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特開2015-125092計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-125092(P2015-125092A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20150609BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20150609BHJP
【FI】
   G01C7/02
   G06T1/00 285
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-271041(P2013-271041)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】向山 栄
(72)【発明者】
【氏名】本間 信一
(72)【発明者】
【氏名】本田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】石月 心介
(72)【発明者】
【氏名】小林 容子
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA14
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC02
5B057DC32
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が有する問題を解決することであり、すなわち同一領域を計測した2以上の異なる結果について整合性の判定を行う際に、高さ方向の較差に加えて水平方向の較差も判定要素に含めることのできる計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置を提供することにある。
【解決手段】本願発明の計測結果の整合性判定方法は、同一の領域で得られた2つの計測点群を比較して整合性を判定する方法であり、地形量算出工程と地形画像作成工程を備えた方法である。このうち地形量算出工程では、地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出し、地形画像作成工程では、地形量に基づいて画像化した地形画像を作成する。そして、地形画像どうしを画像照合することよって、2つの計測点群の整合性を判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の領域で得られた2つの計測点群を比較して整合性を判定する方法において、
複数のメッシュからなるモデルであって、第1の計測点群に基づき作成された第1の地形モデル、及び第2の計測点群に基づき作成された第2の地形モデルを用意し、
前記第1の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出するとともに、前記第2の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出する地形量算出工程と、
前記地形量に基づいて、前記第1の地形モデルを画像化した第1の地形画像を作成するとともに、前記第2の地形モデルを画像化した第2の地形画像を作成する地形画像作成工程と、を備え、
前記第1の地形画像と前記第2の地形画像を画像照合することよって、2つの計測点群の整合性を判定することを特徴とする計測結果の整合性判定方法。
【請求項2】
前記第1の地形画像を分割して複数の検索領域を得るとともに、それぞれの検索領域を基に画像照合を行って前記第2の地形画像から照合領域を抽出する部分照合工程と、
前記検索領域と前記照合領域から較差ベクトルを算出する較差ベクトル算出工程と、
前記較差ベクトルに基づいて、前記第1の計測点群と前記第2の計測点群が整合していない不整合領域を検出する不整合領域検出工程と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の計測結果の整合性判定方法。
【請求項3】
同一の領域で得られた2つの計測点群を比較して整合性を判定する装置において、
複数のメッシュからなるモデルであって、第1の計測点群に基づき作成された第1の地形モデル、及び第2の計測点群に基づき作成された第2の地形モデルを読み出す地形モデル読み出し手段と、
前記第1の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出するとともに、前記第2の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出する地形量算出手段と、
前記地形量に基づいて、前記第1の地形モデルを画像化した第1の地形画像を作成するとともに、前記第2の地形モデルを画像化した第2の地形画像を作成する地形画像作成手段と、
前記第1の地形画像と前記第2の地形画像を画像照合する画像照合手段と、を備え、
前記画像照合の結果によって2つの計測点群の整合性を判定し得ることを特徴とする計測結果の整合性判定装置。
【請求項4】
前記画像照合手段は、部分照合手段、較差ベクトル算出手段、及び不整合領域検出手段を含み、
前記部分照合手段では、前記第1の地形画像を分割して複数の検索領域を得るとともに、それぞれの検索領域を基に画像照合を行って前記第2の地形画像から照合領域を抽出し、
前記較差ベクトル算出手段では、前記検索領域と前記照合領域から較差ベクトルを算出し、
前記不整合領域検出手段では、前記較差ベクトルに基づいて、前記第1の計測点群と前記第2の計測点群が整合していない不整合領域を検出する、ことを特徴とする請求項3記載の計測結果の整合性判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、同一領域を対象に取得された2つの計測点群を比較してその整合性を判定する技術に関するものであり、より具体的には2つの計測結果から得られた地形量を基にそれぞれ画像化し、これら画像どうしを比較照合することで両者の整合性を判定する計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地形図の作製など広範囲に渡って地形計測を行う場合、従来では航空機から撮影した空中写真を利用するのが一般的であったが、昨今では、航空レーザー計測や、衛星写真を利用した計測、あるいは合成開口レーダを利用した計測といった様々な計測手法が実用化され、状況に応じて好適な手法を選択できるようになった。
【0003】
このうち航空レーザー計測は、図1に示すように、計測したい地形Fの上空を航空機Pで飛行し、地形Fに対して照射したレーザーパルスLの反射信号を受けて計測するものである。航空機Pには通常、GPS(Global Positioning System)などの測位計とIMU(Inertial Measurement Unit)などの慣性計測装置が搭載されているので、レーザーパルスLの照射位置(x,y,z)と照射姿勢(ω,φ,κ)を把握することができ、その結果、照射時刻と受信時刻の時間差から計測点(レーザーパルスLが反射した地点)の3次元座標を得ることができる。
【0004】
地形Fで反射したレーザーパルスLは、航空機Pに搭載されたセンサで受信され、戻ってきたときのレーザーパルスLの強度(以下、「反射強度」という。)を取得し、受信時刻と併せて記録される。この反射強度は、いわば受信したレーザーパルスLのエネルギーの大きさであり、直接的には電圧として計測され、電圧を換算することでエネルギーの大きさが得られる。図1に示すように、一回の計測(フライト)で多数のレーザーパルスLが照射され、そのレーザーパルスLに応じた数の照射強度が記録される。
【0005】
航空レーザー計測は、通常、広い範囲を計測対象とするため、複数のコース(航路)を飛行することで計測対象範囲を網羅している。そして、計測漏れ領域が生じないように隣接するコースではある程度重複(サイドラップ)して計測を行っている。つまり、サイドラップ範囲では異なるコースを飛行した2種類の計測を行っているわけである。
【0006】
ところで航空レーザー計測では、GPSやIMUなどの機器に依存する誤差や、レーザーパルスLが大気を通過することによる誤差を持つことが知られている。したがって、サイドラップ範囲で得られた2種類の計測結果には相違が生じ、すなわち双方の計測結果が整合しないことがある。そのため航空レーザー計測を行った際には、サイドラップ範囲における2つの計測結果を比較して整合性を判断するコース間検証が行われ、整合しないと判断された場合には両計測結果を整合させるコース間調整が行われる。
【0007】
航空レーザー計測により得られる結果は、離散した多数の点である。このような点群からなる2種類の計測結果を比較する場合、これまでは横断図や縦断図など点群に基づく地形を描いたうえで比較していた。2種類の地形を比較し、同一の平面位置における高さの相違を見るわけである。言い換えれば、計測較差のうち高さ方向の較差のみによって両者の整合性を判断し、水平方向の較差による不整合は判断に含めていなかった。
【0008】
コース間検証を行う場合、本来であれば高さ方向の較差に加え、水平方向の較差も含めたうえで整合性判定を行うことが望ましい。しかしながら、コース間検証に限らず2時期の計測結果を比較する場合であっても、航空レーザー計測のように離散した点群を2つ照らし合わせるには、平面位置を基準として高さを比較するのが主流であった。
【0009】
そこで特許文献1では、2時期の地形を比較する際、離散した点群から地形モデルを作成し、この地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出するとともに、当該地形量に応じた画像を作成することを提案している。2時期の地形が画像化されることによって、部分的な地形変化が明瞭になり、しかも地形モデルを作成した効果で3次元(平面方向と高さ方向)の変位ベクトルを求めることができる。すなわち、高さ方向の変化のみならず、平面方向の変化を確認することができるわけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−266419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、2時期における地形の変化を把握するには好適な技術であるが、コース間検証に用いる技術について提案しているものではない。すなわち、2時期の計測結果は確からしい(許容すべき誤差範囲内にある)ことを前提にしたものであって、種々の誤差が生じることを前提に本来一致すべき2種類の計測結果の較差(あるいはその程度)を判定する技術ではない。本願発明の課題は、上記問題を解決することであり、すなわち同一領域を計測した2以上の異なる結果について整合性の判定を行う際に、高さ方向の較差に加えて水平方向の較差も判定要素に含めることのできる計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、コース間検証など本来一致すべき2種類の計測結果の整合性の判定を行うに際し、DSM(Digital Surface Model)やDEM(Digital Elevation Model)など3次元の空間情報に基づく地形モデルを利用し、算出される地形量を基に画像化したもので比較するという点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0013】
本願発明の計測結果の整合性判定方法は、同一の領域で得られた2つの計測点群を比較して整合性を判定する方法であり、地形量算出工程と地形画像作成工程を備えた方法である。本願発明を実施するに当たっては、複数のメッシュからなるモデルを2つ用意する。一つは第1の計測点群に基づき作成された第1の地形モデルであり、もう一つは第2の計測点群に基づき作成された第2の地形モデルである。地形量算出工程では、第1の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出するとともに、第2の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出する。地形画像作成工程では、地形量に基づいて第1の地形モデルを画像化した第1の地形画像を作成するとともに、同じく地形量に基づいて第2の地形モデルを画像化した第2の地形画像を作成する。そして、第1の地形画像と第2の地形画像を画像照合することによって、2つの計測点群の整合性を判定する。
【0014】
本願発明の計測結果の整合性判定方法は、さらに、部分照合工程と、較差ベクトル算出工程、不整合領域検出工程を備えた方法とすることもできる。部分照合工程では、第1の地形画像を分割して複数の検索領域を得るとともに、それぞれの検索領域を基に画像照合を行って第2の地形画像から照合領域を抽出する。較差ベクトル算出工程では、検索領域と照合領域から較差ベクトルを算出する。不整合領域検出工程では、較差ベクトルに基づいて、第1の計測点群と第2の計測点群が整合していない不整合領域を検出する。
【0015】
本願発明の計測結果の整合性判定装置は、地形モデル読み出し手段と、地形量算出手段、地形画像作成手段、画像照合手段を備えたものである。地形モデル読み出し手段は、複数のメッシュからなるモデルを2つ読み出す。すなわち、第1の計測点群に基づき作成された第1の地形モデルと、第2の計測点群に基づき作成された第2の地形モデルである。地形量算出手段は、第1の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出するとともに、第2の地形モデルを構成するメッシュごとに地形量を算出する。地形画像作成手段は、地形量に基づいて、第1の地形モデルを画像化した第1の地形画像を作成するとともに、第2の地形モデルを画像化した第2の地形画像を作成する。画像照合手段は、第1の地形画像と第2の地形画像を画像照合する。そして、画像照合の結果によって2つの計測点群の整合性を判定する。
【0016】
本願発明の計測結果の整合性判定装置は、さらに、部分照合手段と、較差ベクトル算出手段、不整合領域検出手段を含むものとすることもできる。部分照合手段は、第1の地形画像を分割して複数の検索領域を得るとともに、それぞれの検索領域を基に画像照合を行って第2の地形画像から照合領域を抽出する。較差ベクトル算出手段は、検索領域と照合領域から較差ベクトルを算出する。不整合領域検出手段は、較差ベクトルに基づいて、第1の計測点群と第2の計測点群が整合していない不整合領域を検出する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置には、次のような効果がある。
(1)例えばコース間検証を行う場合、高さ方向の較差に加え、水平方向の較差も整合性判断に含めることができる。この結果、より適切なコース間検証を行うことができ、ひいては良質な計測結果を得ることができる。
(2)明瞭なキャリブレーションサイトがない森林等でも、容易かつ適切に整合性の判定を行うことができる。
(3)画像照合によって性判断することから、不整合箇所を明確に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】航空レーザーによる計測状況を示す説明図。
図2】「表面」を説明するモデル図。
図3】「地表面」を説明するモデル図。
図4】整合性判定装置の構成を示すブロック図。
図5】(a)は検索領域を説明するモデル図、(b)は被検索範囲を説明するモデル図。
図6】第2の地形画像における「検索領域に相当する領域」と「照合領域」を示すモデル図。
図7】照合領域の位置を補正する考え方を示すグラフ図。
図8】検索領域の中から選出されたテンプレートを示す説明図。
図9】(a)は検索領域の画像を示したモデル図、(b)は第2の地形画像を示したモデル図。
図10】整合性判定装置で実行される処理手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0020】
1.全体概要
本願発明は、ある程度広い範囲(以下、「対象領域」という。)に対して実施された計測結果に主に用いられ、すなわち広範囲から取得された3次元の空間情報を利用する。そこで、まずは3次元の空間情報について説明する。
【0021】
3次元の空間情報は、平面座標値と高さの情報を持つ点や線、面、あるいはこれらの組み合わせで構成される情報である。さらに平面座標値とは、緯度と経度あるいはX座標とY座標で表されるものであり、高さとは標高など所定の基準水平面からの鉛直方向の距離を意味する。この3次元の空間情報は、種々の手段によって作成することができる。例えば、2枚1組のステレオ航空写真(衛星写真)を基に作成したり、航空レーザー計測や衛星レーダ計測によって作成したり、あるいは直接現地を測量して作成することもできる。
【0022】
ステレオ航空写真や航空レーザー計測に基づいて作成される3次元の空間情報は、通常、「表面」を表すものである。ここで表面とは、図2にも示すように、森林や農地といった緑被物や建物など地面上に立ち上がる地物の上面を意味する。これに対して「地表面」は、図3にも示すように、緑被物や建物などを取り除いた後の面、すなわち地面のことを意味する。ここでは、「表面」を3次元の空間情報で表したものを「表層モデル」、「地表面」を3次元の空間情報で表したものを「地表モデル」ということとする。なお、表層モデルの代表的なものもとしてはDSMが知られており、地表モデルの代表的なものもとしてはDEMが知られている。
【0023】
地表モデルを作成するためには、表層モデルから緑被物や建物などを取り除く処理、いわゆるフィルタリング処理が行われる。フィルタリング処理は広く知られた技術であり、所定の条件に合うものを緑被物や建物として認識し除外する。この処理は、汎用のソフトウェアを用いてコンピュータで実行されることが一般的である。
【0024】
つぎに、本願発明の概要について説明する。本願発明では、表層モデルや地表モデルに基づいて作成される(あるいは、表層モデルや地表モデルそのものである)「地形モデル」を利用する。この地形モデルは多数のグリッドとそのグリッドで区切られるメッシュを備えており、言い換えれば地形モデルは複数のメッシュによって構成されている。また、本願発明は同一領域を計測した2以上の異なる結果について整合性の判定を行うものであるから、異なる2つの地形モデルを用いる。なお便宜上ここでは、2つの地形モデルのうち一方を「第1の地形モデル」、他方を「第2の地形モデル」という。
【0025】
2以上の異なる結果について整合性の判定を行うため、第1の地形モデルと第2の地形モデルを比較するわけであるが、このとき両地形モデルを画像化したうえで比較する。地形モデルを画像化するには、メッシュごとに地形量を算出し、この地形量に応じた画素情報を付与することによって行う。第1の地形モデルの画像と、第2の地形モデルの画像を比較することで、地形の較差量及び較差方向(以下、「較差ベクトル」という。)が求められ、この較差ベクトルに基づいて整合性の判定を行うことができる。
【0026】
以下、要素ごとに詳述する。なおここでは、計測結果の整合性判定装置(以下、単に「整合性判定装置」という。)の例で本願発明の技術内容を説明することとし、計測結果の整合性判定方法特有の内容については後に説明することとする。
【0027】
2.整合性判定装置
(構成手段)
図4は、整合性判定装置100の構成を示すブロック図である。この図に示すように整合性判定装置100は種々の手段によって構成され、これらの手段はコンピュータを用いることで好適に実行される。以下、各手段について詳しく説明する。入力手段110は、後述する種々の手段に対して処理を実行すべく指示を与えるものであり、キーボードやポインティングデバイスなどを利用することができる。
【0028】
図4に示す地形モデル記憶手段120は、第1の地形モデルと第2の地形モデルを記憶するものであり、コンピュータのハードディスクやCD−ROMといった記憶媒体である。つまり、これらの地形モデルはコンピュータで処理可能なデータ形式で形成されている。なお地形モデル記憶手段120は、第1の地形モデル用、第2の地形モデル用それぞれ別に用意してもよいし、一体のものとして構成することもできる。また図4に示すようにデータ登録手段130を備え、このデータ登録手段130によって第1の地形モデルや第2の地形モデルを、コンピュータのハードディスク等に記憶させることもできる。
【0029】
既述のとおり、地形モデルは複数のメッシュによって構成されている。メッシュは、例えば直交するグリッドに区切られて形成されるもので、メッシュごとに代表点を備えている。レーザー計測点は通常ランダムデータであるため、メッシュの代表点に高さを与えるには幾何計算されることが多い。この算出方法としては、ランダムデータから形成される不整三角網によって高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による手法、最も近いレーザー計測点4を採用する最近隣法(Nearest Neibor)による手法のほか、逆距離加重法(IWD)、Kriging法、平均法など従来から用いられる種々の手法を採用することができる。なお、メッシュを構成するグリッドは必ずしも直交する必要はなく、任意の交差角によるグリッドとすることができる。また、ここで用いる第1の地形モデルと第2の地形モデルは、本願発明のために作成してもよいし、当然ながら既製のものがあればこれを利用することもできる。
【0030】
地形モデル読み出し手段140は、入力手段110によって入力された指示に従って、地形モデル記憶手段120から第1の地形モデルや第2の地形モデルを読み出す。地形量算出手段150は、地形モデル読み出し手段140で読み出した地形モデルのメッシュごとに地形量を算出するものである。ここで地形量とは、地形の特徴を表すいわば指標であり、メッシュの代表点や元のランダムデータなどに基づいて算出される。
【0031】
地形量としては、標高値、ラプラシアン値、地上開度値、地下開度値、傾斜量、あるいはこれらの組み合わせなどを例示することができる。ここでラプラシアン値とは、一般には傾斜の変化率を表すラプラシアン図を描画するためのものである。このラプラシアン図は、くぼんだ地形で正、突出した地形で負となり、地形の変化が大きいところで絶対値が大きくなるといった特徴がある。
【0032】
地上開度値や地下開度値は、一般には開度図を描画するためのものである。開度図のうち地上開度図は、着目する地点から一定距離内で見える空の広さを表しているもので、周囲から突出している地点ほど地上開度値は大きくなり、例えば、山頂や尾根で大きな地上開度値を示し、その結果、突出した山頂や尾根が強調されるといった特徴がある。一方、開度図のうち地下開度図は、地上開度図とは逆に、地表面から地下を見渡す時、一定距離内における地下の広さを表しており、地下にくい込んでいる地点ほど地下開度値は大きい値を示し、例えば、くぼ地や谷底で大きな地下開度値を示し、その結果、くぼ地や谷地が強調されるといった特徴がある。
【0033】
傾斜量は、一般に傾斜量図を描画するためのものである。傾斜量図は、地形の傾斜の度合いを示すもので、傾斜が大きいほど大きな傾斜値を示し、逆に緩やかな傾斜であるほど小さな傾斜値を示す。
【0034】
地形画像作成手段160は、地形量算出手段150で算出した地形量に基づいて地形画像を作成するもので、具体的には画像作成のための画素(ピクセル)に対して地形量に応じた画素情報を付与し、この画素情報を持つ画素を集合することで地形画像を作成する。この画素は、メッシュを基準に形成されるものであり、例えば1メッシュを1画素としたり、4つのメッシュを1画素としたり、9つのメッシュを1画素とするなど、種々のメッシュの組み合わせで画素を形成することができる。
【0035】
画素に付与する画素情報とは、輝度や色(色相、彩度、及び明度)を表すものであり、RGBや、CMYK、NCSのような色モデルを使用することができる。画素情報は、メッシュの地形量に応じて与えられ、例えば地形量が大きな値を示す順に、赤、橙、黄、緑、青と定めたり、地形量のレンジにあわせて256階調の濃淡を割り当てたり、あるいは、標高値は色,傾斜量は輝度の組み合わせとするなど、任意に設定することができる。
【0036】
上記手順により、第1の地形モデルを基に「第1の地形画像」が、第2の地形モデルを基に「第2の地形画像」が作成される。第1の地形画像と第2の地形画像が作成されると、一方を「検索画像」として選択し、他方を「被検索画像」として選択する。ここでは便宜上、第1の地形画像を検索画像とし、第2の地形画像を被検索画像とする場合で説明する。
【0037】
画像照合手段170は、地形画像作成手段160によって作成された、第1の地形画像と第2の地形画像を画像照合(マッチング)するものである。このとき、地形画像全体でマッチングすることもできるが、地形画像をいくつかに分割し、それぞれ分割した単位でマッチングすることもできる。これを実行するのが部分照合手段171であり、具体的には、検索画像である第1の地形画像から所定の部分領域である「検索領域」を切り出し、被検索画像である第2の地形画像を走査(スキャン)して、当該検索領域とマッチングする「照合領域」を検出する。
【0038】
図5は、部分照合手段171によって部分的な検索を説明する図であり、(a)は検索領域を説明するモデル図、(b)は被検索範囲を説明するモデル図である。図5(a)に示すように、部分照合手段171は第1の地形画像を任意の大きさの領域に分割し、複数の検索領域を切り出し、それぞれの検索領域でマッチングを行う。このとき、第2の地形画像をスキャンするわけであるが、第2の地形画像のうち特定の範囲だけスキャンすることもできる。この範囲は、第2の地形画像の中で第1の地形画像から切り出した検索領域に相当する領域を抽出し、その周辺に所定幅(バッファ)だけ拡張した領域を検索すべき領域(以下、「被検索範囲」という。)として設定することができる。この被検索範囲のみをスキャンすることで、効率的にマッチングを行うことができるわけである。
【0039】
検索領域によるマッチング行う際、第2の地形画像の範囲内(あるいは、被検索範囲内)において検索領域を1画素単位で移動させながらスキャンする。つまり、検索領域とマッチングした照合領域は、第2の地形画像の画素、つまり第2の地形モデルのメッシュで構成され、照合領域は地形モデルのグリッドで囲まれることになる。図6は、第2の地形画像における「検索領域に相当する領域」と「照合領域」を示すモデル図である。ところが、検索領域と最も照合する領域は、必ずしもグリッドで囲まれる位置にあるとは限らない。
【0040】
図7は、照合領域の位置を補正する考え方を示すグラフ図である。このグラフは、横軸が図6に示すX−Y平面であり、縦軸が高さ方向の較差の2乗和(照合領域内の2乗和)である。なおこのグラフは、本来、横軸がX−Y平面で表されており、較差の2乗和も面的にプロットされているが、便宜上ここではY=0の断面で表している。この図から、検索領域をX方向に−1だけ移動したときと、X方向に−2だけ移動したときの間で較差が最も小さくなり、この位置で照合領域を抽出することが適切であることが分かる。このように、グリッド位置から補正して照合領域位置を抽出することもできる。
【0041】
検索領域によるマッチングを行う際、複数の画素の組み合わせからなるテンプレートを利用することもできる。このテンプレートは、検索領域の中から選出される複数の画素によって形成され、特に特徴的な形状を構成するものが適している。図8は、検索領域の中から選出されたテンプレート200を示す説明図である。抽出したテンプレート200で、第2の地形画像内に同様の画像を見つけるべくスキャンするわけであるが、ここでテンプレート200によってマッチングさせる理由について説明する。図9(a)は検索領域の画像を示したモデル図であり、図9(b)は第2の地形画像を示したモデル図である。図9(a)のうちの一つの画素Vに着目し、これに該当する画素を図9(b)の中から検索すると、同じ輝度(明度)の画素V、画素V、画素Vが照合される。すなわち、画素Vの較差は3パターンが考えられることになり、どれかひとつに特定することができない。一方、図9(a)のうち画素Vを含む四つの画素からなるテンプレート200(図中破線で囲った範囲)に着目して、これに該当する画像を図9(b)の中から探すと、図9(b)の破線で囲ったテンプレート200が特定できる。このように、テンプレート200を利用すれば2つの画像が照合しやすくなるわけである。
【0042】
テンプレート200が抽出されると、このテンプレート200によって第2の地形画像内に同様の画像を見つけるべくスキャンしていく。具体的には、テンプレート200が具備する画素情報に基づいて、同様の画素情報の配置となる組み合わせを、第2の地形画像の中から検索していく。
【0043】
なお、テンプレート200と全く同じ画像が第2の地形画像内に存在するケースばかりとは限らない。そこで、照合の程度にある程度の冗長性を持たせることもできる。例えば、比較した画素情報の残差に閾値を設け、この閾値以内であれば同等の画像(画素)と判定したり、相違する画素の数(あるいは割合)が所定の閾値以下であれば同等のテンプレート200と照合すると判定したり、あるいはこれらを組み合わせて判定するなど、種々の条件で画像の相違を許容することができる。
【0044】
較差ベクトル算出手段172は、部分照合手段171で抽出された検索領域と照合領域の組み合わせに基づいて、較差量と較差の方向を算出して較差ベクトルを求める。検索領域と照合領域は、それぞれ第1の地形画像と第2の地形画像の部分領域であり、これら地形画像は地形モデルのメッシュによって構成されていることから、容易に3次元の座標計算を行うことができる。
【0045】
不整合領域検出手段173は、較差ベクトル算出手段172で求めた較差ベクトルに応じて、第1の地形モデルと第2の地形モデルの間で不整合となる部分領域を検出する。較差ベクトルの較差量が所定閾値を超える場合は不整合があると判定し、当該較差ベクトルの基礎となった検索領域(あるいは照合領域)を不整合領域として検出する。ここで検出された不整合領域や較差ベクトルは、ディスプレイやプリンタといった出力装置である出力手段180によって出力される。
【0046】
(処理の流れ)
次に、整合性判定装置100によって実行される処理の流れについて、図10を参考に説明する。まず、地形モデル読み出し手段140が、地形モデルを記憶する地形モデル記憶手段120から第1の地形モデルと第2の地形モデルを読み出す(Step11,Step12)。読みだされたそれぞれの地形モデルに対して、地形量算出手段150がメッシュごとに地形量を算出し(Step21,Step22)、地形画像作成手段160が地形量に基づいて第1の地形画像と第2の地形画像を作成する(Step31,Step32)。
【0047】
部分照合手段171によって第1の地形画像を任意の大きさの領域に分割し、複数(ここではn個)の検索領域を設定する(Step41)。n個の検索領域のうち一つの検索領域を選出する(Step51)とともに、第2の地形画像から被検索範囲を設定する(Step52)。
【0048】
選出された検索領域をもって、第2の地形画像のうち被検索範囲をスキャンし(Step60)、照合する照合領域を特定する(Step70)。そして、較差ベクトル算出手段172が、検索領域と照合領域に基づいて較差ベクトルを求め(Step80)、さらにこの較差ベクトルに基づいて両者の整合/不整合を判定し、不整合と判定された検索領域(あるいは照合領域)は不整合領域検出手段173によって不整合領域として検出される(Step90)。
【0049】
以上の処理が、分割された検索領域の数(n個)だけ繰り返し実施され(ループ)、最終的には不整合領域や較差ベクトルが、ディスプレイやプリンタといった出力手段180によって出力される(Step100)。
【0050】
3.計測結果の整合性判定方法
計測結果の整合性判定方法は、整合性判定装置100で説明した内容を人(オペレータ)によって実施するものである。以下、個別に説明する。なお、整合性判定装置100と重複する内容については、ここでは繰り返しての説明は行わない。
【0051】
地形量算出工程は、地形量算出手段150で説明した内容を行うものであり、地形モデルのメッシュごとに地形量を算出する。地形画像作成工程は、地形画像作成手段160で説明した内容を行うものであり、地形量に基づいて第1の地形画像と第2の地形画像を作成する。部分照合工程は、部分照合手段171で説明した内容を行うものであり、第1の地形画像から検索領域を設定し、第2の地形画像の被検索範囲から検索領域とマッチングする照合領域を検出する。移動ベクトル算出工程は、較差ベクトル算出手段172で説明した内容を行うものであり、検索領域と照合領域の較差に基づいて較差ベクトルを算出する。不整合領域検出工程は、不整合領域検出手段173で説明した内容を行うものであり、較差ベクトルに基づいて、第1の地形モデルと第2の地形モデルの間で不整合となる部分領域を検出する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明の計測結果の整合性判定方法、及び計測結果の整合性判定装置は、広い範囲を対象に航空レーザー計測を実施した場合のコース間検証において好適に実施できる。また、航空レーザー計測のほか、航空写真や衛星画像を用いて同一箇所を複数回計測した場合にも利用できる。さらに、同一の範囲を、異なる手法で計測した場合の結果の整合性を判定する場合にも応用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 整合性判定装置
110 入力手段
120 地形モデル記憶手段
130 データ登録手段
140 地形モデル読み出し手段
150 地形量算出手段
160 地形画像作成手段
170 画像照合手段
171 部分照合手段
172 較差ベクトル算出手段
173 不整合領域検出手段
180 出力手段
200 テンプレート
F 地形
L レーザー
P 航空機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10