【解決手段】巻線を巻回してなるコイル2と、前記コイルの内側に配置されて閉磁路の一部を構成する内側コア部31を有する磁性コアとの組合体を備えるリアクトル1Aであって、前記コイルの内周面と前記内側コア部との間に介在されて、前記コイルと前記内側コア部とを固定する接着層4を備え、前記接着層は、前記コイルの周方向の一部に設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)実施形態に係る第一のリアクトルは、巻線を巻回してなるコイルと、コイルの内側に配置されて閉磁路の一部を構成する内側コア部を有する磁性コアとを備える。このリアクトルは、コイルの内周面と内側コア部との間に介在されて、コイルと内側コア部とを固定する接着層を備える。そして、接着層は、コイルの周方向の一部に設けられている。
【0012】
上記第一のリアクトルによれば、コイルと内側コア部との固定は、従来のようなコイルの全周を磁性コアと一体に覆う樹脂で行うのではなく、コイルの内周面と内側コア部との間に介在される接着層により行う。そのため、コイルの外周面を露出させることができ、リアクトルの放熱性を高めることができる。特に、このリアクトルを液体冷媒が流通される箇所に配置した場合に、液体冷媒とコイルとを直接接触させることができる。従って、コイルの放熱性、ひいてはリアクトルの放熱性をより効果的に高めることができる。
【0013】
また、上記接着層でコイルと内側コア部とを固定することで、リアクトルの動作時のコイルや磁性コアの振動、或いは外部環境(例えば、上記液体冷媒など)からの影響に伴うコイルの軸方向及び周方向への動きを抑制できる。そのため、コイルと磁性コアとの衝突や擦れ、コイルのターン同士の衝突や擦れを抑制できる。従って、それらの衝突や擦れに伴う騒音や、コイルの絶縁被覆の損傷を低減できる。
【0014】
更に、接着層の形成箇所を、例えばコイルの周方向の一部でかつコイルの軸方向の少なくとも一部とすることで、詳しくは後述する実施形態で説明するが、内側コア部をコイル内に挿通させ易い。
【0015】
(2)実施形態に係る第二のリアクトルは、巻線を巻回してなるコイルと、コイルの内側に配置されて閉磁路の一部を構成する内側コア部を有する磁性コアとを備える。このリアクトルは、コイルの設置面に配置される放熱板と、コイルの内周面と内側コア部との間に介在されて、コイルと内側コア部とを固定する接着層とを備える。そして、接着層は、コイルの周方向の一部に設けられている。
【0016】
上記第二のリアクトルによれば、上述の第一のリアクトルと同等の効果を奏することに加え、コイルの設置面とリアクトルの設置対象との間に介在される放熱板をコイルの放熱経路に利用することで放熱性を高められる。
【0017】
(3)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、接着層は、コイルのうち巻線の端部側に設けられていることが挙げられる。
【0018】
上記の構成によれば、巻線の端部への過剰な応力の付加を抑制し易い。コイルのターン形成部における巻線の端部側が軸方向及び周方向へ動くと、巻線の端部はその動きに追随しようとする。通常、巻線の端部には、コイルに電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される端子金具が接続される。そして、その端子金具は端子台などに固定されている。そのため、コイルが動くと、その動きによって巻線の端部と端子金具との接続箇所に過剰な応力が掛かる。上記の構成によれば、接着層がコイルのうち巻線の端部側に設けられていることで、ターン形成部の上記端部側の動きを抑制できて、巻線の端部のコイルの動きに伴う追随を抑制できる。
【0019】
(4)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、接着層が接触するコイルの内周面及び内側コア部の表面は、平面で構成されていることが挙げられる。
【0020】
上記の構成によれば、接着層が接触するコイル内周面及び内側コア部の表面が平面で構成されているため、接着層の厚みをその全域に亘って等しい接着層を形成し易い。そのため、接着層全域に亘ってコイルと内側コア部とを均等に固定し易く、コイルと内側コア部とをより強固に固定し易い。
【0021】
(5)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、接着層が、コイルのターン間の少なくとも一部に介在されていることが挙げられる。
【0022】
上記の構成によれば、コイルのターン同士の間隔を固定でき、ターン同士の衝突や擦れをより一層抑制できる。
【0023】
(6)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、接着層が、紫外線硬化型接着剤で構成されていることが挙げられる。
【0024】
上記の構成によれば、紫外線硬化型接着剤は紫外線を照射して硬化させるため、接着層の形成の際、熱硬化性の接着剤に比べて高温に加熱する必要がない。また、紫外線硬化型接着剤は紫外線を照射しないと硬化しないので、接着層の形成の際、例えば、硬化までの時間などに制約が少ない。更に、硬化速度は比較的速いため、接着層の形成時間、ひいてはリアクトルの製造時間を短くし易い。
【0025】
(7)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、内側コア部は、磁路となるミドル本体部と、ミドル本体部の外周の少なくとも一部を覆ってミドル本体部とコイルとの間を絶縁するミドル樹脂モールド部とを備えることが挙げられる。
【0026】
上記の構成によれば、ミドル樹脂モールド部を備えることで、ミドル本体部とコイルとの間の絶縁を確保できる。また、ミドル本体部を外部環境から保護できるため、物理的な衝撃によってミドル本体部が損傷し難い。更に、このリアクトルを液体冷媒が流通される箇所に配置した場合に、液体冷媒に対する防錆性を向上できる。
【0027】
(8)上記第一及び第二のリアクトルの一形態として、磁性コアは、内側コア部に連結されて内側コア部と共に閉磁路を形成する外側コア部を備えることが挙げられる。この場合、外側コア部は、サイド本体部と、端子金具と、サイド樹脂モールド部とを備える。サイド本体部は、磁路となる。端子金具は、コイルの巻線の端部に接続される。サイド樹脂モールド部は、サイド本体部の外周の少なくとも一部を覆ってサイド本体部とコイルとの間、及びサイド本体部と端子金具との間を絶縁すると共に、サイド本体部と端子金具とを一体に保持する。
【0028】
上記の構成によれば、サイド樹脂モールド部を備えることで、サイド本体部とコイルとの間、及びサイド本体部と端子金具との間の絶縁を確保できる。また、サイド本体部を外部環境から保護できるため、物理的な衝撃によってサイド本体部が損傷し難い。更に、このリアクトルを液体冷媒が流通される箇所に配置した場合に、液体冷媒に対する防錆性を向上できる。そして、サイド本体部と端子金具とを一体物として取り扱えるため、部品点数を低減でき、リアクトルの組立作業性を向上できる。
【0029】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0030】
《実施形態1》
〔リアクトルの全体構成〕
図1〜5を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、詳しくは後述するリアクトル1Aの使用状態で説明するが、例えば、液体冷媒に直接曝される箇所に配置されて使用される。リアクトル1Aは、コイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3との組合体10を備える。リアクトル1Aの主たる特徴とするところは、コイル2と、磁性コア3のうちコイル2の内側に配置される内側コア部31との間の特定箇所に配置されてコイル2と内側コア部31とを固定する接着層4を備える点にある。以下、リアクトル1Aの特徴部分及び関連する部分の構成、並びに主要な効果を順に説明し、その後、各構成を詳細に説明する。ここでは、組合体10の設置対象側を設置側(下側)、その反対側を対向側(上側)とする。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0031】
〔主たる特徴部分及び関連する部分の構成〕
[組合体]
(コイル)
コイル2は、
図1、4に示すように、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a、2bと、両コイル素子2a、2bを連結する連結部2rとを備える。巻線2wには平角線からなる導体の外周に絶縁被覆を被覆した被覆平角線を用い、コイル素子2a、2bは、被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルで構成している。コイル素子2a、2bの配置は、各軸方向が平行するように並列(横並び)した状態としている。コイル素子2a、2bの形状は、互いに同一の巻数の中空の筒状体(四角筒)であり、コイル素子2a、2bの端面形状は、矩形枠の角部を丸めた形状である。即ち、コイル素子2a、2bの内周面は、四つの平面と、隣り合う平面同士を連結する四つの曲面とで構成されている。連結部2rは、コイル2の一端側(
図1、4紙面右側)において巻線の一部をU字状に屈曲して構成している。
【0032】
コイル素子2a、2bの巻線2wの両端部2eは、連結部2r側と反対側でフラットワイズ曲げされてターン形成部から引き延ばされている。ターン形成部から巻線2wの端部2eに至る引き出し部は、コイル周方向の上方側(
図2の上側)に位置しており、両端部2eの引き出し方向はコイル素子2a、2bの軸方向の一端側である。両端部2eには、導電部材(ここでは後述の端子金具5)が接続される。
【0033】
(磁性コア)
磁性コア3は、
図4に示すように、コイル素子2a、2bの内側に配置される一対の内側コア部31と、コイル2が配置されず、コイル2から突出(露出)されている一対の外側コア部32、320とを備える。磁性コア3は、離間して配置される内側コア部31を挟むように外側コア部32、320が配置され、内側コア部31の端面と外側コア部320の内端面32eとを接触させて環状に形成される。これら内側コア部31、31及び外側コア部32、320により、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。内側コア部31、31と外側コア部32、320との具体的な連結・分離形態については後述する。
【0034】
〈内側コア部〉
内側コア部31の形状は、コイル2の形状(コイル2の内部空間)に合わせた形状とすることが好ましい。ここでは、
図4に示すように、内側コア部31の形状は直方体状であり、その角部(コイル素子2a、2bの上記曲面に対向する領域)は、コイル素子2a、2bの上記曲面に沿って丸めている。即ち、内側コア部31の端面形状は、角部を丸めた矩形状であり、内側コア部31の側面(コイル素子2a、2bの周方向に沿った面)は、四つの平面と、隣り合う平面同士を連結する四つの曲面とで構成されている(
図3、4)。
【0035】
[接着層]
接着層4は、コイル2と内側コア部31とを固定する。接着層4は、コイル素子2a、2bの内周面と内側コア部31の表面との間において、コイル素子2a、2bの周方向の一部で、かつコイル素子2a、2bの軸方向の少なくとも一部に沿って設けられる。接着層4の形状は、コイル素子2a、2bと内側コア部31との接着領域の範囲に応じて片状、テープ状、シート状など種々の形状をとり得る。
【0036】
接着層4の形成箇所は、コイル2の軸方向及び周方向の両方における巻線2wの端部2e側、即ち、コイル2のターン形成部と内側コア部31との間の筒状領域のうち、少なくとも巻線2wの端部2eに近接する側が好ましい。例えば、巻線2wのうちターン形成部から巻線2wの端部2eに至る引き出し部がコイル軸方向の一端側にある場合、上記筒状領域の少なくとも一端側に接着層4を形成する。この引き出し部が内側コア部31の上部側にある場合、筒状領域のうち少なくとも内側コア部31の上側に接着層4を形成すればよい。これは、ターン形成部の振動が巻線2wの端部2eと端子金具5との接合状態に悪影響を及ぼすことを抑制できるからである。
【0037】
コイル2のうち端部2eは端子金具5に固定されるが、接着層4を備えない場合、ターン形成部は磁性コア3に対して固定されない。コイル2や磁性コア3が振動すると、端部2eは動かないが、ターン形成部はコイル2の軸方向及び周方向に動く。このターン形成部の動きは、ターン形成部から巻線2wの端部2eに至る引き出し部に応力を生じさせ、その応力の発生は巻線2wの端部2eと端子金具5との接合不良の一因となる虞がある。よって、接着層4の形成箇所を上記筒状領域のうち、少なくとも巻線2wの端部2eに近接する側とすることで、ターン形成部の振動の影響が巻線2wの引き出し部に及ぶことを抑制し、上記接合不良の発生を可及的に低減できる。
【0038】
コイル周方向における接着層の形成長は、コイル2の内周面(内側コア部31の外周面)の全周長の15%以上50%以下程度が好ましい。この全周長の15%以上であれば、コイル2の振動を適切に抑制でき、全周長の50%以下であれば内側コア部31をコイル2内に挿入する際、接着層4が邪魔になり難い。
【0039】
コイル軸方向における接着層4の形成長は、コイル2の全長の25%以上、更に50%以上、75%以上、特に全長とすることが好ましい。コイル2の全長の25%以上であれば、巻線2wの端部2eと端子金具5との接合不良を抑制し易い。コイル2の全長に亘って接着層4を形成すれば、コイル2の振動や移動をより確実に抑制でき、全ターン間の擦れも抑制し易い。
【0040】
接着層4の厚さは、コイル素子2a、2bと内側コア部31とを固定しつつ、コイル素子2a、2bと内側コア部31との間隔を所望の間隔にできる程度が挙げられる。所望の間隔とは、例えば、接着層4によりコイル素子2a、2bと内側コア部31とが十分な絶縁を確保できる程度が挙げられる。特に、接着層4を介してコイル素子2a、2bと内側コア部31とを固定させた際に、コイル素子2a、2bの内周面と内側コア部31の表面との間隔が周方向全周に亘って均等になるようにすることが好ましい。具体的には、接着層4の厚さは、0.05mm以上0.5mm以下が挙げられる。
【0041】
本実施形態では、接着層4の形状は矩形のシート状である。接着層4の形成箇所は、コイル2(内側コア部31)の周方向では上面側のみとし、その軸方向では全長に亘る領域としている(
図2、3)。特に、コイル周方向の接着層4の形成箇所は、各コイル素子2a,2bの内周面のうち一つの平面としている。巻線2wの引き出し部は、コイル軸方向の一端側(
図2の左側)で、かつコイル周方向の上方側(
図2の上側)に位置している。そのため、本実施形態の接着層4の形成箇所であれば、コイル2をその内周面の一端側で、かつ上方側のみならず、軸方向の全長に亘って内側コア部31を固定できる。特に、接着層4を内側コア部31の上面側のみに設けると、コイル2と内側コア部31との組立時、コイル2を上部から内側コア部31に向けて押すことで、内側コア部31の上面にコイル2の内周面を押圧させ易い。
【0042】
接着層4は、各コイル素子2a、2bのターン間の少なくとも一部に介在させることが好ましい。そうすれば、コイル素子2a、2bの各ターンの隣接する面を固定してターンの間隔を固定でき、ターン同士の衝突や擦れをより一層抑制できる。このような接着層4は、コイル2を上部から内側コア部31に向けて押し、接着剤をコイル素子2a、2bのターン間に浸入させることで形成できる。
【0043】
接着層4の形成は、接着剤をコイル素子2a、2bの外側からその外周面(上面)に垂らしてコイル素子2a、2bのターン間からコイル素子2a、2bと内側コア部31との間へ流動させた後、接着剤を硬化することでも行える。この場合、接着剤には、粘度の低い(例えば、1Pa・s程度)液状の接着剤を用いることができる。そうすれば、接着剤を各コイル素子2a、2bの内側(内側コア部31との間)に流動させ易い。また、ターン間を通って各コイル素子2a、2bと内側コア部31との間に流動した接着剤をその間に介在させた状態を維持し易い。
【0044】
接着層4の構成材料は、絶縁性及び耐熱性を有することが好ましい。この耐熱性とは、リアクトル1Aの使用時における最高到達温度に対して軟化しないことを言う。そうすれば、リアクトル1Aの動作時にコイル2と内側コア部31とを確実に固定できる。
【0045】
接着層4の構成材料は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性の絶縁性接着剤、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性の絶縁性接着剤、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレートなどの紫外線(光)硬化型の絶縁性接着剤などを好適に利用できる。特に、紫外線硬化型の絶縁性接着剤を好適に利用できる。紫外線を照射すれば接着剤を硬化でき、接着層4の形成の際に熱硬化性の接着剤に比べて高温まで加熱する必要がないからである。また、紫外線を照射しないと接着剤は硬化しないので、接着層4の形成の際、例えば、硬化までの時間などに制約が少ない。更に、接着剤の硬化速度は比較的速いため、接着層4の形成時間、ひいてはリアクトル1Aの製造時間を短くし易い。
【0046】
〔リアクトルの主たる特徴部分における作用効果〕
リアクトル1Aによれば、コイル素子2a、2bの内周面と内側コア部31の表面との間に、コイル素子2a、2bの周方向の一部で、コイル素子2a、2bの軸方向全長に亘って接着層4を備えることで、コイル2と磁性コア3とを固定できる。そのため、従来のようなコイル2の表面全域を覆う樹脂を備える必要がないので、液体冷媒Cとコイル2とを直接接触させることができ、リアクトル1Aの放熱性を高められる。また、液体冷媒Cなどの外部環境からの影響や、アクトル1Aの動作時のコイル2や磁性コア3の振動などに伴うコイル2の軸方向及び周方向への動きを抑制できる。そのため、コイル2と磁性コア3との衝突や擦れ、コイル2のターン同士の衝突や擦れを抑制でき、騒音の低減、及びコイル2の絶縁被覆の損傷を低減できる。
【0047】
〔その他の特徴部分を含む各構成の説明〕
[コイル]
巻線2wの導体の構成材料は、銅、アルミニウム、その合金といった導電性材料が挙げられ、絶縁被覆の構成材料は、エナメル(代表的にはポリアミドイミド)などの絶縁性材料が挙げられる。導体の形状は、丸線などでもよい。コイル素子2a、2bの端面形状は、円形状など適宜変更できる。コイルは、独立した2つの巻線をそれぞれ螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子と、両コイル素子とは独立した部材で、両コイル素子を連結する連結部材とを備える構成としてもよい。
【0048】
[磁性コア]
磁性コア3は、上述したように一対の内側コア部31と一対の外側コア部32、320とを備える。ここでは、磁性コア3の形態は、一方の外側コア部32(
図4の紙面右側)及び両内側コア部31を一体化したU字型のコア成形体3bと、他方の外側コア部320(
図4の紙面左側)とを備える形態としている。U字型のコア成形体3bと他方の外側コア部320とは、接着剤を介して接合できる。外側コア部32、320と内側コア部31の上面は略面一である。一方、外側コア部32、320の下面は、内側コア部31の下面よりも突出してコイル2の下面と略面一になるように外側コア部32、320の大きさを調整している。組合体10の下面は、主として、二つの外側コア部32、320の下面と、コイル2の下面とで構成される。
【0049】
(コア成形体)
U字型のコア成形体3bは、磁路となる一方のサイド本体部32b及び磁路となる一対のミドル本体部31bを有するコア部品と、このコア部品を覆って両本体部31b、32bを一体化すると共にコア部品とコイル2とを絶縁する連結樹脂モールド部とを備える。具体的には、連結樹脂モールド部は、ミドル本体部31bの少なくとも一部を覆うミドル樹脂モールド部31cと、サイド本体部32bの少なくとも一部を覆うサイド樹脂モールド部32cとを備える。内側コア部31は、ミドル本体部31bとミドル樹脂モールド部31cとを備え、外側コア部32は、サイド本体部32bとサイド樹脂モールド部32cとを備える。ここでは、ミドル樹脂モールド部31cとサイド樹脂モールド部32cとは、同一の構成材料で一連(一体)に形成されている。
【0050】
〈コア部品〉
{ミドル本体部}
ミドル本体部31bは、軟磁性材料を主成分とする複数のコア片31mと、コア片31mよりも比透磁率が小さい材料からなるギャップ材31gとが交互に積層配置された積層体である(
図4)。コア片31mとギャップ材31gとの一体化には、特に接着剤を利用すると扱い易い。その上、コア片31mが磁歪によって振動する材質で構成され、ギャップ材31gがアルミナのような剛性の高い材質で構成された場合でも、コア片31mとギャップ材31gとの接触・非接触に伴う騒音を低減できると期待される。その他、コア片31mとギャップ材31gとの一体化に接着テープなどを利用することもできる。ここでは、コア片31mとギャップ材31gとを接着剤によって一体化している。ミドル本体部31b(磁性コア3)は、ギャップ材31gを備えていない形態やエアギャップを備える形態とすることができる。
【0051】
{サイド本体部}
一方のサイド本体部32bは、ミドル本体部31bと同様、軟磁性材料を主成分とするコア片である。サイド本体部32bの形状は、適宜選択できる。ここでは、上面・下面がドーム状(内端面32eから外方に向かって断面積が小さくなる変形台形状)の柱状体としている。サイド本体部32bの形状として、例えば、角柱状体とすることもできる。
【0052】
一対のミドル本体部31bと一方のサイド本体部32bとは、接着剤によって接合できる。一対のミドル本体部31bと一方のサイド本体部32bとは、接着剤により接合せず、連結樹脂モールド部により一体に覆うことで接合することもできる。
【0053】
〈連結樹脂モールド部〉
{ミドル樹脂モールド部}
ミドル樹脂モールド部31cは、ミドル本体部31bとコイル素子2a、2bとの間を絶縁する。ミドル樹脂モールド部31cの被覆領域は、少なくともミドル本体部31bにおけるコイル素子2a、2bの周方向に沿った面(上下面及び両側面)の一部とすることが挙げられる。ミドル樹脂モールド部31cの被覆領域が広いほど、コイル素子2a、2bとの絶縁を確保し易い上に、例えば組合体10を液体冷媒Cに接触する箇所に配置する場合、ミドル本体部31bの防錆性を向上できる。
【0054】
ミドル樹脂モールド部31cの被覆領域には、ミドル本体部31bにおける外側コア部320側との対向面が含まれていても含まれていなくてもよい。ミドル樹脂モールド部31cの構成材料は一般に非磁性材料であるため、上記対向面を覆う場合、ギャップ材として機能する。ミドル樹脂モールド部31cで上記対向面を覆う(覆わず露出させる)場合、外側コア部320のサイド本体部32の内端面32eをサイド樹脂モールド部32から露出させる(サイド樹脂モールド部32cで覆って露出させない)ことが挙げられる。ミドル本体部31bの上記対向面及び他方のサイド本体部32bの内端面32eのいずれか一方のみを樹脂で被覆して両者を接着剤により固定すれば、樹脂成形に伴う寸法誤差を接着剤厚さで調整できてギャップ長を精度よく調整し易い。
【0055】
ここでは、ミドル樹脂モールド部31cの被覆領域は、ミドル本体部31bにおける一方のサイド本体部32bとの接続箇所を除く全面としている。即ち、ミドル本体部31bの上記対向面もミドル樹脂モールド部31cにより覆われ、外側コア部320との接続箇所である内側コア部31の端面はミドル樹脂モールド部31cの構成材料により構成されている。
【0056】
{サイド樹脂モールド部}
一方のサイド樹脂モールド部32cは、サイド本体部32bとコイル素子2a、2bとの間を絶縁する。サイド樹脂モールド部32cの被覆領域は、少なくとも内端面32eのコイル素子2a、2bとの対向箇所、及び上面の連結部2rとの対向箇所とすることが挙げられる。サイド樹脂モールド部32cの被覆領域は、広いほどサイド本体部32bを保護できる上に、例えば組合体10を液体冷媒Cに接触する箇所に配置する場合、サイド本体部32bの防錆性を向上できる。サイド本体部32bはコイル2から突出(露出)されており、サイド本体部32bが圧粉成形体で構成されていて、サイド樹脂モールド部32cにより被覆されていれば、絶縁性及び防錆性に加えて、軟磁性粉末の脱落防止にも効果的である。ここでは、サイド樹脂モールド部32cの被覆領域は、サイド本体部32bにおける一対のミドル本体部31bとの接触箇所を除く全領域としている。
【0057】
樹脂モールド部31c、32cの厚さは、0.1mm以上3mm以下が挙げられる。樹脂モールド部31c、32cの厚さを0.1mm以上とすることで、コイル素子2a、2bに対する絶縁性を向上できる上に、液体冷媒Cによる磁性コア3の錆を防止できる。一方、樹脂モールド部31c、32cの厚さを3mm以下とすることで、樹脂モールド部31c、32cが厚くなり過ぎない。
【0058】
(他方の外側コア部)
他方の外側コア部320(
図4紙面左)は、上述の一方の外側コア部32と同様のサイド本体部32bとサイド樹脂モールド部32cとを備える。他方のサイド樹脂モールド部32cの被覆領域は、少なくともサイド本体部32bにおけるコイル素子2a、2bとの対向箇所、及び端子金具5との対向箇所とすることが挙げられる。他方のサイド樹脂モールド部32cの被覆領域は、上述の一方の外側コア部32と同様の理由から広いほど好ましい。ここでは、他方のサイド本体部32bにおける内側コア部31の端面との対向領域のみ露出させ、それ以外の箇所を覆っている。
【0059】
〈各本体部、ギャップ材、及び各樹脂モールド部の構成材料〉
ミドル本体部31b・サイド本体部32bを構成する各コア片の主成分である軟磁性材料には、鉄や鉄合金、フェライトといった非金属などが挙げられる。コア片は、上記軟磁性材料からなる軟磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、ケイ素鋼板に代表される電磁鋼板)を複数積層した積層体を利用できる。上記成形体は、圧粉成形体(圧粉磁心)の他、焼結体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料などが挙げられる。複合材料は、射出成形などを利用することで、複雑な立体形状であっても、容易に成形できる。複合材料中のバインダとなる樹脂は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やPPS樹脂などの熱可塑性樹脂を利用できる。上記複合材料中の軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とするとき、20体積%以上75体積%以下が挙げられる。残部は、樹脂やアルミナやシリカなどのセラミックスといった非金属有機材料、非金属無機材料などの非磁性材料である。ここでは、各コア片はいずれも圧粉成形体としている。
【0060】
ギャップ材31gの具体的な材料は、アルミナや不飽和ポリエステルなどの非磁性材料、PPS樹脂などの非磁性材料と磁性材料(磁性材料の例は、鉄粉などの軟磁性粉末)とを含む混合物などが挙げられる。
【0061】
樹脂モールド部31c、32cの構成材料は、絶縁性に優れる材料が好ましく、絶縁性に加えて防錆性や熱伝導性に優れる材料が特に好ましい。このような材料としては、例えば、PPS樹脂などが挙げられる。樹脂モールド部31c、32cの形成は、インサート成形や構成樹脂への浸漬などで行える。
【0062】
各コア片を上述の複合材料で構成した場合、樹脂モールド部で各本体部を被覆しない構成とすることもできる。即ち、内側コア部及び外側コア部はそれぞれ、複合材料からなるミドル本体部及びサイド本体部で構成される。複合材料の表面は樹脂から軟磁性粉末が殆ど露出しない状態となる。そのため、コイル素子2a、2bとの間を絶縁できる上に、複合材料に含まれる軟磁性粉末の腐食を抑制できる。勿論、上記各本体部を上述の樹脂モールド部で被覆してもよいが、その場合、樹脂モールド部の構成材料には、樹脂モールド部の形成時に複合材料の樹脂が軟化や損傷しないような材料を選択することが挙げられる。
【0063】
磁性コア3は、一方の外側コア部32(320)及び一方の内側コア部31を一体化したL字型のコア成形体を一対備える形態とすることもできる。この場合、各L字型のコア成形体は、上記一方のサイド本体部32b及び上記一方のミドル本体部31bと、両本体部32b、31bを一体に保持する連結樹脂モールド部とを備える。更に、磁性コア3は、各々独立した部材で構成される一対の内側コア部31、及び一対の外側コア部32、320を備える形態とすることもできる。この場合、各内側コア部31は、上記ミドル本体部31bと上記ミドル樹脂モールド部31cとを備え、各外側コア部32、320は、上記サイド本体部32bとサイド樹脂モールド部32cとを備える。L字型のコア成形体同士や、内側コア部31と外側コア部32、320とは、接着剤で接合できる。
【0064】
[磁性コアのその他の構成]
(取付部)
両サイド樹脂モールド部32cは、組合体10を設置対象に固定する取付部33を備えることが好ましい(
図1、
図4)。取付部33は、サイド樹脂モールド部32cの構成材料によりサイド樹脂モールド部32cと一体に形成することが挙げられる。取付部33は、サイド本体部32bにおけるコイル素子2a、2bの並列方向に張り出すフランジ状に設けられている。取付部33の形成箇所は、リアクトル1Aの設置対象の固定箇所(後述するケース8のボス82)の高さに合わせて適宜選択することが挙げられる。ここでは、外側コア部32、320の高さ方向における略中間位置に設けている。
【0065】
取付部33には、組合体10を設置対象に固定する際に用いられるボルト36(
図5)を貫通させて、ボルト36による締付力を受けるカラー35が埋設されている。カラー35の材質は、金属などの剛性材が挙げられる。そうすれば、取付部33を構成するサイド樹脂モールド部32cの損傷を抑制でき、組合体10をボス82に強固に固定できる。
【0066】
(仕切部)
両サイド樹脂モールド部32cは、コイル素子2a、2b同士の絶縁を確保する仕切部34を備えることが好ましい(
図4)。仕切部34は、コイル素子2a、2b間に介在するように設けられる。仕切部34は、サイド樹脂モールド部32cの構成材料によりサイド樹脂モールド部32cと一体に形成することが挙げられる。
【0067】
(端子金具)
他方の外側コア部320は、電源などの外部装置(図示略)からコイル2への電力供給を行う端子金具5を備える。端子金具5は、平板状の金属片を屈曲させた略L字状の金具である。端子金具5は、各コイル素子2a、2bの端部2eに接続される細板状のコイル側接続片51と、上記外部装置につながるリードを接続する太板状のリード側接続片52と、両片51,52を連結する太板状の中間片とを備える。この中間片は、サイド樹脂モールド部32cに埋設されることが好ましい。そうすれば、埋設片をサイド樹脂モールド部32cによりサイド本体部32bと共に一体に保持でき、端子金具5とサイド本体部32bとを一体に取り扱えることができるため、部品点数を低減できてリアクトル1Aの組立作業性を向上できる。コイル側接続片51と端部2eとの接続は、例えば、ヒュージング(熱カシメ)、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接などの溶接、はんだ付け、ろう付け、カシメなど種々の手段により行える。
【0068】
コイル側接続片51における端部2eとの接続面は、端部2eにおけるコイル側接続片51との接続面よりも広いことが好ましい。そうすれば、端部2eとコイル接続片51との接続を行い易い。接着層4を形成する際、上述のようにコイル素子2a、2bの外周面を内側コア部31側に押圧することがある。端子金具5がサイド樹脂モールド部32cによりサイド本体部32bと一体に保持されていれば、端部2eがコイル側接続片51に対して位置ずれする虞がある。しかし、コイル側接続片51の上記接続面が端部2eの上記接続面よりも広ければ、たとえコイル素子2a、2bの上記押圧により端部2eの位置が多少ずれても両者の接触領域を確保し易い。
【0069】
一方、リード側接続片52には、貫通孔52hが設けられている。貫通孔52hは、上記リード線を端子金具5に接続するボルトといった連結部材(図示略)が嵌め込まれる。リアクトル1Aが後述するケース8を備える場合、リード側接続片52はケース8の外側へ引き出される。
【0070】
端子金具5はサイド樹脂モールド部32cによりサイド本体部32bと一体に保持されているが、サイド樹脂モールド部32cで一体に保持することなく、別途端子台などでサイド樹脂モールド部32cに接続させることもできる。その場合、端子台とサイド樹脂モールド部32cとが互いに係合する係合部を備えることが挙げられる。
【0071】
なお、本例では、コイル2への電力供給を行う導電部材として板状の端子金具5を備える形態を示しているが、その他、導体線とすることができる。導体線は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金といった導電性に優れる金属によって構成された単一の線材、又は複数の線材を撚り合わせた撚線、又は撚線を圧縮成形した圧縮線などが挙げられる。この導体線は、絶縁被覆を有していない裸線でもよいし、絶縁被覆を備える被覆線でもよい。
【0072】
(その他)
両ミドル樹脂モールド部31cは、コイル素子2a、2bと内側コア部31との間隔を保持する突条部(図示略)を備えることもできる。突条部は、コイル素子2a、2bの軸方向の少なくとも一部に沿って形成する。突条部は、ミドル樹脂モールド部31cの構成材料によりミドル樹脂モールド部31cと一体に形成することが挙げられる。
【0073】
突条部の形成箇所は、内側コア部31の外周面上であれば適宜選択できるが、ミドル樹脂モールド部31cにおける接着層4に接する面(上面)や、それ以外の面(下面と側面)が挙げられる。上面側に設ける場合、二本の突条部を離隔して設けることが好ましい。そうすれば、接着層4を形成する際、突条部間を接着剤の形成箇所に利用できる。また、接着剤を硬化して接着層4を形成する際に、上述のようにコイル素子2a、2bを内側コア部31側に押圧して接着剤が圧接されても、突条部が壁となって他の面(側面)に接着剤が流れ難い。そのため、形成された接着層4をその全域に亘って均一な厚さにし易い。上面以外の面に設ける場合、突条部は、上記下面に二本、更には両側面にそれぞれ一本ずつ設けることが挙げられる。そうすれば、内側コア部31のコイル周方向全周に亘ってコイル素子2a,2bとの間隔を保持し易い。
【0074】
突条部のコイル軸方向に沿った長さは、長いほど内側コア部31と各コイル素子2a、2bとをコイル2の軸方向に沿って間隔を均一に保ちやすい。そのため、突条部の上記長さは、コイル軸方向全長に亘る長さが好ましい。
【0075】
他方の外側コア部320は、リード側接続片52同士の間に介在して両片52の間隔を保つ突条の間隔保持部37(
図1)を備えることが好ましい。そうすれば、リード側接続片52同士の絶縁性を高められる。間隔保持部37は、サイド樹脂モールド部32cの構成材料によりサイド樹脂モールド部32cと一体に形成することが挙げられる。
【0076】
リアクトル1Aは、接着層4によりコイル素子2a、2bと内側コア部31とを強固に固定する押付片(図示略)を備えることもできる。押付片は、上記筒状領域に挿通されて、上記筒状領域における押付片と対向する側で内側コア部31をコイル2側へ押し付ける。押付片は、サイド樹脂モールド部32cの構成材料によりサイド樹脂モールド部32cと一体に形成してもよいし、サイド樹脂モールド部32cとは別部材で構成してもよい。前者の場合、押付片は、上記筒状領域のうちミドル本体部31bを挟んで接着層4と対向する箇所に介在するように、外側コア部320の内端面32eに突設することが挙げられる。押付片の形状は、例えば、矩形状などが挙げられる。押付片は、コイル2と内側コア部31との間に挿入させ易いように、押付片の先端側の厚さが徐々に薄くなるテーパー形状としてもよい。押付片を備えれば、押付片を内側コア部31とコイル素子2a、2bとの間に挿通した際、内側コア部31の上面とコイル2の内周面とを近づけられる。そのため、接着層4を形成する際、コイル2及び内側コア部31と接着剤とを十分に接触させた状態で接着剤を硬化して接着層4を形成でき、コイル素子2a、2bと内側コア部31とを強固に固定し易い。押付片は、突条部を備える場合、突条部と干渉しないように設けることが挙げられる。
【0077】
〔リアクトルの使用状態〕
リアクトル1Aの使用状態を、
図5を参照して説明する。
【0078】
[ケース]
リアクトル1Aは、組合体10を収納・固定するケース8を備えることもできる(
図5)。ケース8は、その内部に液体冷媒Cが供給・排出される箱状の部材で、液体冷媒Cをケース8内へ供給する供給口80iと、ケース8内の液体冷媒Cをケース8外へ排出する排出口80oとを備える。コイル2の全周が従来のように樹脂で覆われておらず、コイル2を液体冷媒Cに直接接触させて冷却できるため、リアクトル1Aの放熱性を向上できる。供給口80iからケース8内に供給されて排出口80oからケース8外へ排出され液体冷媒Cは、冷却器(図示略)などにより所定の温度に冷却されて、再び供給口80iからケース8内へ供給される。こうして液体冷媒Cがケース8内へ循環供給される。ケース8は液体冷媒Cが供給及び排出されることで、組合体10を冷却する液体冷媒Cの流れを制御でき、組合体10を効果的に冷却できる。また、接着層4によりコイル2と磁性コア3とが固定されているため、液体冷媒Cがコイル2に掛かっても、コイル2の軸方向及び周方向への動きや変形を抑制できる。そのため、コイル2と磁性コア3との衝突や擦れ、コイル2のターン同士の衝突や擦れを抑制でき、騒音を低減できる。コイル2が被覆線で構成されている場合には、被覆線の被覆の損傷を抑制することもできる。
【0079】
供給口80iは、組合体10の上方に設けられ、排出口80oは、後述のボス82の高さと略同様の位置に設けられている。排出口80oの口径φ
oは供給口80iの口径φ
iよりも小さくしている。そうして、
図5に示すようにコイル2の上面が液体冷媒Cの液面下に位置するように、組合体10が液体冷媒Cに常時浸漬されるようにしている。
【0080】
ケース8は、組合体10の設置側面に対向する取付面81と、取付面81から突設され、組合体10をケース8内に固定するボス82とを備えることが好ましい。そうすれば、ケース8の取付面81全体の厚さを厚くすることなくボス82に締め付けるボルト36の締付長を確保でき、組合体10をボス82に強固に固定し易い。取付面81の薄肉化により、ケース8を軽量化できる。ボス82の形状は、円柱状としているが角柱状など適宜変更できる。
【0081】
ボス82の数は、取付部33の数と同数とすることができ、ボス82の配置箇所は、取付部33に対応する箇所とすることが挙げられる。ボス82の取付部33との接触面には、取付部33を固定するボルト36が挿通される挿通穴が形成されている。挿通穴には、雌ねじ加工が施されており、この挿通穴にボルト36をねじ止めして取付部33(組合体10)をケース8に固定できる。
【0082】
ケース8の材質は、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼などの金属が挙げられる。特に、アルミニウムやマグネシウム、これらの合金は、軽量である上に、シールド機能を期待できる。また、アルミニウムやその合金は放熱性及び耐食性にも優れ、マグネシウムやその合金は制振性に優れるため、車載部品に好適に利用できる。その他、ケース8の材質は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、PPS樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂には、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスフィラーが含有されていても良い。
【0083】
[液体冷媒]
液体冷媒Cは、リアクトル1Aの使用時の最高到達温度によって形態が変化しないもの(気化しないもの)が好適に利用できる。具体的には、オートマチックトランスミッションの潤滑油であるATF(Automatic Transmission Fluid)、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC−123やHFC−134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などが挙げられる。リアクトル1Aが自動車用途である場合などでは、ATFを流用すると、液体冷媒Cを別途用意しなくてよく、ATFの循環供給機構を利用すれば、液体冷媒Cを利用するリアクトル1Aにおける放熱構造を簡単に形成できる。
【0084】
[センサ]
リアクトル1Aは、リアクトル1Aの動作時の物理量(例えば、温度、電流値、電圧値、加速度など)を測定するセンサ7sを備えることができる(
図3、4)。センサ7sによる測定結果に基づいてリアクトル1Aの動作を安定化させることができる。センサ7sは、サーミスタといった感熱素子を備える温度センサであり、感熱素子を保護する保護部(例えば、樹脂などのチューブ)と、感熱素子からの情報を外部に伝える配線7cとを備える。センサ7sの配置箇所は、例えば、コイル素子2a、2b同士の間における下側及び上側のうち、コイル素子2a、2bの角部で囲まれる領域が挙げられる。
【0085】
センサ7sの組合体10への組み付けは、例えば、
図4に示すようなホルダ70を用いることができる。ホルダ70は、コイル素子2a、2b間で両仕切部34間に介在して支持される本体部71と、本体部71の両端において、仕切部34に係合するフック72fとを備える。ホルダ70をコイル素子2a、2b間に差し込んだ際、フック72fが仕切部34の下端と係合されると共に、本体部71が両仕切部34に支持される。それにより、ホルダ70の位置が実質的にずれず位置を良好に維持できる。また、このホルダ70によりセンサ7sの一部が覆われる構成としている。そうすれば、センサ7sは、例えば、液体冷媒Cに接触し難く、リアクトル1Aの物理量を適切に測定し易い。ホルダ70の構成材料は、上述の樹脂モールド部の構成材料と同様の絶縁性樹脂とすることができる。そうすれば、ホルダ70がコイル素子2a、2bに接触しても、両者の絶縁性に優れる。ホルダ70を用いずにセンサ7sをエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤のみで所定位置に固定する形態とすることもできる。
【0086】
〔リアクトルの製造〕
リアクトル1Aは、代表的には、コイル2と磁性コア3の準備⇒接着剤の塗布⇒組合体10の組立⇒接着剤を硬化して接着層4の形成という工程により製造できる。
【0087】
上述したコイル2と、上述のコア成形体3b及び他方の外側コア部320を備える磁性コア3とを準備する。続いて、各コイル素子2a、2bの内周面、及びコア成形体3bの内側コア部31の上面の少なくとも一方に接着層4を構成する接着剤を塗布する。ここでは、内側コア部31の上面に接着剤を塗布した。次に、内側コア部31を各コイル素子2a、2b内に挿入し、他方の外側コア部320の内端面32eと内側コア部31の端面とを接着剤で固定してコイル2と磁性コア3とを組み合わせる。そして、コイル素子2a、2bの上面を内側コア部31側へ押し寄せて、コイル素子2a、2bの内周面を内側コア部31の上面の接着剤と十分に接触させる。その状態で、内側コア部31の上面の接着剤を硬化させて、コイル素子2a、2bと内側コア部31とを固定する。以上により、コイル素子2a、2bと内側コア部31との間に介在された接着層4によりコイル素子2a、2bと内側コア部31とを固定したリアクトル1Aが得られる。
【0088】
リアクトル1Aがケース8を備える場合には、組合体10をケース8に収納・固定する。ケース8のボス82の挿通穴に、取付部33のカラー35の挿通孔が合うように取付面81に組合体10を配置する。そして、カラー35にボルト36を挿通させると共に、上記挿通穴にねじ止めする。そうして組合体10をボス82に固定する。その状態で、ケース8の供給口80iからケース8内に液体冷媒Cを供給し、排出口80oからケース8外に液体冷媒を排出することでケース8内に液体冷媒Cを循環供給して、リアクトル1Aを冷却する。
【0089】
《実施形態2》
実施形態2では、
図6を参照して、実施形態1で説明したケース8に代えて、放熱板9を備える形態を説明する。実施形態2のリアクトル1Bは、ケース8の代わりに放熱板9を備える点を除き、その他の構成は実施形態1と同様であるので、以下の説明は相違点を中心に行う。
図6は、リアクトル1Bの全体斜視図を示しており、放熱板9をコイル2から離隔して示している。
【0090】
[放熱板]
放熱板9は、使用時に発熱するコイル2の任意の箇所に配置することができる。ここでは、放熱板9は、コイル2の下面に配置され、コイル2と設置対象との間に介在される。放熱板9は、コイル2の下面に接触可能な大きさを有していればよく、その大きさ、形状は適宜選択することができる。ここでは、放熱板9は、コイル2だけでなく磁性コア3をも含む組合体10の下面に接触可能な大きさを有する矩形板状の部材で構成している。そのため、リアクトル1Bは、コイル2の熱に加えて、磁性コア3の熱をも設置対象に伝えられる。また、放熱板9を組合体10の下面よりも十分に大きくすることで、組合体10を一体に支持する台座としての機能を放熱板9に持たせることもでき、リアクトルの持ち運びや取り扱いが容易になると期待される。放熱板9を組合体10の下面よりも大きくする場合は、例えば、上述した設置対象に固定するためのボルト36や設置対象に形成されたボス82(
図5参照)と干渉しないように、放熱板9の四隅に貫通孔や切欠き(図示せず)を設けるとよい。放熱板9の厚さは、適宜選択することができ、例えば、2mm以上5mm以下程度が挙げられる。放熱板9の構成材料は、上述したケースと同様の金属材料が挙げられる。
【0091】
組合体10(コイル2)と放熱板9とは、接着剤や接着シート(図示略)により固定できる。上述の接着層4によりコイル2の動きを十分に抑制できるが、この固定によりコイル2の動き(特に、端部2eと端子金具5との接合不良)をより一層抑制できる。
【0092】
《実施形態3》
実施形態1、2のリアクトルは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0093】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、
図7に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。
図7では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0094】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0095】
コンバータ1110は、
図8に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、実施形態1、2のリアクトルを備える。特に、コンバータ1110内に液体冷媒が循環供給可能なケース8を備える場合、このケース8内にリアクトル1A、1Bなどを収納することで、放熱性に優れる構造を容易に構築できる。放熱性に優れるリアクトルなどを備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110も、放熱性の向上が期待できる。
【0096】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC−DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC−DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC−DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1、2のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1、2のリアクトルなどを利用することもできる。
【0097】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、コイル素子を一つのみ備えるリアクトルとすることができる。
ミドル樹脂モールド部31cの被覆領域には、ミドル本体部31bにおける外側コア部320側との対向面が含まれていても含まれていなくてもよい。ミドル樹脂モールド部31cの構成材料は一般に非磁性材料であるため、上記対向面を覆う場合、ギャップ材として機能する。ミドル樹脂モールド部31cで上記対向面を覆う(覆わず露出させる)場合、外側コア部320のサイド本体部32
から露出させる(サイド樹脂モールド部32cで覆って露出させない)ことが挙げられる。ミドル本体部31bの上記対向面及び他方のサイド本体部32bの内端面32eのいずれか一方のみを樹脂で被覆して両者を接着剤により固定すれば、樹脂成形に伴う寸法誤差を接着剤厚さで調整できてギャップ長を精度よく調整し易い。
)。ケース8は、その内部に液体冷媒Cが供給・排出される箱状の部材で、液体冷媒Cをケース8内へ供給する供給口80iと、ケース8内の液体冷媒Cをケース8外へ排出する排出口80oとを備える。コイル2の全周が従来のように樹脂で覆われておらず、コイル2を液体冷媒Cに直接接触させて冷却できるため、リアクトル1Aの放熱性を向上できる。供給口80iからケース8内に供給されて排出口80oからケース8外へ排出され
液体冷媒Cは、冷却器(図示略)などにより所定の温度に冷却されて、再び供給口80iからケース8内へ供給される。こうして液体冷媒Cがケース8内へ循環供給される。ケース8は液体冷媒Cが供給及び排出されることで、組合体10を冷却する液体冷媒Cの流れを制御でき、組合体10を効果的に冷却できる。また、接着層4によりコイル2と磁性コア3とが固定されているため、液体冷媒Cがコイル2に掛かっても、コイル2の軸方向及び周方向への動きや変形を抑制できる。そのため、コイル2と磁性コア3との衝突や擦れ、コイル2のターン同士の衝突や擦れを抑制でき、騒音を低減できる。コイル2が被覆線で構成されている場合には、被覆線の被覆の損傷を抑制することもできる。