【実施例】
【0026】
次に、本発明を、実施例を用いて、さらに詳細に説明する。本発明は、これらの例によって限定されない。
[評価方法]
実施例と比較例の舗装用混合物の物性及び作業性を下記の方法に従って評価した。
(1)GPC測定条件
以下の合成例及び比較合成例により得られた重合体の重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出された値である。
GPC測定条件
・カラム:カラム1+カラム2+カラム3をこの順番に連結して使用した。
カラム1:Shodex社製 有機溶媒系SEC用ガードカラム 製品名「K−G」
カラム2、3:Shodex社製 有機溶媒系SEC用カラム 製品名「K−804L」
・溶離液:1mmol/L 有機アミン(花王株式会社製 商品名「ファーミンDM2098」)/クロロホルム
・流速:1.0mL/min
・測定温度:40℃
・検出器:RI
・標準物質:ポリスチレン(下記の第1表のものを使用した)
【0027】
【表1】
【0028】
(2)施工時の作業性
150℃に加熱した状態の供試体について、スコップを用いて舗装を施工した場合の作業性を以下の基準により判定した。
A:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して、作業性が良好である
B:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して、施工可能であるが、作業が困難と感じる
C:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して、施工可能であるが、作業がかなり困難と感じる
D:施工不可能
【0029】
(3)耐流動性の評価
耐流動性については、社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載される「B003ホイールトラッキング試験」に基づいて評価し、その試験結果から、以下の基準により判定した。
A:10000回/mm以上
B:5000回/mm以上10000回/mm以下
C:3000回/mm以上5000回/mm以下
D:3000回/mm未満
【0030】
(4)疲労抵抗性の評価
疲労抵抗性については、社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載れる「B018Tアスファルト混合物の曲げ疲労試験方法」に基づいて、繰り返し4点曲げ試験を実施し、疲労破壊が生じるまでの回数を測定した。測定条件は次のとおりである。
アスファルト混合物から幅4cm×高さ4cm×長さ40cmの直方体の供試体を形成し、試験温度20℃において、400×10
-6の歪み制御で疲労破壊に至るまでの回数を測定した。疲労破壊が生じるまでの回数から、以下の基準により分類した。
A:10000回以上
B:5000回以上10000回以下
C:2000回以上5000回以下
D:2000回未満
【0031】
[ポリアミド樹脂の製造方法と物性]
<ポリアミド樹脂1>
ポリアミド樹脂1は、トール油脂肪酸及び重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)を含むカルボン酸成分と、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンからなるアミン成分とを縮合させて得られたものである。ポリアミド樹脂1は、特許文献2の[0032]に記載された製造方法に準拠して合成した。
すなわち、原料となる、トール油脂肪酸、及び重合脂肪酸を含むカルボン酸成分と、アミン成分との混合物を温度計、撹拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、該混合物を撹拌し、着色防止のために僅かの窒素を流した後、210℃で3時間反応させた。さらに減圧下(13.3kPa)で2時間反応させた後、冷却し、粉砕してポリアミド樹脂1を得た。
それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたりトール油脂肪酸が0.30モル当量(全体原料に占める割合15モル当量%、括弧内、以下同じ)、重合脂肪酸が0.70モル当量(35モル当量%)であり、アミン成分については、アミン成分1モル当量あたりエチレンジアミンが0.50モル当量(25モル当量%)、ヘキサメチレンジアミンが0.50モル当量(25モル当量%)である。また、カルボン酸成分とアミン成分の割合は、モル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)で、1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂1の物性は、軟化点82℃、180℃溶融粘度70mPa・sであった。また、ポリアミド樹脂1の数平均分子量は1992であり、重量平均分子量は3852であった。なおトール油脂肪酸や重合脂肪酸のモル当量については、以下同様にJIS常法の酸価の測定結果から算出した。
【0032】
<ポリアミド樹脂2>
ポリアミド樹脂2は、トール油脂肪酸及び重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)を含むカルボン酸成分と、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンからなるアミン成分とを縮合させて得られたものである。ポリアミド樹脂2は、特許文献2の[0032]に記載された製造方法に準拠して合成した。
すなわち、原料となるトール油脂肪酸、及び重合脂肪酸を含むカルボン酸成分と、アミン成分との混合物を温度計、撹拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、該混合物を撹拌し、着色防止のために僅かの窒素を流した後、210℃で3時間反応させた。さらに減圧下(13.3kPa)で2時間反応させた後、冷却し、粉砕してポリアミド樹脂2を得た。
それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたりトール油脂肪酸が0.04モル当量(2モル当量%)、重合脂肪酸が0.96モル当量(48モル当量%)であり、アミン成分については、アミン成分1モル当量あたりエチレンジアミンが0.55モル当量(27.5モル当量%)、ヘキサメチレンジアミンが0.45モル当量(22.5モル当量%)である。また、カルボン酸成分とアミン成分の割合は、モル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)で、1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂2の物性は、軟化点89℃、180℃溶融粘度4375mPa・sであった。また、ポリアミド樹脂2の重量平均分子量は9320であった。
【0033】
<ポリアミド樹脂3>
ポリアミド樹脂3は、プロピオン酸、トール油脂肪酸及び重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)を含むカルボン酸成分と、エチレンジアミンからなるアミン成分とを縮合させて得られたものである。ポリアミド樹脂3は、特許文献2の[0032]に記載された製造方法に準拠して合成した。
すなわち、原料となるトール油脂肪酸、及び重合脂肪酸を含むカルボン酸成分と、アミン成分との混合物を温度計、撹拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、該混合物を撹拌し、着色防止のために僅かの窒素を流した後、210℃で3時間反応させた。さらに減圧下(13.3kPa)で2時間反応させた後、冷却し、粉砕してポリアミド樹脂3を得た。
それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたりプロピオン酸が0.07モル当量(3.5モル当量%)、トール油脂肪酸が0.05モル当量(2.5モル当量%)、重合脂肪酸が0.88モル当量(44モル当量%)であり、アミン成分については、エチレンジアミンを単独で用いた。また、カルボン酸成分とエチレンジアミンの割合は、モル当量比(カルボン酸成分/エチレンジアミン)で、1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂3の物性は、軟化点119℃、180℃溶融粘度1350mPa・sであった。また、ポリアミド樹脂3の重量平均分子量は10550であった。
【0034】
<ポリアミド樹脂4>
ポリアミド樹脂4は、重合脂肪酸(高純度ダイマー酸、モノマー酸3質量%、ダイマー酸94質量%、トリマー酸3質量%、HPLC法による分析値)と、エチレンジアミン及びm−キシレンジアミンからなるアミン成分とを縮合させて得られたものである。ポリアミド樹脂4は、特許文献2の[0032]に記載された製造方法に準拠して合成した。
すなわち、原料となる重合脂肪酸と、アミン成分との混合物を温度計、撹拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、該混合物を撹拌し、着色防止のために僅かの窒素を流した後、210℃で3時間反応させた。さらに減圧下(13.3kPa)で2時間反応させた後、冷却し、粉砕してポリアミド樹脂4を得た。
それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたり重合脂肪酸が1.0モル当量(50モル当量%)であり、アミン成分については、アミン成分1モル当量あたりエチレンジアミンが0.5モル当量(25モル当量%)、m−キシレンジアミンが0.5モル当量(25モル当量%)である。また、カルボン酸成分とアミン成分の割合は、モル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)で1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂4の物性は、軟化点102℃、180℃溶融粘度26000mPa・sであった。また、ポリアミド樹脂4の重量平均分子量は21565であった。
【0035】
<ポリアミド樹脂5>
ポリアミド樹脂5は、重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)と、エチレンジアミン及びm−キシレンジアミンからなるアミン成分とを縮合させて得られたものである。ポリアミド樹脂4は、特許文献2の[0032]に記載された製造方法に準拠して合成した。
すなわち、原料となる重合脂肪酸と、アミン成分との混合物を温度計、撹拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、該混合物を撹拌し、着色防止のために僅かの窒素を流した後、210℃で3時間反応させた。次に13.3kPaまで減圧させたところ、本ポリアミドについてはゲル化したため反応を中止した。これを冷却し、粉砕してポリアミド樹脂5を得た。
それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたり重合脂肪酸が1.0モル当量(50モル当量%)であり、アミン成分については、アミン成分1モル当量あたりエチレンジアミンが0.5モル当量(25モル当量%)、m−キシレンジアミンが0.5モル当量(25モル当量%)である。また、カルボン酸成分とアミン成分の割合は、モル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)で1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂5は、溶剤に不溶であり、且つ加熱しても液状とならず、軟化点、180℃粘度、重量平均分子量の測定が不可能であった。
【0036】
[実施例及び比較例]
ポリアミド樹脂1〜5を用いて、実施例及び比較例の舗装用混合物を作製した。なお、ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、各実施例において混合して使用したものについては、混合後に、ゲルパーミションクロマトグラフィーにより測定した。
<実施例1>
ポリアミド樹脂1を5質量%、ポリアミド樹脂2を5質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト90質量%とを含む舗装用バインダと、最大粒径が13mmの粗骨材とをミキサーにて150℃で混合した。
混合により得られた舗装用混合物を110℃で締固めて、実施例1の供試体を得た。なお、締固め温度は、舗装施工便覧(平成18年版)p.112に記載のあるアスファルト混合物の初転圧温度の下限値を参考にして決めた。
また、ポリアミド樹脂1を85質量%、ポリアミド樹脂2を15質量%からなるポリアミド樹脂の舗装用混合物に対する配合比率は、5.1質量%であった。
【0037】
<実施例2>
ポリアミド樹脂1を25質量%、ポリアミド樹脂2を25質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト50質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の供試体を得た。
<実施例3>
ポリアミド樹脂3を10質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト90質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の供試体を得た。
<実施例4>
ポリアミド樹脂3を25質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト75質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の供試体を得た。
<実施例5>
ポリアミド樹脂3を25質量%からなるポリアミド樹脂と、ストアス60/80を75質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の供試体を得た。
<実施例6>
ポリアミド樹脂3を50質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルトを50質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の供試体を得た。
<実施例7>
ポリアミド樹脂として、ポリアミド樹脂4を10質量%、改質II型アスファルトを90質量%含む舗装用バインダを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の供試体を得た。
<実施例8>
ポリアミド樹脂として、ポリアミド樹脂4を50質量%、改質II型アスファルトを50質量%含む舗装用バインダを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の供試体を得た。
【0038】
<比較例1>
ポリアミド樹脂1を4質量%、ポリアミド樹脂2を4質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト92質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の供試体を得た。
<比較例2>
ポリアミド樹脂1を27.5質量%、ポリアミド樹脂2を27.5質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト45質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の供試体を得た。
<比較例3>
ポリアミド樹脂4を8質量%と、改質II型アスファルト92質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の供試体を得た。
<比較例4>
ポリアミド樹脂4を55質量%と、改質II型アスファルト45質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の供試体を得た。
<比較例5>
ポリアミド樹脂1を16.2質量%、ポリアミド樹脂2を8.8質量%からなるポリアミド樹脂と、改質II型アスファルト75質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5の供試体を得た。
<比較例6>
ポリアミド樹脂5を25質量%と、改質II型アスファルト75質量%とを含む舗装用バインダを使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6の供試体を得た。
【0039】
[評価結果]
実施例及び比較例の舗装用混合物を、上述した評価方法により評価した。結果を第2表に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1〜8のように、ポリアミド樹脂の重量平均分子量が8千以上3万以下であり、舗装用バインダ全量基準におけるポリアミド樹脂の含有量が10質量%以上50質量%以下であり、アスファルト成分を残部とするような舗装用バインダを用いた舗装用混合物の供試体は、スコップ作業性、耐流動性、及び疲労抵抗性がともに良好であった。
これに対して、舗装用バインダ全量基準におけるポリアミド樹脂の含有量が10質量%未満である比較例1の舗装用混合物は、耐流動性が要求性能を満たさないことがわかった。比較例3によれば、1種類のポリアミド樹脂を使用したものは、さらに疲労抵抗性も要求性能を満たさないことがわかった。また、比較例4のように、ポリアミド樹脂の含有量が50質量%を超えるものは、作業性が低下する。また、重量平均分子量が8千未満のものは、疲労抵抗性が悪い。