以下の1プライ当たりの坪量と、5.0以上6.5以下の比容積と、4プライでの90gf/25mm以上130gf/25mm以下の縦方向の湿潤引張り強度と、を有し、1ロールの巻長が30m以上であり、JIS P 8113に規定される縦方向の乾燥引張り強度をDMDT、横方向の乾燥引張り強度をDCDTで表したとき、2プライにおけるDMDT/DCDT=2.0以上3.5以下であるトイレットペーパーにより解決される。
JIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が30秒以上90秒以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記トイレットペーパーに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込み、回転数2.0/secで回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、前記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度であるTS750が20dBV2rms以上35dBV2rms以下であり、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度であるTS7が10dBV2rms以上14dBV2rms以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、水の浸透性を遅らせることで水に濡れた時の強度を維持しているが、速やかな水分の拭き取り性能に劣るという問題があり、特許文献2に記載の技術では、サイズ剤による吸水性悪化が問題となる。また、特許文献3に記載の技術では、一時性湿潤紙力剤の他に柔軟剤を添加する場合、強度低下と薬剤コストの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は温水シャワートイレの使用に適したある一定の湿潤強度と乾燥強度を保持しつつ、かつ、風合いと吸水性に優れたコンパクトなトイレットペーパーとその製造方法を提供することにある。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のトイレットペーパーは、2プライのトイレットペーパーであって、18g/m
2以上23g/m
2以下の1プライ当たりの坪量と、5.0以上6.5以下の比容積と、4プライでの90gf/25mm以上130gf/25mm以下の縦方向の湿潤引張り強度と、を有し、1ロールの巻長が30m以上であり、JIS P 8113に規定される縦方向の乾燥引張り強度をDMDT、横方向の乾燥引張り強度をDCDTで表したとき、2プライにおけるDMDT/DCDT=2.0以上3.5以下であることを特徴とする。
【0011】
(2)本発明のトイレットペーパーは、上記(1)の構成において、シングルエンボスが付与されることを特徴とする。
【0012】
(3)本発明のトイレットペーパーは、上記(1)または(2)の構成において、パルプに対して0.01重量%以上0.10重量%以下の一時的湿潤紙力増強剤を含有することを特徴とする。
【0013】
(4)本発明のトイレットペーパーは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、吸水度が2秒以下であることを特徴とする。
【0014】
(5)本発明のトイレットペーパーは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、JIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が30秒以上90秒以下であることを特徴とする。
【0015】
(6)本発明のトイレットペーパーは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した上記トイレットペーパーに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込み、回転数2.0/secで回転させ、上記試料台の振動を振動センサで測定したとき、上記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度であるTS750が20dBV2rms以上35dBV2rms以下であり、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度であるTS7が10dBV2rms以上14dBV2rms以下であることを特徴とする。
【0016】
(7)本発明のトイレットペーパーの製造方法は、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のトイレットペーパーの製造方法であって、ドクターポケット角度が80度以上のドクターブレードにより、ヤンキードライヤー面からシートを剥がし、上記シートに25%以上30%以下のクレープ率を付与する工程と、シートを2枚に積層し巻き取る工程と、積層シートにエンボスを付与して積層シートを紙管に対して30m以上巻き付ける工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、温水シャワートイレの使用に適したある一定の湿潤強度と乾燥強度を保持しつつ、かつ、風合いと吸水性に優れたコンパクトなトイレットペーパーとその製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好ましい実施形態に基づき、図面と共に詳細に説明する。なお、本発明に係るトイレットペーパーのウェブ及びその製品の抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。また、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0020】
本発明の実施形態に係るトイレットペーパーは2プライである。抄紙機により抄造したトイレットペーパー原紙200を1次原紙ロールとし、次にプライマシンにより、2本の1次原紙ロールを2枚重ねに積層して2次原紙ロールを製造する。そして2次原紙ロールをトイレットロール加工機にてシングルエンボスを施し、紙管に巻き取り、所定幅に切断してトイレットペーパーを製造する。
【0021】
まず、
図1、
図2を用いて、本発明の実施形態(以下、本実施形態と称することもある。)に係るトイレットペーパー原紙200の製造方法について簡単に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るトイレットペーパー原紙200を製造するマシン1の一部を示す図であり、
図2は、
図1の本発明に係る要部の拡大図であり、すなわち、トイレットペーパー原紙200を製造する際のドクターポケット角度20を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るトイレットペーパー原紙200の製造において、抄紙原料から形成された湿紙ウェブシート100は、ヤンキードライヤー10及びヤンキードライヤーフード11により乾燥され、さらにドクターブレード12によりクレープ処理されながら、ヤンキードライヤー10から剥がされ、クレープ付与ウェブシート13になる。クレープ付与ウェブシート13は、速度差をつけたリールドラム15を介してリール16に巻き取られ、トイレットペーパー原紙200の1次原紙ロールが製造される。
【0023】
ここで、ウェブシート100をヤンキードライヤー10に接着させて、ドクターブレード12で剥離させることでクレープと称される波状の皺を形成し、クレープの形成により、トイレットペーパー原紙200に嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性などを付与される。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係るトイレットペーパー原紙200の製造において、ヤンキードライヤー10と湿紙ウェブシート100が適切な接着力で接着されている状態でドクターブレード角度30を有するドクターブレード12と、ヤンキードライヤー10が形成したドクターポケット角度を80度以上とし、ヤンキードライヤー10からシート100を剥がすことで、適正なクレープ形状を形成することができる。湿紙ウェブシート100に25%以上30%以下のクレープ率を付与することにより、細かいクレープと表面の柔らかさを確保したトイレットペーパー原紙200となる。なお、クレープ率とは、ヤンキードライヤー10とリール16の速度差に基づくものであり、次式により定義される。
クレープ率(%)=100×{(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))}÷リール速度(m/分)
【0025】
ヤンキードライヤー10は、湿紙ウェブシート100を乾燥させるための鋳鉄又は鋳鋼製のドラムであり、その外径は、一般には3.5m以上4.3m以下である。
【0026】
リール16に巻き取られたトイレットペーパー原紙200(1次原紙ロール)は、プライマシン(図示しない)にて2枚重ねに積層し、2プライのトイレットペーパー原紙(2次原紙ロール)として再度巻き取られる。次に、上記2プライのトイレットペーパー原紙(2次原紙ロール)をトイレットペーパー加工機(図示しない)にて、エンボスを施し、ミシン目を付与し、1ロールの巻長、すなわちトイレットペーパーロールを展開したときの全長を30m以上に巻取り、所定の巾に切断して1ロールのトイレットペーパーが製造される。上記トイレットペーパー加工機において付与されるエンボスは、コンパクトなトイレットペーパーとするためにシングルエンボスが好ましい。また、ロール1ロールの巻長は、交換の頻度を減少させるために、30m以上が好ましい。上記シングルエンボスは、上記2プライに積層された2次原紙ロールを2プライのままエンボスを施すことである。
【0027】
トイレットペーパーは、木材パルプ100%から成っていてもよく、古紙パルプ、非木材パルプを含んでも良い。目標とする品質を得るためには、NBKP:LBKP=10:90〜70:30(質量比)の木材パルプを原料とすることが好ましく、より好ましくはNBKP:LBKP=20:80ないし70:30、さらに好ましくはNBKP:LBKP=20:80ないし40:60である。上記LBKPの材種として、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。このパルプ比率の木材パルプに対し、古紙パルプを50質量%程度まで含むことができる。古紙パルプは品質的バラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に、柔らかさに大きく影響するので、木材パルプに対して20質量%以下配合するのが望ましい。
【0028】
なお、本発明のトイレットペーパーは、上記に限るものではなく、必要に応じて公知の添加剤等を使用してもよい。
【0029】
(一時的湿潤紙力増強剤)
本実施形態に係るトイレットペーパーにおいて、シャワートイレに適した乾燥強度、一定の湿潤強度を確保するため、パルプに対して0.01重量%以上0.10重量%以下の一時的湿潤紙力増強剤を抄紙工程で添加することが好ましい。一時的湿潤紙力増強剤を添加して抄造し、坪量を18g/m
2以上の2プライとすることにより、水分を拭き取る際、シャワートイレにて付与した水分量程度では破れたりせず、十分な吸水能力を持ち、廃棄時に水洗トイレでの水流で崩壊させることができる。
【0030】
一時的湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド・ポリアミン共重合物、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、グリオキザール・ポリアクリルアミド共重合物、ジアルデヒドデンプン、カチオン変性デンプン、酸化デンプン等があげられる。
【0031】
(坪量)
本実施形態に係るトイレットペーパーの坪量は、JIS P 8124に基づいて測定され、トイレットペーパー200のシート1枚当たり、18g/m
2以上23g/m
2以下である。坪量が18g/m
2未満であると、温水洗浄用として必要な吸水性と湿潤強度を確保しにくくなり、一方、23g/m
2を超えると、紙質が硬く拭き取りに適さないものとなる。
【0032】
(比容積)
比容積とは、密度(緊度)の逆数をいう。すなわち、比容積とは一定質量に対する容積のことで、嵩(かさ)ともいわれ、体積や厚み、高さなど嵩張り状態(bulky)の目安となり、次式で求められる。
比容積(cm
3/g)=厚さ(mm)×1000/坪量(g/m
2)
本実施形態に係るトイレットペーパーの1枚当たりの比容積は、5.0cm
3/g以上6.5cm
3/g以下である。比容積が5.0cm
3/g未満であると、ふんわり感が乏しく、バルク(嵩高さ)が低下して水分の吸収能力に劣る。一方、比容積が6.5cm
3/gを超えると、バルク(嵩高さ)は高くなるが、平滑性が劣り、触感が悪くなるとともに一定の巻径範囲内(110mm以下)での巻長が制限される場合がある。
【0033】
(乾燥引張り強度)
本実施形態に係るトイレットペーパーの乾燥引張り強度は、JIS P 8113の引張試験方法に基づいて測定される。縦方向の乾燥引張り強度をDMDT、横方向の乾燥引張り強度をDCDTで表したとき、2プライにおけるDMDT/DCDTは2.0以上3.5以下であり、好ましくは2.0以上3.0以下である。これらの比は、トイレットペーパーの縦横の強度比を表しており、上記比が3.5を超えるとシートが縦方向に裂けやすくなり、使い勝手が悪くなる。
【0034】
また、紙力の縦横比は、例えば、抄紙機における抄き出し水流速度/ワイヤー速度(J/W比(ジェットワイヤー比))を調整することにより、任意の値に設定できる。
【0035】
(湿潤時の縦方向引張り強度)
本実施形態に係るトイレットペーパーは温水シャワートイレに適用するため、一定の湿潤強度を要求される。本発明のトイレットペーパーにおいて、4プライ当たり、90gf/25mm以上130gf/25mm以下の縦方向の湿潤引張り強度を有する。上記引張り強度は、旧JIS S 3104に基づいて湿潤時の縦方向引張り強度を測定した数値である。90gf/25mm未満であると、温水洗浄用として破れたり、柔らかすぎたりして使用感が劣り、一方、130gf/25mmを超えると、水にほぐれにくく、トイレットペーパーが剛直になり、柔らかさ、手触り感の点で劣る。
【0036】
(吸水度)
本実施形態に係るトイレットペーパーは、温水での洗浄後、余分な水分を拭き取るため、吸水度が2秒以下である。トイレットペーパーの吸水度が2秒を超えると、トイレットペーパーとしての吸水性が劣化する。上記吸水度は、旧JIS S 3104に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で、0.1ml(2プライの場合)の精製水を滴下し、水滴がトイレットペーパー製品に吸収される時間(秒)を測定した数値である。
【0037】
(ほぐれやすさ)
本実施形態に係るトイレットペーパーは、JIS P 4501で規定される試験方法に基づくほぐれやすさ試験における秒数で表し、その値が30秒以上90秒以下であり、好ましくは40秒以上70秒以下である。30秒未満であると、温水シャワートイレで使用した際に、拭き取り操作をするとほぐれたトイレットペーパーが皮膚に付着するおそれが高まり、90秒を超えると、トイレに流した際に、配管の詰まりが起きやすくなる。なお、この秒数における上限値は、トイレットペーパーの一般的な上限値であるが、下限値に関してはシャワートイレに適するための数値範囲であり、一般的な数値よりも高めである。
【0038】
(ソフトネス)
本発明の実施形態に係るトイレットペーパーをティシューソフトネス測定装置TSA(Tissue
Softness Analyzer)により測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度TS750が20dBV2rms以上35dBV2rms以下であり、好ましくは25dBV2rms以上30dBV2rms以下である。TS750が35dBV2rmsより高いと平滑性に劣り、20dBV2rmsより低いと平滑性のみが際立ち、良好な触感が得られない場合がある。
【0039】
また、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度TS7が10dBV2rms以上14dBV2rms以下であり、好ましくは11dBV2rms以上13dBV2rms以下である。数値が上記範囲より高いと、十分なやわらかさが得られず、上記範囲より低いと、柔らかさだけが際立ち、良好な触感を得ることができない場合がある。
【0040】
ここで、
図3に示すように、ティシューソフトネス測定装置TSA210は、紙試料(サンプル)206の上から、回転したブレード付きロータ204を押付けたときの各種センサで検知した振動データを、振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、紙のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのエムテック(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は日本ルフト株式会社)社製の商品名である。
【0041】
TSAを用いた具体的な測定は、(i)円形の試料台205を外側から覆うようサンプル206(emtec社のサンプルパンチを使用して直径が約112.8mmの円形に加工したサンプル)を設置し、サンプル206の外周をサンプル固定リング208で保持し、(ii)ブレード付きロータ204を100mNの押し込み圧力でサンプル206の上から押し込んだ後、ロータ204を回転数2.0(/sec)で回転させ、(iii)試料台205の振動を、試料台205内部に設置した振動センサ203で測定し、振動周波数を解析する。(i)〜(iii)の手順により、トイレットペーパーの総合的なハンドフィール値の要素(滑らかさ、しなやかさ)が各々数値化できる。本実施形態において、トイレットペーパーのサンプル206を採取して5回測定し、その平均値をトイレットペーパーのTS7及びTS750とした。
【0042】
なお、試料台205はベースプレート201上に設置され、試料台205とベースプレート201の間には、力センサ202が配置されている。そして、力センサ202の検出値により、ブレード付きロータ204の押し込み圧力を制御する。また、ブレード付きロータ204はモータ209によって回転する。
【0043】
振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS7及びTS750をソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS7、TS750あるいは坪量、厚さ、プライ数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本発明では、HF値ではなく、TS7及びTS750を規定しており、上記測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用しても良く、TS7及びTS750の値は、アルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0044】
図4はTS7とTS750の測定位置を示すサンプル206の断面図である。
図4に示すように、TS7のピークP1がサンプル206の素材の柔らかさを示す値であるのに対し、TSA750のピークP2は、滑らかさやエンボス加工(凹凸性)の強さと相関性を有する値であり、数値が大きいほど粗く、より強いエンボス加工であることを意味する。
【0045】
以上のように、本発明の実施形態に係るトイレットペーパーは、1枚当たりの坪量が比較的高いシートを2枚重ね、一定の比容積、縦方向の湿潤引張り強度、乾燥引張り強度の縦横比及び巻長であるため、温水シャワートイレの使用に適したある一定の湿潤強度と乾燥強度があり、かつ、風合いと吸水性に優れたコンパクトなトイレットペーパーを安価に製造できるようになる。
【0046】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0048】
[実施例1]〜[実施例6]
実施例1〜6において、公知の方法によりパルプ繊維に市販の一時的湿潤紙力増強剤を添加して抄紙し、形成されたシート(ウェブ、湿紙)をヤンキードライヤーで乾燥され、さらにドクターブレードによりドクターポケット角度80°にて、クレープ処理されながらヤンキードライヤーから剥がし、1次原紙ロールを作成した。次いで、2本の1次原紙ロールを2枚重ねに積層して2次原紙ロールを作成し、2次原紙ロールをトイレットロール加工機にてシングルエンボスを施し、紙管に巻き取り、所定幅に切断してトイレットペーパーを作成した。
【0049】
実施例2〜6は、それぞれ条件を表1に示したように変更し、それ以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0050】
比較例1は、パルプ繊維に一時的湿潤紙力増強剤を添加していないことを除き、実施例1と同じ方法で製造した。
【0051】
比較例2は、パルプ繊維に一時的湿潤紙力増強剤を添加しておらず、かつ、クレープシートにダブルエンボスを付与し、実施例1と同じ方法で製造した。
【0052】
比較例3〜5は、温水シャワートイレ専用の市販品であり、パルプ繊維に一時的湿潤紙力増強剤を添加しておらず、また、クレープシートにダブルエンボスを付与したものである。
【0053】
本発明の実施例1〜6及び比較例1〜5に係るトイレットペーパーについて、物性及び官能評価を測定した。評価項目と結果を表1に示す。なお、表1における実施例及び比較例の条件は、表中に示した条件以外は共通とした。
【0054】
本実施例における各測定方法については下記のとおりである。
(測定条件)
坪量、厚さ、乾燥引張強度、ほぐれやすさ及びティシューソフトネス測定装置TSAによる測定は、JIS P 8111に規定される温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0055】
(坪量)
紙の坪量は、JIS P 8124の規定に準拠して測定し、シート1枚当たりに換算した。
【0056】
(紙厚)
紙厚は、シックネスゲージ(尾崎製作所ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。紙厚の測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径29mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は試料を10枚重ねて行い、紙厚は測定を10回繰り返して得られる平均値とした。
【0057】
(比容積)
比容積は、シート1枚当たりの厚さをシート1枚当たりの坪量で割り、単位g当たりの容積cm
3で表した。
【0058】
(巻長)
巻長は、表1の測定値となるよう製造工程において規定し、紙管に巻き上げてトイレットペーパーとした。
【0059】
(クレープ率)
クレープ率は次式より算出した。
クレープ率(%)=100×{(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
【0060】
(乾燥引張り強度)
縦方向及び横方向の乾燥時引張り強度は、JIS P 8113の規定に準拠して測定した。またこの測定結果に基づいて乾燥時引張り強度の縦横比を算出した。
【0061】
(湿潤引張り強度)
縦方向の湿潤引張り強度は、旧JIS S 3104の規定に準拠して測定した。
【0062】
(吸水度(秒))
吸水度(秒)は、旧JIS S3104の規定に準拠し、温度20±1℃、湿度50±2%の条件で、2プライの場合、約10mmの高さから蒸留水を0.1ml滴下し、水滴がシートに接触したときから、完全にシートに吸収されて反射光が消えるまでの時間を0.1秒単位で測定した。
【0063】
(ほぐれやすさ(秒))
ほぐれやすさ(秒)はJIS P−4501「トイレットペーパー」に記載されるほぐれやすさ試験法の規定に準拠して測定した。
【0064】
(TS7及びTS750)
TS7及びTS750の測定は、上記ティシューソフトネス測定装置TSAを用いて行った。測定条件も上記のとおりである。
【0065】
(官能評価)
柔らかさについて、モニター20人による官能評価によって行った。評価基準は5点満点とし、評価が4点以上であれば、その特性に優れるとした。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、各実施例のトイレットペーパーは、吸水速度が速く、柔らかさ、平滑性を有し、さらにコンパクトで、官能評価も良好であり、温水シャワートイレでの使用に適したものとなった。
【0068】
一方、抄紙工程において一時的湿潤紙力増強剤を付与しなかった比較例1の場合、風合いに劣り、水分で容易に破れた。また、必要な湿潤強度と乾燥強度を持たず、温水シャワートイレでの使用に適さないものとなった。
【0069】
湿紙ウェブシートに一時的湿潤紙力増強剤を付与せず、かつ、クレープシートにダブルエンボスを付与した比較例2の場合、縦方向に裂けやすくなり、使い勝手が悪くなると共に、巻長が足りなくなった。
【0070】
抄紙工程において一時的湿潤紙力増強剤を付与せず、かつ、トイレット加工機においてダブルエンボスを付与した比較例3ないし5の場合、吸水速度に劣り縦方向に裂けやすくなり、十分な横方向の強度とするためにシート全体の強度が高くなり、風合いが劣ると共に、巻長が足りなくなった。