【解決手段】アースドリル1では、各ブームフート38a,38b、39a,39bの挿通孔38a1,38b1、39a1,39b1にブームフートピン40R、40Lが挿通されることで、伸縮ブーム30が上部旋回体10に対して起伏可能に取付けられて、伸縮ブーム30が倒れている状態で、伸縮ブーム30に取付けられているフロントフレーム34が前方に向かって斜め下方に延びている。伸縮ブーム30が倒れている状態で上下方向に延びるブームサポート100が設けられ、ブームサポート100の上端部100aがフロントフレーム34の基端部34aに取付けられ、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100b(脚部材101)とがトレーラ200の荷台220に載置されることで、倒れている伸縮ブーム30がトレーラ200に支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、クレーンCRを用いるブーム取付方法、クレーンCRを用いるブーム分解方法には、以下の問題点があった。伸縮ブーム30を上部旋回体10に取付ける場合、クレーンCRの操縦者は、ロープROで伸縮ブーム30の重心を合わせつつ、伸縮ブーム30が水平状になるように吊り上げなければならない。しかし、伸縮ブーム30が小型且つ重量が小さいものであれば、伸縮ブーム30を吊っているロープROの張り具合で伸縮ブーム30の重心を把握し易いが、伸縮ブーム30が大型且つ重量が大きいものであると、伸縮ブーム30の重心が分からなくて、伸縮ブーム30を水平状に吊り上げることが難しい。このため、挿通孔の位置合わせの作業が容易ではなく、ブームフートピン40を
挿通するための作業負担及び作業時間が大きかった。
【0008】
また、伸縮ブーム30を上部旋回体10から取り外す場合でも、クレーンCRの操縦者は、ロープROで重心を合わせつつ、伸縮ブーム30が水平状になるように吊り上げなければならない。伸縮ブーム30の基端部30aの重量がブームフート38を介してブームフートピン40に作用して、ブームフートピン40が抜き取り難くなるためである。つまり、仮に伸縮ブーム30の基端部30aを吊っているロープROの張力が不足していると、ブームフートピン40が抜き取られたときに、伸縮ブーム30の基端部30aが落下して、上部旋回体10に設けられているホース等を傷付けるおそれがある。一方、伸縮ブーム30の基端部30aを吊っているロープの張力が大き過ぎても、ブームフートピン40が抜き取られたときに、伸縮ブーム30の基端部30aが急上昇して、危険な状態になるおそれがある。こうして、伸縮ブーム30を吊り上げる際の調整が容易ではなく、ブームフートピン40を抜き取るための作業負担及び作業時間が大きかった。
【0009】
更に、クレーンCRを用いる場合には、スペースの問題点がある。即ち、建設機械の作業現場が狭くて、クレーンCRが作業現場まで入るスペースが無い場合には、クレーンCRで伸縮ブーム30を吊り上げることができない。このため、クレーンCRを用いずに伸縮ブーム30を上部旋回体10に対して脱着できることが求められる。しかし、従来の大型のアースドリルやクローラクレーンにおいて、クレーンCRを用いずに伸縮ブーム30を上部旋回体10に取付けることができ、クレーンCRを用いずに伸縮ブーム30を上部旋回体10から取り外すことができるものが存在していなかった。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、クレーンを用いずにブームを上部旋回体に脱着できる建設機械を提供することを目的とする。また、クレーンを用いずにブームを上部旋回体に取付けることができるブーム取付方法、クレーンを用いずにブームを上部旋回体から取り外すことができるブーム分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る建設機械は、ブームを取付ける上部旋回体が下部走行体に対して旋回可能に設けられ、前記上部旋回体の前側に前記ブームの前後方向に延びる取付ブラケットが設けられ、前記ブームの基端部に前記取付ブラケットと平行に延びるブームフートが設けられ、前記取付ブラケット及び前記ブームフートに、ブームの前後方向と直交する左右方向に延びる挿通孔がそれぞれ形成されていて、前記ブームフートの挿通孔及び前記取付ブラケットの挿通孔にブームフートピンが挿通されることで、前記ブームが前記上部旋回体に対して起伏可能に取付けられていて、前記ブームが倒れている状態で、前記ブームに取付けられているフロントフレームが前方に向かって斜め下方に延びているものであって、前記ブームが倒れている状態で上下方向に延びるブームサポートが設けられていて、前記ブームサポートの上端部が前記フロントフレームの基端部に取付けられていて、前記フロントフレームの下端部と前記ブームサポートの下端部とが搬送車両に載置されることで、前記倒れているブームが前記搬送車両に支持されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るブーム取付方法は、上記した本発明の建設機械の上部旋回体にブームを取付ける方法であって、前記フロントフレームの下端部と前記ブームサポートの下端部とを搬送車両に載置して、前記ブームフートの挿通孔の高さが前記取付ブラケットの挿通孔の高さに合うように前記倒れているブームを前記搬送車両で支持し、前記取付ブラケットと前記ブームフートが平行に延びるように前記上部旋回体を旋回させ、前記搬送車両を前記ブームの前後方向に走行させ、前記ブームフートの挿通孔と前記取付ブラケットの挿通孔の位置を合わせて、前記ブームフートの挿通孔及び前記取付ブラケットの挿通孔に前記ブームフートピンを挿通することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る建設機械及びブーム取付方法によれば、ブームを上部旋回体に取付ける際に、フロントフレームの下端部とブームサポートの下端部とを搬送車両に載置するため、ブームの基端部が浮いた状態になる。このとき、フロントフレームの下端部の高さとブームサポートの下端部の高さを微調整することで、ブームフートの挿通孔の高さを取付ブラケットの挿通孔の高さに的確に合わせることができる。そして、上部旋回体を旋回させて、取付ブラケットとブームフートが平行に延びるように平行度を合わせる。その後、搬送車両をブームの前後方向に走行させることで、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔の位置を的確に合わせることができる。最後に、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔にブームフートピンを挿通することで、ブームの取付けが完了する。こうして、クレーンでブームを吊り上げなくても、挿通孔の位置合わせの作業を容易に行うことができて、ブームフートピンを挿通するための作業負担及び作業時間を小さくできる。
【0014】
本発明に係るブーム分解方法は、上記した本発明の建設機械の上部旋回体からブームを取り外す方法であって、前記フロントフレームの下端部と前記ブームサポートの下端部とを搬送車両に載置して、前記倒れているブームを前記搬送車両で支持し、前記ブームフートの挿通孔及び前記取付ブラケットの挿通孔から前記ブームフートピンを抜き取ることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る建設機械及びブーム分解方法によれば、ブームを上部旋回体から取り外す際に、フロントフレームの下端部とブームサポートの下端部とを搬送車両に載置するため、ブームの基端部が浮いた状態になる。これにより、ブームの基端部の重量がブームフートを介してブームフートピンに大きく作用しなくなる。このため、クレーンでブームを吊り上げなくても、ブームフートピンが抜き取り易くなり、ブームフートピンを抜き取るための作業負担及び作業時間を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械において、前記ブームサポートの上端部は、前記フロントフレームの基端部に回転可能に取付けられていて、前記ブームが倒れている状態で上下方向に延びるリンク部材が設けられていて、前記リンク部材の上端部が前記ブームサポートに回転可能に取付けられ、前記リンク部材の下端部が前記ブームサポートの中間部に脱着可能に取付けられていて、前記ブームサポート及び前記リンク部材が前記フロントフレームと同一方向に延びるように回転されているとき、前記ブームサポート及び前記リンク部材を前記フロントフレームに取付ける係止部材が設けられていることが好ましい。
この場合には、ブームサポートでフロントフレームの基端部を支持するとき、ブームサポート及びリンク部材を上下方向に延ばして用いる。一方、ブームサポートでフロントフレームの基端部を支持しないとき、ブームサポート及びリンク部材がフロントフレームと同一方向に延びるように回転させて、ブームサポート及びリンク部材を係止部材によってフロントフレームに取付ける。こうして、ブームサポート及びリンク部材を折り畳んでコンパクトにすることができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械において、前記上部旋回体には、先端部を上下方向に伸縮可能な油圧シリンダが取付けられていて、前記ブームフートの挿通孔と前記取付ブラケットの挿通孔の位置が合う状態で、前記ブームフートの下側に取付けられている下向ブロックと、前記油圧シリンダの先端部に取付けられている上向ブロックとが係合するように設けられていることが好ましい。
また、本発明に係るブーム取付方法は、上記した本発明に係る建設機械の上部旋回体にブームを取付ける方法であって、前記ブームフートの挿通孔の高さが前記取付ブラケットの挿通孔の高さより僅かに低くなるように、前記フロントフレームの下端部と前記ブームサポートの下端部とを搬送車両に載置して、前記倒れているブームを前記搬送車両で支持し、前記取付ブラケットと前記ブームフートが平行に延びるように前記上部旋回体を旋回させ、前記搬送車両を前記ブームの前後方向に走行させて前記ブームフートの下向ブロックと前記油圧シリンダの上向ブロックを係合させ、前記油圧シリンダの先端部を伸張させ、前記ブームフートの挿通孔と前記取付ブラケットの挿通孔の位置を合わせて、前記ブームフートの挿通孔及び前記取付ブラケットの挿通孔に前記ブームフートピンを挿通することを特徴とする。
【0018】
上記した本発明に係る建設機械及びブーム取付方法によれば、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔の位置合わせを行う際に、ブームフートの下向ブロックと油圧シリンダの上向ブロックを係合させる。そして、油圧シリンダの先端部を伸張させることで、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔の位置を正確に合わせる。こうして、油圧シリンダと上向ブロックと下向ブロックを用いることで、挿通孔の位置合わせの作業をより容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明に係るブーム分解方法は、上記した本発明に係る建設機械の上部旋回体からブームを取り外す方法であって、前記フロントフレームの下端部と前記ブームサポートの下端部とを搬送車両に載置して、前記倒れているブームを前記搬送車両で支持し、前記油圧シリンダの先端部を上方に伸張させ、前記ブームフートの下向ブロックと前記油圧シリンダの上向ブロックを係合させて、前記ブームフートの挿通孔の高さを前記取付ブラケットの挿通孔の高さに合わせた状態で、前記ブームフートの挿通孔及び前記取付ブラケットの挿通孔から前記ブームフートピンを抜き取ることを特徴とする。
【0020】
上記した本発明に係る建設機械及びブーム分解方法によれば、ブームフートピンを抜き取る際に、油圧シリンダの先端部を上方に伸張させて、油圧シリンダの上向ブロックをブームフートの下向ブロックに係合させる。これにより、ブームフート(ブームの基端部)が油圧シリンダに支持されて、ブームの基端部がごく僅かに持ち上げられる。これにより、ブームの基端部の重量がブームフートを介してブームフートピンにほとんど作用しなくなり、ブームフートピンをより抜き取り易くすることができる。
【0021】
また、本発明に係る建設機械において、前記下向ブロックの下面及び前記上向ブロックの上面の一方には、窪んでいる凹部が形成され、前記下向ブロックの下面及び前記上向ブロックの上面の他方には、前記凹部に嵌合する凸部が形成されていることが好ましい。
この場合には、凸部と凹部の嵌合によって、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔の位置合わせが完了した状態、及び油圧シリンダによってブームフートの支持が完了した状態を、確実に把握することができる。
【0022】
また、本発明に係る建設機械において、前記凹部は、水平方向に対して円錐状に窪んでいて、前記凸部は、水平方向に対して円錐状に突出していることが好ましい。
この場合には、ブームフートの挿通孔と取付ブラケットの挿通孔の位置合わせにおいて、円錐状の凸部と円錐状の凹部とが嵌合することで、前後方向と左右方向と上下方向の全ての方向で同時に位置合わせを行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、クレーンを用いずにブームを上部旋回体に対して脱着することができる。このため、従来のようにクレーンのロープでブームの重心を合わせつつ水平状に微調整する高度な操作技術が不要になる。更に、建設機械の作業現場が狭くて、クレーンが作業現場まで入るスペースが無い場合であっても、搬送車両を用いてブームの脱着を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る建設機械、ブーム取付方法、ブーム分解方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、建設機械として本実施形態のアースドリル1を示した側面図である。ここで、
図1の左右方向がブームの前後方向であり、以下では単に「前後方向」と呼ぶ。また、
図1の紙面に直交する方向がブームの左右方向であり、以下では単に「左右方向」と呼ぶ。
【0026】
アースドリル1は、竪穴の掘削や掘削した土砂の排出を行うものであり、
図1に示すように、上部旋回体10が下部走行体20に対して旋回可能に搭載されている。そして、伸縮ブーム30が上部旋回体10の前側に起伏可能に取付けられている。
図1では、伸縮ブーム30が倒れて収縮している状態が示されている。
【0027】
上部旋回体10は、前方の右側(
図1の紙面手前側)に運転室11を有し、後方の右側に機器室12を有している。また、上部旋回体10の左側(
図1の紙面奥側)には、エンジンや油圧ポンプを収容しているエンジン室(図示省略)が設けられている。そして、上部旋回体10の後方の上側には、折り畳み可能なガントリー13が設けられている。
【0028】
下部走行体20は、クローラ21によって走行可能であり、ベアリング22によって上部旋回体10を旋回可能に支持している。ここで、
図2は、
図1に示した上部旋回体10の前側と伸縮ブーム30を拡大した側面図である。また、
図3は、
図2を上方から見たときの上面図である。
【0029】
伸縮ブーム30は、
図2及び
図3に示すように、前後方向に延びていて、2段階の伸縮ができるテレスコピック構造になっている。この伸縮ブーム30では、断面が矩形状である3本のブームが同軸的に重なっていて、上部旋回体10に近い順番で最も太いロアブーム31と、中間の太さであるミドルブーム32と、最も細いアッパーブーム33とで構成されている。
【0030】
ミドルブーム32は、ロアブーム31の中に挿入されていてロアブーム31に対してスライド可能である。アッパーブーム33は、ミドルブーム32の中に挿入されていてミドルブーム32に対してスライド可能である。そして、伸縮ブーム30の内部には、ミドルブーム32をロアブーム31に対してスライドさせる第1伸縮シリンダ41(
図20参照)が設けられ、アッパーブーム33をミドルブーム32に対してスライドさせる第2伸縮シリンダ42(
図20参照)が設けられている。
【0031】
ロアブーム31には、ケリーバ駆動装置(図示省略)を支持するためのフロントフレーム34及びフレームシリンダ35が取付けられている。フロントフレーム34は、
図1に示すように、伸縮ブーム30が倒れている状態では、前方に向かって斜め下方に延びている。ミドルブーム32の先端部には、伸縮ブーム30を起伏させるためのペンダントロープ36が取付けられている。アッパーブーム33の先端部には、吊り上げ用のロープを巻回するトップシーブ37が設けられている。
【0032】
また、ロアブーム31の上側には、前後方向に延びるブームバックストップ15が設けられている。ブームバックストップ15の一端部は上部旋回体10に連結され、ブームバックストップ15の他端部はロアブーム31の中間部に連結されている。ブームバックストップ15は、伸縮ブーム30が起きている状態でアースドリル1が掘削するときに、伸縮ブーム30が持ち上がることを防止するものである。
【0033】
このアースドリル1は、輸送し易くすると共に重量を小さくするために、上部旋回体10と伸縮ブーム30の脱着が行われる。即ち、伸縮ブーム30は、上部旋回体10から取り外されて(分解されて)、それぞれ現場まで輸送される。そして、現場で伸縮ブーム30が上部旋回体10に取付けられて、竪穴の掘削や掘削した土砂の排出が行われる。ここで、伸縮ブーム30の基端部30aが上部旋回体10に取付けられている構造を詳細に説明する。
図4は、
図2のA−A線に沿って見たときの正面図であり、
図5は、
図3のB部分を拡大した上面図である。
【0034】
図5に示すように、上部旋回体10の前側且つ右側に、前後方向に延びる右側取付ブラケット14Rが設けられている。右側取付ブラケット14Rは、ブームフートピン40Rを挿通するための挿通孔14aを有している。また、伸縮ブーム30の基端部30aには、起立した平面になっている起立部30bが形成されている。起立部30bの右側には、右側取付ブラケット14Rと平行に延びる外側ブームフート38a及び内側ブームフート38bが設けられている。
【0035】
外側ブームフート38a及び内側ブームフート38bは、
図4に示すように、右側取付ブラケット14Rを挟み込んでいて、ブームフートピン40Rを挿通するための挿通孔38a1,38b1を有している。ブームフートピン40Rは、その直径が約90mmのピンであり、外側ブームフート38a及び内側ブームフート38bを右側取付ブラケット14Rに回転可能に取付けるものである。
【0036】
また、右側取付ブラケット14Rの上側には、内側(
図4の左側)に向けて突出するガイド部14xが形成されている。これにより、内側ブームフート38bがガイド部14xの内側面にガイドされ、外側ブームフート38aが右側取付ブラケット14Rの外側面にガイドされる。こうして、右側取付ブラケット14Rの左右方向の位置が規定されている。
【0037】
同様に、
図5に示すように、上部旋回体10の前側且つ左側に、前後方向に延びる左側取付ブラケット14Lが設けられている。左側取付ブラケット14Lは、ブームフートピン40Lを挿通するための挿通孔14bを有している。そして、起立部30bの左側には、左側取付ブラケット14Lと平行に延びる外側ブームフート39a及び内側ブームフート39bが設けられている。
【0038】
外側ブームフート39a及び内側ブームフート39bは、
図4に示すように、左側取付ブラケット14Lを挟み込んでいて、ブームフートピン40Lを挿通するための挿通孔39a1,39b1を有している。ブームフートピン40Lは、その直径が約90mmのピンであり、外側ブームフート39a及び内側ブームフート39bを左側取付ブラケット14Lに回転可能に取付けるものである。
【0039】
また、左側取付ブラケット14Lの上側には、内側(
図4の右側)に向けて突出するガイド部14yが形成されている。これにより、内側ブームフート39bがガイド部14yの内側面にガイドされ、外側ブームフート39aが左側取付ブラケット14Lの外側面にガイドされる。こうして、左側取付ブラケット14Lの左右方向の位置が規定されている。
【0040】
図4及び
図5に示すように、伸縮ブーム30の基端部30aには、ブームフートピン着脱装置50R,50Lと、油圧駆動装置60が固定して設けられている。ブームフートピン着脱装置50Rは、内側ブームフート38bの挿通孔38b1と右側取付ブラケット14Rの挿通孔14aと外側ブームフート38aの挿通孔38a1に対して、ブームフートピン40Rを抜き挿しするものである。同様に、ブームフートピン着脱装置50Lは、内側ブームフート39bの挿通孔39b1と左側取付ブラケット14Lの挿通孔14bと外側ブームフート39aの挿通孔39a1に対して、ブームフートピン40Lを抜き挿しするものである。
【0041】
これらブームフートピン着脱装置50R,50Lは、左右方向にシリンダロッドを伸縮させる油圧シリンダ(図示省略)を備えて構成されている。そのシリンダロッドとブームフートピン40R,40Lとは、一体的に連結している。そして、ブームフートピン着脱装置50R,50Lを作動させるときには、油圧駆動装置60の配管を油圧シリンダに接続する。これにより、圧油が油圧駆動装置60から油圧シリンダに供給され、シリンダロッドが左右方向に伸縮して、ブームフートピン40R,40Lの抜き挿しができるようになっている。なお、以下の説明において、右側取付ブラケット14R及び左側取付ブラケット14Lの両方を意味するとき、単に「取付ブラケット14R,14L」と呼ぶことにする。
【0042】
こうして、伸縮ブーム30の基端部30aを上部旋回体10に取付ける際には、外側ブームフート38a,39aの挿通孔38a1,39a1及び内側ブームフート38b,39bの挿通孔38b1,39b1を、取付ブラケット14R,14Lの挿通孔14a,14bに対して位置合わせを行う。そして、伸縮ブーム30の基端部30aの右側において、外側ブームフート38aの挿通孔38a1及び内側ブームフート38bの挿通孔38b1と、右側取付ブラケット14Rの挿通孔14aの位置が合ったとき、ブームフートピン着脱装置50Rが伸張するように作動させて、ブームフートピン40Rを各挿通孔38b1,14a,38a1に挿通する。
【0043】
同様に、伸縮ブーム30の基端部30aの左側において、外側ブームフート39aの挿通孔39a1及び内側ブームフート39bの挿通孔39b1と、左側取付ブラケット14Lの挿通孔14bの位置が合ったとき、ブームフートピン着脱装置50Lが伸張するように作動させて、ブームフートピン40Lを各挿通孔39b1,14b,39a1に挿通する。これにより、伸縮ブーム30の取付けが完了する。
【0044】
一方、伸縮ブーム30の基端部30aを上部旋回体10から取り外す際には、伸縮ブーム30の基端部30aの右側において、ブームフートピン着脱装置50Rが収縮するように作動させて、ブームフートピン40Rを各挿通孔38a1,14a,38b1から抜き取る。同様に、伸縮ブーム30の基端部30aの左側において、ブームフートピン着脱装置50Lが収縮するように作動させて、ブームフートピン40Lを各挿通孔39a1,14b,39b1から抜き取る。これにより、伸縮ブーム30の取り外しが完了する。
【0045】
ところで、発明が解決しようとする課題で説明したように、従来では
図20に示すように、クレーンCRのロープROで伸縮ブーム30を吊り上げながら、伸縮ブーム30の脱着を行っていた。しかし、伸縮ブーム30が大型且つ重量が大きいものであると、伸縮ブーム30の重心が分からなくて、伸縮ブーム30を水平状に吊り上げることが難しい。このため、伸縮ブーム30を取付ける場合には、各挿通孔38a1,14a,38b1及び各挿通孔39a1,14b,39b1の位置合わせが難しいという問題点がある。
【0046】
また、伸縮ブーム30を取り外す場合には、伸縮ブーム30の基端部30aの重量が、外側ブームフート38a,39a及び内側ブームフート38b,39bを介してブームフートピン40R,40Lに大きく作用して、ブームフートピン40R,40Lが摩擦力によって抜き難くなるという問題点がある。更に、アースドリル1が大型である場合には、大型の伸縮ブーム30を吊り上げるために、大型のクレーンCRが必要になる。このため、作業現場が狭いと大型のクレーンCRが作業現場まで入るスペースが無いおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態のアースドリル1は、上記した問題点を解消できるように構成されていて、本実施形態のブーム取付方法及びブーム分解方法は、クレーンCRを用いないで伸縮ブーム30を脱着できるようになっている。本実施形態では、
図1に示すように、フロントフレーム34にブームサポート100とリンク部材110とが取付けられていることに特徴がある。なお、
図3に示すように、フロントフレーム34は伸縮ブーム30の左右両側に設けられていて、各フロントフレーム34にそれぞれブームサポート100及びリンク部材110が取付けられている。伸縮ブーム30の左右両側に設けられているブームサポート100及びリンク部材110は同様の構成であるため、以下では伸縮ブーム30の右側のブームサポート100及びリンク部材110の構成を代表して説明する。ここで、
図6は、
図1のC部分を拡大した図である。
【0048】
図6に示すように、ブームサポート100及びリンク部材110は、前方(
図6の右側)に向かって斜め下方に延びている。フロントフレーム34の基端部34aの下側には、ブームサポート100を取付けるための第1固定ブラケット120と、リンク部材110を取付けるための第2固定ブラケット130とが固定されている。これにより、ブームサポート100の上端部100aがピンを介して第1固定ブラケット120に回転可能に取付けられている。また、リンク部材110の上端部110aがピンを介して第2固定ブラケット130に回転可能に取付けられている。ここで、
図7は、
図6に示したブームサポート100及びリンク部材110を上下方向に延びるように回転させた状態を示した図である。また、
図8は、
図7のD−D線に沿った断面図である。
【0049】
図7及び
図8に示すように、ブームサポート100の下端部100bには、ピンを介して脚部材101が首振り可能に取付けられている。脚部材101の下端は、ブームサポート100を的確に支持できるように、平面状になっている。また、ブームサポート100の中間部100cには、前方(
図7の右側)に向かって延びる第1連結ブラケット102が取付けられている。第1連結ブラケット102は、リンク部材110の下端部110bをピンを介して脱着可能に取付けるものである。このため、上下方向に延びるブームサポート100は、リンク部材110の下端部110bが第1連結ブラケット102に取付けられることで、上端部100aの回転が規制されて、フロントフレーム34の基端部34aを的確に支持することができる。
【0050】
こうして、伸縮ブーム30が倒れている状態で、フロントフレーム34の下端部34bと、ブームサポート100の下端部110b(脚部材101)とを固定物に載置することで、伸縮ブーム30全体を支持できるようになっている(
図13参照)。フロントフレーム34には、伸縮ブーム30の重量が作用するため、大きな荷重に耐える強度が必要である。このため、
図8に示すように、ブームサポート100のうち上端部100a及び下端部100bを除く大部分が、矩形状の角パイプで構成されていて、強度を確保している。なお、ブームサポート100の上端部100aは、第1固定ブラケット120を取付けるために二股状に形成され、ブームサポート100の下端部100bは、脚部材101を取付けるために二股状に形成されている。
【0051】
脚部材101には、前側(
図7の右側)に向かって延びる第2連結ブラケット103が取付けられている。第2連結ブラケット103は、
図6に示すように、フロントフレーム34の基端部34aに固定された係止部材140に取付けられるものである。つまり、フロントフレーム34の基端部34aの下側で且つ第2固定ブラケット130より前方に、係止部材140が固定されている。そして、係止部材140は、下側にブームサポート100の下端部100b(第2連結ブラケット103)を取付けるための係止部141を有し、後側(
図7の左側)にリンク部材110の下端部110bを取付けるための係止部142を有している。
【0052】
これにより、
図6に示すように、ブームサポート100をフロントフレーム34と同一方向に延びるように回転させたときに、第2連結ブラケット103を係止部材140の係止部141にピンを介して取付ける。また、リンク部材110をフロントフレーム34と同一方向に延びるように回転させたときに、リンク部材110の下端部110bを係止部材140の係止部142にピンを介して取付ける。これにより、ブームサポート100でフロントフレーム34の基端部34aを支持しないときには、ブームサポート100及びリンク部材110を折り畳んでコンパクトにすることができる。
【0053】
また、本実施形態のアースドリル1では、ブームフート38a,38b、39a,39bの挿通孔38a1,39a1、38b1,39b1の位置を、取付ブラケット14R,14Lの挿通孔14a,14bの位置に、より簡単に合わすための構造が設けられている。具体的には、
図4に示すように、右側取付ブラケット14Rの下側に油圧シリンダ70Rが取付けられ、左側取付ブラケット14Lの下側に油圧シリンダ70Lが取付けられている。
【0054】
これら油圧シリンダ70R,70Lでは、シリンダ本体71がブラケットを介して各取付ブラケット14R,14Lに固定されていて、シリンダロッド72がシリンダ本体71に対して上下方向に移動(伸縮)可能になっている。そして、各油圧シリンダ70R,70Lを作動させるときには、
図4に示すように、シリンダ本体71の下側に接続されている配管75と油圧駆動装置60に設けられている配管61とを連結する。また、シリンダ本体71の上側に接続されている配管76と油圧駆動装置60に設けられている配管62とを連結する。
【0055】
これにより、圧油が油圧駆動装置60から配管61及び配管75を通ってシリンダ本体71の下側に供給されると、シリンダロッド72が上方へ移動して、油圧シリンダ70R,70Lがストロークエンドまで伸張する。一方、圧油が油圧駆動装置60から配管62及び配管76を通ってシリンダ本体71の上側に供給されると、シリンダロッド72が下方へ移動して、油圧シリンダ70R,70Lがストロークエンドまで収縮する。なお、アースドリル1の運転室11で、油圧駆動装置60の動作、即ち油圧シリンダ70R,70Lの伸縮が操作されるようになっている。
【0056】
ここで、
図9は、
図2のE部分を拡大した側面図である。
図9に示すように、各油圧シリンダ70R,70Lのシリンダロッド72の先端部には、上向ブロック73が取付けられている。また、
図4に示すように、内側ブームフート38b,39bの下側には、下向ブロック80が取付けられている。これら下向ブロック80及び上向ブロック73は、互いに係合することで、各挿通孔38a1,14a,38b1及び各挿通孔39a1,14b,39b1の位置(軸中心位置)を合わせるものである。以下、下向ブロック80及び上向ブロック73について詳細に説明する。
【0057】
図10は、
図9に示した内側ブームフート38b,39b及び下向ブロック80を拡大した側面図である。なお、内側ブームフート38b,39bに取付けられている各下向ブロック80はそれぞれ同様の構成であるため、内側ブームフート38bに取付けられている下向ブロック80を代表して説明する。
図10に示すように、下向ブロック80は、略円柱状に形成されていて、その上面80aで内側ブームフート38bの下面38b2に溶接されている。内側ブームフート38bの下面38b2は、後方に向かって斜め上方に延びている。なお、下向ブロック80と内側ブームフート38bの接合は、溶接に限られるものではなく適宜変更可能である。そして、下向ブロック80の下面80bには、下方に突出する凸部80cが形成されている。この凸部80cは、水平方向に対して円錐状に突出している。
【0058】
図11は、
図9に示した油圧シリンダ70R,70L及び上向ブロック73を拡大した側面図である。なお、油圧シリンダ70R,70Lに取付けられている各上向ブロック73はそれぞれ同様の構成であるため、油圧シリンダ70Rに取付けられている上向ブロック73を代表して説明する。
図11に示すように、上向ブロック73は、上側に底部分を有する円筒状に形成されていて、下側の嵌合孔73aでシリンダロッド72の先端部に組付けられている。即ち、上向ブロック73は、シリンダヘッドとして構成されている。そして、上向ブロック73の上面73bには、下方に窪んでいる凹部73cが形成されている。この凹部73cは、水平方向に対して円錐状に窪んでいる。また、上向ブロッ
ク73の嵌合孔73aにはシム74が介装されていて、このシム74によって凹部73cの高さ位置を調整できるようになっている。
【0059】
次に、下向ブロック80と上向ブロック73の位置関係について説明する。
図11では、油圧シリンダ70R,70Lのシリンダロッド72が最も上方に伸張している状態が示されていて、シリンダロッド72はストロークS1だけ上下動できるようになっている。本実施形態では、ストロークS1は約35mmに設定されているが、適宜変更可能である。そして、上向ブロック73の凹部73cと下向ブロック80の凸部80cとが嵌合して、シリンダロッド72が最も上方に伸張しているときに、各挿通孔38a1,14a,38b1及び各挿通孔39a1,14b,39b1の位置が合うように設定されている(
図9参照)。
【0060】
言い換えると、シリンダロッド72が最も上方に伸張しているときに、下向ブロック80の凸部80cと上向ブロック73の凹部73cとが嵌合すれば、各挿通孔38a1,14a,38b1及び各挿通孔39a1,14b,39b1の位置が合うように、上向ブロック73の凹部73cの高さ位置が調整されている。こうして、上向ブロック73の凹部73cと下向ブロック80の凸部80cとが嵌合することで、内側ブームフート38b,39b、即ち伸縮ブーム30の基端部30aが各油圧シリンダ70R,70Lで支持されることになる。
【0061】
ここで、
図12は、
図9に示した上向ブロック73及び下向ブロック80の断面図である。本実施形態では、
図12に示すように、下向ブロック80の凸部80cの水平方向に対する傾斜角度θ1は、15度に設定されている。一方、上向ブロック73の凹部73cの水平方向に対する傾斜角度θ2は、14度に設定されている。つまり、円錐状である凸部80cの傾斜角度θ1は、円錐状である凹部73cの傾斜角度θ2より僅かに大きくなっている。
【0062】
この理由は以下に基づく。即ち、円錐状である凸部80cと円錐状である凹部73cとが正しい位置で嵌合するには、凸部80cの頂点部分p1と凹部73cの頂点部分p2とが一致する必要がある。ここで、仮に傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが同じになるように、凸部80cと凹部73cを形成すると、製作誤差等によって傾斜角度θ1が傾斜角度θ2より小さくなる場合があり得る。この場合、凸部80cの頂点部分p1と凹部73cの頂点部分p2とが一致しないでずれて、凸部80cと凹部73cが正しい位置で嵌合しないおそれがある。一方、傾斜角度θ1が傾斜角度θ2より予め僅かに大きく設定しておけば、製作誤差等によって傾斜角度θ1,θ2が多少ずれても、凸部80cの頂点部分p1と凹部73cの頂点部分p2が一致する。こうして、製作誤差等の影響を受けることなく、凸部80cと凹部73cとを正しい位置で嵌合させるために、傾斜角度θ1を傾斜角度θ2より僅かに大きく設定している。
【0063】
次に、本実施形態のブーム取付方法について説明する。先ず、
図13に示すように、搬送車両としてトレーラ200を用意する。トレーラ200は、トラック210と荷台220とで構成されている。荷台220は低床部221と高床部222とを有していて、高床部222はカプラ230を介してトラック210に接続されている。このトレーラ200の荷台220の低床部221に、伸縮ブーム30が倒れていて且つ収縮している状態で、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100b(脚部材101)とを載置する。これにより、倒れている伸縮ブーム30をトレーラ200で支持して、伸縮ブーム30の基端部30aを浮いた状態にする。なお、伸縮ブーム30の右側に対する取付けと、伸縮ブーム30の左側に対する取付けは同様であるため、以下ではアースドリル1の右側の部材のみを代表して説明する。
【0064】
伸縮ブーム30を荷台220に載置する際には、ブームサポート100の下端部100bと低床部221との間に、板材150を挟み込むと共に、フロントフレーム34の下端部34bと低床部221との間に、板材160を挟み込む。板材150及び板材160は、支持された伸縮ブーム30の基端部30aの高さを調整するためのものであり、木材や鉄板等である。これら板材150及び板材160によって、地面GRからブームフート38a,38bの挿通孔38a1,38b1の中心位置までの高さがH1になるように、伸縮ブーム30が載置される。高さH1は、後述するように、地面GRから右側取付ブラケット14Rの挿通孔14aの中心位置までの高さH2(
図15参照)より僅かに低くなるように設定される。高さH1が高さH2より僅かに低い理由については後述する。
【0065】
次に、
図14に示すように、伸縮ブーム30を支持するトレーラ200を後進させて、伸縮ブーム30の基端部30aを上部旋回体10の前側に近づける。このとき、上部旋回体10が下部走行体20に対して90度旋回している状態にする。即ち、上部旋回体10の向きを、伸縮ブーム30の前後方向(
図14の左右方向)と同じにするのに対して、下部走行体20のクローラ21の向きを、伸縮ブーム30の左右方向(
図14の紙面に直交する方向)と同じにする(
図17参照)。こうして、伸縮ブーム30と上部旋回体10との前後方向の距離は主にトレーラ200の走行によって調整し、伸縮ブーム30と上部旋回体10との左右方向の距離は主にクローラ21の走行によって調整する。
【0066】
続いて、
図15に示すように、各ブームフート38a,38bが右側取付ブラケット14Rに近づいたとき、上部旋回体10を旋回させて、取付ブラケット14Rと各ブームフート38a,38bが平行に延びるように平行度を合わせる。また、平行度を合わせるために、トレーラ200及びクローラ21を走行させて微調整する。そして、このときには、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も下方に収縮させておく。右側取付ブラケット14Rと各ブームフート38a,38bの平行度が合った後、トレーラ200を徐々に後進させていく。
【0067】
これにより、
図16に示すように、内側ブームフート38bの下向ブロック80が、油圧シリンダ70Rの上向ブロック73に係合する。その後、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も上方に伸張させる。この結果、内側ブームフート38bが油圧シリンダ70Rによって持ち上げられて、各ブームフート38a,38bの挿通孔38a1,38b1と、右側取付ブラケット14Rの挿通孔14aの位置が的確に合う。なお、
図17は、
図16に示したアースドリル1を上方から見たときの上面図である。
【0068】
ここで、高さH1(
図13参照)を高さH2(
図15参照)より僅かに低く設定した理由について説明する。本実施形態では、上述したように、高さH1で下向ブロック80と上向ブロック73を係合させた後に、油圧シリンダ70Rを最も上方に伸張させて、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせを行っている。このように一旦低い位置で係合させた後に、油圧シリンダ70Rを上方に伸張させることで、仮に下向ブロック80の凸部80cの頂点部分p1が上向ブロック73の凹部73cの頂点部分p2とずれていても、上向ブロック73が持ち上げられる際に頂点部分p1,p2のずれを解消できるためである。これにより、下向ブロック80が上向ブロック73の上向きの力で的確に受承(係合)されて、各ブームフート38a,38bの挿通孔38a1,38b1の位置が、取付ブラケット14Rの挿通孔14aの位置に正確に合うようになる。
【0069】
こうして、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせが完了した後、ブームフートピン着脱装置50Rが伸張するように作動させて、ブームフートピン40Rを各挿通孔38a1,14a,38b1に挿通する。これにより、ブームフート38a,38bがブームフートピン40Rを介して右側取付ブラケット14Rに取付けられる。なお、ブームフート38a,38bの右側取付ブラケット14Rに対する取付けと、ブームフート39a、39bの左側取付ブラケット14Lに対する取付けにおいては、一方側の取付けが完了した後に、他方側の挿通孔の位置合わせを行って、他方側の取付けを行うようになっている。
【0070】
そして、
図18に示すように、ブームサポート100及びリンク部材110をフロントフレーム34と同一方向に延びるように回転させて、ブームサポート100の下端部100bの第2連結ブラケット103及びリンク部材110の下端部110bを係止部材140に取付ける(
図6参照)。また、ミドルブーム32の先端部にペンダントロープ36を取付け、ロアブーム31の中間部にブームバックストップ15を取付ける。なお、伸縮ブーム30が上部旋回体10に対して起伏する際に、ブームフート38a,38bが油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72に干渉しないように、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も下方に収縮させておく。その後、トレーラ200を作業現場から移動させる。そして、伸縮ブーム30に対して油圧ホースやケーブル等を接続することで、伸縮ブーム30の取付け作業が完了する。
【0071】
次に、本実施形態のブーム分解方法について説明する。先ず、
図7に示すように、ブームサポート100及びリンク部材110を上下方向に延びるように回転させて、リンク部材110の下端部110bをブームサポート100の第1連結ブラケット102に取付ける。そして、トレーラ200を用意して、トレーラ200の荷台220の低床部221に、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100bとを載置する。なお、伸縮ブーム30の右側に対する取り外しと、伸縮ブーム30の左側に対する取り外しは同様であるため、以下ではアースドリル1の右側の部材のみを代表して説明する。
【0072】
続いて、
図16に示すように、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も上方に伸張させて、油圧シリンダ70Rの上向ブロック73を内側ブームフート38bの下向ブロック80に係合させる。これにより、内側ブームフート38b(伸縮ブーム30の基端部30a)が油圧シリンダ70Rに支持されて、伸縮ブーム30の基端部30aがごく僅かに持ち上げられる。これにより、伸縮ブーム30の重量がほとんど全てトレーラ200の荷台220に作用する。こうして、伸縮ブーム30の基端部30aの重量が各ブームフート38a,38bを介してブームフートピン40Rにほとんど作用しなくなり、ブームフートピン40Rが抜き取り易くなる。
【0073】
この結果、ブームフートピン着脱装置50Rが収縮するように作動させると、ブームフートピン40Rを各挿通孔38a1,14a,38b1から容易に抜き取ることができる。こうして、各ブームフート38a,38bを右側取付ブラケット14Rから取り外すことができる。なお、ブームフート38a,38bの右側取付ブラケット14Rに対する取り外しと、ブームフート39a、39bの左側取付ブラケット14Lに対する取り外しにおいては、一方側の取り外しが完了した後に、他方側の取り外しを行うようになっている。
【0074】
そして、ミドルブーム32の先端部からペンダントロープ36を取り外し、ロアブーム31の中間部からブームバックストップ15を取り外す。また、伸縮ブーム30に取付けられている油圧ホースやケーブル等を取り外す。その後、伸縮ブーム30を支持するトレーラ200を作業現場から移動させることで、伸縮ブーム30の取り外し作業が完了する。
【0075】
本実施形態の作用効果について説明する。ここでは、伸縮ブーム30の右側が脱着される際の作用効果と、伸縮ブーム30の左側が脱着される際の作用効果は同様であるため、アースドリル1の右側の部材のみを用いて説明する。
本実施形態によれば、伸縮ブーム30を上部旋回体10に取付ける際に、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100bとをトレーラ200の荷台220に載置するため、伸縮ブーム30の基端部30aが浮いた状態になる。このとき、ブームサポート100の下端部100bの高さを板材150を用いて調整すると共に、フロントフレーム34の下端部34bの高さを板材160を用いて調整することで、各ブームフート38a,38bの挿通孔38a1,38b1の高さを右側取付ブラケット14Rの挿通孔14aの高さに対して微調整する。そして、上部旋回体10を旋回させて、トレーラ200を伸縮ブーム30の前後方向に走行させることで、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置を的確に合わせる。
【0076】
これに対して、従来では、倒れている状態の伸縮ブーム30を載置する場合、フロントフレーム34の下端部34bと伸縮ブーム30の基端部30aの下端を載置していた。このため、伸縮ブーム30の基端部30aを浮かして、挿通孔38a1,14a,38b1の高さの位置合わせを行うためには、クレーンCRで伸縮ブーム30を吊り上げることが必要であった。従って、従来のアースドリルでは、搬送車両で挿通孔38a1,14a,38b1の高さの位置合わせを行うことが不可能であった。
【0077】
こうして、本実施形態では、フロントフレーム34の基端部34aにブームサポート100を新たに設け、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100bとをトレーラ200に載置して、トレーラ200で伸縮ブーム30を支持しつつ伸縮ブーム30の基端部30aの高さを自由に調整することに特徴がある。これにより、クレーンCRで伸縮ブーム30を吊り上げなくても、挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせの作業を容易に行うことができる。この結果、ブームフートピン40Rを挿通するための作業負担及び作業時間を従来に比べて大幅に小さくすることができる。
【0078】
同様に、本実施形態によれば、伸縮ブーム30を上部旋回体10から取り外す際に、フロントフレーム34の下端部34bとブームサポート100の下端部100bとをトレーラ200に載置するため、伸縮ブーム30の基端部30aが浮いた状態になる。これにより、伸縮ブーム30の基端部30aの重量がブームフート38a,38bを介してブームフートピン40Rに大きく作用しなくなる。このため、クレーンCRで伸縮ブーム30を吊り上げなくても、ブームフートピン40Rが抜き取り易くなり、ブームフートピン40Rを抜き取るための作業負担及び作業時間を従来に比べて大幅に小さくすることができる。
【0079】
更に、本実施形態によれば、上述したように、内側ブームフート38bの下向ブロック80を、油圧シリンダ70Rの上向ブロック73に係合させた後、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も上方に伸張させることで、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置を正確に合わせる。こうして、油圧シリンダ70Rと上向ブロック73と下向ブロック80を用いることで、挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせの作業をより容易に行うことができる。一方、ブームフートピン40Rを抜き取る際には、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72の先端部を最も上方に伸張させることで、内側ブームフート38bが油圧シリンダ70Rに支持される。これにより、伸縮ブーム30の基端部30aの重量が各ブームフート38a,38bを介してブームフートピン40Rにほとんど作用しなくなり、ブームフートピン40Rを抜き取り易くすることができる。
【0080】
そして、本実施形態によれば、油圧シリンダ70Rの動作は、シリンダロッド72を最も上方に伸張する動作と最も下方に収縮させる動作のみであり、下向ブロック80と上向ブロック73は、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72が最も上方に伸張しているときに、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置が正確に合うように設定されている。このため、下向ブロック80と上向ブロック73とを係合させる際に、油圧シリンダ70Rのシリンダロッド72を最も上方に伸張させれば良くて、シリンダロッド72(上向ブロック73)の高さ位置を微調整する必要がない。従って、下向ブロック80と上向ブロック73とを係合させる際の油圧シリンダ70Rの操作が非常に簡単である。
【0081】
また、本実施形態によれば、
図12に示すように、下向ブロック80の下面80bに凸部80cが形成され、上向ブロック73の上面73bに凹部73cが形成されている。これら凸部80cと凹部73cの嵌合によって、挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせが完了した状態、及び油圧シリンダ70Rによって内側ブームフート38bの支持が完了した状態を、確実に把握することができる。特に、円錐状の凸部80cと円錐状の凹部73cとが嵌合することで、前後方向と左右方向と上下方向の全ての方向で同時に位置合わせを行うことができる。
【0082】
以上、本実施形態の主な効果は、クレーンCRを用いずに伸縮ブーム30を上部旋回体10に対して脱着できることである。この結果、従来のようにクレーンCRのロープROで伸縮ブーム30の重心を合わせつつ水平状に微調整する高度な操作技術が不要になる。そして、クレーンCRで伸縮ブーム30の基端部30aを吊り上げないため、伸縮ブーム30の基端部30aが急上昇又は下降することがなく、作業の安全性を大幅に向上させることができる。また、トレーラ200を用いて伸縮ブーム30の脱着を行うことができるため、作業現場が狭くてクレーンCRが入るスペースが無い場合であっても、伸縮ブーム30の脱着を行うことができる。
【0083】
次に、変形実施形態について説明する。
変形実施形態の構成と上述した本実施形態の構成とは、上向ブロックの凹部の形状及び下向ブロック凸部の形状が異なること以外、同様であるため、変形実施形態の上向ブロック及び下向ブロックについてのみ説明する。
図19は、変形実施形態の上向ブロック77及び下向ブロック90を示した斜視図である。
【0084】
図19に示すように、上向ブロック77の上面77aには、下方に窪んでいる凹部77bが形成されている。この凹部77bは、左右方向から見たときにV字状に窪んだ三角柱状になっている。一方、下向ブロック90の下面90aには、下方に突出する凸部90bが形成されている。この凸部90bは、左右方向から見たときにV字状に突出する三角柱状になっている。これら凸部90bと凹部77bとが嵌合するときに、上述した各挿通孔38a1,14a,38b1の位置が合うように設定されている。
【0085】
凸部90bと凹部77bとを嵌合させる際、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせのうち、前後方向と上下方向の位置合わせが同時に行われるが、左右方向の位置合わせが行われない。しかし、これについては特に問題ない。即ち、伸縮ブーム30を上部旋回体10に取付ける場合、
図4に示すように、内側ブームフート38bがガイド部14xの内側面にガイドされ、外側ブームフート38aが右側取付ブラケット14Rの外側面にガイドされる。また、内側ブームフート39bがガイド部14yの内側面にガイドされ、外側ブームフート39aが左側取付ブラケット14Lの外側面にガイドされる。
【0086】
こうして、伸縮ブーム30の基端部30aでは、左右方向の位置が規定されるようになっている。従って、三角柱状の凸部90bと三角柱状の凹部77bとを嵌合させる際に、各挿通孔38a1,14a,38b1の左右方向の位置合わせが行われなくても特に問題ない。以上の説明から分かるように、凸部と凹部の形状は、上述した本実施形態のように円錐状に限定されるものではなく、適宜変更可能であり、例えば四角錐状であっても良い。
【0087】
以上、本発明に係る建設機械、ブーム取付方法、ブーム分解方法の実施形態及び変形実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態及び変形実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、下向ブロック80の下面80bに凸部80cを形成し、上向ブロック73の上面73bに凹部73cを形成したが、下向ブロック80の下面80bに凹部を形成し、上向ブロック73の上面73bに凸部を形成しても良い。
【0088】
また、本実施形態では、内側ブームフート38b,39bの下側に下向ブロック80を取付けたが、外側ブームフート38a,39aの下側に下向ブロック80を取付けても良い。
また、伸縮ブーム30の基端部30aは、左右両側でそれぞれブームフートピン40R,40Lが挿通される構造であるが、単一のブームフートピンが挿通される構造であっても良い。
また、本実施形態では、ブームが2段に伸縮する伸縮ブーム30であるが、ブームの構造は適宜変更可能であり、例えば3段以上に伸縮する伸縮ブーム又はラチスブームであっても良い。
【0089】
また、本実施形態では、高さH1で下向ブロック80と上向ブロック73を係合させた後に、油圧シリンダ70Rを最も上方に伸張させて、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせを行った。しかしながら、地面GRからブームフート38a,38bの挿通孔38a1,38b1の中心位置までの高さがH2になるように予め伸縮ブーム30を載置しておき、高さH2で下向ブロック80と上向ブロック73を係合させて、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせを行っても良い。また、油圧シリンダ70Rを用いないで、各挿通孔38a1,14a,38b1の位置合わせを行っても良い。
また、本実施形態では、建設機械がアースドリルであるが、クローラクレーンであっても良く、伸縮ブームの基端部が上部旋回体に脱着されるものであれば適宜変更可能である。