【解決手段】殺菌剤を内包するリポソームを含む口腔又は咽喉用組成物であって、前記殺菌剤がフェノール系殺菌剤であり、前記リポソームは水素添加リン脂質を含んで構成され、殺菌剤が前記口腔又は咽喉用組成物に対して100μg/mL以上含まれることを特徴とする、口腔又は咽喉用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る口腔又は咽喉用組成物は、殺菌剤を内包するリポソームを含み、前記殺菌剤がフェノール系殺菌剤であり、さらに前記リポソームは水素添加リン脂質を含むことを特徴とするものである。そしてこのような構成をとることにより、バイオフィルムに対する高い殺菌効果が得られる。
【0014】
殺菌剤としてはフェノール系殺菌剤を使用する。フェノール系殺菌剤としては、公知のフェノール系殺菌剤を広く使用することができる。具体的にはイソプロピルメチルフェノール(4−Isopropyl−3−methylphenol、以下IMPという。)、クレゾール(メチルフェノール)、トリクロサンなどがあげられるが、これらに限定されない。しかしこれらのフェノール系殺菌剤の中でも、IMPが好ましく、特に効果的な殺菌作用を有する。
【0015】
リポソームは、リン脂質が自己組織化によって形成した単層、または複数の層からなる脂質複合体であり、脂質二重層の数に基づいて、多重膜リポソーム(MLV)と一枚膜リポソームの2つに分類される。一枚膜リポソームは、そのサイズに応じて、更にSUV(small unilamella vesicle)、LUV(large unilamella vesicle)、GUV(giant unilamella vesicle)などに分類され、これらのいずれを使用してもよい。
【0016】
前記殺菌剤を内包させるリポソームは、少なくとも水素添加処理したリン脂質を含んで構成されるリポソームであれば、特に限定はない。リポソームを形成するリン脂質の例としては、水素添加リン脂質、水素添加グリセロリン脂質、水素添加スフィンゴリン脂質、水素添加レシチン(水素添加ホスファチジルコリン:例、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加コーンレシチン、水素添加綿実油レシチンなど)だけでなく、前記化合物に、水素添加していない、レシチン(大豆レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、卵黄レシチン、卵白レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル酸などのグリセロリン脂質やスフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質、前記リン脂質にポリエチレングリコールや、アミノグリカン類を導入したリン脂質誘導体、水酸化レシチン、リゾレシチンを混合されていてもよい。好ましくは水素添加グリセロリン脂質を含有するリン脂質であり、より好ましくは水素添加レシチンを含有するリン脂質である。通常、ホスファチジルコリン含有量が50質量%以上である水素添加リン脂質(例:水素添加大豆レシチン、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄油、水素添加卵黄リン脂質、水素添加卵黄レシチンなど)を好適に使用でき、その中でも水素添加大豆リン脂質がより好適に使用でき、ホスファチジルコリン含有量が60質量%以上のものがさらに好適に使用できる。
【0017】
水素添加リン脂質は、たとえば、水素添加卵黄レシチンとしては、「卵黄レシチンPL−100P(ホスファチジルコリン(以下、PCと略す。)含量80%;キューピー(株)社製)が、水素添加卵黄リン脂質としては、レシノールY−10M(PC60%)、レシノールY−10E(PC85%;日光ケミカル(株)社製)が、水素添加大豆リン脂質としては、SLP−PC70HS(PC70%;辻製油(株)社製)、LIPOID P75−3(PC70%)、LIPOID P100−3(PC90%;LIPOID社製)、PHOSPHOLIPON 80H(PC70%)、PHOSPHOLIPON 90H(PC90%;LIPOID社製)、レシノールS−10M(PC60%)、レシノールS−10E(PC80%;日光ケミカル(株)社製)、COATSOME NC−21(PC90%)、COATSOME NC−61(PC60%;日油(株)社製)などとして市場より入手することができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0018】
そしてこのような水素添加リン脂質は、リポソームを構成するリン脂質中の60重量%以上を占めることが好ましく、これにより内包される殺菌剤の殺菌力を効果的に発揮させることが可能である。
【0019】
使用するリポソームの大きさは、平均粒子径又は平均外径(以下、平均粒子径等という。)が10〜1000nmであるのが好ましく、10〜600nmがより好ましく、20〜300nmがさらに好ましい。また安定性の観点からはリポソームの平均粒子径等のバラツキは少ない方が好ましい。このため平均粒子径等の上下限値の差が1000nm以内、より好ましくは300nm以内の範囲におさまるリポソームの個数は、全リポソーム中の60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0020】
リポソームの作製方法としては、公知の方法を広く採用することができる。リポソーム懸濁液の製造方法は特に限定されないが、(1)リン脂質、リポソームに内包する成分、その他酸化防止剤などを均質に混合した後、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを形成させる方法、(2)リン脂質、リポソームに内包する成分、その他酸化防止剤などをアルコール、多価アルコールなどに溶解し、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを調製する方法、(3)超音波、フレンチプレスやホモジナイザーを用いて、リン脂質、リポソームに内包する成分、その他酸化防止剤などを水中で複合化させ、リポソームを調製する方法、(4)エタノールにリン脂質、リポソームに内包する成分、その他酸化防止剤などを混合溶解し、このエタノール溶液を塩化カリウム水溶液に添加した後にエタノールを除去しリポソームを調製する方法などが利用できる。例えば、所定量の水素添加処理したリン脂質を含むリン脂質を、例えばエタノールなどの適当な有機溶媒で可溶化し、減圧下に溶媒を除去し、膜脂質を作成し、水、緩衝液、糖類含有水溶液などを添加後、例えば、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌して、リポソーム懸濁液を調製することにより得ることができる。また、水、緩衝液、糖類含有水溶液に、例えばエタノールに溶解した所定量の前記リン脂質を添加し高圧ホモジナイザーなどにより撹拌することによっても調製することができる。
【0021】
リポソームには、IMPのようなフェノール系殺菌剤だけでなく、それに加えて適宜、油性成分、脂質、水溶性物質、生理活性物質など、たとえば、トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオールなどを、本発明の効果を損なわない範囲で内包させて製剤化してもよい。なお、ここでいう「内包」とは、リポソームの内部に封入する場合や、リポソーム膜中に含まれる場合、リポソーム膜の外表面に付着する場合など、種々の形態ものをいう。
【0022】
リポソームは、水などの溶媒を連続層として有するリポソーム懸濁液として作製される。得られたリポソーム懸濁液は、そのまま使用してもよいし、凍結乾燥やスプレードライによって乾燥して使用してもよい。特に乾燥させることにより、種々の剤型への展開が可能である。
【0023】
リポソームは、安定性を向上させる等の目的のために、その外表面をコーティングしてもよい。コーティング剤としては公知のものを広く使用することができるが、例えば、硫酸基を含有する多糖類でコーティングすることがあげられる。硫酸基含有多糖類としては、分子量が5,000〜300,000程度のものが好ましい。より具体的には、フコイダン、カラギーナン、寒天、ヘパリンなどのような、もともと硫酸基を含有しているような多糖類のほか、例えばコンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸のような、もともとは硫酸基を有しない多糖類を硫酸化したものであってもよく、勿論これらに限定されない。またこれらの中でもフコイダンやカラギーナンが好ましく、フコイダンが特に好ましい。
【0024】
コーティング剤として硫酸基含有多糖類を使用する場合、その使用量は、リポソームに含まれるホスファチジルコリン100重量部に対して、10〜500重量部が好ましく、20〜200重量部がより好ましい。
【0025】
コーティング剤によりリポソームをコーティングする方法としては、公知の方法を広く採用することができる。具体的には、フェノール系殺菌剤等を内包させたリポソームの懸濁液にコーティング剤を加え、1000〜3000rpm程度で2〜5分間撹拌させることにより行うことができるが、これに限定されるものではない。また、一つのコーティング膜の中に複数のリポソームが含まれるような態様であってもよい。
【0026】
リポソーム表面の電位については、Zeta電位がー100〜100meVとなるようにするのが好ましい。
【0027】
リポソームに内包されるフェノール系殺菌剤の、本発明に係る口腔又は咽頭用組成物全体に対して含まれる含量としては、100〜3000μg/mLが好ましく、125〜1000μg/mLがより好ましい。単純にフェノール系殺菌剤を溶解させたような溶液では、通常の殺菌剤が調製される100〜1000μg/mLといった濃度域中の低濃度域、つまり100〜400μg/mLといった低濃度域でフェノール系殺菌剤による充分な殺菌効果が得られない。しかし本発明の構成をとることにより、こうした低濃度域においても、充分な殺菌効果を得ることが可能となる。
【0028】
本発明の口腔又は咽喉用組成物は、口腔内又は咽喉内の消毒や洗浄用に使用され、液体、液状、ペースト状などの形態として適宜調製される。具体的には練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、洗口剤、マウススプレー、口腔塗布剤、口腔ジェル剤、口腔軟膏、咽喉用スプレー、含嗽剤、パスタ剤、軟ペースト剤、咽喉用塗布剤、チュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤などの一般的なものに加え、その他にもタブレット、キャンディ、チューイングガムなどとして調製でき、これらは常法により調製することができる。
【0029】
こうした各種の剤型に調製するためには、本発明に必須の組成に加えて、必要によりその剤型に応じた基剤成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。具体的には、例えば、湿潤剤、香味剤、界面活性剤、甘味料、研磨剤、粘結剤、糖アルコール、防腐剤、着色剤、pH調整剤、水等の溶剤、各種有効成分、などを配合し得る。
【0030】
例えば液体歯磨剤として使用する場合には、上述したようなフェノール系殺菌剤を内包するリポソームに加えて、液体歯磨剤全体に対して湿潤剤が0.1〜20重量%、香味剤が0〜3重量%、界面活性剤が0.5〜5重量%配合すればよいが、特にこれに限定されない。
【0031】
また、例えば洗口剤として使用する場合には、同様に洗口剤全体に対して湿潤剤が1〜30重量%、香味剤が0〜1重量%、界面活性剤が0.001〜5重量%となるように配合すればよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
湿潤剤としては、公知のものを広く使用することができる。具体的には、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等の多価アルコール等を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるがこれらに限定されるものではない。
【0033】
香味剤としても、公知のものを広く使用することができる。具体的には、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、シオネール、チモール、丁字油、ユーカリ油、ローズマリー油、セージ油、レモン油、オレンジ油、オシメン油、シトロネロール、メチルオイゲノール等が挙げられる。これらの香味剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0034】
界面活性剤としても、公知のものを広く使用することができる。具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、脂肪酸アルカノールアミド類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジエチルグリシン等のN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の界面活性剤が挙げられるがこれらに限定されない。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合できる。
【0035】
甘味料としても、公知のものを広く使用することができる。具体的には、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、α−メトキシシンナミックアルデヒド、キシリット、スクロース、スクラロース、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール等を配合することができる。これらの甘味剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
研磨剤としても公知のものを広く使用することができる。例えば、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、これらに限定されない。
【0037】
粘結剤としても、公知のものを広く使用することができる。具体的には、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、これらに限定されない。
【0038】
糖アルコールとしても、公知のものを広く使用することができる。例えばエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等を単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、これらに限定されない。
【0039】
防腐剤としても、公知のものを広く使用することができる。具体的にはメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
着色剤としても、公知のものを広く使用することができる。具体的には、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
また、pH調整剤としても公知のものを広く使用することができる。具体的には、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられ、これらは、組成物のpHが5〜8の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0042】
溶剤としても、前記した水以外にも、公知のものを広く使用することができ、特に限定はない。
【0043】
薬剤成分としても、必要に応じて公知のものを広く使用することができる。具体的には、他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;酢酸−dl−α−トコフェロール、酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類;タイム、オウゴン等の植物抽出物等があげられ、特に限定はない。これらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0044】
また、その他の基剤成分として、必要に応じてアルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等を添加することも可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
殺菌剤としてIMPと水素添加リン脂質(日油製、商品名:コートソームNC−61)を、ブタノール16.7重量%、スクロース8.3重量%を水に溶解させた混合溶媒に添加した後、高圧微粒化装置を用いてリポソームに内包させ、限外ろ過により殺菌剤を内包するリポソームを抽出し、調製液とした。得られた調製液中のIMP及び水素添加リン脂質はそれぞれ0.105及び1.02重量%であった。そして前記調製液を、水による2倍希釈をおこなった後、前記混合溶媒を水で2倍希釈したもの(以下、2倍希釈混合溶媒という。)で濃度調製を行い、IMPがリポソーム懸濁液全体に対して525μg/mLとなるようにした。その後更に、2倍希釈混合溶媒で2倍に段階希釈をおこない、IMPがリポソーム懸濁液全体に対して525、262.5、131.3、65.6、32.8、16.4、8.2μg/mLとなる、IMPを内包するリポソーム懸濁液を得た。
【0048】
(比較例1)
IMPを2倍希釈混合溶媒で段階希釈をおこない、500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8μg/mLの各IMP濃度の溶液を得た。
【0049】
(比較例2)
リポソームを構成するリン脂質として水素未添加リン脂質(長瀬産業製、商品名:PIPSナガセ)のみを使用し、限外ろ過によって得られた調製液中のIMP及び水素未添加リン脂質の濃度がそれぞれ0.95及び0.67重量%であり、IMPのリポソーム懸濁液全体に対する濃度を475、237.5、118.8、59.4、29.7、14.8、7.4μg/mLとした以外は実施例1と同じ操作を行い、前記各濃度のIMPを内包するリポソーム懸濁液を得た。
【0050】
(比較例3)
IMPの替わりにヒノキチオール(Hinokitiol)を用い、限外ろ過によって得られた調製液中のヒノキチオール及び水素添加リン脂質の濃度がそれぞれ0.071及び0.28重量%であり、ヒノキチオールのリポソーム懸濁液全体に対する濃度を355、177.5、88.8、44.4、22.2、11.1、5.5μg/mLとした以外は実施例1と同じ操作をおこない、前記各濃度のヒノキチオールを内包するリポソーム懸濁液を得た。
【0051】
(比較例4)
ヒノキチオールを2倍希釈混合溶媒で段階希釈をおこない、350、175、87.5、43.8、21.9、10.9、5.5μg/mLの各濃度の溶液を得た。
【0052】
(比較例5)
IMPの替わりに塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium chloride、以下、CPCという。)を用い、限外ろ過によって得られた調製液中のCPC及び水素添加リン脂質の濃度がそれぞれ0.116及び0.88重量%であり、CPCのリポソーム懸濁液全体に対する濃度を580、290、145、73、36.3、18.1、9.1μg/mLとした以外は実施例1と同じ操作をおこない、前記各濃度のCPCを内包するリポソーム懸濁液を得た。
【0053】
(比較例6)
CPCを2倍希釈混合溶媒で段階希釈をおこない、600、300、150、75、37.5、18.8、9.4μg/mLの各濃度の溶液を得た。
【0054】
(比較例7)
ブタノール16.7重量%、スクロース8.3重量%を水に溶解させた混合溶媒に、IMP及び水素添加リン脂質をそれぞれ0.105及び1.02重量%で添加し、溶解させた。得られた溶液を、前記混合溶媒を水で2倍希釈した2倍希釈混合溶媒にて段階希釈をおこない、IMPが溶液全体に対して525、262.5、131.3、65.6、32.8、16.4、8.2μg/mLとなる溶液を得た。
【0055】
(比較例8)
IMPを全く加えなかった以外は比較例7と同じ操作を行い、溶液を得た。
【0056】
(殺菌性評価方法)
Streptococcus mutans ATCC25715をBHI液体培地で37℃、18時間培養した。その後BHIにスクロース5%を溶解した液体培地を用いて、菌液をO.D
660=1.0に調整した。得られた菌液を96ウェルプレートに100μL/ウェルでアプライし、37℃、嫌気的条件下で24時間培養をおこない、各ウェルの底面にバイオフィルムを形成させた。バイオフィルムを形成させるウェル数としては、実施例及び比較例のそれぞれにつき3ウェルずつ、更にコントロール群としての2倍希釈混合溶媒用に6ウェルを準備した。
その後各ウェルから培地を除去し、PBSで洗浄後、実施例、比較例及びコントロール群としての2倍希釈混合溶媒をそれぞれ100μLずつアプライして15分間、37℃下で静置した後、PBSで3回洗浄した。洗浄したPBSを除去した後、PBSにより10倍希釈したAlamarBlue(登録商標)溶液を各ウェルに100μLずつ添加し、暗所下37℃で120分間、静置した。その後、蛍光プレートリーダーにより、励起波長560nm、蛍光波長590nmの条件で蛍光強度を測定し、実施例及び比較例の生存菌率を算出した。生存菌率は、実施例及び比較例の各ウェルの蛍光強度の、コントロール群として準備した6ウェルの蛍光強度の平均値に対する百分率で算出した。データ集計に際しては、実施例及び比較例の各3ウェルの平均値±標準偏差で集計した。
【0057】
(リポソームへの内包化、及びリポソームを構成するリン脂質についての検討)
実施例1、比較例1及び比較例2の各濃度の溶液を使用し、それぞれの殺菌性評価をおこなった。比較例1については、実施例1及び比較例2の双方との比較のため、2群用意した。また有意差検定を、実施例1と比較例1について、及び比較例1と比較例2について、それぞれ対応する同濃度間で、Student t検定により実施し、p値<0.05で有意差ありとした。ここで、実施例1及び比較例1、2それぞれの比較において、評価試験をおこなったIMP濃度は正確には異なる。しかし3例ともに500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8μg/mLに近い濃度域での評価をおこなっているため、それぞれ高濃度側から500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8μg/mLの濃度で評価試験をおこなったとみなして有意差検定をおこない、
図1のグラフに表示した。その結果、実施例1と比較例1との比較では、125μg/mLの濃度域において、生存菌率に有意差が確認できた。この結果、IMPを水素添加リン脂質で形成されたリポソームに内包させることにより、125μg/mL以上の濃度域において効果的な殺菌作用を発揮させることが確認できた。一方、IMPを水素未添加リン脂質により形成されたリポソームに内包させた比較例2においては、IMPをリポソームに内包させない場合と比べて有意な殺菌効果の違いは確認できなかった。
【0058】
(殺菌剤検討)
比較例3〜6の各濃度の溶液を使用し、それぞれの殺菌性評価をおこない、前記実施例1及び比較例1の結果と比較した。ここで、比較例3と4、並びに比較例5と6の比較において、評価試験をおこなったヒノキチオール並びにCPCとの濃度は、わずかに異なっている。しかし比較例3は比較例4での評価試験をおこなった濃度、比較例5は比較例6で評価試験をおこなった濃度に近い濃度域で評価試験をおこなっているため、比較例3は比較例4と、比較例5は比較例6と同じ濃度で評価試験をおこなったものとみなして比較を行い、
図2のグラフに表示した。その結果、
図2に示されるように、ヒノキチオールやCPCを水素添加リン脂質を含んで構成されるリポソームに内包させたことによる殺菌効果の有意な向上は確認できなかった。
【0059】
(水素添加リン脂質とIMPとの関係についての検討)
水素添加リン脂質に内包させることによるIMPの殺菌効果の増強が、水素添加リン脂質を含むリポソームにIMPを内包させたことによるのではなく、単に水素添加リン脂質と共存しているために発生している可能性も考えられたため、実施例1、比較例1、比較例7、及び比較例8の各濃度溶液を使用して殺菌性評価をおこなった。尚、実施例1、比較例7及び比較例8においては525、262.5、131.3、65.6、32.8、16.4、8.2μg/mLの濃度域で評価試験をおこなったが、これらの濃度は比較例1で設定した500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8μg/mLという濃度域に近い。そこで本評価試験における全ての実施例及び比較例において、高濃度側より500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8μg/mLの濃度で評価試験をおこなったものとみなし、データの集計をおこなった。その結果、
図3に示すように実施例1のみが顕著な殺菌効果を有しており、水素添加リン脂質とIMPを混合させた比較例7は、実施例1はおろか比較例1よりも殺菌効果が弱いことが確認できた。以上より、IMPは水素添加リン脂質を含んで構成されたリポソームに内包されることにより、優れた殺菌効果を発揮することが確認された。
【0060】
以下、製造例を挙げる。各製造例は常法により製造される。特に断らない限り、各製造例中の数値は「重量%」を示す。なお、本発明はこれら製造例に限定されるものではない。
【0061】
(製造例1) 洗口剤
成分 配合量
リポソーム懸濁液A 12.5
グリセリン 10
プロピレングリコール 5
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 0.05
サッカリンナトリウム 0.02
精製水 残部
合計 100
リポソーム懸濁液A
IMP 0.1
水素添加大豆リン脂質(LIPOID P−75−3(LIPOID社製))0.5
エチルアルコール 5
精製水 94.4
【0062】
(製造例2) 洗口剤
成分 配合量
リポソーム懸濁液B 5
グリセリン 10
プロピレングリコール 5
キシリトール 2
水酸化ナトリウム 0.2
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
白色セラック 0.1
エデト酸二ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
炭酸水素ナトリウム 0.03
サッカリンナトリウム 0.01
青色1号 0.0002
精製水 残部
合計 100
リポソーム懸濁液B
IMP 2
水素添加大豆リン脂質(レシノールS−10E(日光ケミカル社製)) 5
キサンタンガム 0.1
コンドロイチン硫酸 0.05
水溶性コラーゲン 0.05
精製水 92.8
【0063】
(製造例3) 口腔用ジェル剤
成分 配合量
リポソーム懸濁液C 2
アルギン酸ナトリウム 3
ヒアルロン酸ナトリウム 2
グリセリン 10
プロピレングリコール 5
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 0.05
サッカリンナトリウム 0.02
精製水 残部
合計 100
リポソーム懸濁液C
IMP 2.5
水素添加大豆リン脂質(コートソームNC−61(日油社製)) 15
水溶性コラーゲンペプチド 0.5
コンドロイチン硫酸 0.1
1,3−ブチレングリコール 10
精製水 71.9
【0064】
(製造例4) 口腔用ジェル剤
成分 配合量
リポソーム懸濁液D 2
グリセリン 25
水添澱粉分解物 10
プロピレングリコール 2
ポリアクリル酸ナトリウム 1.5
安息香酸メチル 0.1
精製水 残部
合計 100
リポソーム懸濁液D
IMP 1
水素添加卵黄リン脂質(レシノールY−10E(日光ケミカル社製)) 7
エタノール 7
精製水 85
【0065】
(製造例5) チュアブル錠、1錠(500mg)中の成分
成分 配合量
粉末化リポソーム(※1) 5mg
キシリトール 150mg
ヒドロキシプロピルセルロース 20mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
マンニトール 残部
(※1)粉末化リポソームは、IMPが5%、水素添加大豆リン脂質が50%、結晶セルロースが45%という組成である。
【0066】
(製造例6) 咽喉用スプレー剤(50mL中の成分)
成分 配合量
リポソーム懸濁液E 5mg
果糖ぶどう糖液糖 1000mg
スクラロース 10mg
クエン酸 400mg
クエン酸ナトリウム 200mg
香料 微量
安息香酸ナトリウム 50mg
精製水 残部
リポソーム懸濁液E
水素添加大豆リン脂質(PHOSPHOLIPON90H(LIPOID社製))3
IMP 0.5
水溶性コラーゲンペプチド 5
植物性セラミド 1
1,3−ブチレングリコール 5
グリセリン 10
精製水 残部
【0067】
(製造例7) フィルム製剤
成分 配合量
粉末化リポソーム(※2) 5
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 16
でんぷん 25
結晶セルロース 1.5
プルラン 1.5
ショ糖脂肪酸エステル 1.5
アスパルテーム 1
香料 1
グリセリン 2
マルチトール 14
乳糖 残部
合計 100
(※2)粉末化リポソームは、IMPが5%、水素添加大豆リン脂質が50%、結晶セルロースが45%という組成である。