【解決手段】半導体装置10は、半導体チッップSCHに熱源素子HSEと感温素子TEを有する。熱源素子HSEの平面視形状は凹型を成し、凹字状の空間部SPの奥行きy1を全体の長さのy0の0.75倍から0.25倍の大きさに設定し、感温素子TEの中心部Tcを連結領域hse3の一辺の近傍に設け、長さy3が長さx31a,長さx31bよりも短くなるように空間部SPに配置する。
熱源素子と感温素子を備えた半導体装置であって、前記熱源素子の平面視形状は、第1の距離x1を有する第1辺(11)と、前記第1辺(11)と同一線上に第2の距離x3離れ前記第1辺(11)から遠ざかる方向に第3の距離x2延びる第2辺(12)と、前記第1辺(11)および前記第2辺(12)の垂直方向に第4の距離y1離れ前記第2の距離x3と同じ長さを有する第3辺(13)と、前記第1辺(11)の一端と前記第3辺(13)の一端を結ぶ第4辺(14)と、前記第2辺(12)の一端と前記第3辺(13)の他端を結ぶ第5辺(15)と、前記第1辺(11)の他端にその一端が接続され前記第4辺(14)が延びる方向と同じであってかつそれよりも長さが長く長さy0で示される第6辺(16)と、前記第2辺(12)の他端に接続されその一端が前記第5辺(15)が延びる方向と同じであってかつそれよりも長い長さy0で示される第7辺(17)と、前記第6辺(16)および前記第7辺(17)の他端同士を結ぶ第8辺(18)を備えており、前記第8辺(18)は長さx0を有しており、前記感温素子は前記第3辺(13)の近傍に配置されていることを特徴する半導体装置。
前記熱源素子および前記感温素子は、前記第1辺,第2辺,第3辺,第4辺および前記第5辺で画定された空間部に配置され、前記熱源素子の平面視上の面積をS1とし、前記空間部の面積をS2としたときに、0.037×S1≦S2≦0.333×S1であることを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記感温素子は熱保護回路の一部を成し、前記熱保護回路は前記感温素子および基準電圧回路に定電流を供給する定電流源と前記基準電圧回路の基準電圧と前記感温素子に生じた電圧を比較するコンパレータを有し、前記熱保護回路は前記空間部に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
半導体チップ内に熱源素子と感温素子を有する半導体装置であって、前記熱源素子は空間部を挟む2つの対向領域と、前記2つの対向領域をつなぐ連結領域を備えて凹字状を成し、前記感温素子は前記連結領域の近傍の前記空間部に配置されていることを特徴とする半導体装置。
前記感温素子の中心部と前記連結領域の中心部との間の距離は、前記感温素子の中心部と前記対向領域の1つの領域の中心部との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
請求項8〜9のいずれか1項に記載の半導体装置を設計するにあたり、前記凹字状の熱源素子を3つの領域に分割すると共にそれら分割した領域および前記空間部の大きさ、形状を決定する第1ステップと、前記第1ステップで決定した前記熱源素子および前記空間部の熱分布シミュレーションを実行する第2ステップと、前記第2ステップで実行したシミュレーション結果を分析する第3ステップと、前記第3ステップで得られたシミュレーション結果に基づき前記3つの領域と前記空間部の大きさを決定する第4ステップを有することを特徴とする半導体装置の設計方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明にかかる半導体装置の概略図を示す。半導体装置10は基板がシリコンの半導体チップSCHに熱源素子HSE、感温素子TEが作り込まれている。本発明での熱源素子HSEの中にはボルテージレギュレータ、DC/DCコンバータなどに用いられる出力トランジスタ、パワートランジスタなど発熱の源となるバイポータトランジスタ、MISトランジスタなどが含まれる。また、感温素子TEの中には熱源素子HSEの温度を監視するために設けられるいわゆる温度センサーの機能を有する半導体素子、とりわけトランジスタ、ダイオード、抵抗などが含まれる。
【0016】
熱源素子HSEの平面視形状は凹字状に形成される。熱源素子HSEは比較的面積の大きな対向領域hse1,hse2と、比較的面積の小さな連結領域hse3で構成される。対向領域hse1と対向領域hse2の面積はほぼ同じである。対向領域hse1の面積は、方向Xおよび方向Yにそれぞれに延びる長さx1および長さy0の積で表される。対向領域hse2の面積は、方向Xおよび方向Yにそれぞれに延びる長さx2および長さy0の積で表される。長さx1と長さx2とを同じに大きさに設定すれば対向領域hse1と対向領域hse2の面積は同じになる。通常、両者の面積は同じになるように設定されるが、熱源素子HSEの周囲に配置される各種の半導体素子やボンディングパッドの位置、各半導体素子同士を結ぶ配線などの都合上、両者の面積が異なる場合も起こりうる。
【0017】
連結領域hse3の面積は、方向Xおよび方向Yにそれぞれに延びる長さx3および長さy2の積で表される。連結領域hse3は、対向領域hse1と対向領域hse2との中間に位置し、2つの対向領域hse1,hse2を連結する。連結領域hse3を対向領域hse1と対向領域hse2との間に設けてできる空間部SPに熱保護回路TSDが配置される。温度センサーとしての機能を有する感温素子TEは熱保護回路TSDの1つである。感温素子TEの中心部Tcから連結領域hse3の一辺までの距離y3は、感温素子TEの中心部Tcから対向領域hse1,hse2までの最短距離x31a,x31bよりも短くなるように設定する。なぜならば、感温素子TE全体へは、対向領域hse1と対向領域hse2と連結領域hse3の3方向から熱が伝導されるが、連結領域hse3の反対側には熱源素子HSEが存在していないため、方向Yでの熱伝導が、方向Xでの熱伝導に比べて弱くなるからである。このため、連結領域hse3の熱伝導を強くするために連結領域hse3の一辺と感温素子TEの中心部Tcとの距離を短くする。なお、さらに好ましいことは、連結領域hse3の中心部から感温素子TEの中心部Tcまでの距離は、対向領域hse1,hse2の中心部から感温素子TEの中心部Tcまでの距離よりも短くすることである。なぜならば、連結領域hse3および対向領域hse1,hse2の中心部が最も温度が高いと推測できるからであり、連結領域hse3の中心部から感温素子TEの中心部Tcまでの距離を短くして連結領域hse3から感温素子TEへの熱伝導を大きくしかつ迅速に行うためである。
【0018】
ここで熱源素子HSEの方向Yでの長さy0を一定とすると、連結領域hse3の面積と空間部SPのそれとは逆比例の関係に置かれる。すなわち、長さy1を大きくすれば長さy2は小さくなり、逆に長さy2を大きくすれば長さy1は小さくなる。本発明では空間部SPに関わる長さy1を連結領域hse3に関わる長さy2よりも優先して決定する。なぜならば、熱保護回路TSDを配置させるために空間部SPの大きさを十分に確保するためである。空間部SPの大きさを優先して長さy1を決定すると連結領域hse3の面積の大きさに影響を与える。しかし、一方では連結領域hse3の大きさには感温素子TEに熱を伝導する働きが要求されているため所定以上の面積が必要であるので長さy1を優先させるには限界が生じる。
【0019】
空間部SPの間口の大きさ、すなわち長さx3の大きさは熱保護回路TSDを配置するためにも所定の大きさが必要となる。これに加えて、空間部SPの奥行き、すなわち長さy1の大きさには熱保護回路TSDを配置するために十分な長さ、面積が確保できることに加え、連結領域hse3から感温素子TEに熱を十分に伝導させに十分な大きさが要求される。本発明で行った種々の熱分布シミュレーションによれば、長さy0と長さy1との関係は、0.25≦y1/y0≦0.75であることが好ましいことを知見した。したがって、y1/y0=0.25に設定したときには、y2/y0=0.75となり、y1/y0=0.75に設定したときには、y2/y0=0.25となる。こうした数値の出所の根拠については後述する。なお、長さy0,y1,y2の具体的な大きさは、たとえば、y0=350μm、y1=y2=175μmであり、これらの大きさは熱源素子HSEに許容される電流、電力などで決定される。
【0020】
熱源素子HSEおよび空間部SPの方向Xでの大きさ、長さx1,x2,x3の設定も基本的には長さy1,y2を決定したのとほぼ同じ理由で決定される。すなわち、長さx0,x1,x2は熱源素子HSEに許容される電流、電力などから決定される。たとえば、長さx1=x2=250μm、長さx3=140μmに設定される。なお、長さx1,x2の大きさを決定するにあたっては、熱保護回路TSDの収容スペースを確保するという観点ではなく、熱源素子HSEに要求される電流、電力の大きさから決定されることが多い。
【0021】
本発明で行った種々の熱分布シミュレーションによれば、長さx0,x1,x2およびx3の長さの関係は、x3≦x1=x2≦3×x3の関係であることが好ましいことを知見した。したがって、たとえば長さx3=140μmとすると、140μm≦x1=x2≦420μmとなる。
【0022】
半導体チップSCHの中には熱源素子HSE、熱保護回路TSDの他にその他回路OCが作り込まれている。その他回路OCは、たとえば、半導体装置10がLDO(Low Drop Out)レギュレータを有するのであれば、基準電圧源、出力トランジスタ(熱源素子HSE)を駆動するドライバおよび各種制御回路などを含むものとなる。
【0023】
図2は
図1に示した熱源素子HSEおよび感温素子TEの配置を示し、特に熱源素子HSE、感温素子TEを含む過熱保護回路TSDの位置関係を拡大した図である。なお、これらの位置関係を詳しく説明するために、
図1よりは参照符号を多く付している。以下参照符号を用いて
図2について説明する。
【0024】
図2において熱源素子HSEは凹字状を成す。凹字状を形成するために、熱源素子HSEは、第1辺11、第2辺12、第3辺13、第4辺14、第5辺15、第6辺16、第7辺17、および第8辺18で構成される。第1辺11と第2辺12は同一線上に長さx3離れて配置され、それらの長さx1と長さx2はほぼ同じである。第2辺12は第1辺11の延びる方向から遠ざかる方向に延びる。第3辺13は、第1辺11および第2辺12のほぼ垂直方向に長さy1離れ、その長さはほぼ長さx3に等しい。第4辺14は端部aから端部bまで延び、その長さはほぼ長さy1に等しい。第5辺15は端部cから端部dまで延び、その長さはy1にほぼ等しい。第6辺16は第4辺14と並行させるがそれよりは長さは長く、端部gから端部hまで延びその長さはy0で示される。第7辺17は第5辺15と並行させるがそれよりは長さは長く、端部eから端部fまで延びその長さはy0で示される。第8辺18は、第1辺11、第2辺12、第3辺13とほぼ並行し、端部fから端部gまで延び、その長さはx0で示される。長さx0は長さx1,x2およびx3を加えた長さに等しい。
【0025】
熱源素子HSEは説明の便宜上および後述する熱分布シミュレーションの都合上、対向領域hse1,hse2および連結領域hse3の3つに分けている。なお、
図2に示した一実施形態では対向領域が2つであり連結領域が1つになるように第4辺14および第5辺15を延長させて分割させたが、第3辺13を方向Xに延長させて分割するようにしてもかまわない。こうした構成下であっても熱源素子HSEは空間部SPを挟む2つの対向領域と、その2つの対向領域をつなぐ1つの連結領域で形成されることになる。
【0026】
図2において、対向領域hse1,hse2の中心部を示すポイントP1は熱源素子HSEの中でも最も温度が高い箇所であると推測される。連結領域hse3の中心部はポイントP2で示されるが、このポイントP2も連結領域hse3が所定以上の大きさであればポイントP1と同等の温度に置かれていると推測できる。連結領域hse3の一辺すなわち第3辺13の中心部はポイントP3で示される。ポイントP3は、熱源素子HSEの中で最も感温素子の中心部Tcに近い箇所である。ポイントP4は感温素子TEの中心部Tcと同じである。ポイントP4での温度検知値が熱源素子HSEの温度を推測する上で極めて重要となる。ポイントP5は、空間部SPの間口にあたり、空間部SPの中では最も温度が低いと推測できる箇所である。したがって、このポイントP5の温度を検知することは熱保護回路TSD全体の熱分布および熱勾配を把握する上で極めて有用である。
【0027】
空間部SPの大きさと形状は、対向領域hse1,hse2および連結領域hse3で画定される。空間部SPの間口は長さx3で、奥行きは長さy1でそれぞれ示される。空間部SPの中に熱保護回路TSDが配置される。特に感温素子TEの中心部Tcと第3辺13との最短距離y3は、中心部Tc(ポイントP4)と第4辺14との最短距離x31a、中心部Tcと第5辺15との最短距離x31bよりも短くなるように設定される。また、連結領域hse3の中心部であるポイントP2と中心部Tc(ポイントP4)との距離は、対向領域hse1の中心部であるポイントP1と中心部Tc(ポイントP4)との距離よりも短くなるように設定されている。すなわち、感温素子TEを挟む連結領域hse3の反対側には熱源となる半導体素子が存在していないため、方向Yにおける熱伝導が方向Xに比べて弱くなるが、上記の構成によってこうした不具合の程度を低減させることができる。
【0028】
図2には空間部SPと連結領域hse3とはほぼ同じ大きさのものを示した。すなわち、長さy0,y1,y2の間には、比率y1/y0=0.5、比率y2/y0=0.5とし、長さy1と長さy2を同じ長さとした。また、空間部SPの間口すなわち長さx3は長さx1,x2のほぼ1/2としたものである。こうした構成では連結領域hse3の面積が占める比率は、対向領域hse1,hse2の1/8(12.5%)となる。また、空間部SPの面積と熱源素子HSEの面積との比率はほぼ1/9(11.1%)となる。
【0029】
また
図2に示した構成下では、対向領域hse1と対向領域hse2の中心部であるポイントP1同士を結ぶ線分P1−P1上に第3辺13を配置させ、感温素子TEを線分P1−P1上から少し離したものを示した。しかし、比率y1/y0=0.5をたとえば少し大きくしてたとえば0.55に設定し、感温素子TEを線分P1−P1上に配置するようにしてもよい。
【0030】
図3は
図2の変形例の1つを示す。
図3が
図2と異なる箇所は、空間部SPの奥行き、すなわち長さy1の長さy0に占める比率を大きくしたものである。なお、
図3は長さy0と長さy1との比率y1/y0=0.75に設定したものを模式的に示している。比率y1/y0を大きくすると空間部SPの面積は大きくなる。一方、連結領域hse3の面積は小さくなる。熱保護回路TSDの回路規模が大きくなってくるにつれ、空間部SPの面積を大きく取ることになる。しかし連結領域hse3が小さくなるにつれ連結領域hse3から感温素子TEに伝導される熱量が弱くなる。併せて対向領域hse1,hse2の中心部であるポイントP1と連結領域hse3の中心部であるポイントP2との温度差は拡がることが推測される。したがって、連結領域hse3の面積を小さくすることは、感温素子TEの温度検知感度を低下させることになり好ましいとは言いがたい。
【0031】
空間部SPの面積の大小に関わらず感温素子TEの中心部Tc(ポイントP4)と連結領域hse3との最短距離y3は中心部Tcと対向領域hse1,hse2の最短距離x31a,x31bよりも短くする。さらに中心部TcとポイントP2との距離は、中心部TcとポイントP1との距離よりも短くする。これによって、連結領域hse3と対向領域hse1,hse2との相対的な熱伝導の強度を補正することができる。
【0032】
長さy1と長さy0との比率y1/y0=0.75に設定したときには、空間部SPの奥行きは大きくなるが、連結領域hse3の長さy2と長さy0との比率y2/y0=0.25となり連結領域hse3の面積は減少する。
【0033】
図4は
図2の変形例のもう1つを示す。
図4が
図2、
図3と異なる箇所は、空間部SPの奥行き、すなわち長さy1の長さy0に占める比率を小さくしたことである。なお、
図4は長さy0と長さy1との比率y1/y0=0.25に設定したものを模式的に示している。比率y1/y0を小さくすると空間部SPの面積は小さくなる。一方、連結領域hse3の面積は大きくなる。熱保護回路TSDの回路規模が小さくなってくるにつれ、空間部SPの面積は小さくて済むようになる。しかし必要以上に小さくすると熱保護回路TSDを十分に空間部SPの中に配置することができなくなる。一般的に連結領域hse3を大きくすることは熱伝導の観点では何ら支障が生じないものと推測できる。一方、連結領域hse3の中心部であるポイントP2から感温素子TEの中心部Tc(ポイントP4)までの距離は長くなるので、連結領域hse3からの熱伝導効率は低下することも推測することができる。
【0034】
図4においても、空間部SPの面積の大小に関わらず感温素子TEの中心部Tc(ポイントP4)と連結領域hse3との最短距離y3は中心部Tcと対向領域hse1,hse2の最短距離x31a,x31bよりも短くする。さらに中心部TcとポイントP2との距離は、中心部TcとポイントP1との距離よりも短くする。これによって、連結領域hse3の対向領域hse1,hse2との相対的な熱伝導の強度の低下を抑制する。
【0035】
長さy1と長さy0との比率y1/y0=0.25に設定したときには、空間部SPの奥行きは小さくなるが、連結領域hse3の長さy2と長さ/y0との比率y2/y0=0.75と成り連結領域hse3の面積は増加する。
【0036】
図5は、
図1〜
図4に示した凹字状の熱源素子HSEおよび空間部SPの熱分布シミュレーション結果を示す。なお、シミュレーションにあたっては凹字状の熱源素子HSEを3つに分割して行った。分割方向は
図1、
図2に示したように方向Xに添い、対向領域hse10,hse20および連結領域hse30の3つとした。なお、こうした分割方向とは別に方向Yに添って、比較的面積が小さな連結領域が2つと、比較的面積の大きな対向領域が1つの、合わせて3つの領域に分割してもかまわない。いずれにしても本発明の熱分布シミュレーションは凹字状を2つの対向領域と1つの連結領域に分割することが特徴の1つである。
【0037】
熱分布解析のシミュレーションにはCAE(Computer Aided Engineering)を用いた。また、熱分布のシミュレーションにあたっては、半導体装置10の半導体チップSCHの大きさ、熱源素子HSEの大きさはもちろんのこと、半導体装置10が実装されるリードフレーム、ダイスボンディング材、ワイヤー、封止樹脂などのいわゆる構成材料の熱伝導率[W/m・℃]、密度[kg/m
3]、比熱[J/kg・℃]の定数値を基にして求めた。
【0038】
本発明での熱分布シミュレーションでは半導体チップSCHはシリコンとし、その大きさは、たとえば1.0mm×1.0〜1.4mm×1.4mmの範囲である。熱源素子HSEの面積は半導体チップSCH全体の面積の9%〜33%とした。
【0039】
図5(A)〜(C)において、対向領域hse10,hse20の長さx10,x20はたとえば250μmとし、長さy0はいずれも350μmとした。連結領域hse30の長さx30は110μmとし、連結領域hse30と対向領域hse10,hse20との間に大きさ15μmの距離(分離幅)を採り、連結領域hse30と対向領域hse10との間および連結領域hse30と対向領域hse20とを互いに分離させ、かつ対向領域hse10,hse20も互いに分離されるように構成した。
【0040】
図5(A)〜(C)のそれぞれは、長さy1および長さy2が異なる。なお、
図5(A)〜(C)はいずれも長さy1と長さy2を加えた長さy0は一定とした。
【0041】
本発明にかかる熱分布シミュレーションを行うにあたっては、半導体チップSCHの最高温度が250℃になるように熱源素子HSEでの消費電力を調整した。具体的には熱源素子HSEに30Wの電力を印加した。なお、最高温度の250℃は、この種の半導体装置で許容されるものではないが、シミュレーションの1つとして行ったものである。また、熱源素子HSEに印加した30Wの消費電力も通常の使用状態からは逸脱することになる。しかし、こうした通常の使用状態から大きく外れた条件下で行うシミュレーションは予想外の状態を予見させ、また実際の熱分布の具体的な値を推測するにも好適であると思料する。
【0042】
図5(A)は、長さy1と長さy2を同じ長さに設定した場合を模式的に示す。長さy1と長さy2を同じ長さとした場合には、空間部SPの面積はほぼ連結領域hse30と同じになる。こうした構成下では、対向領域hse10,hse20の中心部であるポイントP1と連結領域hse30の中心部であるポイントP2の温度は共に250℃であり、両者の差はなかった。連結領域hse30の一部で感温素子TE(図示せず)と対向するポイントP3での温度は230℃前後であり、感温素子TEの中心部であるポイントP4の温度は200℃前後であった。空間部SPの端にあたるポイントP5では温度が150℃前後であった。したがって、最も温度が高いポイントP1,P2とポイントP5との温度差は100℃前後であること、また空間部SPの端から端までの温度差は80℃前後であった。このことは空間部SPに熱保護回路TSDを配置したとき、空間部SPのポイントP3とポイントP5に配置された素子同士にほぼ80℃の温度差が生じていることになる。なお、80℃という温度差はポイントP1,P2の温度が250℃に達したときの大きさであり、たとえばポイントP1,P2の許容温度が仮に150℃とすると、先の温度差80℃は50℃前後であると推測される。
【0043】
図5(B)は、
図5(A)よりも空間部SPの面積を大きくし、逆に連結領域hse30の面積を小さくした場合を模式的に示す。具体的には長さy1を長さy0の2/3(67%)とし、連結領域hse30の長さy2を長さy0の1/3(33%)とした場合である。こうした構成下では、ポイントP1の温度が250℃であるとき、連結領域hse30の中心部であるポイントP2の温度はそれより少し低く240℃前後であった。またポイントP3の温度は220℃前後であり、ポイントP4の温度は210℃前後であった。ポイントP3,P4の温度分布は
図5(A)のものと大きくは変わらなかった。
【0044】
図5(B)において、ポイントP3,P4の温度分布が
図5(A)と大きく変わらなかった理由は、これらのポイントでは対向領域hse10,hse20、および連結領域hse30からの熱伝導が互いに絡み合うが、対向領域hse10,hse20の支配力が連結領域hse30に比べて強いからであると推測される。ポイントP5の温度は140℃前後であり、
図5(A)のものとは大きな差は見られなかった。この理由は、ポイントP5の箇所では対向領域hse10,hse20の中心部であるポイントP1および連結領域hse30の中心部であるポイントP2から遠ざかっているため熱伝導の支配力が弱いからであると推測される。
【0045】
図5(C)は、
図5(B)よりも空間部SPの面積をさらに大きくし、逆に連結領域hse30の面積を小さくした場合を模式的に示す。具体的には長さy1を長さy0の9/10とし、連結領域hse30の長さy2を長さy0の1/10とした場合である。こうした構成下では、ポイントP1,P2の温度が250℃であるとき、連結領域hse30の中心部であるポイントP2およびポイントP3の温度は200℃前後であった。またポイントP4すなわち感温素子TEの中心部Tcの温度は190℃前後であり、
図5(B)よりも20℃程度低かった。いずれにしても感温素子TEの中心部Tcの温度は最高温度の250℃とは60℃前後異なり、温度検知感度が
図5(A),(B)に比べて低下することが分かった。温度検知感度が低下する理由は、連結領域hse30の面積(体積)が小さくなり感温素子TEまでの熱伝導力が弱くなったこと、および対向領域hse10,hse20の中心部であるポイントP1から感温素子TEまでの距離が遠ざかっていることによるものと推測される。
【0046】
図6は
図5と同様に
図1〜
図4に示した凹字状の熱源素子HSEの熱分布シミュレーション結果を示す。熱源素子HSE全体に印加する電力は
図5のものと同様に30Wとして見た。
【0047】
図6(A)〜(C)において、対向領域hse12,hse22の長さx12および長さx22はいずれも330μm、長さy0は350μm、連結領域hse32の長さx32=110μmとし、連結領域hse32と対向領域hse12,hse22との間に15μmの距離を取り、連結領域hse32と対向領域hse12との間および連結領域hse32と対向領域hse22とを互いに分離させ、かつ対向領域hse12,hse22も互いに分離されるように構成した。したがって、
図6(A)〜(C)は、対向領域hse12,hse22の長さx12,x22を連結領域hse32の長さx32の3倍としたものである。この3倍の大きさは
図5に示したほぼ2倍のものと相違する。
【0048】
図6(A)〜(C)のそれぞれは、長さy1およびy2が異なる。なお、
図6(A)〜(C)は
図5と同様に、いずれも長さy1と長さy2を加えた長さy0は一定とした。
【0049】
図6(A)は、空間部SPの面積を比較的小さく取った場合である。長さy1と長さy0との比率はy1/y0=0.25とし、長さy2と長さy0との比率はy2/y0=0.75とした。こうした構成下で熱源素子HSEおよび空間部SPの熱分布シミュレーションを実施して見ると、ポイントP1の温度が最も高い250℃であるとき,ポイントP2の温度も250℃であった。このとき、ポイントP3は240℃前後であり、感温素子TEの中心部TcであるポイントP4の温度は220℃前後であった。またポイントP5の温度は210℃前後であり、ポイントP1の温度とは40℃前後の温度差があり、
図5のものとは大きな差が生じていることが分かった。
【0050】
図6(B)は、空間部SPの面積を
図6(A)のものよりもさらに大きくした場合である。長さy1と長さy0との比率をy1/y0=0.5とし、長さy2と長さy0との比率y2/y0=0.5とした。こうした構成下で熱源素子HSEおよび空間部SPの熱分布をシミュレーションした結果、ポイントP1の温度が最も高い250℃であるとき,ポイントP2の温度も250℃であった。このとき、ポイントP3の温度は240℃前後であり、ポイントP4のそれは230℃前後であった。したがって、感温素子TEの中心部TcであるポイントP4の温度はポイントP1の温度よりも20℃前後低かった。また、ポイントP5の温度は200℃前後であった。
【0051】
図6(B)の構成下では空間部SPの面積と連結領域hse32の面積がほぼ等しく設定される。このときポイントP1からポイントP4までの距離すなわち対向領域hse12,hse22の中心部から感温素子TEの中心部(ポイントP4)までの距離が最短距離となる。この最短距離は
図6(A)に示したそれよりも短い。このため最も温度の高い熱が感温素子TEまで効率よく伝導されるため、空間部SPの一部まで高い温度に保持されるものと推測される。
【0052】
図6(C)は、空間部SPの面積を
図6(B)のものよりもさらに大きくした場合である。長さy1と長さy0との比率をy1/y0=0.75とし、長さy2と長さy0との比率はy2/y0=0.25とした。こうした構成下で熱源素子HSEおよび空間部SPの熱分布をシミュレーションした結果、ポイントP1の温度が最も高い250℃であるとき,ポイントP2の温度は240℃前後であった。このとき、ポイントP3およびポイントP4の温度は230℃前後であった。すなわち感温素子TEの中心部TcであるポイントP4の温度は最高温度とは20℃前後の温度差が見られた。したがって、
図6(B)に比べると、熱源素子HSEの最高温度と感温素子TEが検知する温度の温度差はほぼ同じであった。
【0053】
図6に示した熱源素子HSEの構造は
図5に示したものと同様に凹字状を2つの対向領域と1つの連結領域の3つの部分に分割したものである。なお、
図6に示した分割構造とは異なるように、たとえば
図2に示した第3辺13を、第6辺16および第7辺17に接するまで延長させて3つの領域すなわち2つの対向領域と1つの連結領域に分割してシミュレーションを行ってもよい。こうした構成下においても2つの対向領域は空間部SPを挟んで配置され、連結領域はこれら2つの対向領域を連結するように形成される。
【0054】
図7は、
図5に示した熱分布シミュレーション結果を別の視点で表した温度勾配図である。
図7の横軸にはポイントP1からポイント5を示し、その縦軸は最高温度すなわちポイントP1との温度差を示す。熱分布のパラメータとしては空間部SPの奥行き、すなわち比率y1/y0を示し、y1/y0=0.90、y1/y0=0.67、y1/y0=0.50の3つを採っている。
【0055】
図7においてポイントP1は対向領域hse10,hse20の中心部を示す。ポイントP1は各パラメータに関わらず温度は250℃前後であることが分かった。
【0056】
ポイントP2は連結領域hse30の中心部にあたるが、ポイントP2の温度はポイントP1のそれとは少し異なり、最も温度差が小さかったのは比率y1/y0=0.5のときであり、そのときの温度差は0℃であり、ポイントP1と同じ温度であった。最も温度差が大きかったのは比率y1/y0=0.9のときであり、空間部SPの面積が今回のシミュレーションで最も大きく設定され、連結領域hse30が最も小さく設定されたときである。このときのポイントP2の温度はポイントP1よりも50℃前後低かった。
【0057】
ポイントP3は連結領域hse30の一辺の一部にあたる。すなわち、空間部SPの奥行きの端部にあたり空間部SPの中では最も温度が高くなると推測できる箇所である。ポイントP3での温度差はポイントP2と同様に比率y1/y0=0.5が最も小さく温度差は20℃前後であった。次に小さかったのは比率y1/y0=0.67であり、最も温度差が大きかったのは比率y1/y0=0.9のときであり、そのときの温度差は50℃前後であった。
【0058】
ポイントP4は感温素子TEの中心部Tcにあたる。ポイントP4はポイントP3から30μm〜60μm離れているが、ポイントP3の温度よりも20℃前後低かった。しかし比率y1/y0=0.5と比率y1/y0=0.67との温度差に大きな差異は見られなかった。しかし、比率y1/y0=0.9ではそれらと20℃前後の差が生じていた。しかし、ポイントP4の温度差はポイントP3に比べると縮小されていた。
【0059】
ポイントP5は空間部SPのいわゆる間口にあたり空間部の中では最も温度が低い箇所であると推測できるが、シミュレーション結果ではy1/y0は0.5〜0.9の範囲で最高温度と110℃前後の差が生じていた。しかし、ポイントP5の温度差はポイントP2に比べると縮小されていた。なお、
図7に示した特性から言えることは、y1/y0は、0.67〜0.5の範囲では各ポイントでの温度に大きな差は見られなかったことである。なお、比率y1/y0=0.5未満についてのシミュレーションは行っていないが、比率y1/y0=0.67とほぼ同じ特性になるものと推測される。
【0060】
図8は、
図6に示した熱分布シミュレーション結果を別の視点で表した温度勾配図である。
図8の横軸にはポイントP1からポイント5を示し、その縦軸は最高温度すなわちポイントP1との温度差を示す。熱分布パラメータとしては空間部SPの奥行き、すなわち比率y1/y0を示す。比率y1/y0=0.75、y1/y0=0.50、y1/y0=0.25の3つを採っている。
【0061】
図8においてポイントP1は対向領域hse12,hse22の中心部を示す。ポイントP1は各パラメータに関わらず温度はほぼ250℃であった。
図8に示す特性は、
図7に示したものよりは温度差が小さくなり、好ましい結果が得られた。また、空間部SPの奥行きを変えたときの各ポイントの温度は
図7のものとほぼ傾向を示すことが分かった。すなわち、比率y1/y0=0.5のときに最も温度差が小さく、それ以上であってもそれ以下であってもポイントP1と各ポイントの温度差は大きくなる傾向が見られた。しかし
図8は
図7に比べると各ポイントの温度差は縮小され、それらの絶対値はほぼ1/2まで縮小されることが分かった。
【0062】
ポイントP2は連結領域hse32の中心部であるが、ポイントP2の温度は比率y1/y0の大きさに関わらずほぼ同じであり、しかも最高温度の250℃とほぼ同じであった。
【0063】
ポイントP3は連結領域hse32の一辺の一部にあたる。すなわち、空間部SPの奥行きの端部にあたり空間部SPの中では最も温度が高くなると推測できる箇所である。ポイントP3での温度差は空間部SPの奥行きの大きさに関わらずほぼ同じであり、240℃前後であった。
【0064】
ポイントP4は感温素子TEの中心部Tcにあたる。ポイントP4はポイントP3から30μm〜60μm離れているが、ポイントP3の温度よりも10℃前後低かった。y1/y0=0.5と、y1/y0=0.25、y1/y0=0.75との温度差は10℃前後であり、その差はポイントP3とほぼ同じであった。
【0065】
ポイントP5は空間部SPの間口にあたり空間部の中では最も温度が低い箇所であると推測できるがシミュレーション結果では、0.25≦y1/y0≦0.75の範囲で最高温度より50℃前後低かった。しかしポイントP5の温度は
図7に比べると、その温度差はほぼ1/2となり、ポイントP1との温度差は大幅に縮小されていた。
【0066】
図8についてまとめると次のとおりである。すなわち、対向領域hse12,hse22の面積(体積)を連結領域hse32のそれよりも大きくすることによって、空間部SP内での温度勾配は小さくなり、感温素子TEを配置するには好ましくなるということである。
【0067】
図9は
図7〜
図8に示したポイントP4の温度、とりわけ最高温度250℃との温度差をプロットした温度勾配図である。ポイントP4は言うまでもなく、感温素子TEの中心部Tcにあたり、熱源素子HSEの温度を監視するために特に重要な箇所である。すなわち、ポイントP4の温度がポイントP1の温度に近ければ近いほど温度検知感度を高めることができる。
【0068】
図9は2つのパラメータでプロットしている。1つは、
図5に示した連結領域hse30の方向Xの長さx30と長さx10(x20)の比率すなわち、x10(x20)/x30=2とした場合である。もう1つは
図6に示した方向Xの長さx32と長さx12(x22)との比率すなわちで、x12(x22)/x32=3とした場合である。簡約すれば、対向領域の幅を連結領域のそれの2倍にしたときと3倍にしたときの温度検知感度の比較である。
【0069】
図9から明らかになることは、対向領域の幅を連結領域のそれよりも大きくすると温度差は小さくなり温度検知感度が高くなるということである。こうした傾向は、空間部SPの奥行きを示す比率(y1/y0)に関わらず同じ傾向を示した。たとえば、比率y1/y0=0.5であるとき、幅が3倍のときの温度差は20℃前後であったが幅を2倍にしたときの温度差は40℃前後となり、両者にはほぼ2倍の温度差が見られた。
【0070】
また
図9から明らかになることは、空間部SPの奥行きの比率を示す、y1/y0の大きさは比率y1/y0=0.5の近傍が良く、好ましい範囲はたとえば0.25〜0.75であった。
【0071】
図9には、対向領域hse10,hse20,hse12,hse22の幅が連結領域hse30,hse32の2倍または3倍の比率である場合を示した。しかし、本発明では2倍、3倍だけではなく、1倍すなわち対向領域の幅と連結領域の幅が同じであっても同等の効果が奏されると類推される。ここで再度、
図5(A)〜(C)を参照するが、
図5(C)から分かるように、空間部SPへの熱伝導は対向領域hse10,hse20の中心部(ポイントP1)から遠く離れているため十分ではない。しかし、連結領域hse30の面積が大きくなり、
図5(A)に示すようにある程度大きくなると空間部SPの温度は上昇していることが分かる。こうした状態は、見方を変えると空間部SPへの熱伝導は連結領域hse30が支配的になっているということである。このときの連結領域hse30の幅は対向領域hse10,hse20の1/2である。してみれば、対向領域hse10,hse20の幅を連結領域hse30と同じにしても同等の効果が奏されると解することができる。
【0072】
本発明の半導体装置10は熱源素子HSEを凹字状に構成し、かつ所定の大きさの空間部SPを設けるにあたっては、2つの対向領域と1つの連結領域に分類して3つの領域に分割する。その後、熱源素子HSEに所定の消費電力を印加し、かつ最高温度を監視、管理して熱源素子HSEおよび空間部SPの熱分布や熱勾配のシミュレーションを行う。その後シミュレーション結果を分析する。分析は熱源素子HSEの最高温度、感温素子TEの温度分布、空間部SPの熱分布と熱勾配について吟味する。その後、分析結果に基づき、空間部SPに熱保護回路TSDを配置するに必要な面積を決め、最終的に熱源素子HSEと空間部SPの形状と大きさを決定する。こうした各ステップに基づき、熱源素子HSEに要求される面積と熱保護回路TSDの機能を発揮するに好適な半導体装置10を設計するとよい。
【0073】
図10は、熱源素子HSEでの消費電力と温度検知感度との関係を示すシミュレーション図である。すなわち、熱源素子HSEでの消費電力を変えたときのポイントP1とポイントP4すなわち感温素子TEの中心部Tcとの温度差を示した熱分布シミュレーション結果を示す。パラメータとしては
図5に示したように、対向領域hse10,hse20の横幅x10,x20を連結領域30の横幅x30の2倍としたものと、
図6に示したように対向領域hse12,hse22の横幅x12,x22を連結領域32の横幅x32の3倍とした2通りである。このとき両者とも、長さy1/y0およびy2/y0の大きさはそれぞれy1/y0=0.5、y2/y0=0.5とし、空間部SPと連結領域hse30(hse32)の大きさがほぼ同じ場合である。
【0074】
さて、これまで説明してきた
図5〜
図9は熱源素子HSEでの消費電力が30Wの場合であった。
図10はこの30Wの消費電力と、60Wの消費電力のときの熱分布シミュレーション結果から得られる特性図であり、横軸に消費電力を、縦軸に温度差をそれぞれ示す。
【0075】
温度差は、横幅が2倍の場合すなわちx10(x20)/x30=2に設定したときには、消費電力が30Wの場合、ポイントP1とポイントP4との温度差は44℃であった。同条件で、消費電力を60Wに増大すると、両者の温度差は88℃まで拡がった。
【0076】
また、温度差は、横幅が3倍の場合すなわちx12(x22)/x32=3に設定したときには、消費電力が30Wの場合は、ポイントP1とポイントP4とのは22℃であった。同条件で、消費電力を60Wに増大させると、両者の温度差は48℃まで拡がった。しかし、横幅を3倍にした場合には2倍のものに比べて、ポイントP1とポイントP4との温度差は大幅に縮小することが分かった。このことは感温素子TEの温度検知感度を示すバロメータとして、対向領域(x10,x20,x12,x22)の横幅と連結領域(hse30,hse32)の横幅との比率が大きく関わっていることを示唆している。
【0077】
図10に示した熱分布シミュレーション結果は、この種の半導体装置、半導体集積回路装置を設計、製造する上で極めて有用である。なぜならば、熱源素子HSEで消費する広範囲の消費電力に対する感温素子TEの温度検知感度を類推することができるからである。
【0078】
図10を参照すると、たとえば、熱源素子HSEの消費電力が5Wのときの感温素子TEの温度検知感度を推測することができる。対向領域の横幅が連結領域の2倍であるときの温度差は8℃前後であり、横幅の比率が3倍であるときには4℃前後であることがわかる。したがって、熱源素子HSEの消費電力が5Wの場合には感温素子TEの検知感度は10℃以下であることが分かる。また、消費電力が10Wであるときには、それぞれ16℃前後,8℃前後であることが分かる。
【0079】
図10に示した特性図は、半導体装置10が実装されるリードフレーム、ダイスボンディング材、ワイヤー、樹脂などのいわゆる構成材料の熱伝導率[W/m・℃]、密度[kg/m
3]、比熱[J/kg・℃]等によって違ったものになるので幾つかの組み合わせをあらかじめ用意しておけば半導体装置10の設計期間の短縮、製品品質の向上化が図れる。
【0080】
図11は熱源素子HSEの面積と空間部SPのそれとの面積比率示す。
図2で説明した空間部SPの間口(長さx3)と奥行き(長さy1)の大きさと、対向領域hse1,hse2の幅(長さx1,x2)をパラメータにして求めた図である。
【0081】
図11において、たとえば、x1(x2)/x3=2、y1/y0=0.50の場合には、空間部SPの面積は熱源素子HSEの面積の1/9(=0.11)となり、面積比率は11.1%となる。このケースに当てはまるのが
図5(A)である。また、x1(x2)/x3=3、y1/y0=0.50の場合には空間部SPの面積は熱源素子の1/13となり、面積比率は7.7%となる。このケースに当てはまるのが
図6(B)である。また、これまでの図には示していないが、x1(x2)/x3=1、y1/y0=0.75の場合には空間部SPの面積は熱源素子HSEの面積の1/3となり、面積比率は33.3%となる。本発明では空間部SPの面積の熱源素子HSEに占める面積比率は
図11に示した3.7%〜33.3%の範囲である場合が多くなる。すなわち、熱源素子HSEおよび空間部SPの平面視形状の面積をそれぞれS1,S2とすると、S2は、おおよそ、0.037×S1〜0.333×S1の範囲になる。
【0082】
図12は、空間部SPに配置される熱保護回路TSDの具体的な回路構成の一例を示す。熱保護回路TSDは従前よく知られたものである。熱保護回路TSDは、感温素子TEの他にたとえば、定電流源CC1,CC2、抵抗R1,R2、トランジスタQ、コンパレータCOM、インバータINVを有する。感温素子TEはたとえばトランジスタをダイオード接続したものを用いる。感温素子TEがたとえばダイオードであるときダイオードの順方向電圧は温度変化に対してたとえば−2mVの温度係数を有しているので、感温素子TEに生じた電圧をコンパレータCOMで比較することで熱源素子HSEの温度を検知することができる。コンパレータCOMから出力されるTSDオンオフ信号によって熱保護回路TSDをオンオフさせる。感温素子TEとしては半導体の拡散抵抗、ポリシリコン抵抗などを用いることもできる。
図12に示した熱保護回路TSDは一例であり、回路構成はさらに複雑になり集積度が増加し、あるいは回路構成はさらに簡素化される場合もある。回路構成、回路素子の数によって空間部SPの間口と奥行きの大きさを設定するとよい。