(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-127551(P2015-127551A)
(43)【公開日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】整流装置及びそれを用いた貯液装置
(51)【国際特許分類】
F15D 1/02 20060101AFI20150612BHJP
F24H 9/00 20060101ALN20150612BHJP
【FI】
F15D1/02 Z
F24H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-272597(P2013-272597)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】390040958
【氏名又は名称】みのる化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】大神 雅史
【テーマコード(参考)】
3L036
【Fターム(参考)】
3L036AB02
3L036AB05
(57)【要約】
【課題】 タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができる整流器、及び、それを用いた貯液装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 整流器2は、固定部20と中棒部30と傘部40とを有し、傘部40は、中棒部30の長手方向に垂直な方向に沿って中棒部30に向かって加えられる力により中棒部30の他方の端部32を基準として一方の端部31側に閉じる第1閉状態と、中棒部30に向かって加えられる力が解放されることで、中棒部30の長手方向に沿った断面において、中棒部30と傘部40とが鋭角となるように開く開状態と、中棒部30の一方の端部31から他方の端部32に向かう方向の力が傘部40に加えられることで、他方の端部32を基準として一方の端部31側と反対側に閉じる第2閉状態と、に変形する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの注水部から注水される液体を整流する整流器であって、
前記注水部に固定される固定部と、
一方の端部が前記固定部に接続されると共に前記固定部が前記注水部に固定された状態で他方の端部が前記タンク内に位置する中棒部と、
前記中棒部の前記他方の端部に係止される傘部と、
を有し、
前記傘部は、
前記中棒部に向かって加えられる力により前記他方の端部を基準として前記一方の端部側に閉じる第1閉状態と、
前記中棒部に向かって加えられる力が解放されることで、前記中棒部と前記傘部とが鋭角となるように開く開状態と、
前記中棒部の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の力が前記傘部に加えられることで、前記他方の端部を基準として前記一方の端部側と反対側に閉じる第2閉状態と、
に変形する
ことを特徴とする整流器。
【請求項2】
前記傘部は樹脂からなり、
前記傘部は前記樹脂の弾性力により第1閉状態から開状態とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の整流器。
【請求項3】
前記傘部には、前記他方の端部に係止される部位を中心として、放射状に広がると共に山折と谷折とが交互に位置する複数の折り目が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の整流器。
【請求項4】
前記傘部が前記タンク内で開状態とされた状態で前記中棒部を所定の力で引き抜くことにより、前記傘部は前記開状態から第2閉状態とされる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項5】
注水部を有するタンクと、
前記注水部から注水される液体を整流する整流器と、
を備え、
前記整流器は、前記注水部に固定される固定部と、一方の端部が前記固定部に接続されると共に前記固定部が前記注水部に固定された状態で他方の端部が前記タンク内に位置する中棒部と、前記中棒部の前記他方の端部に係止される傘部と、を有し、
前記傘部は、
前記中棒部に向かって加えられる力により前記他方の端部を基準として前記一方の端部側に閉じる第1閉状態と、
前記中棒部に向かって加えられる力が解放されることで、前記中棒部と前記傘部とが鋭角となるように開く開状態と、
前記中棒部の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の力が前記傘部に加えられることで、前記他方の端部を基準として前記一方の端部側と反対側に閉じる第2閉状態と、
に変形する
ことを特徴とする貯液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができる整流器、及び、それを用いた貯液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスや電気等を用いて沸かした湯を貯めるタンクを備える貯湯装置や、車両用蓄熱システムに用いられ高温の流体を貯めるタンクを備える貯液装置が知られている。これらのタンク内には、注水口から注水される水等の液体とタンク内に貯めている液体とが混ざり合うことを抑制するために、タンク内に注水される液体の勢いを抑えるための整流板が設けられることがある。
【0003】
しかし、例えば、タンクが樹脂から成りブロー成形によって形成される場合には、整流板をタンク内に設けることが困難である。また、既存のタンク内に整流板を設けたい場合がある。これらの場合にタンクを解体せずに整流板を設けたいという要請がある。
【0004】
下記特許文献1には、完成したタンク内に後から設けることができる整流板が記載されている。この整流板は、傘状の形状をしており、傘の骨に相当する傘骨体と、傘の小間(布部分)に相当する整流板部と、傘の中棒(柄)に相当するセンターパイプとを備える。そして、整流板部を傘が畳まれた様な状態に畳んでタンク内に挿入する。整流板部が挿入された後において、タンク内にて傘が広げられた様な状態に整流板部を広げる。タンク内において整流板部が広げられることで、タンク内に注水される液体と注水の前からタンク内に入っている液体とが混ざることを整流板部が抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−47352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、貯液装置のタンクは内部洗浄等のメンテナンスを施される場合がある。このため、上記のようにタンクの完成後にタンク内に整流板を設置できるのみならず、整流板をタンク内から取り外したいという要請がある。しかし、特許文献1に記載の整流板部は、畳んだ状態から広げられた状態にされてタンク内に設置されると、再び畳むことができず、上記要請に応えることができない。
【0007】
そこで、本発明は、タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができる整流器、及び、それを用いた貯液装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、タンクの注水部から注水される液体を整流する整流器であって、前記注水部に固定される固定部と、一方の端部が前記固定部に接続されると共に前記固定部が前記注水部に固定された状態で他方の端部が前記タンク内に位置する中棒部と、前記中棒部の前記他方の端部に係止される傘部と、を有し、前記傘部は、前記中棒部に向かって加えられる力により前記他方の端部を基準として前記一方の端部側に閉じる第1閉状態と、前記中棒部に向かって加えられる力が解放されることで、前記中棒部と前記傘部とが鋭角となるように開く開状態と、前記中棒部の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の力が前記傘部に加えられることで、前記他方の端部を基準として前記一方の端部側と反対側に閉じる第2閉状態と、に変形することを特徴とするものである。
【0009】
このような整流器によれば、傘部に第1閉状態となるような力を加えて、傘部が第1閉状態とされた状態で、タンクに設けられる注水部の注水口を通じて、中棒部の他方の端部側からタンク内に傘部を挿入することができる。その後、当該力が加えられなくなることで、傘部が開状態とされる。傘部が開状態とされ固定部が注水部に固定されることで、タンクの注水部から注水される液体の勢いを傘部が抑えることができる。こうして傘部は整流板として働くことができる。また、傘部に第2状態とされる力が加えられることで、傘部は中棒部の他方の端部を基準として第1閉状態と反対側に閉じる第2閉状態とされ、タンク内から整流器を抜き取ることができる。このとき傘部は中棒部の他方の端部に係止される部位側からタンク外に抜き取られる。従って、傘部の縁がタンクの内面に引っ掛かり整流器がタンク内から取り外せなくなることを防止することができる。このようにして、本発明の整流器によれば、タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができるのである。
【0010】
このように前記傘部が前記第1閉状態から前記開状態とされるためには、前記傘部は樹脂からなり、前記傘部は前記樹脂の弾性力により第1閉状態から開状態とされることが好ましい。
【0011】
このように弾性力で傘部が開くことで、特別な機構を用いずとも容易に傘部を第1閉状態から開状態にすることができる。なお、傘部がこのような構成とされることで、傘部が開状態から第2閉状態に変形する際に、傘部は弾性変形するので、傘部が破損することを抑制することができる。
【0012】
また、前記傘部には、前記他方の端部に係止される部位を中心として、放射状に広がると共に山折と谷折とが交互に位置する複数の折り目が形成されることが好ましい。
【0013】
このような複数の折り目が形成されることで、容易に第1閉状態、第2閉状態とすることができる。また、タンク内で開状態において注水口から水流圧を受ける場合であっても、折り目により変形することを抑制することができる。
【0014】
また、前記傘部が前記タンク内で開状態とされた状態で前記中棒部を所定の力で引き抜くことにより、前記傘部は前記開状態から第2閉状態とされることが好ましい。
【0015】
傘部が開状態とされた整流器を引き抜こうとすることで、傘部の縁がタンク内部に引っ掛かり、傘部には、固定部から傘係止部に向かう方向の力がかかる。従って、傘部は開状態から第2閉状態とされる。このように中棒部を引き抜くだけで整流器の取り外しを行うことができるので、容易に整流器の取り外しを行うことができる。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明の貯液装置は、注水部を有するタンクと、前記注水部から注水される液体を整流する整流器と、を備え、前記整流器は、前記注水部に固定される固定部と、一方の端部が前記固定部に接続されると共に前記固定部が前記注水部に固定された状態で他方の端部が前記タンク内に位置する中棒部と、前記中棒部の前記他方の端部に係止される傘部と、を有し、前記傘部は、前記中棒部に向かって加えられる力により前記他方の端部を基準として前記一方の端部側に閉じる第1閉状態と、前記中棒部に向かって加えられる力が解放されることで、前記中棒部と前記傘部とが鋭角となるように開く開状態と、前記中棒部の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の力が前記傘部に加えられることで、前記他方の端部を基準として前記一方の端部側と反対側に閉じる第2閉状態と、に変形することを特徴とするものである。
【0017】
このような貯液装置は、タンクを解体することなく、整流器の設置及び取り外しをすることができるので、タンク内部の清掃等のメンテナンス性に優れている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができる整流器、及び、それを用いた貯液装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯液装置を示す図である。
【
図2】タンクに設置された整流器の様子を示す図である。
【
図3】下部注水部からタンク本体内に注水を行う場合の水流を示す図である。
【
図4】整流器をタンクに設置する途中の様子を示す図である。
【
図5】整流器をタンクから取り外す途中の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る整流器、及び、それを用いた貯液装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールと以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る貯液装置を示す図である。
図1に示すように、貯液装置100は、タンク1と整流器2とを主な構成として備える。本実施形態の貯液装置100は、例えば、貯湯システムに用いられる貯湯装置であり、タンク1内に熱源により沸かした湯水を貯めるものである。
【0022】
タンク1は、タンク本体11と、タンク本体11の下部に設けられる下部注水部12と、タンク本体11の上部に設けられる上部注水部13とを主な構成として有する。タンク本体11は、縦長の形状をしており、水平方向の断面の形状が円形とされる。下部注水部12は、タンク本体11内に短い管が接続された形状とされ、この管の貫通孔が注水口とされる。そして下部注水部12は、タンク本体11内に当該注水口から冷水を注水したり、当該冷水をタンク本体11外に出水するための部位とされる。また、上部注水部13は、下部注水部12と同様にタンク本体11内に短い管が接続された形状とされ、この管の貫通孔が注水口とされる。そして、上部注水部13は、タンク本体11内に湯水を注水したり、当該湯水をタンク本体11外に出水するための部位とされる。
【0023】
また、本実施形態では、タンク1は多層の樹脂から成り、タンク本体11及び下部注水部12及び上部注水部13がブロー成形により一体に形成されている。例えば、タンク1は、3層の樹脂から成り、内層がポリフェニレンエーテル系樹脂から成り、中間層がポリアミド樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂から成り、外層がポリアミド樹脂から成る。
【0024】
また、タンク1の下部注水部12には整流器2が固定され、整流器2がタンク1内に位置している。
図2は、タンク1に設置された整流器の様子を示す図である。
図2に示すように整流器2は、固定部20と中棒部30と傘部40とを主な構成として有する。
【0025】
固定部20は、本実施形態では、板状の部材から成り、三角形状の部位21と、三角形状の部位21に接続される四角形状の部位22とを有する。三角形状の部位21は、一つの辺が四角形状の部位22の一つの辺に接続されている。四角形状の部位22の三角形状の部位21に接続される辺の長さは、接続される三角形状の部位21の辺の長さよりも長い。従って、固定部20には、四角形状の部位22が三角形状の部位21から突出する突出部23が形成されている。
【0026】
中棒部30は、棒状の部位であり、一方の端部31が固定部20に接続されている。具体的には、固定部20の三角形状の部位21における四角形状の部位22と接続される辺と対向する頂点と、中棒部30の一方の端部31とが接続されている。中棒部30の直径は、固定部20の厚みと略同等とされる。また、中棒部30の他方の端部32は、中棒部30の他の部分よりも直径が大きく形成されている。他方の端部32には、他方の端部32の端面から中棒部30の長手方向に沿って所定の長さ孔が開けられており、当該孔に係止部材33が嵌入されている。この係止部材33は、一度中棒部30の孔内に嵌入されると抜けない構成とされている。
【0027】
傘部40は、弾性を有する樹脂製の板材から構成される。本実施形態では、正多角形の樹脂製の板材から形成されている。具体的には、当該正多角形とされる樹脂製の板材の中心41から放射状に複数の折り目45が形成されており、傘部40のそれぞれの頂点(正多角形のそれぞれの頂点)と中心41とを結ぶ折り目が山折45mとされ、傘部40のそれぞれの辺(正多角形のそれぞれの辺)の中点と中心41とを結ぶ折り目が谷折45vとされている。従って、山折45mと谷折45vとは交互に形成されている。そして、傘部40は、中棒部30の他方の端部側32側から中棒部30に被さるように配置され、係止部材33により傘部40の中心41が中棒部30の一方の端部32に係止されている。その結果、
図2に示すように、谷折45vとされる部位が山折45mとされる部位よりも中棒部30の近くに配置され、傘部40に何ら力が加えられない状況で、中棒部30の長手方向に沿った断面において、中棒部30と傘部40とが鋭角となるように開く開状態とされる。
【0028】
また、傘部40は、中棒部30の長手方向に垂直な方向に沿って中棒部に向かって力が加えられると、それぞれの折り目が更に折られる状態となり、中棒部30を中心にして畳まれる。つまり、このような力が加えられることで、中棒部30の他方の端部32を基準として一方の端部31側に閉じる第1閉状態とされる。また、傘部40は、中棒部30の一方の端部31から他方の端部32に向かう方向の力が加えられると、弾性変形をして、一旦最大限に広げられて、更に、上記の第1閉状態と反対側に畳まれる。すなわち、傘部40は、中棒部30の他方の端部32を基準として一方の端部31側と反対側に閉じる第2閉状態とされる。
【0029】
傘部40がこのような変形をするには、上記弾性を有する樹脂が、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、酢酸ビニル(EVA)、エチルビニルエーテル(EVE)、塩化ビニル(PVC)、ポリブテン1(PB)、ポリビニルアルコール(PVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーの何れかであれば良い。特に当該樹脂がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリブテン1(PB)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーであることが、弾性性能に優れるため、傘部40が閉状態や開状態とされる復元性能に優れる観点から好ましい。
【0030】
このような整流器2は、次の様にタンク1に固定されている。
図2に示すようにタンク1の下部注水部12には、管状のノズルジョイント50が接続されている。ノズルジョイント50には、管の孔の方向と垂直な方向に切り欠き51が形成されており、この切り欠き51に整流器2の固定部20における突出部23が嵌め込まれている。そしてノズルジョイント50の一部が、タンク1の下部注水部12の注水口12H内に挿入されて、ノズルジョイント50がクイックファスナー54により下部注水部12に固定されている。なお、この状態において、ノズルジョイント50と注水口12Hの内壁との間には、Oリング53が介在してシールが施されている。こうして、固定部20は、ノズルジョイント50を介して下部注水部12に固定されている。
【0031】
上記のように本実施形態では固定部20が板状であるため、固定部20が下部注水部12に固定された状態で、ノズルジョイント50の貫通孔は固定部20により塞がれず水が十分に流れる隙間が形成されている。またこの状態において、整流器2の中棒部30は、下部注水部12のタンク本体11内に向かう注水口12Hの略中心に位置して、注水口12Hの開口方向に延在するようにして、下部注水部12からタンク本体11内にわたる位置に固定される。こうして、中棒部30の他方の端部32はタンク本体11内に位置する。この状態において、傘部40はタンク本体11内に位置し、上記のように開状態とされている。
【0032】
このような貯液装置100への下部注水部12からの注水は次のように行われる。
図3は、下部注水部12からタンク本体11内に注水を行う場合の水流を示す図である。ノズルジョイント50に接続される図示せぬ冷水管から水がノズルジョイント50に流れると、ノズルジョイント50の貫通孔内における固定部20とノズルジョイント50の内壁との間から水が流れる。流れた水は下部注水部12の注水口12Hからタンク本体11内に流れる。このとき、
図3に示すように、中棒部30が上記のように延在するため、中棒部30は、下部注水部12からタンク本体11内に流れる水の流れの略中心に位置する。そして、流れた水は傘部40により流れの方向が変えられて、水流の下部注水部12からタンク本体11内に向かう方向の勢いが抑制される。特に傘部40は、上記のように、中棒部30の長手方向に沿った断面において、中棒部30と傘部40とが鋭角となるように開いているため、傘部40とタンク本体11の壁面との間で、水流が渦を巻くように流れ、その一部が傘部40の縁とタンク本体11の壁面との隙間から傘部40よりも上方に流れる。こうして傘部40により、下部注水部12から流れる水の勢いが抑制されるのである。
【0033】
次に整流器2がタンク1に設置する様子について説明する。
図4は、整流器2をタンク1に設置する途中の様子を示す図である。整流器2をタンク1に設置する場合、まず、整流器2の固定部20をノズルジョイント50に固定する。そして、中棒部30の長手方向に垂直な方向に沿って中棒部に向かう力を傘部40に加えて、傘部40を第1閉状態とする。次に、図中矢印で示すように、第1閉状態とされた傘部40を中棒部30の他方の端部32側から下部注水部12の注水口12Hに挿入する。傘部40が注水口12Hにある程度挿入されると、注水口12Hの内壁により、傘部40が広がることが防止されるため、傘部40を閉状態をする力を加えなくとも良い。この状態が
図4に示す状態である。或いは、傘部40が開状態のまま、傘部40を中棒部30の他方の端部32側から下部注水部12の注水口12Hに挿入しようとすれば、注水口12Hの内壁に傘部40が当接して、当該内壁から傘部40に傘部40が第1閉状態となる力が加えられる。従って、この場合にも傘部40は第1閉状態となり、
図4に示す状態となる。次に、
図4に示す状態から、ノズルジョイント50を注水口12H内に押し込むと傘部40が完全にタンク本体11内に押し込まれる。傘部40がタンク本体11内に位置すると、傘部40が下部注水部12から離間するので、傘部40が第1閉状態となる力が加えられなくなる。そして、傘部40は自身の弾性力により開状態となる。その後、クイックファスナー54を用いてノズルジョイント50を下部注水部12に固定して、
図2に示すように整流器2がタンク1に設置される。
【0034】
次に整流器2がタンク1から取り外される様子について説明する。
図5は、整流器2をタンク1から取り外す途中の様子を示す図である。整流器2をタンク1から取り外す場合、まず、クイックファスナー54を取り外してノズルジョイント50の下部注水部12への固定を解放する。次にノズルジョイント50を下部注水部12から引き抜き、ノズルジョイント50を下部注水部12から離れる方向に移動する。整流器2はノズルジョイント50に固定されているため、ノズルジョイント50の移動により中棒部30が下部注水部12の注水口12Hから引き抜かれるように移動し、傘部40も注水口12Hに向かって移動する。このとき傘部40は開状態であるため、中棒部30の移動により傘部40の縁がタンク本体11の内壁に当接する。更に、ノズルジョイント50が移動すると、タンク本体11の内壁から傘部40の縁に、中棒部30の移動方向と逆方向の力が加えられる。この力は、中棒部30の一方の端部31から他方の端部32に向かう方向の力である。この力により、傘部40は、一旦最大限に広がり、その後、上記第1閉状態と反対側に閉じる状態をされる。更に、ノズルジョイント50を移動させると、下部注水部12の注水口12Hの縁に傘部40が当接して、当該縁から中棒部30の一方の端部31から他方の端部32に向かう方向の力が加えられる。そして、第2閉状態とされる。この状態が
図5に示す状態である。この状態まで進むと傘部40には、中棒部30の長手方向に垂直な方向に沿って中棒部30に向かう力も加えられる。そして更にノズルジョイント50を移動させて中棒部30を引き抜くことで、整流器2は、タンク1から取り外される。この整流器2を取り外す過程において、傘部40は開状態から第2閉状態に弾性変形をするため、損傷することが抑制されている。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の整流器2は、傘部40が、中棒部30の長手方向に垂直な方向に沿って中棒部30に向かって加えられる力により他方の端部32を基準として一方の端部31側に閉じる第1閉状態と、中棒部30に向かって加えられる力が解放されることで、中棒部30の長手方向に沿った断面において、中棒部30と傘部40とが鋭角となるように開く開状態と、中棒部30の一方の端部31から他方の端部32に向かう方向の力が傘部40に加えられることで、他方の端部32を基準として一方の端部31側と反対側に閉じる第2閉状態と、に変形する。従って、傘部40が第1閉状態とされた状態で、タンク1に設けられる下部注水部12の注水口12Hを通じて、中棒部30の他方の端部32側からタンク本体11内に傘部40を挿入することができ、整流器2をタンク1に設置することができる。また、中棒部30を下部注水部12の注水口12Hから引き抜くことで、傘部40を第2閉状態とすることができ、タンク本体11内から傘部40を抜き取ることができ、整流器2をタンク1から取り外すことができる。
【0036】
従って、このような整流器2を用いる貯液装置100はメンテナンスが容易である。
【0037】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0038】
例えば、上記実施形態では、傘部40は、樹脂の弾性変形により、第1閉状態から開状態に変形し、更に、第2閉状態に変形するものとした。しかし本発明は、このような形態に限らず、例えば、傘部40が弾性変形しない部材から構成されても良い。例えば、傘部が、複数の板材から構成され、それぞれの板材が互いにヒンジで結合されて、
図2に示すような形状とされても良い。このとき、例えば、ばねにより第1閉状態から開状態に変形することとしても良い。
【0039】
また、傘部40が上記実施形態のように樹脂製の板材から成る場合であっても、必ずしも折り目が形成されていなくても良く、また、樹脂製の板材が正多角形とされていなくても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、固定部20がノズルジョイント50を介して下部注水部12に固定されたが、固定部20が直接下部注水部12に固定されても良い。従って、上記実施形態の固定部の形状は一例にすぎず、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、タンクを解体することなく設置及び取り外しをすることができる整流器、及び、それを用いた貯液装置が提供され、貯湯システムや水以外の液体を貯液するシステムの分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・タンク
2・・・整流器
11・・・タンク本体
12・・・下部注水部
13・・・上部注水部
20・・・固定部
30・・・中棒部
40・・・傘部
50・・・ノズルジョイント
100・・・貯液装置