特開2015-125064(P2015-125064A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015125064-定電位電解式ガスセンサ 図000003
  • 特開2015125064-定電位電解式ガスセンサ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-125064(P2015-125064A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】定電位電解式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20150609BHJP
【FI】
   G01N27/46 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-269865(P2013-269865)
(22)【出願日】2013年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】格清 敏男
(72)【発明者】
【氏名】高木 鉄平
(57)【要約】
【課題】実際のガスの濃度を正確に検出できる定電位電解式ガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスを検知するガス電極10として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極11、作用電極11に対する対極12、作用電極11の電位を制御する参照電極13を、電解液20を収容した電解槽30の電解液収容部31に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサXであって、電解液収容部31において、作用電極11と参照電極13との間に、固体浮遊物は透過しないが電解液20は透過する電解液透過フィルター50を設けている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサであって、
前記電解液収容部において、前記作用電極と前記参照電極との間に、固体浮遊物は透過しないが前記電解液は透過する電解液透過フィルターを設けた定電位電解式ガスセンサ。
【請求項2】
前記作用電極は前記電解槽の側方に開口するガス導通部の側に設け、前記参照電極は、前記電解槽の側方に開口し、かつ前記ガス導通部に対向して設けられた酸素ガス導入口の側に設けてある請求項1に記載の定電位電解式ガスセンサ。
【請求項3】
前記作用電極および前記対極の少なくとも何れかをカーボン電極とし、前記参照電極を銀電極とし、前記電解液を臭化リチウム溶液としてある請求項1または2に記載の定電位電解式ガスセンサ。
【請求項4】
検知するガスをジボランとしてある請求項1〜3の何れか一項に記載の定電位電解式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定電位電解式ガスセンサは、電極を電解液が密に収容される電解槽の電解液収容部内に臨んで設けて構成してあり、例えば電極としては、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、当該作用電極に対する対極、作用電極の電位を制御する参照電極の3電極を設けてあり、また、これらが接触自在な電解液を収容した電解槽と、各電極の電位を設定するポテンシオスタット回路等を接続してある。前記3電極の材料としては、撥水性を有するガス透過性の多孔質PTFE膜に白金・金・パラジウム等の貴金属触媒等を塗布したものが用いられ、電解液としては、硫酸やリン酸等の酸性水溶液、臭化リチウムや塩化カルシウムなどの中性塩水溶液等が用いられていた。
【0003】
尚、本発明における従来技術となる上述した定電位電解式ガスセンサは、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した定電位電解式ガスセンサにおいては、使用する電極の材料および電解液の組み合わせによって、例えば参照電極上で析出物が析出する虞があった。この析出物は、場合によっては電解液中に浮遊し、例えば作用電極に付着する虞があった。このように作用電極に当該析出物が付着すると、当該電極の電位が変化して指示電流が過大に流れる結果、ガスの存在の有無に関わらず、センサが検出したガスの濃度が実際のガスの濃度に比べて大きくなってしまうという問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、実際のガスの濃度を正確に検出できる定電位電解式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る定電位電解式ガスセンサは、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサであって、その第一特徴構成は、前記電解液収容部において、前記作用電極と前記参照電極との間に、固体浮遊物は透過しないが前記電解液は透過する電解液透過フィルターを設けた点にある。
【0007】
本構成によれば、仮に参照電極上で析出した析出物が、当該参照電極から離脱して電解液中に浮遊したとしても、当該析出物が浮遊した固体浮遊物が電解液透過フィルターによって作用電極の側に移動するのを防止することができる。これにより当該固形浮遊物が作用電極の表面に付着するのを未然に防止できるため、固形浮遊物が付着したことを原因として作用電極に指示電流が過大に流れることを防止することができる。従って、本発明の定電位電解式ガスセンサであれば、実際のガスの濃度を正確に検出できる。
【0008】
本発明に係る定電位電解式ガスセンサの第二特徴構成は、前記作用電極は前記電解槽の側方に開口するガス導通部の側に設け、前記参照電極は、前記電解槽の側方に開口し、かつ前記ガス導通部に対向して設けられた酸素ガス導入口の側に設けた点にある。
【0009】
本構成によれば、前記ガス導通部および酸素ガス導入口を対向して形成でき、かつ、作用電極および参照電極を対向配置することができるため、定電位電解式ガスセンサをコンパクトに構成することができる。
【0010】
本発明に係る定電位電解式ガスセンサの第三特徴構成は、前記作用電極および前記対極の少なくとも何れかをカーボン電極とし、前記参照電極を銀電極とし、前記電解液を臭化リチウム溶液とした点にある。
【0011】
本構成によれば、極低濃度で毒性を有する有毒ガスを、精度よく検知することができる。
【0012】
本発明に係る定電位電解式ガスセンサの第四特徴構成は、検知するガスをジボランとした点にある。
【0013】
本構成によれば、半導体材料ガスとして使用される有毒ガスであるジボランを検知する定電位電解式ガスセンサとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の定電位電解式ガスセンサを示す断面図である。
図2】別実施形態の定電位電解式ガスセンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の定電位電解式ガスセンサXは、ガスを検知するガス電極10として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極11、作用電極11に対する対極12、作用電極11の電位を制御する参照電極13を、電解液20を収容した電解槽30の電解液収容部31に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサXであって、電解液収容部31において、作用電極11と参照電極13との間に、固体浮遊物は透過しないが電解液20は透過する電解液透過フィルター50を設けている。
【0016】
作用電極11、対極12及び参照電極13は、特に限定されるものではないが、例えば撥水性を有する多孔質のガス透過膜14の表面に、公知の電極材料より作製したペーストを塗布・焼成して形成することができる。或いは、作用電極11および対極12の少なくとも何れか一方をカーボンで形成してもよいし、参照電極13を銀線で形成してもよい。本実施形態では、それぞれのガス電極10の配置は、作用電極11と、対極12及び参照電極13とを、対向配置した場合について説明する。
【0017】
電解槽30は側方に開口する開口部32を形成してサンプルガスが導通するガス導通部33を形成している。ガス透過膜14は二枚設けられ、一方のガス透過膜14には作用電極11が配設され、他方のガス透過膜14には対極12及び参照電極13が配設される。即ち、本実施形態では、作用電極11は電解槽30の側方に開口するガス導通部33の側に設け、対極12及び参照電極13は、電解槽30の側方に開口し、かつガス導通部33に対向して設けられた酸素ガス導通部35の側に設けてある。当該酸素ガス導通部35は雰囲気ガス(酸素ガス)が導通する。
【0018】
作用電極11の側に配設されたガス透過膜14は、開口部32に臨むように電解槽30に取り付けられる。ガス透過膜14は、例えば疎水性でガスを透過する性質を有するものであればどのような膜でもよく、例えば耐薬品性を有する多孔質PTFE膜などを使用することができる。被検知ガスはガス導通部33より導入され、作用電極11上で反応する。
【0019】
それぞれのガス透過膜14は、Oリング15および蓋部材16によって固定される。電解槽30の一面には、電解液20の注入等のメンテナンスを行う電解液注入口34が形成されている。電解液20は、硫酸やリン酸等の酸性水溶液、臭化リチウムや塩化カルシウムなどの中性塩水溶液等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
電解液透過フィルター50は、電解液収容部31において、作用電極11と参照電極13との間に配設され、固体浮遊物は透過しないが電解液20は透過するものであれば、特に限定されることなく使用できる。電解液透過フィルター50を配設する位置は、作用電極11と参照電極13との間であればどのような態様であってもよい。例えば、電解液収容部31において、電解液透過フィルター50によって作用電極11側の領域と参照電極13側の領域とに隔てるように構成すればよい。また、参照電極13が電解液透過フィルター50によって覆われるように構成してもよい。
【0021】
電解液透過フィルター50は、例えば一定の大きさ以下の分子またはイオンのみを透過させる半透膜や、親水性のポリエチレン系多孔質焼結体等を使用することができる。ポリエチレン系多孔質焼結体は、例えば旭化成ケミカルズ株式会社製サンファインAQなどが適している。
【0022】
電解液収容部31において、電解液透過フィルター50を固定するフィルター固定部36を設けてある。当該フィルター固定部36は、電解液収容部31の内部に突出するように構成し、この突出部分で電解液透過フィルター50を支持或いは接着して固定するように構成するとよい。
【0023】
尚、本明細書における「固体浮遊物」とは、例えば参照電極などのガス電極10上で析出した析出物が、当該ガス電極10から離脱して電解液中に浮遊し、他のガス電極10に付着する可能性のあるものなどをいうものとする。
【0024】
このような定電位電解式ガスセンサXは、被検知ガスの反応によって作用電極11上で生じた電子に基づく電流を検知自在な電流測定部と、作用電極11の電位制御自在な電位制御部とを備えたガス検知回路(図外)に接続して、ガス検知装置として用いられる。本発明の定電位電解式ガスセンサXは、例えばシラン、ホスフィン、ゲルマン、アルシン、ジボランなどの半導体用特殊材料ガスの検知に用いられる。
【0025】
本実施形態では、作用電極11および対極12をカーボンで形成したカーボン電極とし、参照電極13を銀線で形成した銀電極とし、作用電極11と、対極12及び参照電極13とを、対向配置させ、電解液20を臭化リチウム溶液(8mol/L)とした場合について説明する。本構成であれば、例えば半導体材料ガスとして使用され、極低濃度で毒性を有する有毒ガスであるジボランを、精度よく検知することができる。
尚、臭化リチウム溶液の濃度は、8mol/Lに限定されるものではなく、所望のガスを好適に検知できる濃度であればよい。
【0026】
本発明の定電位電解式ガスセンサXは、電解液収容部31において、作用電極11と参照電極13との間に、固体浮遊物は透過しないが電解液20は透過する電解液透過フィルター50を設けているため、仮に参照電極13上で析出した析出物が、当該参照電極13から離脱して電解液20中に浮遊したとしても、当該析出物が浮遊した固体浮遊物が電解液透過フィルター50によって作用電極11の側に移動するのを防止することができる。これにより当該固形浮遊物が作用電極11の表面に付着するのを未然に防止できるため、固形浮遊物が付着したことを原因として作用電極11に指示電流が過大に流れることを防止することができる。従って、本発明の定電位電解式ガスセンサXであれば、実際のガスの濃度を正確に検出できる。
【0027】
〔別実施形態1〕
上述した実施形態では、それぞれのガス電極10の配置は、作用電極11と、対極12及び参照電極13とを、対向配置した場合について説明したが、このような態様に限らず、作用電極11、対極12及び参照電極13を直線状に配設してもよい(図2)。
この場合においても、電解液透過フィルター50は、作用電極11と参照電極13との間に配設する。
【0028】
〔別実施形態2〕
上述した実施形態では、電解液透過フィルター50を固定するため、電解液収容部31の内部に突出するフィルター固定部36を設けたが、このフィルター固定部36は電解液収容部31の内部に突出するように構成しなくてもよい。この場合、電解液透過フィルター50は、電解液収容部31の内壁に接着して固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサに利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
X 定電位電解式ガスセンサ
10 ガス電極
11 作用電極
12 対極
13 参照電極
20 電解液
30 電解槽
31 電解液収容部
50 電解液透過フィルター
図1
図2