【解決手段】伝動機構80が、太陽歯車を備えた入力側回転部材と、内歯歯車を備えた中間回転部材99と、太陽歯車と内歯歯車とに歯合する遊星歯車を備えた出力側回転部材101とを有し、駆動回転体22と入力側回転部材とが連動して回転自在であり、停止用レバー79が出力側回転部材101に連動して揺動自在であり、駆動回転体22が回転している状態から停止した際、中間回転部材99が慣性力で回転することにより、停止用レバー79が停止位置Cから停止解除位置に揺動するように出力側回転部材101が回転する。
対象物を作動させる作動輪体と、作動輪体に回転駆動力を付与する駆動装置と、駆動装置によって回転される駆動回転体と、駆動回転体と作動輪体との間に設けられた遊星歯車機構と、駆動回転体と遊星歯車機構との間の駆動力伝達経路を断続する断続機構と、停止用回転体と、揺動自在な停止用レバーと、伝動機構とを有し、
作動輪体は一方向に付勢されており、
遊星歯車機構は、互いに回転自在な一方および他方の回転部材と、断続機構に設けられた太陽歯車と、一方の回転部材に設けられた内歯歯車と、他方の回転部材に設けられて太陽歯車と内歯歯車とに歯合する遊星歯車とを有し、
停止用回転体と遊星歯車機構の一方の回転部材とが連動して回転自在であり、
停止用レバーに第1係止部が設けられ、
停止用回転体に第2係止部が設けられ、
停止用レバーは、第1係止部が第2係止部に係止する停止位置と、第1係止部が第2係止部から離脱する停止解除位置とに揺動自在であるとともに、付勢手段により停止解除位置へ付勢されており、
伝動機構は、太陽歯車を備えた入力側回転部材と、内歯歯車を備えた中間回転部材と、太陽歯車と内歯歯車とに歯合する遊星歯車を備えた出力側回転部材とを有し、
駆動回転体と入力側回転部材とが連動して回転自在であり、
停止用レバーは出力側回転部材に連動して揺動自在であり、
駆動回転体が回転している状態から停止した際、中間回転部材が慣性力で回転することにより、停止用レバーが停止位置から停止解除位置に揺動するように出力側回転部材が回転することを特徴とするモータ式アクチュエータ。
停止用回転体と遊星歯車機構の一方の回転部材とに歯合して一方の回転部材の回転速度を調節する調速用回転体が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ式アクチュエータ。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家庭用の自動洗濯機の排水弁を開閉作動させる駆動手段としては、一般に、電気モータにより歯車列を介して駆動せしめられる出力部材を備えたモータ式アクチュエータが採用されている。具体的には、閉状態の初期位置に戻る復帰力を有する排水弁を、モータ式アクチュエータの出力部材で復帰力に抗して駆動させることで開状態とするようになっている。
【0003】
ところで、自動洗濯機においては、洗濯や濯ぎの完了後に排水弁を閉状態から開状態に駆動するだけでなく、洗濯槽の排水が完了するまでの間、排水弁を開状態に保持すると共に、排水完了後には、排水弁を初期位置に戻して閉状態とする必要がある。
【0004】
このような排水弁の作動制御を実現するために、従来では、
図13,
図14に示すようなモータ式アクチュエータ201が用いられている。すなわち、図に示すように、モータ式アクチュエータ201はモータ202と減速歯車列203とワイヤ巻上プーリ204とを有し、減速歯車列203は、回転力継断機構205、遊星歯車機構206および出力車207を有している。
【0005】
ワイヤ巻上プーリ204に巻き取られるワイヤ208は、ばね(図示省略)の復帰力によって、巻取方向とは逆の送出方向Aに付勢されている。モータ202の駆動により、ワイヤ巻上プーリ204がばねの復帰力に抗して巻取方向に回転し、ワイヤ208がワイヤ巻上プーリ204に巻き取られて、排水弁が開く。また、モータ202の駆動停止により、ワイヤ巻上プーリ204の回転がフリー状態になり、ワイヤ巻上プーリ204がばね(図示省略)の復帰力により送出方向Aに回転し、ワイヤ208がワイヤ巻上プーリ204から送り出されて、排水弁が閉じる。
【0006】
また、ハウジング209内には、磁気誘導式伝動機構210と、揺動自在な停止用レバー211とが設けられている。停止用レバー211は、円弧状の外周面上に形成された係止歯212に対して磁気誘導式伝動機構210の誘導ピニオン213が噛合せしめられている。これにより、停止用レバー211は、磁気誘導式伝動機構210の誘導リング214の回転に基づいて、揺動せしめられるようになっている。尚、停止用レバー211の外周縁部における周方向一方の端部には、突起215が形成されており、かかる突起215に対して誘導ピニオン213が当接せしめられることで停止用レバー211の周方向一方への揺動が規制されるようになっている。また、停止用レバー211は、コイルスプリング216(付勢手段)によって、揺動方向一方向への復元力が付与されている。
【0007】
さらに、停止用レバー211には第1係止部217が設けられている。停止用レバー211がコイルスプリング216の復元力に抗して他方向へ回動した場合、
図14に示されているように、第1係止部217が調速機構218の回転作動軸219に形成された第2係止部220に対して係合せしめられるようになっている。このように停止用レバー211の第1係止部217が回転作動軸219の第2係止部220に係合せしめられることにより、回転作動軸219の回転作動が阻止されて、その結果、回転作動軸219に形成された調速ピニオン221に噛合される外歯歯車222を備えた遊星歯車機構206のケース223の回転が阻止されるようになっている。尚、停止用レバー211が初期位置にある状態では、第1係止部217は第2係止部220に干渉しないようになっている。
モータ202が駆動すると、
図14に示すように、停止用レバー211がコイルスプリング216の引張力に抗して他方向へ揺動し、停止用レバー211の第1係止部217が回転作動軸219の第2係止部220に係止され、遊星歯車機構206のケース223の回転が阻止される。この場合、モータ202の回転が回転力継断機構205と遊星歯車機構206および出力車207を経てワイヤ巻上プーリ204に伝達され、ワイヤ巻上プーリ204が復帰力に抗して巻取方向に回転し、ワイヤ208がワイヤ巻上プーリ204に巻き取られて、排水弁が開く。
【0008】
また、モータ202が停止すると、停止用レバー211がコイルスプリング216の引張力により一方向へ復元し、第1係止部217が第2係止部220から離脱して、遊星歯車機構206のケース223の回転が許容される。この場合、ワイヤ巻上プーリ204の回転がフリー状態になり、ワイヤ巻上プーリ204がばねの復帰力により送出方向に回転し、ワイヤ208がワイヤ巻上プーリ204から送り出されて、排水弁が閉じる。
【0009】
尚、上記のようなモータ式アクチュエータ201は下記特許文献1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、
図14に示すように、第1係止部217の第2係止部220からの離脱は、コイルスプリング216の引張力のみの作用によって行われる。このため、第1係止部217と第2係止部220との間に微小な異物(塵埃等)が噛み込んだりコイルスプリング216が劣化した場合、コイルスプリング216の引張力だけでは、第1係止部217を第2係止部220から確実に離脱させることができないといった問題がある。この対策として、コイルスプリング216の引張力を増大させることが考えられるが、この場合、コイルスプリング216が大型化したり、コイルスプリング216の引張力の増大に伴って各部品の強度を増やす必要があり、モータ式アクチュエータ201が大型化する虞がある。
【0012】
本発明は、付勢手段の大型化を抑制するとともに、第1係止部を第2係止部から確実に離脱させることが可能なモータ式アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本第1発明におけるモータ式アクチュエータは、対象物を作動させる作動輪体と、作動輪体に回転駆動力を付与する駆動装置と、駆動装置によって回転される駆動回転体と、駆動回転体と作動輪体との間に設けられた遊星歯車機構と、駆動回転体と遊星歯車機構との間の駆動力伝達経路を断続する断続機構と、停止用回転体と、揺動自在な停止用レバーと、伝動機構とを有し、
作動輪体は一方向に付勢されており、
遊星歯車機構は、互いに回転自在な一方および他方の回転部材と、断続機構に設けられた太陽歯車と、一方の回転部材に設けられた内歯歯車と、他方の回転部材に設けられて太陽歯車と内歯歯車とに歯合する遊星歯車とを有し、
停止用回転体と遊星歯車機構の一方の回転部材とが連動して回転自在であり、
停止用レバーに第1係止部が設けられ、
停止用回転体に第2係止部が設けられ、
停止用レバーは、第1係止部が第2係止部に係止する停止位置と、第1係止部が第2係止部から離脱する停止解除位置とに揺動自在であるとともに、付勢手段により停止解除位置へ付勢されており、
伝動機構は、太陽歯車を備えた入力側回転部材と、内歯歯車を備えた中間回転部材と、太陽歯車と内歯歯車とに歯合する遊星歯車を備えた出力側回転部材とを有し、
駆動回転体と入力側回転部材とが連動して回転自在であり、
停止用レバーは出力側回転部材に連動して揺動自在であり、
駆動回転体が回転している状態から停止した際、中間回転部材が慣性力で回転することにより、停止用レバーが停止位置から停止解除位置に揺動するように出力側回転部材が回転するものである。
【0014】
これによると、駆動装置が駆動すると、駆動回転体が回転し、伝動機構の入力側回転部材が一方向に回転し、入力側回転部材に連動して中間回転部材が他方向に回転するとともに出力側回転部材が一方向へ回転する。出力側回転部材の一方向への回転に連動して、停止用レバーが付勢手段の付勢力に抗して停止位置に揺動し、第1係止部が第2係止部に係合して、停止用回転体の回転と遊星歯車機構の一方の回転部材の回転とが阻止される。これにより、駆動装置の回転駆動力が断続機構と遊星歯車機構とを介して作動輪体に伝達され、作動輪体が付勢力に抗して他方向へ回転する。
【0015】
また、駆動装置が停止した際、駆動回転体の回転が停止し、伝動機構の入力側回転部材の回転が停止するのに対して、中間回転部材が慣性力により他方向に回転し、中間回転部材に連動して出力側回転部材も他方向へ追従して回転する。停止用レバーは、他方向へ回転する出力側回転部材に連動するとともに付勢手段の付勢力により、停止位置から停止解除位置に揺動して、第1係止部が第2係止部から離脱し、停止用回転体の回転と遊星歯車機構の一方の回転部材の回転とが許容される。これにより、作動輪体が付勢力により一方向へ回転する。
【0016】
このように、付勢手段の付勢力に加え、中間回転部材の慣性による回転力を利用して、停止用レバーを停止位置から停止解除位置に揺動させるため、付勢手段の付勢力を増大させることなく、第1係止部を第2係止部から確実に離脱させることができる。これにより、付勢手段の大型化およびモータ式アクチュエータの大型化を抑制することができる。
【0017】
本第2発明におけるモータ式アクチュエータは、駆動回転体が回転すると、入力側回転部材が一方向に回転し、入力側回転部材に連動して中間回転部材が他方向に回転するとともに出力側回転部材が一方向へ回転し、
出力側回転部材の一方向への回転に連動して、停止用レバーが付勢力に抗して停止位置に揺動し、第1係止部が第2係止部に係合して、停止用回転体の回転と遊星歯車機構の一方の回転部材の回転とが阻止されることにより、駆動装置の回転駆動力が断続機構と遊星歯車機構とを介して作動輪体に伝達されて、作動輪体が付勢力に抗して他方向へ回転し、
駆動回転体の回転が停止すると、入力側回転部材の回転が停止するのに対して、中間回転部材が慣性力により他方向に回転し、中間回転部材に連動して出力側回転部材が他方向へ回転し、
出力側回転部材に連動するとともに付勢手段の付勢力により、停止用レバーが停止位置から停止解除位置に揺動して、第1係止部が第2係止部から離脱し、停止用回転体の回転と遊星歯車機構の一方の回転部材の回転とが許容され、作動輪体が付勢力により一方向へ回転するものである。
【0018】
本第3発明におけるモータ式アクチュエータは、駆動回転体と入力側回転部材とに歯合する回転自在な第1中間回転体と、
出力側回転部材と停止用レバーとに歯合する回転自在な第2中間回転体とが設けられているものである。
【0019】
これによると、駆動装置が駆動すると、駆動回転体が回転し、駆動回転体の回転が第1中間回転体を介して伝動機構の入力側回転部材に伝えられ、入力側回転部材が一方向に回転し、入力側回転部材に連動して中間回転部材が他方向に回転するとともに出力側回転部材が一方向へ回転し、出力側回転部材の回転が第2中間回転体を介して停止用レバーに伝えられ、停止用レバーが付勢手段の付勢力に抗して停止位置に揺動する。
【0020】
本第4発明におけるモータ式アクチュエータは、停止用回転体と遊星歯車機構の一方の回転部材とに歯合して一方の回転部材の回転速度を調節する調速用回転体が設けられているものである。
【0021】
これによると、駆動装置が停止した際、第1係止部が第2係止部から離脱し、停止用回転体の回転と遊星歯車機構の一方の回転部材の回転とが許容され、これにより、作動輪体が付勢力により一方向へ回転する。この際、作動輪体の回転に連動して停止用回転体と遊星歯車機構の一方の回転部材と調速用回転体とが回転し、一方の回転部材の回転速度が調速用回転体により調節される。これにより、遊星歯車機構の一方の回転部材に連動して作動輪体の一方向への回転速度が調節される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によると、付勢手段の付勢力に加え、中間回転部材の慣性による回転力を利用して、停止用レバーを停止位置から停止解除位置に揺動させるため、付勢手段の付勢力を増大させることなく、第1係止部を第2係止部から確実に離脱させることができる。これにより、付勢手段の大型化およびモータ式アクチュエータの大型化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜
図4に示すように、10は家庭用の自動洗濯機等の排水弁(図示省略)を開閉作動させるモータ式アクチュエータである。モータ式アクチュエータ10は洗濯機等の本体に取り付けられる中空箱体構造のハウジング11を有しており、ハウジング11内には、排水弁(対象物の一例)を開閉作動させるワイヤ巻上プーリ12(出力側回転部材の一例)と、ワイヤ巻上プーリ12に回転駆動力を付与するモータ13(駆動装置の一例)と、モータ13の回転駆動力をワイヤ巻上プーリ12に伝達する減速歯車列14とを有している。
【0025】
ワイヤ巻上プーリ12と排水弁とはワイヤ15を介して連動連結されており、ワイヤ15がワイヤ巻上プーリ12に巻き取られることにより、排水弁が開き、ワイヤ15がワイヤ巻上プーリ12から送り出されることにより、排水弁が閉じる。ワイヤ15はばね等の付勢具(図示省略)によりワイヤ巻上プーリ12から送り出される送出方向Aに付勢されており、これにより、ワイヤ巻上プーリ12が送出方向A(一方向の一例)に付勢されている。
【0026】
モータ13はロータ19とステータ20とを有し、ロータ19は回転駆動軸21を有し、回転駆動軸21の先端部にはモータピニオン22(駆動回転体の一例)が設けられている。尚、モータ13は、コイルへの交番電流の通電で発現せしめられるN,S磁極との相互作用に基づいて、回転駆動軸21において回転トルクやディテントトルクが発揮されるようになっている。
【0027】
また、回転駆動軸21には係止爪25が形成されており、かかる係止爪25の近くには、係止爪25に対してロータ19の回転方向一方向で係止される係止レバー26が一軸回りで揺動可能に配されている。そして、係止爪25と係止レバー26によって、ロータ19の回転方向を規定する逆転防止機構が構成されている。
【0028】
減速歯車列14は、モータピニオン22とワイヤ巻上プーリ12との間に設けられた遊星歯車機構29と、モータピニオン22と遊星歯車機構29との間の駆動力伝達経路30を断続する断続機構31と、出力車32とを有している。
【0029】
図5に示すように、断続機構31は上側断続部材34と下側断続部材35と圧縮コイルスプリング36とを有している。上側断続部材34は、外周面に係止爪37が形成された円板状部分を備えており、かかる円板状部分には、その上面において太陽歯車38が突出形成され、その下面において複数の係止凹所39が形成されている。
【0030】
下側断続部材35は、モータピニオン22に噛合する断続歯車41を備えている。また、下側断続部材35の上下両面には、それぞれ、軸方向外方に突出するボス部42,43が形成されている。また、下側断続部材35には、上側ボス部42の周りにおいて複数の切欠溝44が形成されており、かかる切欠溝44内には、上側断続部材34の係止凹所39に係合可能な複数の係止片45が下側断続部材35の軸方向で弾性的に変位可能に形成されている。
【0031】
このような構造とされた上側断続部材34および下側断続部材35は、圧縮コイルスプリング36を挟んで互いに軸方向に重ね合わせられるように配されており、このように上側断続部材34と下側断続部材35とが配された状態下において、上側断続部材34および下側断続部材35は圧縮コイルスプリング36の付勢力によって弾性的に離隔して対向位置せしめられている。
【0032】
そして、
図5に示されているように、上側断続部材34と下側断続部材35とが圧縮コイルスプリング36の付勢力に抗して軸方向に接近せしめられて、上側断続部材34の係止凹所39と下側断続部材35の係止片45とが係合せしめられた状態では、上側断続部材34と下側断続部材35とが一体的に回転せしめられるようになっており、これにより、モータ13の回転駆動力が上側断続部材34の太陽歯車38に伝達されるようになっている。上側断続部材34の係止凹所39と下側断続部材35の係止片45との係合は、モータ13の正回転方向では維持されるようになっている一方、逆回転方向では解除されるラチェット構造とされている。
【0033】
遊星歯車機構29は、互いに回転自在なケース48(一方の回転部材の一例)および従動体49(他方の回転部材の一例)と、断続機構31に設けられた太陽歯車38と、ケース48に設けられた内歯歯車51および外歯歯車52と、従動体49に設けられて太陽歯車38と内歯歯車51とに歯合する回転自在な複数の遊星歯車53とを有している。
【0034】
ケース48は有底円筒形状の部材であり、内歯歯車51および外歯歯車52はケース48の筒壁部の内周面と外周面に形成されている。従動体49は円板55を備えており、円板55には複数本の支軸56が設けられ、支軸56は遊星歯車53の軸孔に挿入されている。また、円板55には、上方に突出する連結歯車57が形成されている。
【0035】
従動体49はケース48に嵌め込まれることでケース48に組み付けられ、遊星歯車53は支軸56に回転可能に装着されている。尚、従動体49がケース48に組み付けられた状態で、ケース48は上側断続部材34に重ね合わせられるようにして組み付けられるようになっている。上側断続部材34の太陽歯車38は、ケース48の底壁部分に形成された貫通孔に挿通されて、ケース48内に位置せしめられるようになっている。また、太陽歯車38と連結歯車57とは同軸上に位置せしめられている。
【0036】
図1,
図3,
図5に示すように、出力車32は出力歯車59と出力ピニオン60とが同軸上に一体形成された構造とされており、出力歯車59が連結歯車57に歯合されている。
【0037】
図1に示すように、ワイヤ巻上プーリ12は、その外周面において、周方向に連続して延びる溝62を備えている。ワイヤ15は溝62に巻きつけられる。また、ワイヤ巻上プーリ12は、出力車32の出力ピニオン60に噛合される係止歯63を備えている。これにより、モータ13の回転駆動力が、断続機構31,遊星歯車機構29,出力車32およびワイヤ巻上プーリ12を介してワイヤ15に伝達され、排水弁の開閉が切り換えられるようになっている。
【0038】
図1,
図4に示すように、ワイヤ巻上プーリ12の下面には、円弧状に湾曲した摺動壁64が立設されていると共に、かかる摺動壁64の周方向一方の端部付近には、摺動壁64との間に隙間を形成するようにして突起65が立設されている。突起65は摺動壁64よりも径方向外方に位置せしめられている。
【0039】
図1,
図4〜
図6に示すように、出力車32の軸方向下方には、カムレバー68が支軸69周りで揺動可能に配されている。カムレバー68は、揺動中心となる支軸69に直交する方向に突出せしめられた摺接片70を備えている。摺接片70の先端部はワイヤ巻上プーリ12の摺動壁64に対して摺動自在である。また、カムレバー68には、摺接片70とは異なる方向に突出せしめられた操作片71が形成されており、操作片71の先端部には、カムレバー68の支軸69の周方向に沿って円弧状に延びる誘導孔72が形成されている。操作片71の先端部(即ち誘導孔72が形成されている部分)は、周方向中央部分において周方向一方の側から他方の側に行くに従って次第に厚さ寸法が大きくなっている一方、周方向両端部分において厚さ寸法が略一定とされている。これにより、操作片71の先端部は、周方向一方の側が周方向他方の側よりも下方に位置せしめられている。
【0040】
遊星歯車機構29および断続機構31の支軸74が操作片71の誘導孔72に遊挿され、操作片71の上面に下側断続部材35の下側ボス部43が摺動可能に当接されるようになっている。また、カムレバー68には、上側断続部材34の係止爪37に係止される係止片75が、摺接片70および操作片71とは異なる方向に突出して形成されている。
【0041】
図4に示されているように、カムレバー68の摺接片70がワイヤ巻上プーリ12の摺動壁64に摺接されている場合、下側断続部材35の下側ボス部43が操作片71の先端部における周方向他方の側に当接せしめられて、下側断続部材35が上方に持ち上げられる。これにより、断続歯車41と太陽歯車38との間に軸方向で接近方向の相対変位力が及ぼされることとなり、その結果、
図5に示すように、下側断続部材35の係止片45と上側断続部材34の係止凹所39とが係止されて、モータ13の回転駆動力が太陽歯車38に伝達される。このように係止片45と係止凹所39とが係止された状態では、カムレバー68の係止片75が上側断続部材34の係止爪37に係止されておらず、これにより、上側断続部材34の回転が許容される。
【0042】
また、
図6に示されているように、カムレバー68の摺接片70がワイヤ巻上プーリ12の突起65に当接した状態では、下側断続部材35の下側ボス部43が操作片71の先端部における周方向一方の側に当接せしめられて、下側断続部材35が圧縮コイルスプリング36の付勢力によって上側断続部材34から離隔して下方に位置せしめられる。これにより、断続歯車41と太陽歯車38との間に及ぼされていた、軸方向で接近方向の相対変位力が解除されることとなり、その結果、下側断続部材35の係止片45と上側断続部材34の係止凹所39との係止が解除されて、モータ13の回転駆動力が太陽歯車38に伝達されないようになっている。このように係止片45と係止凹所39との係止が解除された状態では、
図6に示すように、カムレバー68の係止片75が上側断続部材34の係止爪37に係止されるようになっており、これにより、上側断続部材34の回転が阻止される。
【0043】
また、
図1〜
図4に示すように、ハウジング11内には、停止用回転体78と、揺動自在な停止用レバー79と、伝動機構80と、第1および第2中間回転体81,82と、遊星歯車機構29のケース48の回転速度を調節する調速用回転体83とが設けられている。
【0044】
停止用回転体78は、ピン86に回転自在に支持されており、ピニオン87と、外周から突出した第2係止爪88(第2係止部の一例)とを有している。
図1,
図3,
図4,
図9に示すように、停止用レバー79は、扇形状の部材であり、円弧状の外周部には係止歯91が形成されている。また、停止用レバー79は、揺動方向Bにおける一端部に、突出した第1係止爪92(第1係止部の一例)を備えている。
【0045】
停止用レバー79は、
図11に示すように第1係止爪92が第2係止爪88に係止する停止位置Cと、
図9に示すように第1係止爪92が第2係止爪88から離脱する停止解除位置Dとに揺動自在であるとともに、引張コイルバネ93(付勢手段の一例)により停止解除位置Dへ付勢されている。
【0046】
図1,
図3,
図7,
図8に示すように、伝動機構80は、先端部に太陽歯車96を備えた入力側回転部材97と、内歯歯車98を備えた中間回転部材99と、太陽歯車96と内歯歯車98とに歯合する複数の遊星歯車100を備えた出力側回転部材101とを有している。尚、これら入力側回転部材97と中間回転部材99と出力側回転部材101とには共通のピン102(支軸)が挿通され、入力側回転部材97と中間回転部材99と出力側回転部材101とはそれぞれピン102を中心にして互いに回転自在である。
【0047】
入力側回転部材97の下部には入力側ピニオン103が設けられている。
中間回転部材99は、中央部に貫通孔を有し、外周部に周壁部105を有している。内歯歯車98は周壁部105の内周に全周にわたり形成されている。尚、入力側回転部材97の先端部は中間回転部材99の貫通孔に挿入され、太陽歯車96は周壁部105の内側に突出している。
【0048】
出力側回転部材101は、円板部107と、円板部107から上方に突出した出力側ピニオン108と、円板部107から下向きに設けられた複数の支軸109とを有している。出力側回転部材101の円板部107は中間回転部材99に嵌め込まれることで中間回転部材99に組み付けられ、遊星歯車100は支軸109に回転可能に装着されている。
【0049】
図1,
図9に示すように、第1および第2中間回転体81,82には共通のピン112(支軸)が挿通され、第1中間回転体81と第2中間回転体82とはそれぞれピン112を中心にして互いに回転自在である。第1中間回転体81は、外周部に歯部を有する歯車であり、モータピニオン22と入力側回転部材97の入力側ピニオン103とに歯合している。これにより、モータピニオン22と入力側回転部材97とが第1中間回転体81を介して連動する。
【0050】
第2中間回転体82は、第1中間回転体81の上方に設けられており、中間歯車113と中間ピニオン114とを有している。尚、第2中間回転体82の中間歯車113は出力側回転部材101の出力側ピニオン108に歯合し、第2中間回転体82の中間ピニオン114は停止用レバー79の係止歯91に歯合している。これにより、停止用レバー79は、第2中間回転体82を介して、出力側回転部材101に連動して揺動自在である。
【0051】
図2,
図3に示すように、調速用回転体83にはピン117(支軸)が挿通されている。調速用回転体83は、ピン117に回転自在に支持されており、調速用歯車118と、調速用歯車118の下方に形成された調速用ピニオン119と、調速用歯車118の上方に設けられた一対の摺動体120とを備えており、遠心クラッチ構造のブレーキ式の構成を有している。
【0052】
ハウジング11には円筒部121が形成され、摺動体120は円筒部121内に収容されている。調速用回転体83の回転速度が許容値を超えようとすると、摺動体120が、遠心力により拡径方向へ移動し、円筒部121の内周面に摺接することにより、調速用回転体83に制動力が発生する。
【0053】
図2,
図5に示すように、調速用回転体83の調速用歯車118が停止用回転体78のピニオン87に歯合し、調速用回転体83の調速用ピニオン119が遊星歯車機構29のケース48の外歯歯車52に歯合している。これにより、停止用回転体78と遊星歯車機構29のケース48とが調速用回転体83を介して連動している。
【0054】
以下、上記構成における作用を説明する。
(1)モータ13に電源が供給されていない初期状態では、ワイヤ15がワイヤ巻上プーリ12から送り出されて排水弁が閉じており、このような初期状態下において、
図9に示すように、停止用レバー79は、引張コイルバネ93の引張力(付勢力)により、停止解除位置Dに切り換えられており、停止用レバー79の第1係止爪92が停止用回転体78の第2係止爪88から離脱している。
【0055】
(2)その後、モータ13に電源が供給されると、ロータ19が一方向へ回転する。ロータ19の回転作動時には、
図4に示すように、カムレバー68の摺接片70が、ワイヤ巻上プーリ12の摺動壁64に摺接された状態となっており、カムレバー68における操作片71の先端部の周方向他方の側によって下側断続部材35が圧縮コイルスプリング36の復帰力に抗して軸方向上方に押し上げられるようになっている。これにより、
図5に示すように、下側断続部材35の係止片45が上側断続部材34の係止凹所39に係止されて、断続機構31が継続状態となる。この際、カムレバー68の係止片75は、上側断続部材34の係止爪37に係止されておらず、これにより、上側断続部材34の回転が許容される。
【0056】
また、上記のようにロータ19が一方向へ回転すると、モータピニオン22が一方向に回転し、下側断続部材35と上側断続部材34とが回転し、遊星歯車機構29のケース48が回転し、
図10に示すように、調速用回転体83を介して停止用回転体78が矢印方向に回転するとともに、第1中間回転体81が他方向(矢印参照)へ回転し、伝動機構80の入力側回転部材97が一方向に回転し、入力側回転部材97に連動して中間回転部材99が他方向Eに回転するとともに出力側回転部材101が一方向Fへ回転する。
【0057】
このように出力側回転部材101が一方向Fへ回転することにより、第2中間回転体82が他方向Eへ回転し、停止用レバー79が引張コイルバネ93の引張力に抗して停止解除位置Dから停止位置Cに向かって揺動する(矢印参照)。
【0058】
(3)
図11に示すように、停止用レバー79が停止位置Cに達すると、第1係止爪92が第2係止爪88に係合して、停止用回転体78の回転が阻止され、これにより、調速用回転体83と遊星歯車機構29のケース48との回転も阻止される。
【0059】
この際、停止用レバー79は停止位置Cに切り換えられており、第2中間回転体82と出力側回転部材101とが停止しているのに対し、モータピニオン22と第1中間回転体81と入力側回転部材97と中間回転部材99とが引き続き実線で示した各矢印方向へ回転している。このため、第2中間回転体82と出力側回転部材101とには点線で示した矢印方向の付勢力Gが作用し、これにより、停止用レバー79には、停止用レバー79を停止位置Cに付勢する付勢力Gが作用する。
【0060】
これにより、停止用レバー79が停止位置Cに維持され、引き続きモータピニオン22の回転により、下側断続部材35と上側断続部材34とが回転し、遊星歯車機構29の回転が阻止されているケース48に対して、太陽歯車38が回転し、遊星歯車53が自転しながら公転することにより、従動体49が回転し、出力車32が回転し、ワイヤ巻上プーリ12が付勢具の付勢力に抗して巻取方向H(他方向の一例)へ回転する。これにより、ワイヤ15がワイヤ巻上プーリ12に巻き取られ、排水弁が開き、排水が開始される。
【0061】
(4)排水弁が全開すると、
図6に示すように、カムレバー68の摺接片70がワイヤ巻上プーリ12の突起65によりワイヤ巻上プーリ12の回転方向(巻取方向H)に押されることとなり、カムレバー68が支軸69周りで回動される。これにより、カムレバー68における操作片71の先端部の周方向一方の側が下側ボス部43に当接せしめられることとなり、その結果、圧縮コイルスプリング36の付勢力に抗して軸方向上方に押し上げられていた下側断続部材35が圧縮コイルスプリング36の付勢力により、軸方向下方に押し下げられて、上側断続部材34の係止凹所39と下側断続部材35の係止片45との係合状態が解除されることとなり、モータ13の回転駆動力が上側断続部材34に伝達されないようになっている。
【0062】
この状態において、排水弁は付勢具の付勢力によって開状態から閉状態に向かって返戻作動を開始しようとするが、上記のように遊星歯車機構29のケース48の回転が阻止された状態が維持されると共に、
図6に示すように、カムレバー68の係止片75が上側断続部材34の係止爪37に係止されて、上側断続部材34の逆方向への回転が阻止されるようになっている。その結果、従動体49の逆方向への回転が阻止されて、排水弁を開状態に保つことができる。
【0063】
上記のように排水弁を開状態にして所定時間が経過すると、タイマー等によりモータ13が停止する。これにより、ロータ19とモータピニオン22とが停止し、第1中間回転体81が停止し、伝動機構80の入力側回転部材97が停止するのに対して、
図12に示すように、中間回転部材99がその自重による慣性力で他方向Eへ僅かに回転する。この際、入力側回転部材97はロータ19の位置決め力(ディテントトルク)によって回転方向にロックされるので、中間回転部材99の慣性力による回転が遊星歯車100の自転および公転を介して出力側回転部材101に伝達され、出力側回転部材101が中間回転部材99に追従して他方向Eへ僅かに回転する。
【0064】
これにより、第2中間回転体82が一方向Fへ僅かに回転し、停止用レバー79は、一方向Fへ僅かに回転する第2中間回転体82に連動するとともに引張コイルバネ93の引張力により、停止位置Cから停止解除位置Dに向かって揺動する(矢印参照)。このように、引張コイルバネ93の引張力に加え、中間回転部材99の慣性による回転力を利用して、停止用レバー79を停止位置Cから停止解除位置Dに揺動させるため、引張コイルバネ93の引張力を増大させることなく、第1係止爪92を第2係止爪88から確実に離脱させることができる。これにより、引張コイルバネ93の大型化およびモータ式アクチュエータ10の大型化を抑制することができる。
【0065】
(5)これにより、
図9に示すように、第1係止爪92が第2係止爪88から離脱し、停止用回転体78の回転と調速用回転体83の回転と遊星歯車機構29のケース48の回転とが許容される。その結果、
図6に示したカムレバー68の係止片75が上側断続部材34の係止爪37に係止されることによって得られた上側断続部材34の逆回転阻止力がワイヤ巻上プーリ12に伝達されなくなり、付勢具の付勢力によってワイヤ巻上プーリ12が送出方向Aへ回転し、ワイヤ15がワイヤ巻上プーリ12から送り出され、排水弁が閉じられて初期状態に返戻作動する。
【0066】
この際、カムレバー68の摺接片70がワイヤ巻上プーリ12の突起65への当接状態から解除されて、
図4に示すように、摺動壁64に摺接されるようになっており、これにより、操作片71の先端部における周方向他方の側が下側ボス部43に当接されることとなり、
図5に示すように、下側断続部材35が圧縮コイルスプリング36の復帰力に抗して軸方向上方に押し上げられ、上側断続部材34の係止凹所39と下側断続部材35の係止片45とが係合された状態となる。その結果、排水弁の開状態から閉状態への返戻作動時には、係止凹所39と係止片45とが係合して、モータ13の磁力によるロータ19の位置決め力(ディテントトルク)が上側断続部材34に伝達されることとなり、これにより、上側断続部材34の逆方向への回転が阻止される。
【0067】
さらに、上記排水弁の開状態から閉状態への返戻作動時においては、ワイヤ巻上プーリ12が送出方向Aへ回転するため、ワイヤ巻上プーリ12の回転に連動して、出力車32および遊星歯車機構29の従動体49がワイヤ巻取時とは逆方向に回転せしめられるようになっているが、ケース48の回転が許容されていると共に、太陽歯車38の逆方向への回転が阻止されるようになっていることから、従動体49に連動してケース48が回転し、ケース48の回転が調速用回転体83に伝達されて、調速用回転体83が回転するとともに停止用回転体78が回転する。これにより、
図2,
図3に示すように、調速用回転体83の各摺動体120が遠心力により径方向外方に広がって円筒部121の内周面に摺接し、調速用回転体83に制動力が作用し、ケース48の回転速度が調節されるため、ワイヤ巻上プーリ12の送出方向Aへの回転速度が調節され、排水弁の開状態から閉状態への返戻作動時のスピードが調節される。
【0068】
上記実施の形態では、
図1に示すように、モータピニオン22と伝動機構80の入力側回転部材97とに歯合する第1中間回転体81と、出力側回転部材101と停止用レバー79とに歯合する第2中間回転体82とを設けているが、第1および第2中間回転体81,82を設けず、モータピニオン22と入力側回転部材97とが直接連動連結され、出力側回転部材101と停止用レバー79とが直接連動連結されていてもよい。この場合、伝動機構80はモータ13の上方に設けられている。また、停止用回転体78に摺動体120を設けて調速用歯車の機能を付加し、この調速機能付きの停止用回転体78と遊星歯車機構29のケース48とを中継回転体で連動連結してもよい。
【0069】
上記実施の形態では、対象物の一例として洗濯機の排水弁を挙げたが、排水弁に限定されるものではない。