【解決手段】 解舒不良部阻止装置20は、基材30と、基材30にスリット状に形成され、その長さ方向一端において開放され、且つ、他端において閉じた糸通路30aと、基材30に設けられ、糸Yに含まれる解舒不良部Yaを捕捉する捕捉部35と、基材30の、捕捉部35よりも糸通路30aの前記一端側に設けられ、糸通路30aに挿入された糸Yの飛び出しを防止する糸規制部36と、を備えている。捕捉部35は、基材30から糸走行方向上流側に向けて延びており、一方、糸規制部36は、糸通路30aの長さ方向及び糸走行方向と、それぞれ交差するように延びている。さらに、捕捉部35の先端は、糸規制部36の先端よりも、糸Yの走行路33に近い位置にある。
給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置の、前記給糸ボビンからの糸の解舒時に生じた解舒不良部が前記パッケージ側に移動するのを阻止する、解舒不良部阻止装置であって、
基材と、
前記基材にスリット状に形成され、その長さ方向一端において開放され、且つ、他端において閉じた糸通路と、
前記基材に設けられ、前記糸通路を通過する糸に含まれる、前記解舒不良部を捕捉する捕捉部と、
前記基材の、前記捕捉部よりも前記糸通路の前記一端側に設けられ、前記糸通路に挿入された糸の飛び出しを防止する糸規制部と、を備え、
前記捕捉部は、前記基材から糸走行方向上流側に向けて延びており、
前記糸規制部は、前記糸通路の長さ方向及び糸走行方向と、それぞれ交差するように延びており、
前記捕捉部の先端は、前記糸規制部の先端よりも、前記糸の走行路に近い位置にあることを特徴とする解舒不良部阻止装置。
前記糸規制部は、前記捕捉部形成部材とは別の、板状の糸規制部形成部材の一部分が折り曲げられることによって形成されていることを特徴とする請求項7に記載の解舒不良部阻止装置。
前記捕捉部形成部材と前記糸規制部形成部材とが重ねられた状態で、共通の取付部材によって、前記基材に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の解舒不良部阻止装置。
給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置の、前記給糸ボビンからの糸の解舒時に生じた解舒不良部が前記パッケージ側に移動するのを阻止する、解舒不良部阻止装置であって、
糸に含まれる前記解舒不良部を捕捉する捕捉部を備え、
前記捕捉部は、糸走行方向に対して、その先端側ほど糸の走行路に近づくように傾斜して延びていることを特徴とする解舒不良部阻止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の解舒不良部阻止装置は、2つのガイド部材の間の狭い隙間によって、解舒不良部の通過を阻止する構成であるが、スラッフィング等の解舒不良部は、糸の塊であって変形しやすいものである。そのため、解舒不良部は、比較的容易に2つのガイド部材の隙間をすり抜けて通過してしまうことがあり、このような構成では、解舒不良部の移動阻止率が十分に高くない。
【0007】
特許文献2の解舒不良部阻止装置は、前クリーナに加えて、さらに引き留め装置を備えており、この引き留め装置の2つの薄板にそれぞれ形成された複数の爪によって、解舒不良部を引き留めることができるとされている。しかし、パッケージに巻き取られる糸は、その走行中に常に振動している。そして、上記の引き留め装置では、糸は、2つの薄板によって挟まれる方向とは直交する方向において何ら規制されていない。そのため、引き留め装置を通過する糸は、走行中の振動によって、糸の走行路を中心に前記直交方向において振れることとなる。この糸の振れにより、解舒不良部も、糸の走行路に対して前記直交方向に位置が変動するため、場合によっては、糸の走行路の両側に配置された爪に引っ掛からずに通過してしまう虞がある。
【0008】
このように、従来の解舒不良部阻止装置では、解舒不良部の移動阻止が十分とは言い難く、新たな解舒不良部阻止装置の開発が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、糸の解舒不良部がパッケージ側に移動するのを、より良好に阻止することである。
【0010】
第1の発明の解舒不良部阻止装置は、給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置の、前記給糸ボビンからの糸の解舒時に生じた解舒不良部が前記パッケージ側に移動するのを阻止する、解舒不良部阻止装置であって、
基材と、前記基材にスリット状に形成され、その長さ方向一端において開放され、且つ、他端において閉じた糸通路と、前記基材に設けられ、前記糸通路を通過する糸に含まれる、前記解舒不良部を捕捉する捕捉部と、前記基材の、前記捕捉部よりも前記糸通路の前記一端側に設けられ、前記糸通路に挿入された糸の飛び出しを防止する糸規制部と、を備え、
前記捕捉部は、前記基材から糸走行方向上流側に向けて延びており、前記糸規制部は、前記糸通路の長さ方向及び糸走行方向と、それぞれ交差するように延びており、前記捕捉部の先端は、前記糸規制部の先端よりも、前記糸の走行路に近い位置にあることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の解舒不良部阻止装置においては、まず、基材に形成されたスリット状の糸通路に糸が挿入される。また、この糸通路からの糸の飛び出しは、糸通路の長さ方向及び糸走行方向と、それぞれ交差する方向に延びる、糸規制部によって規制される。これにより、解舒不良部阻止装置を通過する糸の振れが抑制されるため、給糸ボビンの解舒不良が生じたときに、走行する糸に含まれる解舒不良部が、糸の走行路から大きく外れることがない。尚、本発明において、「糸の走行路」とは、糸通路の糸走行方向上流側と下流側にそれぞれ配置された装置等によって定まる、基本的な糸の通り道のことであるが、走行中の振動によって、上記走行路を中心に、糸が糸走行方向と直交する方向に振れることになる。本発明の糸規制部は、上記の糸の振れによる糸通路からの飛び出しを規制するものである。
【0012】
その上で、解舒不良部を捕捉する捕捉部の先端は、糸規制部の先端よりも、糸の走行路に近い位置にある。そして、上記のように、糸規制部によって、糸の位置が走行路から大きく外れにくくなっていることから、解舒不良部も糸の走行路の近くを走行することになり、解舒不良部が捕捉部によって良好に捕捉される。
【0013】
第2の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1の発明において、前記捕捉部は、糸走行方向に対して、その先端側ほど前記糸の走行路に近づくように傾斜して延びていることを特徴とするものである。
【0014】
捕捉部は、その先端の位置が糸の走行路に近いほど、糸に含まれる解舒不良部を捕捉しやすくなる。但し、捕捉部の全体が、糸の走行路と平行に延びていると、給糸ボビンから正常に解舒されている糸部分が、走行路に対して振れたときに、捕捉部と接触する頻度が上がる。本発明では、捕捉部は、糸走行方向に対して、先端側ほど糸の走行路に近づくように傾斜して延びている。つまり、捕捉部の、解舒不良部を捕捉する先端部とは反対側の部分は、糸の走行路から離れることになる。従って、正常な糸部分が、走行中に捕捉部に接触しにくくなる。
【0015】
第3の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第2の発明において、前記糸規制部の、糸走行方向に対する傾斜角度は、前記捕捉部の、前記糸走行方向に対する傾斜角度よりも大きいことを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、糸規制部の、糸走行方向に対する傾斜角度は、捕捉部の傾斜角度よりも大きくなっている。つまり、捕捉部は、基材から突き出した形状となっており、解舒不良部を確実に捕捉することができる。一方で、糸規制部は、捕捉部と比べて、基材と平行に近い姿勢となり、基材に形成された糸通路からの糸の飛び出しが、糸規制部によって確実に防止される。
【0017】
第4の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記捕捉部は、糸走行方向上流側に向けて突き出した山状部を有し、前記山状部の頂部が丸みを帯びた形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
捕捉部の山状部には、輪状の解舒不良部が捕捉部に引っ掛かりやすくなる。一方で、捕捉部の山状部の頂部が丸みを帯びた形状であるため、正常な糸部分が山状部の頂部に接触しても、その糸部分が切断されたり、傷んだりしにくい。
【0019】
第5の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記捕捉部の稜線部が、丸みを帯びた形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
捕捉部の稜線部が丸みを帯びた形状であるため、正常な糸部分が捕捉部に接触したときに、その糸部分が、切断されたり、傷んだりしにくい。また、解舒不良部が捕捉部に引っ掛かったときに、その解舒不良部自体が捕捉部の稜線部で切断されてしまうと、解舒不良部の一部がパッケージ側へ移動してしまう虞がある。この点、捕捉部の稜線部が丸みを帯びた形状であると、捕捉部に引っ掛かった解舒不良部が、捕捉部の稜線部で切断されにくい。
【0021】
第6の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記捕捉部の表面粗さが、Ra0.1〜12.5の範囲にあることを特徴とするものである。
【0022】
捕捉部の表面粗さが大きすぎると、正常な糸部分が捕捉部に接触したときに、その糸部分が擦れて傷みやすい。以上より、捕捉部の表面粗さは、Ra0.1〜12.5の範囲にあり、さらには、Ra0.1〜1.6の範囲にあることが好ましい。
【0023】
第7の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第6の何れかの発明において、前記捕捉部は、板状の捕捉部形成部材の一部分が折り曲げられることによって、形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
板状の捕捉部形成部材の一部分を折り曲げることで、捕捉部を簡単に形成することができる。
【0025】
第8の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第7の発明において、前記糸規制部は、前記捕捉部形成部材とは別の、板状の糸規制部形成部材の一部分が折り曲げられることによって形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
糸規制部形成部材の一部分を折り曲げることで、糸規制部を簡単に形成することができる。また、本発明では、糸規制部と捕捉部とが別々の部材にそれぞれ形成された構成となっている。糸規制部と捕捉部は、糸通路の近くにおいて互いに近接して配置されることになるが、糸規制部と捕捉部とが異なる部材に設けられていると、糸規制部と捕捉部を分離可能となる。例えば、糸規制部や捕捉部の表面に、研磨等の作業を行おうとした際に、糸規制部と捕捉部とをそれぞれ離して別々に研磨等を行うことができ、作業が容易になる。
【0027】
第9の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第8の発明において、前記捕捉部形成部材の前記捕捉部と前記糸規制部形成部材の前記糸規制部とが、互いに重ねられた状態で、共通の取付部材によって、前記基材に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明では、捕捉部形成部材と糸規制部形成部材とが重ねられて、ネジ等の共通の取付部材によって基材に取り付けられている。これによれば、捕捉部形成部材と糸規制部形成部材を、基材の1箇所にまとめて取り付けることができ、基材側の被取付部分の大きさを小さくできる。また、1種類の取付部材によって2つの部材を基材に取り付けることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0029】
第10の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第9の何れかの発明において、前記捕捉部は、前記基材に固定されていることを特徴とするものである。これによれば、解舒不良部阻止装置の構造が簡単となる。
【0030】
第11の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記基材に、前記捕捉部が1つのみ設けられていることを特徴とするものである。このように、捕捉部の数が1つであると、解舒不良部阻止装置の構造が簡単になる。
【0031】
第12の発明の解舒不良部阻止装置は、前記第1〜第11の何れかの発明において、前記基材に、前記糸規制部が1つのみ設けられていることを特徴とするものである。このように、糸規制部の数が1つであると、構造が簡単になる。また、糸通路は、その長さ方向の一端のみが開放されている構成であり、糸通路の長さ方向他端側及び幅方向については糸の移動は規制されている。従って、糸通路からの糸の飛び出し防止という目的を達成するには、糸通路の開放側である前記一端側に糸規制部が1つ設けられるだけで十分である。
【0032】
第13の発明の解舒不良部阻止装置は、給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置の、前記給糸ボビンからの糸の解舒時に生じた解舒不良部が前記パッケージ側に移動するのを阻止する、解舒不良部阻止装置であって、
前記糸に含まれる前記解舒不良部を捕捉する捕捉部を備え、前記捕捉部は、糸走行方向に対して、その先端側ほど糸の走行路に近づくように傾斜して延びていることを特徴とするものである。
【0033】
本発明では、給糸ボビンの解舒不良が生じたときに、糸に含まれる解舒不良部が捕捉部によって捕捉される。また、捕捉部は、その先端の位置が糸の走行路に近いほど、解舒不良部を捕捉しやすくなる。但し、捕捉部の全体が、糸走行方向と平行に延びていると、給糸ボビンから正常に解舒されている糸部分が、走行路に対して振れたときに、捕捉部と接触する頻度が上がる。本発明では、捕捉部は、糸走行方向に対して、先端側ほど糸の走行路に近づくように傾斜して延びている。つまり、捕捉部の、解舒不良部を捕捉する先端部とは反対側の部分が、糸の走行路から離れることになる。従って、正常な糸部分が、捕捉部に接触しにくくなる。
【0034】
第14の発明の糸巻取装置は、給糸ボビンを保持する給糸部と、前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取部と、前記給糸ボビンからの糸の解舒時に生じた解舒不良部が前記糸巻取部に移動するのを阻止する、前記第1〜第13の何れかの発明の解舒不良部阻止装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明によれば、給糸ボビンの解舒不良が生じたときに、解舒不良部阻止装置において、糸に含まれる解舒不良部が捕捉部に引っ掛かって捕捉される。この状態でさらに糸巻取部での巻取が進むにつれて、糸巻取部と解舒不良部阻止装置の間において、糸に高いテンションが作用し、糸が引きちぎられるように分断される。このとき、解舒不良部は、捕捉部に引っ掛かった状態で残ることになる。これにより、解舒不良部が糸巻取部に移動するのが確実に防止される。
【0036】
第15の発明の糸巻取装置は、前記第14の発明において、糸切れ時に、前記糸巻取部側の糸端と前記給糸部側の糸端とを繋ぐ糸継装置と、前記糸巻取部側の糸端を吸引して捕捉し、前記糸継装置に案内する第1糸端案内部材と、前記給糸部側の糸端を吸引して捕捉し、前記糸継装置に案内する第2糸端案内部材と、をさらに備え、
前記解舒不良部阻止装置は、前記第2糸端案内部材の、前記給糸部側の糸端を捕捉するときの捕捉位置よりも、糸走行方向下流側に設けられていることを特徴とするものである。
【0037】
給糸部の給糸ボビンから解舒されて糸巻取部に向けて走行する糸に、糸切れが生じたときには、第1糸端案内部材が、糸巻取部側の糸端を捕捉して糸継装置に案内し、第2糸端案内部材が、給糸部側の糸端を捕捉して糸継装置に案内する。そして、糸継装置において、糸巻取部側の糸端と給糸部側の糸端とが繋がれる。
【0038】
解舒不良部阻止装置において糸に含まれる解舒不良部が捕捉されて、解舒不良部阻止装置と糸巻取部との間で糸が分断されることによる糸切れにおいても、上記の動作が行われる。ここで、上記の糸切れ時には、解舒不良部阻止装置においては、解舒不良部が捕捉部に引っ掛かったまま残っている。従って、第2糸端案内部材は、給糸部側の糸端を捕捉するためには、解舒不良部を捕捉部から外す必要がある。この点、本発明では、解舒不良部阻止装置は、第2糸端案内部材の、給糸部側の糸端を捕捉するときの捕捉位置よりも、糸走行方向下流側に設けられている。つまり、第2糸端案内部材の捕捉位置が、解舒不良部阻止装置の捕捉部よりも、糸走行方向上流側に位置している。従って、第2糸端案内部材が、捕捉部に引っ掛かっている解舒不良部を、糸走行方向上流側から吸引することにより、解舒不良部を確実に吸引することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、給糸ボビンから解舒された糸を巻取管に巻取って巻取パッケージを形成する巻取ユニットを多数備えた、自動ワインダーに本発明を適用した一例である。自動ワインダーは、1つのパッケージを形成する巻取ユニットが、一方向に多数列設された構成を有する。
図1は、自動ワインダーの1つの巻取ユニット1(糸巻取装置)の側面図である。なお、
図1において、右側を作業者が巻取ユニット1に対して作業を行う前側(正面側)、左側をその反対の後側(背面側)と定義する。
【0041】
図1に示すように、巻取ユニット1の各々は、ボビン供給装置2、給糸部3、及び、糸巻取部4を備えている。そして、巻取ユニット1は、ボビン供給装置2から供給された給糸ボビン8を給糸部3で保持しつつ、この給糸ボビン8から解舒される糸Yをトラバースさせながら巻取管6に巻き付けて、所定形状のパッケージPを形成する。
【0042】
ボビン供給装置2は、芯管に糸が巻き付けられてなる筒状の給糸ボビン8を複数貯留するとともに、貯留している給糸ボビン8のうちの1つを給糸部3に供給する。詳細には、ボビン供給装置2は、複数の給糸ボビン8を収容する円柱状のマガジン10と、このマガジン10の下方に配置され、マガジン10に収容された複数の給糸ボビン8のうちの1つを給糸部3へ向けて案内しながら落下させるガイドシュート11を有する。なお、巻取ユニット1の機台7に、支持フレーム12が、例えばネジ止めによって、着脱可能に設けられており、マガジン10とガイドシュート11は、給糸部3のペッグ16に向くように鉛直方向に対して前側にやや傾いた姿勢で、それぞれ支持フレーム12に取り付けられている。
【0043】
マガジン10は、支持フレーム12に取り付けられた回動軸13を中心に回動可能に構成されている。このマガジン10には、周方向に配置されて、それぞれ給糸ボビン8が収容される複数のボビン収容孔(図示省略)が形成されている。また、マガジン10の下側には、複数のボビン収容孔にそれぞれ収容された複数の給糸ボビン8を受けるボビン受け板14が設けられている。ボビン受け板14には切欠部(図示省略)が形成されており、マガジン10が回動して、ある給糸ボビン8が切欠部の上方に位置したときに、その給糸ボビン8が、切欠部を介して、ガイドシュート11へ落下するように構成されている。
【0044】
ガイドシュート11は左右1対の開閉部材15を有し、開閉部材15が開放状態であるときに、マガジン10から落下してきた給糸ボビン8を給糸部3まで案内する。また、開閉部材が閉止状態であるときには、マガジン10から給糸部3への給糸ボビン8の落下が阻止される。
【0045】
給糸部3は、給糸ボビン8の芯管の下端部に挿入されることによって給糸ボビン8を保持するペッグ16と、ペッグ16に保持されている給糸ボビン8を給糸部3の外に排出する跳ね板17を有する。
【0046】
ペッグ16は、前後方向に揺動可能であり、ボビン供給装置2から給糸ボビン8が供給される際には、その先端部がガイドシュート11側を向くように前側に傾いた姿勢となり、糸Yの巻取時には、直立した姿勢となる。
【0047】
跳ね板17は、ペッグ16によって給糸ボビン8が直立状態で保持されているときには、
図1に示す水平な状態で待機しており、このとき、跳ね板17には給糸ボビン8の下端が当接している。この状態から跳ね板17が前方に回動し、その上に載っている給糸ボビン8を前方へ跳ね飛ばすことによって、給糸ボビン8を排出する。
【0048】
給糸部3と糸巻取部4との間の糸走行経路には、給糸部3側から順に、糸解舒補助装置19、解舒不良部阻止装置20、テンション付与装置21、糸継装置22、クリアラー23、ワキシング装置24が配設されている。
【0049】
糸解舒補助装置19は、給糸ボビン8の上端部に被せられる可動筒体29を、糸Yの解舒が進行するに従って下降させることで、解舒中の糸Yの膨らみ(バルーン)を規制し、これにより、解舒張力を安定させる。
【0050】
解舒不良部阻止装置20は、給糸ボビン8において、輪抜け(スラッフィング)などの糸Yの解舒不良が生じたときに、糸Yが糸巻取部4で巻き取られるパッケージP側に送られるのを阻止する。この解舒不良部阻止装置20の詳細な構成については、後述する。
【0051】
テンション付与装置21は、走行する糸Yに所定のテンションを付与するためのものである。このテンション付与装置21としては、例えば、固定櫛歯とこの固定櫛歯に対して移動可能に配設された可動櫛歯とを有する、ゲート式のものを使用できる。
【0052】
糸継装置22は、次述のクリアラー23が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン8からの糸解舒中の糸切れ時に、糸巻取部4側の糸(上糸Y1)と給糸部3側の糸(下糸Y2)とを糸継ぎするものである。この糸継装置22としては、例えば、上糸端と下糸端のそれぞれの撚り戻しを行う解撚ノズルと、解撚された両糸端に旋回空気流を作用させて撚り合わせを行う撚り掛けノズルとを有する、いわゆる、エア式の糸継装置(エアスプライサー)を使用できる。
【0053】
クリアラー23はスラブ等の糸欠陥や、糸の有無を検出するためのものであって、糸欠陥検出時の糸切断用のカッターが付設されている。また、ワキシング装置24は、糸Yにワックスを塗布するためのものである。
【0054】
糸継装置22の上下には、パッケージP側の上糸Y1を吸引捕捉して糸継装置22へ案内する上糸捕捉案内部材26(第1糸端案内部材)と、給糸ボビン8側の下糸Y2を吸引捕捉して糸継装置22へ案内する下糸捕捉案内部材25(第2糸端案内部材)が設けられている。上糸捕捉案内部材26はパイプ状に構成されており、軸26aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部にマウス26bが設けられている。同様に下糸捕捉案内部材25もパイプ状に構成されており、軸25aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部には吸引口25bが設けられている。さらに、上糸捕捉案内部材26及び下糸捕捉案内部材25には適宜の負圧源が接続されているとともに、それらの先端のマウス26b及び吸引口25bから空気を吸引して糸端を捕捉することができるようになっている。
【0055】
糸巻取部4は、巻取管6を回転自在かつ着脱可能に支持する1対のクレードルアームを有するクレードル27と、クレードル27に支持された巻取管6の表面、又は、巻取管6に形成されたパッケージPの表面に接触可能な綾振ドラム28を備えている。そして、糸巻取部4は、綾振ドラム28が巻取管6(又は、パッケージPの表面)に接触した状態で、図示しないドラム駆動モータにより綾振ドラム28を回転駆動することで、糸Yを綾振りしながら巻取管6を従動回転(連れ回り)させて、巻取管6の外周にパッケージPを形成するように構成されている。
【0056】
次に、解舒不良部阻止装置20について詳細に説明する。
図1に示すように、解舒不良部阻止装置20は、テンション付与装置21の下側(糸走行方向上流側)に配置されている。
図2は、解舒不良部阻止装置20の斜視図である。
図3は、解舒不良部阻止装置20の下面図である。
図4(a)は、
図3のA−A矢視図、(b)は、
図3のB−B矢視図である。尚、
図2に示すように、前方(正面側)に位置する作業者から見たときの上下左右の方向を、それぞれ、解舒不良部阻止装置20の上下左右と定義する。
【0057】
図2〜
図4に示すように、解舒不良部阻止装置20は、捕捉部形成部材31と、糸規制部形成部材32とを有する。捕捉部形成部材31と糸規制部形成部材32は、共に基材30に取り付けられている。尚、
図2では、図面をわかりやすくするため、基材30を二点鎖線で示している。
【0058】
基材30は板状の部材であり、この基材30は、
図1に示されるテンション付与装置21を収容するケースの下面に固定されている。基材30の前側部分の中央部には、基材30の前端から後方へ延びるスリット状の糸通路30aが形成されている。糸通路30aの前端は開放される一方、糸通路30aの後端は閉じており、巻取ユニット1への糸掛け時に、糸通路30aには、開放された前端から糸Yが挿入される。パッケージPの巻取時には、解舒不良部阻止装置20の下側に位置する給糸ボビン8から解舒された糸Yが、糸通路30aを通過して、上方の糸巻取部4へ向けて走行する。尚、糸通路30aを通過する糸Yの走行路33の位置は、基材30の糸走行方向上流側(下側)の、糸解舒補助装置19の可動筒体29(
図1参照)と、基材30の糸走行方向下流側(上側)の、テンション付与装置21(
図1参照)によって定まる。但し、走行中の振動によって、糸Yは、上記走行路33を中心に、前後左右の方向に振れる。
【0059】
図2、
図3に示すように、捕捉部形成部材31と糸規制部形成部材32は、共に、板状の部材である。これら2枚の板状部材31,32は、基材30の下面の糸通路30aよりも右側の領域に、糸規制部形成部材32、捕捉部形成部材31の順に重ねられた状態で、共通の2本のネジ34(取付部材)によって基材30に固定されている。捕捉部形成部材31には、給糸部3において、スラッフィング等の給糸ボビン8の解舒不良が生じたときに、糸Yに含まれる解舒不良部を捕捉する捕捉部35が形成されている。糸規制部形成部材32には、糸通路30aからの糸Yの飛び出しを規制する糸規制部36が形成されている。
【0060】
図2、
図3に示すように、捕捉部形成部材31の、糸通路30aよりも後側に位置する部分が、前後方向に延びる折り曲げ部で下方に折り曲げられることによって、捕捉部35が形成されている。この捕捉部35の前側部分には、糸走行方向(上下方向)から見て、糸通路30aと重なる領域まで少し張り出し、且つ、糸走行方向下流側から上流側(下方)に山状に突き出した、山状部35aが形成されている。
図4(a)に示すように、捕捉部35の山状部35aの、糸Yの走行路33に近い辺が走行路33とほぼ平行であり、糸Yの走行路33と反対側に位置する辺は、糸Yの走行路33に対して傾斜している。また、
図3、
図4(b)から理解されるように、板状の捕捉部35は、山状部35aの先端(下端)側ほど糸Yの走行路33に近づくように、糸Yの走行路33に対して傾斜している。具体的には、捕捉部35は、糸Yの走行路33に対して、その先端部が左斜め下方に向かうように傾斜している。また、捕捉部35の、糸Yの走行路33に対する傾斜角度は、例えば、10度程度である。尚、本実施形態において、捕捉部35の「傾斜角度」とは、板状の捕捉部35を含む平面の、糸Yの走行路33を含む鉛直面に対する、傾き(
図4(b)のα)のことを言う。
【0061】
給糸ボビン8に解舒不良が発生し、給糸部3から糸巻取部4へ向けて走行する糸Yに輪状の解舒不良部Yaが含まれている場合、この解舒不良部Yaは、
図2に示すように、基材30から下方に突き出した捕捉部35の山状部35aに引っ掛かって捕捉される。
【0062】
図2、
図3に示すように、糸規制部形成部材32の前側部分が、前後方向に延びる折り曲げ部で下方へ折り曲げられることによって、糸規制部36が形成されている。また、糸規制部36は、捕捉部35よりも、糸通路30aの開放側である前方に配置されている。板状の糸規制部36は、糸通路30aの、前端部の下側において、スリット状の糸通路30aの長さ方向である前後方向、及び、糸走行方向である上下方向とそれぞれ交差する方向に延びている。具体的には、糸規制部36は、その先端部が左斜め下方に向かうように延びている。糸規制部36の、糸Yの走行路33に対する傾斜角度は、例えば、45度程度である。尚、本実施形態において、糸規制部36の「傾斜角度」とは、板状の糸規制部36を含む平面の、糸Yの走行路33を含む鉛直面に対する、傾き(
図4(b)のβ)のことを言う。
【0063】
糸規制部36は、後端部が前端部よりも長さが長い、ほぼ台形の平面形状を有する。そして、糸規制部36の先端縁部36aは、前後方向に対して、90度以外の角度で交差している。この糸規制部36により、糸通路30aを通過する糸Yが、糸通路30aの開放された前端から飛び出すことが防止される。さらに、
図3に示すように、糸走行方向から見て、糸規制部36は、その後側部分においてのみ、糸通路30aをその幅方向に跨るように配置されている。これにより、糸通路30aに対して、前方から、糸規制部36の先端縁部36aに沿って糸Yを挿入していくことで、糸通路30aへ、比較的容易に糸Yを挿入できるようになっている。
【0064】
図2、
図4に示すように、捕捉部35の山状部35aは糸規制部36よりも下方に突き出ており、山状部35aの先端(頂部35b)は、糸規制部36の先端よりも下側(糸走行方向上流側)に位置している。さらに、捕捉部35の山状部35aの先端は、糸規制部36の先端よりも、糸Yの走行路33に近い位置にある。即ち、山状部35aの頂部35bは、糸Yの走行路33の近傍に位置している。
【0065】
図2〜
図4に示すように、捕捉部35の角部(特に、山状部35aの頂部35b)や糸規制部36の角部は、丸みを帯びた形状に形成されている。また、捕捉部35を形成する稜線部(例えば、
図2の符号Aで示す部分)、及び、糸規制部36を形成する稜線部(例えば、
図2の符号Bで示す部分)も、丸みを帯びた形状に形成されている。捕捉部35の角部、糸規制部36の角部、捕捉部35の稜線部、及び、糸規制部36の稜線部の、丸みの程度(曲率)は、例えば、R0.2〜R5である。尚、「稜線部」とは、捕捉部35や糸規制部36における、異なる2表面の間の部分をいう。上記の捕捉部35や糸規制部36の、角部及び稜線部の丸みは、研磨等の公知のR加工によって実現できる。
【0066】
以上の解舒不良部阻止装置20において、基材30に形成されたスリット状の糸通路30aに糸Yが挿入され、下側の給糸ボビン8から解舒された糸Yは、糸通路30aを通過して、上側の糸巻取部4へ向けて走行する。ここで、走行中の糸Yは、走行路33に対して、走行路33と直交する方向に常に振動しているが、糸通路30aからの糸Yの飛び出しは、糸通路30aの長さ方向、及び、糸Yの走行路33とそれぞれ交差する方向に延びる、糸規制部36によって規制される。従って、解舒不良部阻止装置20を通過する糸Yの振れが抑制されるため、給糸ボビン8の解舒不良が生じたときに、糸Yに含まれる解舒不良部Yaが、糸Yの走行路33から大きく外れることがない。
【0067】
その上で、解舒不良部Yaを捕捉する捕捉部35の先端は、糸規制部36の先端よりも、糸Yの走行路33に近い位置にある。上記のように、糸規制部36によって、糸Yの位置が、走行路33から大きく外れにくくなるから、解舒不良部Yaが捕捉部35によって良好に捕捉される。尚、後でも説明するが、解舒不良部Yaが捕捉部35によって捕捉されると、解舒不良部阻止装置20よりも下流側(上側)の糸Yのテンションが高くなり、この糸Yが引きちぎられるように分断されて、糸Yの巻取が停止する。
【0068】
また、
図4(b)に示すように、捕捉部35は、糸走行方向に対して、その先端側ほど糸Yの走行路33に近づくように傾斜して延びている。ここで、捕捉部35の全体が、糸Yの走行路33と平行に延びていてもよいのだが、その場合、給糸ボビン8から正常に解舒されている糸部分が、走行路33に対して振れたときに、捕捉部35と接触する頻度が上がる。本実施形態では、捕捉部35が、その先端側ほど糸Yの走行路33に近づくように傾斜して延びているため、捕捉部35の、解舒不良部Yaを捕捉する先端部とは反対側の部分が、糸Yの走行路33から離れることになる。従って、正常な糸部分が、捕捉部35に接触しにくくなる。
【0069】
図4(b)に示すように、糸規制部36の、糸走行方向に対する傾斜角度βは、捕捉部35の傾斜角度αよりも大きくなっている。つまり、捕捉部35は、基材30から突き出した形状となっており、糸Yに含まれる解舒不良部Yaを確実に捕捉することができる。一方で、糸規制部36は、捕捉部35と比べて、基材30と平行に近い姿勢となり、基材30に形成された糸通路30aからの糸Yの飛び出しが、糸規制部36によって確実に防止される。
【0070】
また、捕捉部35が、下方へ突き出た山状部35aを有するため、この山状部35aに、輪状の解舒不良部Yaが引っ掛かりやすくなる。一方で、捕捉部35の角部、特に、山状部35aの頂部35bが、丸みを帯びた形状であるため、正常な糸部分が山状部35aの頂部35bに接触しても、その糸部分が切断されたり、傷んだりしにくい。
【0071】
また、捕捉部35の稜線部も丸みを帯びた形状であるため、正常な糸部分が捕捉部35の稜線部に接触したときに、その糸部分が、切断されたり、傷んだりしにくい。さらに、解舒不良部Yaが捕捉部35に引っ掛かったときに、その解舒不良部Ya自体が捕捉部35の稜線部で切断されてしまうと、解舒不良部Yaの一部がパッケージP側へ移動してしまう虞がある。この点、捕捉部35の稜線部が丸みを帯びた形状であると、捕捉部35に引っ掛かった解舒不良部Yaが、捕捉部35の稜線部で切断されにくい。
【0072】
また、糸規制部36の角部、及び、稜線部も丸みを帯びた形状であるため、糸通路30aへ糸Yを挿入する際、あるいは、巻取中の糸Yの振動によって、糸Yが糸規制部36に接触しても、糸Yが切断されたり、傷んだりしにくい。
【0073】
尚、捕捉部35の表面粗さは、大きすぎることのない、適当な範囲にあることが好ましい。捕捉部35の表面粗さが大きすぎると、正常な糸部分が捕捉部35に接触したときに、その糸部分が擦れて傷みやすい。具体的には、捕捉部35の表面粗さは、Ra0.1〜12.5の範囲にあり、さらには、Ra0.1〜1.6の範囲にあることが好ましい。
【0074】
本実施形態では、捕捉部35は、板状の捕捉部形成部材31の一部分が折り曲げられることによって形成されている。これにより、捕捉部35を簡単に形成することができる。同様に、糸規制部36は、板状の糸規制部形成部材32の一部分が折り曲げられることによって形成されている。これにより、糸規制部36を簡単に形成することができる。
【0075】
また、糸規制部36と捕捉部35とが別々の部材にそれぞれ形成されている。
図2〜
図4に示すように、糸規制部36と捕捉部35は、糸通路30aの下方において、互いに近接して配置されるが、糸規制部36と捕捉部35とが異なる部材に設けられていると、近接して配置される糸規制部36と捕捉部35を分離可能となる。例えば、糸規制部36や捕捉部35の表面に、研磨等の作業を行おうとした際に、糸規制部36と捕捉部35とをそれぞれ離して別々に研磨等を行うことができ、作業が容易になる。また、糸規制部36と捕捉部35の間に糸屑が絡んでしまった場合などに、糸規制部36と捕捉部35とを分離することで、糸屑を取り除くことが容易になる。
【0076】
さらに、捕捉部形成部材31と糸規制部形成部材32とが重ねられて、共通の取付部材であるネジ34によって基材30に取り付けられている。これにより、捕捉部形成部材31と糸規制部形成部材32を、基材30の1箇所にまとめて取り付けることができ、基材30側の被取付部分の大きさを小さくできる。また、1種類の取付部材によって2つの部材31,32を基材30に取り付けることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0077】
また、捕捉部35(捕捉部形成部材31)や糸規制部36(糸規制部形成部材32)は、基材30に固定されている。これによれば、捕捉部35や糸規制部36を可動に構成する場合と比較して、解舒不良部阻止装置20の構造が簡単となる。
【0078】
また、基材30には、1つの捕捉部35と1つの糸規制部36が設けられている。これによると、捕捉部35や糸規制部36が複数設けられている構成と比べて、解舒不良部阻止装置20の構造が簡単となる。また、特に、糸規制部36については、複数設ける必要がそもそもない。というのも、糸通路30aは、長さ方向の一端側(前方)のみが開放されており、長さ方向他端側(後方)及び幅方向(左右方向)については糸Yの移動は規制されている。従って、糸通路30aからの糸Yの飛び出し防止という目的を達成するには、糸通路30aの開放側である前記一端側に糸規制部36が1つ設けられるだけで十分である。
【0079】
次に、給糸ボビン8に解舒不良が生じた場合の、巻取ユニット1の一連の動作について、主に
図1を参照して説明する。
【0080】
給糸ボビン8にスラッフィング等の解舒不良が生じると、輪状の解舒不良部Yaが発生し、この解舒不良部Yaは、糸Yの走行に従って給糸部3から上方に移動する。しかし、
図2に示すように、解舒不良部Yaは、解舒不良部阻止装置20の、糸走行方向下流側に突き出した、捕捉部35の山状部35aに引っ掛かる。これにより、解舒不良部Yaが、糸巻取部4で巻き取られるパッケージP側に移動することが阻止される。
【0081】
解舒不良部阻止装置20の捕捉部35に解舒不良部Yaが引っ掛かった状態で糸巻取部4による糸Yの巻取が続くと、解舒不良部阻止装置20と糸巻取部4との間の糸Yのテンションが上がり、この間で糸Yが引きちぎられて分断される。これによる糸切れはクリアラー23で検出され、糸切れ検出後、クリアラー23に付設されたカッターが速やかに糸Yを切断する。同時に、糸巻取部4におけるパッケージPの巻取が一時停止する。カッターによる糸切断後には、糸巻取部4側の上糸Y1の糸端は、パッケージPの表面に付着する。また、給糸部3側の下糸Y2の糸端は、捕捉部35に引っ掛かったままの解舒不良部Yaとともに、解舒不良部阻止装置20の近傍に残る。
【0082】
上糸Y1の糸端は、上糸捕捉案内部材26のマウス26bに吸引捕捉される。その糸端を捕捉した状態のままで、上糸捕捉案内部材26が下方へ回動することにより、マウス26bに捕捉された上糸Y1の糸端が、糸継装置22へ案内される。また、下糸Y2の糸端は、下糸捕捉案内部材25の吸引口25bに吸引捕捉される。同様に、糸端の捕捉状態のままで、下糸捕捉案内部材25が上方へ回動することにより、吸引口25bに捕捉された下糸Y2の糸端が糸継装置22へ案内される。
【0083】
ここで、下糸捕捉案内部材25の吸引口25bが、下糸Y2の糸端を捕捉するためには、基材30から下方に突き出ている捕捉部35に引っ掛かった、解舒不良部Yaを、捕捉部35から外す必要がある。そのために、本実施形態では、解舒不良部阻止装置20は、下糸捕捉案内部材25の吸引口25bの、下糸Y2の糸端を捕捉するときの捕捉位置(
図1に二点鎖線で示す位置)よりも、上側(糸走行方向下流側)に設けられている。言い換えれば、下糸捕捉案内部材25の吸引口25bの捕捉位置が、解舒不良部阻止装置20の捕捉部35よりも、下側(糸走行方向上流側)となる。これにより、下糸捕捉案内部材25は、捕捉部35に引っ掛かっている解舒不良部Yaを、捕捉部35の下方から吸引することができ、解舒不良部Yaを確実に吸引することができる。
【0084】
次に、糸継装置22において、上糸捕捉案内部材26によって案内されてきた上糸Y1の糸端と、下糸捕捉案内部材25によって案内されてきた下糸Y2の糸端とが繋がれる。尚、このとき、下糸捕捉案内部材25によって捕捉されている解舒不良部Yaは、糸継装置22内での糸継の際に切断除去されるため、糸継がなされた後の糸Yに、解舒不良部Yaが残ることはない。糸継装置22による糸継が完了すると、糸巻取部4による糸Yの巻取が再開される。
【0085】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0086】
1]捕捉部35及び糸規制部36の構成は、前記実施形態のものには限られず、適宜変更可能である。例えば、それらの形状、数、配置等について、例えば以下のように、変更可能である。
【0087】
(a)
図5、
図6の形態では、捕捉部形成部材31の後側部分が、左右方向に延びる折り曲げ部で下方に折り曲げられて、山状の捕捉部35が形成されている。捕捉部35は、その先端(頂部)において、糸Yの走行路33に最も近接している。また、
図6に示すように、捕捉部35の、上下方向から見て、糸Yの走行路33に関して互いに反対側に位置する2辺が、同じ長さとなっている。即ち、捕捉部35は、二等辺三角形の平面形状を有する山状部35aを有する。この形態においても、捕捉部35の先端は、糸規制部36の先端よりも糸Yの走行路33に近い位置にあり、糸Yの走行路33の近傍にある。従って、糸Yに含まれる解舒不良部が、捕捉部35に引っ掛かりやすくなる。
【0088】
(b)捕捉部35や糸規制部36の、糸Yの走行路33に対する傾斜角度は適宜変更できる。前記実施形態では、糸規制部36の傾斜角度が、捕捉部35の傾斜角度よりも大きくなっていたが、逆の関係であってもよい。即ち、糸規制部36の、糸走行方向に対する傾斜角度が小さい場合でも、糸規制部36の長さが、糸通路30aの幅に対して十分長ければ、糸通路30aからの飛び出しを防止することは可能である。また、捕捉部35が糸Yの走行路33に対して傾斜していることも必須ではなく、捕捉部35が、糸Yの走行路33と平行に延びていてもよい。
【0089】
(c)
図2に示すように、前記実施形態では、糸Yの走行路33に対して、捕捉部35が後側に配置されているが、捕捉部35は、糸規制部36よりも後側の位置であれば、糸Yの走行路33に対してどの方向に配置されていてもよい。
【0090】
(d)捕捉部35の数は1つには限られない。例えば、
図7に示すように、捕捉部形成部材31に2つの山状の捕捉部35が形成されてもよい。この場合、2つの捕捉部35は、糸Yの走行路33を挟むように配置されていることが好ましい。また、複数の捕捉部35が、糸Yの走行路33を取り囲むように配置されてもよい。
【0091】
(e)前記実施形態では、捕捉部35と糸規制部36とが、別々の部材に形成されていたが、捕捉部35と糸規制部36とが、同じ部材に形成されてもよい。
【0092】
(f)捕捉部35と糸規制部36の少なくとも一方が、基材30に対して、移動可能に取り付けられていてもよい。この場合、捕捉部35又は糸規制部36を基材30に対して移動させることにより、捕捉部35や糸規制部36に引っ掛かった糸屑等を除去することが容易になる。また、糸規制部36が移動可能である場合には、糸通路30aに糸Yを挿入するときに、糸規制部36を、糸通路30aから離れた位置に移動させるようにすれば、糸通路30aへの糸Yの挿入が容易になる。
【0093】
(g)捕捉部35は板状である必要はない。例えば、棒状の捕捉部35が、基材30の下面から突き出すように配置されていてもよい。同様に、糸規制部36も、板状である必要はない。
【0094】
2]本発明の捕捉部35を、特許文献1に記載されているような、従来の解舒不良部阻止装置に適用することも可能である。
図8の解舒不良部阻止装置20Aは、2つのガイド部材53,54と、揺動アーム52と、捕捉部形成部材51等を備えている。2つのガイド部材53,54と、揺動アーム52と、捕捉部形成部材51は、それぞれ、基材50に取り付けられている。
【0095】
基材50には、前後方向に延びるスリット状の糸通路50aが形成されている。2つのガイド部材53,54は、基材50の下面において、糸通路50aを通過する糸Yの走行路33の両側において、隙間57を空けて配置されている。尚、一方のガイド部材53は基材50に固定され、他方のガイド部材54は、基材50に左右方向に移動可能に取り付けられている。そして、ガイド部材54を移動させることによって隙間57の大きさを調整可能である。具体的には、ガイド部材54にはスライド部材58が連結されており、調整レバー59を操作してスライド部材58を左右に動かすことによって、ガイド部材54の位置を調整する。糸Yに解舒不良部が含まれている場合に、解舒不良部は、2つのガイド部材53,54の隙間57に捕捉される。
【0096】
揺動アーム52は、基材50に揺動自在に取り付けられている。揺動アーム52の先端部には、糸通路30aからの糸Yの飛び出しを防止する糸規制部56が形成されている。揺動アーム52を基材50に対して揺動させることにより、図で示されている糸規制部56が糸通路50aと重なった姿勢と、糸規制部56が糸通路50aから離れた姿勢との間で、揺動アーム52の姿勢を切り換えることが可能となっている。
【0097】
ガイド部材54の下側(
図8の紙面手前側)には、捕捉部形成部材51が取り付けられている。捕捉部形成部材51の左端部が下方(紙面手前側)に折り曲げられることにより、捕捉部55が形成されている。捕捉部55は、その前後方向中央部に1つの山状部55aを有する。山状部55aは、揺動アーム52の糸規制部56よりも、糸Yの走行路33に近い位置に配置され、山状部55aの先端は糸Yの走行路33に近接している。
【0098】
この解舒不良部阻止装置20Aでは、従来から知られている、2つのガイド部材53,54の隙間57における解舒不良部の阻止に加えて、捕捉部55による解舒不良部の捕捉も可能である。従って、解舒不良部をより確実に捕捉することが可能である。
【0099】
尚、
図8において、捕捉部55が、2つの山状部55aを有するものであってもよい。この場合の2つの山状部55aは、糸通路50aの前後方向に並んで配置されるとともに、2つの山状部55aの間に糸Yの走行路33が位置するように配置されるとよい。
【0100】
また、ここで説明した構成の捕捉部形成部材51及び揺動アーム52を、従来の解舒不良部阻止装置と組み合わせることなく基材50に取り付けるようにしてもよい。即ち、解舒不良部阻止装置が、2つのガイド部材53,54や、スライド部材58及び調整レバー59からなる調整機構を備えずに、1つ又は2つの山状部55aを有する捕捉部55が形成された捕捉部形成部材51と、糸規制部56が形成された揺動アーム52とを備えた構成としてもよい。
【0101】
3]糸通路からの糸Yの飛び出しを防止する糸規制部を省略することも可能である。例えば、糸通路が、その途中で曲がった形状など、糸Yが抜けにくい形状を有する場合は、糸規制部がなくても糸Yの飛び出しを防止できる。
【0102】
4]巻取ユニット1のその他の構成についても、前述した実施形態に限定されるものではない。
【0103】
例えば、ボビン供給装置2は、前述のマガジン式の構成に限定されず、例えば公知のトレイ式の構成であってもよい。糸解舒補助装置19は、可動筒体29が昇降する構成に限定されず、例えば公知の固定式の構成であってもよい。テンション付与装置21は、ゲート式の構成に限定されず、例えば公知のディスク式の構成であってもよい。糸継装置22は、エア式の構成に限定されず、例えば公知の機械式の構成であってもよい。糸巻取部4は、パッケージPを綾振ドラム28で間接的に回転駆動する構成に限定されず、パッケージPをモータで直接駆動し、綾振り用のアームを新たに備える構成であってもよい。
【0104】
また、巻取ユニット1が、糸巻取部4よりも糸走行方向上流側に糸貯留装置を備える構成であってもよい。糸貯留装置は、給糸ボビン8から解舒された糸Yを巻取って一時的に貯留する装置である。糸貯留装置を備える構成であれば、不良部阻止装置20,20Aで解舒不良部Yaを捕捉した結果、糸Yが分断して給糸ボビン8から糸Yが解舒されなくなった状態でも、糸巻取部4は糸貯留装置に貯留された糸Yを巻き取ることによって、パッケージPの巻取を続行することができる。