(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-12809(P2015-12809A)
(43)【公開日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】ペットフード製品及びペットフードの給与方法
(51)【国際特許分類】
A23K 1/18 20060101AFI20141219BHJP
A23K 1/00 20060101ALI20141219BHJP
A23K 1/16 20060101ALI20141219BHJP
【FI】
A23K1/18 A
A23K1/00 Z
A23K1/16 303D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-139477(P2013-139477)
(22)【出願日】2013年7月3日
(71)【出願人】
【識別番号】398008974
【氏名又は名称】日清ペットフード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖二
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA05
2B150AA06
2B150AB03
2B150AB10
2B150AE17
2B150CJ07
2B150DC13
(57)【要約】
【課題】体脂肪の蓄積を抑制し抗肥満効果に優れるペットフード製品及びペットフードの給与方法を提供すること。
【解決手段】本発明のペットフード製品は、組成の異なる2種類のペットフードA及びBを互いに混ざり合わないように内包する。ペットフードAは、炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%を含有し、ペットフードBは、炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量%を含有する。ペットフードA及びBは、それらのうちの一方を給与後3時間以上経過した後に他方を給与する関係にあり、ペットフードA及びBの含有質量比は、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成の異なる2種類のペットフードA及びBを互いに混ざり合わないように内包するペットフード製品であって、
ペットフードAは、炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%を含有し、
ペットフードBは、炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量%を含有し、
ペットフードA及びBは、それらのうちの一方を給与後3時間以上経過した後に他方を給与する関係にあり、
ペットフードA及びBの含有質量比は、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1であるペットフード製品。
【請求項2】
ペットフードA及びBはドッグフードである請求項1に記載のペットフード製品。
【請求項3】
組成の異なる2種類の下記ペットフードA及びBのうちの一方を給与後、3時間以上経過した後に他方を給与し、且つペットフードA及びBの給与量を、質量比で、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1とするペットフードの給与方法。
ペットフードA:炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%。
ペットフードB:炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量。
【請求項4】
ペットフードA及びBのうちの一方の給与時刻は0時から12時の時間帯から選択され、他方の給与時刻は12時から24時の時間帯から選択される請求項3に記載のペットフードの給与方法。
【請求項5】
ペットフードAの給与時刻は0時から12時の時間帯から選択され、ペットフードBの給与時刻は12時から24時の時間帯から選択される請求項3又は4に記載のペットフードの給与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット(愛玩動物)として飼育される犬、猫等の哺乳動物用のペットフード製品及びペットフードの給与方法に関し、特に、抗肥満効果に優れるペットフード製品及びペットフードの給与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームによりペットの飼育数は増大しており、それに伴い運動不足、栄養過多等によりペットの肥満が増大している。肥満は、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が過剰となり、脂肪組織が通常以上に蓄積した身体状況のことである。肥満になると、体脂肪が多く蓄積することによって糖尿病、高血圧症、高脂血症、動脈硬化等の各種疾患を引き起こすおそれがある。そこで、肥満を解消する手段について多方面から研究が行われており、食事療法、運動療法、薬物療法等、さまざまな治療法が開発され実施されている。また、血中コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)濃度が高値を示す高脂血症は、動脈硬化症を促進させ、各種疾患を引き起こす危険因子であることから、血中脂質濃度を適正なレベルに維持あるいは改善することは、ペットの健康を管理する上で非常に重要である。
【0003】
ペットの食事及び健康管理に関し、例えば特許文献1及び2には、個々の動物のため蛋白質、脂肪及び炭水化物の消費の目標値を特定する方法論について記載されており、一度特定されると、目標の多量養素内容比に等しいカスタマイズされた栄養素又は食餌の方法は、それぞれの個々の動物について定式化することができるとされている。また特許文献1には、ペットフードの具体例として、2つ以上の区分化された飼料組成物を含み、そのうち少なくとも2つの組成物が、脂肪、タンパク質又は炭水化物の少なくとも2つの含有量において異なっていることを特徴とする多成分食品が記載されている。
【0004】
また特許文献3には、時間栄養学に基づきなされた人用の栄養補充品が記載されている。時間栄養学とは、栄養学を時間生物学の位置から研究する学問であり、特に、体内の時計遺伝子と食事との関係が注目されている。特許文献3に記載の栄養補充品は、第一の部分と第二の部分とを含み、これら各部分は、時間生物学的に適当な補充栄養素で適量に分けられており、互いに異なる用量を有している。具体例として、第一の部分に朝用の栄養素を含有させ、第二の部分に夕方又は夜用の栄養素を含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−510376号公報
【特許文献2】特表2006−510377号公報
【特許文献3】特表平11−505723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、体脂肪の蓄積を抑制し抗肥満効果に優れるペットフード製品及びペットフードの給与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ペットの肥満防止について時間栄養学的見地から種々検討した結果、組成の異なる2種類の特定のペットフードのうちの一方を給与後、3時間以上経過した後に他方を給与する、というペットフードの給与サイクルにより、ペットフード摂取後の血中中性脂肪濃度の上昇抑制効果がもたらされることを知見した。
【0008】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、組成の異なる2種類のペットフードA及びBを互いに混ざり合わないように内包するペットフード製品であって、ペットフードAは、炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%を含有し、ペットフードBは、炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量%を含有し、ペットフードA及びBは、それらのうちの一方を給与後3時間以上経過した後に他方を給与する関係にあり、ペットフードA及びBの含有質量比は、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1であるペットフード製品である。
【0009】
また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、組成の異なる2種類の下記ペットフードA及びBのうちの一方を給与後、3時間以上経過した後に他方を給与し、且つペットフードA及びBの給与量を、質量比で、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1とするペットフードの給与方法である。
ペットフードA:炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%。
ペットフードB:炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペットの健康維持に必要な栄養素が摂取できると共に、体脂肪の蓄積が効果的に抑制され、健康維持効果及び肥満防止効果(ダイエット効果)の両方がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、それぞれ、実施例のペットフード(ドッグフード)製品給与後の血中中性脂肪濃度の推移を示す図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、それぞれ、実施例のペットフード(ドッグフード)製品給与後の血中遊離脂肪酸濃度の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のペットフード製品は、組成の異なる2種類のペットフードA及びBを互いに混ざり合わないように内包する。つまり、本発明のペットフード製品においては、ペットフードA及びBは混合されておらず、各々独立して存在し、ペットフードA又はBを個別に取り出し可能になされている。本発明のペットフード製品の一実施形態としては、例えば、ペットフードA及びBを収納する収納容器を備え、該収納容器内においてペットフードA及びBが各々個装されている形態が挙げられる。前記収納容器は、ペットフードを収納可能なものであれば特に制限されず、袋状でも箱状でも構わない。また、ペットフードA及びBの個装形態も特に制限されない。例えば、ペットフードA及びBを収納する収納容器中に、ペットフードA専用収納容器とペットフードB専用収納容器とが収納されている形態が挙げられる。
【0013】
ペットフードAは、炭水化物30〜60質量%、蛋白質20〜35質量%及び脂肪10〜25質量%を含有する。ペットフードAにおいて、炭水化物の含有量は好ましくは35〜55質量%、更に好ましくは40〜50質量%であり、蛋白質の含有量は好ましくは22〜28質量%、更に好ましくは24〜26質量%であり、脂肪の含有量は好ましくは12〜22質量%、更に好ましくは14〜20質量%である。
【0014】
ペットフードBは、炭水化物50〜75質量%、蛋白質15〜30質量%及び脂肪5〜15質量%を含有する。ペットフードBにおいて、炭水化物の含有量は好ましくは47〜70質量%、更に好ましくは50〜60質量%であり、蛋白質の含有量は好ましくは17〜28質量%、更に好ましくは18〜22質量%であり、脂肪の含有量は好ましくは7〜13質量%、更に好ましくは8〜12質量%である。
【0015】
ペットフード中における炭水化物、蛋白質及び脂肪の含有量は、それぞれ、「ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則」に開示の方法に従って測定することができる。
【0016】
ペットフードA及びBは、それぞれ、前記3成分(炭水化物、蛋白質及び脂肪)の含有量が前記特定範囲内にあれば良く、前記3成分(炭水化物、蛋白質及び脂肪)以外の他の成分を含有していても良く、また、原料は特に制限されない。
【0017】
ペットフードA及びBの原料としては、この種のペットフードにおいて原料として従来用いられているものを特に制限なく用いることができ、例えば、動物性蛋白質原料(例えば、鶏、七面鳥、牛、豚、馬、羊、魚、卵製品、乳製品);植物性蛋白質原料(例えば、大豆蛋白、馬鈴薯蛋白);魚油等の動物性油脂;コーン油、サラダ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、ナタネ油、亜麻仁油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマワリ油等の植物性油脂;イモ類、トウモロコシ粉砕物、トウモロコシ粉等の炭水化物原料;栄養補強剤又は健康増進剤〔ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、アミラーゼ阻害剤、リパーゼ阻害剤、小麦グルテン加水分解物、コンドロイチン硫酸、ポリフェノール含有素材、乳酸菌、γ−アミノ酪酸(GABA)、コエンザイムQ10、繊維成分〕、調味料(食塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ等)、香辛料(バジル、グローブ、ローズマリー等)、香味料(魚エキス等)、増粘剤(ガム類等)、ゲル化剤、繊維成分等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ペットフードA及びBの水分含量は特に制限されず、ペットフードA及びBは、ドライタイプでも良く、セミモイストタイプでも良く、ウエットタイプでも良い。ここで、ドライタイプは水分含量10質量%以下程度のペットフード、ウエットタイプは水分含量80質量%程度のペットフードであり、セミモイストタイプは両タイプの中間程度の水分含量(25〜75質量%程度)のペットフードである。これらの中でも特に、生産性、取り扱い性、栄養等の観点から、ペットフードA及びBは、ドライタイプ又はセミモイストタイプであることが好ましい。
【0019】
ペットフードA及びBがドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードである場合、その形状は特に制限されず、従来のドライタイプ、セミモイストタイプのペットフードと同様の形状にすることができ、例えば、ペレット状、粒状、スティック状、ドーナツ状、星型、ドッグボーン状、勾玉状、偏平丸状、球状、楕円形状、方形状等の任意形状の小片にすることができる。これらの小片のサイズは特に制限されず、給与するペットの種類や年齢に応じたものとすることができる。
【0020】
ペットフードA及びBの製造方法は特に制限されず、従来用いられているペットフードの製造方法を採用して製造することができ、例えば、押出機、射出成形機、圧縮成形機等を用いて常法に従って製造することができる。
【0021】
ペットフードA及びBは、犬、猫等、家庭で飼育可能な小型の哺乳動物用の食餌として適しており、特に、犬用のペットフード(ドッグフード)として適している。
【0022】
本発明のペットフード製品において、ペットフードA及びBは、それらのうちの一方を給与後3時間以上経過した後に他方を給与する関係にある。即ち、本発明のペットフード製品の使用方法(本発明のペットフードの給与方法)においては、ペットフードA及びBのうちの一方を給与後、3時間以上、好ましくは5時間以上、更に好ましくは7〜12
時間経過した後に他方を給与する必要がある。ペットフードA及びBの給与サイクルを複数回連続する場合(ペットフードA及びBをそれぞれ交互に複数回給与する場合)は、3時間以上の時間間隔を置いて、ペットフードA、ペットフードBの順、あるいはその逆の順で、両フードを交互に給与する。その場合、一方を給与後に他方給与するまでの時間間隔は一定でも良く、変化させても良い。例えば、ペットに対し初めにペットフードAを給与した場合、その給与時刻から3時間以上経過した後に、該ペットにペットフードBを給与し、以降は、3時間以上の時間間隔を置いて、ペットフードA、ペットフードBの順で交互に給与する。
【0023】
また、本発明のペットフード製品の使用方法(本発明のペットフードの給与方法)は、前述したペットフードA及びBの給与サイクルに従うことに加えて更に、ペットフードA及びBの給与量を、質量比で、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1、好ましくは1〜1.5:1、更に好ましくは1〜1.2:1とする必要がある。斯かる給与量の関係は、ペットフードA及びBの給与サイクルを複数回連続する場合(ペットフードA及びBをそれぞれ交互に複数回給与する場合)は、各給与サイクルにおいて成立することが好ましい。本発明のペットフード製品において、ペットフードA及びBの含有質量比は、このようなペットフードA及びBの給与量の関係に対応したものとなっており、ペットフードA:ペットフードB=1〜2:1、好ましくは1〜1.5:1、更に好ましくは1〜1.2:1となっている。
【0024】
本発明のペットフード製品によれば、前述した使用方法(本発明のペットフードの給与方法)を順守することにより、食後の血中中性脂肪濃度の上昇が抑制されるので、優れた抗肥満効果が得られる。
【0025】
本発明による作用効果(抗肥満効果)をより確実に奏させるようにする観点から、ペットフードA及びBのうちの一方の給与時刻は0時から12時の時間帯から選択され、他方の給与時刻は12時から24時の時間帯から選択されることが好ましい。特に好ましい給餌の時間帯は、ペットフードA及びBのうちの一方の給与時刻が6時から10時の時間帯、他方の給与時刻が17時から21時の時間帯である。
【0026】
また、ペットフードA及びBの給与の順番、給与時刻は特に制限されないが、前述したペットフードA及びBそれぞれの好ましい組成を考慮すると、ペットフードAの給与時刻は0時から12時の時間帯、特に6時から10時の時間帯から選択され、ペットフードBの給与時刻は12時から24時の時間帯、特に17時から21時の時間帯から選択されることが好ましい。ペットフードAの特に好ましい組成例は、前述したように、炭水化物40〜50質量%、蛋白質24〜26質量%及び脂肪14〜20質量%、これに対しペットフードBの特に好ましい組成例は、炭水化物50〜60質量%、蛋白質18〜22質量%及び脂肪8〜12質量%であり、ペットフードAは、ペットフードBに比して、少なくとも蛋白質及び脂肪を多く含有し、炭水化物についても、含有量50質量%の一点のみにおいてペットフードBと重複するだけで、実質的にペットフードBより多く含有している。このような相対的に栄養価(脂肪含量)の高いペットフードAは、0時から12時の時間帯(午前)に給与し、相対的に栄養価(脂肪含量)の低いペットフードBは、12時から24時の時間帯(午後)に給与することが、食後の血中中性脂肪濃度の上昇抑制、延いては肥満防止の点で好ましい。
【実施例】
【0027】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
【0028】
〔実施例〕
下記表1に示す配合のドライタイプのドッグフードA及びBを製造した。より具体的には、ミキサーを用いて各原料を十分に混合した後、その混合物をエクストルーダーに供給して押出成型して膨化発泡させ、それをカッターにて切断して直径5mm、長さ10mmの円柱状の粒を造粒し、ドライヤーにて乾燥してドッグフードA及びBを製造した。こうして得られたドッグフードA及びBをそれぞれ個別にレトルト包材で密封包装してドッグフードA及びBの個装体を得、これら2種類の個装体を包装容器としての包装袋内に収納して、目的とするドッグフード製品を製造した。このドッグフード製品におけるドッグフードA及びBの含有質量比は、ドッグフードA:ドッグフードB=1:1であった。ドッグフードA及びBそれぞれの炭水化物、蛋白質及び脂肪の含有量を前記方法により測定した。その測定結果を水分含量と共に下記表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
〔ドッグフード製品評価試験〕
年齢3歳の雌のビーグル犬6頭(平均体重10kg/頭)を1頭ずつ別の檻に入れ、所定の給与時刻になったら、それぞれの檻の中に所定量のドッグフードを入れた皿を置いて自由に摂取させた。ドッグフードの給与時刻は9時及び21時の1日2回とし、9時にドッグフードAを100g給与し、21時にドッグフードBを100g給与した。ドッグフードAの給与前にビーグル犬から採血すると共に、ドッグフードAの給与後4時間経過毎にビーグル犬から採血し、採取した血液から血清を分離した。血清とは、血液中の脂質(中性脂肪、遊離脂肪酸)を分析するために、採血した血液を試験管中に放置し得られる上清のことであり、血液から血球と血小板を除いた成分である。血清中の中性脂肪濃度を酵素法(遊離グリセロール消去法)により測定し、血清中の遊離脂肪酸濃度を酵素法(UV END法)により測定した。その結果(各測定値の平均値)を
図1及び
図2に示す。
【0031】
図1には、実施例のドッグフード製品給与後の血中中性脂肪濃度の推移が示されている。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、ドッグフード給与後の血中中性脂肪濃度は、ドッグフードA及びBそれぞれの給与直後から4時間経過後までは、食事による脂質摂取を起因として増加するが、その後は減少している。このことから、ドッグフードA及びBを体内に摂取しても、それに起因する中性脂肪の体内への蓄積が抑制されることがわかる。また、ドッグフードAは、ドッグフードBに比して蛋白質及び脂肪の含有量が多く(表1参照)、相対的に栄養価(脂肪含量)が高いにもかかわらず、これを0時から12時の時間帯に給与した場合には、
図1(a)に示すように、給与後の血中中性脂肪濃度の低下が著しい結果となった。これは、斯かる時間帯(午前中)においては犬の体内では体脂肪がエネルギーとして利用されやすいことによるものと推察される。このことから、脂肪含量が相対的に高いペットフードAの給与時刻を0時から12時の時間帯から選択することは、肥満防止の点で有効であることがわかる。
【0032】
図2には、実施例のドッグフード製品給与後の血中遊離脂肪酸濃度の推移が示されている。脂肪組織の脂肪細胞中には、蓄積された脂肪(トリグリセリド)をエネルギー源としての遊離脂肪酸に分解する酵素が存在しており、この酵素が活性化されると蓄積脂肪が分解され遊離脂肪酸となり、血液を介して肝臓に運ばれエネルギー源として燃焼されることが知られている。従って、血中遊離脂肪酸濃度の上昇は、体脂肪分解の促進を意味し、肥満防止に繋がる。ドッグフードBについては、
図2(b)に示すように、ドッグフード給与後の血中遊離脂肪酸濃度の上昇が見られなかったが、相対的に栄養価(脂肪含量)が高いドッグフードAについては、
図2(a)に示すように、給与後4時間経過後から血中遊離脂肪酸濃度の上昇が著しい結果となった。このことから、脂肪含量が相対的に高いペットフードAの給与時刻を0時から12時の時間帯から選択することは、体脂肪分解の促進、延いては肥満防止の点で有効であることがわかる。