【解決手段】容量制御弁10の受圧室37に圧縮機本体40の吐出側圧力を作動圧として導入する導入流路81を,パージ弁80の二次側で分岐し,一方を放気流路81cと成すと共に,他方を容量制御弁10の受圧室37に連通する制御流路81bとする。この制御流路81bと逃がし流路71に絞り72,74を設け,受圧室37内の圧力上昇速度を維持しつつ,受圧室37を通過する圧縮気体の流量を減少させて容量制御弁10の閉弁時に生じる前述の衝突音を小さくすると共に,放気流路81cによって必要な放気量を確保し,アンロード運転移行後,速やかな吸気制御と逆止弁44の一次側における圧縮機本体40の吐出側圧力の放気を行う。
消費側に供給される圧縮気体の圧力が所定の設定吐出圧力となるように圧縮機本体の吸気量を制御すると共に,圧縮機本体の吐出側圧力が前記設定吐出圧力に対して所定の高い圧力であるアンロード開始圧力以上になると,前記圧縮機本体に対する吸気を停止してアンロード運転に移行する容量制御装置を備えた圧縮機において,
前記圧縮機本体から消費側に至る供給流路中に逆止弁を設け,前記逆止弁の一次側における前記供給流路を吐出流路,前記逆止弁の二次側における前記供給流路を消費流路とし,
前記容量制御装置が,前記圧縮機本体の吸気側に設けられた容量制御弁と,前記吐出流路内の圧縮気体を作動圧として前記容量制御弁の受圧室に導入する導入流路と,前記導入流路を開閉するパージ弁と,前記容量制御弁の前記受圧室内の圧縮気体を排出する逃がし流路と,前記消費流路内の圧力を検知する圧力検知手段と,前記圧力検知手段の検知信号に基づいて前記パージ弁を開閉制御するパージ動作制御手段を備え,
前記導入流路は,前記パージ弁の下流側を分岐して形成された,放気流路と,前記容量制御弁の前記受圧室に連通される制御流路を備え,
前記パージ動作制御手段が,前記消費流路の圧力が所定のアンロード開始圧力以上になったことを示す前記圧力検知手段からの検知信号を受信することにより前記パージ弁を開くよう構成されていることを特徴とする,圧縮機の容量制御装置。
【背景技術】
【0002】
原動機によって駆動される圧縮機本体に気体を吸い込むと共に圧縮し,空気作業機等が接続された消費側に圧縮気体を供給する圧縮機には,圧縮機本体の吐出側圧力に応じて圧縮機本体の吸気量を制御する容量制御装置が設けられており,この容量制御装置により圧縮機本体の吸気量を制御することで圧縮機本体の吐出側圧力を所定の目標圧力に近付ける制御(容量制御)を行い,消費側に安定した圧力の圧縮気体を供給できるようにしている。
【0003】
このような容量制御装置を備えた圧縮機の一例として,電動機駆動型の油冷式スクリュ圧縮機の構成例を
図5に示す。
【0004】
図5に示す圧縮機100は油冷式スクリュ圧縮機であり,圧縮機本体140の吐出側に圧縮機本体140より吐出された圧縮気体を貯留するレシーバタンク160を設けると共に,圧縮機本体140の吸気口を開閉する容量制御弁110を設け,この容量制御弁110にレシーバタンク160内の圧縮気体を作動圧力として導入する導入流路163を連通すると共に,この導入流路163を開閉する放気弁180と,レシーバタンク160から消費側に至る流路中に設けた逆止弁144の二次側圧力を測定する圧力センサ121と,前記圧力センサ121の検知圧力に応じて放気弁180を開閉制御する制御装置120が設けられており,
図5に示す圧縮機100の例では前述した容量制御弁110,導入流路163,放気弁180,圧力センサ121,及び制御装置120によって,容量制御装置が構成されている(特許文献1の
図1)。
【0005】
この容量制御装置を構成する前述の容量制御弁110は,前述した放気弁180の開弁によって導入流路163を介して圧縮機本体140の吐出側圧力が導入された際に閉弁するよう構成されており,一例として,
図6に示すようにシリンダ135内に摺動可能に設けられたピストン114と,このピストン114に取り付けた軸114aと,この軸114aの先端側にスライド可能に挿通された弁体112と,この弁体112によって開閉される弁座113とを備えており,シリンダ135内をピストン114によって区切り,一方側(弁体側)にバネ室を形成してバネ115を収容すると共に,他方に導入流路163が連通される受圧室137を形成し,この受圧室137内に導入流路163を介してレシーバタンク160内の圧縮気体を導入すると,ピストン114がばね115の付勢力に抗して弁体112を弁座113に押し当てることで閉弁が行われるようになっている。
【0006】
なお,
図6において,符号171は逃がし流路であり,容量制御弁110の受圧室137を,容量制御弁110の吸入側の空間に連通することで,受圧室137内の圧力を逃がすことができるようになっている(特許文献1参照の
図2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上で説明した特許文献1に記載の容量制御装置の構成にあっては,圧力センサ121からの検知信号に基づいて制御装置120が放気弁180を開くと,レシーバタンク160から導入流路163を介して受圧室137に対し圧縮気体が導入される。
【0009】
この圧縮気体の導入によって,受圧室137内の圧力がバネ室内に収容したばね115の付勢力に打ち勝つと,ピストン114が弁座113側に向かって摺動し,このピストン114と軸114aを介して連結された弁体112が,弁座113に向かって移動して弁座113を塞ぐ。
【0010】
また,前述したように,容量制御弁110の受圧室137は,逃がし流路171を介して容量制御弁110の一次側と連通されていることから,導入流路163を介して受圧室137に導入されたレシーバタンク160内の圧縮気体は,前述の逃がし流路171を経て容量制御弁110の一次側へと導入され,エアフィルタ170を介して大気放出されることにより,レシーバタンク160内の圧力(逆止弁144の一次側における圧縮機本体140の吐出側圧力)を低下させ,所謂「アンロード運転」へと移行する。なお、以下の説明では弁体112の作動やレシーバタンク160内の圧力低下に係わらず、放気弁180を開弁したことを以てアンロード運転に移行したものとする。
【0011】
ここで,
図5及び6を参照して説明した従来の容量制御装置の構成にあっては,アンロード運転時におけるレシーバタンク160内の圧縮気体の放気を,導入流路163,受圧室137,及び逃がし流路171を介して行っているため,レシーバタンク160内の圧力を速やかに低下させるためには,比較的大流量の圧縮気体が導入流路163,受圧室137,及び逃がし流路171を通って放気できるように構成する必要がある。
【0012】
しかし,流路内を通過する流体の流量が増えると,その分,ピストン114の運動エネルギーが大きくなり,このピストン114に軸114aを介して取り付けられている弁体112が,弁座113に対して衝突した際の衝撃も大きくなることから,従来の容量制御装置の構成にあっては,圧縮機がアンロード運転に移行し,容量制御弁110を閉じる毎に,弁座113に対し弁体112が激しく衝突することで,耳障りな衝突音が騒音として発生する。
【0013】
この衝突音を小さくしようとした場合,例えば,導入流路163に絞りを設け,あるいは導入流路163自体の管径を小さくする等して導入流路163の流路面積を狭めて導入流路163を介して受圧室137に導入される圧縮気体の流量を減少させることも考えられる。
【0014】
しかしながら,このようにして導入流路163の流路面積を狭めて圧縮気体の流量を減少すると,前述した衝撃音については小さくすることができたとしても,受圧室137内の圧力上昇速度が遅くなるために,放気弁180の開弁後,容量制御弁110が直ちに作動せず,閉弁タイミングに遅れを生じる。
【0015】
その結果,容量制御弁110の閉弁動作が遅れた分,アンロード運転に移行した後も圧縮機本体140に対し被圧縮気体の導入が継続される。
【0016】
また,導入流路163を絞り,受圧室137に導入される圧縮気体の流量を減少させると,逃がし流路171を介して行われる放気量も減少するため,アンロード運転に移行しても,逆止弁144の一次側における圧縮機本体140の吐出側圧力が直ぐには低下しないだけでなく,前述したように容量制御弁110の閉弁動作が遅れて圧縮機本体140の吸気が継続されることも相俟って,圧縮機本体140の吐出側圧力が所定値よりも上昇する,「オーバーシュート」が生じる。
【0017】
その結果,消費側に供給する圧縮気体の圧力を所定範囲内に維持することができなくなると共に,アンロード運転への移行後でありながら,暫くの間,負荷がかかった状態で圧縮機本体の運転が継続されることとなるために,消費動力の上昇を招くこととなる。
【0018】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,アンロード運転に移行した際,容量制御弁の閉弁動作や,逆止弁の一次側における圧縮機本体の吐出側圧力の降下を迅速に行って,オーバーシュートの発生や消費動力の上昇を招くことを防止できると共に,容量制御弁の閉弁時に発生する騒音(衝突音)を小さく抑えることができる容量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0020】
上記目的を達成するために,本発明の圧縮機の容量制御装置は,消費側に供給される圧縮気体の圧力が所定の設定吐出圧力となるように圧縮機本体40の吸気量を制御すると共に,圧縮機本体40の吐出側圧力が前記設定吐出圧力に対して所定の高い圧力であるアンロード開始圧力以上になると,前記圧縮機本体に対する吸気を停止してアンロード運転に移行する容量制御装置を備えた圧縮機において,
前記圧縮機本体40から消費側に至る供給流路60中に逆止弁44を設け,前記逆止弁44の一次側における前記供給流路60を吐出流路60a,前記逆止弁44の二次側における前記供給流路60を消費流路60bとし,
前記容量制御装置が,前記圧縮機本体40の吸気側に設けられた容量制御弁10と,前記吐出流路60a内の圧縮気体を作動圧として前記容量制御弁10の受圧室37に導入する導入流路81と,前記導入流路81を開閉するパージ弁80と,前記容量制御弁10の前記受圧室37内の圧縮気体を排出する逃がし流路71と,前記消費流路60b内の圧力を検知する圧力検知手段21と,前記圧力検知手段21の検知信号に基づいて前記パージ弁80を開閉制御するパージ動作制御手段20を備え,
前記導入流路81は,前記パージ弁80の下流側を分岐して形成された,放気流路81cと,前記容量制御弁10の前記受圧室37に連通される制御流路81bを備え,
前記パージ動作制御手段20が,前記消費流路60bの圧力が所定のアンロード開始圧力以上になったことを示す前記圧力検知手段21からの検知信号を受信することにより前記パージ弁80を開くよう構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0021】
前記構成の容量制御装置において,前記放気流路81cに設けた絞り73を,前記制御流路81bに設けた絞り72よりも大きく形成する等して,前記放気流路81cの流路面積を,前記制御流路81bの流路面積よりも大きく形成することが好ましい(請求項2)。
【0022】
更に,前記放気流路81cを前記容量制御弁10内に形成した吸入通路30のうち弁体12の上流側にある部分31に連通するものとしても良い(請求項3)。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明の構成により,本発明の容量制御装置を備えた圧縮機1では,容量制御弁10の閉弁時における弁体12と弁座13との衝突音を小さなものとすることができるものでありながら,容量制御弁10の閉弁タイミングに遅れを生じさせることなく,しかも,アンロード運転への移行後,可及的速やかに逆止弁44の一次側における圧縮機本体40の吐出側圧力を低下させることができた。
【0024】
すなわち,本発明の容量制御装置を備えた圧縮機では,パージ弁80の二次側において導入流路81を分岐して放気流路81cを設けたことにより,制御流路81bを介して容量制御弁10の受圧室37に導入される圧縮気体の流量を減少させて容量制御弁の閉弁時に生じる衝突音を小さくした場合であっても,吐出流路60a内の圧力を迅速に降下させるために必要な放気量は放気流路81cを介した放気によって確保することができるため,アンロード運転時,吐出流路60a内の圧縮気体を放気して圧力を可及的速やかに低下させることが可能となった。
【0025】
しかも,このように放気流路81cを介して吐出流路60a内の圧縮気体を放気できることから,逃がし流路71を絞って放気量をさらに減少させることが可能で,その結果,制御流路81bの流路面積の減少に拘わらず受圧室37内の圧力上昇速度の低下を抑制することができ,パージ弁80の開弁動作に対し,容量制御弁10の閉弁動作に大幅な遅れが生じることを防止することができた。
【0026】
その結果,パージ弁80の開弁によってアンロード運転に移行すると,比較的早期に逆止弁44の一次側における圧縮機本体40の吐出側圧力の低下と,圧縮機本体40に対する吸気制御が行われることで,前述したオーバーシュートの発生や,消費動力の増大を抑えることができた。
【0027】
前記放気流路81cの流路面積を,前記制御流路81bの流路面積よりも大きなものとした構成にあっては,制御流路81bを介して受圧室37内に導入される圧縮気体の流量を大幅に低下させることができ,その結果,閉弁時に生じる衝突音を更に小さなものとすることができた。
【0028】
更に,前記放気流路81cを前記容量制御弁10内に形成した吸入通路30のうち弁体12の上流側にある部分31に連通した構成にあっては,容量制御弁10の吸気側に設けられたエアフィルタ70を介して吐出流路60a内の圧縮気体が放気される結果,エアフィルタ70がサイレンサの役割を果たすことで,別途サイレンサを設けることなく放気音を低減させることができ,部品点数の減少を図ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の容量制御装置を備えた圧縮機1について説明する。
【0031】
〔圧縮機の全体構成〕
図1中の符号1は本発明の容量制御装置を備えた圧縮機であり,この圧縮機1は,圧縮機本体40,前記圧縮機本体40を駆動するエンジンや電動機等の原動機50,前記圧縮機本体40より吐出された圧縮気体を貯留するレシーバタンク61を備え,圧縮機本体40より吐出された圧縮気体を,レシーバタンク61内に貯留した後,逆止弁44を介し,必要に応じて圧縮気体をアフタクーラ67により冷却し,あるいはドライヤ68により乾燥させた後,サービスバルブ69を介して図示せざる空気作業機等に対して供給することができるようになっている。
【0032】
なお,本明細書において,前述のレシーバタンク61,セパレータ62,逆止弁44,アフタクーラ67,ドライヤ68,サービスバルブ69等の機器や,これらの機器間を連通する配管63〜66によって,圧縮機本体40の吐出口から消費側に至る迄の間に形成された流路を全体として供給流路60として説明すると共に,供給流路60のうち,圧縮機本体40の吐出口から前述の逆止弁44迄の部分を吐出流路60aと,逆止弁44から消費側に至る迄の流路を消費流路60bとして説明する。
【0033】
本実施形態において,前述の圧縮機本体40は潤滑,冷却及び密封のための潤滑油と共に被圧縮気体を圧縮する油冷式のスクリュ圧縮機であり,レシーバタンク61内には,配管63を介して潤滑油との気液混合流体として導入された圧縮気体から油分を分離するためのセパレータ62が設けられていると共に,レシーバタンク61内で回収された潤滑油を再度圧縮機本体40に供給するための給油流路41が設けられており,レシーバタンク61内に回収された潤滑油はこの給油流路41においてオイルクーラ42で冷却され,オイルフィルタ43で異物が除去された後,圧縮機本体40に再度供給されて循環使用することができるようになっている。
【0034】
〔容量制御装置〕
以上のように構成された圧縮機1に設けた本発明の容量制御装置は,消費側に供給される圧縮気体の圧力が所定の設定吐出圧力となるように圧縮機本体40の吸気量を制御すると共に,圧縮機本体40の吐出側圧力が前記設定吐出圧力に対して所定の高い圧力であるアンロード開始圧力以上になると,前記圧縮機本体40に対する吸気を停止してアンロード運転に移行する,所謂「容量制御」を行う点では,既知の容量制御装置と同様である。
【0035】
この容量制御装置は,
・圧縮機本体40の吸気側に設けられた容量制御弁10,
・吐出流路60a内の圧縮気体を,作動圧として前記容量制御弁10の受圧室37に導入する導入流路81,
・前記導入流路81を開閉するパージ弁80,
・前記容量制御弁10の前記受圧室37内の圧縮気体を排出する逃がし流路71,
・前記消費流路60b内の圧力を検知する圧力検知手段21,
・前記圧力検知手段21の検知信号に基づいて前記パージ弁80を開閉制御するパージ動作制御手段20,によって構成されている。
【0036】
(1)容量制御弁
圧縮機本体40の吸気口には,圧縮機本体40に対する吸気を制御する容量制御弁10が取り付けられており,この容量制御弁10のボディ3内に形成された空間によって圧縮機本体40に対して導入する被圧縮気体が通過する吸入通路30が形成されている。
【0037】
本実施形態にあってはこの容量制御弁10を,開弁時,一次側から二次側に対する気体の通過を許容するが,二次側から一次側への気体の逆流を阻止する逆止機能付きの常時開型の弁として構成している。
【0038】
前述した逆止機能を付与するために,本実施形態にあっては,
図2に示すピストンバルブ式の容量制御弁10を採用し,ボディ3内に形成された吸入通路30のうち,弁体12の一次側にあたる部分31をエアフィルタ70を介して圧縮機1の防音箱(図示せず)内で大気開放すると共に,弁体12の二次側を成す部分32を圧縮機本体40の吸気口に連通している。
【0039】
この容量制御弁10の弁体12は,弁軸12aと,弁軸12aの一端に取り付けられた円板状のフランジ12bを備えたキノコ形を有しており,この弁体12のフランジ12b周縁部を吸入通路30中に設けた弁座13に圧接することで,吸入通路30を閉じることができるようになっている。
【0040】
前述のボディ3内には,吸入通路30と円筒状のスリーブ34を介して連通するシリンダ35が設けられており,このスリーブ34内に,前述の弁体12の弁軸12aが先端をシリンダ35側に向けて進退移動可能に挿入されている。
【0041】
一方,このスリーブ34を介して吸入通路30(吸入通路30の部分32)と連通する前述のシリンダ35には,ピストン軸14aとこのピストン軸14aの一端に取り付けられた円板状のフランジ14bを備えたピストン14が収容され,このピストン14のピストン軸14aの先端部が,弁体12に向けて前記スリーブ34内に進退移動可能に挿入されている。
【0042】
前述のシリンダ35内において,ピストン14はピストンスプリング15によって弁体12より離間する方向に付勢されていると共に,シリンダ35の端部を塞ぐカバー36によって後退位置が規制されている。
【0043】
また,弁軸12aの先端とピストン軸14aの先端間には,両先端間を比較的弱い力で離間する方向に付勢する弁体付勢スプリング16が取り付けられており,開弁時,この弁体付勢スプリング16の付勢力によって弁体12のフランジ12bは吸入通路30中に設けた弁座13に緩やかに押し付けられている。
【0044】
なお,前述のカバー36には,入口36aと出口36bが設けられており,この入口36aを介して,カバー36とピストン14のフランジ14b間に形成された受圧室37に作動圧を導入することができるようになっていると共に,出口36bを介して受圧室37内の作動圧を逃がすことができるようになっている。
【0045】
以上のように構成された容量制御弁10では,受圧室37に対する圧縮気体の導入が行われていない開弁時には,弁体12のフランジ12bは弁座13に緩やかに押し当てられた状態にあるため,弁体12の一次側である吸入通路30の部分31の圧力に対し二次側である吸入通路30の部分32の圧力が低くなると,弁体12のフランジ12bが弁座13から離れて気体の通過を許容する,開弁状態にあるが,この開弁状態においても弁体12の二次側から一次側に向かって気体が逆流しようとすると,弁体12のフランジ12bが弁座13に押し当てられて吸入通路30を閉ざすため,このような逆流は阻止されている。
【0046】
そして,このように構成された容量制御弁10を閉弁状態と成す場合には,受圧室37内に圧縮気体を導入してピストンスプリング15及び弁体付勢スプリング16の付勢力に抗してピストン14を弁体12側にスライドさせると,ピストン軸14aの先端が弁軸12aの先端に突合して,弁体12のフランジ12bが弁座13に押し当てられて弁座13より離れることができなくなり,これにより吸入通路30が完全に閉塞する。
【0047】
なお,以上の説明では本発明の容量制御装置に設ける容量制御弁10として,逆止機能を備えたピストンバルブ型の容量制御弁10について説明したが,本発明で使用する容量制御弁10は必ずしも図示の構造を備えるものである必要はなく,例えば逆止機能を備えていない容量制御弁についても使用可能である。
【0048】
また,図示の構成では本発明の容量制御装置で使用する容量制御弁10を,弁体12や弁座13,前記弁体12を操作するためのピストン14等の構成要素を,全て共通のボディ3内に組み込んで一体的に形成した容量制御弁10として説明したが,本発明の容量制御装置に使用する容量制御弁10は,図示の構成に限定されず,例えば,弁体や弁座を備えた本体と,前記本体に設けた弁体を開閉操作するピストン型レギュレータ等の駆動機構が別体に構成されたものであっても良い。
【0049】
(2)導入流路,パージ弁,逃がし流路
以上のように構成された容量制御弁10の受圧室37に対し吐出流路60a内の圧縮気体を導入するために,吐出流路60aと容量制御弁10の受圧室37に設けた入口36a間を連通する導入流路81が設けられていると共に,この導入流路を開閉するためのパージ弁80が設けられている。
【0050】
図1に示す構成において,導入流路81は,その一端側(符号81aで示す部分)を吐出流路60aを構成する配管64と65間に接続しているが,この構成に代えて導入流路81の一端をレシーバタンク61に直接接続するように構成しても良く,吐出流路60a内の圧縮気体を取り出すことができるものであれば吐出流路60aのいずれの位置に連通させても良く,連通位置は特に限定されない。
【0051】
もっとも,容量制御の対象とする圧縮機が油冷式圧縮機である本実施形態にあっては,好ましくはレシーバタンク61に設けたセパレータ62よりも下流側において導入流路81と連通することで,油分を含む圧縮気体を放気することに伴う圧縮機の防音箱内の汚染を防止することができる。
【0052】
前述のパージ弁80としては電磁弁を使用することができ,図示の構成ではこのパージ弁80としてノーマルオープン型の電磁弁を使用することで,圧縮機の停止時には,吐出流路60a内の圧力を放気できるように構成している。
【0053】
前述の導入流路81は,このパージ弁80の二次側を分岐して形成された制御流路81bと放気流路81cとを備えており,このうちの制御流路81bを,容量制御弁10の受圧室37を画成するカバー36に設けた入口36aに連通し,パージ弁80の開弁時,容量制御弁10の受圧室37に対し,吐出流路60a内の圧縮気体を作動圧力として導入できるようにしている。
【0054】
なお,容量制御弁10の受圧室37を画成するカバー36には,受圧室37内の圧力を排出するための出口36bが設けられており,この出口36bに連通された逃がし流路71の流路面積を,制御流路81bの流路面積よりも狭く形成することで,受圧室37内の圧力をピストン14が作動する圧力以上に上昇させることができるようにしている。
【0055】
ここで,パージ弁80の開弁後,ピストン14の作動迄に要する時間は,受圧室37内の圧力上昇速度によって決まり,この圧力上昇速度は,制御流路81bの流路面積に対し,逃がし流路71の流路面積を狭めるほど早めることができる。
【0056】
この流路面積の調整は,両流路81b,71を構成する配管自体の管径を選択することによって行うこともできるが,好ましくは,各流路81b,71に絞り72,74を設けることによって行い,このような絞り72,74としては,これを可変絞りとして,使用状況等に対応してユーザーが事後的に流量を調整できるように構成しても良い。
【0057】
また,放気流路81cは,パージ弁80の開弁時,吐出流路60a内の圧縮気体を放気できるように大気開放されており,
図1に示す例では,放気流路81cの先端を,容量制御弁10のボディ3内に形成された吸入流路30のうち弁体12の一次側にある部分31に連通し,この容量制御弁10の吸入側に設けられたエアフィルタ70を介して放気を行えるようにしている。
【0058】
なお,制御流路81bと放気流路81cを流れる圧縮気体の流量は,好ましくは制御流路81bに対し放気流路81cの方が多くなるよう,両流路の流路面積を調整する。
【0059】
この流路面積の調整も,両流路を構成する配管自体の管径を選択することによって行うこともできるが,好ましくは,各流路81b,81cに絞り72,73を設けることにより行い,このような絞り72,73としては,可変絞りを設け,使用状況等にあわせてユーザーが事後的に調整できるようにしても良い。
【0060】
なお,
図1に示す実施形態にあっては,前述の放気流路81cを容量制御弁10内に形成した吸入通路30のうち弁体12の一次側にある部分31に連通する構成を示したが,この構成に代え,
図4に示すように,放気流路81cの先端を容量制御弁10を介さずに直接大気開放するものとしても良く,この場合には,放気流路81の先端に消音器を取り付ける等して放気音の低減を図るものとしても良い。
【0061】
また,
図1に示す構成では,放気流路81cの先端と,逃がし流路71の先端を,それぞれ別個に吸入通路30のうち弁体12の一次側にある部分31に連通させて大気開放しているが,この構成に代えて
図3及び
図4に示すように,逃がし流路71の先端を,放気流路81cに対し絞り73の二次側において連通するものとして,逃がし流路71の短縮による配管の簡略化を図るものとしても良い。このように逃がし流路71を放気流路81cに連通する場合,絞り73の二次側における放気流路81cの流路面積を,合流後の圧縮気体量を排出するに十分な寸法に形成する。
【0062】
以上の説明より,各流路81b,81c,71の好ましい流路面積の大小関係は,放気流路81cが最大で,次いで制御流路81bとなり,逃がし流路71が最小となる。
【0063】
そして,制御流路81bと逃がし流路71の流路面積は,容量制御弁10の閉弁時に生じる衝突音が所定の音量以下となるようにピストンの運動エネルギーを抑えることができるように制御流路81bの流路面積を絞ると共に,容量制御弁10の閉弁動作に遅れを生じさせない範囲となるよう,制御流路81bの流路面積との相対的な関係において,逃がし流路71の流路面積を試験的に決定する。
【0064】
ここで,制御流路81bの流路面積を一定とした場合,逃がし流路71の流路面積を絞れば絞る程,受圧室37内の圧力上昇速度を早めることができ,パージ弁80の開弁後,容量制御弁10の閉弁迄の時間差を短くすることができるが,逃がし流路71の流路面積を過度に絞る場合,パージ弁80の閉弁により容量制御弁10の受圧室37に対する圧縮気体の導入が停止した後,受圧室37内の圧縮気体の放気が完了する迄の時間が長くなる。
【0065】
そのため,アンロード運転の終了時,容量制御弁10の開弁動作に遅れを生じさせることとなることから,逃がし流路71の流路面積は,容量制御弁10の開弁動作に過度の遅れが生じない範囲で決定することが必要となる。
【0066】
また,放気流路81cの流路面積は,流量調整後の制御流路81b,及び逃がし流路71を介して行われる放気では不足する分の放気量を補って,アンロード運転への移行時,可及的に速やかに吐出流路60a内の圧力を低下させることができる流路面積となるように試験的に決定する。
【0067】
但し,吐出流路60a内の圧縮気体を放気してレシーバタンク61内の圧力を低下させると,レシーバタンク61内の冷却油が泡立って油面を上昇させる「フォーミング」が生じ,急激すぎるレシーバタンク61の圧力降下では,泡立った油面がセパレータ62の高さにまで達してセパレータ62を汚染する。
【0068】
そのため,放気流路81cの流路面積は,レシーバタンク61内の圧力降下速度が,フォーミングした潤滑油の油面がセパレータ62の高さまで上昇することを防止し得る程度で,且つ,予め設定した時間内に,レシーバタンク61内の圧力を,圧縮機1の再起動可能圧力まで低下させることができるものとなるよう試験的に決定する。
【0069】
(3)圧力検知手段,パージ動作制御手段
前述の導入流路81に設けられたパージ弁80は,圧力検知手段21が検知した消費流路60b内の圧力に応じ,パージ動作制御手段20によって開閉制御されるように構成されている。
【0070】
このパージ動作制御手段20は,マイクロプロセッサ等によって実現される電子制御装置であり,圧力センサである前述の圧力検知手段21より受信した検知信号に基づき所定の演算処理を行うことによって,電磁弁であるパージ弁80に対し開放又は閉塞信号を出力する。
【0071】
パージ動作制御手段20には,吸気制御の基準となる設定圧力(アンロード開始圧力と復帰圧力)が設定(記憶)されており,パージ動作制御装置20は,圧力検知手段21が検出した圧力が予め設定したアンロード開始圧力以上になったらパージ弁80に開放信号を出力し,容量制御弁10を閉じると共に吐出流路60a内の圧縮気体を放気した状態で行うアンロード運転に移行し,その後,圧力検知手段21が検出する圧力が予め設定した復帰圧力に低下するまでパージ弁80に対する開放信号の出力を継続する。
【0072】
その後,圧力検知手段21が検知する消費流路60b内の圧力が復帰圧力以下になると,パージ弁80に対し閉塞信号を出力し,吐出流路60a内の圧力の放気を停止すると共に,容量制御弁10を開いて圧縮機本体40に対する吸気を開始し,この動作を繰り返し行うことで,圧縮機本体40の吐出側圧力(消費流路内の圧力)が所定の圧力範囲(復帰圧力からアンロード開始圧力)に維持されるように制御している。
【0073】
なお,パージ動作制御手段20には,パージ動作制御のみならず,圧縮機1を始動してから所定時間が経過するまで設定圧力に拘わらずパージ弁80を開く制御信号を出力する始動制御の機能を持たせるものとしても良く,この場合,始動後,前記所定時間の経過を条件として前述した設定圧力に基づく容量制御が開始される。
【0074】
〔動作説明等〕
以上のように構成された本発明の容量制御装置を備えた圧縮機1を駆動し,消費流路60bの圧力がアンロード運転開始圧力以上になると,圧力検知手段21からの検知信号に基づきパージ動作制御手段20がパージ弁80を開く。
【0075】
これにより吐出流路60a内の圧縮気体が導入流路81に導入され,そのうちの一部が制御流路81bを介して容量制御弁10の受圧室37に導入されると共に,その他の圧縮気体は放気流路81cを介して放気され,逆止弁44の一次側における圧縮機本体40の吐出側圧力が低下する。
【0076】
制御流路81bを介して圧縮気体が導入されることにより,容量制御弁10の受圧室37内が所定の圧力を超えると,ピストン14がスプリング15,16の付勢力に抗して,弁座13に対し弁体12を押し付ける方向に移動し,容量制御弁10を閉じることで圧縮機本体40に対する吸気を停止したアンロード運転に移行する。
【0077】
このようにしてアンロード運転が行われている状態で,消費流路60bの圧力が復帰圧力以下に低下したことを圧力検知手段21が検知すると,パージ動作制御手段20は制御信号の出力によってパージ弁80を閉じる。
【0078】
これにより,放気流路81cを介した吐出流路60aの放気が停止すると共に,容量制御弁10の受圧室37に対する圧縮気体の導入が停止し,受圧室37内の圧縮気体が逃がし流路71を介して排出されると,受圧室37内の圧力低下に伴ってピストン14がスプリング15,16の付勢力によって受圧室37内の空間を縮小するよう移動すると共に,圧縮機本体40による吸気によって弁体12の二次側における吸入流路30の部分32が負圧になると,弁体付勢スプリング16によって弁座13に緩やかに押し当てられた弁体12が弁座13より離間して,圧縮機本体40に対する吸気が開始され,圧縮機はロード運転に移行する。
【0079】
ここで,容量制御弁10の閉弁時に生じる衝突音は,弁座13に衝突する弁体12の運動エネルギー,従って,弁体12を押圧するピストン14の運動エネルギーが大きい程,大きくなる。
【0080】
一方,ピストン14の運動エネルギーは,容量制御弁10の受圧室37内に導入される圧縮気体の流量が多くなれば成る程大きくなることから,制御流路81bの流路面積を絞ることで,閉弁時に生じる衝突音を小さくすることができる。
【0081】
従って,
図6を参照して説明した従来の容量制御装置の流路構成においても,衝突音を抑えるだけであれば,導入流路163を介して導入される圧縮気体の流量を減少させることで衝突音を小さく抑えることが可能となる。
【0082】
しかし,
図6を参照して説明した従来の容量制御装置の流路構成では,導入流路163と逃がし流路171が,容量制御弁110の開閉制御を担当するだけでなく,アンロード運転時に逆止弁144の一次側における圧縮機本体の吐出側圧力を放気するための放気流路としても機能している。
【0083】
そのため,導入流路163を介して導入される圧縮気体の流量を減少させれば,放気速度が低下して逆止弁144の一次側における圧縮機本体の吐出側圧力が低下する迄の時間が長くなる。
【0084】
しかも,導入流路163と共に,逃がし流路171の流路面積についても絞ってしまうと,放気速度は更に低下することとなるために,逃がし流路171の流路面積を絞ることはできず,受圧室137内の圧力上昇に時間がかかり,閉弁タイミングに遅れが生じることとなる。
【0085】
従って,衝突音を小さく抑えることと,必要な放気量の確保,及び迅速な閉弁動作の確保は,相反する要求であり,同時に成立させることは困難であった。
【0086】
これに対し,本願の容量制御装置にあっては,パージ弁80の二次側で導入流路81を分岐して放気流路81cを設けたことにより,前述した相反する要求を同時に満たすことができるものとなっている。
【0087】
すなわち,前述したように容量制御弁10の閉弁時における衝突音を小さく抑えるために,制御流路81bの流路面積を絞って受圧室37に導入される圧縮気体の流量を減少させ,かつ,受圧室37内の圧力上昇速度を速めるために,絞られた制御流路81bの流路面積に対応して逃がし流路71の流路面積を絞ることにより,制御流路81b及び逃がし流路71を介して行われる放気量が大幅に減少した場合であっても,この減少分の放気量を,放気流路81cを介して放気を行うことで補うことができるために,容量制御弁10の閉動作に伴い発生する衝突音の減少を行いつつ,逆止弁44の一次側における圧縮機本体の吐出側圧力の早期放出と,容量制御弁10の遅れの発生防止を同時に達成することができた。