【構成】 シート挿入方法では、帯状の保護シート14を筒状に成形しながら既設管路30内に挿入するに際して、既設管路30の一方端30aから外側に所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具16を配置し、このシート筒成形治具16内を通すことによって帯状の保護シート14を筒状に成形する。そして、シート筒成形治具16の出口18bと既設管路30の一方端30aとの間において、筒状に成形した保護シート14の形状を拘束した後、筒状に形状保持した保護シート14を既設管路30内に挿入する。
前記ステップ(b)の前に、前記シート筒成形治具に径調整具を取り付けることによって、当該シート筒成形治具の出口径を調整するステップを含む、請求項2記載のシート挿入方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、保護シートを筒状に成形しながら既設管路内に挿入する際には、既設管路の到達側から保護シートを引き込むと同時に、発進側において、作業者が手で介添えして保護シートを筒状に成形し、かつその保護シートを筒状に保つために粘着テープを保護シートに貼り付けるという作業を行っている。このため、既設管路の発進側での作業がボトルネックとなって、保護シートの引き込み速度を上げることができず、保護シートの敷設(施工)に時間がかかってしまう。
【0005】
また、特許文献1の技術では、保護シートを筒状に成形保持する作業に手間取ると、保護シートが帯状のまま既設管路内に無理やり引き込まれる状況となってしまい、保護シートが既設管路の開口端と接触して傷ついてしまう場合がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、シート挿入方法、管路更生工法およびシート筒成形治具を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、帯状の保護シートを筒状に成形しつつ既設管路内に挿入する作業を容易に行うことができる、シート挿入方法、管路更生工法およびシート筒成形治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、帯状の保護シートを筒状に成形しながら既設管路内に挿入するシート挿入方法であって、(a)既設管路の一方端から外側に所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置するステップ、(b)シート筒成形治具内を通すことによって帯状の保護シートを筒状に成形するステップ、(c)シート筒成形治具の出口と既設管路の一方端との間において、筒状に成形された保護シートの形状を拘束するステップ、および(d)筒状の保護シートを既設管路内に挿入するステップを含む、シート挿入方法である。
【0009】
第1の発明では、シート挿入方法は、たとえば、既設管路内に新設管を敷設するに際して、新設管の損傷を防ぐ等のために、既設管路内に予め筒状の保護シートを敷設しておく際に用いられる。先ず、ステップ(a)では、既設管路の一方端から外側に所定距離(たとえば、0.5−1.5m)だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置する。また、ロール状に巻き取る等した帯状の保護シートも用意しておく。ステップ(b)では、シート筒成形治具内に帯状の保護シートを通す。これによって、保護シートの幅方向両端部が中央側に巻き込まれ、保護シートが自動的に筒状に成形される。また、ステップ(c)では、シート筒成形治具の出口と既設管路の一方端との間において、筒状に成形された保護シートに粘着テープを貼り付ける等して、保護シートの形状を筒状に拘束(保持)する作業を行う。そして、ステップ(d)では、筒状に形状保持された保護シートを既設管路内に挿入する。これらステップ(b)−(d)の保護シート挿入工程は、同時並行的に行われる。この際、発進側の作業者は、シート筒成形治具によって自動的に筒状となった保護シートに対して、粘着テープを貼り付ける等の保護シートの形状を拘束する作業を行うだけでよいので、作業が容易となる。
【0010】
第1の発明によれば、既設管路の一方端から所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置し、このシート筒成形治具内を通すことによって保護シートを筒状に成形するので、帯状の保護シートを筒状に成形しつつ既設管路内に挿入する作業を容易に行うことができる。これにより、保護シートの施工時間を短縮できる。また、保護シートを筒状に成形保持する作業が間に合わずに保護シートが傷ついてしまうことも防止できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(a)において、シート筒成形治具として、既設管路側に向かって縮径するテーパ筒状の治具を用いる。
【0012】
第2の発明では、シート筒成形治具の治具本体が既設管路側に向かって縮径するテーパ筒状に形成される。これにより、シート筒成形治具を通る保護シートは、治具本体の内周面に沿うようにして出口側に向かうに従い徐々に丸まっていくようになり、保護シートの帯状から筒状への変形が円滑に行われる。
【0013】
第2の発明によれば、適切に帯状の保護シートを筒状に成形できる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に従属し、ステップ(b)の前に、シート筒成形治具に径調整具を取り付けることによって、当該シート筒成形治具の出口径を調整するステップを含む。
【0015】
第3の発明では、径調整具を取り付けたシート筒成形治具が用いられる。径調整具としては、たとえば円弧状に湾曲する矩形シートをテーパ筒状に丸めたものが用いられ、この径調整具の配置位置を変更することによって、シート筒成形治具の出口径が所望の出口径に調整される。
【0016】
第3の発明によれば、保護シートの口径別にシート筒成形治具を品揃えする必要がなくなり、シート筒成形治具を製作する品数を削減できる。したがって、シート筒成形治具の製作コストを低減でき、その保管および持ち運びについても効率化を図ることができる。
【0017】
第4の発明は、既設管路内に新設管を敷設する管路更生工法であって、(a)既設管路の一方端から外側に所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置するステップ、(b)シート筒成形治具内を通すことによって帯状の保護シートを筒状に成形するステップ、(c)シート筒成形治具の出口と既設管路の一方端との間において、筒状に成形された保護シートの形状を拘束するステップ、(d)筒状の保護シートを既設管路内に挿入するステップ、および(e)既設管路内に敷設された筒状の保護シート内に新設管を挿入するステップを含む、管路更生工法である。
【0018】
第4の発明では、管路更生工法は、既設管路内に新設管を挿入することによって既設管路を更新・更生するものであり、筒状の保護シートを既設管路内に挿入した後、その保護シート内に新設管を挿入することによって、新設管の損傷を防ぐ等するものである。先ず、ステップ(a)では、既設管路の一方端から外側に所定距離(たとえば、0.5−1.5m)だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置する。また、ロール状に巻き取る等した帯状の保護シートも用意しておく。ステップ(b)では、シート筒成形治具内に帯状の保護シートを通す。これによって、保護シートの幅方向両端部が中央側に巻き込まれ、保護シートが自動的に筒状に成形される。また、ステップ(c)では、シート筒成形治具の出口と既設管路の一方端との間において、筒状に成形された保護シートに粘着テープを貼り付ける等して、保護シートの形状を筒状に拘束(保持)する作業を行う。そして、ステップ(d)では、筒状に形状保持された保護シートを既設管路内に挿入する。これらステップ(b)−(d)の保護シート挿入工程は、同時並行的に行われる。この際、発進側の作業者は、シート筒成形治具によって自動的に筒状となった保護シートに対して、粘着テープを貼り付ける等の保護シートの形状を拘束する作業を行うだけでよいので、作業が容易となる。その後、ステップ(e)では、既設管路内に敷設された筒状の保護シート内に新設管を挿入する。
【0019】
第4の発明によれば、既設管路の一方端から所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置し、このシート筒成形治具内を通すことによって保護シートを筒状に成形するので、帯状の保護シートを筒状に成形しつつ既設管路内に挿入する作業を容易に行うことができる。これにより、保護シートの施工時間を短縮でき、延いては管路更生作業の全体にかかる施工時間を短縮できる。また、保護シートを筒状に成形保持する作業が間に合わずに保護シートが傷ついてしまうことも防止できる。
【0020】
第5の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に係るシート挿入方法、または第4の発明に係る管路更生工法に用いられるシート筒成形治具であって、短筒状に形成されて、既設管路の一方端から外側に所定距離だけ離れた位置に配置される、シート筒成形治具である。
【0021】
第5の発明では、シート筒成形治具は、一方端側から他端側に向かって縮径するテーパ筒状などの短筒状に形成される。このシート筒成形治具は、既設管路の一方端から外側に所定距離だけ離れた位置に配置され、その内部に帯状の保護シートを通すことによって、保護シートを筒状に成形する。
【0022】
第5の発明によれば、帯状の保護シートを筒状に成形しつつ既設管路内に挿入する作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、既設管路の一方端から所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具を配置し、このシート筒成形治具内を通すことによって保護シートを筒状に成形するので、帯状の保護シートを筒状に成形しつつ既設管路内に挿入する作業を容易に行うことができる。これにより、保護シートの施工時間を短縮でき、保護シートを筒状に成形保持する作業が間に合わずに保護シートが傷ついてしまうことも防止できる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明の一実施例である管路更生工法によって既設管路を更生した様子を示す図解図である。
【
図2】管路更生工法に用いる新設管を示す図解図である。
【
図3】管路更生工法に用いる帯状の保護シートを示す図解図である。
【
図4】管路更生工法に用いるシート筒成形治具を示す図解図であって、(a)はシート筒成形治具の断面図であり、(b)はシート筒成形治具の一方端側から見た外観図である。
【
図5】既設管路内に牽引ワイヤを引き込む様子を示す図解図である。
【
図6】既設管路内に導通管を挿通させて、導通確認作業を行う様子を示す図解図である。
【
図7】導通管の外観を示す図解図であって、(a)は導通管の平面図であり、(b)は導通管の正面図である。
【
図8】発進立抗内にシート筒成形治具と保護シートとを設置した様子を示す図解図である。
【
図9】既設管路内に保護シートを挿入する様子を示す図解図である。
【
図10】
図9における保護シートの先頭部分の様子を拡大して示す図解図である。
【
図11】先導ヘッドの外観を示す図解図であって、(a)は先導ヘッドの平面図であり、(b)は先導ヘッドの正面図である。
【
図12】帯状の保護シートがシート筒成形治具によって筒状に成形されて既設管路内に挿入される様子を示す図解図である。
【
図13】保護シート内に滑剤を塗布する様子を示す図解図である。
【
図14】保護シート内に新設管を挿入する様子を示す図解図である。
【
図15】
図14における新設管の先頭部分の様子を拡大して示す図解図である。
【
図16】バット融着器を用いて管部材同士を接合する様子を示す図解図である。
【
図17】この発明の他の実施例である管路更生工法に用いる径調整具を示す図解図であって、(a)は径調整具の元の状態を示し、(b)は径調整具をテーパ状に丸めた状態を示す。
【
図18】径調整具を取り付けたシート筒成形治具を示す図解図である。
【
図19】シート筒成形治具の変形例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施例である管路更生工法は、既設管路30内に新設管(更生管)10を挿入することによって、既設管路30を更新・更生するものである。この管路更生工法では、帯状の保護シート14を筒状に成形しながら既設管路30内に挿入した後、その筒状の保護シート14内に新設管10を挿入することによって、新設管10の挿入抵抗を低減させると共に、既設管路30の内面突起などとの接触による新設管10の損傷を防ぐ。詳細は後述するように、この管路更生工法では、帯状の保護シート14を筒状に成形するために、シート筒成形治具16を用いる(
図12等参照)。
【0027】
なお、更生する既設管路30の材質、用途および口径などは、特に限定されない。この発明に係る管路更生工法は、鉄筋コンクリート管、陶管、鋳鉄管、鋼管および合成樹脂管などの様々な既設管路30の更生に適用可能であり、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護などの用途の既設管路30の更生に適用可能である。ただし、以下の説明では、既設管路30として鋳鉄製の配水管を想定して説明することとする。また、既設管路30の内径は、たとえば400mmであり、その管長(更生する1区間の長さ)は、たとえば100mであると想定して説明する。
【0028】
図2に示すように、新設管10は、既設管路30内に新たな更生管路を形成するものであり、この実施例では、ポリオレフィン系合成樹脂によって形成される管部材12を接続することによって構成される。具体的には、管部材12は、ポリエチレン製であって、押出成形によって円筒状に形成される。管部材12の内径は、たとえば200mmであり、その管長は、たとえば5mである。この実施例では、管部材12の端面同士を突き合わせてバット融着することによって、必要な長さの新設管10が形成される。ただし、新設管10としては、ドラム等に巻き付けた長尺の管を利用することもできる。また、新設管10の内径は、既設管路30内に挿入可能な大きさの外径となるものであれば、特に限定されず、用途などに応じて適宜変更可能である。
【0029】
また、
図3に示すように、保護シート14は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの合成樹脂製であって、柔軟性を有する長尺の帯状に形成される。保護シート14の厚みは、たとえば0.5−1.0mmである。保護シート14の長手方向の長さは、更生する既設管路30の管長よりも大きくなるように設定され、たとえば120mである。また、保護シート14の幅は、新設管10の外周長よりも大きくなるように設定され、たとえば1000mmである。このような保護シート14は、既設管路30内への挿入前では、ドラム等の保持手段(図示せず)によって、ロール状に巻き取られて連続的に引き出し可能に保持される。そして、既設管路30内に挿入される際には、保護シート14は、その幅方向両端部を重ね合わせるようにして丸められて、内径300mmの筒状に成形される。
【0030】
図4に示すように、シート筒成形治具16は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂や鉄およびステンレス等の金属などの硬質素材によって形成され、短筒状の治具本体18を備える。この実施例では、治具本体18は、一方端18a側から他端18b側に向かって縮径する両端開口のテーパ筒状に形成される。治具本体18の軸方向長さは、たとえば200mmであり、治具本体18の一方端18aの内径は、たとえば530mmである。また、治具本体18の他端18bの内径は、保護シート14を筒状に成形する際に所望する外径と同程度に設定され、たとえば310mmである。また、治具本体18の外周面には、貫通孔20aを有する矩形平板状の2つの治具固定部20が形成される。
【0031】
このようなシート筒成形治具16は、後述するように、小径である他端18b側が既設管路30の発進側開口端30aと対向するように配置され(
図8参照)、他端18b側の開口が保護シート14を治具本体18内に挿通する際の出口として利用される。
【0032】
以下、
図5−
図16を参照して、既設管路30を更生する管路更生工法について具体的に説明する。この管路更生工法では、先ず、既設管路30の更生区間(新設管10の敷設区間)の両端部に発進立抗32および到達立抗34を掘削して、発進立抗32および到達立抗34内で既設管路30の両端をそれぞれ開口させる。その後、既設管路30内を適宜洗浄する。この際には、既設管路30内に滑剤を染み込ませたスポンジ等を通過させることによって、既設管路30の内周面に滑剤を塗布しておいてもよい。
【0033】
また、発進立抗32および到達立抗34の近辺には、施工に必要な各種装置および挿入する管などを適宜準備(搬入)しておく。具体的には、終点である到達立抗34側には、牽引ワイヤ40を巻き取るためのウインチ52を配置する。一方、始点である発進立抗32側には、保護シート14、シート筒成形治具16、管部材12およびバット融着機80などを搬入する。
【0034】
次に、
図5に示すように、通線工具36を使用して、牽引ワイヤ40の引込作業を行う。通線工具36としては、たとえば通線ロッド38等を備える従来公知のものを用いるとよい。牽引ワイヤ40の引込作業を行う際には、先ず、既設管路30の発進立抗32側の開口端(発進側開口端)30aから通線ロッド38を挿入し、通線ロッド38の先端が既設管路30の到達立抗34側の開口端(到達側開口端)30bに到達するまで、通線ロッド38をそのまま押し込んでいく。通線ロッド38の先端が既設管路30の到達側開口端30bに到達すると、そこで通線ロッド38の先端に牽引ワイヤ40を取り付ける。そして、通線ロッド38を引き戻して、既設管路30の発進側開口端30aまで牽引ワイヤ40を引き込む。
【0035】
続いて、
図6に示すように、導通管42を用いて、既設管路30の導通確認作業を行う。導通管42は、
図7に示すように、軸方向の一方端部を縮径(先鋭化)させた略円柱状に形成される本体44を含み、鋼などの一定以上の硬度を有する金属などによって形成される。この本体44の最大外径は、既設管路30の内径よりも小さくかつ新設管10(管部材12)の外径よりも大きくなるように設定され、たとえば380mmである。また、本体44の軸方向の両端面には、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、牽引ワイヤ40および第1引き込み用ロープ50等を連結するための連結部46,48が形成される。
【0036】
図6に戻って、導通確認作業を行う際には、先ず、発進立抗32において、導通管42の前方側の連結部46に牽引ワイヤ40を接続すると共に、導通管42の後方側の連結部48に第1引き込み用ロープ50を接続する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、導通管42を発進側開口端30aから既設管路30内に引き込む。
【0037】
なお、この実施例で言う「前方」とは、導通管42、後述する先導ヘッド56および先導管74などの挿入方向における前方を意味し、「後方」とは、その反対側を意味する。以下、同様である。
【0038】
導通管42の前方端が既設管路30の到達立抗34に到達すると、導通管42の損傷を確認する。導通管42に目立った損傷がなければ、作業を続けても問題はないと判断して、導通管42の連結部46,48から牽引ワイヤ40および第1引き込み用ロープ50を取り外す。この際には、既設管路30内に第1引き込み用ロープ50が挿通された状態となっている。なお、第1引き込み用ロープ50から取り外した導通管42は、地上を通じて発進立抗32側に搬送しておく。
【0039】
導通確認作業が終了すると、続いて、新設管10を保護するための保護シート14を既設管路30内に敷設する。以下、
図8−
図12を参照して、帯状の保護シート14を筒状に成形しながら既設管路30内に挿入するシート挿入方法について具体的に説明する。
【0040】
このシート挿入方法では、先ず、
図8に示すように、発進立抗32内の所定位置に対して、シート筒成形治具16とロール状に巻き取られた帯状の保護シート14とを設置する。具体的には、既設管路30の発進側開口端30aから外側に所定距離だけ離れた位置に対して、シート筒成形治具16を配置する。シート筒成形治具16の他端18bと発進側開口端30aとを離隔する距離は、作業者が後述する保護シート14に対するテーピング作業(形状拘束作業)を行うことが可能な距離とされ、たとえば0.5−1.5mに設定される。また、シート筒成形治具16の一方端18a側(発進側開口端30aと反対側)の所定位置に対して、帯状の保護シート14を配置する。
【0041】
なお、シート筒成形治具16を設置する際には、後述するバット融着機80を設置するための設置台82を利用するとよい。詳細な図示は省略するが、この際には、シート筒成形治具16の治具固定部20の貫通孔20aに対して棒状の取付具を差し込んで固定する。そして、この取付具を設置台82に接続固定することによって、シート筒成形治具16の他端18b側が発進側開口端30aと対向するように、シート筒成形治具16を設置するとよい。バット融着機80用の設置台82は、後述する管部材12をバット融着する際に元から必要なものであるので、この設置台82をシート筒成形治具16の設置用に兼用することによって、設置用部材の必要点数を削減できる。また、シート筒成形治具16用の設置台を特別に設置する必要がないので、シート筒成形治具16の設置作業を短縮でき、作業効率を向上できる。ただし、シート筒成形治具16の設置方法は、適宜変更可能である。
【0042】
シート筒成形治具16および保護シート14の設置作業が終了すると、次に、
図9および
図10に示すように、シート筒成形治具16および保護シート挿通治具54を利用して、保護シート14の敷設作業を行う。
【0043】
保護シート挿通治具54は、保護シート14を既設管路30内に引き込んで挿通するための治具であり、この実施例では、上述した導通管42と後述する先導ヘッド56とを連結金具64を介して連結させることによって構成される。ただし、保護シート挿通治具54の具体的構成は適宜変更可能であり、たとえば、導通管42を使用せずに先導ヘッド56単独で保護シート14を引き込むこともできる。
【0044】
先導ヘッド56は、
図11に示すように、発泡スチレン等によって略円柱状に形成される本体58を含む。この本体58の外径は、保護シート14を筒状に成形する際に所望する内径と同程度に設定され、たとえば300mmである。また、本体58の軸方向の両端面には、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、連結金具64や第2引き込み用ロープ66などを連結するための連結部60,62が形成される。
【0045】
図9および
図10に戻って、保護シート14の敷設作業を行う際には、先ず、発進立抗32において、導通管42の前方側の連結部46に第1引き込み用ロープ50を接続すると共に、その導通管42の後方側の連結部48と先導ヘッド56の前方側の連結部60とを連結金具64を介して接続する。また、先導ヘッド56の後方側の連結部62に第2引き込み用ロープ66を接続する。
【0046】
さらに、先導ヘッド56の本体58の外周面上に保護シート14の先端部分を巻き付けるようにして固定する。具体的には、保護シート14を保持手段から引き出して、その幅方向両端部を中央側に巻き込むように丸めた状態で、保護シート14の先端部分をシート筒成形治具16(治具本体18)の一方端18a側からシート筒成形治具16内に挿通する。そして、シート筒成形治具16の他端18b側から筒状になって出てきた保護シート14の先端部分を先導ヘッド56の外周面の周方向全周に亘るように巻き付け、番線や締め付けバンド等の締め付け具68によって先導ヘッド56の外周面上に固定する。このとき、先導ヘッド56をその本体58の前方端部が少し浮き上がった状態になるように導通管42に連結して、先導ヘッド56の外周面上に固定した保護シート14の先端部分が既設管路30の内周面に接触しないようにする(
図10参照)。これにより、保護シート14の先端部分が既設管路30の内周面の錆こぶ等の突起と接触して破断することが防止される。
【0047】
そして、
図9に示すように、第1引き込み用ロープ50に接続した牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、または、到達立抗34に配備した作業員の手作業で第1引き込み用ロープ50を牽引することによって、保護シート14を発進側開口端30aから既設管路30内に引き込んでいく。
【0048】
このとき、
図12に示すように、その先端部分が筒状に成形された状態で先導ヘッド56に固定された保護シート14は、短筒状のシート筒成形治具16内を通ることによって、その幅方向両端部が中央側に巻き込まれて自動的に筒状に変形する。また、この際には、シート筒成形治具16の治具本体18がテーパ筒状に形成されることから、シート筒成形治具16を通る保護シート14は、治具本体18の内周面に沿うようにして他端18b側に向かうに従い徐々に丸まっていくようになり、保護シート14の帯状から筒状への変形(成形)が円滑に行われる。
【0049】
また、シート筒成形治具16内を通ることによって筒状に成形された保護シート14には、シート筒成形治具16の他端18bと既設管路30の発進側開口端30aとの間において、その筒状の形状を拘束(保持)するための作業を行う。この実施例では、保護シート14の幅方向端部に対して、軸方向の一定間隔ごとに粘着テープ70を貼り付けることによって、保護シート14が筒状の形状を保持できるようにする。この際、発進立抗32側の作業者は、シート筒成形治具16によって自動的に筒状となった保護シート14に対して、粘着テープ70を貼り付けるという簡単な作業を行うだけで、保護シート14を筒状に保持することができる。このため、保護シート14の引き込み速度を上げても作業者は対応することができ、保護シート14の敷設作業の作業効率を上げることができる。
【0050】
図9に戻って、このように発進立抗32内で筒状に成形保持された保護シート14は、その後順次、既設管路30内に引き込まれていく。そして、筒状の保護シート14の先端部分が既設管路30の到達立抗30bに到達すると、導通管42から第1引き込み用ロープ50および先導ヘッド56を取り外すと共に、先導ヘッド56から保護シート14および第2引き込み用ロープ66を取り外す。その後、保護シート14の両端部を発進側開口端30aおよび到達側開口端30bよりも外側で固定する。これによって、既設管路30の全長に亘って筒状の保護シート14が敷設され、保護シート14の敷設作業が終了する。なお、この際には、保護シート14内に第2引き込み用ロープ66が挿通された状態となっている。
【0051】
保護シート14の敷設作業が終了すると、続いて、
図13に示すように、後述する新設管10の挿入時の抵抗を低減させるために、保護シート14の内周面に滑剤を塗布する作業を行う。具体的には、先ず、到達立抗34において、第2引き込み用ロープ66と牽引ワイヤ40とを接続して、その接続部付近に、シリコンオイル等の滑剤を染み込ませたスポンジ72を取り付ける。スポンジ72としては、従来公知のものを用いるとよいが、スポンジ72の大きさを、筒状の保護シート14の内径に合わせた大きさに設定して、保護シート14の内周面全体に滑剤を塗布できるようにするとよい。
【0052】
そして、たとえば発進立抗32に配備した作業員の手作業で第2引き込み用ロープ66を牽引することによって、スポンジ72を保護シート14内に到達側開口端30b側から引き込んで、保護シート14の内周面に滑剤を塗布する。その後、スポンジ72が発進側開口端30aに到達すると、第2引き込み用ロープ66および牽引ワイヤ40からスポンジ72を取り外して、第2引き込み用ロープ66と牽引ワイヤ40との接続を解除する。これによって、既設管路30の内周面全体に滑剤が塗布される。なお、この際には、牽引ワイヤ40が発進立抗32側まで引き込まれた状態となっている。
【0053】
保護シート14の内周面への滑剤の塗布作業が終了すると、続いて、
図14−
図16に示すように、先導管74を利用して、筒状の保護シート14内に新設管10を敷設する。
【0054】
先導管74は、合成樹脂によって一端が封止された円筒状に形成される本体76を含む。この実施例では、本体76は、ポリエチレン管76aとその一方端を封止するキャップ76bとを含み、ポリエチレン管76aとキャップ76bとは、バット融着で接合されている。ポリエチレン管76aの内径は、新設管10(管部材12)とほぼ等しい内径に設定され、たとえば200mmである。また、キャップ76bには、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、牽引ワイヤ40を接続するための連結部78が形成される。
【0055】
新設管10の敷設作業を行う際には、先ず、発進立抗32において、先導管74の連結部78に牽引ワイヤ40を接続する。また、先導管74の後方側端面に第1の管部材12の前方側端面を突き合わせ、バット融着機80を用いて、これらをバット融着によって接合する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、先導管74および第1の管部材12を保護シート14内、すなわち既設管路30内に引き込む。
【0056】
先導管74および第1の管部材12が既設管路30内に引き込まれると、
図16に示すように、第1の管部材12の後方側端面に第2の管部材12の前方側端面を突き合わせ、バット融着機80を用いて、これらをバット融着によって接合する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、新しく接合した第2の管部材12を既設管路30内に引き込む。なお、管部材12同士をバット融着によって接合した際には、接合部分が外周面上に盛り上がってビード(図示せず)が形成されるので、ビードを除去して接合部分を平滑にしておくとよい。
【0057】
その後、このような作業を順次繰り返し、新設管10を保護シート14内に引き込んでいく。この際、新設管10は、筒状の保護シート14内を進行する、つまり新設管10と既設管路30との間には保護シート14が介在するので、既設管路30の内面突起などとの接触による新設管10の損傷が防止される。また、新設管10の挿入抵抗が低減される。
【0058】
そして、新設管10の前方端が到達立抗34に到達すると、牽引ワイヤ40を先導管74の連結部78から取り外すと共に、先導管74を新設管10から切断して、新設管10の敷設作業を終了する。
【0059】
この実施例によれば、既設管路30の一方端(発進側開口端30a)から所定距離だけ離れた位置に短筒状のシート筒成形治具16を配置し、このシート筒成形治具16内を通すことによって保護シート14を筒状に成形する。このため、発進立抗32側の作業者は、シート筒成形治具16によって自動的に筒状となった保護シート14に対して、粘着テープ70を貼り付ける等の保護シート14の形状を拘束する作業を行うだけでよい。すなわち、作業者は、帯状の保護シート14を筒状に成形しつつ既設管路30内に挿入する作業を容易に行うことができる。
【0060】
したがって、この実施例によれば、保護シート14の施工時間を短縮でき、延いては新設管16を敷設する管路更生作業の全体にかかる施工時間を短縮できる。また、保護シートを筒状に成形保持する作業が間に合わずに、保護シート14が既設管路30の開口端などと接触して傷ついてしまうことも防止できる。
【0061】
なお、上述の実施例では、
図4に示すようなシート筒成形治具16をそのまま使用するようにしたが、これに限定されない。他の実施例として、シート筒成形治具16に径調整具90を取り付けることによって、当該シート筒成形治具16の出口径を調整することもできる。以下、
図17および
図18を参照して、径調整具90を用いたシート筒成形治具16の出口径の調整方法について説明する。
【0062】
図17(a)に示すように、径調整具90は、軟質塩化ビニルなどの適度な柔軟性を有する素材によって、円弧状に湾曲する矩形シート状(扇状)に形成される。径調整具90の長手方向の長さ(円弧長)は、シート筒成形治具16を円弧状に展開したときの円弧長よりも少し大きめに設定される。また、径調整具90の幅は、たとえば560mmであり、その厚みは、たとえば1.0mmである。この径調整具90を使用するときには、
図17(b)に示すように、その外周面がシート筒成形治具16の内周面に沿うように、一方端90a側から他端90b側に向かって縮径する両端開口のテーパ筒状に丸めて使用する。
【0063】
そして、
図18に示すように、径調整具90は、テーパ筒状に丸められた状態でシート筒成形治具16内に挿し込まれ、任意の配置位置で固定される。径調整具90を取り付けたシート筒成形治具16では、径調整具90の他端90b側の開口が保護シート14をシート筒成形治具16内に挿通する際の出口となる。この際、径調整具90の配置位置(挿入深さ)を変更することによって、径調整具90の他端90b側の開口径、つまりシート筒成形治具16の出口径を任意に調整することができる。なお、シート筒成形治具16に対する径調整具90の取付作業は、保護シート14を既設管路30内に挿通する前であれば、たとえば、シート筒成形治具16を発進立抗32内に設置した後に行ってもよいし、シート筒成形治具16を発進立抗32内に搬入する前に地上で行ってもよい。
【0064】
このように、径調整具90を用いることで、シート筒成形治具16の出口径を任意に調整可能となるので、たとえば成形する可能性のある保護シート14の中で最大口径のものに合わせてシート筒成形治具16を製作しておけば、成形する可能性のある保護シート14の口径別にシート筒成形治具16を品揃えする必要がなくなる。つまり、シート筒成形治具16を製作する品数を削減できるので、シート筒成形治具16の製作コストを低減でき、その保管および持ち運びについても効率化を図ることができる。
【0065】
また、上述の実施例では、シート筒成形治具16(治具本体18)をテーパ筒状に形成したが、シート筒成形治具16は、必ずしもテーパ筒状に形成される必要はなく、その形状は適宜変更可能である。たとえば、
図19(a)に示すように、一方端18a側から他端18b側まで同径となる直筒状にシート筒成形治具16を形成することもできる。また、たとえば、
図19(b)に示すように、他端18b側(出口側)に直筒部を有するロート状にシート筒成形治具16を形成することもできる。さらに、たとえば、
図19(c)に示すように、一方端18a側から他端18b側に向かって円弧状に湾曲して縮径するテーパ筒状(ラッパ状)にシート筒成形治具16を形成することもできる。
【0066】
さらに、上述の実施例では、シート筒成形治具16によって筒状に成形された保護シート14の形状を拘束(保持)するに際して、粘着テープ70のような留め具を用いるようにしたが、これに限定されない。たとえば、結束バンドのような留め具を用いることもできる。また、接着剤を用いたり、溶接(融着)したりして保護シート14の形状を筒状に拘束するようにしてもよい。なお、この際の保護シート14の形状の拘束は、強固なものである必要はなく、たとえば、筒状の保護シート14内への新設管10の敷設後にその拘束が解除されても構わない。
【0067】
また、上述の実施例では、既設管路30の発進側開口端30aから保護シート14を挿入するようにしたが、保護シート14は、既設管路30の到達側開口端30bから挿入されてもよい。つまり、保護シート14の挿入方向と新設管10の挿入方向とは、逆方向であってもよい。なお、この際には、シート筒成形治具16は、既設管路30の到達側開口端30bから外側に所定距離だけ離れた位置に配置される。
【0068】
さらに、上述の実施例では、保護シート14を筒状に成形するものとして説明したが、ここで言う「筒状」とは、この発明の本旨を変更しない範囲内において、保護シート14の幅方向の両端縁同士の間に多少の隙間ができた場合をも包含する概念である。
【0069】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。