【解決手段】免震機能付防振装置10は、対象物の振動を防止する防振機構14と、この対象物の防振機構14よりも大きな震動を防止する免震機構16と、を有し、防振機構14は、対象物の垂直方向の振動に対応する空気ばね部60を有し、この空気ばね部60は、免震機構16における対象物の垂直方向の対応を兼ねている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての免震機能付防振装置10の上面図を示す。
図2は、免震機能付防振装置10の側面図を示す。
【0016】
免震機能付防振装置10は、載置台12と、防振機構14と、免震機構16とを有する。
載置台12は、例えば、アルミやスチール、非磁性のステンレス等からなるハニカムベンチにより構成される。載置台12には、微小な距離を測る光学式測長装置等が載置される。
載置台12の下方には、複数(本実施形態においては四つ)の脚部22と、これら脚部22それぞれを相互に固定する固定部24とが配設されている。
脚部22それぞれに、防振機構14が設けられている。
【0017】
次に、防振機構14及び免震機構16の詳細について説明する。
図3は、防振機構14及び免震機構16のストッパー部70の概略図を示す。
図4は、
図3のA−A線図を示す。
【0018】
まず、防振機構14について説明する。
防振機構14は、載置台12及びこれに載置される物体(対象物)の振動を防止する。
防振機構14は、載置台12から垂下するようにして設けられた第一の支持体32を備え、この第一の支持体32は、円筒形状に構成されている。第一の支持体32の上面部32aは、載置台12の下面に固定されている。
第一の支持体32の側壁には、開口部32bが形成されている。
【0019】
第一の支持体32の外側には、この第一の支持体32と接触しないでこれを囲うようにして第二の支持体34が配設されている。第二の支持体34は、円筒形状に構成されており、底面が囲われ上部が開口した形状となっている。
第二の支持体34の内側には、対向する一組の側面を渡るようにして水平支持板34aが設けられており、この水平支持板34aは,第一の支持体32の開口部32bを連通するように配設されている。
【0020】
第二の支持体34の水平支持板34aと第一の支持体32の底面部32cとには、それぞれを遊びをもって貫く(遊貫する)ように軸部材40が配設されている。
【0021】
水平支持板34aの上部には、軸部材40が遊貫するように防振体42aが配設され、この防振体42aの上部には、軸部材40に固定された規制部材44aが配設されている。
防振体42aは、規制部材44aと水平支持板34aとの間で挟まれた構成となっており、規制部材44aによって上方側への移動が規制され、水平支持板34aによって下方側への移動が規制されるようになっている。
【0022】
底面部32cの下部には、軸部材40が遊貫するように防振体42bが配設され、この防振体42bの下部には、軸部材40に固定された規制部材44bが配設されている。
防振体42aは、底面部32cと規制部材44bとの間で挟まれた構成となっており、底面部32cによって上方側への移動が規制され、規制部材44bによって下方側への移動が規制されるようになっている。
【0023】
防振体42a、42bはそれぞれ、例えば積層ゴムであり、弾性体と鋼板とを交互に積層して成形された構成となっている。
【0024】
載置台12上に物体が載置される(荷重がかかる)と、第一の支持体32に垂直方向下方の負荷がかかる。第一の支持体32にかかるこの負荷は防振体42bに作用し、この防振体42bにかかる負荷は、規制部材44b、軸部材40、及び規制部材44aを介して、防振体42aに作用する。
このように、載置台12にかかる荷重は、防振体42a、42bにより支持されるようになっている。
このため、水平方向の振動は防振体42a、42bによって吸収され、載置台12に対する水平方向の振動が抑制される。
【0025】
第二の支持体34の外側には、この第二の支持体34と接触しないでこれを囲うようにして第三の支持体50が配設されている。第三の支持体50は、側面及び底面に囲われ、上部が開口した形状となっている。
本実施形態においては、第三の支持体50は、脚部22の外郭を構成するようになっている。
【0026】
第三の支持体50と第二の支持体34との間には、空気ばね部60が配設されている。
空気ばね部60は、空気ばね62と、エアータンク64とにより構成される。
空気ばね62は弾性体からなり、外縁が第三の支持体50に接続され、内縁が第二の支持体34に接続されている。
エアータンク64は、第三の支持体50と第二の支持体34との隙間を空気ばね62により塞がれて形成される空間であり、オリフィス(非図示)を通じて、空気の吸入・吸出が行われるようになっている。
【0027】
このように、第三の支持体50は、空気ばね部60を介してこの第三の支持体50の内部で第二の支持体34を支持している。
このため、第一の支持体32及び第二の支持体34は空気ばね部60により、垂直方向において第三の支持体50に対して移動自在な構成となっている。
空気ばね部60は、可動範囲(ストロークの長さ)が例えば±80mm程度であり、通常の防振装置に用いられるもの(例えば±10mm程度)よりもストロークが長くなっている。このため、空気ばね部60は、通常想定される振動よりも大きな震動に対応可能となっている。
【0028】
第三の支持体50の内側であって第二の支持体34の下方には、例えば低反発スポンジ等からなり衝撃を緩衝する緩衝部材66が設けられている。
第三の支持体50の下部には、脚部の垂直方向の位置(高さ)を調整するレベリング部68が設けられており、このレベリング部68は、免震機構16の水平方向免震機構100(
図5参照)に固定されている。
【0029】
次に、免震機構16のストッパー部70について説明する。
免震機構16は、防振機構14が防止する対象物の振動よりも大きな震動を防止するように構成されており、この免震機構16は、空気ばね62に予め定められたストローク以上に変形が発生することを防止するストッパー部70を備えている。
ここで、「振動」とは、例えば、歩行や建造物の揺れ等、日常の行為や現象に起因する揺れを示し、防振装置が防振の対象として通常想定する揺れを意味する。
一方、「震動」とは、地震等に起因する揺れを示し、「振動」よりも大きな揺れを意味する。
【0030】
ストッパー部70は、第三の支持体50の外側に固定して設けられた固定部材72と、上端が載置台12に固定され固定部材72を遊貫する軸部材74と、固定部材72の上方側(載置台12側)に設けられた第一の緩衝部76と、固定部材72の下方側に設けられた第二の緩衝部78とを備える。
【0031】
第一の緩衝部76は、弾性部材案内部82と、弾性部材84と、上端規制部材86とにより構成される。
弾性部材84としては、例えばコイルばねが用いられる。
【0032】
弾性部材案内部82は、軸部材74の周囲を囲うようにして固定部材72の上部に設けられており、この弾性部材案内部82内に弾性部材84が嵌るようにして配設されている(
図4参照)。弾性部材84の水平方向の移動は弾性部材案内部82により規制されるようになっており、この弾性部材84と軸部材74との接触が防止される。
弾性部材案内部82の垂直方向(高さ方向)の長さは、予め定められる最大の負荷がかかった場合(最大に収縮した場合)の弾性部材84の長さよりも短くなるようになっている。
上端規制部材86は、弾性部材84の上方に位置し軸部材74に固定されている。
【0033】
第二の緩衝部78は、弾性部材案内部92と、弾性部材94と、下端規制部材96とにより構成される。
弾性部材94としては、例えばコイルばねが用いられる。
【0034】
下端規制部材96は軸部材74の下端に固定されており、弾性部材案内部92は、軸部材74を囲うようにしてこの下端規制部材96の上部に設けられている。弾性部材94は、弾性部材案内部92内に嵌るようにして配設されている。弾性部材94の水平方向の移動は弾性部材案内部92により規制されるようになっており、この弾性部材94と軸部材74との接触が防止される。
弾性部材案内部92の垂直方向の長さは、予め定められる最大の負荷がかかった場合の弾性部材94の長さよりも短くなるようになっている。
第二の緩衝部78の水平方向の構成は、
図4に示す第一の緩衝部76と同様となっている。
【0035】
次に、免震機構16の水平方向免震機構100の詳細について説明する。
図5は、水平方向免震機構100の側面図を示す。
図6は、
図5のB−B線図を示す。
【0036】
水平方向免震機構100は、脚部22それぞれの下方に設けられており、この水平方向免震機構100の垂直方向上方に防振機構14が位置する。
水平方向免震機構100は、基台102と、水平移動部104と、複数個(本実施形態のおいては四つ)の定荷重ばね106と、により構成される。
【0037】
基台102は、設置部102aにより免震機能付防振装置10の設置される面(設置箇所)と接するようになっている。設置部102aは、摩擦係数の大きいものが用いられる等して、設置箇所に対する移動が抑制されるように構成されている。
なお、基台102を免震機能付防振装置10の設置箇所に固定するようにしてもよい。
【0038】
水平移動部104上部に、脚部22のレベリング部68が固定されるようになっている。
水平移動部104は、例えばボールキャスタ等の水平可動部材104aを介して、基台102上に載置されている。
水平移動部104の側壁には、衝撃を緩衝する衝撃緩衝部材104bがこの水平移動部104の周囲を覆うようにして設けられている。衝撃緩衝部材104bは、例えば、低反発スポンジやゴム等の弾性体からなる。このため、本構成を有さない場合と比較して、水平移動部104が外壁等と衝突するような場合であっても、それによる衝撃が緩和され、これら水平移動部104や外壁等の破損が抑制される。
なお、衝撃緩衝部材104bは、例えば、水平移動部104の側壁の各辺それぞれに一つ又は複数個所設ける等、この水平移動部104の側壁に間隔を空けて部分的に設けるようにしてもよい。
【0039】
定荷重ばね106は、巻取り部106aと、回転支軸106bと、ばね部106cとにより構成される。
巻取り部106aは、水平移動部104に垂直方向回転自在に設けられており、ばね部106cの一端側を巻き取るようになっている。
回転支軸106bは、基台102に垂直方向回転自在に設けられており、ばね部106cの一端側が固定されている。
定荷重ばね106は、通常時において水平移動部104を基台102の中央部に配置するように設計されている。
【0040】
水平方向免震機構100は、水平移動部104の水平移動距離が200 mm程度となるように設計されている。
本実施形態においては、水平移動部104は水平可動部材104aを備えた構成であるが、これに限らず、例えばろう石等、水平方向に移動可能な程度に摩擦の小さい部材を用いるようにしてもよい。
【0041】
予め設定した震度以上の地震により免震機能付防振装置10の設置箇所が大きく震動すると、この設置箇所とともに基台102は水平方向に移動する。これに対し、水平移動部104は水平方向に対する位置を維持するように、基台102に対して相対的に水平方向自在に移動する。この際、定荷重ばね106それぞれのばね部106cが水平移動部104の移動に併せて伸縮するとともに、この水平移動部104の移動に従って回転支軸106bが回転する。
回転支軸106bが垂直方向回転自在に設けられているため、本構成を有さない場合と比較して、水平移動部104の移動に伴って生じるばね部106c等にかかる負担が抑制される。
【0042】
このように、水平方向免震機構100により水平方向の震動が防止され、この水平方向免震機構100上に設けられた構成部分に対する震動の影響が抑制されるようになっている。
【0043】
ここで、水平方向免震機構100は、防振機構14が防止する水平方向の振動よりも大きい水平方向の震動を防止するように構成されている。
本実施形態においては、防振機構14が抑制可能な大きさの振動以上の震動に対して、水平方向免震機構100が作用するように調整されている。水平方向免震機構100が作用する震動の大きさの範囲は、防振機構14の防振する能力や免震機能付防振装置10の設置箇所等を考慮して、適宜調整することができる。
【0044】
次に、免震機能付防振装置10の垂直方向の動作について説明する。
図7は、免震機能付防振装置10の動作について説明する説明図を示す。
図7(a)は、載置台12が第三の支持体50に対して最も離間(上昇)している状態(以下、「上昇状態」と称す)を示し、
図7(b)は、空気ばね部60が通常に防振機能を発揮している状態(以下、「通常状態」と称す)を示し、
図7(c)は、載置台12が第三の支持体50に対して最も接近(下降)している状態(以下、「下降状態」と称す)を示す。
【0045】
図7(b)に示すように、通常状態において第二の支持体34は、空気ばね部60によってその垂直方向における位置が調整されるようになっている。この際、ストッパー部70の弾性部材84及び弾性部材94それぞれは、負荷がかかっていない状態にある。
【0046】
この場合において、通常想定される振動や比較的弱い地震(例えば震度2以下程度)による震動等が生じると、これらの振動及び震動は、防振機構14により防止される。具体的には、主に、垂直方向の振動は空気ばね部60により防止され、水平方向の振動は防振体42a、42bにより防止される。
本実施形態においては、通常想定される振動や比較的弱い地震による震動に対しては、水平方向免震機構100は作用しないように構成されている。
【0047】
一方、比較的強い地震(例えば震度3以上程度)による震動(通常想定される振動を超える震動)が生じると、その震動は、防振機構14及び免震機構16により防止される。具体的には、垂直方向の震動は空気ばね部60により防止され、水平方向の震動は水平方向免震機構100及び防振体42a、42bにより防止される。
【0048】
空気ばね部60はストロークの長さが比較的長い構成となっているため、本構成を有さない場合と比較して、垂直方向に対するより大きな震動を吸収することができる。
空気ばね部60は、通常想定される振動に加え、比較的強い地震等に起因するより大きな震動についても、その垂直方向の震動を吸収し対応するようになっている。
【0049】
このように、垂直方向については、通常想定される振動からそれを超える大きな震動に対してまで、空気ばね部60により対応するように構成されている。すなわち、空気ばね部60は、防振機構14と併せ免震機構16における対象物の垂直方向の振動及び震動の対応を兼ねる。
【0050】
さらに強い地震(例えば震度7以上程度)による震動が生じると、
図7(a)、(c)に示すように、免震機能付防振装置10は、上昇状態、下降状態となる。
【0051】
図7(a)に示すように、上昇状態において、第二の支持体34は第三の支持体50に対して上昇し、空気ばね部60は可動可能な長さの限界に近づく状態となる。この際、ストッパー部70の弾性部材94は、その上端が固定部材72の下面に接触し、収縮した状態となる。
【0052】
第二の緩衝部78は、垂直方向への衝撃を緩和しながら、載置台12と第三の支持体50とが予め定められた距離以上に離間することを防止し、空気ばね部60にそのストローク以上の負荷がかかるのを防止するようになっている。
【0053】
図7(c)に示すように、下降状態において、第二の支持体34は第三の支持体50に対して下降し、空気ばね部60は上昇状態とは反対の方向に対して可動可能な長さの限界に近づく状態となっている。この際、ストッパー部70の弾性部材84は、その上端が上端規制部材86の下面に接触し、収縮した状態となる。
また、第二の支持体34は、その下部が緩衝部材66と接触して垂直方向に対する震動が緩衝される。
【0054】
第一の緩衝部76は、垂直方向への衝撃を緩衝しながら、載置台12と第三の支持体50とが予め定められた距離以上に接近することを防止し、空気ばね部60にそのストローク以上の負荷がかかるのを防止するようになっている。
【0055】
垂直方向上方に向けて空気ばね部60に予め定められたストローク以上に変形が発生した場合には、弾性部材94が収縮し、これとは反対方向である垂直方向下方に向けて空気ばね部60に予め定められたストローク以上に変形が発生した場合には、弾性部材84が収縮する。
防振機構14に対して、載置台12と第三の支持体50との距離を空気ばね部60のストロークの長さ以上に移動させるような負荷がかかるような場合、ストッパー部70は、空気ばね部60にかかる負荷を抑制し、この空気ばね部60が破損するのを防止するようになっている。
【0056】
免震機能付防振装置10は、通常想定される振動に対する防振機能を維持しつつ、地震に起因するより大きな震動に対してもその震動の影響を免れるようになっている。
免震機能付防振装置10は、対象物の振動を防止するとともに、この免震機能付防振装置10自体が設置箇所に対し移動することが防止されるように構成されている。
【0057】
なお、上記実施形態においては、通常想定される振動を超える震動として地震を想定した場合について説明したが、これに限らず、設置箇所への衝突による突発的な振動等についても適用される。