と、第1電極パターン上に第1ドレインが配置された第1MISFETQ1と、第3電極パターン上に第2ドレインが配置された第2MISFETQ4と、第1MISFETの第1ゲートG1および第1ソースS1間に接続され、第1ソースから第1ゲートに向けて導通する電流の経路を制御する第1制御回路(ゲートダイオードD
前記第2MISFETの第2ゲートおよび第2ソース間に接続され、前記第2ソースから前記第2ゲートに向けて導通する電流の経路を制御する第2制御回路を備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記第1制御回路は、前記第1ゲートに第1カソードが接続され、前記第1ソースに第1アノードが接続された第1ゲートダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記第2制御回路は、前記第2ゲートに第2カソードが接続され、前記第2ソースに第2アノードが接続された第2ゲートダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記第1制御回路は、前記第1ゲートに第3ドレインが接続され、前記第1ソースに第3ソースが接続された第3MISFETを備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記第2制御回路は、前記第2ゲートに第4ドレインが接続され、前記第2ソースに第4ソースが接続された第4MISFETを備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記主基板上に配置され、前記第1ゲートに接続された第1ゲート用信号配線パターン、および前記第1ソースに接続された第1ソースセンス用信号配線パターンを搭載する第1信号基板を備えることを特徴とする請求項1に記載のパワー回路。
前記主基板上に配置され、前記第2ゲートに接続された第2ゲート用信号配線パターン、および前記第2ソースに接続された第2ソースセンス用信号配線パターンを搭載する第2信号基板を備えることを特徴とする請求項2に記載のパワー回路。
前記第1制御回路は、前記第1ゲート用信号配線パターンと前記第1ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続された第1ゲートダイオードを備えることを特徴とする請求項7に記載のパワー回路。
前記第2制御回路は、前記第2ゲート用信号配線パターンと前記第2ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続された第2ゲートダイオードを備えることを特徴とする請求項8に記載のパワー回路。
前記第1制御回路は、前記第1ゲート用信号配線パターンと前記第1ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続された第3MISFETを備えることを特徴とする請求項7に記載のパワー回路。
前記第2制御回路は、前記第2ゲート用信号配線パターンと前記第2ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続された第4MISFETを備えることを特徴とする請求項8に記載のパワー回路。
前記第3MISFETのソースと前記第1MISFETのソースセンスとの間に接続され、ゲート負バイアス印加用の第1ゲートキャパシタを備えることを特徴とする請求項11に記載のパワー回路。
前記第4MISFETのソースと前記第2MISFETのソースセンスとの間に接続され、ゲート負バイアス印加用の第2ゲートキャパシタを備えることを特徴とする請求項12に記載のパワー回路。
前記第1ゲートダイオードが導通したときの順方向電圧は、前記第1MISFETのゲート・ソース間電圧の負側絶対最大定格よりも低くなるように回路定数を設定したことを特徴とする請求項3または9に記載のパワー回路。
前記第2ゲートダイオードが導通したときの順方向電圧は、前記第2MISFETのゲート・ソース間電圧の負側絶対最大定格よりも低くなるように回路定数を設定したことを特徴とする請求項4または10に記載のパワー回路。
前記第1MISFET、前記第2MISFETのいずれか一方は、SiC トレンチMISFETであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載のパワー回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
[第1の実施の形態]
(パワー回路)
第1の実施の形態に係るパワー回路1であって、ハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図1に示すように表される。また、第1の実施の形態に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2であって、ツーインワンモジュール(ハーフブリッジ内蔵モジュール)において、樹脂層120を形成前の模式的平面パターン構成は、
図15に示すように表される。なお、第1の実施の形態に係るパワー回路1は、ハーフフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても適用可能である。
【0016】
第1の実施の形態に係るパワー回路1は、
図1および
図15に示すように、絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MISFET:Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)を複数備え、電極パターン12
1・12
n・12
4を有する主基板10上に第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のドレインD1・D4が電気的に接続された回路であって、ゲートG1・G4、ソースセンスSS1・SS4、外部取り出しのゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1、電力端子P・Nを同時に備え、少なくとも第1MISFETQ1の第1ソースS1から第1ゲートG1に向けて導通する電流の経路を制御する第1制御回路を備える。
【0017】
さらに、詳細には、第1の実施の形態に係るパワー回路1は、
図1および
図15に示すように、主基板10と、主基板10上に配置され、正側電力端子Pに接続された第1電極パターン12
1と、主基板10上に配置され、負側電力端子Nに接続された第2電極パターン12
nと、主基板10上に配置され、出力端子Oに接続された第3電極パターン12
4と、第1電極パターン12
1上に第1ドレインD1が配置された第1MISFETQ1と、第3電極パターン12
4上に第2ドレインD4が配置された第2MISFETQ4と、第1MISFETQ1の第1ゲートG1・第1ソースS1間に接続され、第1ソースS1から前記第1ゲートG1に向けて導通する電流の経路を制御する第1制御回路とを備える。
【0018】
また、第2MISFETQ4の第2ゲートG4・第2ソースS4間に接続され、第2ソースS4から前記第2ゲートG4に向けて導通する電流の経路を制御する第2制御回路を備えていても良い。
【0019】
ここで、第1制御回路は、第1ゲートG1にカソードが接続され、第1ソースS1にアノードが接続された第1ゲートダイオードD
G1を備える。
【0020】
また、第2制御回路は、第2ゲートG4にカソードが接続され、第2ソースS4にアノードが接続された第2ゲートダイオードD
G4を備える。
【0021】
また、第1の実施の形態に係るパワー回路1は、
図1および
図15に示すように、電極パターン12
1・12
4の一部が、主基板10とは別の信号基板14
1・14
4上に配置され、信号基板14
1・14
4が主基板10上に配置され、制御回路は、信号基板14
1・14
4上に配置されていても良い。このような構成を採用することによって、制御回路は、トランジスタの瞬間的な発熱の影響を受けにくくなり、誤動作を回避することができる。
【0022】
さらに、詳細には、第1の実施の形態に係るパワー回路1は、
図15に示すように、主基板10上に配置され、第1ゲートG1に接続された第1ゲート用信号配線パターンGL1、および第1ソースS1に接続された第1ソースセンス用信号配線パターンSL1を搭載する第1信号基板14
1を備えていても良い。
【0023】
また、
図15に示すように、主基板10上に配置され、第2ゲートG4に接続された第2ゲート用信号配線パターンGL4、および第2ソースS4に接続された第2ソースセンス用信号配線パターンSL4を搭載する第2信号基板14
4を備え備えていても良い。
【0024】
ここで、第1制御回路は、
図15に示すように、第1ゲート用信号配線パターンGL1と第1ソースセンス用信号配線パターンSL1との間に接続された第1ゲートダイオードD
G1を備えていても良い。これらのパターンは互いに並行もしくは向かい合わせの配置を有することで寄生インダクタンスが抑制されていることが望ましい。
【0025】
また、第2制御回路は、
図15に示すように、第2ゲート用信号配線パターンGL4と第2ソースセンス用信号配線パターンSL4との間に接続された第2ゲートダイオードD
G4を備えていても良い。
【0026】
また、第1ゲートダイオードD
G1が導通したときの順方向電圧は、第1MISFETのゲート・ソース間電圧の負側絶対最大定格よりも低くなるように第1MISFETから第1ゲートダイオードまでの配線の寄生インダクタンスも考慮して回路定数を設定すると良い。同様に、第2ゲートダイオードD
G4が導通したときの順方向電圧は、第2MISFETのゲート・ソース間電圧の負側絶対最大定格よりも低くなるように第2MISFETから第2ゲートダイオードまでの配線の寄生インダクタンスも考慮して回路定数を設定すると良い。
【0027】
第1の実施の形態に係るパワー回路1においては、第1ゲートダイオードD
G1の順方向電圧降下分だけ、第1MISFETのゲート・ソース間にゲート負方向に電圧が印加される。
【0028】
このため、第1ゲートダイオードD
G1のオン特性を設計することで絶縁破壊を防止することができる。
【0029】
また、第1ゲートダイオードD
G1としては、ツェナーダイオードもしくはショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)を適用可能である。同様に、第2ゲートダイオードD
G4としても、ツェナーダイオードもしくはSBDを適用可能である。
【0030】
第1ゲートダイオードD
G1としては、ツェナーダイオードを適用すると、順方向電圧が高いため、ゲート負方向に印加される電圧が若干高くなるが、ショットキーバリアダイオードを適用すると、順方向電圧が低いため、ゲート負方向に印加される電圧が低くなり対応が容易である。
【0031】
すなわち、第1ゲートダイオードD
G1が導通したときの順方向電圧は、第1MISFETのゲート・ソース間電圧のゲート耐圧よりも低いことが必要である。第1MISFETのゲート・ソース間電圧の負側絶対最大定格値は、例えば、約−6V程度である。
【0032】
第1の実施の形態に係るパワー回路1およびパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、第1MISFETを搭載したゲートG1・ソースセンスSS1配線パターン(外部に繋がる信号端子GT1・SST1より内側に配置されることが重要)に、ゲート・ソース間電圧の振動を抑制するゲートダイオードD
G1(ソースセンスSS1側にアノードA、ゲートG1側にカソードK)を接続する。このようにゲートダイオードD
G1を接続することによって、ゲート・ソース間容量に負方向に電圧が掛かった場合のゲート・ソース間電圧の振動や発振を抑制し、安定的な動作を得ることができ、しかも簡易な回路で構成できるため、小型化可能である。
【0033】
図15の実装例では、ゲートダイオードD
G1・D
G2は、主基板10上に配置された信号基板14
1・14
4上に配置される例が示されている。
【0034】
図1に示すように、外部取り出しの信号端子GT1・SST1と第1MISFETQ1のゲートG1・ソースセンスSS1間には、信号端子GT1・SST1および電極配線の引き回しなどに伴う寄生的なインダクタンスL
GP1・L
SP1が存在する。このようなインダクタンス成分は、第1MISFETQ1のゲート閉回路に存在するため、第1MISFETQ1のゲート駆動における動作遅延やドレイン・ソース間電圧変化時のゲート・ソースセンス間電圧変動の増大を引き起こす。
【0035】
ゲートダイオードD
G1は、ゲートG1・ソースセンスSS1配線間に配置するが、このようなインダクタンス成分による寄生効果を抑制するためには、ダイオードD
G1のカソードK・アノードAから第1MISFETQ1のゲートパッド電極GP・ソースパッド電極SPまでの距離は短いほど効果が高い。ここで、第1MISFETQ1のゲートパッド電極GP・ソースパッド電極SPは、第1MISFETQ1の表面上に形成されている。このため、ゲートダイオードD
G1は、第1MISFETQ1と同じチップ内に作りこまれていても、第1MISFETQ1のソースパッド電極SP上にゲートダイオードD
G1チップのアノードAを直接はんだ付けする構成でも構わない。
【0036】
また、ゲートダイオードD
G1は、並列に配置される第1MISFETQ1毎にまとめて配置されていても良いが、複数の第1MISFETQ1毎に対してそれぞれ個別に接続されている方が効果的である。
【0037】
ゲートダイオードD
G1は、寄生インダクタンスL
GP1・L
SP1を有する外部取り出しの信号端子GT1・SST1よりも内側に配置されることが重要で、第1MISFETQ1に近ければ近いほど効果的であるが、端子間若しくは端子の先端を橋渡しする形で接続されていても効果は期待できる。
【0038】
但し、ゲートダイオードD
G1を第1MISFETQ1のチップ上に直接接続する場合は、温度が高くなるため、ゲートダイオードD
G1は、高温特性の良好なSiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体で構成することが望ましい。
【0039】
ゲートダイオードD
G1は配置的にツェナーダイオードを適用可能であるが、順方向特性が活用されるため、その特性が良いSBDなどの方がより効果的である。
【0040】
一方でツェナーダイオードを適用する場合には、正方向ゲート電圧のクランプ機能まで保持させることが期待される。
【0041】
以上の説明は、ゲートダイオードD
G2についても同様である。
【0042】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るパワー回路1によれば、小型でかつ発振を抑制したハーフフブリッジ回路を得ることができる。なお、ハーフフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても同様である。
【0043】
また、第1MISFETQ1、第2MISFETQ2のいずれか一方は、SiC MISFETで構成可能である。
【0044】
SiCは絶縁破壊電界が高いため、薄膜・ドリフト層を高濃度化することで、低いオン抵抗R
onを実現可能であるが、その分ドリフト層への空乏層拡張幅が制限され、帰還容量C
rssが下がりにくいために、ゲート・ソース間容量をC
gs、ゲート・ドレイン間容量をC
gdとすると、C
gs:C
gdの比が小さく、ドレイン電圧変化dV
ds/dtに起因するゲート誤オン動作が起きやすい。
【0045】
第1の実施の形態に係るパワー回路1を適用することによって、寄生発振を抑制し、高速スイッチング性能を確保することができる。
【0046】
また、第1MISFETQ1、第2MISFETQ2のいずれか一方は、SiC トレンチ(T:Trench)MISFETで構成されていても良い。SiC TMISFETでは、C
gs:C
gdの比を大きく設定することが難しく、例えば、ドレイン電圧100V以下の領域において容量比C
gd/C
gsは、約1/2〜1/20程度となる。例えば、SiC TMISFETは、基本的に電流経路にJFETを含まないため、帰還容量C
rssがより下がりにくいが、第1の実施の形態に係るパワー回路1を適用することによって、寄生発振を抑制し、高速スイッチング性能を確保することができる。
【0047】
第1の実施の形態に係るパワー回路1を内部に含むパワーモジュール2によれば、制御回路までが一体になったモジュールを構成可能である。このため、制御回路とMISFETの間の距離のバラツキを抑え、寄生インダクタンスの影響を制御可能である。
【0048】
(半導体デバイスの構成例)
―SiC DIMISFET―
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイス100の例であって、SiC DI(Double Implanted)MISFETの模式的断面構造は、
図2に示すように表される。
【0049】
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能なSiC DIMISFETは、
図2に示すように、n
-高抵抗層からなる半導体基板26と、半導体基板26の表面側に形成されたpボディ領域28と、pボディ領域28の表面に形成されたn
+ソース領域30と、pボディ領域28間の半導体基板26の表面上に配置されたゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38と、ソース領域30およびpボディ領域28に接続されたソース電極34と、半導体基板26の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域24と、n
+ドレイン領域24に接続されたドレイン電極36とを備える。
【0050】
図2では、半導体デバイス100は、pボディ領域28と、pボディ領域28の表面に形成されたn
+ソース領域30が、ダブルイオン注入(DI)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域30およびpボディ領域28に接続されたソース電極34に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図2に示すように、半導体デバイス100の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜44上に配置される。
【0051】
SiC DIMISFETは、
図2に示すように、pボディ領域28に挟まれたn
-高抵抗層からなる半導体基板26内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETが形成される。また、pボディ領域28/半導体基板26間には、
図2に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
【0052】
―SiC TMISFET―
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイス100の例であって、SiC TMISFETの模式的断面構造は、
図3に示すように表される。
【0053】
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能なSiC TMISFETは、
図3に示すように、n層からなる半導体基板26Nと、半導体基板26Nの表面側に形成されたpボディ領域28と、pボディ領域28の表面に形成されたn
+ソース領域30と、pボディ領域28を貫通し、半導体基板26Nまで形成されたトレンチの内にゲート絶縁層32および層間絶縁膜44U・44Bを介して形成されたトレンチゲート電極38TGと、ソース領域30およびpボディ領域28に接続されたソース電極34と、半導体基板26Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ドレイン領域24と、n
+ドレイン領域24に接続されたドレインパッド電極36とを備える。
【0054】
図3では、半導体デバイス100は、pボディ領域28を貫通し、半導体基板26Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁層32および層間絶縁膜44U・44Bを介して形成されたトレンチゲート電極38TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域30およびpボディ領域28に接続されたソース電極34に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図3に示すように、半導体デバイス100の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜44U上に配置される。
【0055】
SiC TMISFETでは、SiC DIMISFETのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETは形成されない。また、pボディ領域28/半導体基板26/n+ドレイン領域24間には、
図2と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
【0056】
また、第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイス100(Q1・Q4)には、SiC系MISFETの代わりに、GaN系FETなどを適用することもできる。
【0057】
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイス100(Q1・Q4)には、SiC系、GaN系のいずれかのパワーデバイスを適用可能である。
【0058】
更には、第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイス100(Q1・Q4)には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVの半導体を用いることができる。
【0059】
(電界分布)
SiCデバイスは、高絶縁破壊電界(例えば、約3MV/cmであり、Siの約3倍)であることから、Siに比べてドリフト層の膜厚を薄くし、かつ不純物密度を高く設定しても耐圧が確保できる。SiデバイスとSiCデバイスの比較であって、Si MISFETのpボディ領域28とn
-ドリフト層26の模式図は、
図4(a)に示すように表され、SiC MISFETのpボディ領域28とnドリフト層26Nの模式図は、
図4(b)に示すように表される。また、
図4(a)および
図4(b)に対応する電界強度分布は、
図4(c)に示すように模式的に表される。
【0060】
図4(c)に示すように、Si MISFETのピーク電界強度E
p2は、pボディ領域28/n
-ドリフト層26の接合界面、すなわち、pボディ領域28の表面から測った距離X1の位置で得られる。同様に、SiC MISFETのピーク電界強度E
p1は、pボディ領域28/nドリフト層26Nの接合界面、すなわち、pボディ領域28の表面から測った距離X1の位置で得られる。絶縁破壊電界の違いから、SiC MISFETのピーク電界強度E
p1は、Si MISFETのピーク電界強度E
p2よりも高く設定可能である。
【0061】
また、Si MISFETの空乏層の拡がり幅は、pボディ領域28の表面から測った距離X1〜X3の範囲であるのに対して、SiC MISFETの空乏層の拡がり幅は、pボディ領域28の表面から測った距離X1〜X2の範囲である。このため、必要なn
-ドリフト層の膜厚が小さく、不純物密度と膜厚の双方のメリットによって、n
-ドリフト層の抵抗値を低減し、オン抵抗R
onを低くすることができ、チップ面積を縮小化(小チップ化)可能である。さらにユニポーラデバイスであるMISFET構造のままで、Si IGBTに比肩し得る耐圧を実現可能であることから、高耐圧でかつ高速スイッチングできるとされ、スイッチング損失の低減が期待できる。
【0062】
一方、ドリフト層26・26Nの高濃度化と薄層化(X2<X3)は空乏層拡張幅を制限して出力容量および帰還容量が低減しにくいというディメリットを抱えている。
【0063】
さらに基本的に電流経路に接合型FET(JFET:Junction FET)構造を持たないSiC TMISFETにおいて、このディメリットは、特に顕著に現れ、オン抵抗R
onの低減化と誤オンのし易さがトレードオフになり、SiC系MISFETの高速応答性を阻害する。
【0064】
第1の実施の形態に係るパワー回路1によれば、少なくとも1つ以上のSiC系MISFETが、電気的に接続された回路において、意図した以外のスイッチング動作を契機としてトランジスタの少なくとも1つが制御できないオン/オフを繰り返す発振をしてしまう現象を防止することができる。
【0065】
第1の実施の形態によれば、特に、少なくとも1つ以上のSiC系MISFETが、電気的に接続された回路において、寄生発振を抑制し、高速スイッチング性能のパワー回路およびパワー回路を搭載するパワーモジュールを提供することができる。
【0066】
(ゲート誤オンおよびドレインサージ電圧)
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能な半導体デバイスQの寄生効果の説明図は、
図5(a)に示すように表され、ドレイン・ソース間電圧V
dsの振動波形の説明図は、
図5(b)に示すように表される。
【0067】
図5(a)において、C
gsはゲート・ソース間容量、C
dsはドレイン・ソース間容量、C
gdはゲート・ドレイン間容量、I
dはドレイン電流を示す。ゲート・ドレイン間容量C
gdは、半導体デバイスQの帰還容量C
rssに等しい。また、L
GP・L
SPは、ゲート端子G・ソース端子Sに伴う寄生インダクタンスを表す。
図5(a)に示すように、ゲート・ソース間の短絡状態においては、ゲート・ソース間の閉回路に存在するインダクタンス成分は、L
GP+L
SPとなる。
【0068】
このゲート・ソース間短絡状態において、ドレイン電圧V
dsが変化すると、短絡配線には半導体デバイスQの寄生ゲート抵抗およびインダクタンス成分L
GP+L
SPが存在するため、過渡応答において瞬間的にゲート・ソース間容量C
gsに分圧が発生し、それがゲート閾値を超過すると、誤オン(誤点弧)が発生する。
【0069】
ドレイン電圧変化dV
ds/dtに起因するゲートの誤オン(誤点弧)が起きる現象は、C
gs:C
gdの比が小さいスイッチング素子を高速スイッチングする際に起き易い。
【0070】
また、ドレイン電流が収束するときのドレインサージ電圧ΔVは、−L(dI
d/dt)で表され、
図5(b)に示すような振動波形となり、このドレインサージ電圧ΔVが大きすぎるとMISFETを破壊し得るだけでなく、ノイズ源にもなる。ここで、Lは、主回路部(ハーフブリッジと電源供給回路(電源やコンデンサで構成される部分全体))の合成寄生インダクタンスを表す。
【0071】
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能なSiC MISFETQ1のゲート・ソース間の寄生効果の説明図は、
図6(a)に示すように表され、ゲート・ソース間の分布定数回路の説明図は、
図6(b)に示すように表され、ゲート・ソース間の分布定数回路の等価回路図は、
図6(c)に示すように表される。
【0072】
第1の実施の形態に係るパワー回路1に適用可能なSiC MISFETQ1のゲート・ソース間には、インダクタンス成分として、ゲート端子GT1とゲートG1間の寄生インダクタンスL
GP1・ソースセンス端子SST1とソースセンスSS1間の寄生インダクタンスL
SP1が存在し、また、キャパシタンス成分として、寄生キャパシタンスC
GP・C
GPが存在する。これらのインダクタンス成分・キャパシタンス成分は、詳細には、
図6(b)に示すように、分布ゲートインダクタンスl
gp・分布ソースインダクタンスl
spおよび分布ゲートキャパシタンスC
gpからなる分布定数回路によって表すことができる。すなわち、
図6(b)に示される分布定数回路が、
図6(c)に示されるゲート・ソース間の等価回路に対応する。このような分布定数回路の等価回路が、
図6(a)に示すように、SiC MISFETQ1のゲート・ソース間に配置される。
【0073】
(発振現象)
SiC MISFETを使用した第1の実施の形態に係るパワー回路1において、発生している発振現象を説明する回路図は、
図7に示すように表される。
【0074】
図7の構成においては、SiC TMISFETを使用したハーフブリッジ内蔵モジュールの誘導負荷スイッチング評価で発生している発振の問題を説明している。
【0075】
図7に示すように、第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のハーフブリッジ回路構成において、正側電力端子P・負側電力端子N間には、電源電圧E・電界キャパシタC
E・一括スナバキャパシタC1が接続されている。ここで、還流側(ハイ側)の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間には、負荷インダクタンスL1が接続されており、第1MISFETQ1のゲート・ソース間を信号端子部分で短絡し、第1MISFETQ1をオフにした状態において、駆動側(ロー側)の第2MISFETQ4のゲート・ソース間にゲートドライバ50からゲート駆動電圧を印加した。
【0076】
ここで、電源電圧E=100V、 負荷インダクタンスL1=500μH、ゲート駆動電圧=18V/0V、外付けゲート抵抗は0Ωである。
【0077】
以上の条件において、ゲート駆動電圧を印加した後のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lの波形例、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lの波形例、およびドレイン電流I
d,H・I
d,Lの波形例は、
図8に示すように表される。
図8において、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lは、20V/div、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lは、100V/div、ドレイン電流I
d,H・I
d,Lは、50A/divである。
【0078】
ここで、V
gs,Hは、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート-ソースセンス間電圧、V
gs,Lは、ロー側の第2MISFETQ4のゲート-ソースセンス間電圧を表す。また、V
ds,Hは、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧、V
ds,Lは、ロー側の第2MISFETQ4のドレイン・ソース間電圧を表す。また、I
d,Hは、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン電流(ソース→ドレイン方向)、I
d,Lは、ロー側の第2MISFETQ4のドレイン電流(ドレイン→ソース方向)を表す。
【0079】
図8に示すように、ロー側の第2MISFETQ4のオン時、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートが意図しないオン/オフを繰り返す現象(発振)が発生している。この現象は回路内各部の寄生インダクタンスや寄生容量によって異なる波形を示すが、各波形の形状に関わらず、同じ原因によって発生している現象全体を対象としている。また、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hには、電源電圧E=100Vの2倍〜4倍以上のサージ電圧が掛かっており、電源電圧Eがより大きな値であった場合には、容易にデバイス破壊に繋がる。
【0080】
また、I
d,Hは、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン電流(ソース→ドレイン方向)、I
d,Lは、ロー側の第2MISFETQ4のドレイン電流(ドレイン→ソース方向)を表すことから、
図8に示すように、ハイ側の第1MISFETQ1とロー側の第2MISFETQ4間のアーム間短絡電流が観測されている。
【0081】
―対象の電源回路―
第1の実施の形態に係るパワー回路1を搭載するパワーモジュールとしては、ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などのブリッジ構造を内蔵させた電源回路向けモジュールに適用可能である。フルブリッジ回路では、2相インバータを構成可能であり、3相ブリッジ回路では、3相交流インバータを構成可能であり、ハーフブリッジ回路を複数使用することでも同様の構成が可能である。
【0082】
SiC MISFETを使用した第1の実施の形態に係るパワー回路1を適用可能な3相交流インバータの模式的回路構成は、
図9に示すように表される。
【0083】
図9に示すように、3相交流インバータは、ゲートドライバ50と、ゲートドライバ50に接続されたパワーモジュール部52と、3相交流モータ54とを備える。パワーモジュール部52は、3相交流モータ54のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。ここで、ゲートドライバ50は、SiC MISFETQ1・Q4、SiC MISFETQ2・Q5、およびQ3・Q6に接続されている。
【0084】
パワーモジュール部52は、電源電圧Eの接続された正側電力端子Pと負側電力端子N間に、インバータ構成のSiC MISFETQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6が接続されている。さらに、SiC MISFETQ1〜Q6のソース・ドレイン間には、ダイオード(図示省略)がそれぞれ逆並列に接続される。
【0085】
図9の構成においては、SiC MISFETを使用した3相交流インバータ用のパワーモジュールで発生している発振の問題を説明している。
【0086】
図9の構成においても、
図7・8において説明した現象と同様の発振の問題が発生し得る。すなわち、
図9の構成においても、ハーフブリッジのハイ側の第1MISFETQ1・ロー側の第2MISFETQ4のスイッチング素子が接続された状態において、デッドタイム中から片アームのスイッチング素子がオンしたときに、
図7・8において説明した現象と同様の発振の問題が発生し得る。このような動作モードは、連続動作中にも該当する動作モードが存在する。また、高速スイッチングさせるほど発生しやすい。
【0087】
尚、3相インバータだけでなく、同期整流を使ったコンバータでも発生し得る。
【0088】
ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいて、コンバータやインバータを動作させる場合の、デッドタイム状態から片側アームのスイッチング素子がオンするとき、ドレイン電圧変化dV
ds/dtに起因するゲートの誤オン(誤点孤)が起きる現象は、ゲート・ソース間容量C
gsとゲート・ドレイン間容量C
gdの比が小さいスイッチング素子を高速スイッチングする際に起き易い。
【0089】
―発振のトリガおよびエネルギー供給源―
SiC MISFETを使用した第1の実施の形態に係るパワー回路において、発振現象における発振のトリガを説明する回路図は、
図10(a)に示すように表され、発振中のエネルギー供給源を説明する回路図は、
図10(b)に示すように表される。
【0090】
第1の実施の形態に係るパワー回路1において、発振現象における発振のトリガは、
図10(a)に示すように、ロー側の第2MISFETQ4のオン動作に伴うハイ側の第1MISFETQ1の急激なドレイン・ソース間電圧変化dV
ds,H/dtに起因するゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの増加によって、第1MISFETQ1の閾値電圧を超過した場合に発生し、正側電力端子P・負側電力端子N間を短絡する電流が流れる。
【0091】
ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間は短絡しているが、寄生ゲート抵抗や寄生インダクタンスL
Gが存在するため、第1MISFETQ1のドレイン・ソース間に電圧が掛かると、ゲート・ソース間にも瞬間的にドレイン・ソース間電圧変化dV
ds,H/dtが分圧されて印加される。すなわち、第1MISFETQ1の急激なドレイン・ソース間電圧変化(増加)時にゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hも引きずられて増加する。
【0092】
第1の実施の形態に係るパワー回路1において、発振中のエネルギー供給源は、
図10(b)に示すように、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの共振に起因する短絡電流収束時にドレイン電圧サージとして蓄積されたエネルギーの一部が閉ループLP1でのリンギングを通してゲート・ソース間容量C
gsに流入することによって発生している。すなわち、ゲート・ソース間容量C
gsに注入電流I
iが流入して第1MISFETQ1のゲート・ソース間に負電圧が印加され、その電圧が閉ループLP1・LP2において振動することで再誤オンに至る。発振中のエネルギーは、短絡が収束する毎に供給される。第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hのリンギング波形例は、
図8に示される通りである。
【0093】
誤オンしやすいデバイスおよびモジュール特性は、ゲート閾値が低いこと、寄生ゲート抵抗やゲート・ソース間短絡閉ループLP2の寄生インダクタンスが大きいこと、ゲート・ソース間容量C
gsとゲート・ドレイン間容量C
gdの比が小さいことである。
【0094】
一方、発振が継続しやすいデバイスおよびモジュール特性は、ゲート・ソース間短絡閉ループLP2の寄生インダクタンスが大きいこと、誤オン時に短絡電流を供給する閉ループLP1の寄生インダクタンスが大きいことである。
【0095】
SiC系MISFETは本質的にゲート・ソース間容量C
gsとゲート・ドレイン間容量C
gdの比が小さい。特に、SiC TMISFETは電流経路に接合型FET(JFET)がなく、オン抵抗R
onが低いため同じドレイン電流を流すためのゲート・ソースセンス間電圧がより低くなり、誤オンと発振エネルギー供給の合成現象が顕著に現れやすい。
【0096】
第1の実施の形態に係るパワー回路1における誤動作および寄生発振の抑制効果は、基本的にドレイン電圧変化起因の誤オンが発生してしまった後のことを想定している。
【0097】
第1の実施の形態に係るパワー回路1においては、第1MISFETQ1の第1ゲートG1・第1ソースセンスSS1間にゲートダイオードD
G1を接続する。第1MISFETQ1のゲートに負方向に電圧が印加されたときにゲートダイオードD
G1をオンさせて、ゲートG1・ソースセンスSS1間短絡配線に低インピーダンスな電流経路を形成し、大きな寄生インダクタンスを有する信号端子GT1・SST1などを含まない経路でソースセンスSS1からゲートG1に向けて放電させる。この結果、ゲート・ソース間容量C
gsへの負方向の充電とゲート電圧の振動を抑制し、再誤オンに至らないようにする。
【0098】
第1の実施の形態に係るパワー回路1においては、ゲートダイオードD
G1は、ゲート電圧の動きに対してパッシブに動作するため、IC制御を適用する場合におけるICを介した時間遅延がない。このため、極短時間で起きる現象に対しても、応答可能である。さらに、新たな制御端子を増やす必要がないため、モジュール全体の小型化のメリットも損なわずに機能が得られる。
【0099】
以上の対策は、高速スイッチング性能を損なわずにゲート発振を抑制するための手法として、ユニポーラスイッチング素子を搭載するSiCパワーモジュールのメリットを活かすことに繋がる。
【0100】
(シミュレーションによる効果の説明)
第1の実施の形態に係るパワー回路1において、制御回路としてのゲートダイオードを接続しない場合の動作シミュレーションを説明する回路図は、
図11(a)に示すように表される。
【0101】
図11(a)に示すように、第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のハーフブリッジ構成において、正側電力端子P・負側電力端子N間には、電源電圧E・電界キャパシタC
E・スナバキャパシタC1が接続されている。電源電圧Eには寄生インダクタンスL
E・電界キャパシタC
Eには寄生インダクタンスL
CE・スナバキャパシタC1には寄生インダクタンスL
C1が接続されている。ここで、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間には、負荷インダクタンスL1が接続されており、第1MISFETQ1のゲート・ソース間を信号端子部分で短絡し、第1MISFETQ1をオフにした状態において、ロー側の第2MISFETQ4のゲート・ソース間にゲートドライバ50からゲート駆動電圧を印加した。
【0102】
ここで、電源電圧E=100V、 負荷インダクタンスL1=500μH、ゲート駆動電圧=18V/0V、外付けゲート抵抗は、0Ωである。
【0103】
以上の条件において、ゲート駆動電圧を印加した後のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lの波形例、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lの波形例、およびドレイン電流I
d,H・I
d,Lの波形例は、
図11(b)に示すように表される。
図11(b)において、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lは、20V/div、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lは、50V/div、ドレイン電流I
d,H・I
d,Lは、25A/divである。
【0104】
図11(b)に示すように、ロー側の第2MISFETQ4のオン時、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートが意図しないオン/オフを繰り返す現象が発生している。また、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hには、電源電圧E=100Vの2倍以上の電圧が掛かっており、電源電圧Eがより大きな値であった場合には、容易にデバイス破壊に繋がる。
【0105】
また、I
d,Hは、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン電流(ソース→ドレイン方向)、I
d,Lは、ロー側の第2MISFETQ4のドレイン電流(ドレイン→ソース方向)を表すことから、
図11(b)に示すように、ハイ側の第1MISFETQ1・ロー側の第2MISFETQ4のアーム間短絡電流が流れている。
【0106】
SiC TMISFETを使用した第1の実施の形態に係るパワー回路において、制御回路としてのゲートダイオードD
G1を接続した場合の動作シミュレーションを説明する回路図は、
図12に示すように表される。
図12において、制御回路としてのゲートダイオードD
G1は、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間に接続されている。その他の構成は、
図11(a)と同様である。
【0107】
図12において、ゲート駆動電圧を印加した後のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lの波形例、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lの波形例、およびドレイン電流I
d,H・I
d,Lの波形例は、
図13(a)に示すように表される。
図13(a)において、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lは、20V/div、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lは、50V/div、ドレイン電流I
d,H・I
d,Lは、25A/divである。
【0108】
図13(a)に示すように、ロー側の第2MISFETQ4のオン時、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートにおけるオン/オフを繰り返す現象は抑制されている。また、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hにおけるサージ電圧の発生も抑制されている。
【0109】
また、
図13(a)に示すように、ハイ側の第1MISFETQ1・ロー側の第2MISFETQ4のアーム間短絡電流の導通も抑制されている。
【0110】
制御回路としてのゲートダイオードD
G1を接続した場合(
図12)のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの波形例(実線)とゲートダイオードD
G1を接続しない場合(
図11(a))のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの波形例(破線)は、
図12(b)に示すように表される。
【0111】
ゲートダイオードD
G1を接続しない場合(
図11(a))のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの波形例(破線)は、
図12(b)に示すように、ロー側の第2MISFETQ4のオン時、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートが意図しないオン/オフを繰り返す現象が発生しているが、ゲートダイオードD
G1を接続した場合(
図12)のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの波形例(実線)は、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートにおけるオン/オフを繰り返す現象は、抑制されている。特に、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの波形例(実線)は、−0.5V程度でクランプされている。この値は、ゲートダイオードD
G1の順方向電圧の値を反映している。
【0112】
さらに、パワー回路1において、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間をアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1で短絡した場合の動作シミュレーションを説明する回路図は、
図13(a)に示すように表され、
図13(a)において、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lの波形例、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lの波形例、およびドレイン電流I
d,H・I
d,Lの波形例は、
図13(b)に示すように表される。
図14(b)において、ゲート・ソースセンス間電圧V
gs,H・V
gs,Lは、20V/div.、ドレイン・ソース間電圧V
ds,H・V
ds,Lは、50V/div.、ドレイン電流I
d,H・I
d,Lは、25A/div.である。ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間をアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1で短絡した場合も、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートにおけるオン/オフを繰り返す現象は抑制されている。特に、ロー側の第2MISFETQ2のオン動作に伴うハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hの急変化時にはすでにゲート・ソースセンス間が低インダクタンスで短絡されているため、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの増加や短絡時間が抑制される。また、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hにおけるサージ電圧の発生やゲート・ソースセンス間電圧への逆方向電圧サージや、ハイ側の第1MISFETQ1・ロー側の第2MISFETQ4のアーム間短絡も抑制されている。なお、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1を適用する例は、
図20に示される第2の実施の形態に係るパワー回路1において、詳細に説明する。
【0113】
以上より、第1の実施の形態によれば、MISFETによって構成されたパワー回路の動作時において、誤オンや誤オンから寄生発振への誘発を抑制し、かつ小型化、高速スイッチング性能のパワー回路およびパワー回路を搭載したパワーモジュールを提供することができる。
【0114】
(パワーモジュール)
第1の実施の形態に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、樹脂層120を形成前の模式的平面パターン構成は、
図15に示すように表され、樹脂層120を形成後の模式的鳥瞰構成は、
図16に示すように表される。第1の実施の形態に係るパワーモジュール2は、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。すなわち、2個のMISFETQ1・Q4が1つのモジュールに内蔵されている。
【0115】
図15に示されたパワーモジュール2の回路構成が、
図1に示されたパワー回路1に対応している。
図15においては、MISFETQ1・Q4は、それぞれ4チップ並列に配置されている例が示されている。
【0116】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール2は、
図15および
図16に示すように、樹脂層120に被覆されたセラミック基板10の第1の辺に配置された正側電力端子Pおよび負側電力端子Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子Oと、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4とを備える。ここで、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、MISFETQ1のゲート用信号配線パターンGL1・ソース用信号配線パターンSL1に接続され、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4は、MISFETQ4のゲート用信号配線パターンGL4・ソース用信号配線パターンSL4に接続される。
【0117】
図15に示すように、MISFETQ1・Q4から信号基板14
1・14
4上に配置されたゲート用信号配線パターンGL1・GL4およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4に向けてゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4が接続される。また、ゲート用信号配線パターンGL1・GL4およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4が半田付けなどによって接続される。
【0118】
図15に示すように、ゲート用信号配線パターンGL1とソースセンス用信号配線パターンSL1上には、信号配線パターンを跨ぐようにゲートダイオードD
G1が半田付けなどによって接続される。同様に、ゲート用信号配線パターンGL4とソースセンス用信号配線パターンSL4上には、信号配線パターンを跨ぐようにゲートダイオードD
G4が半田付けなどによって接続される。このため、ゲートダイオードD
G1・D
G4が動作するとき、ソースセンスSS1・SS4からゲートG1・G4に向けて流れる電流は、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4を含まないモジュール内部のみの低インダクタンス経路を通る。
図1・
図15に示すように、ゲートダイオードD
G1・D
G4は主回路配線を含まない配線上に接続されていることで、効果的に働く。信号基板14
1・14
4は、主基板10上に、半田付けなどによって接続される。
【0119】
図15に示すように、第1の実施の形態に係るパワーモジュール2は、正側電力端子P・負側電力端子N間に電気的に接続されるスナバキャパシタC
Bを備えていても良い。
【0120】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール2において、上面板電極22
1・22
4を形成後で樹脂層120を形成前の模式的鳥瞰構成は、
図17に示すように表される。4チップ並列に配置されたMISFETQ1・Q4のソースS1・S4は、上面板電極22
1・22
4によって共通に接続される。尚、
図17においては、ゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4は図示を省略している。
【0121】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール2においては、制御回路(ゲートダイオードD
G1・D
G4)とMISFETQ1・Q4の間の距離のバラツキを抑え、寄生インダクタンスの影響を制御可能である。
【0122】
なお、
図1・
図15〜
図19においては、図示は省略されているが、MISFETQ1・Q4のD1・S1間およびD4・S4間に逆並列にダイオードが接続されていても良い。
【0123】
図15〜
図19に示された例では、4チップ並列に配置されたMISFETQ1・Q4のソースS1・S4は、上面板電極22
1・22
4によって共通に接続されているが、上面板電極22
1・22
4の代わりにソース同士がワイヤで導通されていても良い。
【0124】
正側電力端子P・負側電力端子N、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4は、例えば、Cuで形成可能である。
【0125】
主基板10、信号基板14
1・14
4は、セラミック基板で形成可能である。セラミック基板は、例えば、Al
2O
3、AlN、SiN、AlSiC、若しくは少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
【0126】
主配線導体(電極パターン)12・12
0・12
1・12
4・12
nは、例えば、Cu、Alなどで形成可能である。
【0127】
MISFETQ1・Q4のソースS1・S4と上面板電極22
1・22
4を接続する電極柱20
1・20
4および上面板電極22
1・22
4部分は、例えば、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。線熱膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)の値が同等である同じ大きさの材料を比較すると、発生応力は、ヤング率の値が大きい材料の方が大きくなる。このため、ヤング率×CTEの数値が、より小さい材料を選定することによって、発生応力の値の小さな部材を達成することができる。CuMoは、このような利点を有している。また、CuMoは、Cuには劣るが、電気抵抗率も相対的に低い。また、上面板電極22
1・22
4間の表面に沿った離隔距離は、沿面距離と呼ばれる。沿面距離の値は、例えば、約2mmである。
【0128】
ゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4は、例えば、Al、AlCuなどで形成可能である。
【0129】
MISFETQ1・Q4としては、SiC DIMISFET、SiC TMISFETなどのSiC系パワーデバイス、あるいはGaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)などのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MISFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
【0130】
ゲートダイオードD
G1・D
G4としては、Si系SBDやツェナーダイオード、SiC系あるいはGaN系などのワイドギャップ半導体を用いたSBDやツェナーダイオードを適用可能である。
【0131】
また、正側電力端子P・負側電力端子N間に接続されるスナバキャパシタとしては、セラミックキャパシタなどを適用可能である。
【0132】
また、樹脂層120としては、SiC系半導体デバイスに適用可能なトランスファモールド樹脂、熱硬化樹脂などを使用可能である。また、 シリコンゲルなどのシリコーン系樹脂を部分的に若しくはケース型パワーモジュールを採用して全体に適用しても良い。
【0133】
(変形例)
第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール2において、樹脂層120を形成前の模式的平面パターン構成は、
図18に示すように表され、樹脂層120を形成後の模式的鳥瞰構成は、
図19に示すように表される。第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール2においては、上面板電極22
1・22
4の代わりに、ボンディングワイヤBW
S1・BW
S4を用いている。すなわち、
図18に示すように、MISFETQ1のソースパッド電極SP1と電極パターン12
4間は、ボンディングワイヤBW
S1を介して接続されており、MISFETQ4のソースパッド電極SP4と電極パターン12
n(EP)は、ボンディングワイヤBW
S1を介して接続されている。ボンディングワイヤBW
S1・BW
S4は、例えば、Al、AlCuなどで形成可能である。
【0134】
信号基板14
1・14
4とMISFETQ1・Q4との間の距離は、例えば、約2mm程度離隔される。ボンディングワイヤBW
S1・BW
S4を短く設定するためである。
【0135】
また、第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール2は、
図18に示すように、正側電力端子P・負側電力端子N間に接続されたスナバキャパシタC
B・C
Bを備えていても良い。
【0136】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0137】
[第2の実施の形態]
(パワー回路およびパワーモジュール)
第2の実施の形態に係るパワー回路1であって、ハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図20に示すように表される。なお、第2の実施の形態に係るパワー回路1は、ハーフフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても適用可能である。
【0138】
また、第2の実施の形態に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、樹脂層120を形成前の模式的平面パターン構成は、
図15と同様に表される。
【0139】
また、第2の実施の形態に係るパワーモジュール2には、第1の実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュール2の構成例(
図15〜
図19)と同様の構成が適用可能である。
【0140】
第2の実施の形態に係るパワー回路1およびパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、
図20に示すように、第1の実施の形態におけるゲートダイオードD
G1・D
G4の代わりにアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・Q
M4を適用している。
【0141】
また、第2の実施の形態に係るパワー回路1において、制御回路として適用されるアクティブミラークランプの動作回路説明図は、
図21(a)に示すように表され、
図21(a)の動作波形説明図は、
図21(b)に示すように表される。
【0142】
図21(a)に示すように、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1は、第1MISFETQ1のゲート・ソース間に並列接続され、第1MISFETQ1とは、互いにオフ状態のデッドタイムを設けて相補的な動作を基本的に実行する。すなわち、
図21(b)に示すように、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1のゲート・ソース間電圧V
gs’がハイレベルにあると、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1のドレイン・ソース間電圧に等しい第1MISFETQ1のゲート・ソース間電圧V
gsは、ローレベルとなり、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1のゲート・ソース間電圧V
gs’がローレベルにある状態でゲート駆動信号が入力されると、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1のドレイン・ソース間電圧に等しい第1MISFETQ1のゲート・ソース間電圧V
gsは、ハイレベルとなる。
【0143】
図21(a)において、ゲート抵抗R
g1・R
g2、pnp型バイポーラトランジスタQ
p・npn型バイポーラトランジスタQ
nおよびキャパシタC
iは、第1MISFETQ1のゲートドライバ回路を模式的に表している。インバータ構成のpnp型バイポーラトランジスタQ
p・npn型バイポーラトランジスタQ
nのゲート端子G
pに信号を入力することによって、第1MISFETQ1をオン/オフ駆動することができる。尚、pnp型バイポーラトランジスタQ
p・npn型バイポーラトランジスタQ
nの代わりにCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)FETを適用しても良い。
【0144】
第2の実施の形態に係るパワー回路1およびパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のゲート・ソースセンス間電圧V
gs・V
gsに相補的に動作するアクティブミラークランプ回路(アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・Q
M4)をモジュール内に設けて、第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のそれぞれのゲートオフ期間中に対応するアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・・Q
M4を動作させておくことで、ゲート・ソース間容量に負方向電圧が掛かったときに第1の実施の形態におけるゲートダイオードD
G1・D
G4と同様の効果が得られる。
【0145】
アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・・Q
M4のゲート信号配線パターンとミラークランプ用ゲート端子MGT1・MGT4が新たに必要であるが、ゲートダイオードD
G1・D
G4と比較するとダイオード応答時間を省略して短絡配線の低インピーダンス化効果が得られるため、ドレイン電圧変化起因の誤オンも抑制することができる。
【0146】
また、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・・Q
M4は、信号基板14
1・14
4上に配置することで、半導体チップの瞬間的な発熱の影響を回避することができる。
【0147】
パワー回路1において、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間をアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1で短絡した場合の動作シミュレーションについては、
図14(a)および
図14(b)において説明した通りである。ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソース間をアクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1で短絡した場合、オフを継続すべきハイ側の第1MISFETQ1のゲートにおけるオン/オフを繰り返す現象は抑制される。特に、ロー側の第2MISFETQ2のオン動作に伴うハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hの急変化時にはすでにゲート・ソースセンス間が低寄生インダクタンスで短絡されているため、ハイ側の第1MISFETQ1のゲート・ソースセンス間電圧V
gs,Hの増加や短絡時間が抑制される。また、ハイ側の第1MISFETQ1のドレイン・ソース間電圧V
ds,Hにおけるサージ電圧の発生や、ハイ側の第1MISFETQ1・ロー側の第2MISFETQ4のアーム間短絡も抑制される。
【0148】
第2の実施の形態に係るパワー回路1は、
図20および
図15に示すように、MISFETを複数備え、電極パターン12
1・12
n・12
4を有する主基板10上に第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のドレインD1・D4が電気的に接続された回路であって、ゲートG1・G4、ソースセンスSS1・SS4、外部取り出しの信号端子GT1・SST1、電力端子P・Nを同時に備え、少なくとも第MISFETQ1の第1ソースS1から前記第1ゲートG1に向けて導通する電流の経路を制御する第1制御回路を備える。
【0149】
さらに、詳細には、第2の実施の形態に係るパワー回路1は、
図20および
図15に示すように、主基板10と、主基板10上に配置され、正側電力端子Pに接続された第1電極パターン12
1と、主基板10上に配置され、負側電力端子Nに接続された第2電極パターン12
nと、主基板10上に配置され、出力端子Oに接続された第3電極パターン12
4と、第1電極パターン12
1上に第1ドレインD1が配置された第1MISFETQ1と、第3電極パターン12
4上に第2ドレインD4が配置された第2MISFETQ4と、第1MISFETQ1の第1ゲートG1および第1ソースS1間に接続され、第1ソースS1から前記第1ゲートG1に向けて導通する電流の経路を制御する第1制御回路とを備える。
【0150】
また、第2MISFETQ4の第2ゲートG4および第2ソースS4間に接続され、第2ソースS4から前記第2ゲートG4に向けて導通する電流の経路を制御する第2制御回路を備えていても良い。
【0151】
ここで、第1制御回路は、第1ゲートに第3ドレインが接続され、第1ソースに第3ソースが接続されたミラークランプ用の第3MISFETQ
M1を備える。
【0152】
また、第2制御回路は、第2ゲートに第4ドレインが接続され、第2ソースに第4ソースが接続されたミラークランプ用の第4MISFETQ
M4を備える。
【0153】
また、第2の実施の形態に係るパワー回路1は、
図20および
図15に示すように、電極パターン12
1・12
n・12
4の一部が、主基板10とは別の信号基板14
1・14
4上に配置されており、信号基板14
1・14
4が主基板10上に配置され、制御回路は、信号基板14
1・14
4上に配置されていても良い。このような構成を採用することによって、制御回路は、トランジスタの瞬間的な発熱の影響を受けにくくなり、誤動作を回避することができる。
【0154】
さらに、詳細には、第2の実施の形態に係るパワー回路1は、
図15と同様に、主基板10上に配置され、第1ゲートG1に接続された第1ゲート用信号配線パターンGL1、第1ソースS1に接続された第1ソースセンス用信号配線パターンSL1、およびアクティブミラークランプ用ゲートMG1に接続されたアクティブミラークランプ用のゲート用信号配線パターンMGL1(図示省略)を搭載する第1信号基板14
1を備えていても良い。
【0155】
また、
図15と同様に、主基板10上に配置され、第2ゲートG4に接続された第2ゲート用信号配線パターンGL4、および第2ソースS4に接続された第2ソースセンス用信号配線パターンSL4、およびアクティブミラークランプ用ゲートMG4に接続されたアクティブミラークランプ用のゲート用信号配線パターンMGL4(図示省略)を搭載する第2信号基板14
4を備え備えていても良い。
【0156】
ここで、第1制御回路は、第1ゲート用信号配線パターンと第1ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続されたアクティブミラークランプ用の第3MISFETQ
M1を備えていても良い。
【0157】
また、第2制御回路は、第2ゲート用信号配線パターンと第2ソースセンス用信号配線パターンとの間に接続されたアクティブミラークランプ用の第4MISFETQ
M4を備えていても良い。
【0158】
アクティブミラークランプ回路の場合、アクティブミラークランプ用のMISFETQ
M1・Q
M4のゲートMG1・MG4も信号基板14
1・14
4上に形成することで、コンパクトに形成可能である。この場合、3つの配線、すなわち、MISFETQ
1・Q
4のゲート用信号配線パターンGL1・GL4、ソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4、MISFETQ
M1・Q
M4のアクティブミラークランプゲート用信号配線パターンMGL1・MGL4が、主基板10平面上で並行に配置され、MISFETQ
M1・Q
M4のアクティブミラークランプゲート用信号配線パターンMGL1・MGL4がその他の配線で挟まれている構成が望ましい。
【0159】
第2の実施の形態に係るパワー回路1およびパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、第1MISFETを搭載したゲートG1・ソースセンスSS1配線パターン(外部に繋がる信号端子GT1・SST1より内側であることが重要)に、ゲート・ソース間電圧の振動を抑制するアクティブミラークランプ用の第3MISFETQ
M1(ソースセンスSS1側にソース、ゲートG1側にドレイン)を接続する。このように第3MISFETQ
M1を接続することによって、誤オンが発生した場合でもゲート・ソース間容量に負方向に流入する電流およびゲート・ソース間電圧の振動を抑制し、安定的な動作を動作を得ることができる。しかも簡易な回路で構成可能であるため、小型化可能である。ダイオードと異なり、常に動作させておけるため、瞬時に動作可能であり、かつドレイン・ソース間電圧の変化に起因するゲート・ソース間電圧変化や誤オンも抑制可能である。
【0160】
図20に示すように、外部取り出しの信号端子GT1・SST1と第1MISFETQ1のゲートG1・ソースセンスSS1間には、信号端子および電極配線の引き回しなどに伴う寄生的なインダクタンスL
GP1・L
SP1が存在する。このようなインダクタンス成分は、第1MISFETQ1のゲート閉回路に存在するため、第1MISFETQ1のゲート駆動における動作遅延を引き起こす。
【0161】
第3MISFETQ
M1は、ゲートG1・ソースセンスSS1配線間に配置するが、このようなインダクタンス成分による寄生効果を抑制するためには、第3MISFETQ
M1のドレイン・ソースから第1MISFETQ1のゲートパッド電極GP・ソースセンスパッド電極SSPまでの距離は短いほど効果が高い。ここで、第1MISFETQ1のゲートパッド電極GP・ソースセンスパッド電極SSPは、第1MISFETQ1の表面上に形成されている。このため、第3MISFETQ
M1は、第1MISFETQ1と同じチップ内に作りこまれていても、第1MISFETQ1のソースパッド電極SP上に第3MISFETQ
M1のソースを直接はんだ付けする構成でも構わない。
【0162】
また、第3MISFETQ
M1は、並列に配置される第1MISFETQ1毎にまとめて配置されていても良いが、複数の第1MISFETQ1毎に対してそれぞれ個別に接続されている方が効果的である。
【0163】
第3MISFETQ
M1は、寄生インダクタンスL
GP1・L
SP1を有する外部取り出しの信号端子GT1・SST1よりも内側に配置されることが重要で、第1MISFETQ1に近ければ近いほど効果的である。
【0164】
但し、第3MISFETQ
M1を第1MISFETQ1のチップ上に直接接続する場合は、温度が高くなるため、第3MISFETQ
M1は、高温特性の良好なSiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体で構成することが望ましい。以上の説明は、ミラークランプ用の第4MISFETQ
M4についても同様である。
【0165】
以上説明したように、第2の実施の形態に係るパワー回路1によれば、小型でかつ発振を抑制したハーフフブリッジ回路を得ることができる。なお、ハーフフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても同様である。
【0166】
また、第1MISFETQ1、第2MISFETQ2のいずれか一方は、SiC MISFETで構成可能である。SiCは絶縁破壊電界が高いため、ドリフト層を高濃度化することで、低いオン抵抗R
onを実現可能であるが、その分ドリフト層への空乏層拡張幅が制限され、帰還容量C
rssが下がりにくいために、C
gs:C
gd比が悪く、ドレイン電圧変化dV
ds/dtに起因するゲート誤オン動作が起きやすいが、第1の実施の形態に係るパワー回路1を適用することによって、誤動作および寄生発振を抑制し、高速スイッチング性能を確保することができる。
【0167】
第2の実施の形態に係るパワー回路1を内部に含むパワーモジュール2によれば、制御回路が一体になったモジュールを構成可能である。このため、制御回路とMISFETの間の距離のバラツキを抑え、寄生インダクタンスの影響を制御可能である。
【0168】
(変形例)
第2の実施の形態の変形例に係るパワー回路1であって、ハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図22に示すように表される。
【0169】
また、第2の実施の形態の変形例に係るパワー回路1において、制御回路として適用されるアクティブミラークランプの動作回路説明図は、
図23に示すように表される。
【0170】
図22においてはアクティブミラークランプ用の第3MISFETQ
M1・第4MISFETQ
M4のソースMS1・MS4と第1MISFETQ1・第2MISFETQ4のソースセンスSS1・SS4との間にそれぞれ接続されたゲート負バイアス印加用の第1ゲートキャパシタC
G1・第2ゲートキャパシタC
G4をパワーモジュール内部に備える。また、アクティブミラークランプ用の第3MISFETQ
M1・第4MISFETQ
M4のソースMS1・MS4に電気的に接続される第1アクティブミラークランプ用ソース端子MST1・第2アクティブミラークランプ用ソース端子MST4をそれぞれ備える。
【0171】
さらに、
図23に示されるように、アクティブミラークランプ用信号端子MST1にpnpトランジスタQ
pのコレクタ側とゲート負バイアス(−V
g)入力を接続することによって、ゲートキャパシタC
Gを含めたMISFETQ1のゲート・ソースセンス間閉ループLP3の寄生インダクタンスが低減される。これにより、信号端子はさらに一本増加するが、MISFETQ1がオフ状態にある場合にゲート電圧を負バイアス(−V
g)側に印加させつつ、アクティブミラークランプ回路を低寄生インダクタンスで活用することが可能になり、ドレイン・ソース間電圧の急激な変化に起因する誤オン動作や発振をより効果的に抑制することが可能である。
【0172】
以上より、第2の実施の形態によれば、MISFETによって構成されたパワー回路の動作時において、誤オンや誤オンから寄生発振への誘発を抑制し、かつ小型化、高速スイッチング性能のパワー回路およびパワー回路を搭載したパワーモジュールを提供することができる。
【0173】
[第3の実施の形態]
(パワー回路およびパワーモジュール)
第3の実施の形態に係るパワー回路1であって、ハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図24に示すように表される。
【0174】
また、第3の実施の形態に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2において、樹脂層を形成前の上面図は、
図25に示すように表される。
【0175】
第3の実施の形態に係るパワー回路1においては、短絡電流経路の寄生インダクタンスを抑制することによって、ドレイン電圧サージを低減するために、正側電力端子P・負側電力端子N間に接続されたスナバキャパシタC
PNを備える。図示は省略されているが、その他の構成は、制御回路を備える第1〜第2の実施の形態に係るパワー回路1と同様である。
【0176】
スナバキャパシタC
PNによって、短絡電流経路の寄生インダクタンスが低減するため、ドレイン電圧サージを抑制するだけでなく、誤オンが発生した場合の短絡時間も減少し、発振継続用の供給エネルギーを減少化可能である。すなわち、第3の実施の形態に係るパワー回路1においては、正側電力端子P・負側電力端子N間に接続されたスナバキャパシタC
PNを内蔵させることによって、発振抑制可能である。尚、正側電力端子P・負側電力端子N間に接続されたスナバキャパシタC
PNを内蔵させる手法は、第1〜第2の実施の形態に係るパワー回路1においても同様に適用可能であり、同様に発振抑制可能である。
【0177】
パワーモジュール2に内蔵されるスナバキャパシタC
PNにはモジュールの大きさによってサイズ制限があり、容量値が小さいとリンギングや短絡発生時の電圧降下と電源からスナバキャパシタC
PNへの充電によって正側電力端子P・負側電力端子N間電圧およびドレイン電流が振動し、破壊・ノイズ源となるため容量値設計や対象とする電源回路の選定が必要になる。この手法と第1〜第3の実施の形態に係るパワー回路を組み合わせることによって、より効果的に発振を抑制できる。誤オンが発生した場合の短絡時間は、ゲート・ソースセンス間短絡経路の寄生インダクタンスも影響するため、ゲート・ソース間短絡経路の寄生インダクタンスも、合わせて調整されていてよい。
【0178】
特に、第3の実施の形態に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、短絡やリンギングに関与する寄生インダクタンスをより低減化するために短絡経路から正側電力端子P・負側電力端子Nを除外するモジュール内レイアウトの工夫を実施している。すなわち、
図25に示すように、上面板電極22
4を正側電力端子P方向に延長した延長電極25
4と、電極パターン12
1上に配置した柱状接続電極18
1とを備え、延長電極25
4・柱状接続電極18
1間に複数のスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を並列接続しても良い。なお、柱状接続電極18
1は、Cuなどの金属柱などで形成可能であり、また、正側電力端子Pの延長部として形成しても良い。スナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3としては、セラミックコンデンサなどを適用可能である。
【0179】
第3の実施の形態に係るパワーモジュール2においては、
図25に示すように、延長電極25
4・柱状接続電極18
1間に跨るように直接複数のスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を並列接続させることで、短絡やリンギングに関与する寄生インダクタンスの低減化可能である。また、正側電力端子P・負側電力端子Nの頂面より上面板の頂面を低く設定しておくことで、複数のスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を並列接続する配置の余白が取ることができる。
【0180】
(変形例1)
第3の実施の形態の変形例1に係るパワーモジュール2であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、樹脂層を形成前の上面図は
図26に示すように表される。
【0181】
また、第3の実施の形態の変形例1に係るパワー回路1であって、
図26に対応するハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図27に示すように表される。
【0182】
第3の実施の形態の変形例1に係るパワー回路1においては、短絡電流経路の寄生インダクタンスを抑制することによって、ドレイン電圧サージを低減するために、正側電力端子P・負側電力端子N間に直列接続されたスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を備える。
【0183】
その他の構成は、第3の実施の形態に係るパワー回路1と同様である。
【0184】
なお、
図26・
図27には、正側電力端子P・負側電力端子Nに伴う寄生的なインダクタンスとして電力端子インダクタンスLP1・LS1が模式的に図示されている。第3の実施の形態の変形例1に係るパワー回路1においても、正側電力端子P・負側電力端子Nに伴う寄生的なインダクタンスとしての電力端子インダクタンスLP1・LS1を除外した動作を行うことができる。
【0185】
スナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3によって、発振継続用の供給エネルギーを減少化可能である。すなわち、第3の実施の形態の変形例1に係るパワー回路1においても、正側電力端子P・負側電力端子N間に直列接続されたスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を内蔵させることによって、発振抑制可能である。
【0186】
特に、第3の実施の形態の変形例1に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、短絡やリンギングに関与する寄生インダクタンスをより低減化するために短絡経路から正側電力端子P・負側電力端子Nを除外するモジュール内レイアウトの工夫を実施している。すなわち、
図26に示すように、電極パターン12
1・12
4・12
nに隣接配置される隣接パターンTP1・TP4を備え、スナバキャパシタC
PN1を電極パターン12
1・隣接パターンTP1間に接続し、スナバキャパシタC
PN2を隣接パターンTP1・TP4間に接続し、スナバキャパシタC
PN3を隣接パターンTP4・電極パターン12
n間に接続している。スナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3としては、セラミックコンデンサなどを適用可能である。
【0187】
第3の実施の形態の変形例1に係るパワーモジュール2においては、正側電力端子P・負側電力端子N間に直列接続されたスナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3をパターン間を跨るように配置して、関与する寄生インダクタンスを低減化可能である。スナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3を直列接続することによって、直列接続されたスナバキャパシタの耐圧向上が可能である。ここで、スナバキャパシタC
PN1・C
PN2・C
PN3の数値例は、1個当たり例えば、約10nF/耐圧600Vであり、複数個のスナバキャパシタを直列に接続することで耐圧を確保しつつ所望の機能を得ることができる。このときの各スナバキャパシタおよび実装パターンは、ハーフブリッジとスナバキャパシタによって形成される閉ループ回路の一部と並列に配置されることによって、該閉ループ内の寄生インダクタンスが低減されていることによってその効果が強化される。また、C
PN1・C
PN2・C
PN3はそれぞれ複数個のスナバキャパシタが並列接続されて形成されていても、それぞれの容量に印加される電圧のバランスを取るための抵抗が挿入されていてもよく、その容量値が該閉ループの共振周波数を調整するように設計されていてもよい。
【0188】
(変形例2)
第3の実施の形態の変形例2に係るパワーモジュール2であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、樹脂層を形成前の上面図は
図28に示すように表される。
【0189】
また、第3の実施の形態の変形例2に係るパワー回路1であって、
図28に対応するハーフフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図29に示すように表される。
【0190】
第3の実施の形態の変形例2に係るパワー回路1においては、短絡電流経路の寄生インダクタンスを抑制することによって、ドレイン電圧サージを低減するために、正側電力端子P・負側電力端子N間にRCDスナバ回路(R
S1・C
S1・D
S1およびR
S4・C
S4・D
S4)を備える。その他の構成は、第3の実施の形態に係るパワー回路1と同様である。
【0191】
RCDスナバ回路(R
S1・C
S1・D
S1およびR
S4・C
S4・D
S4)によって、発振継続用の供給エネルギーを減少化可能である。すなわち、第3の実施の形態の変形例2に係るパワー回路1においても、正側電力端子P・負側電力端子N間にRCDスナバ回路(R
S1・C
S1・D
S1およびR
S4・C
S4・D
S4)を内蔵させることによって、発振抑制可能である。
【0192】
特に、第3の実施の形態の変形例2に係るパワー回路1を搭載したパワーモジュール2においては、短絡やリンギングに関与する寄生インダクタンスをより低減化するために短絡経路から正側電力端子P・負側電力端子Nを除外するモジュール内レイアウトの工夫を実施している。すなわち、
図28に示すように、電極パターン12
1・12
4・12
nに隣接配置される抵抗パターンR
S1・R
S4を備え、スナバキャパシタC
S1を電極パターン12
1・抵抗パターンR
S1間に接続し、スナバキャパシタC
S4を電極パターン12
4・抵抗パターンR
S4間に接続し、スナバダイオードD
S1を抵抗パターンR
S1・電極パターン12
4間に接続し、スナバダイオードD
S4を抵抗パターンR
S4・電極パターン12
n間に接続している。また、電極パターン12
n・抵抗パターンR
S1間は、ボンディングワイヤBW
R1で接続され、抵抗パターンR
S4・電極パターン12
1間は、ボンディングワイヤBW
R4で接続されている。スナバキャパシタC
S1・C
S4としては、セラミックコンデンサなどを適用可能である。スナバダイオードD
S1・D
S4としては、Si系SBD、SiC系あるいはGaN系などのワイドギャップ半導体を用いたSBDなどを適用可能である。
【0193】
第3の実施の形態の変形例2に係るパワーモジュール2においては、正側電力端子P・負側電力端子N間にRCDスナバ回路(R
S1・C
S1・D
S1およびR
S4・C
S4・D
S4)をパターン間を跨るように、またはワイヤ結線で各素子を接続させ、関与する寄生インダクタンスを低減化可能である。
【0194】
(基板構造)
第1〜第3の実施の形態に係るパワーモジュール2に適用される基板構造であって、主基板(セラミック基板)10、およびセラミック基板10上に配置される信号基板14の模式的断面構造は、
図30に示すように表される。信号基板14もセラミック基板で形成可能である。この図においてセラミック基板10と信号基板14を接続するためのはんだ層等は省略されている。
【0195】
セラミック基板10は表面および裏面に、銅プレート層10aおよび銅プレート層10bを備える。信号基板14も表面および裏面に、銅プレート層14aおよび銅プレート層14bを備える。ここで、信号基板14の厚さは、例えば約0.8mm程度、銅プレート層14aおよび銅プレート層14bの厚さは、例えば、約0.4mm程度であり、制御回路をMISFETから空間的に分離して放射ノイズの影響を低減できる値に設計されていてよい。銅プレート層10bは、ヒートスプレッダーとしての機能を有する。
【0196】
第1〜第3の実施の形態に係るパワーモジュール2において、第1信号基板14
1の内部または主基板10と第1信号基板14
1の間に放射ノイズを遮蔽するシールドを備えていても良い。同様に、第2信号基板14
4の内部または主基板10と第2信号基板14
4の間に放射ノイズを遮蔽するシールドを備えていても良い。
【0197】
第1〜第3の実施の形態に係るパワーモジュール2に適用される基板構造であって、主基板(セラミック基板)10、およびセラミック基板10上に配置され、内部にシールド層14BRを有する信号基板14の模式的断面構造は、
図31に示すように表される。この図においてセラミック基板10と信号基板14を接続するためのはんだ層等は省略されている。
【0198】
第1〜第3の実施の形態に係るパワーモジュール2に適用される基板構造であって、セラミック基板10、およびセラミック基板10上にシールド金属板15を介して配置され、内部にシールド層14BRを有する信号基板14の模式的断面構造は、
図32に示すように表される。この図においてセラミック基板10と信号基板14を接続するためのはんだ層等は省略されている。
【0199】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール2において、ゲートダイオードD
G1・D
G4は、信号基板14
1・14
4上に配置することで、半導体チップの瞬間的な発熱の影響を回避するだけでなく、信号基板14
1・14
4の内部にシールド層14BRを設けることで、放射ノイズの影響による制御回路の誤動作を防止することができる。また、主基板10と第2信号基板14
4の間に放射ノイズを遮蔽するシールド金属板15を備えていても同様の効果が得られる。
【0200】
同様に、第2の実施の形態に係るパワーモジュール2において、アクティブミラークランプ用トランジスタQ
M1・Q
M4は、信号基板14
1・14
4上に配置することで、半導体チップの瞬間的な発熱の影響を回避するだけでなく、信号基板14
1・14
4の内部にシールド層14BRを設けることで、放射ノイズの影響による、特にアクティブミラークランプゲート制御回路の誤動作を防止することができる。また、主基板10と第2信号基板14
4の間に放射ノイズを遮蔽するシールド金属板15を備えていても同様の効果が得られる。さらに、ゲート用信号配線パターンGL1・GL4およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4の放射ノイズ耐性について、距離を離している以上の効果が得られる。
【0201】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態に係るパワー回路であって、ディスクリートデバイスで構成した回路構成例は、
図33(a)に示すように表され、
図33(a)に対応するパワーモジュール3の平面構成例は、
図33(b)に示すように表される。
【0202】
第4の実施の形態に係るパワーモジュール3は、
図33(b)に示すように、金属ダイ140上にドレインが接続されたMISFETQ1は、パッケージ150に収納されている。ゲートダイオードD
G1は、パッケージ150内において、ソースセンス端子SST1上にアノードが接続されるように配置されている。MISFETQ1のソースパッド電極SP・ゲートパッド電極GPは、
図33(b)に示すように、表面側に配置されている。
【0203】
第4の実施の形態に係るパワーモジュール3においては、MISFETQ1のゲートG1は、ゲートパッド電極GPに対応し、MISFETQ1のソースセンスSS1は、ソースSと共通接続されたソースパッド電極SPに対応している。
【0204】
さらに、パッケージ150内において、ソースパッド電極SP・ソースセンス端子SST1間はボンディングワイヤBW
S1を介して接続され、ゲートパッド電極GP・ゲート端子GT1間は、ボンディングワイヤBW
G1を介して接続され、ソースセンス端子SST1上に配置されたゲートダイオードD
G1のカソードK・ゲート端子GT1間は、ボンディングワイヤBW
GSを介して接続されている。MISFETQ1のドレインが接続された金属ダイ140は、そのまま延在して、ダイオード端子DTを形成している。
【0205】
第4の実施の形態に係るパワーモジュール3においても、パッケージ150内において、ゲートダイオードD
G1をMISFETQ1に近接させて配置することによって、ゲート端子GT1およびソースセンス端子SST1に関与する寄生インダクタンスを低減化可能である。
【0206】
第4の実施の形態に係るパワーモジュール3においては、ドレイン・ソース間に電流が導通すると、ソースパッド電極SP・ソース端子ST1間のインダクタンス成分が起電し、ゲート・ソース間に印加される電圧が阻害され、その結果、スイッチ応答が遅くなり、ドレイン電圧変化dV
ds/dtが小さくなる。この結果、帰還容量による分圧が抑制され、ゲート電圧の上昇が抑制されているため元々ソース配線の起電によって誤オンはしにくくなっているが、誤オンが起きた場合にもゲートダイオードD
G1によって発振に至ることを抑制できる。
【0207】
第4の実施の形態によれば、誤オンから寄生発振への誘発を抑制したパワー回路およびパワーモジュールを提供することができる。
【0208】
(変形例)
第4の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール3あって、ハイブリッドデバイスで構成した模式的鳥瞰構成は、
図34(a)に示すように表され、
図34(a)において、MISFETQ1上にダイオードを搭載した構造部分の模式的断面構造は、
図34(b)に示すように表される。回路構成は、
図33(a)と同様に表される。MISFETQ1は、
図34では、詳細構造を省略しているが、
図2および
図3に示されたSiC系MISFETの構造が適用可能である。
【0209】
第4の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール3においては、
図34(a)・
図34(b)に示すように、のソースパッド電極SP・ゲートパッド電極GPは、
図34(b)に示すように、表面側に配置され、ゲートダイオードD
G1は、MISFETQ1のソースパッド電極SP上にアノードが接続されて配置され、ゲートダイオードD
G1のカソードKはボンディングワイヤBW
GKを介してMISFETQ1のゲートパッド電極GPに接続されている。
【0210】
第4の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール3においては、MISFETQ1のゲートG1は、ゲートパッド電極GPに対応し、MISFETQ1のソースセンスSS1は、ソースSと共通接続されたソースパッド電極SPに対応している。
【0211】
さらに、第4の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール3は、図示は省略されているが、第4の実施の形態と同様に、パッケージ150内に収納され、ソースパッド電極SP・ソースセンス端子SST1間はボンディングワイヤBW
S1を介して接続され、ゲートパッド電極GP・ゲート端子GT1間は、ボンディングワイヤBW
G1を介して接続されている。MISFETQ1のドレインが接続された金属ダイ140は、そのまま延在して、ダイオード端子DTを形成している。
【0212】
第4の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール3においても、パッケージ150内において、ゲートダイオードD
G1をMISFETQ1に近接させて配置することによって、ゲート端子GT1およびソースセンス端子SST1に関与する寄生インダクタンスを低減化可能である。この制御回路は、MISFETQ1と同一チップ内の別領域に作りこまれていてもよい。
【0213】
第4の実施の形態の変形例によれば、誤オンから寄生発振への誘発を抑制したパワー回路およびパワーモジュールを提供することができる。
【0214】
第1〜第4の実施の形態に係るパワー回路およびパワーモジュールは、SiCパワーモジュールを適用したHEV/EV、インホイールモータ向けのコンバータ、インバータ(バッテリーから昇圧するための力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路やモータ駆動用3相インバータ)、太陽電池システムのパワーコンディショナー向けコンバータ、産業機器向けのコンバータおよびインバータなどに適用可能である。特に、第1〜第4の実施の形態に係るパワー回路およびパワーモジュールは、パッシブ素子の小型化のために、高周波動作および小型化が要求されるコンバータおよびインバータにおいて、有効に適用可能である。
【0215】
以上説明したように、本発明によれば、誤動作および寄生発振を抑制し、高速スイッチング性能のパワー回路およびパワーモジュールを提供することができる。
【0216】
[その他の実施の形態]
上記のように、第1〜第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。また、主基板を使わずにパターンのみを金属板や金属フレームで用意し、樹脂封止や絶縁シートなどで主基板の役割であるパターン同士の配置関係保持、絶縁保持を実現したパワー回路、パワーモジュールについても同様の対策によって同様の効果が得られる。
【0217】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。