前記一対の出力信号に基づいて出力コモン信号を生成し出力する出力コモン信号生成回路と、前記一対の出力信号と前記出力コモン信号とに基づいて電荷容量を形成する一対のMOSトランジスタと、を備える遅延装置である。
前記一対の出力信号及び前記出力コモン信号に基づいて、前記出力コモン信号の電位と前記一対の出力信号の中間電位とが一致するように、前記オペアンプを制御する出力コモン電圧帰還回路をさらに備える、請求項1乃至6記載の遅延装置。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路内で必要な信号のタイミングを調整するために一般的に遅延装置が用いられる。遅延装置は、例えば、チェーン接続された複数段のインバータと、各インバータ間の接続ノードにゲートが接続され、ソース及びドレインが接地線に接続されたN型MOSトランジスタとを含んで構成され、そこを流れる信号の電圧変化に応じて、該N型MOSトランジスタが電荷容量を形成し、これによって、該信号の位相を遅延させる。
【0003】
特許文献1は、電源電圧が低下しても遅延時間が過剰に増加せず、遅延時間の増加を抑制することが可能な遅延装置を開示する。即ち、特許文献1は、ローレベル及びハイレベルの論理レベルを有する論理信号SINを遅延させる遅延装置において、論理信号SINの論理レベルがローレベルの場合とハイレベルの場合とで遅延時間が異なる遅延特性を有し、ローレベル及びハイレベルの論理レベルのうち、遅延時間が短い方の論理レベルを遅延対象とするようにした、遅延装置を開示する。より具体的には、遅延経路の各ノードに対し、各ノードに現れる信号の遷移領域において、オフ状態からオン状態に変化するN型MOSトランジスタ及びP型MOSトランジスタがMOSキャパシタとして設けられる。
【0004】
また、特許文献2は、制御信号により設定された遅延時間だけ入力信号を遅延させて出力する遅延装置であって、該入力信号を所定のレベルに保持して出力するバッファと、該バッファの出力側に接続され、該制御信号のレベルに応じて、容量が設定される容量素子とを有するデジタル遅延装置を開示する。より具体的には、特許文献2に開示された遅延装置は、バッファ及びその出力端子に接続されているN型MOSトランジスタからなる可変容量素子により構成されるn段の遅延段を含み、そのソース及びドレインがバッファの出力端子に共通に接続され、ゲートが制御信号の所定のビットに接続されており、入力ビットに応じて、トランジスタのサイズを設定し、各遅延段の遅延時間を重み付けることにより、制御信号に応じて遅延時間を設定する。
【0005】
さらに、特許文献3は、インバータ回路の出力ノードに容量素子が接続され、該出力ノードの電圧に応じて負荷容量が変化する可変遅延装置を開示する。特許文献3の可変遅延装置では、インバータ回路の出力ノードと容量素子との間に制御信号の電圧値に応じてスイッチングのタイミングが変わるスイッチングトランジスタが設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記各文献にあるような、負荷容量として機能するN型MOSトランジスタがインバータの出力ノードに接続された構成を含む遅延装置においては、該出力ノードを流れる信号の電圧は、出力抵抗と出力容量との積である時定数τに従って、時間的に遷移し、これにより遅延量を調整することができる。遅延装置による遅延時間を大きくするために負荷容量を増やした場合、該信号の電圧波形に鈍り(スルー)が発生し、振幅(電圧値)の低下や信号の消失を招くおそれがある。このため、所望の遅延を与えるために波形が鈍った信号は、十分にバッファリングされた上で、スルーが立つように(即ち、スルーレートが小さくなるように)十分に増幅される必要があった。しかしながら、高周波の信号の場合には、インバータが必要とする電流は非常に大きいため、一旦、波形が鈍った信号を増幅して矯正することは現実的でない。
【0008】
また、特許文献1においては、N型MOSトランジスタの電荷容量は、そこを流れる信号の電圧の鈍りが遷移途中から遷移完了にかけて大きくなるため、遅延装置による該信号の波形が鈍ってしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2においては、N型MOSトランジスタがチャネルを形成していない状態からチャネルを形成している状態に遷移する場合、そこを流れる信号の電圧の鈍りは、特許文献1と同様に、遷移途中から遷移終了にかけて大きくなり、また、N型MOSトランジスタがチャネルを形成している状態からチャネルが形成していない状態に遷移する場合、そこを流れる信号の電圧の鈍りは、遷移開始から遷移途中にかけて大きくなる。つまり、特許文献2においては、遅延装置による該信号の波形が鈍ってしまうという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献3においては、可変遅延装置の遅延量に応じた制御信号を生成するため、そのための回路構成が必要になる。
【0011】
そこで、本発明は、出力信号の電圧波形の鈍りを抑制しつつ、該信号を遅延させることができる遅延装置を提供することを目的とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、出力信号電圧の遷移途中の期間で急峻なスルーを実現することで、該信号の電圧波形を鈍らせることなく、該信号を遅延させることができる遅延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的特徴乃至は発明特定事項を含んで構成される。
【0014】
即ち、ある観点に従う本発明は、電源線と接地線とに接続され、相補の関係にある一対の入力信号を所定の利得に従って増幅し、一対の出力信号として出力するオペアンプと、前記一対の出力信号に基づいて出力コモン信号を生成し出力する出力コモン信号生成回路と、前記一対の出力信号と前記出力コモン信号とに基づいて電荷容量を形成する一対のMOSトランジスタとを、備える遅延装置である。
【0015】
ここで、前記一対のMOSトランジスタにおいて、該MOSトランジスタのドレインとソースとが接続され、前記一対のMOSトランジスタの一方は、前記一対の出力信号を伝送する一対の出力線の一方と前記出力コモン信号を伝送する出力コモン信号線とに接続され、前記MOSトランジスタの他方は、前記一対の出力線の他方と前記出力コモン信号線とに接続されるように構成されても良い。
【0016】
また、前記出力コモン信号生成回路は、前記一対の出力信号間の電位差を分圧することによって、前記出力コモン信号を生成しても良い。
【0017】
ここで、前記出力コモン信号生成回路は、前記電位差を分圧するための少なくとも2つの抵抗を含み得る。
【0018】
また、前記出力コモン信号生成回路は、前記電源線と前記接地線との間の電位差を分圧することによって、前記出力コモン信号を生成しても良い。
【0019】
ここで、前記出力コモン信号生成回路は、前記電位差を分圧するための少なくとも1つの抵抗及び電流源を含み得る。
【0020】
また、本発明は、前記一対の出力信号及び前記出力コモン信号に基づいて、前記出力コモン信号の電位と前記一対の出力信号の中間電位とが一致するように、前記オペアンプを制御する、出力コモン電圧帰還回路をさらに含み得る。
【0021】
ここで、前記オペアンプは、前記一対の出力信号の電位を制御する出力電圧制御端子を含み得る。
【0022】
さらにここで、前記出力コモン電圧帰還回路は、前記一対の出力信号を受ける一対の第1のトランジスタと、前記出力コモン信号を受ける第2のトランジスタとを含み、前記一対の第1のトランジスタは、前記電源線と前記接地線との間に並列的に接続され、前記一対の第1のトランジスタと前記第2のトランジスタは、前記電源線と前記接地線との間に並列的に接続されても良い。
【0023】
さらに、前記出力コモン電圧帰還回路は、前記一対の第1のトランジスタを流れる電流量の合計と、前記第2のトランジスタを流れる電流量との差に基づく信号電位を、前記オペアンプの出力電圧制御端子に出力するように構成されても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、遅延装置は、出力信号の電圧波形の鈍りを抑制しつつ、該信号を遅延させることができるようになる。
【0025】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る遅延装置の構成の一例を示す回路図である。同図に示すように、遅延装置1は、例えば、オペアンプ10と、出力コモン信号生成回路20と、一対のMOSトランジスタ30及び40とを含んで構成される。
【0029】
オペアンプ10は、バッファ回路として機能し、例えば、トランジスタ11と、トランジスタ12と、抵抗13及び14と、電流源15とを含んで構成される。即ち、オペアンプ10は、一対の差動入力端子INP及びINNを介して、互いに相補(差動)の関係にある一対の入力信号SINP及びSINNを受け、所定の利得に従って信号電流の増幅を行い、一対の出力線OUTP及びOUTNに一対の出力信号SOUTP及びSOUTNを出力する。
【0030】
トランジスタ11及び12は、電圧電流変換素子として機能し、例えばN型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ11のドレインD11は出力線OUTN及び抵抗13に接続され、ソースS11は電流源15に接続され、ゲートG11は入力線INNに接続される。これによって、トランジスタ11は、出力線OUTNの電位の極性を、入力線INPの電位の極性に遷移させる。また、トランジスタ12のドレインD12は出力線OUTP及び抵抗14に接続され、ソースS12は電流源15に接続され、ゲートG12は入力INPに接続される。これによって、トランジスタ12は、出力線OUTPの電位の極性を、入力線INNの電位の極性に遷移させる。
【0031】
抵抗13及び14は、プルアップとして機能する例えばポリシリコン抵抗や拡散抵抗である。抵抗13は電源線VDDと出力線OUTN及びトランジスタ11との間に設けられるが、これらに限られるものではない。また、抵抗14は電源線VDDと出力線OUTP及びトランジスタ12との間に設けられる。
【0032】
電流源15は、例えばN型MOSトランジスタであり、出力線OUTP及びOUTNに所定の電流を供給する。電流源15はトランジスタ11のソースS11及びトランジスタ12のソースS12と、接地線GNDとの間に設けられる。
【0033】
かかる構成のオペアンプ10において、出力線OUTN及びOUTPの電位は、電源線VDDの電位からそれぞれ抵抗13及び14による電圧降下が差引かれることで示され、また、抵抗13及び14に流れる電流は、電流源15が供給する電流がそれぞれトランジスタ11及び12におけるゲート11及び12の電位に基づいて分流されることで生成される。
【0034】
従って、差動入力端子INP及びINNに、それぞれ差動入力信号の電位の高い側、即ち“H”及び該信号の電位の低い側、即ち“L”が入力されている場合、トランジスタ11のゲート11の電位はトランジスタ12のゲート12の電位より低いため、抵抗13に流れる電流は抵抗14に流れる電流より小さい。従って、出力線OUTNの電位は出力線OUTPの電位より高い状態となる。ここで、差動入力信号SINP及びSINNの電位が、それぞれ“H”と“L”の中間電位に遷移する場合、トランジスタ11及び12におけるゲート11の電位の上昇及びゲート12の電位の低下に伴って、抵抗13に流れる電流は増大し、抵抗14に流れる電流は減少する。従って、出力線OUTNの電位は低下する一方、出力線OUTPの電位は上昇し、トランジスタ11及び12におけるゲート11及び12の電位が等しくなるとき、出力線OUTP及びOUTNの電位もまた等しくなる。さらに、差動入力信号SINP及びSINNの電位が、中間電位からそれぞれ“L”と“H”に遷移する場合、同様にトランジスタ11及び12におけるゲート11の電位の上昇及びゲート12の電位の低下に伴って、出力線OUTNの電位は低下する一方、出力線OUTPの電位は上昇し、これにより、出力線OUTNの電位は出力線OUTPの電位より低い状態となる。
【0035】
また、差動入力端子INP及びINNに、それぞれ“L”及び“H”が入力されている場合、上述した通り、出力線OUTNの電位は出力線OUTPの電位より低い状態である。ここで、差動入力信号SINP及びSINNの電位が、それぞれ“L”と“H”の中間電位に遷移する場合、トランジスタ11及び12におけるゲート11の電位の低下及びゲート12の電位の上昇に伴って、抵抗13に流れる電流は減少し、抵抗14に流れる電流は増大する。従って、出力線OUTNの電位は上昇する一方、出力線OUTPの電位は低下し、トランジスタ11及び12におけるゲート11及び12の電位が等しくなるとき、出力線OUTP及びOUTNの電位も等しくなる。さらに、差動入力信号SINP及びSINNの電位が、中間電位からそれぞれ“H”と“L”に遷移する場合、同様にトランジスタ11及び12におけるゲート11の電位の低下及びゲート12の電位の上昇に伴って、出力線OUTNの電位は上昇する一方、出力線OUTPの電位は低下し、これにより、出力線OUTNの電位は出力線OUTPの電位より高い状態となる。
【0036】
出力コモン信号生成回路20は、出力線OUTPと出力線OUTNとの間に設けられ、例えば抵抗21及び22とを含んで構成される。出力コモン信号生成回路20は、出力コモン信号SCOMを生成し、出力コモン信号線COMを介して、これをMOSトランジスタ30及び40に出力する。
【0037】
抵抗21及び22は、例えばポリシリコン抵抗や拡散抵抗であるが、これらに限られるものではない。抵抗21は、抵抗22、MOSトランジスタ30及び40と、出力線OUTNとの間に設けられる。一方、抵抗22は、抵抗21、MOSトランジスタ30及び40と、出力線OUTPとの間に設けられる。また、抵抗21及び抵抗22を接続する信号線上にはノードRが存在する。即ち、出力コモン信号生成回路20は、抵抗21と抵抗22とによって出力線OUTPと出力線OUTNとの間の電位差を分圧することで、出力コモン信号SCOMを生成し、該信号をMOSトランジスタ30及び40に出力する。
【0038】
MOSトランジスタ30及び40は、例えばN型MOSトランジスタを含んで構成される。MOSトランジスタ30及び40のそれぞれは、出力線OUTP及びOUTNと、出力コモン信号線COMとの間に設けられる。MOSトランジスタ30及び40のそれぞれは、オペアンプ10から出力される出力信号SOUTP及びSOUTNに対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ所定の時間分遅延させる。即ち、MOSトランジスタ30のドレインD30及びソースS30はノードRに接続され、ゲートG30は出力線OUTNに接続される。また、MOSトランジスタ40のドレインD40及びソースS40はノードRに接続され、ゲートG40は出力線OUTPに接続される。
【0039】
かかる構成を有する遅延装置1は、後述するように、出力信号SOUTP及びSOUTNの遷移開始時と遷移終了時においてのみ、該信号の遅延をより増大させ、遷移途中においては、該信号の遅延に顕著な影響を及ぼさないようになる。これにより、遅延装置1は、出力信号に対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ、信号遅延を実現することができるようになる。
【0040】
図2は、本発明における一実施形態に係る遅延装置のMOSトランジスタ30及び40における印加電圧と電荷容量との関係を数値シミュレーションにより示したグラフである。即ち、横軸は、MOSトランジスタ30のゲートG30からドレインD30及びソースS30に印加される電圧“VGS”、又はMOSトランジスタ40におけるゲートG40からドレインD40及びソースS40に印加される電圧“VGS”を示し、縦軸は、電荷容量を示す。なお、同図において、MOSトランジスタ30及び40が大きな電荷容量を形成し、かつ電圧“VGS”の向きが負方向である場合の電圧“VGS”の範囲を「蓄積範囲」と定義し、電圧“VGS”が蓄積範囲にある状態を「蓄積状態」と定義する。また、MOSトランジスタ30及び40が大きな電荷容量を形成し、かつ電圧“VGS”の向きが正方向である場合の電圧“VGS”の範囲を「反転範囲」と定義し、電圧“VGS”が反転範囲にある状態を「反転状態」と定義する。さらに、MOSトランジスタ30及び40が大きな電荷容量を形成しない電圧“VGS”の範囲を「空乏範囲」と定義し、“VGS”が空乏範囲にある状態を「空乏状態」と定義する。
【0041】
同図から明らかなように、MOSトランジスタ30及び40が空乏状態にある場合、MOSトランジスタ30及び40の電荷容量は小さくなる。また、MOSトランジスタ30及び40が反転状態又は蓄積状態にある場合、MOSトランジスタ30及び40の電荷容量は大きくなる。
【0042】
MOSトランジスタ30及び40は、それぞれ出力線OUTP及びOUTNに接続されているため、該出力線の電位が出力コモン信号線COMの電位に近い場合、MOSトランジスタ30及び40は空乏状態となる。また、該出力線の電位が出力コモン信号線COMの電位から遠く、例えば“H”である場合MOSトランジスタ30及び40はそれぞれ反転状態となり、例えば“L”である場合MOSトランジスタ30及び40はそれぞれ蓄積状態となる。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態に係る遅延装置1における入力信号電圧SINPと出力信号電圧SOUTNとの関係を数値計算シミュレーションにより示した図である。図中、比較のため、従来構成の遅延装置における入力信号電圧と出力信号電圧との関係も示している(太い破線)。従来構成の遅延装置は、MOSトランジスタ30及び40の代わりに、例えば容量セルやセラミックコンデンサを含んで構成される。
【0044】
即ち、本発明の一実施形態に係る遅延装置1においては、例えば、
図3のように、出力信号SOUTNの電位が“H”から“L”に遷移する場合、
図2において示されたように、MOSトランジスタ30は、反転状態から空乏状態を経て蓄積状態に至るため、出力信号SOUTNに対して、該信号波形のスルーの増加を抑制しつつ、信号遅延を実現させる。
【0045】
より具体的には、出力信号SOUTNが遷移を開始する時、即ち、出力信号SOUTNの電位が“H”に近い状態においては、MOSトランジスタ30は反転状態であるため、MOSトランジスタ30は大きな電荷容量を形成し、出力信号SOUTNの信号波形を鈍らせる。また、出力信号SOUTNが遷移の途中である時、即ち出力信号SOUTNの電位が出力コモン信号SCOMの電位に近い状態においては、MOSトランジスタ30は空乏状態であるため、MOSトランジスタ30は大きな電荷容量を形成せず、出力信号SOUTNに顕著な影響を及ぼさない。そして、出力信号SOUTNが遷移を終了する時、即ち出力信号SOUTNの電位が“L”に近い状態においては、MOSトランジスタ30は蓄積状態であるため、MOSキャパシタ30は再び大きな電荷容量を形成し、出力信号SOUTNの信号波形を鈍らせる。
【0046】
このように、MOSトランジスタ30及び40は、それぞれ出力信号SOUTP及びSOUTNに対して、該信号の遷移開始時と遷移終了時においてのみ、該信号の遅延をより増大させ、遷移途中においては、該信号の遅延に顕著な影響を及ぼさない。従って、MOSトランジスタ30及び40は、該信号に対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ、信号遅延を実現することができるようになる。
【0047】
従って、本実施形態の遅延装置1によれば、出力線OUTNと抵抗21及び22の間に、MOSトランジスタ30が設けられているので、出力信号SOUTNの信号波形のスルーの増加を抑制しつつ、所定の信号遅延を実現することができるようになる。
【0048】
なお本例では、MOSトランジスタ30及び40は、N型MOSトランジスタにより構成されているが、これに限られるものではなく、P型MOSトランジスタであっても良い。また、MOSトランジスタ30及び40は、出力線OUTP及びOUTNと出力コモン信号線COMとに対する、ゲートとドレイン及びソースの接続の方向を入れ替えてもいい。
【0049】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る遅延装置の構成の他の例を示す図である。即ち、本変形例の遅延装置1Aは、上記実施形態の構成において、出力線OUTP及びOUTNと出力コモン信号線COMに対する、MOSトランジスタ30のゲートG30とドレインD30及びソースS30の接続の方向が入れ替わり、また、該信号線に対する、MOSトランジスタ40のゲートG40とドレインD40及びソースS40の接続の方向が入れ替わった構成を示している。
【0050】
即ち、本変形例でも同様に、遅延装置1Aは、出力信号SOUTP及びSOUTNに対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ、信号遅延を実現することができる。
【0051】
図4Bは、本発明の他の実施形態に係る遅延装置の構成のさらなる他の例を示す図である。即ち、本変形例の遅延装置1Bは、N型MOSトランジスタのMOSトランジスタ30及び40に代えてP型MOSトランジスタのMOSトランジスタ32及び42を含んで構成される。
【0052】
即ち、本変形例でも同様に、遅延装置1Bは、出力信号SOUTP及びSOUTNに対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ、信号遅延を実現することができるように構成されている。
【0053】
図4Cは、本発明の一実施形態に係る遅延装置の構成のさらなる他の例を示す図である。即ち、本変形例の遅延装置1Cは、N型MOSトランジスタのMOSトランジスタ30及び40に代えてP型MOSトランジスタのMOSトランジスタ32及び42を含んで構成される。さらに、本変形例の遅延装置1Cは、出力線OUTP及びOUTNと出力コモン信号線COMに対する、MOSトランジスタ32のゲートG32とドレインD32及びソースS32の接続の方向が入れ替わり、また、該信号線に対する、MOSトランジスタ42のゲートG42とドレインD42及びソースS42の接続の方向が入れ替った構成を示している。
【0054】
即ち、本変形例でも同様に、遅延装置1Cは、出力信号SOUTP及びSOUTNに対して、該信号波形のスルーの増加を抑えつつ、信号遅延を実現することができるように構成されている。
【0055】
本実施形態の出力コモン信号生成回路20は、
図1等に示した構成に限られず、種々変形が可能である。
図5は、本発明の一実施形態に係る遅延装置1の一例を示す図である。即ち、本実施形態に係る遅延装置1Dは、出力コモン信号生成回路20に代えて、出力コモン信号生成回路20Dを含んで構成される。
【0056】
出力コモン信号生成回路20Dは、電源線VDDと接地線GNDの間に設けられ、抵抗23と、電流源24とを含んで構成される。出力コモン信号生成回路20Dは、出力コモン信号SCOMを生成し、該信号をMOSトランジスタ30及び40へ出力する。
【0057】
抵抗23は、プルアップとして機能する例えばポリシリコン抵抗や拡散抵抗であるが、これらに限られるものではない。抵抗23は、電流源24、MOSトランジスタ30及び40と電源線VDDとの間に設けられる。また、電流源24は、例えばN型MOSトランジスタであり、抵抗23、MOSトランジスタ30及び40と接地線GNDの間に設けられ、該抵抗及びMOSトランジスタに所定の電流を供給する。
【0058】
即ち、出力コモン信号生成回路20Dは、抵抗23と電流源24とによって電源線VDDと接地線GNDの電位を分圧することで出力コモン信号SCOMを生成し、該信号をMOSトランジスタ30及び40へ出力する。出力コモン信号生成回路20Dは、電源線VDDと接地線GNDとの電位を分圧することによって、入力信号SINP及びSINNが遅延装置1Dに入力されていない状態においても、出力コモン信号線COMの電位を一定に保つことができる。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態に係る遅延装置1の一例を示す図である。即ち、本実施形態に係る遅延装置1Eは、上述した遅延装置1Dの構成において、オペアンプ10に代えてオペアンプ10Eを含んで構成される。また、遅延装置1Eは、上述した遅延装置1Dの構成に対して、出力コモン電圧帰還回路50が付加された構成となっている。
【0060】
オペアンプ10Eは、オペアンプ10との比較において、電流源15に代えてトランジスタ16を含んで構成される。オペアンプ10Eは、入力信号SINP及びSINNを受け、後述する出力コモン電圧帰還回路50から出力される出力電圧制御信号SVFEDに従って、信号電流の増幅を行い、出力信号SOUTP及びSOUTNを出力する。
【0061】
トランジスタ16は、電流源として機能し、例えばN型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ16のドレインD16はトランジスタ11のソースS11及びトランジスタ12のソースS12に接続され、ソースS16は接地線GNDに接続され、ゲートG16は出力電圧制御端子VFEDに接続される。これによって、トランジスタ16は、後述する出力コモン電圧帰還回路50から出力される出力電圧制御信号SVFEDに従って、出力線OUTP及びOUTNに所定の電流を供給する。
【0062】
トランジスタ11、トランジスタ12、並びに抵抗13及び14のそれぞれの機能及び構成に関しては、前記実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0063】
オペアンプ10Eにおいて、出力線OUTP及びOUTNの電位は、後述する出力コモン電圧帰還回路50から出力される、出力電圧制御信号SVFEDによって制御される。出力電圧制御信号SVFEDの電位が高い場合、トランジスタ16のドレインD16とソースS16との間の電位差の増加と、抵抗13及び14における電圧降下量の増加によって、出力線OUTP及びOUTNの電位は低下する。また、出力電圧制御信号SVFEDの電位が低い場合、トランジスタ16のドレインD16とソースS16との間の電位差の減少と、抵抗13及び14における電圧降下量の減少によって、出力線OUTP及びOUTNの電位は上昇する。
【0064】
出力コモン電圧帰還回路50は、オペアンプ10Eと、出力線OUTP及びOUTNと、MOSトランジスタ30及び40との間に設けられ、電流源51と、一対のトランジスタ52及び53と、トランジスタ54、55及び56とを含んで構成される。出力コモン電圧帰還回路50は、オペアンプ10Eから出力される出力信号SOUTP及びSOUTNを、それぞれトランジスタ52及び53で、また、出力信号生成回路20Dから出力される出力コモン信号SCOMをトランジスタ54で受け、出力電圧制御信号SVFEDを生成し、オペアンプ10Eへ出力する。即ち、出力コモン電圧帰還回路50は、出力線OUTPと出力線OUTNの中間電位、即ち出力コモン電圧VCMを、出力コモン信号線COMの電位と一致させるように、オペアンプ10Eに流れる電流量を制御する。
【0065】
電流源51は、例えばP型MOSトランジスタであり、出力コモン電圧帰還回路50全体に所定の電流を供給する。電流源51は、トランジスタ52のソースS52、トランジスタ53のソースS53及びトランジスタ54のソースS54と、電源線VDDとの間に設けられる。
【0066】
トランジスタ52は、能動負荷(負荷MOS及びスイッチMOS)として機能し、例えばP型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ52のソースS52は電流源51に接続され、ドレインD52はトランジスタ55のゲートG55及びトランジスタ56のゲートG56と、トランジスタ56のドレインD56に接続され、ゲートG52は出力線OUTNに接続される。
【0067】
トランジスタ53もまた、能動負荷(負荷MOS及びスイッチMOS)として機能し、例えばP型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ53のソースS53は電流源51に接続され、ドレインD53はトランジスタ55のゲートG55及びトランジスタ56のゲートG56と、トランジスタ56のドレインD56に接続され、ゲートG53は出力線OUTPに接続される。
【0068】
トランジスタ54もまた、能動負荷(負荷MOS及びスイッチMOS)として機能し、例えばP型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ54のドレインD54はトランジスタ55のドレインD55と、オペアンプ10Eにおける出力電圧制御端子VFEDに接続され、ソースS54は電流源51に接続され、ゲートG54はMOSトランジスタ30及び40と、出力コモン信号生成回路における抵抗23及び電流源24に接続される。
【0069】
トランジスタ55は、電圧電流変換素子として機能し、例えばN型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ55のドレインD55はトランジスタ54のドレインD54及びオペアンプ10Eにおける出力電圧制御端子VFEDに接続され、ソースS55は接地線GNDに接続され、ゲートG55はトランジスタ52のドレインD52、トランジスタ53のドレインD53、トランジスタ56のドレインD56及びゲートG56に接続される。
【0070】
トランジスタ56は、電圧電流変換素子として機能し、例えばN型MOSトランジスタを含んで構成される。即ち、トランジスタ56のドレインD56は、トランジスタ52のドレインD52、トランジスタ53のドレインD53、トランジスタ56のゲートG56及びトランジスタ55のゲートG55に接続される。トランジスタ56のソースS56は接地線GNDに接続され、トランジスタ56のゲートG56は、トランジスタ52のドレインD52、トランジスタ53のドレインD53、トランジスタ56のドレインD56に接続される。
【0071】
かかる構成の出力コモン電圧帰還回路50において、出力コモン電位VCMが、出力コモン信号線COMの電位より高い場合、トランジスタ52のゲートG52及びトランジスタ53のゲートG53の電位は上昇し、該トランジスタのドレインD52及びD53とソースS52及びS53の間に流れる電流は減少する。すると、トランジスタ55のゲートG55及びトランジスタ56のゲートG56の電位は低下し、該トランジスタのドレインD55及びD56とソースS55及びS56との間に流れる電流は減少する。これにより、オペアンプ10Eへ出力される出力電圧制御信号SVFEDの電位は上昇する。
【0072】
また、かかる構成の出力コモン電圧帰還回路50において、出力コモン電位VCMが、出力コモン信号線COMの電位より低い場合、トランジスタ52のゲートG52及びトランジスタ53のゲートG53の電位は低下し、該トランジスタのドレインD52及びD53とソースS52及びS53の間に流れる電流は増加する。すると、トランジスタ55のゲートG55及びトランジスタ56のゲートG56の電位は上昇し、該トランジスタのドレインD55及びD56とソースS55及びS56との間に流れる増加は減少する。これにより、オペアンプ10Eへ出力される出力電圧制御信号SVFEDの電位は低下する。
【0073】
即ち、出力コモン電圧帰還回路50は、出力コモン電位VCMと出力コモン信号線COMの電位との比較を行い、出力コモン電圧VCMが出力コモン信号線COMの電位より高い場合、出力電圧制御信号SVFEDの電位を上昇させる。また、出力コモン電圧帰還回路50は、出力コモン電圧VCMが出力コモン信号線COMの電位より低い場合、出力電圧制御信号SVFEDの電位を低下させる。
【0074】
従って、本実施形態に係る遅延装置1Eにおいて、出力線OUTP及びOUTNの出力コモン電位VCMが出力コモン信号線COMの電位より高い場合、出力コモン電圧帰還回路50は、出力電圧制御信号SVFEDの電位を上昇させ、該信号をオペアンプ10Eへ出力する。オペアンプ10Eは該信号に従い、出力線OUTP及びOUTNの電位を低下させる。また、出力線OUTP及びOUTNの出力コモン電位VCMが出力コモン信号線COMの電位より低い場合、出力コモン電圧帰還回路50は、出力電圧制御信号SVFEDの電位を低下させ、該信号をオペアンプ10Eへ出力する。オペアンプ10Eは、該信号に従い、出力線OUTP及びOUTNの電位を上昇させる。
【0075】
これにより、本実施形態に係る遅延装置1Eは、前述した実施形態における遅延装置1Dが有する機能に加えて、出力コモン電圧帰還回路50と、オペアンプ10Eとで負帰還を構成することで、出力線OUTP及びOUTNの出力コモン電圧VCMを、出力信号生成回路20Dで生成される出力コモン信号SCOMの電位に補正することができる。
【0076】
出力コモン信号生成回路20D、MOSトランジスタ30及び40の機能及び構成に関しては、上記実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0077】
なお本実施形態においては、出力コモン信号SCOMの生成は、出力コモン信号生成回路20Dによって行われているが、これに限られるものではなく、出力コモン信号生成回路20によって行われても良いし、或いは全く別の手段によって行われても良い。
【0078】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0079】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0080】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。