【実施例1】
【0032】
図1および
図2は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1並びにスピーカーシステム1aを説明する図である。具体的には、
図1(a)はスピーカーシステム1の平面図であり、
図1(b)はそのA−A’断面図であり、
図1(c)はそのB−B’断面図である。同様に、
図2(a)はスピーカーシステム1aのA−A’断面図であり、
図2(b)はそのB−B’断面図であり、
図2(c)は後述する平面部材7aおよび吸音部材8を説明する斜視図であり、
図2(d)は平面部材7aの平面図である。なお、説明が不用なスピーカーシステム1および1aの一部の内部構造等については、図示並びに説明を省略する。
【0033】
本実施例のスピーカーシステム1ならびに1aは、略凸ドーム状の振動板31を備える動電型スピーカー3を備える点で共通する。動電型スピーカー3は、呼び口径が約1.8cmのマイクロスピーカーであり、取り付ける対象であるキャビネットの厚みを比較的に確保しにくい小型の電子機器に適するスピーカーである。動電型スピーカー3は、フレーム32に周辺部が固定されるエッジを含む円形の振動板31を備え、振動板31にはボイスコイル33が取り付けられている。ボイスコイル33は、略円筒形状のボビンにコイルが巻き廻されて構成されており、コイルは磁気回路34の磁気空隙に柔軟性を有するエッジにより振動可能に配置される。磁気回路34は、ポールとヨークと磁石から構成される内磁型磁気回路である。
【0034】
したがって、動電型スピーカー3では、ボイスコイル33のコイルに音声信号電流が供給されると、磁気空隙中のコイルに駆動力が発生し、その結果、ボイスコイル33および振動板31から構成される振動系が図示する上下方向に振動し、音波を再生することができる。動電型スピーカー3は、振動板31の磁気回路34が存在しない前面側と、振動板31の磁気回路34が存在する背面側とに、それぞれ逆相の関係の音波を放射する。
【0035】
スピーカーシステム1ならびに1aは、動電型スピーカー3が取り付けられるキャビネット2および2aが、前面キャビティ部材4と、蓋部材5と、背面キャビティ部材6と、から構成される点で共通する。動電型スピーカー3は、樹脂で形成される背面キャビティ部材6に取り付けられるので、振動板31の背面側に放射される音波は、背面キャビティ部材6が規定する音響容量として機能する背面空間13に放射される。本実施例の場合には、動電型スピーカー3および背面キャビティ部材6は、密閉型キャビネットを構成する。
【0036】
また、スピーカーシステム1ならびに1aは、キャビネット2および2aがそれぞれ、動電型スピーカー3の振動板31の前面側へ放射される音波を自由空間へと導出する前面音導部(それぞれ9ならびに9a)を有する点で共通する。動電型スピーカー3の前面側に取り付けられる前面キャビティ部材4は、樹脂で形成されて、蓋部材5とともに動電型スピーカー3の振動板31を支持するフレーム32の周縁部に対応する音源空間10を規定する。蓋部材5は、剛性を有する樹脂板、あるいは、金属板であり、スピーカーシステムを平面視した場合に動電型スピーカー3が露出しないように蓋をするとともに、音道11および開口12を規定している。
【0037】
前面音導部9は、前面キャビティ部材4と、蓋部材5と、平面部材7と、吸音部材8と、を含んで構成されて、音源空間10と、音源空間10から放射される音波を自由空間に導出する音道11と、音道11に連通する開口12と、を規定する。また、前面音導部9aは、前面キャビティ部材4と、蓋部材5と、平面部材7aと、吸音部材8と、を含んで構成されて、音源空間10と、音源空間10から放射される音波を自由空間に導出する音道11と、音道11に連通する開口12と、を規定する。音源空間10は、平面図上での振動板31の前面側に相当する部分であり、音道11は、音源空間10から開口12に至るまでの空間に相当する。前面音導部9または9aの相違点は、後述する平面部材7または7aの形状が異なることのみであるので、重複する部分については、説明を省略する。
【0038】
また、
図3は、スピーカーシステム1を含む電子機器であるノート型パーソナル・コンピュータ20を説明する斜視図である。パーソナル・コンピュータ20は、ヒンジで開閉可能に構成された筐体21と、筐体21に取り付けられたキーボード部22および液晶ディスプレイ部23と、を備え、さらに、筐体21のパームレスト部の左右にスピーカーシステム1をそれぞれ内部に格納して備えている。つまり、パーソナル・コンピュータ20は、動電型スピーカー3の振動板31を外観視できないようにすることで美観を向上させている。パーソナル・コンピュータ20は、その筐体21にスリット状の外部開口24を設けて、この外部開口24がスピーカーシステム1の開口12に連通するように、スピーカーシステム1が取り付けられている。
【0039】
図示するパーソナル・コンピュータ20では、左右のスピーカーシステム1からそれぞれ異なる左右のステレオ音声信号を再生することができる。なお、ノート型パーソナル・コンピュータ20は、スピーカーシステム1に代えて上記のスピーカーシステム1aを含むものであってもよい。また、パーソナル・コンピュータ20におけるスピーカーシステム1の取付位置は、
図3の場合に限られず、スピーカーシステム1を収容する厚み寸法を有する部位であれば、他の部分であってもよい。
【0040】
図1に図示するスピーカーシステム1において、平面部材7は、振動板31の投影面の約半分に対応する平面形状を有し、一方の面が振動板31に対向するように前面キャビティ部材4の側壁部にその周囲部分の半円弧の部分を取り付けてられている。具体的には、平面部材7は、厚み0.25mmのPET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂のシート部材を切断して形成した部材であり、動電型スピーカー3の振動板31の外形寸法に略相当する大きさの円を、略半分にしたような半円形状の部材である。前面キャビティ部材4の音源空間10を規定する側壁部には、半円弧状の棚状のリブが設けられているので、シート状の平面部材7を音源空間10に配置することができる。前面音導部9の平面部材7は、音源空間10において、音道11に連通する内部開口を塞がないように、開口12とは反対側の図示する左側に配置されている。例えば、平面部材7は、厚み1mm以下のPE(ポリエチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、等のシート部材を利用して形成することができる。
【0041】
一方、
図2に図示するスピーカーシステム1aにおいて、平面部材7aは、
図2(d)に図示するように、振動板31の投影面の約半分に対応する半円形部分70と、半円形部分70の半円弧状の周囲部分71と、半円形部分70の外形を規定する直線部の中央付近から扇状に突出した扇状突出部72と、を有する。平面部材7と平面部材7aとの相違点は、この扇状突出部72の有無のみである。また、
図2(c)に図示するように、平面部材7aの半円形部分70には、振動板31に対向しない他方の面に吸音部材8が取り付けられる。平面部材7についても同様であり、平面部材7および7aにおいて、周囲部分71および扇状突出部72は、吸音部材8が取り付けられていない対応部分として規定される。なかでも、扇状突出部72は、振動板31の投影面の約半分以下に収まる平面形状を有し、音源空間10において音道11に連通する内部開口を塞がないように配置されている。
【0042】
吸音部材8は、具体的には、厚み0.5mm以上の所定厚みのフェルト部材であり、少なくとも平面部材7または7aよりも厚い寸法を有する吸音性を有する部材である。例えば、吸音部材8は、フェルト、不織布、発泡ウレタンのスポンジ、羊毛、マイクログラスウール、ポリエステル、ウール、のいずれかから選択すれば良く、音源空間10の寸法に合わせて、平面部材7または7aの材料および厚みと組み合わせて設定可能である。
図1および
図2に図示するように、吸音部材8は、動電型スピーカー3の振動板31の投影面の約半分に対応する平面形状を有して、音源空間10において音道11に連通する内部開口を塞がないように配置されている。吸音部材8の平面部材7または7aに固定されない他方の面は、蓋部材5により規制される。
【0043】
したがって、平面部材7および7aは、動電型スピーカー3の振動板31の前に形成される音源空間10において、投影面積上で少なくともその約半分に吸音部材8で満たされた空間を設けることができる。さらに、平面部材7および7aは、一方の面が振動板31に対向するように前面キャビティ部材4の側壁部にその周囲部分71を取り付けて音源空間10に配置されているので、薄くて柔らかい材質を選定することで、振動板31に対向しない他方の面に取り付けられる吸音部材8とともに、振動板31からの音波の放射に合わせて振動する。特に、平面部材7aの場合には、吸音部材8が取り付けられない扇状突出部72が設けられているので、振動板31からの音波の放射に合わせて振動し易くすることができる。平面部材7および7aと、吸音部材8と、は、音源空間10ならびに音道11において所定の周波数で共振が生じるのを抑制して、スピーカーシステムとしての音圧周波数特性にピーク・ディップが出現しないようにすることができる。
【0044】
図4は、本実施例のスピーカーシステム1および1aの音圧周波数特性を説明するグラフである。また、
図5は、比較例の(図示しない)スピーカーシステム100および101の音圧周波数特性を説明するグラフである。
【0045】
比較例のスピーカーシステム100は、上記のスピーカーシステム1から蓋部材5と、平面部材7および吸音部材8と、を取り除いた場合であり、直接放射型スピーカーとしての動電型スピーカー3の基本的な音圧周波数特性を確認することができる。この比較例のスピーカーシステム100は、5kHz以上の高い周波数で音圧レベルが高く、顕著なピーク・ディップが見られない適切なスピーカーシステムであるが、蓋部材5を備えないので振動板31が露出してしまうという美観上の問題を含む。
【0046】
次に、比較例のスピーカーシステム101は、上記のスピーカーシステム1から平面部材7および吸音部材8を取り除いた場合であり、そのグラフは、比較例のスピーカーシステム100と対比すると、蓋部材5を備えた場合に音源空間10で発生する共振の悪影響を示すことができる。つまり、約4kHz付近に鋭く高いピークが発生すると共に、約6kHz以上では音圧レベルが低下して、10kHz以上に深いディップが出現する。従来技術では、音源空間10に適当な吸音材を配置すること、あるいは、音源空間10を区分けする壁を設けること、等の対策でピークを抑制することも可能な場合があるが、平坦で広い再生周波数帯域を実現するのが難しいという問題がある。
【0047】
一方、本実施例のスピーカーシステム1および1aでは、音源空間10に振動板31からの音波の放射に合わせて振動する部分を、平面部材7(または7a)および吸音部材8から構成するので、その結果、
図4のグラフのように、従来技術のように音源空間10に吸音材を配置するだけでは平準化することが困難だった音圧周波数特性におけるピーク・ディップを、十分に抑制することができる。スピーカーシステム1および1aは、振動板31が露出しない薄型の形状に収まっているので、動電型スピーカー3の前面側に前面音道部9または9aを設ける構成であっても、平坦で広い再生周波数帯域を得ることができる。
【0048】
特に、本実施例のスピーカーシステム1aでは、平面部材7aの音源空間10に振動板31からの音波の放射に合わせて振動する部分を、吸音部材8が取り付けられない扇状突出部72として設けているので、扇状突出部72として設けていないスピーカーシステム1に比較して、約4kHz〜約10kHzの範囲で音圧レベルが上昇する。平面部材7aの扇状突出部72が、音源空間10の内部で振動することで音波を発生するからである。つまり、本実施例のスピーカーシステム1aでは、平面部材7aの形状を設計することで、再生能率を向上させることができる利点がある。
【0049】
なお、上記の実施例では、平面部材7および7aは、振動板31の投影面の約半分に対応する半円形部分70を有する場合であるが、動電型スピーカー3の振動板31の形状に応じて、その投影面の約半分に対応する平面形状を有していればよい。また、吸音部材8も、動電型スピーカーの振動板の形状に応じて、その投影面の約半分に対応する平面形状を有していればよく、音源空間10において音道11に連通する内部開口を塞がないように配置されていればよい。投影面の約半分に対応する平面形状とは、振動板31の投影面の面積の約50%に相当する面積を有するいかなる形状の平面を含み、その面積は、約40%〜約60%に相当する面積であればよい。また、吸音部材8は、接着剤または両面テープ等により平面部材7または7aに取り付けられていればよく、音源空間10において音道11に連通する内部開口を塞がないように配置されていればよい。
【0050】
また、
図2(d)に図示する平面部材7aは、半円形部分70と、半円形部分70の半円弧状の周囲部分71と、半円形部分70の外形を規定する直線部の中央付近から扇状に突出した扇状突出部72と、を有するが、扇状突出部72は、扇形ではない他の形状により規定されても良い。つまり、吸音部材8が取り付けられていない対応部分として規定される平面部材7aの突出部は、その材料および厚みの選定により、音源空間10に収まり、かつ、前面キャビティ部材4または蓋部材5または動電型スピーカー3と接触せずに異音を生じない形状寸法であれば、所望の形状に設定可能である。もちろん、平面部材7aの突出部は、複数設けてもよい。平面部材7aの樹脂シート材料は、厚みが薄いと高域限界周波数が低下し、共振の鋭さQが小さくなる傾向があるので、突出部の面積は、ある程度広い方がよい。
【実施例2】
【0051】
図6は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1bを説明する図である。具体的には、
図6(a)はスピーカーシステム1bのA−A’断面図であり、
図6(b)はそのB−B’断面図であり、
図6(c)は後述する平面部材7bおよび吸音部材8bを説明する斜視図であり、
図6(d)は平面部材7bの平面図である。スピーカーシステム1bは、上記の実施例1でのスピーカーシステム1aにおける平面部材7aおよび吸音部材8が、それぞれ平面部材7bおよび吸音部材8bに変更されたことのみが異なる前面音道部9b並びにキャビネット2bを備える。したがって、説明が重複する部分については、説明を省略する。
【0052】
図6に図示するスピーカーシステム1bにおいて、平面部材7bは、
図6(d)に図示するように、振動板31の投影面の約半分に対応する半円形部分70と、半円形部分70の半円弧状の周囲部分71と、半円形部分70の外形を規定する直線部の中央付近から扇状に突出した扇状突出部72と、周囲部分71に設けられた貫通孔73と、を有する。平面部材7bと平面部材7aとの相違点は、この貫通孔73の有無のみである。また、
図6(c)に図示するように、平面部材7bの半円形部分70には、振動板31に対向しない他方の面に吸音部材8bが取り付けられる。平面部材7bにおいて、周囲部分71および扇状突出部72は、吸音部材8が取り付けられていない対応部分として規定されるので、貫通孔73は吸音部材8bにより塞がれない。
【0053】
吸音部材8bは、具体的には、厚み0.5mm以上の所定厚みのフェルト部材であり、少なくとも平面部材7bよりも厚い寸法を有する吸音性を有する部材である。吸音部材8bは、吸音部材8の外形変更し、平面部材7bの貫通孔73に対応して貫通孔73が露出するような切欠部分を設けたものである。
図6に図示するように、吸音部材8bは、動電型スピーカー3の振動板31の投影面の約半分に対応する平面形状を有して、音源空間10において音道11に連通する内部開口を塞がないように、かつ、平面部材7bの貫通孔73を塞がないように配置されている。
【0054】
したがって、平面部材7bは、動電型スピーカー3の振動板31の前に形成される音源空間10において、投影面積上で少なくともその約半分に吸音部材8bで満たされた空間を設けることができる。さらに、平面部材7bは、一方の面が振動板31に対向するように前面キャビティ部材4の側壁部にその周囲部分71を取り付けて音源空間10に配置されているので、薄くて柔らかい材質を選定することで、振動板31に対向しない他方の面に取り付けられる吸音部材8bとともに、振動板31からの音波の放射に合わせて振動する。特に、平面部材7bの場合には、吸音部材8bが取り付けられない扇状突出部72が設けられているので、振動板31からの音波の放射に合わせて振動し易くすることができる。平面部材7bと、吸音部材8bと、は、音源空間10ならびに音道11において所定の周波数で共振が生じるのを抑制して、スピーカーシステムとしての音圧周波数特性にピーク・ディップが出現しないようにすることができる。
【0055】
図7は、本実施例のスピーカーシステム1bの音圧周波数特性を説明するグラフである。このスピーカーシステム1bでは、平面部材7bが貫通孔73を有し、動電型スピーカー3の振動板31から放射される音波が、貫通孔73を通じて吸音部材8bに入射するように構成されている。貫通孔73は、音源空間10において平面部材7bの音道10が設けられていない側に設けられているので、振動板31からから放射される音波が、この貫通孔73を通じても吸音部材8bに入射するようにできる。
【0056】
その結果、本実施例のスピーカーシステム1bでは、
図4のグラフに図示する先の実施例のスピーカーシステム1aの場合に比較して、吸音部材8bへの音波が入射する経路が複数になって分散するので、音源空間10での共振の発生をさらに低減することができ、高域限界周波数が約11kHzから約15kHz付近まで延びるという利点を有する。先の実施例のスピーカーシステム1aの場合に見られた約15kHz付近のディップも浅くなり、本実施例のスピーカーシステム1bでは、音圧周波数特性におけるピーク・ディップを十分に抑制して、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。
【0057】
なお、本実施例では、平面部材7bの貫通孔73が周囲部分71に設けられているが、貫通孔73は、吸音部材8bが通気性の良い材料の場合には、吸音部材8bが取り付けられる半円形部分70に設けられてもよい。また、貫通孔73は、本実施例のように1つのみではなく、複数箇所に設けてもよい。また、吸音部材8bは、平面部材7bの周囲部分71に貫通孔73が露出するような切欠部分を設けているが、このような切欠部分を有しない先の実施例1の吸音部材8のような半円形状の吸音部材を用いてもよい。
【実施例4】
【0061】
図9は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1dを説明する図である。具体的には、
図9はスピーカーシステム1dのB−B’断面図である。スピーカーシステム1dは、上記の実施例1でのスピーカーシステム1aにおける背面キャビティ部材6が、ダクト14を有する背面キャビティ部材6dに変更されたことのみが異なるキャビネット2dを備える。したがって、説明が重複する部分については、説明を省略する。
【0062】
スピーカーシステム1aならびに1dは、動電型スピーカー3が取り付けられるキャビネット2および2dが、動電型スピーカー3の振動板31の前面側へ放射される音波を自由空間へと導出する前面音導部9aを有する点で共通する。また、背面キャビティ部材6と背面キャビティ部材6dとの相違点は、背面キャビティ部材6dが音響容量として機能する背面空間13に連通するダクト14を備える点のみである。したがって、本実施例の場合には、動電型スピーカー3および背面キャビティ部材6dは、バスレフ型のスピーカーシステム1dを構成する。
【0063】
図10は、本実施例のスピーカーシステム1dの音圧周波数特性を説明するグラフである。動電型スピーカー3の振動板31の背面側へ放射される音波は、背面空間13とダクト14とにより構成される音響的な共振回路により位相反転し、動電型スピーカー3の共振周波数よりも低い周波数帯域の音波が主に同相となってダクト14から放射される。その結果、本実施例のスピーカーシステム1dは、背面空間13が密閉型の背面キャビティ部材6を備える先の実施例のスピーカーシステム1よりも、低音域の再生能力が向上する。もちろん、本実施例のスピーカーシステム1dは、前面音導部9aを有する点でスピーカーシステム1aと共通するので、音源空間10での共振の発生を低減することができ、音圧周波数特性におけるピーク・ディップを十分に抑制して、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。
【0064】
なお、スピーカーシステム1dを含む電子機器では、先の実施例のパーソナル・コンピュータ20のように、スピーカーシステム1dの開口12に連通する外部開口24を設けると共に、ダクト14に連通する他の外部開口を設けるのが好ましい。この場合、ダクト14に連通する他の外部開口は、ダクト14に直結する構造が好ましいが、筐体21内の他の空間を介してダクト14に連通していればよく、低音域の再生能力を向上させることができる。
【0065】
また、上記実施例では、薄型の動電型スピーカー3は、断面が略凸ドーム状の振動板31を備えるが、動電型スピーカー3の振動板31は、前面側に凹部が形成されるコーン型振動板、あるいは、凹部が形成されない平面振動板であってもよく、振動板31の断面形状に限定されるものではない。もちろん、動電型スピーカー3の振動板31は、円形に限らずトラック型、あるいは、楕円形等の細長型の振動板であってもよい。また、動電型スピーカー3は、振動板31およびボイスコイル33を振動可能に支持するダンパーをさらに備えていてもよい。