【課題】従来の駆動回路等に大きな変更を施すことなく、低い駆動電圧と少ない電流で必要な発光効率を得られ、消費電力を低減できる、プラズマディスプレイ装置及び放電発光装置を提供する。
【解決手段】放電発光を行う第一電極と第二電極の内、一方の電極に+Va1、他方の電極に−Vbを印加して、陽光柱放電を引き起こすサステインパルスを与える。次に、第一電極と第二電極の双方に−Vbを印加する、休止期間を設ける。次に、一方の電極に+Va1より高電位の+Va2、他方の電極に−Vbを印加して、次の周期に発生する陽光柱放電に必要な電荷を蓄積するための壁電荷蓄積パルスを与える。この動作を、第一電極と第二電極との間で交互に実行する。
前記壁電荷蓄積パルス付与期間は前記サステインパルス付与期間より短く、前記休止期間は前記サステインパルス付与期間より短い、請求項4に記載のプラズマディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一の実施形態:プラズマディスプレイ装置の全体構成]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る、プラズマディスプレイ装置101の全体構成を示すブロック図である。
図2は、放電表示パネル102の構造を示す一部分解斜視図である。
制御部103は、図示しない映像ソースから映像信号を受けて、第一ドライバ104と第二ドライバ105を制御する。
第一ドライバ104は、放電表示パネル102のガラス基板201と誘電体202との間に挟み込まれている表示電極203とスキャン電極204に、駆動電圧を印加する。なお、表示電極203とスキャン電極204は、それぞれ透明度と低抵抗値を確保するために、バス線205と透明電極206にて構成されている。
第二ドライバ105は、放電表示パネル102のバリアリブ207の裏側に、表示電極203とスキャン電極204の貼付方向とは直交する方向に貼付されているアドレス電極208に、駆動電圧を印加する。
【0012】
放電表示パネル102は、ガラス基板201とバリアリブ207を密着させて、空気を抜いた後、低圧のXe(キセノン)ガスを封入して、蛍光灯に似た発光環境を形成する。
ガラス基板201には、表示電極203とスキャン電極204が交互に貼付されている。発光を引き起こす表示放電は、表示電極203とスキャン電極204との間のギャップにて生じる。
バリアリブ207の裏側には、表示電極203とスキャン電極204に直交する方向に、アドレス電極208が貼付されている。
【0013】
第二ドライバ105は、0Vから5V迄の電圧範囲で、画素の輝度に応じた電圧をアドレス電極208に印加する。このため、第二ドライバ105の駆動電圧の電源は図示を省略している。
一方、第一ドライバ104は、サステインパルスと壁電荷蓄積パルスという二種類の高電圧パルスを、表示電極203とスキャン電極204に交互に印加する。サステインパルスの電圧は110〜200V、壁電荷蓄積パルスの電圧は150〜300Vになる。そして、サステインパルスの電圧は壁電荷蓄積パルスの電圧より低く設定される。このため、
図1中では、
・サステインパルスを形成するためのサステイン電圧+Va1を出力する第一電源106と、
・壁電荷蓄積パルスを形成するための壁電荷蓄積電圧+Va2を出力する第二電源107と、
・接地電位を形成するための接地電位−Vbを出力する第三電源108と
が設けられている。
【0014】
第一電源106は、
図3にて後述する第一スイッチ部に、+Va1の他、+Va1+5V、そして+Va1−5Vを供給する。
第二電源107は、
図3にて後述する第二スイッチ部に、+Va2の他、+Va2+5V、そして+Va2−5Vを供給する。
第三電源108は、
図3にて後述する第三スイッチ部に、−Vbの他、−Vb+5V、そして−Vb−5Vを供給する。
これらスイッチ部の詳細は
図4にて後述する。
【0015】
プラズマディスプレイ装置101の駆動シーケンスについて、簡単に説明する。
プラズマディスプレイ装置101は、1フレームを表示する際に、アドレスシーケンスと表示シーケンスを実行する。
アドレスシーケンスとは、スキャン電極204に所定のデータ電圧を印加した上で、アドレス電極208に画素の輝度に相当する所定の電圧を印加することで、各々の画素(表示電極203及びスキャン電極204と、アドレス電極208との交点)に輝度に応じた電界強度の電荷を蓄積させる動作である。
表示シーケンスとは、アドレス電極208には一切の電圧を印加しない状態で、スキャン電極204と表示電極203に所定の交流パルス電圧を印加することで、各々の画素に異なる輝度で発光する表示放電を引き起こす動作である。
【0016】
動画像信号が60fps(1フレーム約16msec)の場合、アドレスシーケンスにその7〜8割の時間(約12〜13msec:アドレス期間)を割り当て、表示シーケンスに残りの時間(約3〜5msec:表示期間)を割り当てる。そして、表示シーケンスでは1周期が約4μsecのパルス電圧をおよそ800〜1250回、表示電極203とスキャン電極204に印加する。
【0017】
[第一の実施形態:第一ドライバ104の構成]
図3は、第一ドライバ104の構成を示すブロック図である。
第一ドライバ104は、表示電極203とスキャン電極204のそれぞれに接続されているスイッチモジュール301a、301b、301c、301d…の集合体である。スイッチモジュール301a、301b、301c、301d…は全て同じ回路構成である。これ以降、これらを特に区別しない場合には、スイッチモジュール301と総称する。
図3中、スイッチモジュール301aは表示電極203aに接続されている。スイッチモジュール301bはスキャン電極204aに接続されている。スイッチモジュール301cは表示電極203bに接続されている。スイッチモジュール301dはスキャン電極204bに接続されている。以下同様に、表示電極203とスキャン電極204のそれぞれに、スイッチモジュール301が接続される。
【0018】
スイッチモジュール301は、第一スイッチ部302と、第二スイッチ部303と、第三スイッチ部304と、これら各々のスイッチ部を制御するロジック回路305よりなる。
第一スイッチ部302は、第一電源106から、+Va1、+Va1+5V、そして+Va1−5Vの供給を受ける。そして、ロジック回路305の制御に従って、+Va1を出力する。
第二スイッチ部303は、第二電源107から、+Va2、+Va2+5V、そして+Va2−5Vの供給を受ける。そして、ロジック回路305の制御に従って、+Va2を出力する。
第三スイッチ部304は、第三電源108から、−Vb、−Vb+5V、そして−Vb−5Vの供給を受ける。そして、ロジック回路305の制御に従って、−Vbを出力する。
【0019】
第一スイッチ部302、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304は、何れか一つのみが表示電極203又はスキャン電極204に接続される。但し、表示電極203又はスキャン電極204は必ずしも常に第一スイッチ部302、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304のいずれか一つに接続されるとは限らない。第一スイッチ部302、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304の何れも表示電極203又はスキャン電極204に接続されない状態も存在する。
【0020】
[第一の実施形態:スイッチ部の回路構成]
図4は、第一スイッチ部302の回路図である。なお、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304も第一スイッチ部302と同一の回路構成である。このため、第一スイッチ部302に印加される電圧を、Vx、Vx+5V、Vx−5Vと表記している。
第一フォトカプラ401は、ロジック回路305が出力する+5Vの制御信号を、駆動電圧Vx+5Vの回路へ伝達する。
第一バッファ402は、第一フォトカプラ401の出力信号を、Vx+5Vの制御信号に変換する。この制御信号は、Nチャネル型MOSFET(以下「NMOSFET」と略)403のゲートをオン・オフ制御する。NMOSFET403は、ゲートにVx+5Vを印加されると、オン状態になる。
【0021】
第二フォトカプラ404は、ロジック回路305が出力する+5Vの制御信号を、駆動電圧Vx−5Vの回路へ伝達する。
第二バッファ405は、第二フォトカプラ404の出力信号を、Vx−5Vの制御信号に変換する。この制御信号は、Pチャネル型MOSFET(以下「PMOSFET」と略)406のゲートをオン・オフ制御する。PMOSFET406は、ゲートにVx−5Vを印加されると、オン状態になる。
第一フォトカプラ401と第二フォトカプラ404はロジック回路305から同一の制御信号によってオン・オフ動作されるので、NMOSFET403とPMOSFET406は同時にオン・オフ制御される。
【0022】
NMOSFET403のソースとPMOSFET406のソースは、電源ノード+Vxに接続されている。電源ノード+Vxと接地ノードとの間には、安定化のためのコンデンサC407が接続されている。
NMOSFET403のドレインには、逆流防止の第一ダイオードD408のカソードが接続されている。
PMOSFET406のドレインには、逆流防止の第二ダイオードD409のアノードが接続されている。
第一ダイオードD408のアノードと、第二ダイオードD409のカソードは、表示電極又はスキャン電極に接続される。
第一ダイオードD408は、NMOSFET403のソース・ドレイン間寄生ダイオードに電流が流れて破壊されないよう保護するために設けられている。
第二ダイオードD409は、PMOSFET406のソース・ドレイン間寄生ダイオードに電流が流れて破壊されないよう保護するために設けられている。
【0023】
今、電極の電位がVxより低い場合、電流は、電源ノードVxからPMOSFET406と第二ダイオードD409を通じて、電極へ流れる。この時、PMOSFET406は電極に対するハイサイドスイッチとして動作する。
逆に、電極の電位がVxより高い場合、電流は、電極からNMOSFET403と第一ダイオードD408を通じて、電源ノードVxへ流れる。この時、NMOSFET403は電極に対するローサイドスイッチとして動作する。
本実施形態の第一スイッチ部302、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304は、このハイサイドスイッチとローサイドスイッチが同時に電極に接続されることが重要である。その理由は
図5にて後述する。
【0024】
[第一の実施形態:動作]
図5は、本発明の第一の実施形態に係るプラズマディスプレイ装置101の、表示電極203及びスキャン電極204に対する制御信号のタイムチャートと、表示電極203及びスキャン電極204の電圧波形と、表示電極203の電流波形を示す図である。
波形W501は、ロジック回路305から表示電極203に接続される第一スイッチ部302に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧+Va1を表示電極203に印加する。
波形W502は、ロジック回路305から表示電極203に接続される第二スイッチ部303に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧+Va2を表示電極203に印加する。
波形W503は、ロジック回路305から表示電極203に接続される第三スイッチ部304に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧−Vbを表示電極203に印加する。
【0025】
波形W504は、ロジック回路305からスキャン電極204に接続される第一スイッチ部302に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧+Va1をスキャン電極204に印加する。
波形W505は、ロジック回路305からスキャン電極204に接続される第二スイッチ部303に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧+Va2をスキャン電極204に印加する。
波形W506は、ロジック回路305からスキャン電極204に接続される第三スイッチ部304に与えられる制御信号のタイムチャートである。高電位が論理の真を示し、オン状態になり、電圧−Vbをスキャン電極204に印加する。
波形W507は、表示電極203の電圧波形である。波形W508は、スキャン電極204の電圧波形である。波形W509は、表示電極203の電流波形である。
【0026】
先ず、時刻t0からt1にかけて、スキャン電極204に+Va2、表示電極203に−Vbを印加して、スキャン電極204と表示電極203との間に電荷を蓄積する。
次に、時刻t1からt2迄の0.5μsecにかけて、表示電極203に+Va1、スキャン電極204に−Vbを印加して、表示放電を引き起こす「サステインパルス」を与える。この時、表示電極203には電源ノード+Va1から表示電極203へ表示放電に伴うサステイン電流I510が流れる。
次に、時刻t2からt3迄の0.17μsecにかけて、表示電極203に−Vb、スキャン電極204に−Vbを印加する、休止期間を設ける。この時、表示電極203には表示電極203から電源ノード−Vbへ自己消去放電電流I511が流れる。
次に、時刻t3からt4迄の1.33μsecにかけて、表示電極203に+Va2、スキャン電極204に−Vbを印加して、次の周期に発生する表示放電に必要な電荷を蓄積するための「壁電荷蓄積パルス」を与える。この時、表示電極203には表示電極203から電源ノード+Va2へ壁電荷蓄積パルスに伴い発生する放電に起因する壁電荷蓄積パルス放電電流I512が流れる。
【0027】
次に、時刻t4からt5迄の0.5μsecにかけて、表示電極203に−Vb、スキャン電極204に+Va1を印加して、表示放電を引き起こす「サステインパルス」を与える。この時、スキャン電極204には電源ノード+Va1からスキャン電極204へ表示放電に伴うサステイン電流が流れる。
次に、時刻t5からt6迄の0.17μsecにかけて、スキャン電極204に−Vb、表示電極203に−Vbを印加する、休止期間を設ける。この時、スキャン電極204にはスキャン電極204から電源ノード−Vbへ自己消去放電電流が流れる。
次に、時刻t6からt7迄の1.33μsecにかけて、スキャン電極204に+Va2、表示電極203に−Vbを印加して、次の周期に発生する表示放電に必要な電荷を蓄積するための「壁電荷蓄積パルス」を与える。この時、スキャン電極204にはスキャン電極204から電源ノード+Va2へ壁電荷を蓄積するための「壁電荷蓄積放電電流」が流れる。
以下同様に、時刻t1からt7迄の動作を、表示期間中に繰り返し実行する。
【0028】
本発明は、
・時刻t1からt2迄の0.5μsecにかけて、一方の電極に+Va1、他方の電極に−Vbを印加して、表示放電を引き起こすサステインパルスを与える。
・時刻t2からt3迄の0.17μsecにかけて、一方の電極に−Vb、他方の電極に−Vbを印加する、休止期間を設ける。
・時刻t3からt4迄の1.33μsecにかけて、一方の電極に+Va1より高電位の+Va2、他方の電極に−Vbを印加して、次の周期に発生する表示放電に必要な電荷を蓄積するための壁電荷蓄積パルスを与える。
という動作を、表示電極203とスキャン電極204との間で交互に実行することが大きな特徴である。特に、サステインパルスと壁電荷蓄積パルスとの間に休止期間を設けたことが、従来技術である非特許文献1との大きな相違点である。
【0029】
[第一の実施形態:従来技術との比較]
図6Aは、従来技術である非特許文献1に開示されている、2段パルス駆動による電極の電圧波形と電流波形である。
図6Bは、本実施形態の駆動方式による電極の電圧波形と電流波形である。
図6Aとの比較のために、周期を一致させている。
図6Aの波形W601は、表示電極203の電圧波形である。波形W602は、スキャン電極204の電圧波形である。波形W603は、表示電極203の電流波形である。
図6Bの波形W604は、表示電極203の電圧波形である。波形W605は、スキャン電極204の電圧波形である。波形W606は、表示電極203の電流波形である。
【0030】
図6Aの、時刻t11からt12迄は、表示電極203に+Va1、スキャン電極204に−Vbを印加して、表示放電を引き起こすサステインパルスを与える。この時、表示電極203には電源ノード+Va1から表示電極203へ表示放電に伴うサステイン電流I607が流れる。
次に、時刻t12からt13迄は、表示電極203に+Va2、スキャン電極204に−Vbを印加して、次の周期に発生する表示放電に必要な電荷を蓄積するための壁電荷蓄積パルスを与える。この時、表示電極203には表示電極203から電源ノード+Va2へ壁電荷蓄積パルスに伴い発生する放電に起因する壁電荷蓄積パルス放電電流I608が流れる。
なお、
図6Bは
図5と同じ波形であるので説明を省略する。
【0031】
図6Aの時刻t12から、壁電荷蓄積パルスに伴って発生する壁電荷蓄積放電電流が、
図6Bの壁電荷蓄積放電電流より大きいことが判る。これは、サステイン放電により電極から生じるプライミング粒子の影響により、壁電荷蓄積パルスが印加される段階で放電が生じやすくなっていることに起因する。この放電が強くなると、印加電圧が高いために消費電力が増大し、発光効率の向上が期待できない。
【0032】
本実施形態の駆動方式では、サステインパルスと壁電荷蓄積パルスとの間に電極間の電位差をゼロにする休止期間を設ける。すると、この休止期間の間に弱い自己消去放電が発生する。この自己消去放電が、空間電荷などのプライミング粒子を減らす。また、自己消去放電により生じるプライミング粒子は少量である。壁電荷蓄積パルスを印加する前の段階でプライミング粒子が減ることで、壁電荷蓄積パルスを印加する時に、消費電力を増大させる不必要な放電を抑えることができる。
この自己消去放電を滞りなく流すために、第一スイッチ部302、第二スイッチ部303及び第三スイッチ部304に設けられているローサイドスイッチのNMOSFET403が必須である。
【0033】
[第一の実施形態:測定結果]
これより、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12及び
図13にかけて、実際に小型のプラズマディスプレイ装置101を試作して、従来技術と本実施形態の駆動方式による表示駆動を行った際の、電圧や電流等の測定結果を示す。
図7から
図13にかけて使用した試作のプラズマディスプレイ装置101は、ストライプリブを持つ、面放電AC型構造の対角4インチのテストパネルである。セルサイズは1.08mm×0.36mm、表示・走査電極間隔は60μm、封入ガスは66.7kPaのNe−Xe混合ガスを用い、その際、Xe分圧は10%とした。実験の際、テストパネルにおける点灯領域は縦8ライン×横256セルとした。テストパネルには緑色蛍光体のみが形成されている。放電の観測には光電子倍増管を用いて、約50セルの赤外発光を測定した。光電子倍増管でテストパネルから発される823+828nmの赤外線を観測して、それぞれの波長成分の波形を比較観察するために、テストパネルと光電子倍増管との間にIRフィルタを適用した。また、テストパネルと光電子倍増管との距離、及び光電子倍増管の増幅電圧は、全ての実験を通して一定値に設定した。
【0034】
図7Aは、従来技術である非特許文献1に開示されている、2段パルス駆動による電極の電圧波形と電流波形を実測したグラフである。
図7Bは、本実施形態の駆動による電極の電圧波形と電流波形を実測したグラフである。
サステイン電圧V
susは、それぞれの駆動方式において最大発光効率が得られた電圧を適用している。
図7Aの2段パルス駆動では110Vであり、
図7Bの本実施形態による駆動では130Vである。
【0035】
2段パルス駆動では壁電荷蓄積パルスが印加された時点で強い放電による大きな放電電流が生じている。これに対し、本実施形態の駆動方式では、壁電荷蓄積パルスが印加された時点の放電電流は小さいことから、2段パルス駆動と比べると放電が弱いことが判る。また、本実施形態の駆動方式では、放電のばらつきに起因する発光ピークが複数の箇所で確認できる。これらのことから、本実施形態の駆動方式では、2段パルス駆動と比べて、自己消去放電によってプライミング粒子を削減できていることが確認できる。また、本実施形態の駆動方式は、2段パルス駆動と比べて、サステイン放電及び壁電荷蓄積パルスに伴う放電の、トータルの放電電流量が少なくなっていることが判る。
【0036】
図8は、本実施形態の駆動方式において、表示期間の最後の壁電荷蓄積パルス電圧V
acc−endのみ変化させ、表示期間終了から5msec後に幅10μsec、電圧−V
testのテストパルスを表示電極203に印加して、放電開始電圧を調べたグラフである。また、
図8には最後の壁電荷蓄積パルス放電電流の積分値である最後の壁電荷蓄積パルス放電電流量も示している。なお、この測定ではサステイン電圧V
susを130Vに設定した。
【0037】
最後の壁電荷蓄積パルス放電電流量は、テストパルス電圧V
testの増加に対して変化が少ない。これに対し、最後の壁電荷蓄積パルス電圧V
acc−endを増加させると、テストパルス電圧V
testは低くなる。これは、壁電荷蓄積パルスが印加されている期間では、放電が殆ど生じない一方、壁電荷が蓄積されていることを示している。このことから、本実施形態の駆動方式では、壁電荷蓄積パルスによって電源から与えられた電荷は、無駄な放電によって消費されずに、順当に壁電荷として電極へ蓄積されていることが判る。
【0038】
ところで、本実施形態の駆動方式と、他の駆動方式における壁電荷蓄積パルス放電開始電圧を調べて比較した。
サステインパルスと壁電荷蓄積パルスの区別がない、単純な矩形波形状の駆動方式を旧駆動方式と呼ぶ。
旧駆動方式において、パルス幅を2μsecとした時、壁電荷蓄積パルス放電開始電圧は180Vであった。
サステイン電圧V
sus=130Vに設定した2段パルス駆動方式において、パルス幅を2μsecとした時、壁電荷蓄積パルス放電開始電圧は192Vであった。
サステイン電圧V
sus=130Vに設定した本実施形態の駆動方式において、パルス幅を2μsecとした時、壁電荷蓄積パルス放電開始電圧は212Vであった。
何れの駆動方式でも壁電荷蓄積パルス放電開始電圧が高くなるのは、直前のサステイン放電によって壁電荷蓄積パルスとは逆極性の壁電圧が形成されるためである。また、2段パルス駆動より本実施形態の駆動方式の方が壁電荷蓄積パルス放電開始電圧が高い。これは、自己消去放電によって電極周囲に発生したプライミング粒子が減少するためである。
【0039】
図9Aは、サステイン電圧V
susを変化させた時の、サステインパルスによる放電電流の積分値を示すグラフである。
図9Bは、サステイン電圧V
susを変化させた時の、壁電荷蓄積パルスによる放電電流の積分値を示すグラフである。
図9Aのグラフより、本実施形態の駆動方式は、サステイン放電の電流量が旧駆動方式と比べて平均約40%程度減少している。また同様に、本実施形態の駆動方式は、サステイン放電の電流量が2段パルス駆動方式と比べて平均約25%程度減少している。
図9Bのグラフより、本実施形態の駆動方式は、壁電荷蓄積期間における電流量が、自己消去放電が生じる130V以上で、2段パルス駆動方式と比べて平均約25%程度減少している。
また、
図9A及び
図9B共に、自己消去放電が生じる130V近辺で、電流量が最小になるサステイン電圧の極値が存在することが認められる。
【0040】
本実施形態の駆動方式では、サステイン電圧V
susが大きくなるに従い、休止期間の自己消去放電が強くなる。すると、サステイン放電で蓄積される壁電荷がより多く失われる。しかし、サステイン電圧V
susが140V未満では、サステインパルスによって生じる自己消去放電が弱いため、壁電荷消失量が少ない。このため、休止期間に続く壁電荷蓄積パルス印加時には、逆極性の壁電荷を形成する壁電荷が電極に多く残っている。このため、電極周辺の内部電解が弱くなり、壁電荷蓄積パルスに起因する放電が弱くなる。この結果、電極に蓄積する壁電荷量が減り、サステインパルス印加時の内部電解が弱くなり、放電に起因する電流量が減少する。
【0041】
サステイン電圧V
susが140V以上では、休止期間で発生する自己消去放電がさらに強くなり、自己消去放電によって生成されるプライミング粒子が増える。また、サステイン放電によって蓄積した壁電荷の消失量も増えるため、壁電荷蓄積パルスに起因する放電の強度が増す。この結果、電極に蓄積する壁電荷量が増え、次のサステインパルスを印加した時の放電電流量が増加する。
【0042】
図10は、本実施形態の駆動方式において、休止期間の時間幅を変化させて、輝度と発光効率を測定したグラフである。測定条件は、サステインパルス幅を0.5μsec、サステイン電圧V
susを130V、壁電荷蓄積パルス幅を1.33μsecとし、休止期間を0.17〜0.83μsecの間で変化させた。なお、休止期間0.17μsec未満では自己消去放電が生じないので、測定を行っていない。
輝度は休止期間0.17μsecで最も低く、0.5μsecで最大値を示している。
【0043】
休止期間が0.5μsec以下では、休止期間が長いほど自己消去放電が強く、また壁電荷蓄積放電が強くなっていた。自己消去放電が強いほど、サステイン放電により形成された壁電荷が減少するため、壁電荷蓄積パルスに起因する放電が強くなり、輝度が増加する。但し、壁電荷蓄積パルスの放電が強くなると、輝度の増加に比べて消費電力が増えるため、発光効率は低下する。
【0044】
一方、休止期間が0.5μsec以上では、自己消去放電の生じている期間に殆ど変化は見られないが、自己消去放電のピークが大きくなる。発光効率が低下しているのは、長時間の自己消去放電によって、サステイン放電により蓄積された壁電荷がより多く失われ、壁電荷蓄積放電が強くなるためである。但し、壁電荷蓄積放電による輝度の増加は見られない。
これらのことから、サステイン放電により生じる壁電荷をより多く残すためには、休止期間をできる限り短くし、壁電荷蓄積パルス印加時のプライミング効果を弱くすることが、高発光効率に繋がることが判る。
【0045】
図11は、本実施形態の駆動方式において、壁電荷蓄積パルスの時間幅を変化させて、輝度と発光効率を測定したグラフである。測定条件は、サステインパルス幅を0.5μsec、休止期間を0.17μsec、サステイン電圧V
susを130V、壁電荷蓄積パルス幅を1.33μsec〜8.33μsec、すなわち1サステイングループ当たりの時間幅を2μsec〜10μsecの間で変化させた。なお、壁電荷蓄積パルス幅1.33μsec未満ではサステイン放電が生じないので、測定を行っていない。
【0046】
輝度は、壁電荷蓄積パルス幅τ
wall−chargeが長くなるほど高くなっている。壁電荷蓄積パルス幅τ
wall−chargeが長いほど、電極に蓄積される壁電荷量が増え、サステイン放電が強くなるためである。
一方、発光効率は壁電荷蓄積パルス幅τ
wall−charge=1.33μsecで最も高く、壁電荷蓄積パルス幅τ
wall−chargeが長いほど低くなっている。壁電荷蓄積パルス幅τ
wall−chargeが長いほどサステイン放電が強くなり、輝度の増加に比べてサステインパルスにおける消費電力が増え、結果として発光効率が低下する。
以上より、壁電荷蓄積パルス幅は、サステイン放電が生じる最小のパルス幅に設定することで、発光効率が高くなることが判る。
【0047】
図12は、
図9A及び
図9Bと同じ駆動条件で、旧駆動方式、2段パルス駆動方式及び本実施形態の駆動方式における、サステイン電圧V
susに対する輝度の変化を示すグラフである。
図13は、
図9A及び
図9Bと同じ駆動条件で、旧駆動方式、2段パルス駆動方式及び本実施形態の駆動方式における、サステイン電圧V
susに対する発光効率の変化を示すグラフである。
【0048】
図12より、2段パルス駆動方式及び本実施形態の駆動方式の両者共、サステイン電圧V
susが140Vにおいて輝度が最低値を示した。何れの駆動方式も、輝度は
図9A及び
図9Bに示したサステイン放電と壁電荷蓄積放電を合計した1サステイングループ当たりの放電電流量にほぼ比例している。
図13より、発光効率は駆動方式によらず、
図9Aにおいてサステイン放電電流量が最も少ないサステイン電圧V
susにおいて、最大の発光効率を得られることが判る。特に、本実施形態の駆動方式では、
図9A及び
図9B共に現れた、自己消去放電が生じる130V近辺で、電流量が最小になるサステイン電圧V
susの極値が、最大の発光効率を得られる電圧であることが判る。
【0049】
以上、
図9から
図13に至る実験結果により、
・サステイン電圧V
susを、最もサステインパルスによる放電電流量が小さくなる電圧に調整し(
図9A、
図9B、
図12、
図13)、
・壁電荷蓄積パルスのパルス幅を、サステイン放電が生じる最小時間に調整し(
図11)、
・休止期間の時間を、自己消去放電が生じる最小時間に調整する(
図10)
ことで、最大の発光効率を得られるプラズマディスプレイ装置101を実現できることが判る。
【0050】
[第二の実施形態:蛍光灯の全体構成]
第一の実施形態では、プラズマディスプレイ装置101の発光効率を向上させる駆動方式を開示した。この、発光効率を向上させる技術は、プラズマディスプレイ装置101以外の、グロー放電や陽光柱放電等の放電現象による発光を行う装置にそのまま適用できる。陽光柱放電による発光を行う装置の最も身近な例として、蛍光灯に適用した場合の実施形態を説明する。
【0051】
図14は、本発明の第二の実施形態に係る、蛍光灯1401の全体構成を示すブロック図である。
図14のブロック図は、第一の実施形態に係るプラズマディスプレイ装置101のブロック図である
図1及び
図3と、多くの点で共通する。
シーケンサ1402は、プラズマディスプレイ装置101の制御部103に相当する。
第一電源106、第二電源107及び第三電源108は、
図1に開示されるプラズマディスプレイ装置101の第一電源106、第二電源107及び第三電源108と同一である。
スイッチモジュール1403a及び1403bは、
図3に開示されるプラズマディスプレイ装置101のスイッチモジュール301と同一の回路構成である。従って、第一スイッチ部302、第二スイッチ部303、第三スイッチ部304も、
図4の回路構成と同一である。
なお、インバータ式蛍光灯は点灯時にフィラメントを温めるためにフィラメントに大電流を流すシーケンスが必要であり、蛍光管1404のフィラメント同士にはそのためのコンデンサC1405が設けられているが、本実施形態ではその詳細を省略している。
【0052】
従来の蛍光灯1401は、矩形波にて発光駆動されていた。これは、第一の実施形態で説明した、プラズマディスプレイ装置101における旧駆動方式と等しい。
本実施形態の蛍光灯1401は、蛍光管1404のフィラメントに、スイッチモジュール1403a及び1403bから
図5の波形W507及び波形W508の電圧を与えることで、蛍光管1404が従来技術と比べて低消費電力にて発光する。
その際、蛍光管1404に与える電圧は、
図9Aから判るように、旧駆動方式と比べると低い電圧で駆動できることが判る。
フィラメントに与える電圧が従来より低い、ということは、プライミング効果によってフィラメントに塗布されている電子放出物質の蒸散速度が遅くなる。すなわち、蛍光管1404の寿命が伸びる。
【0053】
上述の実施形態の他、以下のような応用例が考えられる。
(1)第一の実施形態ではプラズマディスプレイ装置101に、第二の実施形態では蛍光灯1401に、本発明を適用したが、グロー放電や陽光柱放電等の放電現象によって発光する装置はこれに限られない。例えば低圧放電灯である水銀灯、ナトリウム灯、ネオン管、冷陰極管でもよい。
(2)第二の実施形態の蛍光灯1401や低圧放電灯において、発光効率を最大限にするために、マイコンとセンサを用いて、サステイン電圧V
susと、壁電荷蓄積パルスのパルス幅と、休止期間の時間を調整してもよい。
【0054】
(3)第二の実施形態の蛍光灯1401や低圧放電灯において、一発光周期毎に休止時間を設け、この休止時間を調節することで、調光制御を実現することが考えられる。
図5の例では、時刻t1から時刻t7迄が一発光周期であり、時刻t7と次の周期の時刻t1が一致しているが、時刻t7から次の周期の時刻t1との間に、蛍光管1404の二つのフィラメントが第一電源106、第二電源107及び第三電源108の何れにも接続されていない、休止期間を設ける。この休止期間を長くすれば、蛍光灯1401の輝度を低下させることが可能になる。
【0055】
本実施形態では、プラズマディスプレイ装置101と蛍光灯1401を開示した。
放電発光を行う第一電極と第二電極の内、一方の電極に+Va1、他方の電極に−Vbを印加して、表示放電を引き起こすサステインパルスを与える。次に、第一電極と第二電極の双方に−Vbを印加する、休止期間を設ける。次に、一方の電極に+Va1より高電位の+Va2、他方の電極に−Vbを印加して、次の周期に発生する表示放電に必要な電荷を蓄積するための壁電荷蓄積パルスを与える。この動作を、第一電極と第二電極との間で交互に実行する。サステインパルスと壁電荷蓄積パルスとの間に休止期間を設けることで、放電電流が少なくなり、発光効率が向上し、消費電力を低減できる。また、蛍光灯1401等の、グロー放電や陽光柱放電等の放電現象によって発光する発光装置に適用した場合、蛍光管1404自体に何ら手を加えることなく、蛍光管1404の寿命を伸ばすことが可能になる。
【0056】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
第一の電圧を発生する第一電源と、第一の電圧より高電圧である第二の電圧を発生する第二電源と、第一の電圧及び第二の電圧と対になる低電位の電圧を発生する第三電源とを有する。