【解決手段】プロテクタは、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によって形成された周壁を備え、周壁の少なくとも一部に、それぞれ周方向に沿って延在する山部および谷部が軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造がプレスによって形成されている。
複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によって形成された周壁を備え、前記周壁の少なくとも一部に、それぞれ周方向に沿って延在する山部および谷部が軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造がプレスによって形成されている、プロテクタ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<共通実施形態>
以下、実施形態に係る電線モジュールについて説明する。
【0024】
電線モジュールは、車両に組込まれる配線材であり、プロテクタと一本の電線またはワイヤーハーネスを備える。ワイヤーハーネスは、複数の電線を含む。すなわち、電線モジュールは、プロテクタと、少なくとも一本の電線とを備える。
【0025】
プロテクタは、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によって形成された周壁を備えている。周壁に囲まれた空間は、少なくとも一本の電線を収容可能な収容空間になっている。中空板材を形成する材質は特に限定されず、PP(ポリプロピレン)等の樹脂によって形成されていてもよいし、紙によって形成されていてもよい。このような中空板材は、複数の板状部材が、中空構造を介して間隔をあけて配設されているため、曲り難く、また、中空構造を形成する構造体によって強度を向上させることができる。このため、中空板材は、強度的に優れる。しかも、中空板材内に中空構造が存在しているため、軽量化及び材料の削減を図ることもできる。
【0026】
中空部材によって形成された周壁の少なくとも一部、より詳細には、プロテクタの軸心方向における周壁の少なくとも一部には、それぞれプロテクタの周方向に沿って延在する山部および谷部が軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造が形成されている。当該蛇腹構造は、中空板材をプレスすることによって形成されている。
【0027】
このプロテクタに、少なくとも一本の電線の少なくとも一部が収容されることで、電線モジュールが構成される。プロテクタは、周壁に囲まれた収容空間に収容した各電線を外部(例えば、配線経路の周辺にあるエッジ部分等)から保護する役割、当該各電線を所定の配線経路に沿って維持する役割、複数の電線を含むワイヤーハーネスの断面形状を配線経路における経路スペースに応じた形状に維持する役割等を果す。
【0028】
このプロテクタは、局所的に窪むことを強度の強い中空板材によって抑制しつつ、周壁の少なくとも一部に形成された蛇腹構造によって曲げられる。これにより、当該プロテクタは、収容した電線をプロテクタの軸心がなす経路形状に維持しつつ保護することができる。すなわち、電線の保護と自由度の高い経路設定とを実現できる。
【0029】
プロテクタ内に電線を収容する構成としては、例えば、中空板材を、少なくとも一本の電線を収容可能な形状に折曲げてプロテクタを構成し、このプロテクタ内にワイヤーハーネスを収容する構成が挙げられる。具体的には、例えば、中空板材が折り曲げられることによってプロテクタの周壁に、プロテクタの軸心方向に長い底部と、底部の幅方向の両端から立設する一対の側壁部とが形成される構成が挙げられる。
【0030】
このように収容空間が形成されるプロテクタの構成によれば、プロテクタを中空板材が呈する板状形態で効率よく輸送することも可能となる。例えば、複数のプロテクタを、底部と側壁部とが形成される前の中空板材が呈する板状形態で重ねて輸送することなどによって、効率良く輸送できるので、輸送コストを低減できる。
【0031】
また、中空板材は、複数の板状部材が、中空構造を介して間隔をあけて配設されているため、曲り難く、山部および谷部が軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造部分は、さらに、曲り難い。そこで、蛇腹構造が形成された中空板材を折り曲げることによって、周壁に底部と一対の側壁とを形成する作業をより容易に行えるように、プロテクタを構成する中空板材に切り込みが形成されてもよい。このような中空板材を折り曲げて組み立て可能なプロテクタの構成として、例えば、底部と一対の側壁部との境界をなす周壁の各折り曲げ部分のうち少なくとも蛇腹構造部分において、中空板材を構成する複数の板状部分のうち少なくとも1つに軸心方向に沿った切り込みが形成されたものが採用される。当該プロテクタは、軸心方向、すなわち電線の配索方向に沿って形成された切り込みにおいて中空板材を折り曲げることによって、当該切り込みが形成されていない場合に比べて、底部と側壁部との形成が容易となる。なお、当該切り込みが形成されていないとしても、中空板材を折り曲げることにより周壁に底部と側壁部とを形成することは出来るので、本発明の有用性を損なうものではない。
【0032】
また、プロテクタは、中空板材によって形成される。例えば、一様な構造を持ち、かつ、大きく拡がる中空板材を形成し、この中空板材を適宜切断、折曲げ加工等して、プロテクタを構成することができる。このため、プロテクタを低コストで製造できる。
【0033】
<中空板材>
プロテクタ付ワイヤーハーネスをより具体的に説明するにあたって、プロテクタを構成するための中空板材について説明しておく。
【0034】
図1は、中空板材の第1の例として中空板材10を示す部分切り欠き斜視図である。
図2は、中空板材10の断面図である。
【0035】
この中空板材10は、樹脂材料によって形成された部材であり、複数(ここでは2つ)の板状部12と、板状部12の間に介在する複数の介在部16とを備え、はしご状断面を有する形状に形成されている。より具体的には、板状部12は、平板状に形成されている。複数の板状部12は、互いに間隔をあけた状態で複数の介在部16を介して連結されている。
【0036】
複数の介在部16のそれぞれは、細長い板状に形成されており、相互間に間隔をあけた並列状態で複数の板状部12の間に設けられている。各介在部16の延在方向は、互いに平行な位置関係にある。各介在部16は、湾曲していてもよいし、所定の角度をなして曲っていてもよい。
図1に示される例では、各介在部16は、両側の板状部12に対して直交する姿勢で、両側の板状部12の間に挟み込まれた状態で、両側の板状部12と一体成型されている。
【0037】
このため、中空板材10を、介在部16の延在方向に対して直交する面で切断すると、一対の板状部12の間に複数の介在部16が延在するはしご状断面を示す(
図2参照)。
【0038】
このような中空板材10は、例えば、はしご状断面に応じた押出孔から樹脂を押出す押出成型装置によって、連続的に製造することができ、これにより、中空板材10を容易に低コストで製造することができる。
【0039】
このような中空板材10によると、複数の板状部12が間隔をあけて、介在部16によって連結されているため、曲り難い。また、板状部12間に介在部16が介在しているため、当該介在部16によっても中空板材10が曲り難くかつ凹み難いように補強される。よって、本中空板材10は、強度的に優れる。また、中空板材10の複数の板状部12の間には中空構造が形成されているため、その分、軽量化及び材料費の低減を図ることもできる。
【0040】
なお、複数の板状部分間に介在して中空構造を形成する介在部分は、他の中空形状を形成するものであってもよい。例えば、複数の板状部分間において、それらの間の介在部分は、三角柱等の多角柱状の中空形状を形成するものであってもよく、特に、ハニカム構造を形成するものであってもよい。
【0041】
図3は、中空板材の第1の例として中空板材10A示す部分切り欠き斜視図である。
【0042】
中空板材10Aは、複数(ここでは2つ)の板状部材12Aと、複数の板状部材12Aの間に挟み込まれた介在部材16Aとを備える。
【0043】
複数の板状部材12A及び介在部材16Aを形成する材質は特に限定されない。複数の板状部材12A及び介在部材16Aは、紙によって形成されていてもよいし、樹脂によって形成されていてもよいし、また、これらの組み合わせによって構成されていてもよい。複数の板状部材12A及び介在部材16Aの少なくとも1つを紙によって形成する場合には、その表面に撥水処理等を施すことが好ましい。
【0044】
板状部材12Aは、平板状に形成されている。複数の板状部材12Aが介在部材16Aを介して間隔をあけた状態で連結されている。
【0045】
介在部材16Aは、凹凸形状を呈する板状に形成された部材である。かかる介在部材16Aが、複数の板状部材12Aの間に挟み込まれた状態で、当該板状部材12Aの内向き面に接合される。板状部材12Aと介在部材16Aとの接合は、例えば、接着剤、粘着剤等により行われる。これにより、介在部材16Aが呈する凹凸形状に応じた中空構造が、複数の板状部材12Aの間に形成される。
【0046】
ここでは、介在部材16Aは、山部16aと谷部16bとが波状に連続する形状に形成されている。山部16aの延在方向と谷部16bの延在方向とは、平行な位置関係にあり、従って、介在部材16Aを平面視すると、複数の山部16aと複数の谷部16bとが交互に並列状に形成された構成とされている。山部16aの頂部と谷部16bの底部とは、湾曲していてもよいし、所定の角度をなして曲っていてもよい。
【0047】
そして、介在部材16Aが複数の板状部材12Aの間に挟み込まれ、谷部16bの底部の下面と下側の板状部材12Aとが接合されると共に、山部16aの頂部の上面と上側の板状部材12Aとが接合されている。
【0048】
このような中空板材10Aによると、複数の板状部材12Aが間隔をあけて、介在部材16Aによって連結されているため、中空板材10と同様に曲り難い。また、板状部材12A間に介在部材16Aが介在しているため、当該介在部材16Aによっても中空板材10Aが曲り難くかつ凹み難いように補強される。特に、本例では、山部16a及び谷部16bの延在方向において、中空板材が曲り難いようにすることができる。よって、本中空板材10Aも、強度的に優れる。
【0049】
また、中空板材10Aの複数の板状部材12Aの間には中空構造が形成されているため、その分、軽量化及び材料費の低減を図ることもできる。
【0050】
介在部材16Aは、例えば、平板状の部材を、凹凸面を有するプレス型の間に挟み込むことで形成することができる。例えば、帯状をなす平板状の部材を所定の搬送路に沿って連続的に供給すると共に、当該搬送路に沿って一対のローラを配設する。この一対のローラの表面には、凹凸形状を形成しておく。そして、帯状をなす平板状の部材を所定の搬送路に沿って搬送しつつ、当該平板状の部材を一対のローラで連続的に挟込んでいくことで、介在部材16Aを連続的に形成することができる。
【0051】
また、上記所定の搬送路に沿って、一対のローラの下流側に、一対の帯状の板状部材12Aを連続的に供給して、当該一対の帯状の板状部材12Aの間に介在部材16Aを順次挟込んで接着剤等で接合していく。これにより、中空板材10Aを連続的に製造することができる。
【0052】
図4は、中空板材の第2の例として中空板材10Bを示す部分切り欠き斜視図である。
【0053】
この中空板材10Bが、上記中空板材10Aと異なるのは、介在部材16に代えて介在部材16Bが用いられている点である。
【0054】
すなわち、介在部材16Bは、凹凸形状を呈する板状に形成された部材であり、より具体的には、介在部材16Bの平面視において点在するように複数の突部17が形成された構成とされている。ここでは、介在部材16Bを平面視した状態において、複数の突部17が縦横に一定間隔で並ぶように形成されている。突部17は、介在部材16Bのうち平板状に延在する基板部18より一方主面側に突出するように形成されており、筒の上端部が閉じられた形状を呈している。ここでは、突部17は、上方に向けて徐々に狭まる形状、即ち、錐台形状に形成されている。突部17は、円錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台の角を丸めた形状に形成されていてもよい。
【0055】
そして、介在部材16Bが複数の板状部材12Aの間に挟み込まれ、基板部18の下面が下側の板状部材12Aに接合され、突部17の頂部が上側の板状部材に接合されている。
【0056】
このような中空板材10Bによると、上記中空板材10Aと同様に、強度的に優れ、かつ、軽量化を図ることができる。特に、中空板材10Bは,点在する複数の突部17を備えているため、曲り難さの方向性を無くすることができる。なお、介在部材として、上記介在部材16Bを2つ組み合わせたものが用いられてもよい。
【0057】
特に、上記中空板材10A、10Bによると、複数の板状部材の間に、凹凸形状を呈する介在部材16A、16Bを挟込めば、そこに中空構造を形成することができるため、中空板材10A、10Bを容易に製造することができるというメリットがある。
【0058】
なお、中空板材10、10A、10Bの厚み寸法は、1.5mm〜15.0mm程度であることが好ましい。
【0059】
また、中空板材10、10Aのように、空間が並列状に形成されたタイプでは、並列状に形成された空間を仕切る部分のピッチが、4mm〜20mm程度であることが好ましい。
【0060】
さらに、中空板材10Bのように、点在する突部によって中空空間が形成されているタイプでは、各突部のピッチが、2mm〜6mm程度であることが好ましい。
【0061】
なお、上述した各中空板材の少なくとも一部に、金属箔(アルミ箔)等の電磁シールド部材が設けられていてもよい。
【0062】
また、各中空板材が3枚以上の板状部(板状部材)を含む場合には、各間に介在部(介在部材)が設けられていることが好ましい。これにより、中空板材の強度をより向上させることができる。
【0063】
上記のような中空板材を用いた、第1実施形態に係る電線モジュール及び第2実施形態に係る電線モジュールとして中空板材10を用いた各電線モジュールとその製造方法について、以下により具体的に説明する。
【0064】
<第1実施形態>
図5は、中空板材10に蛇腹構造30を形成する処理を説明するための図である。
図6は、中空板材10に蛇腹構造30が形成された中空板材20を示す斜視図である。
【0065】
図5には、蛇腹構造30を形成するためのプレス処理が可能なプレス金型の下型91と上型92との間に挟まれている中空板材10が示されている。下型91と上型92のそれぞれの互いに向き合う内側面には、互いに嵌り合い可能な蛇腹構造が形成されている。下型91と上型92との各蛇腹構造における各山部と各谷部は、一定方向に延在している。中空板材10は、その各中空構造の延在方向が、好ましくは、下型91、上型92の各山部、各谷部の延在方向と平行になるように、下型91、上型92に対して配置されている。
【0066】
下型91と上型92とが中空板材10を間に挟んだ状態で互いに近づくように移動すると、下型91と上型92とが中空板材10にそれぞれ当たる。さらに下型91と上型92とが互いに近づくように移動すると、中空板材10は、下型91と上型92とによってプレスされる。このプレスによって、中空板材10は、下型91と上型92とのそれぞれ蛇腹構造に対応した蛇腹構造30を備える中空板材20となる(
図6参照)。すなわち、中空板材20の蛇腹構造30は、山部31と谷部32とが交互に並んで形成されており、各山部31および各谷部32の延在方向は、下型91と上型92の各蛇腹構造の各山部および各谷部の延在方向と同方向となる。
【0067】
プレスによって、中空板材20には、下型91および上型92の山部31の頂部と、谷部32の底部とに沿って、折り目が強く付けられている。中空板材20が下型91および上型92から取り外された後も、中空板材20には、蛇腹構造30の各山部31および各谷部32をなす折り癖が強く残される。樹脂により形成された中空板材10を下型91、上型92によってプレスする際には、中空板材10を加熱してもよい。
【0068】
中空板材10の各中空構造の延在方向が、下型91、上型92の各山部、各谷部の延在方向と平行になるように下型91、上型92に対して配置されて、中空板材10がプレスされれば、プレス後の中空板材20に形成される蛇腹構造30の各山部31および各谷部32の延在方向は、中空板材10の複数の板状部12の間に形成された各中空構造の延在方向、すなわち各介在部16の延在方向と同方向となる。中空板材10が、介在部16の延在方向に沿ったラインで折り曲げられる場合には、当該延在方向に直交する方向に沿ったラインで折り曲げられる場合よりも、容易に折り曲げられる。従って、中空板材20における蛇腹構造30の山部31と谷部32との折り目をより強く残すことが出来る。
【0069】
なお、中空板材10の各中空構造の延在方向が、下型91、上型92の各山部、各谷部の延在方向と異なるように、中空板材10が配置された状態で、プレスによって、中空板材10に蛇腹構造が形成されてもよい。また、
図6の例では、中空板材20の主面の一部に蛇腹構造30が形成されているが、中空板材20の主面の全域に亙って蛇腹構造30が形成されてよい。
【0070】
図7は、中空板材20の蛇腹構造30の山部31および谷部32に折り目をより強く形成する処理を説明するための中空板材20の側面図である。
図7に示される処理例では、中空板材20は、蛇腹構造30の両側から、側面視において山部31と谷部32との延在方向に直交する方向に沿って蛇腹構造30を圧縮する外力を加えられてプレスされている。このように、下型91、上型92によるプレスによって中空板材20に蛇腹構造30が形成された後に、蛇腹構造30を縮める方向(圧縮する方向)にさらにプレスすれば、山部31と谷部32との折り目がよく強く形成される。なお、
図7に示される後者のプレスは、行われなくてもよい。
【0071】
図8は、切刃71を用いて中空板材20の蛇腹構造30に切り込みを形成する処理を説明するための図である。中空板材20は、蛇腹構造30において、複数の切り込みをさらに形成されている。当該各切り込みは、中空板材20を折り曲げてプロテクタ50A(
図9)を形成する際に、折り曲げが容易になるようにプロテクタ50Aの各折り曲げ部分に沿って形成される。
【0072】
図8の例では、中空板材20に形成されている各切り込みは、蛇腹構造30の各山部31および各谷部32の延在方向と直交する各ラインに沿って形成されている。具体的には、中空板材20の主面と垂直な姿勢の切刃71が、当該各ラインに沿って蛇腹構造30の一部を切断することによって、蛇腹構造30に切り込みが形成される。
【0073】
切刃71は、当該各ラインにおいて、中空板材20の両主面のうちプロテクタ50Aの周壁40aの外周面となる面側(
図8では、山部31側)から蛇腹構造30に押し当てられ、中空板材20の厚み方向に蛇腹構造30を切ることによって各切り込みを形成する。蛇腹構造30は、中空板材20の厚み方向において完全には切断されない。谷部32の底部、すなわちプロテクタ50Aの内周側は切断されずに残される。
【0074】
蛇腹構造30が形成された後に、周壁40aの折り曲げ部分と同数の切刃71を備えた切断機によって蛇腹構造30に各切り込みが形成される。また、蛇腹構造30の形成に先立って、蛇腹構造30の山部31となる部分を横切るミシン目状の切り込みが、中空板材10に形成されてもよい。また、例えば、下型91と上型92(
図5)のそれぞれの内側面に切刃を設け、プレスによる蛇腹構造30の形成の際に、プロテクタ50Aの折り曲げ部分となる各切り込みを形成してもよい。蛇腹構造30に切り込みが形成されれば、切り込みにおいて中空板材20を容易に折り曲げることができる。
【0075】
なお、蛇腹構造30に切り込みが形成されないとしても、例えば、折り曲げ台に中空板材20の折り曲げ部分を強く押し当てて折り曲げることなどにより、蛇腹構造30を折り曲げることはできる。従って、蛇腹構造30に切り込みが形成されないとしても本発明の有用性を損なうものではない。
【0076】
図9は、第1実施形態に係る電線モジュール60Aを示す概略斜視図である。電線モジュール60Aは、中空板材20を折り曲げて形成されたプロテクタ50Aと、プロテクタ50Aの周壁40aに囲まれた収容空間に収容されたワイヤーハーネスWとを備えて構成されている。周壁40aは、中空板材20(プレスされた中空板材10)によって構成されている。周壁40aに囲まれた空間は、ワイヤーハーネスWを収容可能な収容空間をなしている。ここでは、ワイヤーハーネスWは、複数の電線が束ねられることにより構成されているが、ワイヤーハーネスWに代えて、一本の電線がプロテクタ50Aに収容されてもよい。
【0077】
プロテクタ50Aの周壁40aは、プロテクタ50Aの軸心方向、すなわちワイヤーハーネスWの配索方向に長い底部41aと、底部41aの幅方向の両端から立設する一対の側壁部42a、43aを備えている。また、底部41aには、側壁部42aに接続され、底部41aに対向する延出片45aと、側壁部43aに接続され、延出片45aと重ね合わされる蓋部44aとが、さらに設けられている。
【0078】
延出片45aと蓋部44aとは、接着材によって互いに接合されている。これにより、プロテクタ50Aの周壁40aの折り曲げ形状が保持される。ワイヤーハーネスWを収容した周壁40aの周囲に粘着テープを巻回すことなどによって、周壁40aの形状が保持されてもよい。また、周壁40aが、例えば、延出片45aと蓋部44aとを備えていなくてもよい。この場合には、底部41aと一対の側壁部42a、43aとによって囲まれた収容空間にワイヤーハーネスWが収容された状態で周壁40aがテープ巻固定されることなどによって収容空間が維持される。
【0079】
プロテクタ50Aの軸心方向における周壁40aの一部には、それぞれプロテクタ50Aの周方向に沿って延在する山部31aおよび谷部32aが軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造30aが形成されている。蛇腹構造30aは、中空板材10をプレスすることによって形成された中空板材20の蛇腹構造30が軸心方向に沿ったラインで折り曲げられて形成されている。
【0080】
プロテクタ50Aは、局所的に窪むことを強度の強い中空板材20によって抑制できる。また、周壁40aに蛇腹構造30aが形成されているので、例えば、プロテクタ50Aの両端部分が互いに近づくように外力を与えることによって、プロテクタ50Aは、曲げられる。従って、プロテクタ50Aは、収容したワイヤーハーネスWをプロテクタ50Aの軸心がなす経路形状に維持しつつ保護することができる。
【0081】
底部41aと一対の側壁部42a、43aとの境界をなす各折り曲げ部分46aのうち蛇腹構造30a部分には、各切り込み47aが形成されている。また、側壁部42aと延出片45aとの境界をなす折り曲げ部分と、側壁部43aと蓋部44aとの境界をなす折り曲げ部分とにおいても蛇腹構造30a部分に各切り込み47aが形成されている。
【0082】
各切り込み47aは、プロテクタ50Aの軸心方向に沿って形成されている。各切り込み47aは、中空板材20の蛇腹構造30において切刃71によって形成された各切り込みである。蛇腹構造30aには、各切り込み47aのそれぞれに対して、切り込み47aを挟む一対の断面が形成されている。当該一対の断面のうち周壁40aの外周面側の部分同士が、周壁40aの周方向に沿って互いに離れることによって、蛇腹構造30a部分の折り曲げが容易となる。
【0083】
切り込み47aは、中空板材20の複数の板状部12の両方を、蛇腹構造30の山部31側(周壁40aの外周面側)から谷部32側(周壁40aの内周面側)に向けて切ることにより形成されているが、谷部32の底部においては、複数の板状部12は、切られていない。この切られずに残った部分によって、周壁40aの各切り込み47aのそれぞれにおいて、切り込み47aを挟む二つの面同士が繋がっている。従って、収容空間を形成する周壁40aの形状が維持される。
【0084】
<第2実施形態>
図10は、中空板材10の板状部分に切り込みを形成する処理を説明するための図である。
図11は、第2実施形態に係る電線モジュール60Bを示す概略斜視図である。電線モジュール60Bは、切り込みが形成された中空板材10によって形成された周壁40bと、周壁40bに囲まれた収容空間に収容されたワイヤーハーネスWとを備えている。
【0085】
図10に示されるように、中空板材10の両面、すなわち複数(ここでは2つ)の板状部12のうち一方に、切刃72によって切り込みが形成されている。当該切り込みは、中空板材10が折り曲げられた際に、プロテクタ50Bの周壁40bに形成される各切り込み47bとなる。当該切り込みが形成される板状部12は、プロテクタ50Bの周壁40bのうち外周面を形成する。当該切り込みは、少なくとも蛇腹構造30の軸心方向に沿った全長に亙って形成される。軸心方向に沿った中空板材10の全長に亙って当該切り込みが形成されてもよい。
【0086】
切刃71による切り込みが形成されてない板状部12は、周壁40bの内周面を形成する。また、板状部12同士を接続する複数の介在部16も、切刃72によって切られてもよい。すなわち、切り込みが一方の板状部12だけでなく介在部16に達してもよい。
【0087】
切刃72によって切り込みを形成された中空板材10は、下型91および上型92によってプレスされ、蛇腹構造30を備える中空板材20となる(
図5、
図6参照)。
図7を参照しつつ説明したプレス処理が、蛇腹構造30に対して、さらに行われてもよい。
【0088】
電線モジュール60Bは、中空板材20を折り曲げて形成されたプロテクタ50Bと、プロテクタ50Bの周壁40bに囲まれた収容空間に収容されたワイヤーハーネスWとを備えて構成されている。周壁40bは、切刃72によって形成された各切り込みが形成された中空板材20(プレスされた中空板材10)によって構成されている。周壁40bに囲まれた収容空間には、少なくとも一本の電線(
図11の例では、ワイヤーハーネスW)が収容される。
【0089】
周壁40bは、プロテクタ50Bの軸心方向、すなわちワイヤーハーネスWの配索方向に長い底部41bと、底部41bの幅方向の両端から立設する一対の側壁部42b、43bを備えている。また、底部41bには、側壁部42bに接続され、底部41bに対向する延出片45bと、側壁部43bに接続され、延出片45bと重ね合わされる蓋部44bとが、さらに設けられている。
【0090】
延出片45bと蓋部44bとが、例えば、プロテクタ50Aの延出片45aおよび蓋部44aと同様に接合されることなどによって、収容空間を形成する周壁40bの折り曲げ形状が保持される。
【0091】
プロテクタ50Bの軸心方向における周壁40bの一部には、それぞれプロテクタ50Bの周方向に沿って延在する山部31bおよび谷部32bが軸心方向において交互に並ぶ蛇腹構造30bが形成されている。蛇腹構造30bは、中空板材10をプレスすることによって形成された中空板材20の蛇腹構造30が軸心方向に沿ったラインで折り曲げられて形成されている。
【0092】
プロテクタ50Bは、プロテクタ50Aと同様に、局所的に窪むことを強度の強い中空板材20によって抑制できる。また、周壁40bに蛇腹構造30bが形成されているので、例えば、プロテクタ50Bの両端部分が互いに近づくように外力を与えることによって、プロテクタ50Bは、曲げられる。従って、プロテクタ50Bは、収容したワイヤーハーネスWをプロテクタ50Bの軸心がなす経路形状に維持しつつ保護することができる。
【0093】
底部41bと一対の側壁部42b、43bとの境界をなす各折り曲げ部分46bのうち蛇腹構造30b部分には、各切り込み47bが形成されている。また、側壁部42bと延出片45bとの境界をなす折り曲げ部分と、側壁部43bと蓋部44bとの境界をなす折り曲げ部分とにおいても蛇腹構造30b部分に各切り込み47bが形成されている。
【0094】
各切り込み47bは、プロテクタ50Bの軸心方向に沿って形成されている。各切り込み47bは、切刃72によって中空板材10に形成された各切り込みである。各切り込み47bによって、蛇腹構造30b部分の折り曲げが容易となる。
【0095】
切り込み47bは、周壁40bをなす中空板材20の複数の板状部12のうち、周壁40bの外周面となる方を、少なくとも軸心方向における蛇腹構造30bの全長に亙って、厚み方向に完全に切断することにより形成されている。周壁40bの各切り込み47bのそれぞれにおいて、切り込み47bを挟む周壁40bの2つの面同士は、複数の板状部12のうち切断されていない方(周壁40bの内周面をなす板状部12)によって互いに繋がっている。従って、収容空間を形成する周壁40bの形状が維持される。
【0096】
プロテクタ50A、50Bの切り込み47a、47bを例として説明したように、実施形態に係るプロテクタの周壁の折り曲げ部分に設けられる切り込みとして、中空板材20を構成する複数の板状部12のうち少なくとも1つにプロテクタの軸心方向に沿って形成された切り込みが採用される。
【0097】
プロテクタ50A(50B)においては、軸心方向における周壁40a(40b)の一部に蛇腹構造30a(30b)が形成されている。周壁40a(40b)のうち蛇腹構造30a(30b)が形成されていない部分は、周壁40a(40b)を形成する強度の強い中空板材20の構造によって曲りにくいので、ワイヤーハーネスWの配索経路を強固に保持する機能(経路保持機能)を有する。一方、周壁40a(40b)のうち蛇腹構造30a(30b)が形成されている部分は、柔軟性を有しており、ワイヤーハーネスWの配索経路を容易に変更することができる。従って、一つのプロテクタ50A(50B)に経路保持機能と、柔軟性とを併せ持たせることができるので、部品点数を削減することができる。なお、蛇腹構造30a(30b)が、軸心方向における周壁40a(40b)の全域に亙って形成されてもよい。
【0098】
また、プロテクタ50A(50B)は、中空板材10を加工して形成されているが、例えば、中空板材10Aまたは10Bを加工して形成されてもよい。中空板材10Aが用いられる場合には、中空構造の延在方向と、プロテクタ50A(50B)に形成される蛇腹構造30a(30b)の各山部および各谷部の延在方向とが同方向であることが好ましい。
【0099】
以上のように構成された第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)によれば、プロテクタ50A(50B)は、局所的に窪むことを強度の強い中空板材によって抑制しつつ、中空板材に対するプレスにより周壁40a(40b)の少なくとも一部に形成された蛇腹構造30a(30b)によって曲げられる。これにより、電線の保護と自由度の高い経路設定とを実現できる。
【0100】
また、以上のように構成された第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)によれば、中空板材が折り曲げられることにより、プロテクタ50A(50B)の周壁40a(40b)に底部41a(41b)と一対の側壁部42a、43a(42b、43b)とが形成されている。従って、底部41a(41b)と側壁部42a、43a(42b、43b)とが形成される前の中空板材が呈する板状形態で、プロテクタ50A(50B)を効率良く輸送できる。これにより、輸送コストを低減できる。
【0101】
また、以上のように構成された第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)によれば、プロテクタ50A(50B)の周壁40a(40b)の折り曲げ部分46a(46b)のうち少なくとも蛇腹構造30a(30b)部分において少なくとも1つの板状部12に軸心方向に沿った切り込み47a(47b)が形成されているので、折り曲げによる底部41a(41b)と側壁部42a、43a(42b、43b)との形成が容易となる。
【0102】
また、以上のように構成された第1(第2)実施形態に係る電線モジュール60A(60B)によれば、プロテクタ50A(50B)と、収容された少なくとも一本の電線とを備えているので、電線の保護と自由度の高い経路設定とを実現できる。
【0103】
また、以上のような第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)の製造方法によれば、局所的に窪むことを強度の強い中空板材20によって抑制しつつ、プレスにより周壁の少なくとも一部に形成された蛇腹構造30a(30b)によって曲げ可能なプロテクタ50A(50B)を製造できる。これにより、電線の保護と自由度の高い経路設定とを実現できる。
【0104】
また、以上のような第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)の製造方法によれば、中空板材を折り曲げることにより、周壁40a(40b)に底部41a(41b)と一対の側壁部42a、43a(42b、43b)とが形成されたプロテクタ50A(50B)を製造できる。従って、底部41a(41b)と側壁部42a、43a(42b、43b)とが形成される前の中空板材が呈する板状形態で、プロテクタ50A(50B)を効率良く輸送できる。従って、輸送コストを低減できる。
【0105】
また、以上のような第1(第2)実施形態に係るプロテクタ50A(50B)の製造方法によれば、プロテクタ50A(50B)の周壁40a(40b)の折り曲げ部分46a(46b)のうち少なくとも蛇腹構造30a(30b)部分において少なくとも1つの板状部12に電線の配索方向に沿った切り込み47a(47b)が形成された後、切り込み47a(47b)において中空板材を折り曲げることによって底部41a(41b)と側壁部42a、43a(42b、43b)とが形成される。従って、底部41a(41b)と側壁部42a、43a(42b、43b)との形成が容易となる。
【0106】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。