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特開2015-127382フロアーポリッシュ用剥離剤及びフロアーポリッシュの剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-127382(P2015-127382A)
(43)【公開日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】フロアーポリッシュ用剥離剤及びフロアーポリッシュの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20150612BHJP
【FI】
   C09D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-38870(P2014-38870)
(22)【出願日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-247980(P2013-247980)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紗菜
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038RA02
4J038RA03
4J038RA04
4J038RA09
4J038RA13
4J038RA16
(57)【要約】
【課題】 水で希釈した際に、ベンジルアルコールと水とが分離せず、不溶物が生じていない状態となるフロアーポリッシュ用剥離剤を提供する。
【解決手段】 ベンジルアルコールと、アルカリ剤とを含むフロアーポリッシュ用剥離剤であって、上記フロアーポリッシュ用剥離剤はさらに上記ベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸を含んでおり、上記フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈した際に、上記ベンジルアルコールと上記水とが分離せず、希釈された上記フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていないことを特徴とするフロアーポリッシュ用剥離剤。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルアルコールと、アルカリ剤とを含むフロアーポリッシュ用剥離剤であって、
前記フロアーポリッシュ用剥離剤はさらに前記ベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸を含んでおり、
前記フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈した際に、前記ベンジルアルコールと前記水とが分離せず、希釈された前記フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていないことを特徴とするフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項2】
前記ベンジルアルコールと、前記不飽和脂肪酸との重量比が、ベンジルアルコール:不飽和脂肪酸=3:1〜90:1である請求項1に記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項3】
前記不飽和脂肪酸は、常温で液体である請求項1又は2に記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸及び/又はリノール酸である請求項3に記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項5】
前記アルカリ剤は、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項6】
さらにグリコール系溶剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項7】
さらにフッ素系界面活性剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項8】
さらに消泡剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用剥離剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法であって、
前記フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈して、前記ベンジルアルコールと水とが分離せず不溶物が生じていない溶液である希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を得て、
前記希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行うことを特徴とするフロアーポリッシュの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアーポリッシュ用剥離剤及びフロアーポリッシュの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や社屋等において、フロアーの床面の保護や床面に光沢を出すためにポリマータイプのフロアーポリッシュが塗布されることがある。フロアーポリッシュを塗布した直後の床面であれば、フロアーポリッシュ被膜の表面には傷や汚れがないので、床面は光沢のある美観を有する。
しかし、時間が経過するにつれて歩行による摩耗等でフロアーポリッシュはすり減り光沢が失われることになる。そのため、定期的にフロアーポリッシュ被膜の表面を洗浄し、その上にフロアーポリッシュを上塗りする必要がある。このように繰り返しフロアーポリッシュを上塗りしていくと、汚れが蓄積され、フロアーポリッシュ被膜の表面の洗浄とフロアーポリッシュの上塗りとでは光沢が維持されなくなる。このような場合には、フロアーポリッシュを完全に剥離除去し、再度フロアーポリッシュを塗布してフロアーポリッシュ被膜を形成させる必要がある。
【0003】
フロアーポリッシュは専用の剥離剤によって除去される。剥離剤の成分は主にベンジルアルコール、モノエタノールアミンやイソプロパノールアミン等のアルカリ剤等である。
ベンジルアルコールは溶剤として機能する。ベンジルアルコールがフロアーポリッシュに浸透すると、フロアーポリッシュが軟化・膨張し、フロアーポリッシュが剥離されやすくなる。
アルカリ剤は、剥離剤をアルカリ性にするために用いられる。フロアーポリッシュは、ポリマーから成るので、アルカリ性の剥離剤が接触することにより、ポリマーが一部分解や溶解され、結果としてフロアーポリッシュが剥離されやすくなる。
【0004】
上記のフロアーポリッシュ用剥離剤は、通常、水で所定の倍率に希釈されて用いられることになる。しかし、ベンジルアルコールは、水への溶解度が低い。そのため、希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤において、ベンジルアルコールと、水とが分離してしまうことがあった。ベンジルアルコールと、水とが分離すると、フロアーポリッシュを剥離する際に、フロアーポリッシュ被膜上にベンジルアルコールが接触する領域と、接触しない領域が生じる。ベンジルアルコールが接触しない領域では、フロアーポリッシュがうまく剥離できないという問題があった。すなわち、濡れ性及びフロアーポリッシュ被膜への浸透性が充分ではなかった。このような問題を解決するために、さらに、脂肪酸を加えたフロアーポリッシュ用剥離剤が提案されていた。脂肪酸は、界面活性作用を有するので、濡れ性及びフロアーポリッシュ被膜への浸透性を向上させることができた。
【0005】
このようなフロアーポリッシュ用剥離剤として、特許文献1には、(A)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールから選ばれる少なくとも一種の非アミン系水溶性溶剤20〜40質量%と、(B)アミン系水溶性溶剤10〜20質量%と、(C)ベンジルアルコール20〜35質量%と、(D)脂肪酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸0.7〜2質量%からなるフロアーポリッシュ用剥離剤が開示されている。
特許文献2には、(A)次の(イ)〜(ハ)で構成される界面活性剤:(イ)側鎖脂肪酸アミン塩0.8〜8質量%、(ロ)ポリオキシエチレンアルキルアミン系界面活性剤1〜7質量%及び(ハ)フッ素系界面活性剤0.02〜0.5質量%と、(B)ベンジルアルコール30〜60質量%と、(C)アミン化合物19〜50質量%と、(D)水とを含有するフロアーポリッシュ用剥離剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−2173号公報
【特許文献2】特開2008−291178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2に開示されているフロアーポリッシュ用剥離剤は、水で希釈して用いられることになる。上記の通り、これらフロアーポリッシュ用剥離剤には、濡れ性及びフロアーポリッシュ被膜への浸透性を高めるため、脂肪酸が含まれている。脂肪酸としては、飽和脂肪酸が用いられている。これらフロアーポリッシュ用剥離剤を水で希釈すると、ベンジルアルコールが油滴状に水に分散して充分に溶けていない状態となり、不溶物を生じることがある。
ベンジルアルコールが油滴状に分散した状態の希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤を用いて、フロアーポリッシュの剥離を行うと、フロアーポリッシュ被膜にベンジルアルコールと接触する部分と、接触しない部分とが生じることになる。さらに、ベンジルアルコールや水の表面張力等の関係で、上記のベンジルアルコールと接触する部分と、ベンジルアルコールに接触しない部分の範囲が局所的に集まり、斑が生じることになる。このような斑が生じた場合、ベンジルアルコールが接触しない部分ではフロアーポリッシュの剥離が不充分となる問題があった。すなわち、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のレベリング性及び濡れ性が充分とは言えなかった。本明細書においてレベリング性とは、フロアーポリッシュ被膜の表面に塗布されたベンジルアルコールやアルカリ剤等の剥離剤が、均一な厚みであるかを示す性能のことをいう。すなわち、レベリング性が高いとは、均一な厚みでベンジルアルコールやアルカリ剤等の剥離剤が塗布されている状態であり、剥離剤の濃さに偏りが生じていないことをいう。レベリング性が低いとは、塗布されたベンジルアルコールやアルカリ剤等の剥離剤の厚みに斑があることをいう。レベリング性が低い場合には、部分的にベンジルアルコールやアルカリ剤等の剥離剤の液量が少なく剥離効果が少ない部分と、液量が多く剥離効果が過大な部分とが生じること、又は、剥離剤の濃さに偏りが生じることであり、剥離度合いに斑が生じることになる。
本明細書において濡れ性とは、ベンジルアルコールとフロアーポリッシュ被膜の表面とのなじみやすさのことを意味する。濡れ性が優れていると、ベンジルアルコールが表面張力によりフロアーポリッシュ被膜の表面からはじかれていない状態となる。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、水で希釈した際に、ベンジルアルコールと水とが分離せず、不溶物が生じていない状態となるフロアーポリッシュ用剥離剤、及び、フロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、不飽和脂肪酸をフロアーポリッシュ用剥離剤に加えることで、ベンジルアルコールが水に溶解し、不溶物が生じていない均一な状態を保つことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコールと、アルカリ剤とを含むフロアーポリッシュ用剥離剤であって、上記フロアーポリッシュ用剥離剤はさらに上記ベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸を含んでおり、上記フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈した際に、上記ベンジルアルコールと上記水とが分離せず、希釈された上記フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていないことを特徴とする。
なお、以下、水で希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤を「希釈フロアーポリッシュ用剥離剤」とも呼ぶ。
【0011】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸を含んでいる。
そのため、フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈した際に、ベンジルアルコールと、水とは分離せず、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じない。
従って、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行う場合、フロアーポリッシュ被膜に均一にベンジルアルコールが接触することになる。すなわち、レベリング性及び濡れ性が優れている。そのため、ベンジルアルコールが接触する場所に斑が生じず、フロアーポリッシュを好適に剥離することができる。
また、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、アルカリ剤を含んでいる。そのため、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤と、フロアーポリッシュとが接触した際、フロアーポリッシュを形成するポリマーが分解されやすくなる。その結果、フロアーポリッシュが剥離されやすくなる。
【0012】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤では、上記ベンジルアルコールと、上記不飽和脂肪酸との重量比が、ベンジルアルコール:不飽和脂肪酸=3:1〜90:1であることが望ましく、9:1〜60:1であることがより望ましい。
不飽和脂肪酸の重量が、ベンジルアルコール重量の1/90未満となると、ベンジルアルコールが水に可溶化する効果を充分に得られにくくなり、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤にベンジルアルコールの油滴が生じやすくなる。このようなフロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュを剥離しようとすると、フロアーポリッシュと、ベンジルアルコールとが接触する部分に斑が生じやすくなる。すなわち、レベリング性及び濡れ性が充分となりにくくなる。そのため、好適にフロアーポリッシュを剥離しにくくなる。
不飽和脂肪酸の重量が、ベンジルアルコール重量の1/3を超えると、上記のベンジルアルコールを可溶化する効果が向上しにくくなる。そのため、コスト的に不利になる。また、他成分とのバランスを損なうことになる。
【0013】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤では、上記不飽和脂肪酸は、常温で液体であることが望ましい。
不飽和脂肪酸が、常温で液体であると、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を製造する際に容易に混合することができる。また、不飽和脂肪酸は、アルカリ剤と中和反応し塩を形成するが、不飽和脂肪酸が常温で液体であると、この中和反応が容易に進む。そのため、効率よくフロアーポリッシュ用剥離剤を製造することができる。
【0014】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤では、上記不飽和脂肪酸は、オレイン酸及び/又はリノール酸であることが望ましい。
不飽和脂肪酸がこれらの種類であると、上記のベンジルアルコールを可溶化する効果をより好適に得ることができる。
【0015】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤では、上記アルカリ剤は、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
アルカリ剤がこれらの種類であると、フロアーポリッシュ用剥離剤及び希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のpHを好適な値にしやすくなる。
【0016】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらにグリコール系溶剤を含むことが望ましい。
フロアーポリッシュ用剥離剤にグリコール系溶剤が含まれていると、フロアーポリッシュへのフロアーポリッシュ用剥離剤の浸透性が向上する。
【0017】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらにフッ素系界面活性剤を含むことが望ましい。
フロアーポリッシュ用剥離剤にフッ素系界面活性剤が含まれていると、フロアーポリッシュを剥離する効果が向上する。
【0018】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらに消泡剤を含むことが望ましい。
フロアーポリッシュを剥離する際に、泡が発生すると、空気層ができてフロアーポリッシュ用剥離剤とフロアーポリッシュとの接触効率が悪くなり、フロアーポリッシュを剥離する効果が充分に発揮されにくくなる。また、通常、フロアーポリッシュを剥離する際には、フロアーポリッシュ用剥離剤を床面に塗布して一定時間経過した後、モップ、ブラシ、ポリッシャー、自動床洗浄機等を用いて物理的作業によりフロアーポリッシュを剥離する。例えばポリッシャーは、底には回転ブラシが装着されており、ポリッシャーを使用することでフロアーポリッシュ用剥離剤が泡立つことがある。泡が発生すると、廃液の回収作業が非効率になり、例えばウェットバキュームで回収した場合、タンク内に泡が溜まりタンクから泡がオーバーフローすることがある。
フロアーポリッシュ用剥離剤に消泡剤が含まれていると、泡の発生を抑制し、好適にフロアーポリッシュを剥離することができる。
【0019】
本発明のフロアーポリッシュの剥離方法は、上記本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法であって、上記フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈して、上記ベンジルアルコールと水とが分離せず不溶物が生じていない溶液である希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を得て、上記希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明のフロアーポリッシュの剥離方法では、上記本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いている。そのため、上記本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤の説明で記載した効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤には、ベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸が含まれている。そのため、フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈した際に、ベンジルアルコールと水とが分離せず、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていない状態となる。
従って、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行う場合、フロアーポリッシュ被膜に均一にベンジルアルコールが接触することになる。すなわち、レベリング性及び濡れ性が優れている。そのため、ベンジルアルコールが接触する場所に斑が生じず、フロアーポリッシュを好適に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図2図2は、実施例2に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図3図3は、実施例25に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図4図4は、比較例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図5図5は、比較例7に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図6図6は、比較例8に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図7図7は、実施例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈し、泡立ち性能試験を行った後の泡立ちの状態を示す写真である。
図8図8は、実施例26に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈し、泡立ち性能試験を行った後の泡立ちの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤及びフロアーポリッシュの剥離方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0024】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコールと、アルカリ剤とを含むフロアーポリッシュ用剥離剤であって、さらにベンジルアルコールを水に可溶化する不飽和脂肪酸を含んでいる。
【0025】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は通常、水で希釈されて使用される。
ベンジルアルコールの水への溶解度は低いので、フロアーポリッシュに不飽和脂肪酸が含まれていない場合、ベンジルアルコールが分離した状態や、ベンジルアルコールが油滴状に水に分散して溶けていない状態となり、不溶物を生じることがある。
このような状態の希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いて、フロアーポリッシュの剥離を行うと、フロアーポリッシュ被膜にベンジルアルコールと接触する部分と、ベンジルアルコールと接触しない部分とが生じることになる。すなわち、ベンジルアルコールが接触する部分の斑が生じる。このような斑が生じた場合、ベンジルアルコールが接触しない部分ではフロアーポリッシュの剥離が不充分となる。
一方、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤には、不飽和脂肪酸が含まれている。これにより、ベンジルアルコールが可溶化され、ベンジルアルコールと水とが分離せず、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていない状態となる。希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行う場合、フロアーポリッシュ被膜に均一にベンジルアルコールが接触することになる。すなわち、ベンジルアルコールが接触する部分に斑が生じないため好適にフロアーポリッシュを剥離することができる。
【0026】
以下の理由により、不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸よりもベンジルアルコールを可溶化する能力が高いと推察される。
すなわち、不飽和脂肪酸は分子内に二重結合を有する。この二重結合と、ベンジルアルコール中の芳香環との親和性が高いためベンジルアルコールが可溶化しやすくなると推察される。
なお、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤には、飽和脂肪酸が含まれないことが望ましい。
【0027】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるベンジルアルコールの割合としては、特に限定されないが、20〜70重量%であることが望ましく、30〜60重量%であることがより望ましい。
ベンジルアルコールの割合が、20重量%未満であると、ベンジルアルコールによるフロアーポリッシュの剥離効果が得られにくくなる。
ベンジルアルコールの割合が、70重量%を超えると、ベンジルアルコールが水に可溶化しにくくなり、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じやすくなる。
また、他成分とのバランスを損なうことになり所望の性能を得ることができなくなる。
【0028】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれる不飽和脂肪酸の割合としては、特に限定されないが、0.1〜8重量%であることが望ましく、0.5〜5重量%であることがより望ましい。
不飽和脂肪酸の割合が、0.1重量%未満であると、ベンジルアルコールを可溶化する効果を得られにくくなる。
不飽和脂肪酸の割合が、8重量%を超えると、ベンジルアルコールを可溶化する効果が向上しにくくなる。そのため、コスト的に不利になる。また、他成分とのバランスを損なうことになる。
【0029】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤では、ベンジルアルコールと、不飽和脂肪酸との重量比が、ベンジルアルコール:不飽和脂肪酸=3:1〜90:1であることが望ましく、9:1〜60:1であることがより望ましく、18:1〜40:1であることがさらに望ましい。
不飽和脂肪酸の重量が、ベンジルアルコール重量の1/90未満となると、ベンジルアルコールが水に可溶化する効果を充分に得られにくくなり、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤にベンジルアルコールの油滴が生じやすくなる。このようなフロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュを剥離しようとすると、フロアーポリッシュと、ベンジルアルコールとが接触する部分に斑が生じやすくなり、好適にフロアーポリッシュを剥離しにくくなる。
不飽和脂肪酸の重量が、ベンジルアルコール重量の1/3を超えると、ベンジルアルコールを可溶化する効果が向上しにくくなる。そのため、コスト的に不利になる。また、他成分とのバランスを損なうことになる。
【0030】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれる不飽和脂肪酸の炭素数は、特に限定されないが、14〜22であることが望ましく、16〜18であることがより望ましい。
不飽和脂肪酸の炭素数が上記範囲にあると、好適にベンジルアルコールを可溶化することができる。
【0031】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれる不飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、常温で液体であることが望ましい。
また、不飽和脂肪酸が、常温で液体であると、製造の際に容易に混合することができる。また、不飽和脂肪酸は、アルカリ剤と中和反応し塩を形成するが、不飽和脂肪酸が常温で液体であると、この中和反応が容易に進む。そのため、効率よくフロアーポリッシュ用剥離剤を製造することができる。
常温で液体である不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸等があげられる。これらの中では、オレイン酸及び/又はリノール酸であることが望ましい。
これら種類の不飽和脂肪酸であると、ベンジルアルコールを可溶化する効果をさらに好適に得ることができる。
これら種類の不飽和脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるアルカリ剤の割合としては、特に限定されないが、10〜70重量%であることが望ましく、15〜65重量%であることがより望ましく、20〜60重量%であることがさらに望ましく、20〜55重量%であることがよりさらに望ましい。
アルカリ剤の割合が、10重量%未満であると、充分にフロアーポリッシュを形成するポリマーを分解しにくくなる。
アルカリ剤の割合が、70重量%を超えると、充分にフロアーポリッシュを形成するポリマーを分解する効果が向上しにくくなる。そのため、コスト的に不利になる。また、他成分とのバランスを損なうことになる。
【0033】
アルカリ剤の種類としては、特に限定されないが、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
アルカリ剤がこれらの種類であると、フロアーポリッシュ用剥離剤のpH及び希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のpHを好適な値にしやすくなる。
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤のpHは、8〜14であることが望ましく、10〜13.5であることがより望ましい。
上記種類のアルカリ剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤には、さらにグリコール系溶剤が含まれていてもよい。
フロアーポリッシュ用剥離剤にグリコール系溶剤が含まれていると、フロアーポリッシュへのフロアーポリッシュ用剥離剤の浸透性が向上する。そのため、フロアーポリッシュが剥離しやすくなる。
【0035】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるグリコール系溶剤の割合としては、特に限定されないが、2〜20重量%であることが望ましく、5〜15重量%であることがより望ましい。
グリコール系溶剤の割合が、2重量%未満であると、フロアーポリッシュ用剥離剤が浸透する効果が得られにくくなる。
グリコール系溶剤の割合が、20重量%を超えると、フロアーポリッシュ用剥離剤の浸透性が向上する効果が得られにくくなる。さらに希釈液が可溶化しにくくなる。また、コスト的に不利になる。また、他成分とのバランスを損なうことになる。
【0036】
グリコール系溶剤の種類としては、特に限定されないが、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等があげられる。
これら種類のグリコール系溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらにフッ素系界面活性剤を含むことが望ましい。
フロアーポリッシュ用剥離剤にフッ素系界面活性剤が含まれていると、フロアーポリッシュを剥離する効果が向上する。
【0038】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるフッ素界面活性剤の割合としては、特に限定されないが、0.01〜1.0重量%であることが望ましく、0.1〜0.6重量%であることがより望ましい。
フッ素系界面活性剤の割合が、0.01重量%未満であると、フロアーポリッシュを剥離する効果を得られにくくなる。
フッ素系界面活性剤の割合が、1.0重量%を超えると、フロアーポリッシュを剥離する効果が向上しにくくなる。他成分とのバランスを損なうことになる。また、一般的にフッ素系界面活性剤は高価であり、コスト的に不利になる。
【0039】
フッ素系界面活性剤の種類としては、特に限定されないが、パーフルオロアルキルカルボン酸塩(アニオン性)、パーフルオロトリアルキルアンモニウム塩(カチオン性)、パーフルオロアルキル化合物(両性)、パーフルオロアルキルアミンオキシド(ノニオン性)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(ノニオン性)、パーフルオロアルキル含有ポリマー(ノニオン性)であることが望ましい。また、これらの界面活性剤中のパーフルオロアルキル基は低炭素数であることが望ましい。
これら種類のフッ素系界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらに消泡剤を含むことが望ましい。
フロアーポリッシュを剥離する際に、泡が発生すると、空気層ができてフロアーポリッシュ用剥離剤とフロアーポリッシュとの接触効率が悪くなり、フロアーポリッシュを剥離する効果が充分に発揮されにくくなる。また、通常、フロアーポリッシュを剥離する際には、フロアーポリッシュ用剥離剤を床面に塗布して一定時間経過した後、モップ、ブラシ、ポリッシャー、自動床洗浄機等を用いて物理的作業によりフロアーポリッシュを剥離する。例えばポリッシャーは、底には回転ブラシが装着されており、ポリッシャーを使用することでフロアーポリッシュ用剥離剤が泡立つことがある。泡が発生すると、廃液の回収作業が非効率になり、例えばウェットバキュームで回収した場合、タンク内に泡が溜まりタンクから泡がオーバーフローすることがある。
フロアーポリッシュ用剥離剤に消泡剤が含まれていると、泡の発生を抑制し、好適にフロアーポリッシュを剥離することができる。
【0041】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれる消泡剤の割合としては、特に限定されないが、0.01〜5.0重量%であることが望ましく、0.1〜3.0重量%であることがより望ましい。
消泡剤の割合が、0.01重量%未満であると、泡の発生を抑制する効果を得られにくくなる。その結果、フロアーポリッシュを剥離する際に、泡が発生し、フロアーポリッシュ用剥離剤のフロアーポリッシュを剥離する効果が充分に発揮されにくくなる。
消泡剤の割合が、5.0重量%を超えると、泡の発生を抑制する効果が向上しにくくなり、コスト的に不利になる。
【0042】
消泡剤の種類としては、特に限定されないが、非イオン系界面活性剤、シリコーン系消泡剤、鉱物油であることが望ましい。また、これらの中では非イオン系界面活性剤、シリコーン系消泡剤であることが望ましい。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキレンエーテルがあげられる。シリコーン系消泡剤としては、フッ素変性シリコーンがあげられる。
【0043】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、さらにキレート剤を含むことが望ましい。
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤には、不飽和脂肪酸が含まれている。本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を通常使用する水道水等で所定の濃度まで希釈すると、水道水等に含まれるカルシウムやマグネシウム等の硬度成分と不飽和脂肪酸とが反応し、金属石鹸が生じることがある。このような金属石鹸が生じたとしてもフロアーポリッシュ用剥離剤の剥離性能は、ほとんど変化しない。しかし、金属石鹸が生じると、希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤が濁るため、作業者が肉眼でこのようなフロアーポリッシュ用剥離剤を見た際に、ベンジルアルコールの不溶物が生じているのか、金属石鹸が生じているのかを判別することは困難である。すなわち、希釈したフロアーポリッシュ用剥離剤の外観が良好と言えない状態となる。また、外観の問題のみならず、フロアーポリッシュ用剥離剤が適切に希釈されているかの判断もしにくくなる。
【0044】
フロアーポリッシュ用剥離剤に、キレート剤が含まれていると、キレート剤が水道水等に含まれるカルシウムやマグネシウム等の硬度成分を捉えるため、金属石鹸が生じなくなる。従って、上記の問題を解決することができる。
【0045】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるキレート剤の割合としては、特に限定されないが、0.01〜1.0重量%であることが望ましく、0.1〜0.5重量%であることがより望ましい。
キレート剤の割合が、0.01重量%未満であると、硬度成分を捉える効果が得られにくくなる。その結果、希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤に金属石鹸が発生しやすくなる。
キレート剤の割合が、1.0重量%を超えると、硬度成分を捉える効果が向上しにくくなる。また、コスト的に不利になる。
【0046】
キレート剤の種類としては、特に限定されないが、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、有機酸等があげられる。これらの中では、アミノカルボン酸系キレート剤が望ましい。
上記キレート剤の具体的な例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、メチレンホスホン酸、ホスノブタントリカルボン酸、グルコン酸等があげられる。これらの中では、エチレンジアミン四酢酸が望ましい。
【0047】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、上記成分の他に必要に応じて、染料、香料、防腐剤、漂白剤、腐食抑制剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0048】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は水で希釈され、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤として使用される。
この際の希釈倍率は特に限定されないが、10〜30倍であることが望ましい。
希釈に用いる水の種類としては、特に限定されないが、水道水、軟水、イオン交換水、純水、精製水等を用いることができる。
【0049】
上記希釈フロアーポリッシュ用剥離剤において、ベンジルアルコール、アルカリ剤、不飽和脂肪酸及び水の割合は、特に限定されないが、以下の割合であることが望ましい。
ベンジルアルコール:1.00〜6.00重量%
アルカリ剤:0.67〜5.50重量%
不飽和脂肪酸:0.02〜0.50重量%
水:88.00〜98.31重量%
上記割合であると、好適にフロアーポリッシュを剥離することができる。
【0050】
特に、上記希釈フロアーポリッシュ用剥離剤では、ベンジルアルコールと水との重量比は、ベンジルアルコール:水=1:15〜1:98となることが望ましい。
ベンジルアルコールの重量が水の重量の1/98未満であると、ベンジルアルコールによるフロアーポリッシュの剥離効果が得られにくくなる。
ベンジルアルコールの重量が水の重量の1/15を超えると、ベンジルアルコールが、充分に水に可溶化しにくくなる。また、ベンジルアルコールの濃度が高くなるので、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤が肌等に付着した場合に危険である。
【0051】
上記希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のpHは、特に限定されないが、pH=10〜13.5であることが望ましい。
希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のpHが10未満であると、フロアーポリッシュを形成するポリマーを分解する効果が得られにくくなる。
希釈フロアーポリッシュ用剥離剤のpHが13.5を超えると、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤が肌等に付着した場合に危険である。
【0052】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤の製造方法を説明する。
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコール、アルカリ剤及び不飽和脂肪酸を必須とし、上記の他の各成分を任意に混合することにより得ることができる。
各成分が液体である場合には、上記の各成分を混合撹拌することにより製造することができる。各成分に固体が含まれる場合には、その固体成分をまず水に溶解後、他の各成分を添加し撹拌混合することにより製造することができる。各成分の添加順序、溶解順序、必要に応じて行われる加熱、冷却等は特に限定されず、通常の方法を用いることができる。
【0053】
次に、本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法について説明する。
【0054】
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法は、上記本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法であって、フロアーポリッシュ用剥離剤を水により所定の倍率に希釈して、ベンジルアルコールと水とが分離せず不溶物が生じていない溶液である希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を得て、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を用いてフロアーポリッシュの剥離を行う方法である。
なお、以下の説明においては、本発明のフロアーポリッシュの剥離方法の効果の理解を容易にするためにベンジルアルコールと水とフロアーポリッシュとの関係に焦点を当てて説明する。しなしながら、本発明のフロアーポリッシュの剥離方法に用いられるフロアーポリッシュ用剥離剤に含まれるアルカリ剤もフロアーポリッシュを剥離する効果を有している。
【0055】
(a)フロアーポリッシュ用剥離剤の希釈
まず、フロアーポリッシュ用剥離剤を水で希釈する。
希釈倍率は特に限定されないが、10〜30倍であることが望ましい。希釈用の水の種類については、既に述べているのでここでの説明は省略する。
水で希釈されたフロアーポリッシュ用剥離剤は、モップ等でかき混ぜることにより、ベンジルアルコールと水とが分離せず不溶物が生じていない溶液である希釈フロアーポリッシュ用剥離剤となる。
【0056】
(b)フロアーポリッシュの剥離
次に、上記工程を経て得られた希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を、フロアーポリッシュで被覆された床面に塗布する。
塗布する方法としては特に限定されず、モップ、ブラシ、自動床用洗浄機等を用いてもよい。
希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を塗布後、モップ、ブラシ等を用い手作業でフロアーポリッシュを剥離してもよく、ポリッシャー、自動床用洗浄機を用いて機械的にフロアーポリッシュを剥離してもよい。
【0057】
以上の工程を経ることにより、フロアーポリッシュを剥離することができる。
本発明のフロアーポリッシュ用剥離剤を用いたフロアーポリッシュの剥離方法では、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコールと水とが分離せず、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤に不溶物が生じていない状態となっている。そのため、ベンジルアルコールを、フロアーポリッシュ被膜に均一に塗布することができる。すなわち、フロアーポリッシュ被膜に均一にベンジルアルコールが接触することになる。従って、ベンジルアルコールが接触する部分に斑が生じないため、好適にフロアーポリッシュを剥離することができる。
【0058】
上記工程によりフロアーポリッシュを剥離した後、必要に応じて以下の工程を行ってもよい。
【0059】
(c)廃液回収
上記工程の後、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤、剥離されたフロアーポリッシュ、その他のごみ等が含まれた廃液を回収する。回収にはウェットバキュームや、フロアースクイジー等を用いることが望ましい。
【0060】
(d)すすぎ、乾燥工程
上記工程の後、フロアーポリッシュが剥離された床面を水道水等の水を用いてすすぎを行う。すすぎ廃液は、上記廃液回収と同様にウェットバキュームや、フロアースクイジー等を用いて回収することが望ましい。すすぎが終わった床面は、磨き上げた後、乾燥させる。
【0061】
(e)フロアーポリッシュの塗布
上記工程の後、乾燥された床面に、モップ等を用いて、10〜30mL/mの塗布量となるようフロアーポリッシュを塗布し乾燥させる。フロアーポリッシュとしては、従来のものを用いることができる。この工程を2〜6回繰り返し、フロアーポリッシュ被膜を塗り重ねることにより、床面は、光沢を有するようになる。
【実施例】
【0062】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
(フロアーポリッシュ用剥離剤)
(実施例1)〜(実施例29)
表1に示す配合で、ベンジルアルコール(製造元:ライクセス社)、アルカリ剤{モノエタノールアミン(製造元:ダウケミカル社)、モノイソプロパノールアミン(製造元:ダウケミカル社)、又は、水酸化カリウム(製造元:旭硝子(株))}、不飽和脂肪酸、フッ素系界面活性剤(商品名:サーフロンS241、製造元:AGCセイミケミカル(株))、グリコール系溶剤{ジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブチルジグリコール、製造元:日本乳化剤(株))又はエチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル(製造元:丸善石油化学(株))}、キレート剤{エチレンジアミン四酢酸(製造元:アクゾノーベル(株))}、消泡剤{非イオン系界面活性剤(商品名:アデカノールLG−126、製造元:(株)ADEKA)又はシリコーン系消泡剤(商品名:フローレンAO−108、製造元:共栄社化学(株))}、水を混合してフロアーポリッシュ用剥離剤を調整した。
なお、表1における各成分の数値は「重量%」を意味する。
【0064】
【表1】
【0065】
(比較例1)〜(比較例11)
表2に示す配合で、ベンジルアルコール、モノエタノールアミン、飽和脂肪酸、フッ素系界面活性剤(商品名:サーフロンS241、製造元:AGCセイミケミカル(株))、グリコール系溶剤{ジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブチルジグリコール、製造元:日本乳化剤(株))}、水を混合してフロアーポリッシュ用剥離剤を調整した。
なお、カプリル酸以外の飽和脂肪酸は、常温で固体であるので、系中で脂肪酸をアルカリで中和させてから各成分を混合した。
なお、表2における各成分の数値は「重量%」を意味する。
【0066】
【表2】
【0067】
各実施例及び各比較例のフロアーポリッシュ用剥離剤の性能を以下の試験により評価した。
【0068】
(希釈フロアーポリッシュ用剥離剤の安定性試験)
実施例1〜25及び比較例1〜11のフロアーポリッシュ用剥離剤を水道水で10倍に希釈し、希釈直後から5分経過後における希釈フロアーポリッシュ用剥離剤の状態を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
◎:透明であり、不溶物が生じていない。
○:半透明であり、不溶物が生じていない。
×:半透明又は白濁しており、不溶物が生じている。
【0069】
また、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤の安定性試験における希釈フロアーポリッシュ用剥離剤の外観の代表例として、実施例1、2及び25並びに比較例1、7及び8を用いた場合を図1図6に示す。
図1は、実施例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図2は、実施例2に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図3は、実施例25に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図4は、比較例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図5は、比較例7に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
図6は、比較例8に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈した状態を示す写真である。
【0070】
図1に示すように、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた実施例1では、フロアーポリッシュ用剥離剤は、透明であり、ベンジルアルコールと水との分離は生じておらず、不溶物が生じていなかった。すなわちベンジルアルコールが可溶化されていた。なお、実施例1ではリノール酸と、水に含まれるカルシウムやマグネシウム等の硬度成分とが反応し、金属石鹸が生じると考えられる。一般的に、不飽和脂肪酸の金属石鹸は水に不溶であるが、リノール酸の金属石鹸は、水に溶解するので、フロアーポリッシュ用剥離剤は透明になったと考えられる。
図2に示すように、不飽和脂肪酸としてオレイン酸を用いた実施例2では、フロアーポリッシュ用剥離剤は、半透明であるが、ベンジルアルコールと水との分離は生じておらず、不溶物が生じていなかった。すなわちベンジルアルコールが可溶化されていた。また、半透明である原因としては、オレイン酸と、水に含まれていたカルシウムやマグネシウム等の硬度成分とが反応し、オレイン酸の金属石鹸が生じたためと考えられる。
図3に示すように、不飽和脂肪酸としてオレイン酸を用い、さらに、キレート剤を用いた実施例25では、フロアーポリッシュ用剥離剤は、透明であり、ベンジルアルコールと水との分離は生じておらず、不溶物が生じていなかった。すなわちベンジルアルコールが可溶化されていた。また、キレート剤により水に含まれるカルシウムやマグネシウム等の硬度成分が捉えられたために、実施例2のようにオレイン酸の金属石鹸が生じず、フロアーポリッシュ用剥離剤は透明になったと考えられる。
【0071】
一方、図4図6に示すように、不飽和脂肪酸に換えて飽和脂肪酸であるカプリル酸、ステアリン酸又はイソステアリン酸を用いた比較例1、比較例7及び比較例8では、フロアーポリッシュ用剥離剤は、不透明であり、ベンジルアルコールと水との分離は生じていないものの、不溶物が生じていた。
【0072】
(濡れ性試験)
(1)テストパネルの調製
タイル(製造元:株式会社タジマ)に、フロアーポリッシュ(商品名:スイショウ・グレイス、製造元:スイショウ株式会社)を1回あたり15±2mL/mにて1回塗り重ねた後2〜3時間以上空けて計17回塗り重ねたものをテストパネルとした。
(2)濡れ性試験
実施例1〜25及び比較例1〜11のフロアーポリッシュ用剥離剤を水道水で10倍に希釈し、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤とした。各希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を約200mL/mの割合で、上記テストパネルに塗布し5分間室温で静置した。その後、目視により、テストパネル上でベンジルアルコールが分離していることで液が凝集をしてヨレが表れているかを確認した。
(3)評価方法
濡れ性の評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
○:油滴状の不溶物が見られず、液が均一に濡れ広がっている。
△:一部に油滴状の不溶物が生じ、表面に小さなクレーターが生じてハジキが確認されている。
×:かなりの油滴状の不溶物が認められ凝集し、ヨレが生じて液が偏っている。
【0073】
(剥離性能試験)
(1)テストパネルの調製
上記濡れ性試験でのテストパネルの調製と同様に、テストパネルを調製した。
(2)剥離性能試験
実施例1〜25及び比較例1〜11のフロアーポリッシュ用剥離剤を水道水で10倍に希釈し、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤とした。各希釈フロアーポリッシュ用剥離剤を200mL/mの割合で、上記テストパネルに塗布し5分間室温で静置した。その後、スクレーバーで一定の力でテストパネル表面を均一にこすった。その後、洗浄面を水道水ですすぎ、乾燥させ、テストパネルを目視により観察した。
(3)評価方法
剥離性能試験の評価方法は以下の通りである。結果を表3に示す。
○:完全にフロアーポリッシュが剥離されていた。
△:一部のフロアーポリッシュが剥離されておらず、テストパネル上に残ったままであった。
×:かなりのフロアーポリッシュが剥離されておらず、テストパネル上に残ったままであった。
【0074】
【表3】
【0075】
(泡立ち性能試験)
(1)実施例1〜4及び実施例26〜29のフロアーポリッシュ用剥離剤を水道水で10倍に希釈し、希釈フロアーポリッシュ用剥離剤とした。各希釈フロアーポリッシュ用剥離剤40mLを活栓付の200mLメスシリンダーに静かに注ぎ栓をした。その後、メスシリンダーを毎秒1往復の速さで、鉛直方向に30cm±10cmの範囲で、上下に10往復振とうさせた。その後、栓を外して静置し、30秒経過後に泡の体積を目盛から測定した。
(2)評価方法
泡立ち性能試験の評価方法は以下の通りである。結果を表4に示す。
◎:泡の体積が20mL未満
○:泡の体積が20mL以上〜40mL未満
△:泡の体積が40mL以上
また、泡立ち性能試験における希釈フロアーポリッシュ用剥離剤の外観の代表例として、実施例1及び実施例26の泡立ち性能試験を行った後の泡立ちの状態を示す写真を図7及び図8にそれぞれ示す。
図7は、実施例1に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈し、泡立ち性能試験を行った後の泡立ちの状態を示す写真である。
図8は、実施例26に係るフロアーポリッシュ用剥離剤を水で10倍に希釈し、泡立ち性能試験を行った後の泡立ちの状態を示す写真である。
【0076】
【表4】
【0077】
表3に示すように、実施例1〜実施例25のフロアーポリッシュ用剥離剤は、希釈液の安定性試験、濡れ性試験、及び、剥離性能試験においていずれも良好であった。特に、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた実施例1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23、並びに、不飽和脂肪酸としてオレイン酸を用い、さらにキレート剤を用いた実施例25では、希釈液の安定性試験が非常に優れていた。
また、表4に示すように、消泡剤を用いた実施例26〜29のフロアーポリッシュ用剥離剤は、泡立ち性能試験が非常に優れていた。
一方、比較例1〜10のフロアーポリッシュ用剥離剤は、希釈液の安定性試験、濡れ性試験、及び、剥離性能試験において良好ではなかった。また、比較例11のフロアーポリッシュ用剥離剤は、ベンジルアルコールが含まれていないので、希釈液の安定性試験においては良好であったものの、濡れ性試験において良好でなく、剥離性能試験において著しく劣っていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8