップランプ消灯回生トルク閾値POFFとを比較判定し、その比較判定結果に応じてストップランプ3の点灯又は消灯制御をするシステム構成が、「電動車両のストップランプ点灯制御装置」に相当する。
【0055】
次に、制御手順を示すフローチャートである図2を参照して、ストップランプ点灯判定部13での制御手順を説明する。
【0056】
ドライバーのアクセル操作によって車両(電気自動車1)が加速した後、ある車速でアクセルをOFFにすると、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生し、車両が減速する(ステップ1)。
このとき、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を上回るか否かを判定する(ステップ2)。
【0057】
ステップ2において、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を上回る場合には、ストップランプ3を点灯する(ステップ3)。
ステップ2において、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値PON2を上回らない場合には、ステップ1に戻る。
【0058】
ステップ3の後、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生することにより、車両が減速する(ステップ4)。
車両が減速することに応じて、回生トルクが減少してくる(ステップ5)。
【0059】
ステップ5の後、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になるか否かを判定する(ステップ6)。なお、ストップランプ消灯回生トルク閾値POFFは、車両重量が車両総重量であるとして、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s2)を換算演算して求めたものである。
【0060】
ステップ6において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になる場合には、ストップランプ3を消灯する(ステップ7)。
ステップ6において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下にならない場合には、ステップ4またはステップ8に戻る。
【0061】
ステップ3の後、またはステップ6の論理が成立しないときに、ドライバーがアクセルを再度踏むと(ステップ8)、トルクが回生から力行に転じる(ステップ9)。
ステップ9の後、ステップ6の判定に移り、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になるか否かを判定し、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下になる場合には、ストップランプ3を消灯し(ステップ7)、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値POFF以下にならない場合には、ステップ4またはステップ8に戻る。
【0062】
<制御原理を適用した具体的な実施例2>
上述した制御原理を適用した具体的な実施例2を、図3を参照しつつ説明する。なお、図1に示す実施例1と同一機能を果たす部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
実施例2では、電動車両のストップランプ点灯制御装置として、車速演算部8と、減速度演算部21とストップランプ点灯判定部22を備えている。
減速度演算部21は、車速演算部8から出力される車速信号S3を基に、減速度dを求めて出力する。なお、減速度演算部21は、車速信号S3のみならず、モータ回転速度などから減速度dを求めてもよい。
【0064】
ストップランプ点灯判定部22には、図9に示すストップランプ消灯減速度閾値と修正ストップランプ点灯減速度閾値が設定されている。
ストップランプ消灯減速度閾値は車速に拘わらず一定(−0.7m/S2)である。修正ストップランプ点灯減速度閾値は、車速が規定車速Vrを上回る場合には一定(−1.3m/S2)であるが、車速が規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定されている。
【0065】
ストップランプ点灯判定部22は、一定クロックごとに、車速S3と減速度dを取り込む。そして、減速度dの値と、ストップランプ消灯減速度閾値及びその車速での修正ストップランプ点灯減速度閾値とを比較判定する。
【0066】
ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、その車速での修正ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回ったら、ストップランプ3を点灯する制御をする。
また、ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、ストップランプ消灯回生トルク閾値以下になったら、ストップランプ3を消灯する制御をする。
【0067】
更に、ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値を上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する制御をする。
【0068】
修正ストップランプ点灯減速度閾値は、車速が規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定されている。このため、車速が規定車速Vr以下である場合には、運転者のフィーリングに合致して、ストップランプ3が点灯しやすくなる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば、上述した実施形態では、ストップランプ消灯減速度閾値を−0.7m/s2、ストップランプ点灯減速度閾値を−1.3m/s2として説明したが、これらの値は用途に応じて変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、電気式回生制動装置を備えている電気自動車のみならず、電気式回生制動装置を備えているハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの電動車両の制動灯(ストップランプ)を点灯又は消灯制御をするものに適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 電気自動車
2 車輪
3 ストップランプ
4 モータ
5 アクセルペダル
6 アクセルポジションセンサ
7 車輪速センサ
8 車速演算部
9 トルク演算部
10 記憶部
11a ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部
11b ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部
12 ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部
13 ストップランプ点灯判定部
21 減速度演算部
22 ストップランプ点灯判定部
d 減速度
S1 アクセル開度信号
S2 車輪速信号
S3 車速信号
Td 要求トルク信号
Tg 回生トルク信号
ON1 ストップランプ点灯回生トルク閾値
ON2 修正ストップランプ点灯回生トルク閾値
OFF ストップランプ消灯回生トルク閾値
LCON,LGON ストップランプ点灯回生トルク閾値ライン
LCOFF,LGOFF ストップランプ消灯回生トルク閾値ライン
ON2 修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9