【解決手段】ラックR1〜R6は、検体容器T1〜T3の何れかを複数保持する。ラックR1〜R6の下面側には、保持する検体容器の種類に応じて突起部Reが設けられている。ラックセット部300には、ラックR1〜R6が着脱可能にセットされる。容器移送部は、ラックセット部300にセットされたラックから検体容器を取り出して移送する。センサ341〜343は、ラックセット部300にセットされたラックの突起部Reを検知する。センサ341〜343の検出信号に基づいて、容器移送部の動作が制御される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための検体分析装置に本発明を適用したものである。以下、本実施の形態に係る検体分析装置について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る検体分析装置1の外観を示す図である。
【0016】
検体分析装置1は、本体2と、タッチパネル式のディスプレイである表示入力部3と、を備えている。本体2は、筐体2aに覆われており、筐体2aの前面には、検体分析装置1の電源を操作するための電源ボタン11と、開始ボタン12と、中断ボタン13と、2つのパネル21と、2つのランプ22と、が設けられている。2つのパネル21の後方側には、それぞれ、引き出し30(
図2参照)が接続されている。2つのランプ22は、それぞれ対応する引き出し30の状態を示す。筐体2aの右側面の前方には、開閉可能な扉23が設けられている。
【0017】
オペレータは、複数の検体を連続的に分析する処理(以下、「サンプラ処理」という)を行う場合、パネル21を前方に引っ張ることにより、引き出し30を前方に引き出し、検体容器を保持させたラックを引き出し30にセットして、開始ボタン12を押す。また、オペレータは、1つの検体を優先的に分析する処理(以下、「マニュアル処理」という)を行う場合、扉23を開けて、筐体2aの内部にある容器セット部71(
図2参照)に検体容器をセットし、筐体2aの内部にある開始ボタン83(
図2参照)を押す。
【0018】
図2は、筐体2aの内部を上側から見た場合の模式図である。
【0019】
本体2は、ラックR1〜R6(
図3(a)参照)をセットするための2つの引き出し30と、2つの引き出し30が閉じられて筐体2a内にセットされたかをそれぞれ検出する透過型のセンサ41と、2つの引き出し30をそれぞれ固定するための穴42と、検体容器T1〜T3(
図3(b)参照)を移送するための容器移送部50と、検体容器T1〜T3を転倒させて検体を攪拌するための攪拌機構60と、検体容器T1〜T3を前後方向に移動させるための前後搬送部70と、前後搬送部70にある検体容器の有無を検出する透過型のセンサ81と、バーコードリーダ82と、開始ボタン83と、検体容器T1〜T3内の検体を吸引する検体吸引部210と、試料調製部220と、検出部230と、測定試料と、を含んでいる。
【0020】
ここで、ラックR1〜R6と、検体容器T1〜T3と、引き出し30について、
図3(a)〜
図5(c)を参照して説明する。
【0021】
図3(a)は、ラックR1〜R6を上側から見た場合の斜視図である。なお、
図3(a)には、ラックR1〜R6が引き出し30に設置されるときの
図2に示す座標軸が併せて示されている。
【0022】
本実施の形態では、後述するように、検体容器の種類に応じて6種類のラックR1〜R6が用いられる。
図3(a)に示すように、上側から見た場合のラックR1〜R6の形状は全く同じであるが、下側から見た場合の形状は異なっている。ラックR1〜R6を下側から見た場合の形状については、追って
図4(a)〜(f)を参照して説明する。
【0023】
ラックR1〜R6には、10本の検体容器T1〜T3を垂直に保持することが可能となるよう10個の保持部Raが形成されている。10個の保持部Raは、5つの保持部Raがそれぞれ前後に2列並ぶように形成されている。以下、10個の保持部Raの位置を、
図3(a)に示すように、便宜上、保持位置n1〜n10と称する。また、ラックR1〜R6の上面は、X−Y平面に平行であり、保持位置n1〜n5の保持部Raの列と、保持位置n6〜n10の保持部Raの列との間には、中央部Rbが形成されている。また、ラックR1〜R6の下端の後方側(Y軸正側)には、周囲よりも内側に凹んだ凹部Rcが形成されている。
【0024】
図3(b)は、検体容器T1〜T3の外観を示す図である。
【0025】
検体容器T1〜T3は、胴部Taと、蓋部Tbと、バーコードラベルTcと、を備えている。胴部Taは、透光性を有するガラスまたは合成樹脂により構成された管状容器であり、上端には開口が形成されている。胴部Taは、検体を収容しており、上端の開口は蓋部Tbにより密封されている。蓋部Tbは、ピアサ211(
図2参照)が貫通可能となるよう構成されている。バーコードラベルTcには、検体IDを含むバーコードが印刷されている。バーコードラベルTcは、胴部Taの側面に貼付されている。
【0026】
図3(c)〜(e)は、それぞれ、検体容器T1〜T3の断面図である。検体容器T1〜T3は、たとえば、採血管として用いられるものである。
【0027】
胴部Taの内部の下端には、底面Tdが形成されており、検体容器T1〜T3の順に底面Tdの位置が高くなっている。これにより、検体容器T1〜T3が収容可能な検体の容量は、検体容器T1〜T3の順に小さくなる。
【0028】
図4(a)〜(f)は、それぞれ、ラックR1〜R6を下側(Z軸負側)から見た場合の斜視図である。
【0029】
ラックR1〜R6下端には、
図3(a)に示した凹部Rcに加えて、凹部Rcの反対側(ラックR1〜R6の下端のY軸負側)には、周囲よりも外側に突出した凸部Rdが形成されている。
【0030】
また、ラックR1〜R6の下面側には、突起部Reが形成されている。突起部Reの下端は、ラックR1〜R6の下端よりも上側に位置付けられている。突起部Reが形成される位置は3箇所あり、そのうち少なくとも1つの位置に突起部Reが形成されている。具体的には、ラックR1では、3つの位置に突起部Reが形成されており、ラックR2では、中央とX軸正側の位置に突起部Reが形成されており、ラックR3では、X軸正側とX軸負側の位置に突起部Reが形成されている。また、ラックR4では、中央とX軸負側の位置に突起部Reが形成されており、ラックR5では、中央の位置に突起部Reが形成されており、ラックR6では、X軸負側の位置に突起部Reが形成されている。
【0031】
ここで、本実施の形態の検体には、特に分析を急がない通常の検体(以下、「通常検体」と称する)と、通常検体に優先して分析を行う必要のある検体(以下、「優先検体」と称する)とがある。また、検体容器として、上述した検体容器T1〜T3の3種類が用いられ、検体容器T1〜T3には、それぞれ、通常検体と優先検体の何れかが収容される。したがって、本実施の形態では、通常検体を収容する検体容器T1〜T3と、優先検体を収容する検体容器T1〜T3があり、結果、組合せとして、検体容器の種類は6つとなる。
【0032】
また、本実施の形態では、上記6種類の検体容器ごとに、用いられるラックが決められている。具体的には、通常検体を収容する検体容器T1〜T3は、それぞれラックR1〜R3にのみセットされ、優先検体を収容する検体容器T1〜T3は、それぞれラックR4〜R6にのみセットされる。以下、ラックR1〜R3を、合わせて「通常ラック」と称し、ラックR4〜R6を、合わせて「優先ラック」と称する。こうして、予め上記ルールに従って検体容器T1〜T3がセットされたラックR1〜R6は、オペレータにより前方に引き出された引き出し30にセットされる。
【0033】
図5(a)は、引き出し30の前後移動を示す模式図である。
【0034】
パネル21は、引き出し30の前端(Y軸負側の端部)に接続されており、オペレータによりパネル21が前後に移動されると、パネル21に伴って前後に移動する。また、引き出し30には、ラックR1〜R6を設置するためのラックセット部300が形成されている。引き出し30が前後に移動することにより、ラックセット部300は、ラックが筐体2a内に取り込まれた状態となる装着位置と、ラックが筐体2a外に引き出された状態となる引出位置との間で移動する。
【0035】
引き出し30が引き出されて、ラックセット部300が引出位置に位置付けられると、オペレータは、ラックセット部300にラックをセットすることができ、ラックセット部300にセットされたラックを取り出すことができる。また、ラックセット部300が装着位置に位置付けられると、筐体2a内の各機構により、ラックセット部300にセットされたラックに保持された検体容器に対して処理が行われる。
【0036】
図5(b)は、引き出し30の構成を示す図である。なお、
図5(b)では、後述する鍔部31と棒部材32(
図2参照)の図示が、便宜上、省略されている。
【0037】
ラックセット部300は、引き出し30の中央付近に形成されており、ラックセット部300の底面は、引き出し30の上面よりも一段低くなっている。ラックセット部300の前端と後端には、ラックセット部300にセットされたラックの凸部Rdと凹部Rcに、それぞれ係合する凹部310と凸部320が形成されている。凹部310の左右にある凸部311の上面は、引き出し30の上面よりも低く、凸部320の上面は、引き出し30の上面よりも高い。また、ラックセット部300の中央には、凸部330が形成されている。凸部330には、ラックセット部300にセットされたラックの3つの位置の突起部Reに対応する隙間331〜333が形成されている。
【0038】
図5(c)は、
図5(b)のC1−C2で切断したラックセット部300を、前方から(Y軸正方向に)見た場合の図である。
【0039】
凸部330には、隙間331〜333を挟むように、それぞれ透過型のセンサ341〜343が設置されている。ラックセット部300に、たとえばラックR1がセットされると、ラックR1に形成された3つの突起部Reは、隙間331〜333に位置付けられる。したがって、センサ341〜343の検出信号により、隙間331〜333の少なくとも1つに突起部Reが位置付けられたことが検出されると、ラックセット部300にラックがセットされたことが分かる。また、本体2のハードディスク270(
図8参照)には、
図4(a)〜(f)に示すラックR1〜R6の突起部Reの構成が記憶されている。これにより、ラックセット部300にセットされたラックが、ラックR1〜R6の何れであるかが分かる。
【0040】
また、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれると、凸部Rdと凹部Rcを含むラックの下面が、凸部311、320に当たるため、ラックが前後方向に傾くことになる。これにより、オペレータは、ラックの設置方向が誤っていることに気付くことができる。なお、本実施の形態では、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれても、突起部Reが凸部330に当たらないように、突起部Reとラックセット部300が構成されている。
【0041】
図2に戻り、引き出し30にラックがセットされ、引き出し30が後方まで押し込まれると、引き出し30の後方に設けられた鍔部31が、筐体2a内に設置された透過型のセンサ41の隙間に位置付けられる。したがって、センサ41の検出信号により、引き出し30が引き出されたことと、引き出し30が閉じられたことが検知される。しかる後、引
き出し30に設けられた棒部材32が、図示しない駆動部によりY軸方向に駆動され、筐体2a内に設置された穴42に挿入されることにより、引き出し30が誤って引き出されてしまわないようロックがかけられる。また、棒部材32が、ロック時とは反対方向に駆動されることにより、引き出し30を引き出すことができるようロックが解除される。
【0042】
ラックに保持された検体容器に対する処理が開始されると、保持位置n1〜n10の検体容器が、容器移送部50によりラックから順に取り出され、移送される。容器移送部50は、モータ51、52と、ベルト53、54と、移動体500と、を含んでいる。
【0043】
移動体500は、左右移動部510と、前後移動部520と、上下移動部530と、保持部540と、を含んでいる。左右移動部510は、筐体2a内に設けられた左右に延びるガイド(図示せず)に支持されながら左右方向に移動可能となっており、前後移動部520は、左右移動部510に設けられた前後に延びるガイド(図示せず)に支持されながら前後方向に移動可能となっている。上下移動部530は、前後移動部520に設けられたシリンダ(図示せず)により、前後移動部520に対して上下方向に移動される。保持部540は、検体容器T1〜T3を前後方向から挟み込むことが可能に構成されており、且つ、Y軸を回転軸として回転可能となるよう、上下移動部530に支持されている。
【0044】
モータ51は、筐体2a内の左右に配置されたプーリに掛けられたベルト53を左右方向に駆動させる。ベルト53には、左右移動部510の取付ステー511が固定されている。これにより、左右移動部510は、ベルト53に合わせて左右方向に移動可能となる。モータ52は、筐体2a内の左右に配置されたプーリに掛けられたベルト54を、左右方向に駆動させる。ベルト54の一部は、左右移動部510に設けられたプーリ512により前方に折り返され、左右移動部510の前方に設けられたプーリ513に掛けられている。プーリ512、513の間のベルト54には、前後移動部520の取付ステー521が固定されている。これにより、前後移動部520は、ベルト54に合わせて前後方向に移動可能となる。よって、保持部540は、筐体2a内においてX、Y、Z方向において自在に移動可能となる。
【0045】
攪拌機構60は、モータ61と、モータ61に接続されY軸方向に延びた軸62と、軸62に固定された当接部材63と、を含んでいる。把持部541、542により把持され位置P1に位置付けられた検体容器は、当接部材63により押されることで転倒され、検体容器内の検体が攪拌される。
【0046】
図6(a)、(b)は、上下移動部530と、保持部540と、攪拌機構60をX軸負方向に見た場合の模式図である。
【0047】
上下移動部530は、基板531と、基板531に固定された軸532と、基板531に固定されたシリンダ533と、シリンダ533のロッド533aのY軸負側の端部に設置された板部材534と、板部材534の上端に設けられた鍔部534aと、鍔部534aのY軸正側の基板531に設置された透過型のセンサ535と、を含んでいる。
【0048】
保持部540は、軸532を回転軸として回転可能となるよう軸532に設置された把持部541、542と、把持部541、542の間に掛けられたバネ543と、を含んでいる。把持部541は、Y軸方向へ移動しないよう軸532に設置されており、把持部542の上端は、板部材534のY軸負側に位置付けられている。
【0049】
ロッド533aにY軸負方向の力が加えられていない場合、バネ543による収縮力により、把持部542はY軸正方向に引っ張られ、把持部541、542の下端が互いに当接する。このとき、板部材534が把持部542の上端によりY軸正方向に押され、鍔部
534aがセンサ535の隙間に位置付けられる。これにより、把持部541、542の下端が互いに当接していること、すなわち、保持部540により検体容器が把持されていないことが検知される。
【0050】
シリンダ533によりロッド533aがY軸負方向に押し出されると、
図6(a)に示すように、板部材534がY軸負方向に移動する。このとき、バネ543の収縮力に抗して、把持部542の上端が板部材534によりY軸負方向に押され、鍔部534aがセンサ535のY軸負側に移動する。
【0051】
把持部541、542により検体容器T1〜T3が把持される場合、まず、
図6(a)に示すように、把持部541、542が開かれた状態で、把持部541、542が把持対象となる検体容器の位置(ラックの保持位置)まで移動され、所定の高さ位置まで下降される。そして、シリンダ533によるロッド533aを押し出す力が弱められると、把持部542がY軸正方向に移動し、
図6(b)に示すように、バネ543による収縮力により把持部541、542により検体容器の胴部Taが把持される。このとき、把持部541、542の間に検体容器があるため、把持部542は所定の位置で止まり、鍔部534aがセンサ535の隙間に位置付けられることがない。これにより、保持部540により検体容器が把持されていることが検知される。
【0052】
容器移送部50により検体容器が
図2に示す位置P1に移送されると、この位置において、攪拌機構60により検体容器が転倒される。具体的には、モータ61により軸62が回転させられると、当接部材63の前端は、X−Z平面内において、軸62を中心とする円弧に沿って移動する。これにより、検体容器の胴部Taが、当接部材63によりX軸負側から押される。検体容器を垂直状態に戻す場合は、モータ61により軸62が逆方向に回転させられ、当接部材63が検体容器から離される。これにより、検体容器を把持している把持部541、542が自重により垂直状態に戻される。
【0053】
図2に戻り、位置P1において攪拌機構60による攪拌処理が終了すると、この検体容器は、容器移送部50により、位置P2に位置付けられた前後搬送部70の容器セット部71にセットされる。前後搬送部70は、検体容器を保持可能な容器セット部71と、容器セット部71を前後方向に動かすためのモータ72と、を含んでいる。
【0054】
位置P2において容器セット部71にセットされた検体容器は、容器セット部71により位置P3まで搬送される。検体容器が位置P3に位置付けられると、位置P3の近傍に設置されたバーコードリーダ82により、検体容器に貼付されたバーコードラベルTcから検体IDが読み取られる。そして、検体容器は、容器セット部71により位置P4まで搬送される。検体容器が位置P4に位置付けられると、検体吸引部210によりピアサ211を介して検体容器から所定量の検体が吸引される。検体吸引部210は、検体容器内の検体を吸引するためのピアサ211と、ピアサ211を上下方向に駆動するためのステッピングモータからなるモータ212と、を含んでいる。
【0055】
検体の吸引が終了すると、この検体容器は、容器セット部71により前方に搬送され、位置P2に位置付けられる。そして、この検体容器は、容器移送部50により元のラックの保持位置に戻される。こうして、ラックに保持されている検体容器が、順次取り出されて、検体吸引部210により検体が吸引される。
【0056】
ピアサ211を介して吸引された検体は、試料調製部220に吐出される。試料調製部220は、検体と試薬とを混合し、混合液を加温して、測定試料を調製し、調製した測定試料を検出部230に供給する。検出部230は、測定試料にレーザ光を照射して各種信号を取得する。取得された測定結果はCPU201(
図8参照)により分析され、分析結
果が表示入力部3に表示される。
【0057】
なお、1つの検体の分析を優先的に行う場合(マニュアル処理の場合)、オペレータは、検体容器内の検体を予め攪拌しておく。そして、オペレータは、扉23を開けて、この検体容器を、位置P5(
図2参照)に位置付けられた容器セット部71にセットし、開始ボタン83を押す。この検体容器は、容器セット部71により後方へ搬送され、バーコードリーダ82による検体IDの読み取りと、検体の吸引が行われる。しかる後、この検体容器は容器セット部71により位置P5に位置付けられ、オペレータは扉23を開けてこの検体容器を筐体2a内から取り出す。
【0058】
図7(a)は、攪拌機構60による攪拌処理を示す図であり、
図7(b)〜(d)は、検体吸引部210による吸引処理を示す図である。
図7(e)は、本体2のハードディスク270(
図8参照)に記憶されている設定テーブルの構成を示す概念図である。
【0059】
図7(a)を参照して、検体容器が垂直状態から転倒状態を経て垂直状態に戻される転倒動作を1回とカウントすると、検体容器T1〜T3の転倒回数は、
図7(e)の設定テーブルに示すように、それぞれ、fn1、fn1、fn2に設定されている。ここで、fn1<fn2である。これにより、検体容器T1、T2に比べて収容量が小さい検体容器T3についても、十分に検体を攪拌することができる。
【0060】
図7(b)〜(d)を参照して、検体容器に対してピアサ211を下降させるとき、ピアサ211の下端が原点位置に合わせられた後、モータ212に所定のパルス数が与えられてピアサ211が下降される。このとき、モータ212に与えられるパルス数は、下降量が適切になるよう、
図7(e)の設定テーブルに示すように、検体容器T1〜T3ごとに、それぞれ、pn1、pn2、pn3に設定されている。ここで、pn1>pn2>pn3である。これにより、検体容器T1〜T3の底面Tdの高さに応じて、適切にピアサ211を下降させることができる。
【0061】
図8は、検体分析装置1の構成を示すブロック図である。
【0062】
本体2は、上述した容器移送部50と、バーコードリーダ82と、検体吸引部210と、試料調製部220と、検出部230のほか、基板200と、機構部240と、センサ部250と、ランプ部260と、ハードディスク270と、読出装置280と、を備えている。基板200は、CPU201と、メモリ202と、インターフェース203と、を含んでいる。
【0063】
CPU201は、メモリ202に記憶されているコンピュータプログラムと、メモリ202にロードされたコンピュータプログラムと、を実行する。CPU201は、インターフェース203を介して、本体2の各部と表示入力部3とを制御すると共に、本体2の各部と表示入力部3から信号を受信する。
【0064】
機構部240は、本体2の各部を駆動するための機構を含んでいる。センサ部250は、上述した2つのセンサ41、81、341〜343、535のほか、扉23が閉じられていることを検出するセンサと、電源ボタン11と、開始ボタン12、83と、中断ボタン13が押されたことを検出するセンサと、を含んでいる。ランプ部260は、2つのランプ22を含んでいる。
【0065】
ハードディスク270は、オペレーティングシステムと、CPU201に実行させるためのコンピュータプログラムと、ラックR1〜R6の突起部Reの構成と、
図7(e)の設定テーブルと、後述する管理情報を記憶している。読出装置280は、CDドライブま
たはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムとデータを読み出すことができる。
【0066】
図9(a)は、CPU201によるサンプラ処理を開始および中断させる処理を示すフローチャートである。
【0067】
オペレータにより電源ボタン11が押され、検体分析装置1の電源がONされると、CPU201は、開始ボタン12が押されたかを判定し(S101)、容器セット部71を位置P5に位置付ける。開始ボタン12が押されると(S101:YES)、CPU201は、マニュアル処理(
図9(b)のS112〜S115)が行われているかを判定する(S102)。マニュアル処理が行われていると(S102:YES)、CPU201は、サンプラ処理を行うことができない旨のエラーメッセージを表示入力部3に表示し(S103)、処理をS101に戻す。他方、マニュアル処理が行われていないと(S102:NO)、CPU201は、ラックに対して処理を行う。
【0068】
ここで、ハードディスク270には、検体分析装置1の各部の状態等を示す管理情報が記憶されている。管理情報は、2つの引き出し30にセットされたラックのうち何れのラックを先に処理するかを示す情報と、セットされているラックの種類と、セットされているラックの処理の状態と、を含んでいる。管理情報の登録は、
図10のS206において行われる。管理情報の登録処理については、追って、
図11を参照して説明する。
【0069】
CPU201は、管理情報を参照して、処理を行う優先順位が1番目(以下、「優先度1」と称する)であるラックが、待機中または中断中であるかを判定する(S104)。優先度1のラックが待機中または中断中であると(S104:YES)、CPU201は、優先度1のラックの処理を開始または再開させ、このラックの処理状態を処理中に変更する(S105)。なお、中断中のラックの処理は、中断時の状態から再開される。
【0070】
優先度1のラックが、待機中と中断中でなく、処理中であると(S104:NO、S106:YES)、S105がスキップされる。他方、優先度1のラックが、待機中、中断中、処理中の何れでもないと(S104:NO、S106:NO)、処理を行うべきラックが存在しないため、処理がS101に戻される。
【0071】
次に、CPU201は、中断ボタン13が押されたかを判定する(S107)。中断ボタン13が押されていなければ(S107:NO)、処理がS104に戻される。他方、中断ボタン13が押されると(S107:YES)、CPU201は、処理中のラックの処理を中断させ、このラックの処理状態を中断中に変更する(S108)。そして、CPU201は、処理をS101に戻す。
【0072】
図9(b)は、CPU201によるマニュアル処理を開始させる処理を示すフローチャートである。この処理は、
図9(a)の処理と並行して行われる。
【0073】
オペレータにより電源ボタン11が押され、検体分析装置1の電源がONされると、CPU201は、開始ボタン83が押されたかを判定する(S111)。開始ボタン83が押されると(S111:YES)、CPU201は、サンプラ処理(
図9(a)のS102〜S108)が行われているかを判定する(S112)。サンプラ処理が行われていると(S112:YES)CPU201は、マニュアル処理を行うことができない旨のエラーメッセージを表示入力部3に表示し(S113)、処理をS111に戻す。なお、エラーメッセージが表示入力部3に表示される替わりに、本体2のスピーカー(図示せず)から警告音が出力されても良い。他方、サンプラ処理が行われていないと(S112:NO)、CPU201は、容器セット部71をセンサ81(
図2参照)の位置まで移動させ、
センサ81の検出信号に基づいて、容器セット部71に検体容器がセットされているかを判定する(S114)。
【0074】
オペレータは、優先的に1つの検体容器の測定を行いたい場合、この検体容器の種類、すなわち、検体容器T1〜T3の何れであるかを、予め表示入力部3に入力しておく。しかる後、オペレータは、容器セット部71に検体容器をセットし、開始ボタン83を押す。このようにオペレータにより容器セット部71に検体容器がセットされていると(S114:YES)、CPU201は、予め入力された検体容器の種類に応じて測定を行う(S115)。他方、容器セット部71に検体容器がないと(S114:NO)、CPU201は、処理をS111に戻す。なお、S113においてエラーメッセージが表示された場合、オペレータは、中断ボタン13を押してサンプラ処理を中断させた後、再度、開始ボタン83を押すことにより、マニュアル処理を進めることができる。
【0075】
図10は、CPU201による監視処理を示すフローチャートである。この処理は、
図9(a)の処理と並行して行われる。
【0076】
オペレータにより電源ボタン11が押され、検体分析装置1の電源がONされると、CPU201は、2つのランプ22を緑色に点灯させ(S201)、2つの引き出し30のうち左側の引き出し30を、参照対象に設定する(S202)。次に、CPU201は、センサ41の検出信号に基づいて、参照対象の引き出し30の開閉を判定する(S203、S207)。
【0077】
参照対象の引き出し30が閉じられた場合(S203:YES)、CPU201は、センサ341〜343の検出信号に基づいて、この引き出し30にラックがあるかを判定する(S204)。この引き出し30にラックがあると(S204:YES)、CPU201は、突起部Reの構成から、このラックの種類、すなわち、このラックがラックR1〜R6の何れであるかを取得する(S205)。続いて、CPU201は、「登録処理」を行う(S206)。登録処理については、追って
図11を参照して説明する。この引き出し30にラックがないと(S204:NO)、処理がS210に進められる。
【0078】
参照対象の引き出し30が開けられた場合(S203:NO、S207:YES)、CPU201は、管理情報に記憶された、参照対象の引き出し30にあるラックの情報を削除する(S208)。すなわち、引き出し30にあるラックの処理が開始される前に、この引き出し30が開けられると、このラックの情報が管理情報から削除される。なお、このラックが優先度1として登録されており、他に、処理を行う優先順位が2番目(以下、「優先度2」と称する)のラックがある場合、優先度2のラックが優先度1に繰り上げられる。
【0079】
続いて、CPU201は、この引き出し30の上方にあるランプ22を緑色に点灯させる(S209)。すなわち、引き出し30にあるラックの処理が完了している場合、後述するようにランプ22は消灯されている。S209では、このように消灯されているランプ22が、緑色に点灯される。
【0080】
他方、参照対象の引き出し30の開閉が行われていない場合(S203:NO、S207:NO)、処理がS210に進められる。
【0081】
次に、CPU201は、参照対象の引き出し30とは反対側の引き出し30を参照対象とし(S210)、処理をS203に戻す。こうして、S203〜S210の処理が所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0082】
図11は、登録処理を示すフローチャートである。
【0083】
CPU201は、S205で取得したラックの種類を管理情報に登録する(S301)。続いて、CPU201は、管理情報を参照して、既に優先度1のラックがあるかを判定する(S301)。優先度1のラックがないと(S302:YES)、CPU201は、参照対象の引き出し30にある通常ラックを、優先度1として管理情報に登録する(S303)。他方、優先度1のラックがあると(S302:NO)、CPU201は、参照対象の引き出し30にセットされているラックが通常ラックであるかを判定する(S304)。
【0084】
参照対象の引き出し30にあるラックが通常ラックであるとき(S304:YES)、CPU201は、この通常ラックを、処理を行う優先度2として、管理情報に登録する(S305)。他方、参照対象にあるラックが通常ラックでない、すなわち、優先ラックであるとき(S304:NO)、CPU201は、優先度1のラックが通常ラックであるかを判定する(S306)。
【0085】
優先度1のラックが通常ラックでない、すなわち、優先ラックであると(S306:NO)、参照対象の引き出し30にある優先ラックを優先度2として管理情報に登録する(S305)。他方、優先度1のラックが通常ラックであると(S306:YES)、CPU201は、参照対象の引き出し30にある優先ラックを、優先度1の通常ラックに割り込ませて、優先度1として管理情報に登録する(S307)。これにより、優先度1の通常ラックは、優先度2に移動される。また、CPU201は、この通常ラックが処理中であると、この通常ラックの処理を中断させ、この通常ラックの処理状態を中断中に変更する(S308)。
【0086】
次に、CPU201は、参照対象の引き出し30にあるラックの処理状態を待機中として、管理情報に登録する(S309)。こうして、登録処理が終了する。なお、S304、S306において優先度が1とされたラックは、
図9(a)のS105において処理が開始される。また、S305において優先度が2とされたラックは、優先度1のラックが管理情報から削除されるまで待機される。
【0087】
図12(a)は、CPU201によるラックの処理を示すフローチャートである。この処理は、
図9(a)のS105において開始され、ラックごとに独立して行われる。
【0088】
CPU201は、処理対象のラックがセットされている引き出し30の上方にあるランプ22を緑色に点滅させ、この引き出し30をロックする(S401)。続いて、CPU201は、「測定処理」を行う(S402)。
【0089】
図12(b)は、測定処理を示すフローチャートである。
【0090】
CPU201は、把持部541、542を移送対象となる保持位置の上方に移動させる(S501)。なお、移送対象となる保持位置は、ラックの保持位置n1〜n10の何れかに設定される。最初の移送対象は保持位置n1であり、このラックに対して測定処理が行われるたびに、移送対象は、順に保持位置n2〜n10とされる。
【0091】
続いて、CPU201は、容器移送部50に対して、
図6(a)、(b)を参照して説明した検体容器を把持するための動作を行わせ、この保持位置に検体容器があるかを判定する(S502)。この保持位置に検体容器がないと(S502:NO)、測定処理が終了する。この保持位置に検体容器があると(S502:YES)、CPU201は、容器移送部50により検体容器を位置P1へ移送する(S503)。
【0092】
次に、CPU201は、
図7(e)の設定テーブルを参照して、処理対象のラックの種類に応じて、攪拌機構60を駆動し、位置P1に位置付けられた検体容器に対する攪拌処理を行う(S504)。続いて、CPU201は、容器移送部50により、検体容器を位置P1から位置P2へ移送し、位置P2に位置付けられた容器セット部71に検体容器をセットする(S505)。続いて、CPU201は、検体容器を位置P3に搬送して、バーコードリーダ82により検体IDを読み取り(S506)、さらに、検体容器を位置P4へと搬送する。そして、CPU201は、設定テーブルを参照して、処理対象のラックの種類に応じて、検体吸引部210を駆動し、位置P4に位置付けられた検体容器に対する吸引処理を行う(S507)。
【0093】
次に、CPU201は、吸引した検体に対する測定を開始する(S508)。これにより、吸引した検体から測定試料が作製され、検出部230により測定が行われる。しかる後、得られた測定結果に基づいて、CPU201は、この検体容器に収容された検体について再検が必要かを判定する。なお、S508において開始された測定と、再検の要否の判定とは、他の処理と並行して行われる。
【0094】
次に、CPU201は、検体容器を位置P2に搬送し(S509)、容器移送部50により位置P2に位置付けられた検体容器を、元のラックの元の保持位置に戻す(S510)。こうして、測定処理が終了する。
【0095】
なお、容器移送部50は、前列の保持位置(保持位置n1〜n5)にある検体容器を移送する場合、このラックの中央部Rbによって形成される空間を移送に用いる。これにより、コンパクトに構成された容器移送部50により、検体容器を円滑に移送することができる。また、容器移送部50は、検体容器が引き出し30のラックセット部300の前方を通らないよう、この検体容器を移送する。これにより、オペレータは、処理対象のラックのある引き出し30とは反対側の引き出し30を引き出すことが可能になる。
【0096】
図12(a)に戻り、測定処理が終了すると、CPU201は、処理対象のラックに、再検が必要な検体があるかを判定する(S403)。再検が必要な検体があると(S403:YES)、処理がS402に戻され、再検が必要と判定された検体について測定処理が再度行われる。
【0097】
再検が必要な検体がないと(S403:NO)、CPU201は、全検体の初検が終了したかを判定する(S404)。全検体の初検が終了していないと(S404:NO)、処理がS402に戻され、次の検体容器について測定処理が行われる。他方、全検体の初検が終了していると(S404:YES)、CPU201は、全ての検体に対する再検判定と、全ての必要な再検が終了したかが判定する(S405)。再検判定と再検が全て終了していない場合(S405:NO)、CPU201は、再検が必要な検体があれば(S406:YES)、この検体についてS402と同様に測定処理を行う(S407)。再検判定と必要な再検が全て終了すると(S405:YES)、処理がS408に進められる。
【0098】
次に、CPU201は、処理対象のラックの情報を管理情報から削除する(S408)。この際、優先度2のラックがあれば、CPU201は、当該ラックの優先度を1番目に繰り上げる。続いて、CPU201は、処理対象のラックがセットされている引き出し30の上方にあるランプ22を消灯させ、この引き出し30のロックを解除する(S409)。こうして、ラックの処理が終了する。
【0099】
なお、ラックの処理が行われているときに、
図9(a)のS108においてラックの処
理が中断されると、S402、S407の測定処理において処理が中断される。具体的には、
図12(b)の測定処理において、S507の吸引処理が行われる前であれば、移送対象の検体容器が元のラックの元の保持位置に戻され、処理がS501に戻されて中断される。S507の吸引処理が行われた後であれば、このときの測定処理が最後まで行われ、次の検体容器について測定処理が行われる直前で処理が中断される。
【0100】
以上、本実施の形態によれば、ラックが引き出し30のラックセット部300にセットされると、このラックの種類が検知される。そして、検知されたラックの種類に応じて、容器移送部50による動作等が制御される。このため、検体容器毎に、検体容器が6種類の検体容器の何れであるかという情報を、表示入力部3を介して入力するといった煩雑な入力操作を省略できる。よって、オペレータの煩雑な入力操作の簡便化を図ることができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、ラックには、ラックに保持される検体容器の種類に応じて突起部Reが形成されている。そして、ラックがラックセット部300にセットされると、突起部Reに基づいて、このラックの種類が検知される。このように、ラックの形状に基づいてラックの種類が検知されるため、たとえば、バーコードリーダ等の大掛かりな検知機構を設ける必要がない。よって、オペレータの煩雑な入力操作の簡便化と共に、検体分析装置1の低コスト化を図ることができる。
【0102】
本実施の形態において、突起部Reに替えて、ラックの種類に関する情報を含むバーコードラベルやRFIDタグが、ラックに貼付されても良い。この場合、筐体2a内にバーコード情報を読み取るためのバーコードリーダや、RFIDを読み取るためのアンテナが配される。また、突起部Reに替えて、ラックの種類に応じてラックの色が設定されても良い。この場合、筐体2a内にラックの色を読み取るための色センサが配される。これらの場合も、取得されたラックの種類に基づいて、容器移送部50による動作等が制御されるようにすれば、突起部Reが用いられた場合、オペレータの煩雑な入力操作の簡便化を図ることができる。ただし、たとえばラックにバーコードラベルを貼付する場合には、バーコードが破損したり汚れたりすることによってラックを識別できないことや、老朽化したバーコードラベルを張り替えるといったメンテナンス作業が必要になることが生じる。また、これらの場合、バーコードリーダ、アンテナ、色センサを別途設ける必要があるため、検体分析装置1にかかるコストが増えることがある。したがって、ラックの種類は、上記実施の形態のようにラックの形状(突起部Re)により検知するのが望ましい。
【0103】
また、本実施の形態によれば、突起部Reは、ラックセット部300と対向するラックの下面側に形成されている。これにより、ラックをラックセット部300にセットする作業に応じて、ラックセット部300のセンサ341〜343によりラックの種類を検知することが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、ラックセット部300にラックがセットされると、ラックの突起部Reが、隙間331〜333に位置付けられる。このとき、突起部Reの有無によりセンサ341〜343の透過状態と遮光状態が変化するため、センサ341〜343の検出信号に基づいて、セットされたラックがラックR1〜R6の何れであるかを識別することができる。このように、突起部Reを設けるだけでラックの種類を簡素な構成により特定できるため、ラックをシンプルな構造とすることができる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、突起部Reが形成される位置は3箇所あり、ラックがセットされたか否かを判定可能とするために、そのうち少なくとも1つの位置に突起部Reが形成されている。よって、突起部Reの配置の組合せは7種類となる。また、突起部Reは、センサ341〜343により検出される。このように、突起部Reの配置の組合せ
がセンサにより検出されることによりラックの種類が識別されるため、突起部Reとこれを検出するセンサの数を抑えることができる。よって、ラックとセンサの構成を簡素にすることができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、引き出し30が、
図5(a)に示すように前後に移動することにより、ラックセット部300が筐体2a内の装着位置と筐体2a外の引出位置との間で移動する。これにより、ラックをラックセット部300に円滑に着脱することができる。
【0107】
また、本実施の形態では、センサ341〜343は、凸部330に配置されている。このように、センサ341〜343が引き出し30と一体的に配置されていると、引き出し30が外部に引き出された状態でも、ラックの種類を識別することが可能になる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、ラックには、凹部Rcと凸部Rdが設けられ、ラックセット部300には、凹部310と凸部320が設けられている。そして、ラックがラックセット部300に載置される際に、凹部Rcと凸部320が互いに係合し、凸部Rdと凹部310が互いに係合する。これにより、適正な姿勢でラックをラックセット部300にセットすることができ、センサ341〜343により突起部Reを適正に検知することができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、
図13(a)に再度示すように、凸部311の上面は、引き出し30の上面よりも低く、凸部320の上面は、引き出し30の上面よりも高い。これにより、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれると、ラックが傾くため、オペレータは、ラックの設置方向が誤っていることに気付くことができる。なお、凸部320の上面は、
図13(b)に示すように、凸部311の上面と同じ高さに位置付けられても良い。この場合、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれると、ラックはラックセット部300に適正に装着されないものの、ラックの低部がラックセット部300に浅く嵌り、また、この状態においてラックが傾くことがない。このため、オペレータは、ラックの設置方向が誤っていることに気付きにくくなる。したがって、凸部320の上面は、
図13(a)に示すように、ラックセット部300の上面よりも高いことが望ましい。
【0110】
また、このように、ラックの下部が平面視において非対称な輪郭を有していると、この下部をラックセット部300に上側から嵌め込むことにより、適正な姿勢でラックをラックセット部300にセットすることができる。これにより、センサ341〜343により突起部Reを適正に検知することができる。
【0111】
また、本実施の形態によれば、引き出し30は左右に並ぶように2つ配されており、センサ341〜343は、2つの引き出し30にそれぞれ配置されている。これにより、2つのラックセット部300にそれぞれ異なる種類のラックをセットすることができ、利便性を向上させることができる。また、突起部Reを検知するためのセンサ341〜343が、2つのラックセット部300にそれぞれ配置されたとしても、バーコードリーダを配置してバーコードリーダによりラックの種類を取得する場合に比べて、構成の簡素化とコストの削減を図ることができる。
【0112】
また、本実施の形態によれば、ラックの処理が行われている場合および中断されている場合、この引き出し30に対応するランプ22は緑色に点滅し、この引き出し30はロックされている。また、ラックの処理が終了している場合、この引き出し30に対応するランプ22は消灯し、この引き出し30のロックは解除されている。また、ラックの処理が開始されていない場合と、引き出し30にラックがセットされていない場合、この引き出
し30に対応するランプ22が緑色に点灯し、この引き出し30のロックは解除されている。したがって、ランプ22が緑色に点灯している場合と消灯している場合に、対応する引き出し30にラックをセットできる。また、ランプ22の状態を見ることで、対応する引き出し30にラックをセットすることが可能であるかが分かるため、ラックのセットおよび交換を円滑に進めることができる。
【0113】
また、本実施の形態によれば、引き出し30に優先ラックがセットされたとき、反対側の引き出し30にセットされている通常ラックが優先度1であると、優先ラックが優先度1とされ、通常ラックの処理が中断される(
図11のS306)。これにより、通常検体に比べて優先的に、優先検体を処理することができる。また、ラックは複数の検体容器を保持可能であるため、優先検体が複数ある場合も、これら優先検体を1つのラックに保持させて引き出し30にセットすることにより、複数の優先検体に対する処理を一括して行わせることができる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、ラックの種類を検知することにより、ラックに保持されている検体容器が検体容器T1〜T3の何れであるかを取得することができる。そして、設定テーブルに基づいて、検体容器T1〜T3に適した攪拌処理が実行されるため、検体容器内の検体を確実に攪拌することができる。また、設定テーブルに基づいて、検体容器T1〜T3に適した吸引処理が実行されるため、検体容器内の検体を円滑に吸引することができる。
【0115】
また、本実施の形態によれば、突起部Reの下端は、ラックR1〜R6の下端よりも上側に位置付けられている。これにより、ラックを作業台等に安定して置くことができる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0117】
たとえば、上記実施の形態では、本発明を適用する装置は、血液を分析する検体分析装置1とされたが、これに限定されるものではない。免疫分析装置、遺伝子増幅測定装置、生化学分析装置、尿定性分析装置、尿中有形成分分析装置、または血液塗抹標本作成装置等の検体を処理する検体処理装置に本発明を適用してもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、ラックをラックセット部300にセットして、引き出し30を閉めることにより、ラックを筐体2a内に収容させたが、これに限らず、ラックを筐体2a内に直接セットすることにより、ラックを筐体2a内に収容させても良い。
【0119】
図14(a)は、ラックを筐体2a内に直接セットすることを示す模式図である。
【0120】
パネル21は、上方向に引き上げることにより開閉可能に構成されている。筐体2a内には、パネル21の後方(Y軸正方向)に凸部610が設けられている。上記実施の形態の凸部330と同様、凸部610は、上下方向に並ぶ隙間611〜613を有しており、凸部610には、隙間611〜613を挟むように、それぞれ透過型のセンサ(図示せず)が設置されている。また、この場合のラックには、上記実施の形態と同様の突起部Reが、後方側に設けられている。これにより、上記実施の形態と同様、ラックを筐体2aに収容させることができ、凸部610に設けられたセンサの検出信号に基づいて、ラックの種類を識別することができる。
【0121】
また、上記実施の形態では、ラックセット部300にセットされたラックの種類を識別するために、ラックには種類を識別するための突起部Reが設けられたが、これに限らず、ラックには、種類を識別できるよう他の構成が設けられても良い。たとえば、ラックに
突起部Reに替えて切欠を設けておき、切欠に対応するリミットスイッチを凸部330に設けても良い。こうすると、リミットスイッチの検出信号に基づいて、ラックに設けられた切欠の有無が検知されるため、上記実施の形態と同様、ラックの種類を識別することができる。
【0122】
また、上記実施の形態では、引き出し30の状態は、ランプ22の表示によって示されたが、表示入力部3に常時表示されるようにしても良い。
【0123】
また、上記実施の形態では、検体容器T1〜T3の高さは同じであるため、把持部541、542により検体容器が把持される高さ位置は、どの検体容器においても同じとされた。しかしながら、異なる高さを有する検体容器が用いられる場合、検体容器が把持される高さ位置は、検体容器ごとに異なっていても良い。この場合、把持部541、542が検体容器を把持する高さ位置は、検体容器の長さに応じて変えられるのが望ましい。
【0124】
図14(b)は、上記実施の形態の検体容器T1〜T3を把持する場合の把持位置を示す図である。上記実施の形態では、検体容器T1〜T3は、把持部541、542により、全て所定の高さ位置(たとえば、H1)で把持された。一方、
図14(c)は、検体容器T1〜T3よりも長い検体容器T4を把持する場合の把持位置を示す図である。この場合、検体容器T4は、ラックR1〜R6とは異なる突起部Reの構成を有するラックR7に保持され、把持部541、542により、高さ位置H1よりも上方の高さ位置H2で把持される。また、設定テーブルには、検体容器T1〜T3を把持するための高さ位置H1と、検体容器T4を把持するための高さ位置H2が記憶される。
【0125】
こうすると、長さが異なる検体容器が用いられても、検体容器が最適な把持位置で把持されるようになるため、検体容器ごとに把持状態を安定させることができる。また、胴部Taの形状が異なる検体容器が用いられる場合でも、同様に、検体容器ごとに把持状態を安定させることができる。また、この場合、バネ543が蓋部Tbに当たらないよう、把持部541、542の長さやバネ543の位置に余裕を持たせる必要がないため、容器移送部50をコンパクトにすることができる。