【解決手段】ガラス板の製造方法であって、熔融ガラスをスターラを用いて撹拌する撹拌工程を備え、前記スターラは、回転軸と、互いに間隔をあけて配された複数の撹拌翼と、を有し、前記撹拌翼は、複数の支持部と、前記支持部の一面上に、凹状に形成された第1の羽根部材と、前記支持部の他面上に、凸状に形成された第2の羽根部材と、を含むとともに、前記支持部の一面から他面に流路が形成され、前記撹拌工程では、前記熔融ガラスが、撹拌槽の内壁から前記第1の羽根部材に向かう第1の方向に流れ、その後、前記流路を通って前記第2の羽根部材に向けて流れ、さらに、前記撹拌槽の内壁に向かう前記第2の方向に流れる熔融ガラスの流れをつくることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス基板の品質向上に対する要求の高まりに伴って、熔融ガラスの均質化の程度も高くすることが求められている。しかし、従来の撹拌装置では、熔融ガラスが流動する経路が短いために、熔融ガラスの均質化の効果が十分ではない場合があった。
本発明は、熔融ガラスが流動する経路を確保することにより、熔融ガラスの均質化を十分に行うことのできるガラス板の製造方法、および撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ガラス板の製造方法であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解工程と、
熔融ガラスを撹拌槽内でスターラを用いて撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌された熔融ガラスを成形してシートガラスをつくる成形工程と、を備え、
前記スターラは、回転軸と、前記回転軸の軸方向に沿って互いに間隔をあけて配された複数の撹拌翼と、を有し、
前記撹拌翼は、前記回転軸と直交するように前記回転軸から前記撹拌槽の内壁に向かって板状に延びた複数の支持部と、前記支持部の一面上に、前記スターラが回転する方向に凹状に形成された第1の羽根部材と、前記支持部の他面上に、前記スターラが回転する方向に凸状に形成された第2の羽根部材と、を含むとともに、前記支持部の一面から他面に前記熔融ガラスが流れる流路が形成され、
前記撹拌工程では、前記スターラを一方の回転方向に回転させることで、前記熔融ガラスが、前記撹拌槽の内壁から前記第1の羽根部材に向かう第1の方向に流れ、その後、前記流路を通って前記第2の羽根部材に向けて流れ、さらに、前記第2の羽根部材から前記撹拌槽の内壁に向かう前記第2の方向に流れる熔融ガラスの流れをつくることを特徴とする。
【0006】
前記製造方法において、前記軸方向に隣り合う2つの撹拌翼の前記軸方向の間隔は、前記撹拌翼の前記回転軸から離れる方向の長さより大きいことが好ましい。
【0007】
前記製造方法において、前記撹拌工程において、前記スターラによって撹拌される熔融ガラスは、10
2.5dPa・sの粘度における温度が1450℃以上である場合に好適である。
【0008】
本発明の別の一態様は、撹拌装置であって、
熔融ガラスが供給される撹拌槽と、
前記撹拌槽に配されたスターラと、を備え、
前記スターラは、回転軸と、前記回転軸の軸方向に沿って互いに間隔をあけて配された複数の撹拌翼と、を有し、
前記撹拌翼は、前記回転軸と直交するように前記回転軸から前記撹拌槽の内壁に向かって板状に延びた複数の支持部と、前記支持部の一面上に、前記スターラが回転する方向に凹状に形成された第1の羽根部材と、前記支持部の他面上に、前記スターラが回転する方向に凸状に形成された第2の羽根部材と、を含むとともに、前記支持部の一面から他面に前記熔融ガラスが流れる流路が形成され、
前記撹拌翼は、前記スターラが一方の回転方向に回転するとき、前記熔融ガラスが、前記撹拌槽の内壁から前記第1の羽根部材に向かう第1の方向に流れ、その後、前記流路を通って前記第2の羽根部材に向けて流れ、さらに、前記第2の羽根部材から前記撹拌槽の内壁に向かう第2の方向に流れる熔融ガラスの流れをつくることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熔融ガラスが流動する経路を確保することにより、熔融ガラスの均質化を十分に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るガラス板の製造方法、撹拌装置について説明する。
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法のフローを示す図である。
【0012】
(ガラス板の製造方法)
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、撹拌工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0013】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置200を模式的に示す図である。当該装置200は、熔解槽40と、清澄槽41と、撹拌装置100と、成形装置42とを備える。熔解槽40と清澄槽41とは、導管43aによって接続されている。清澄槽41と撹拌装置100とは、導管43bによって接続されている。撹拌装置100と成形装置42とは、導管43cによって接続されている。熔解槽40で生成された熔融ガラスGは、導管43aを通過して清澄槽41に流入する。清澄槽41で清澄された熔融ガラスGは、導管43bを通過して撹拌装置100に流入する。撹拌装置100で撹拌された熔融ガラスGは、導管43cを通過して成形装置42に流入する。成形装置42では、ダウンドロー法により熔融ガラスGからシートガラス44が成形される。
【0014】
熔解工程(ST1)では、熔解槽40内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および/または電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスGを得る。
清澄工程(ST2)は、清澄槽41において行われ、清澄槽41内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれる酸素やSO
2の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により、成長し液面に浮上して放出され、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
撹拌工程(ST3)では、導管43bを通って供給された熔融ガラスを、撹拌装置100において撹拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、導管43cを通して熔融ガラスが成形装置42に供給される。
【0015】
成形工程(ST5)では、成形装置42において、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。本実施形態では、成形体45を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。なお、成形工程(ST5)では、スロットダウンドロー法を用いて成形を行ってもよい。また、他の実施形態では、フロート法、ロールアウト法、リドロー法等の他の方法が用いられてもよい。
徐冷工程(ST6)では、成形装置300から供給されるシートガラス44が所望の厚さになり、平面歪が生じないように、さらに、熱収縮率が大きくならないように、冷却される。
切断工程(ST7)では、図示されない切断装置において、成形装置42からシートガラス44を所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板は、さらに、所定のサイズに切断され、目標のサイズのガラス板が作製される。この後、ガラス端面の研削・研磨が行われた後、洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0016】
(撹拌装置)
次に、
図3〜
図7を参照して、撹拌装置100について説明する。
図3は、撹拌装置100の側面図である。
図4は、撹拌装置100の撹拌翼の斜視図である。
図5は、当該撹拌翼の平面図である。
図6は、隣り合う2つの撹拌翼の配置関係を説明する図である。
図7は、撹拌装置100における熔融ガラスの流れを示す図である。
撹拌装置100は、円筒形状の撹拌槽101と、撹拌槽101の内部に配置されるスターラ102とを備えている。
撹拌槽101は、上部側面に導管43bが取り付けられ、下部側面に導管43cが取り付けられている。なお、
図3および
図7には、便宜のため、
図2の紙面奥側から見た撹拌槽100を示す。熔融ガラスGは、導管43bから水平方向に撹拌槽101内に流入し、撹拌槽101内において上方から下方に導かれながらスターラ102によって撹拌され、撹拌槽101内から水平方向に導管43cへ流出する。
スターラ102は、鉛直方向に沿って配置される回転軸105と、回転軸105に取り付けられた5つの撹拌翼106a,106b,106c,106d,106eとを有している。スターラ102は、撹拌工程において、回転軸105の中心線Oの周りに回転する。スターラ102は、反時計回りに回転することで撹拌を行うが、時計回りに回転して撹拌してもよい。スターラ102は、白金または白金合金にジルコニア等の酸化物を分散させた強化白金で形成されている。スターラの回転数は、特に制限されないが、例えば5〜18rpmである。
撹拌翼106a,106b,106c,106d,106eは、回転軸105に沿って等間隔に配置され、5段の撹拌翼をなしている。
【0017】
撹拌翼106a〜106eはいずれも同一の形状を有するよう形成されている。
図4および
図5には、撹拌翼106aを例に示しているが、他の撹拌翼106b〜106eも撹拌翼106aと同様に構成されている。
各撹拌翼106a〜106eは、
図4および
図5に示されるように、回転軸105と直交するように回転軸105から撹拌槽の内壁に向かって板状に延びる3つの支持部108と、各支持部108の上側(回転軸105の軸方向の上流側)の面に取り付けられた上側羽根(第1の羽根部材)119aと、各支持部108の下側(軸方向の下流側)の面に取り付けられた下側羽根(第2の羽根部材)119bとを有している。以下、上側羽根119aおよび下側羽根119bを、まとめて、羽根119とも呼ぶ。3つの支持部108は、回転軸105の周囲において、連結部110によって互いに連結されている。
【0018】
3つの支持部108は、撹拌翼106a〜106eを回転軸105の中心線Oの方向に見た場合に、
図6に示されるように、中心線Oに対して3回対称となる位置に配置されている。なお、
図6には、撹拌翼102aおよび撹拌翼102bを例に示す。
回転軸105の軸方向に隣接している2つの撹拌翼の支持部108は、回転軸105の軸方向に見た場合に、互いに回転方向に重ならないように配置されている。例として、
図6に、スターラ102を軸方向に回転軸105の中心線Oに沿って見た場合における、2つの撹拌翼106a,106bの位置関係を表す。2つの撹拌翼106a,106bの6つの支持部108は、回転軸105の中心線Oに対して6回対称となる位置に配置されている。
【0019】
羽根109は、回転軸105の近傍から支持部108の外縁に向かって延びるように配置されている。羽根109は、
図5に示されるように、回転軸105に最も近い側の内側端部109aと、内側端部109aの反対側の端部であって支持部108の外縁に最も近い側の外側端部109bとを有している。羽根109は、スターラ102を上面視した場合において、内側端部109aから外側端部109bに向かうに従って、回転軸105の中心線Oと内側端部109aとを結ぶ仮想線111から、徐々に離れ、その後徐々に接近するように湾曲している。本実施形態では、上側羽根119aは、内側端部109aから外側端部109bに向かうに従って、反時計回りに仮想線111から離れ、その後接近するように湾曲し、スターラ102の回転方向に対して凹状に形成されている。また、下側羽根119bは、時計回りに仮想線111から離れ、その後接近するように湾曲し、スターラ102の回転方向に対して凸状に形成されている。すなわち、各撹拌翼106a〜106eにおいて、上側羽根119aおよび下側羽根119bは、互いに逆回りに延びるように配置されている。また、軸方向に隣接している2つの撹拌翼の間において、互いに対向している一対の羽根109(例えば、撹拌翼106aの下側羽根119bと撹拌翼106bの上側羽根119a)は、異なる方向に向かって延びるように配置されている。なお、羽根119が湾曲する態様は、上面視した場合に、円弧状に湾曲していてもよく、徐々に変化する曲率または複数の曲率の組み合わせによって湾曲していてもよい。また、他の実施形態では、湾曲する代わりに、屈曲した羽根119が用いられてもよい。
【0020】
このように撹拌翼106a〜106eが構成されていることにより、撹拌工程において、スターラ102が反時計回りに回転すると、各撹拌翼106において、上側羽根119aは、熔融ガラスを撹拌槽101の内壁から回転軸105に向かう側である内周側(第1の方向)に掻き込む一方で、下側羽根119bは、熔融ガラスを回転軸105から撹拌槽101の内壁に向かう側である外周側(第2の方向)に押し出す。このとき、上側羽根119aによって掻き込まれた熔融ガラスは、隣り合う2つの支持部108の間の凹部を清澄槽101の鉛直方向に下方に流れて、支持板108の下流側に移動し、下側羽根119bによって押し出される。下側羽根119bによって押し出された熔融ガラスは、撹拌槽101の内壁101a付近を鉛直方向下方に流れる熔融ガラスと合流して、下方に流れ、1つ下段側の撹拌翼106に接近すると、当該下方に流れる熔融ガラスの一部が、当該撹拌翼106の上側羽根119aによって内周側に掻き込まれる。各段の撹拌翼106によってこのよう流れることが繰り返されて、熔融ガラスは、撹拌槽101の最上段から最下段にかけて流れる。
【0021】
なお、撹拌槽101内で、最上段の撹拌翼106より上方のスペースでは、
図7において矢印で示されるように、熔融ガラスは、上側羽根119aによって内周側に掻き込まれた後、回転軸105に沿って回転軸105付近を上方に流れ、撹拌槽101の天井付近では外周側に流れ、撹拌槽101の内壁付近では下方に流れて対流している。この対流する熔融ガラスの流れのうちの一部が、上側羽根106aによって掻き込まれ、撹拌槽101内を下方に流れていく。また、最下段の撹拌翼106の下側羽根119bによって外周側に押し出された熔融ガラスは、導管43cを通って撹拌槽101の外に流出する。
【0022】
ここで、粘性のある物体を、間隔をhにした2枚の平板間に挟み、平板を相対速度Uで平行に動かした場合、物体と板の間に発生する力をFとすると、Fは相対速度Uと間隔hの逆数に比例する。例えば、10
2.5dPa・sのように粘性の高い熔融ガラスが、2枚の平板間に挟まれて、平板間が移動(回転)する場合、2枚の平板間の間隔hが狭いと、熔融ガラスと平板との間で発生する力が大きくなる。つまり、熔融ガラスが流れにくくなる。このため、熔融ガラスが第1の方向及び第2の方向に流れやすくするために、隣り合う2つの撹拌翼の間を、熔融ガラスの粘度に応じて広げる。本実施形態において、スターラ102は、
図3に示されるように、軸方向に隣り合う2つの撹拌翼の軸方向の間隔D1が、羽根119の水平方向(回転軸105から離れる方向)の長さLより長いことが好ましい。間隔D1は、隣り合う2つの撹拌翼の間における、上流側の撹拌翼の下側羽根119aの下端と、下流側の撹拌翼の上側羽根119aの上端との距離である。羽根119の長さLは、
図7の紙面と平行な仮想面に投影される、羽根119の内周側の端109aと外周側の端109bとの距離をいう。上記間隔D1が羽根119の長さLより長いことによって、隣り合う2つの撹拌翼の間で、一方の撹拌翼の下側羽根119bによって押し出される熔融ガラスの流れと、他方の撹拌翼の上側羽根119aによって掻き込まれる熔融ガラスの流れとが衝突して相殺し合うこと(相殺流の発生)が抑えられる。また、隣り合う2つの撹拌翼の間が狭い場合、粘性の高い熔融ガラスが、2つの撹拌翼の間に入り込めずにスターラ102の回転方向と同じ方向に流れる、いわゆる、共回りが発生し、撹拌効率が落ちる。このため、間隔D1を羽根119の長さLより長くすることによって、共回りが抑えられる。これにより、熔融ガラスの流動する経路が十分に確保され、撹拌槽101内における熔融ガラスの撹拌効率が増す。また、流動経路が長くなり、撹拌時間が長くなるため、撹拌性能を向上させることができる。なお、間隔D1の羽根119の長さLに対する比は特に制限されない。
【0023】
また、上記したように間隔D1が、羽根119の長さLより長いことによって、相殺流の発生が抑えられていることから、例えば、10
2.5dPa・sの粘度における温度が1450℃以上であるような粘性の高い熔融ガラスも好適に撹拌することができる。
【0024】
また、本実施形態において、スターラ102は、
図3に示されるように、撹拌翼106と撹拌槽101の内壁との水平方向の間隔D2は、上記した羽根119の長さLより短いことが好ましい。間隔D2は、撹拌翼106のうちの羽根119の外周側の端部109bと、撹拌槽101の内壁との間隔である。上記間隔D2が羽根119の長さLより短いことによって、撹拌槽101の内壁101aの近傍を流れる熔融ガラスのうち、撹拌翼106に触れることなく下方に流れてしまう熔融ガラスの量を低減でき、より多くの熔融ガラスを、より長い流動経路に沿って流すことができる。また、流動経路が長くなり、撹拌時間が長くなるため、撹拌性能を向上させることができる。なお、間隔D2の羽根119の長さLに対する比は特に制限されない。
【0025】
以上説明した本実施形態では、軸方向に隣り合う2つの撹拌翼の間で、熔融ガラスを内周側に流すことと、外周側に流すこととが行われる。これにより、軸方向に隣り合う2つの撹拌翼の間で、内周側および外周側のいずれか一方にのみ熔融ガラスが流れる場合と比べて、撹拌槽101内を流れる熔融ガラスの流動経路が長くなり、撹拌装置における熔融ガラスの撹拌効率が増す。これにより、熔融ガラスがより効果的に均質化され、得られたガラス板において脈理の発生をより確実に抑制することができる。上記した軸方向に隣り合う2つの撹拌翼の間で、内周側および外周側のいずれか一方にのみ熔融ガラスが流れる場合は、例えば、隣り合う2つの撹拌翼において、上流側の撹拌翼の下側羽根11bと下流側の撹拌翼の上側羽根119aとがいずれも熔融ガラスを掻き込むまたは押し出すよう構成された場合である。
また、上記実施形態によれば、撹拌翼106はいずれも形状が同じであるため、1種類の形状の撹拌翼を複数作製することで、全ての撹拌翼106を用意でき、生産性に優れる。
【0026】
本実施形態において、撹拌翼の羽根の形状、支持部の数、これらの配置態様等は、上記説明したものに制限されない。例えば、本実施形態の撹拌装置において、1つの撹拌翼に設けられる支持部108の数は、3つに制限されず、2つまたは4つであってもよい。
また、撹拌装置は、例えば、撹拌槽内に、熔融ガラスが、下方側の導管43cから流入し、上方側の導管43bから送り出されるよう構成されたものであってもよく、また、このように構成されたものと上記説明したものとが、導管43b同士または導管43a同士が連結されることで、複数の撹拌槽内を通るよう構成されたものであってもよい。
上記撹拌翼において、上側羽根119aと下側羽根119bが入れ替わっていてもよい。
また、上記撹拌翼と鏡像関係にある撹拌翼を用いることもできる。例えば、上記撹拌翼と鏡像撹拌翼とが隣り合うように設置したスターラを用いて撹拌することもできる。
【0027】
(ガラス板)
本実施形態のガラス板に用いるガラスは、例えば、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダライムガラス、アルカリシリケートガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリアルミノゲルマネイトガラスなどを適用することができる。なお、本発明に適用できるガラスは上記に限定されるものではない。
【0028】
本実施形態で用いるガラス板のガラス組成は例えば以下のものを挙げることができる。しかし、下記ガラス組成には限定されない。以下示す組成の含有率表示は、質量%である。
SiO
2:50〜70%、
B
2O
3:5〜18%、
Al
2O
3:0〜25%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜20%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板が含有するものである)、
を含有する無アルカリガラスであることが好ましい。
【0029】
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス板はアルカリ金属を微量含んでいてもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’
2Oの合計が0.20%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板が含有するものである)含むことが好ましい。また、ガラスの熔解を容易にするために、比抵抗を低下させるという観点から、ガラス中の酸化鉄の含有量が0.01〜0.2%であることがさらに好ましい。
【0030】
ここで、Li
2O,Na
2O,K
2Oは、ガラスから溶出してTFTの特性を劣化させ、また、ガラスの熱膨張係数を大きくして熱処理時に基板を破損するおそれがある成分であることから、液晶ディスプレイ用ガラス基板や有機ELディスプレイ用ガラス基板として適用する場合には、実質的に含まないことが好ましい。しかし、ガラス中に上記成分を敢えて特定量含有させることによって、TFTの特性の劣化やガラスの熱膨張を一定範囲内に抑制しつつ、ガラスの塩基性度を高め、価数変動する金属の酸化を容易にして、清澄性を発揮させることが可能である。そこで、Li
2O,Na
2O,K
2Oの合量は0〜2.0%であり、0.1〜1.0%がより好ましく、0.2〜0.5%がさらに好ましい。なお、Li
2O,Na
2Oは含有させずに、上記成分中でも、最もガラスから溶出してTFTの特性を劣化させ難いK
2Oを含有させることが好ましい。K
2Oの含有量は、0〜2.0%であり、0.1〜1.0%がより好ましく、0.2〜0.5%がさらに好ましい。
【0031】
ガラス板のガラスにおいて、ガラス中の気泡を脱泡させる成分として清澄剤を添加することができる。清澄剤としては、環境負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されないが、例えば、酸化スズ、酸化鉄、酸化セリウム、酸化テルビウム、酸化モリブデン及び酸化タングステンといった金属酸化物から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0032】
なお、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOは、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じ、ガラスを清澄する効果を有する物質であるが、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOは環境負荷が大きい物質であることから、実質的に含まないことが好ましい。なお、本明細書において、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOを実質的に含まないとは、0.01%質量未満であって不純物を除き意図的に含有させないことを意味する。
【0033】
本実施形態のガラス板の厚さは、例えば0.05mm〜0.4mmであることが好ましい。本実施形態のガラス板の幅方向の長さは、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。一方、ガラス板の縦方向の長さも、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。
【0034】
本実施形態の製造方法により製造されるガラス板は、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板、カバーガラスに好適に用いられる。成形装置300で成形されるガラス板は、その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、ポリシリコンTFTを用いた液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
【0035】
以上、本発明に係るガラス板の製造方法、撹拌装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
ガラス板が下記の組成となるように、熔融槽においてガラス原料を熔融して熔融ガラスを得た。
SiO
2:60質量%、
B
2O
3:10質量%、
Al
2O
3:19.5質量%、
CaO:5.3質量%、
SrO:5質量%、
SnO
2:0.2質量%
そして、熔融ガラスを清澄槽にて1650℃以上に昇温させて清澄を行った。
【0038】
次に、清澄後の熔融ガラスを、本実施形態に係る撹拌装置と、特願2013-080533の明細書に記載の実施形態1に係る撹拌装置のそれぞれで撹拌し、比較結果を得た。なお、撹拌部材の回転数は、12.5rpmである。また、本実施形態に係る撹拌装置において、間隔D1の羽根119の長さLに対する比が2であり、間隔D2の羽根119の長さLに対する比は0.1である。
【0039】
本実施例では、撹拌工程後に熔融ガラスを成形装置へ供給し、オーバーダウンロード法にてガラスリボンを形成した。さらにガラスリボンを切断して、厚さが0.7mm、大きさが2200mm×2500mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板を製造した。製造した1000枚のフラットパネルディスプレイ用ガラス板について、脈理が原因で発生するガラス板表面の粗さを測定することにより、撹拌装置の撹拌能力を比較した。この測定には、表面粗さ測定機(東京精密社製:サーフコム1400−D)を用い、ピーク高さを測定し、ピーク高さの平均値を算出した。その結果、液晶ディスプレイ用ガラス板として良品と判断されるピーク高さの基準値を1とした場合、本実施形態に係る撹拌装置と特願2013-080533の明細書に記載の実施形態1に係る撹拌装置のそれぞれで撹拌した熔融ガラスから成形されたガラス板のピーク高さの平均値は、0.75〜0.80、0.9〜0.95であり、脈理が改善されていることが確認できた。
【0040】
以上の結果から、本実施形態に係る撹拌装置における熔融ガラスの撹拌効率が増し、熔融ガラスがより効果的に均質化され、得られたガラス板において脈理の発生をより確実に抑制することができた。