(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-126567(P2015-126567A)
(43)【公開日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】回転型パルスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 37/20 20060101AFI20150609BHJP
H02K 37/04 20060101ALI20150609BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20150609BHJP
H02K 1/17 20060101ALI20150609BHJP
【FI】
H02K37/20 B
H02K37/04 C
H02K1/06
H02K1/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-267779(P2013-267779)
(22)【出願日】2013年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】有賀 信雄
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601CC01
5H601CC16
5H601CC21
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE18
5H601GA02
5H601GD02
5H601GD09
5H601HH05
5H601JJ04
5H601JJ05
5H622CA02
5H622CB04
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP14
(57)【要約】
【課題】大きなトルクが得られ、高速回転で使用しても、回転子が遠心力で損傷する恐れのない回転型パルスモータを提供することである。
【解決手段】固定子1を、軸方向に配列された複数個の各鉄心2a、2bに形成された回転子11と対向する2列の各磁極3a、3bに、回転子11の回転方向へ所定のピッチpで同じ極性の向きの永久磁石4を、その両側で隣合う2列の各磁極3a、3bの極が交互に反転するように挿入し、2列の磁極3a、3bの間に環状のコイル5を嵌装したものとし、回転子11を、各鉄心2a、2bの2列の各磁極3a、3bの端面と対向する歯部13a、13bが回転方向に所定のピッチ2pで形成され、各歯部13a、13b同士が回転方向へ電気角で180°の位相差を有し、配列される複数個の鉄心2a、2bに対して、その個数に応じて決定される回転方向への位相差を順次有するものとした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸上に固定され、磁束発生部を有する固定子と、
前記固定子と同軸上で回転自在に配設され、前記固定子と半径方向に隙間を開けて対向する回転子とからなり、
前記磁束発生部から発生する磁束によって、前記回転子を回転させる回転型パルスモータにおいて、
前記固定子は、
前記回転子と対向する2列の磁極を有し、軸方向に配列された複数個の鉄心と、
前記複数個の各鉄心の2列の磁極に、前記回転子の回転方向へ所定のピッチで回転方向へ極性を向けて挿入され、その両側で隣合う前記2列の磁極の極を交互に反転させる永久磁石と、
前記複数個の各鉄心の2列の磁極の間に嵌装される環状のコイルとを備え、
前記回転子は、磁性部材で形成され、
前記複数個の鉄心の2列の各磁極の端面と対向するように、前記回転方向に沿って前記永久磁石の挿入ピッチと対応する所定のピッチで形成された複数個の歯部を備え、
前記鉄心の2列の各磁極の端面と対向する歯部同士が、前記2列の磁極が形成された鉄心に挿入された永久磁石の極性が同じ向きの場合は、回転方向へ電気角で180°の位相差を有し、前記永久磁石の極性が逆向きの場合は、回転方向へ同位相とされ、
前記軸方向に配列される複数個の各鉄心の2列の磁極の端面と対向する歯部が、前記鉄心の配列個数に応じて決定される回転方向への位相差を順次有することを特徴とする回転型パルスモータ。
【請求項2】
前記回転子の前記2列の各磁極の端面と対向する歯部を、前記2列の各磁極が存在しない軸方向部位で切り欠いた請求項1に記載の回転型パルスモータ。
【請求項3】
前記鉄心の2列の各磁極に挿入された永久磁石を互いに分離した別体とした請求項1または2に記載の回転型パルスモータ。
【請求項4】
前記別体とした永久磁石の極性を互いに逆向きとした請求項3に記載の回転型パルスモータ。
【請求項5】
前記固定子を前記回転子の外周側に配置した請求項1乃至4のいずれかに記載の回転型パルスモータ。
【請求項6】
前記固定子の外周側を筒状のケーシングで覆い、前記ケーシングを前記軸方向に配列される複数個の鉄心に対応させて軸方向に分割した請求項5に記載の回転型パルスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転での使用に好適な回転型パルスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
磁束発生部を有する固定子(ステータ)と回転子(ロータ)を同軸上に配置して、これらの固定子と回転子を半径方向に隙間を開けて対向させ、磁束発生部から発生する磁束によって回転子を回転させる回転型パルスモータには、磁性部材で形成した回転子の固定子との対向面に、回転方向に沿って所定のピッチで歯部と溝部を交互に形成して、各歯部の極性が交互に反転するように各溝部に永久磁石を挿入したものがある。固定子は、回転子の回転方向へ歯部のピッチと対応する所定のピッチで配列され、かつ互いに回転方向へ所定の変位を有する2列の磁極を回転子の各歯部の端面と対向させて形成した複数個の鉄心を、回転子の軸方向に沿ってその個数に応じて決定される回転方向への位相差を有するように順次配列したものとされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、各鉄心の磁極にコイルを巻回することにより、特許文献2に記載されたものは、各鉄心の2列の磁極の間に環状のコイルを嵌装することにより、それぞれ鉄心にコイルを装着している。後者は、各鉄心に1つずつのコイルを嵌装すればよいので、コイルの装着を簡素化することができる。
【0004】
特許文献1、2に記載された回転型パルスモータは、いずれかの鉄心のコイルに電流を流すと、固定子の鉄心の一方の列の磁極から回転子のS極側の歯部に流入した磁束が、永久磁石を介して隣合うN極側の歯部に流入したのち、このN極側の歯部から固定子の鉄心の他方の列の磁極へ流入し、さらに鉄心の内部を軸方向に導かれて元の磁極に戻る磁束ループが形成されるので、回転子の歯部と対向する各磁極の端面を広い面積でトルク発生用に活用でき、大きなトルクが得られる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−344161号公報
【特許文献2】特開平4−344162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載された回転型パルスモータは、大きなトルクが得られる利点があるが、ダイレクトドライブモータ等に用いて高速回転で使用すると、回転子の溝部に挿入された永久磁石に大きな遠心力が作用する。このため、回転子を内周側に配置するインナロータ形のものとする場合は、永久磁石が遠心力によって外周側へ飛散する恐れがある。また、回転子を外周側に配置するアウタロータ形のものとする場合は、その磁性部材を磁束損の少ない磁性鉄粉の粉末成形品とすると、脆い粉末成形品の磁性部材が永久磁石に作用する遠心力によって破損する恐れがあり、いずれの場合も、高速回転する回転子が遠心力で損傷する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、大きなトルクが得られ、高速回転で使用しても、回転子が遠心力で損傷する恐れのない回転型パルスモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、一軸上に固定され、磁束発生部を有する固定子と、前記固定子と同軸上で回転自在に配設され、前記固定子と半径方向に隙間を開けて対向する回転子とからなり、前記磁束発生部から発生する磁束によって、前記回転子を回転させる回転型パルスモータにおいて、前記固定子は、前記回転子と対向する2列の磁極を有し、軸方向に配列された複数個の鉄心と、前記複数個の各鉄心の2列の磁極に、前記回転子の回転方向へ所定のピッチで回転方向へ極性を向けて挿入され、その両側で隣合う前記2列の磁極の極を交互に反転させる永久磁石と、前記複数個の各鉄心の2列の磁極の間に嵌装される環状のコイルとを備え、前記回転子は、磁性部材で形成され、前記複数個の鉄心の2列の各磁極の端面と対向するように、前記回転方向に沿って前記永久磁石の挿入ピッチと対応する所定のピッチで形成された複数個の歯部を備え、前記鉄心の2列の各磁極の端面と対向する歯部同士が、前記2列の磁極が形成された鉄心に挿入された永久磁石の極性が同じ向きの場合は、回転方向へ電気角で180°の位相差を有し、前記永久磁石の極性が逆向きの場合は、回転方向へ同位相とされ、前記軸方向に配列される複数個の各鉄心の2列の磁極の端面と対向する歯部が、前記鉄心の配列個数に応じて決定される回転方向への位相差を順次有する構成を採用した。
【0009】
前記複数個の鉄心の個数に応じて決定される歯部の位相差は、それぞれ電気角で、個数が2個または4個の場合は90°(=360°/4)、個数が3個の場合は120°(=360°/3)、個数が5個の場合は72°(=360°/5)とされる。また、個数が6個の場合は、3個の組合せが2組として120°とするとよい。なお、これよりも多い個数で実用されることはあまりないが、例えば、個数が3の倍数である場合は120°、5の倍数である場合は72°とするとよい。
【0010】
上記構成を採用することにより、いずれかの鉄心のコイルに電流を流すと、固定子の鉄心の一方の列のN極の磁極から回転子の対向する歯部に流入する磁束が、回転子の内部を軸方向に導かれて、固定子の鉄心の他方の列の磁極と対向する歯部から他方の列のS極の磁極に流入し、他方の列の永久磁石を介して隣合うN極の磁極に流入したのち、さらに鉄心の内部を軸方向に導かれて元の磁極に戻る磁束ループが形成されるようにし、回転子の歯部と対向する各磁極の端面を広い面積でトルク発生用に活用して大きなトルクが得られるようにするとともに、回転子に永久磁石を挿入しないようにして、高速回転で使用しても、回転子が遠心力で損傷する恐れがないようにした。
【0011】
前記回転子の前記2列の各磁極の端面と対向する歯部を、前記2列の各磁極が存在しない軸方向部位で切り欠くことにより、一方の列の磁極から回転子の歯部に流入する磁束、および回転子の歯部から他方の列の磁極に流入する磁束の一部が、磁極の軸方向端面を通って軸方向に流入するのを防止して、より大きなトルクを得ることができる。固定子の鉄心の磁極から回転子、または回転子から固定子の鉄心の磁極へ軸方向に流入する磁束は、トルクの生成に寄与しないからである。
【0012】
前記鉄心の2列の各磁極に挿入された永久磁石を互いに分離した別体とすることにより、個々の鉄心への永久磁石の挿入を容易にして、鉄心の組立て性を向上させることができる。
【0013】
前記別体とした永久磁石の極性を互いに逆向きとすることにより、軸方向に配列される複数個の鉄心間の磁力による反発をなくして、固定子の組立て性を向上させることができる。
【0014】
上述した各回転型パルスモータは、前記固定子を前記回転子の外周側に配置することができる。
【0015】
前記固定子を回転子の外周側に配置する場合は、前記固定子の外周側を筒状のケーシングで覆い、前記ケーシングを前記軸方向に配列される複数個の鉄心に対応させて軸方向に分割することにより、分割したケーシングの各分割部に複数個の各鉄心を組み付けたのち、各鉄心を組み付けた各分割部を合体させるようにし、ケーシングへの固定子の組み付けを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る回転型パルスモータは、固定子が、回転子と対向する2列の磁極を有し、軸方向に配列された複数個の鉄心と、複数個の各鉄心の2列の磁極に、回転子の回転方向へ所定のピッチで回転方向へ極性を向けて挿入され、その両側で隣合う2列の磁極の極を交互に反転させる永久磁石と、複数個の各鉄心の2列の磁極の間に嵌装される環状のコイルとを備え、回転子が、磁性部材で形成され、複数個の鉄心の2列の各磁極の端面と対向するように、回転方向に沿って永久磁石の挿入ピッチと対応する所定のピッチで形成された複数個の歯部を備え、鉄心の2列の各磁極の端面と対向する歯部同士が、2列の磁極が形成された鉄心に挿入された永久磁石の極性が同じ向きの場合は、回転方向へ電気角で180°の位相差を有し、永久磁石の極性が逆向きの場合は、回転方向へ同位相とされ、軸方向に配列される複数個の各鉄心の2列の磁極の端面と対向する歯部が、鉄心の配列個数に応じて決定される回転方向への位相差を順次有する構成を採用したので、大きなトルクが得られ、高速回転で使用しても、回転子が遠心力で損傷する恐れがない。また、この回転型パルスモータは、各鉄心の2列の磁極間に環状のコイルを嵌装しているので、コイルの装着も簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態の回転型パルスモータを示す縦断側面図
【
図2】(a)、(b)、(c)は、それぞれ
図1のケーシングを除いたIIa−IIa線、IIb−IIb線、IIc−IIc線に沿った断面図
【
図4】(a)、(b)は、それぞれ
図3の変形例を示す斜視図
【
図5】
図1の固定子の1つの鉄心から発生する磁束の流れを説明する断面図
【
図6】第2の実施形態の回転型パルスモータを示す縦断側面図
【
図7】(a)、(b)、(c)は、それぞれ
図6のケーシングを除いたVIIa−VIIa線、VIIb−VIIb線、VIIc−VIIc線に沿った断面図
【
図9】
図6の固定子の1つの鉄心から発生する磁束の流れを説明する断面図
【
図10】(a)は
図1または
図6のケーシングを分割したユニットに1つの鉄心を組み付ける手順を説明する縦断側面図、(b)は(a)の正面図
【
図11】
図10の鉄心を組み付けたユニットを合体する手順を説明する縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1乃至
図5は、第1の実施形態を示す。この回転型パルスモータは、
図1に示すように、固定子1と回転子11を同軸上に配設し、回転子11を固定子1の内周側に配置したインナロータ形のものであり、固定子1と回転子11は半径方向に隙間を開けて対向し、円筒状とされた固定子1の外周側は円筒状のケーシング21で覆われている。ケーシング21は軸方向に3分割されたユニット21aで形成されている。
【0019】
図1および
図2(a)、(b)、(c)に示すように、前記固定子1は、ケーシング21に組み付けて軸方向に配列された3個の各鉄心2a、2b、2cに、回転子11と対向する2列の磁極3a、3bが形成されている。各鉄心2a、2b、2cには、周方向で隣合う2列の各磁極3a、3bの極が交互に反転するように、回転子11の回転方向へ所定のピッチpで回転方向へ極性を向けた永久磁石4が挿入され、2列の各磁極3a、3bの間には環状のコイル5が嵌装されている。各鉄心2a、2b、2cは磁性鉄粉の粉末成形で形成されている。
【0020】
図3に示すように、前記各鉄心2a、2b、2cは、コイル5の嵌装を容易にするために、2列の各磁極3a、3bが形成される両側部と、コイル5が嵌装される中央部とに軸方向で3分割されている。また、各永久磁石4は、2列の各磁極3a、3bが形成される両側部のみに挿入されるように互いに分離された矩形板状の別体とされている。この実施形態では、各鉄心2a、2b、2cの両側部に挿入された各永久磁石4のN極とS極の極性が互いに同じ向きとされ、軸方向で隣合う2列の各磁極3a、3bが同極となっている。
【0021】
図4(a)、(b)は、それぞれ
図3の変形例を示す。
図4(a)の変形例は、前記各鉄心2a、2b、2cを、
図3と同様に両側部と中央部に3分割し、各永久磁石4を両側部と中央部の全体に挿入される一体のコ字板状としたもの、
図4(b)の変形例は、各鉄心2a、2b、2cを軸方向の中央で2分割し、
図3と同様に、2列の各磁極3a、3bが形成される両側部のみに、極性が互いに同じ向きとされた矩形板状の各永久磁石4を挿入したものである。なお、
図3および
図4(a)、(b)に示した各永久磁石4は、各鉄心2a、2b、2cの内周側から外周側まで全体に貫通するように挿入されているが、各永久磁石4は、各磁極3a、3bが形成される各鉄心2a、2b、2cの内周側部分のみに挿入してもよい。また、板状の各永久磁石4は、板面内や板厚方向で複数に分割することもでき、板厚方向で分割する場合は、複数枚の永久磁石の間に磁性材料を介在させてもよい。
【0022】
図1および
図2(a)、(b)、(c)に示すように、前記回転子11は、出力軸となる回転軸12に外嵌された円筒状の磁性部材に、3個の鉄心2a、2b、2cの2列の各磁極3a、3bの端面と対向する歯部13a、13bが、回転方向に沿って永久磁石4の挿入ピッチpと対応させた2倍のピッチ2pで形成されている。回転子11の磁性部材も磁性鉄粉の粉末成形で形成されている。
【0023】
前記歯部13a、13bは、各鉄心2a、2b、2cの磁極3a、3bが存在しない軸方向部位で直角に切り欠かれている。磁極3a、3bが存在しない歯部13a、13bの間は、V字状や円弧状に切り欠いてもよい。
【0024】
前記2列の各磁極3a、3bの端面と対向する2列の歯部13a、13b同士は、回転方向へ電気角で180°の位相差を有している(鉄心2b、2cについては図示省略)。また、軸方向に配列された各鉄心2a、2b、2cに対して、2列ずつの各歯部13a、13bは、回転方向へ電気角で順次120°の位相差を有する(鉄心2b、2c間については図示省略)。
【0025】
図5は、前記固定子1の鉄心2aのコイル5に一方向の電流を流したときに発生する磁束φの流れを示す。鉄心2aの一方の列のN極の磁極3aから回転子11の対向する歯部13aに流入する磁束φは、回転子11の磁性部材の内部を軸方向に導かれて、他方の歯部13bから対向する他方の列のS極の磁極3bに流入し、他方の列の永久磁石4を介して隣合うN極の磁極3bに流入したのち、さらに鉄心2aの内部を軸方向に導かれて元の一方の列のN極の磁極3aに戻る。このとき、
図2(a)、(b)に示した状態のように、一方の歯部13aが鉄心2aの一方の列のN極の磁極3aと対面し、電気角で180°の位相差を有する他方の歯部13bが他方の列のS極の磁極3bと対面するように、回転子11を回転させるトルクが発生する。したがって、回転子11の各歯部13a、13bと対向する各磁極3a、3bの端面を広い面積でトルク発生用に活用して大きなトルクを得ることができる。なお、鉄心2aのコイル5に逆方向の電流を流したときは、
図5の磁束φと逆向きの磁束が発生し、一方の歯部13aが鉄心2aの一方の列のS極の磁極3aと対面し、他方の歯部13bが他方の列のN極の磁極3bと対面するように、回転子11を回転させるトルクが発生する。
【0026】
また、前記歯部13a、13bは各磁極3a、3bが存在しない軸方向部位で切り欠かれているので、磁束φの一部が一方の列の磁極3aの軸方向端面から軸方向に回転子11に流入したり、回転子11から軸方向に他方の列の磁極3bの軸方向端面に流入したりするのを防止して、磁束φの大部分をトルク発生用に有効活用することができ、より大きなトルクを得ることができる。
【0027】
図示は省略するが、他の鉄心2b、2cのコイル5に電流を流したときに発生する磁束φの流れも同様であり、各鉄心2a、2b、2cのコイル5に順次電流を流すと、各鉄心2a、2b、2cの各磁極3a、3bとそれぞれ対向し、電気角で120°ずつの位相差を有する各歯部13a、13bが、順次各鉄心2a、2b、2cの一方の列のN極の磁極3aと他方の列のS極の磁極3bと対面するように、回転子11が電気角で120°ずつ回転する。
【0028】
この実施形態では、前記各鉄心2a、2b、2cの3つのコイル5に3相交流を流すことにより、回転子11を大きなトルクで高速回転させることができる。回転子11の回転を検出するセンサを設け、サーボモータとして使用することもできる。また、回転子11には永久磁石4が挿入されていないので、高速回転で使用しても、回転子11が損傷する恐れもない。
【0029】
図6乃至
図9は、第2の実施形態を示す。この回転型パルスモータもインナロータ形のものであり、
図6乃至
図8に示すように、前記各鉄心2a、2b、2cに挿入された各永久磁石4のN極とS極の極性が、2列の各磁極3a、3b間で互いに逆向きとされ、軸方向で隣合う2列の各磁極3a、3bが異極となっている点と、2列の各磁極2a、2bと対向する2列の歯部13a、13bが互いに同位相となっている点とが異なる。その他の部分は、第1の実施形態のものと同じであり、軸方向に配列された各鉄心2a、2b、2cに対して、2列ずつの各歯部13a、13bは、回転方向へ電気角で順次120°の位相差を有する。また、ケーシング21は軸方向に3分割されたユニット21aで形成されている。
【0030】
図9は、前記固定子1の鉄心2aのコイル5に一方向の電流を流したときに発生する磁束φの流れを示す。第1の実施形態のものと同様に、鉄心2aの一方の列のN極の磁極3aから回転子11の歯部13aに流入した磁束φは、回転子11の磁性部材の内部を軸方向に導かれて、他方の歯部13bから他方の列のS極の磁極3bに流入し、他方の列の永久磁石4を介して隣合うN極の磁極3bに流入したのち、さらに鉄心2aの内部を軸方向に導かれて元の一方の列のN極の磁極3aに戻る。このとき、
図7(a)、(b)に示した状態のように、一方の歯部13aが鉄心2aの一方の列のN極の磁極3aと対面し、これと同位相の他方の歯部13bが、磁極3aと軸方向で隣合う他方の列のS極の磁極3bと対面するように、回転子11を回転させるトルクが発生する。また、鉄心2aのコイル5に逆方向の電流を流したときは、
図5の磁束φと逆向きの磁束が発生し、一方の歯部13aが鉄心2aの一方の列のS極の磁極3aと対面し、他方の歯部13bが他方の列のN極の磁極3bと対面するように、回転子11を回転させるトルクが発生する。
【0031】
図示は省略するが、他の鉄心2b、2cのコイル5に電流を流したときに発生する磁束φの流れも同様であり、各鉄心2a、2b、2cのコイル5に順次電流を流すと、第1の実施形態のものと同様に、各鉄心2a、2b、2cに対して電気角で120°ずつの位相差を有する各歯部13a、13bが、順次各鉄心2a、2b、2cの一方の列のN極の磁極3aと他方の列のS極の磁極3bと対面するように、回転子11が電気角で120°ずつ回転する。この実施形態でも、各鉄心2a、2b、2cの3つのコイル5に3相交流を流すことにより、回転子11を大きなトルクで高速回転させることができる。
【0032】
図1および
図6に示したように、各実施形態のケーシング21は、各鉄心2a、2b、2cに対応させて軸方向に3つのユニット21aに分割されている。以下に、
図10および
図11に基づいて、分割された1つのユニット21aに固定子1の1つの鉄心2aを組み付けて、各鉄心2a、2b、2cを組み付けたユニット21aを合体する手順を説明する。
【0033】
まず、
図10(a)、(b)に示すように、1つのユニット21aに芯出し部材31を取り付ける。芯出し部材31は一端側のフランジ部31aを、ユニット21aの内周面の一端側に設けられた環状突条22に押し当てて取り付けられる。こののち、永久磁石4とコイル5が装着された1つの鉄心2aを、芯出し部材31で案内して、ユニット21aに挿入し、環状突条22に押し当てる。なお、鉄心2aのユニット21aへの挿入は、磁極3b、コイル5および磁極3aを個別に芯出し部材31で案内して順々に挿入してもよい。つぎに、ユニット21aに環状突条22と反対側から環状リング23を嵌入して、鉄心2aを軸方向に固定するとともに、ボルト24で鉄心2aと環状リング23を環状突条22に締め付けて、ユニット21aに対して周方向位置を位置決め固定する。最後に、芯出し部材31を抜き取って、1つの鉄心2aのユニット21aへの組み付けが終了する。
【0034】
図示は省略するが、他の鉄心2b、2cも同様の手順で各ユニット21aに組み付けられる。なお、ユニット21aには、後述するように、3つのユニット21aを合体させるためのボルト孔25と、各ユニット21a間の周方向位置を合せるための長円形状のピン穴26が設けられている。コイル5のケーブルを通すケーブル孔27も設けられている。
【0035】
つぎに、
図11に示すように、前記各鉄心2a、2b、2cを組み付けた3つの円筒状のユニット21aを軸方向に重ねて、ピン穴26に嵌入されるピン28で互いの周方向位置を位置決めするとともに、各ユニット21aのボルト孔25を貫通して嵌挿されるボルト29をナット30で締め付けて、3つのユニット21aを合体する。このように合体したユニット21aに組み付けられた各鉄心2a、2b、2cの内周側に、回転子11が半径方向に隙間を開けて組み込まれる。
【0036】
このようにケーシング21を分割することにより、固定子1を容易にケーシング21に組み付けることができるとともに、配列される各鉄心2a、2b、2c間の周方向位置を精度よく合わせることができる。特に、
図1の第1の実施形態の場合は、一体のケーシング21に固定子1を組み付けようとすると、軸方向で隣合う各鉄心2a、2b、2cの磁極3a、3bが同極となるので、これらが互いに磁力で反発し合って組み付けが困難となるが、このように分割したユニット21a毎に各鉄心2a、2b、2cを組み付けたのち合体させることにより、固定子1を容易に、かつ精度よく組み付けることができる。
【0037】
上述した各実施形態では、軸方向に配列される鉄心の個数を3個としたが、配列される鉄心の個数は2個以上であればよく、その個数に応じて、配列される鉄心の2列の磁極と対向する回転子の各歯部の回転方向への位相差を決めることができる。
【0038】
上述した各実施形態では、回転子を内周側に配置したインナロータ形のものとし、固定子の外周側をケーシングで覆ったが、本発明に係る回転型パルスモータは、回転子を外周側に配置するアウタロータ形のものとすることもできる。なお、ケーシングは省略することもできる。
【0039】
上述した各実施形態では、固定子の鉄心と回転子の磁性部材を磁性鉄粉の粉末成形で形成したが、鉄心は磁性鋼板等を積層して形成することもでき、磁性部材は磁性鋼材等で形成することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 固定子
2a、2b、2c 鉄心
3a、3b 磁極
4 永久磁石
5 コイル
11 回転子
12 回転軸
13a、13b 歯部
21 ケーシング
21a ユニット
22 環状突条
23 環状リング
24 ボルト
25 ボルト孔
26 ピン穴
27 ケーブル孔
28 ピン
29 ボルト
30 ナット
31 芯出し部材
31a フランジ部