【解決手段】ソールプレートの撤去方法は、橋桁1の下フランジ1aに隅肉溶接されているソールプレート10のビード10aを切断して、ソールプレート10を下フランジ1aから撤去する方法である。先ず、円盤状の切削刃161を有する切削装置100を用いて、切削刃161を回転させながら下フランジ1aに沿って平面方向に移動させてビード10aを切削する。このとき、切削によって形成された切削溝10bと下フランジ1aとの間に、ビード10aのうち下フランジ1aと接合する最も内側の内側接合端z1が視認できるように薄皮部10cを形成する。次に、内側接合端z1を視認しながら薄皮部10cをグラインダー20で研削して除去する。
橋桁の下フランジにソールプレートが隅肉溶接されていて、前記ソールプレートの縁部に形成されたビードを切断して前記ソールプレートを前記下フランジから撤去するソールプレートの撤去方法において、
円盤状の切削刃を有する切削装置を用いて、前記切削刃を回転させながら前記下フランジに沿って平面方向に移動させて前記ビードを切削し、切削によって形成された切削溝と前記下フランジとの間に、前記ビードのうち前記下フランジと接合する最も内側の内側接合端が視認できるように薄皮部を形成し、
前記内側接合端を視認しながら前記薄皮部を除去することを特徴とするソールプレートの撤去方法。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長期に製作された多くの橋梁では、製作時から50年以上経過していて、錆びやひび割れに対応するため、現在では補修作業が必要になってきている。また、大地震に対応できるように、橋梁を補強するような補修作業も進められている。こうして、全国の橋梁で必要な補修箇所は非常に多く存在していて、近年急ピッチで補修作業が行われている。このため、この補修作業を如何に効率良く且つ低コストで行うかが非常に重要な問題になっている。
【0003】
例えば、補修対象である橋梁では、
図9に示すように、ソールプレート10が橋桁1の下フランジ1aの下側に配置されていて、支承2を介して橋脚3に支持されている。このソールプレート10によって、橋桁1から支承2に荷重が伝達される際に、荷重の流れを円滑にして、応力集中を緩和している。このソールプレート10は、橋桁1の下フランジ1aに対して全周で隅肉溶接によって接合されていて、車両等の走行による荷重を受けることになる。
【0004】
ソールプレート10では、全周の縁部にビード10aが形成されていて、接合強度が確保されている。しかし、橋梁は長期間に亘って車両等が通過する度に大きな荷重を受けるため、ビード10aに繰り返し大きな圧縮荷重及び引張荷重が作用して、疲労による亀裂が発生するという問題点がある。ビード10aに亀裂が生じていると、亀裂が成長して大きくなり、橋桁1の破壊につながる可能性がある。このため、最近ではビード10aに亀裂が生じることを未然に防止するため、古いソールプレート10を下フランジ1aから撤去して新しいソールプレートに交換することが行われている。新しいソールプレートは、高力ボルトを介して下フランジ1aに接合される。
【0005】
ここで、
図10は、従来方法において、ソールプレート10を下フランジ1aから撤去する方法を説明するための図である。
図10に示すように、作業員がグラインダー20を手作業で操作して、回転する研削刃21の径外方端21aをソールプレート10のビード10aに押し付ける。これにより、ビード10aが徐々に研削されていき、ビード10aを切断することで、ソールプレート10を下フランジ1aから切り離すようになっている。
【0006】
また、下記特許文献1には、ディスクグラインダーを移動させる切断装置を用いて、ソールプレート10のビード10aを切断することが記載されている。
図9に示すように、この切断装置200は、ディスクグラインダー210をXYテーブル(図示省略)に搭載していて、XYテーブルによってディスクグラインダー210の研削刃211を水平方向に移動させることができる。これにより、研削刃211がビード10aのうち下フランジ1aと接合する接合面に対して平面方向(水平方向)に移動して、ソールプレート10を下フランジ1aから切り離すようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のソールプレートの撤去方法には、以下の問題点があった。先ず、作業員が手作業でグラインダー20を操作する場合、橋脚3の上側の高い場所で且つ橋桁1と橋脚3との間の狭い狭隘部4(
図9参照)で上向きに作業を行わなければならない。このため、グラインダー20の操作が難しい。従って、研削刃21が下フランジ1aに向かって斜めに進入して、下フランジ1aを傷付けるおそれがある。また、狭隘部4で比較的重いグラインダー20を上向きで操作することは、作業員の体力の消耗が大きく、且つ作業の安全性が高いものではなかった。更に、研削刃21でビード10aを徐々に研削する作業は多くの時間がかかり、作業員の技量に応じてビード10aを除去できる時間のバラツキが大きかった。
【0009】
一方、上記特許文献1に記載された切断装置200を用いれば、ディスクグラインダー210の研削刃211を下フランジ1aに沿って平面方向(水平方向)に移動させるため、下フランジ1aが傷付くことを防止できる。また、作業の安全性を向上させることができる。しかし、この切断装置200でも、研削刃211でビード10aを徐々に研削していくため、ビード10aを研削するために多くの時間がかかり、作業効率が良くないという問題点がある。更に以下の問題点がある。
【0010】
即ち、研削刃211を下フランジ1aに沿って平面方向に移動させても、
図11に示すように、研削によって形成された研削溝10fと下フランジ1aとの間に、薄皮部10gが残ってしまう。これは、ディスクグラインダー210がXYテーブルのレール部材を移動する際に、レール部材の撓みや切断装置200に作用する重力によって、研削刃211の位置が正しい位置から僅かに下がっていくためである。こうして、薄皮部10gが少しでも残っていると、ソールプレート10が下フランジ1aに接合されたままになる。
【0011】
そこで、薄皮部10gが形成された後に、作業員が手作業でグラインダー20を操作し、研削刃21で薄皮部10gを研削して、薄皮部10gを除去することが考えられる。しかし、研削溝10fを形成する際の研削刃211の厚さ寸法は約1〜2mmであって薄いため(上記特許文献1の段落0023参照)、研削溝10fの幅寸法U2も約1〜2mmになる。このため、作業員がグラインダー20の研削刃21で残った薄皮部10gを研削しようとしても、ビード10aのうち下フランジ1aと接合する最も内側の内側接合端z1を視認することができない。これにより、薄皮部10gを確実に且つ早く除去することが非常に困難である。更に、研削刃21が約1〜2mmの幅が狭い研削溝10fに噛み込んで、グラインダー20の挙動が不安定になるおそれがあり、危険を伴う可能性がある。
【0012】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、作業の安全性を確保しつつ、作業品質及び作業時間を安定させることができると共に、施工効率を向上させることができるソールプレートの撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るソールプレートの撤去方法は、橋桁の下フランジにソールプレートが隅肉溶接されていて、前記ソールプレートの縁部に形成されたビードを切断して前記ソールプレートを前記下フランジから撤去する方法であって、円盤状の切削刃を有する切削装置を用いて、前記切削刃を回転させながら前記下フランジに沿って平面方向に移動させて前記ビードを切削し、切削によって形成された切削溝と前記下フランジとの間に、前記ビードのうち前記下フランジと接合する最も内側の内側接合端が視認できるように薄皮部を形成し、前記内側接合端を視認しながら前記薄皮部を除去することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るソールプレートの撤去方法によれば、ビードを研削するのではなく、切削装置の切削刃でビードを切削するため、切削溝を形成するまでの時間が比較的短い。そして、比較的厚い切削刃を下フランジに沿って平面方向に移動させて切削溝を形成するため、切削溝の幅寸法が比較的大きい。これにより、ビードの内側接合端が視認できるように薄皮部を形成する。このため、作業員が例えばグラインダーの研削刃で薄皮部を研削するときに、ビードの内側接合端を視認できるため、薄皮部を確実に且つ早く除去することができる。更に、切削溝の幅寸法が比較的大きいため、研削刃が切削溝に噛み込むことがなくて、グラインダーの挙動が不安定になる危険がない。こうして、作業の安全性を確保しつつ、作業品質及び作業時間を安定させることができると共に、施工効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るソールプレートの撤去方法において、厚さ寸法が5mm以上であり且つ8mmより小さい切削刃によって、前記切削溝を形成すると良い。
この場合には、厚さ寸法が5mm以上である切削刃であれば、薄皮部を形成する際に、ビードの内側接合端が確実に視認できるようになる。一方、厚さ寸法が8mm以上の切削刃になると、切削刃を回転駆動させる切削装置が大型化する。これにより、切削装置の重量が大きくなり、作業員が切削装置を持ち上げる作業が困難になる。こうして、厚さ寸法が5mm以上であり且つ8mmより小さい切削刃を用いれば、本発明をより好適に実施することできる。
【0016】
また、本発明に係るソールプレートの撤去方法において、前記切削刃は、径外方端部で周方向に等間隔に形成されている複数の刃が、周方向に向かって上面側と下面側とに交互に向きを変えて設けられた千鳥刃サイドカッターであり、前記千鳥刃サイドカッターによって、前記切削溝を形成すると良い。
この場合には、千鳥刃サイドカッターは、切削能力が高く且つ深い溝加工に適したものであるため、幅が比較的広い切削溝を最適に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のソールプレートの撤去方法によれば、切削装置を用いて切削刃を下フランジに沿って平面方向に移動させるため、下フランジを傷付けることがない。そして、ビードの内側接合端を視認しながら薄皮部を除去できるため、作業員の技量に依らずに作業品質及び作業時間を安定させることできる。更に、切削刃によって切削溝を早く形成できると共に、ビードの内側接合端の視認によって薄皮部を早く除去できるため、施工効率を向上させることができて、従来に比べて施工コストを大幅に下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るソールプレートの撤去方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)は、橋桁1の下フランジ1aに隅肉溶接されているソールプレート10を示した底面図である。ソールプレート10は、矩形状で且つ平板状の鋼板であり、橋桁1の下フランジ1aに対して全周でアーク溶接によって隅肉溶接されている(
図9参照)。このため、
図1(A)に示すように、ソールプレート10の各長辺縁部10A,10B及び各短辺縁部10C,10Dには、それぞれビード10aが形成されている。ここで、
図1(B)は、
図1(A)のX−X線に沿った断面図である。
【0020】
図1(B)に示すように、ビード10aは、長辺縁部10Aより内側(
図1(B)の左側)まで溶け込んで断面が略三角形状に形成されている。下フランジ1aとビード10aの最下端x1との間の高さ寸法T1は、約8mmである。また、ビード10aのうち下フランジ1aと最も外側で接合する外側接合端y1と長辺縁部10Aとの間の幅寸法S1は、約8mmである。また、ビード10aのうち下フランジ1aと最も内側で接合する内側接合端z1と長辺縁部10Aとの間の幅寸法S2は、約5mmである。こうして、長辺縁部10Aと下フランジ1aとは、ビード10aの外側接合端y1と内側接合端z1との間の幅寸法(S1+S2)である約13mmによって接合されている。長辺縁部10Aに形成されたビード10aと、その他の長辺縁部10B及び各短辺縁部10C,10Dに形成されたビード10aとは同様であるため、その説明を省略する。
【0021】
ところで、仮にビード10aに疲労による亀裂が生じていると、亀裂が成長して大きくなり、橋桁1の破壊につながる可能性がある。このため、ビード10aに亀裂が生じることを未然に防止するため、橋梁の補修作業として古いソールプレート10を下フランジ1aから撤去する。その後、新しいソールプレートを高力ボルトを用いて下フランジ1aに接合するようになっている。ここで、従来では、ソールプレート10を下フランジ1aから撤去する際に、グラインダー20(
図10参照)を用いてビード10aを切断していた。
【0022】
しかし、発明が解決しようとする課題で説明したように、グラインダー20でビード10aを切断する作業は多くの時間がかかる。グラインダー20の研削刃21は、ビード10aを研削、即ち徐々に削り取っていくためである。そして、狭隘部4(
図9参照)で上向きにグラインダー20を操作する作業は、作業員の体力の消耗が大きく、且つ安全性が高いものではない。一方、
図9に示す切断装置200を用いても、
図11に示すように、薄皮部10gが残ってしまう。この場合、作業員が手作業でグラインダー20を操作し、研削刃21で薄皮部10gを研削しようとしても、ビード10aの内側接合端z1を視認できない。このため、薄皮部10gを確実に且つ早く除去することが非常に困難である。更に、研削刃21が薄い研削溝10fに噛み込んで、グラインダー20の挙動が不安定になるおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態のソールプレートの撤去方法では、上記した問題点を解決できるようになっている。ここでは先ず、本実施形態で用いる切削装置100について説明する。
図2は本実施形態の切削装置100を示した斜視図であり、
図3は
図2に示した切削装置100の正面図であり、
図4は
図2に示した切削装置100の平面図である。この切削装置100は、
図2〜
図4に示すように、主に保持板110と、レール部材120と、ネジ棒130と、電磁石140と、電動モータ150と、T型刃具160とを備えて構成されている。
【0024】
保持板110は、矩形状で且つ平板状の鋼板であり、切削装置100の土台になるものである。この保持板110の両端には、起立している支持部材111が設けられている。また、保持板110の下面には、
図3に示すように、ジャッキ5で支持される際に目印になるジャッキポイント110aが設けられている。こうして、各ジャッキ5が各ジャッキポイント110aで支持することにより、切削装置100を正しい姿勢で保持できるようになっている。
【0025】
レール部材120は、保持板110の上側に平行に二つ取付けられていて、保持板110の長手方向に延びている。なお以下では、保持板110の長手方向を単に「長手方向」と呼ぶ。各レール部材120の上方には平板状の基台121が設けられていて、基台121は各係止部材122を介して各レール部材120に摺動可能に取付けられている。
【0026】
ネジ棒130は、
図4に示すように、各レール部材120の間で長手方向に延びていて、両端部でベアリング131を介して支持部材111に回転可能に支持されている。ネジ棒130の一端部(
図3の右端部)には回転ハンドル132が取付けられていて、ネジ棒130の周面には雄ネジが形成されている。そして、基台121の下側には図示しない係合部材が固定されていて、この係合部材に形成された雌ネジとネジ棒130に形成された雄ネジとが螺合している。これにより、回転ハンドル132を回転させると、ネジ棒130が回転して、基台121を各レール部材120に沿って長手方向に移動させることができる。
【0027】
電磁石140は、保持板110の四隅の上方にそれぞれ設けられていて、鉛直方向に延びる支持棒141を介して保持板110に取付けられている。これら電磁石140は、スイッチ142のON又はOFFの操作によって、電磁力を発生又は消滅させるものである。このため、各電磁石140が下フランジ1aに当接した状態でスイッチ142をONにすると、各電磁石140が電磁力によって下フランジ1aに吸着して、切削装置100を下フランジ1aに取付けることができる。
【0028】
電動モータ150は、図示しないスイッチの操作によって、T型刃具160を回転させるものである。この電動モータ150は、基台121の上側に取付けられている直方体状の本体部151と、本体部151の上側に取付けられている中空円筒状の取付部152とを有している。取付部152は、
図3に示すように、内部にT型刃具160の軸部162を収容している。
【0029】
T型刃具160は、ビード10aを切削するものであり、
図3に示すように、上側に円盤状の切削刃161を有し、下側に軸部162を有している。ここで、
図5(A)は
図4に示した切削刃161の拡大図であり、
図5(B)は
図5(A)に示した切削刃161の側面図である。切削刃161は、
図5(A)に示すように、径外方端部に複数の刃161c,161dを有し、回転方向(反時計方向)の前方側にV字状の切屑ポケット161eを有している。各刃161c,161dは、周方向にそれぞれ等間隔で配置されている。
【0030】
そして、
図5(B)に示すように、刃161cは、切削刃161の上面161a側(
図5(B)の右側)に形成され、刃161dは、切削刃161の下面161b側(
図5(B)の左側)に形成されている。各刃161cと各刃161dとは、周方向に向かって上面161a側と下面161b側とに交互に向きを変えて設けられている。このように、切削刃161は、所謂千鳥刃サイドカッターになっていて、切削能力が高く且つ深い溝加工に適したものになっている。この切削刃161の厚さ寸法K1は、5mmに設定されている。こうして、切削刃161が千鳥刃サイドカッターであることによって、後述するように比較的幅が広い切削溝10b(
図6参照)を最適に形成することができる。そして、切削溝10bを形成する際に、各刃161c,161dが切削溝10bの壁面に交互に関与して、切削刃161の変形を抑制することができる。
【0031】
軸部162は、
図3に示すように、取付部152の中でキー部材(図示省略)を用いて回転不能に取付けられている。軸部162の下端と取付部152の底部との間には、バネ部材163が介装されている。このバネ部材163によって、切削刃161は上方に付勢されて、切削刃161の上面161aが下フランジ1aに面接触した状態で押し付けられるようになっている。また、取付部152には、径方向(
図3の左右方向)に延びるボルト164が取付けられている。このボルト164によって、軸部162が取付部152の内部に押し付けられて、軸部162の径方向の位置が固定されている。そして、ボルト164にナット165が螺着していて、切削刃161の切削時に、ボルト164の振動による緩み止めになっている。
【0032】
次に、上述のように構成された切削装置100を用いて、ソールプレート10を撤去する手順について説明する。先ず、橋脚3に支持されるジャッキ(図示省略)で橋桁1を仮受けして、作業空間を確保する。そして、
図3に示すように、各ジャッキ5によって保持板110を支持して、切削装置100の高さを調整する。同時に、ネジ棒130及びレール部材120をソールプレート10の長辺縁部10Aに平行に配置して、長辺縁部10Aに形成されたビード10aを切削するための位置合わせを行う。その後、各電磁石140を下フランジ1aに吸着させると共に、切削刃161の上面161aを下フランジ1aに押し付ける。
【0033】
そして、T型刃具160を回転させ、回転ハンドル132を回して切削刃161と電動モータ150と基台121とを各レール部材120に沿って長手方向に移動させる。切削刃161が移動する速度は、約2cm/分である。これにより、回転する切削刃161が下フランジ1aに沿ってビード10aを切削し、
図6に示すように、ビード10aに切削溝10bが形成される。ここで、ビード10aの外側接合端y1と内側接合端z1との間の幅寸法(S1+S2)は、上述したように約13mmであるため、本実施形態では、切削溝10bの幅寸法W1が13mm以上になるように切削する。そして、切削刃161の厚さ寸法K1は、上述したように5mmであるため、切削溝10bの幅寸法U1は5mmになる。
【0034】
この切削時において、
図6に示すように、切削溝10bと下フランジ1aとの間に、薄皮部10cが形成される。この薄皮部10cは、レール部材120の撓みや切削装置100に作用する重力によって、切削刃161の位置が正しい位置から僅かに下がっていくことによって形成される。しかし、本実施形態では、幅寸法U1が5mmである広い切削溝10bが形成されるため、ビード10aの内側接合端z1を視認することができる。
【0035】
こうして、長辺縁部10Aに形成されたビード10aの切削が完了した後、切削装置100の下フランジ1aに対する取付位置を変えて、長辺縁部10Bに形成されたビード10a、各短辺縁部10C,10Dに形成されたビード10aについても、同様に切削を行う。その後、作業員は手作業でグラインダー20(
図10参照)を操作し、ビード10aの内側接合端z1を視認しながら研削刃21で薄皮部10cを研削する。これにより、
図7に示すように、薄皮部10cが除去されて、ソールプレート10が下フランジ1aに接合されなくなる。こうして、ソールプレート10の撤去が完了する。
【0036】
本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のソールプレートの撤去方法によれば、従来のようにグラインダー20の研削刃21でビード10aを研削して研削溝10f(
図11参照)を形成するのではなく、切削装置100の切削刃161でビード10aを切削して切削溝10bを形成する。このため、切削溝10bを形成するまでの時間が比較的短い。そして、切削装置100を用いて切削刃161を下フランジ1aに沿って平面方向に移動させるため、下フランジ1aを傷付けることがない。
【0037】
特に、本実施形態では、比較的厚い切削刃161を用いて、比較的幅が広い切削溝10bを形成する。これにより、ビード10aの内側接合端z1が視認できるように薄皮部10cが形成される。このため、その後にグラインダー20の研削刃21で薄皮部10cを研削するときに、ビード10aの内側接合端1zを視認しながら除去することができる。従って、薄皮部10cを確実に且つ早く除去することができる。こうして、切削刃161によって切削溝10bを早く形成できる共に、ビード10aの内側接合端z1の視認によって薄皮部10cを早く除去できるため、施工効率を向上させることができる。この結果、従来に比べて施工コストを大幅に下げることができる。
【0038】
また、切削溝10bの形成では、切削装置100を用いて切削刃161を移動させるだけであるため、比較的経験が浅い作業員であっても容易に行うことができる。そして、薄皮部10cを除去する作業でも、切削溝10bの幅寸法U1(5mm)が比較的大きいため、研削刃21が切削溝10bに噛み込むことがない。従って、グラインダー20の挙動が不安定になる危険がない。こうして、作業の安全性が高く、作業員の技量に依らずに作業品質及び作業時間を安定させることができる
【0039】
ここで、本実施形態において、厚さ寸法K1が5mmである切削刃161を用いた理由は、以下に基づく。即ち、厚さ寸法K1が5mmである切削刃161であれば、薄皮部10cを形成する際に、ビード10aの内側接合端z1が確実に視認できるようになる。そこで、厚さ寸法K1が大きければ大きい程良いとも考えられる。しかし、仮に厚さ寸法K1が8mm以上である切削刃を用いると、切削刃を回転駆動させる切削装置が大型化する。これにより、切削装置の重量が大きくなり、作業員が切削装置を持ち上げる作業が困難になる。本実施形態の切削刃161を回転駆動させる切削装置100の重量は約60kgである。こうして、内側接合端z1を視認できることと、切削装置100の重量の観点から、厚さ寸法K1が5mm以上であり且つ8mmより小さい切削刃を用いることが好ましい。
【0040】
上記した説明から分かるように、本実施形態では、切削溝10bを形成する際に、薄皮部10cをできるだけ無くすという技術的思想ではなく、薄皮部10cが残ることを前提として、ビード10aの内側接合端z1を視認できるように切削を行うという従来にない技術的思想を有している。そして、ソールプレート10がビード10aによってより強固に接合されていればいるほど、上述した本実施形態のソールプレートの撤去方法の効果がより顕著に表れる。
【0041】
以上、本発明に係るソールプレートの撤去方法について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
本実施形態においては、切削刃161として千鳥刃サイドカッターを用いたが、切削刃は千鳥刃カッターに限定されるものではない。例えば、
図8(A)(B)に示すように、径外方端部に形成されている各刃161cが、上面161a及び下面161bに直交している通常のサイドカッターであっても良い。また、各刃が着脱可能なスローアウェイチップになっているサイドカッターを用いても良い。
また、本実施形態においては、薄皮部10cをグラインダー20で研削して除去したが、薄皮部10cを除去する方法は適宜変更可能であり、例えば、打込み矢及びハンマーを用いて薄皮部10cを除去しても良い。
また、本実施形態で説明した各寸法S1(8mm),S2(5mm),T1(8mm),K1(5mm),W1(13mm以上)はあくまで一例として示したものであって、適宜変更可能である。