【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動車両のストップランプ点灯制御装置を、実施例に基づき詳細に説明する。
以下の実施例においては、電気式回生制動装置を備えている電気自動車を例示して説明するが、本発明は、電気式回生制動装置を備えているハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも適用可能である。
また、制御原理を先に説明し、その後に、この制御原理を適用した具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例1の制御原理>
先ず初めに、実施例1の制御原理を説明する。
改正された法規を示す
図4のデータマップを基に点灯又は消灯制御をしようとした場合には、車速がどのようなものであっても、減速度が−1.3m/s
2を上回るとストップランプを点灯させ、減速度が−0.7m/s
2以下になるとストップランプを消灯させることになる。
【0018】
ここで、ストップランプを点灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−1.3m/s
2を、「ストップランプ点灯減速度閾値」と称し、ストップランプを消灯させる閾値(法規により規定されている閾値)である減速度−0.7m/s
2を、「ストップランプ消灯減速度閾値」とする。
【0019】
実施例1では、走行時において各車速での、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」を演算するとともに、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク閾値」を演算する。さらに、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」を修正した「修正ストップランプ点灯回生トルク閾値」を演算する。
【0020】
「修正ストップランプ点灯回生トルク閾値」は、車速が予め決めた規定車速を上回る場合にはストップランプ点灯回生トルク閾値と同じであるが、車速が予め決めた規定車速以下である場合には、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングを加味して、「一定値」にしている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速のときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」のことを意味する。
【0021】
更に走行時において車速と回生トルクを求め、その車速での回生トルクが、その車速における修正ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回るとストップランプを点灯させ、その車速におけるストップランプ消灯回生トルク閾値以下になるとストップランプを消灯するように制御するものである。
即ち、実施例1では、点灯又は消灯制御の判断基準を、減速度の値ではなく回生トルクの値を採用して点灯又は消灯制御をするようにした。
【0022】
周知のように、電動車両の電気式回生制動装置による減速度は、回生トルクと、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、電動車両を駆動するモータから駆動輪までのギア比と、車輪半径により決定される。したがって、回生トルクは、減速度と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。つまり、fを所定の関数とすると、
回生トルク=f(減速度、車速、走行抵抗係数、車両重量、ギア比、車輪半径)
という関係式が成立する。
【0023】
上記の関係式から、「ストップランプ点灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ点灯回生トルク閾値」は、減速度であるストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算することができる。
また、「ストップランプ消灯減速度閾値」に対応する回生トルク値である「ストップランプ消灯回生トルク閾値」は、減速度であるストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)と、車速と、走行抵抗係数と、車両重量と、ギア比と、車輪半径が分れば決定できる。これにより、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)を、各車速における回生トルク値であるストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算することができる。
【0024】
「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算する際に用いる各データ(走行抵抗係数等)としては、次のデータを採用する。
・減速度・・・・・ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)またはストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)。
・車速・・・・・車輪速センサ7より得られる車輪速信号S2を基に車速演算部8により演算される値。
・走行抵抗係数・・試験によって予め計測した値。
・車両重量・・・・仕様によって規定されている空車重量(CW:curb weight)または車両総重量(GVW:gross vehicle weight)。
・ギア比・・・・・仕様によって規定されている値。
・車輪半径・・・仕様によって規定されている値。
なお車両重量は、乗員や荷物によって変動することを考慮し、ここでは、最小重量となる空車重量と、最大重量となる車両総重量を採用した。
【0025】
図5は、車両重量として空車重量(CW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図5に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)をストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図5に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLC
OFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON及びストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLC
OFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。
【0026】
図6は、車両重量として車両総重量(GVW)を用いて、「ストップランプ点灯減速度閾値」及び「ストップランプ消灯減速度閾値」を、車速、走行抵抗係数、ギア比、車輪半径を考慮した上で、「ストップランプ点灯回生トルク閾値」及び「ストップランプ消灯回生トルク閾値」に換算したデータマップを示す。
ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)をストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ点灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが、
図6に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ONである。
ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)をストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)に換算し、各車速でのストップランプ消灯回生トルク閾値(Nm)を連続してつなげたものが
図6に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFである。
ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ON及びストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFは、車速が増加していくにつれて次第に小さくなる。これは、車速、走行抵抗係数から決定される走行抵抗が、車速が速くなるにつれて大きくなるからである。なお、車速v、走行抵抗係数a,b、走行抵抗Rとすると、走行抵抗Rは次式から求められる。
R=a×v
2+b
【0027】
図7に示すデータマップは、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインとして空車重量(CW)を用いて換算したストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを採用し、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインとして車両総重量(GVW)を用いて換算したストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFを採用したものである。
【0028】
図5,
図6に示す2つのストップランプ点灯回生トルク閾値ラインに着目すると、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLG
ONよりもストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONの方が小さいので、
図7では、小さい方のストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを採用している。
【0029】
図5,
図6に示す2つのストップランプ消灯回生トルク閾値ラインに着目すると、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLC
OFFよりもストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFの方が大きいので、
図7では、大きい方のストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFを採用している。
【0030】
図7に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をすれば、改正された法規を遵守することができる。
つまり、回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONを上回った場合に、ストップランプを点灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が空車重量(CW)のときはもちろん車両総重量(GVW)のときでも、換言すると車両重量が空車重量(CW)から車両総重量(GVW)までのいかなる車両重量であっても、ストップランプを適正に点灯させることができる。
また、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFF以下になった場合に、ストップランプを消灯させるように制御をする。このようにすれば、車両重量が車両総重量(GVW)のときはもちろん空車重量(CW)のときでも、換言すると車両重量が車両総重量(GVW)から空車重量(CW)までのいかなる車両重量であっても、ストップランプを適正に消灯させることができる。
【0031】
実施例1では、
図7に示すデータマップを更に修正した
図8に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をする。
図8のデータマップでは、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFと、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を用いている。
【0032】
図8の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2上の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、一定値になっている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速Vrのときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」のことを意味する。このように車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合に、ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ONよりも値の小さい一定値である、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を用いることが、実施例1の特徴の一つである。つまり、ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が小さくなるほど、ストップランプ消灯回生トルク閾値に近づくように設定されている。
また、
図8の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2上の修正ストップランプ点灯回生トルク閾値は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合には、
図7に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON上の値と同一になっている。
【0033】
図8に示すデータマップの修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を基にストップランプの点灯制御をしたときに、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を上回って大きくなったら、ストップランプが点灯される。これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)よりも小さくても、ストップランプが点灯されることになり、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングに合致した点灯制御をすることができる。
【0034】
<実施例2の制御原理>
次に、実施例2の制御原理を説明する。
実施例2では、
図9に示すデータマップを基に、ストップランプの点灯又は消灯制御をする。
図9に示すデータマップでは、ストップランプ消灯減速度閾値は
図4に示すものと同一であり、車速に拘わらず一定である。
一方、ストップランプ点灯用の減速度閾値は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合には、
図4に示すストップランプ点灯減速度閾値と同一であり車速に拘わらず一定であるが、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定している。つまり、点灯速度閾値は、車速が小さくなるほど、消灯速度閾値に近づくように設定されている。
図9に示す各速度のストップランプ点灯用の減速度閾値を、修正ストップランプ点灯減速度閾値と称する。
【0035】
更に走行時において車速と減速度を求め、その車速での減速度が、その車速における修正ストップランプ点灯減速度閾値を上回るとストップランプを点灯させ、車速に拘わらず減速度がストップランプ点灯減速度閾値以下になるとストップランプを消灯するように制御するものである。
【0036】
図9に示す修正ストップランプ点灯減速度閾値を基にストップランプの点灯制御をした場合には、車速が規定車速Vr以下になっているときにおいて、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、車両の減速度が修正ストップランプ点灯減速度閾値を上回って大きくなったら、ストップランプが点灯される。これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)よりも小さくても、ストップランプが点灯されることになり、ストップランプの点灯に関する運転者のフィーリングに合致した点灯制御をすることができる。
【0037】
<制御原理を適用した具体的な実施例1>
上述した制御原理を適用した具体的な実施例1を、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例の電動車両のストップランプ点灯制御装置を搭載した電気自動車1である。この電気自動車1は、車輪2、ストップランプ3、駆動用のモータ4等を備えている。
アクセルペダル5にはアクセルポジションセンサ6が配置されており、アクセルポジションセンサ6はアクセルペダル開度を示すアクセル開度信号S1を出力する。車輪2には車輪速センサ7が配置されており、車輪速センサ7は車輪速を示す車輪速信号S2を出力する。車速演算部8は、車輪速信号S2を基に、車速を示す車速信号S3を出力する。
【0038】
トルク演算部(EV−ECU:車両統合ユニット)9は、アクセル開度信号S1や車速信号S3や、図示しないシフトレバーのシフトポジションを検知するシフトポジションセンサからのシフトポジション信号等の情報を基に、電気自動車1を走行駆動するときには要求トルクを示す要求トルク信号Tdを出力し、回生制動するときには回生トルクを示す回生トルク信号Tgを出力する。
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力するときには、アクセル開度信号S1で示すアクセル開度が全閉になっており、トルク演算部9は回生制動を行うために必要な回路切替のための制御を行う。
【0039】
モータ4は、要求トルク信号Tdを受けると、要求トルク信号Tdで示す要求トルクを発生するように作動し、モータ4の駆動力がギア等の伝達機構を介して車輪2に伝達される。これにより電気自動車1が走行駆動する。
モータ4は、回生トルク信号Tgを受けると、回生トルク信号Tgで示す回生トルクを発生するように発電制動をし、車輪2に制動力を付与する。
【0040】
トルク演算部9が回生トルク信号Tgを出力して、モータ4が回生制動を行うシステム構成が、「電気式回生制動装置」に相当する。
【0041】
記憶部(ROM)10には、予め決めた次のデータ値が記憶されている。
・走行抵抗係数(試験によって予め計測した値)
・空車重量(仕様によって規定されているCW:curb weight)
・車両総重量(仕様によって規定されているGVW:gross vehicle weight)
・ギア比(仕様によって規定されている値)
・車輪半径(仕様によって規定されている値)
【0042】
ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aには、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)が予め設定されている。このストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aは、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、空車重量(CW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON1を演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON1は、
図7に示すストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON上の値であり、演算時点の車速(
図7の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(
図7の縦軸)を表す。
【0043】
ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bには、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aからストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON1が入力される。そうすると、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bは、入力されたストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON1の値を修正し、修正した修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を予め決めた一定クロックごとに出力する。
【0044】
修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2は、車速が予め決めた規定車速Vrを上回る場合にはストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON1と同じであり、車速が予め決めた規定車速Vr以下である場合には、一定値になっている。ここでいう「一定値」とは、車速が予め決めた規定車速Vrのときにおいて、「ストップランプ点灯減速度閾値」を基に演算して求めた「ストップランプ点灯回生トルク閾値」である。この「一定値」は、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bに予め設定されている。
このようにして演算して求めた修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2は、
図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2上の値であり、演算時点の車速(
図8の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(
図8の縦軸)を表す。
【0045】
ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12には、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)が予め設定されている。このストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12は、予め決めた一定クロックごとに、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)と、各クロックにおいて車速信号S3が示す車速と、記憶部10に記憶している走行抵抗係数、車両総重量(GVW)、ギア比、車輪半径を用いて、車速信号S3が示す車速におけるストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFを演算して出力する。
このようにして演算して求めたストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFは、
図8に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFF上の値であり、演算時点の車速(
図8の横軸)に応じた所定の減速度を発生するために必要な回生トルク値(
図8の縦軸)を表す。
【0046】
ストップランプ点灯判定部13は、一定クロックごとに、トルク演算部9から出力される回生トルク信号Tgを取り込むと共に、一定クロックごとに、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bから出力される修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2と、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12から出力されるストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFとを取り込む。
このようにして取り込んだ、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2及びストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFとを、予め決めた一定クロックごとに比較判定する。
【0047】
なお、ストップランプ点灯判定部13における一定クロックと、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11aにおける一定クロックと、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11bにおける一定クロックと、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12における一定クロックは同期している。
【0048】
ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を上回ったら、ストップランプ3を点灯する制御をする。
また、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、ストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になったら、ストップランプを消灯する制御をする。
【0049】
更に、ストップランプ点灯判定部13は、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFを上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する制御をする。
例えば、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を上回ってストップランプ3が一旦点灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が減少してきて修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2以下に推移したときには、ストップランプ3の点灯状態を維持する。
また、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ点灯回生トルク閾値P
ONを上回ってストップランプ3が一旦点灯した状態で、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になってストップランプ3が消灯した後に、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が増加してきてストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFを上回るように推移したときには、ストップランプ3の消灯状態を維持する。
【0050】
このように予め決めた一定クロックごとに、演算制御をすることにより、車両重量に拘わらず、また、どのような車速であっても、ストップランプ点灯判定部13は、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、
図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON2を上回ったら、ストップランプ3を点灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、
図8に示すストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFF以下になったら、ストップランプ3を消灯し、
・回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値が、
図8に示す修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインLC
ON2以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値ラインLG
OFFを上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する。
【0051】
実施例1のように、
図8に示すデータマップの修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を基にストップランプの点灯制御をした場合には、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、ストップランプが点灯しやすくなる。
つまり、規定車速Vr以下で走行しているときに電気式回生制動装置が作動し、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を上回って大きくなったら、ストップランプ点灯判定部13により、ストップランプ3が点灯されるように制御される。
これにより、車速が規定車速Vr以下になっている場合には、車両の減速度がストップランプ点灯減速度閾値(−1.3m/s
2)よりも小さくても、ストップランプ3が点灯されることになり、運転者のフィーリングに合致してストップランプ3の点灯制御をすることができる。
【0052】
なお仮に、
図8において、車速が規定車速Vr以下になっている低速域において、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2が水平(修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
on2の値が一定)ではなく、低速域になるほど低減速度側に向かうように傾斜していたとすると、車速が遅いほどストップランプ3が点灯しやすくなる。
このようにした場合には、低速域においてストップランプ3が頻繁に点灯することになり、却って後続車などに煩わしさを感じさせてしまう。
このような観点から、
図8において、車速が規定車速Vr以下になっている低速域においては、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値ラインL
ON2を水平(修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
on2の値を一定)にしている。
【0053】
また、車速が規定車速Vr以下になっている低速域においては、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
on2の値を一定にしていることにより、その値が車速によって変化する場合に比べて、制御演算が容易になり制御構成をシンプルにすることができる。
【0054】
上述した車速演算部8、トルク演算部9、記憶部10、ストップランプ点灯回生トルク閾値演算部11a、ストップランプ点灯回生トルク閾値修正部11b、ストップランプ消灯回生トルク閾値演算部12、ストップランプ点灯判定部13が協働して、上述したように、回生トルク信号Tgで示す回生トルクの値と、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2及びストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFとを比較判定し、その比較判定結果に応じてストップランプ3の点灯又は消灯制御をするシステム構成が、「電動車両のストップランプ点灯制御装置」に相当する。
【0055】
次に、制御手順を示すフローチャートである
図2を参照して、ストップランプ点灯判定部13での制御手順を説明する。
【0056】
ドライバーのアクセル操作によって車両(電気自動車1)が加速した後、ある車速でアクセルをOFFにすると、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生し、車両が減速する(ステップ1)。
このとき、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を上回るか否かを判定する(ステップ2)。
【0057】
ステップ2において、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を上回る場合には、ストップランプ3を点灯する(ステップ3)。
ステップ2において、回生トルクの値が修正ストップランプ点灯回生トルク閾値P
ON2を上回らない場合には、ステップ1に戻る。
【0058】
ステップ3の後、電気式回生制動装置が作動して回生トルクが発生することにより、車両が減速する(ステップ4)。
車両が減速することに応じて、回生トルクが減少してくる(ステップ5)。
【0059】
ステップ5の後、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になるか否かを判定する(ステップ6)。なお、ストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFFは、車両重量が車両総重量であるとして、ストップランプ消灯減速度閾値(−0.7m/s
2)を換算演算して求めたものである。
【0060】
ステップ6において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になる場合には、ストップランプ3を消灯する(ステップ7)。
ステップ6において、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下にならない場合には、ステップ4またはステップ8に戻る。
【0061】
ステップ3の後、またはステップ6の論理が成立しないときに、ドライバーがアクセルを再度踏むと(ステップ8)、トルクが回生から力行に転じる(ステップ9)。
ステップ9の後、ステップ6の判定に移り、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になるか否かを判定し、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下になる場合には、ストップランプ3を消灯し(ステップ7)、回生トルクの値がストップランプ消灯回生トルク閾値P
OFF以下にならない場合には、ステップ4またはステップ8に戻る。
【0062】
<制御原理を適用した具体的な実施例2>
上述した制御原理を適用した具体的な実施例2を、
図3を参照しつつ説明する。なお、
図1に示す実施例1と同一機能を果たす部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
実施例2では、電動車両のストップランプ点灯制御装置として、車速演算部8と、減速度演算部21とストップランプ点灯判定部22を備えている。
減速度演算部21は、車速演算部8から出力される車速信号S3を基に、減速度dを求めて出力する。なお、減速度演算部21は、車速信号S3のみならず、モータ回転速度などから減速度dを求めてもよい。
【0064】
ストップランプ点灯判定部22には、
図9に示すストップランプ消灯減速度閾値と修正ストップランプ点灯減速度閾値が設定されている。
ストップランプ消灯減速度閾値は車速に拘わらず一定(−0.7m/S
2)である。修正ストップランプ点灯減速度閾値は、車速が規定車速Vrを上回る場合には一定(−1.3m/S
2)であるが、車速が規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定されている。
【0065】
ストップランプ点灯判定部22は、一定クロックごとに、車速S3と減速度dを取り込む。そして、減速度dの値と、ストップランプ消灯減速度閾値及びその車速での修正ストップランプ点灯減速度閾値とを比較判定する。
【0066】
ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、その車速での修正ストップランプ点灯回生トルク閾値を上回ったら、ストップランプ3を点灯する制御をする。
また、ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、ストップランプ消灯回生トルク閾値以下になったら、ストップランプ3を消灯する制御をする。
【0067】
更に、ストップランプ点灯判定部22は、減速度dの値が、修正ストップランプ点灯回生トルク閾値以下で、且つ、ストップランプ消灯回生トルク閾値を上回る場合には、ストップランプ3の状態を、それより前の状態のまま維持する制御をする。
【0068】
修正ストップランプ点灯減速度閾値は、車速が規定車速Vr以下である場合には、車速が遅くなるにつれて小さくなるように設定されている。このため、車速が規定車速Vr以下である場合には、運転者のフィーリングに合致して、ストップランプ3が点灯しやすくなる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば、上述した実施形態では、ストップランプ消灯減速度閾値を−0.7m/s
2、ストップランプ点灯減速度閾値を−1.3m/s
2として説明したが、これらの値は用途に応じて変更してもよい。