(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-128160(P2015-128160A)
(43)【公開日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20150612BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20150612BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20150612BHJP
B21B 27/02 20060101ALI20150612BHJP
【FI】
H05K7/18 A
C25D7/00 G
B21B1/22 C
B21B27/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-262517(P2014-262517)
(22)【出願日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0167267
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス インコーポレイテド
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ソンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン インチュル
【テーマコード(参考)】
4E002
4E016
4K024
【Fターム(参考)】
4E002AD10
4E002BB09
4E002CB03
4E016AA02
4E016DA12
4K024AA03
4K024AA07
4K024AA11
4K024AB01
4K024BA01
4K024BB09
4K024BC01
4K024DA01
4K024GA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来のUVコーティングでは追加の工程を必要とし、実際に使用される時、その表面が滑らかであるために指紋または引掻き傷を防ぐ効果が貧弱である。このような問題を解決するために、指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属部品の表面に指紋が残らずに、引掻き傷が発生しないように、金属部品の表面の全部または一部に不整凹凸を形成する特性を有する。凹凸表面のめっき処理によって形成されためっき層をさらに備える。めっき層は半光沢層であることが望ましく、凹凸表面の粗さは0.7Raから2.5Raの範囲内にあることが望ましい。金属シートを形成する圧延工程で凹凸を形成すると、凹凸を形成するための別の工程の必要がなく、製造コストを縮小できる。金属カバーは、金属シート(10)、凹凸部分(20)、およびめっき層(30)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品の表面の全部または一部に不整凹凸が形成されて、前記金属部品の表面に指紋が残らず、引掻き傷が発生しないことを特徴とする、指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置。
【請求項2】
前記凹凸表面のめっき処理によって形成されためっき層をさらに備える、請求項1に記載の指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置。
【請求項3】
前記めっき層が半光沢層である、請求項2に記載の指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置。
【請求項4】
前記凹凸の粗さが0.7Raから2.5Raの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置。
【請求項5】
(a)金属シートの成形過程において、金属シートの表面に凹凸を形成する凹凸形成ステップを含む、指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置の製造方法。
【請求項6】
(b)前記凹凸表面のめっき処理によってめっき層が形成されるめっき層形成ステップをさらに含む、請求項5に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【請求項7】
ステップ(a)で、前記金属シートが圧延工程によって形成され、該圧延工程で使用されるローラが粗い表面を有するように形成される、請求項5または請求項6に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)で形成された前記めっき層が半光沢層である、請求項6に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【請求項9】
前記凹凸の形成が前記金属シートの片側または1領域だけで発生する、請求項7に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【請求項10】
前記凹凸が0.7Raから2.5Raの範囲内の表面粗さを有するように形成される、請求項7に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【請求項11】
(c)前記凹凸の一部分を平滑化する後処理ステップをさらに含む、請求項5または請求項6に記載の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気装置およびその製造方法に関し、より具体的にはカードソケットまたはコネクタ等の電気装置の金属部品の表面に指紋および引掻き傷が発生することを防ぐための指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カードソケットまたはコネクタの外面に金属材料から作られた部品が存在すると、製造工程中に、または消費者が使用した時に指紋および引掻き傷が発生する場合がある。このように金属部品に指紋または引掻き傷が発生すると、特に指紋または引掻き傷が製造工程中に発生すると、カードソケットまたはコネクタの商品価値が損なわれる。
【0003】
この問題に対処するために、先行技術では、テープ貼付、塗装、印刷、ヘアライン(表面スクラッチ処理)、およびレーザー処理を含む、滑らかな金属表面の後処理のための工程が使用されてきた。
【0004】
滑らかな金属表面の後処理工程を使用する技術の一例は、「コネクタカバーの製造方法」として韓国公開特許第2013−0101273号(以下「先行技術文献」)で開示されている。
【0005】
先行技術文献によれば、既に完全に形成された金属コネクタカバーの表面の引掻き傷の発生を防ぐために、UVコーティングによって硬化層が形成される。これらの特徴を有するこの先行技術文献の場合、金属表面がめっきされた後、金属表面にUVコーティング後処理工程が施されるので、追加の工程が必要となるばかりでなく、実際に使用される時、その表面が滑らかであるために指紋または引掻き傷を防ぐ効果が貧弱である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2013−0101273号(2013.09.13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した先行技術の問題を解決するために、金属部品の表面を粗面化することによって使用中の指紋または引掻き傷の発生を効果的に防ぐことができる指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置は、金属部品の表面に指紋が残らずに、引掻き傷が発生しないように、金属部品の表面の全部または一部に不整凹凸を形成する特性を有する。
【0009】
本発明の指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置は、凹凸表面のめっき処理によって形成されためっき層をさらに備える。
【0010】
めっき層は半光沢層であることが望ましく、凹凸表面の粗さは0.7Raから2.5Raの範囲内にあることが望ましい。
【0011】
本発明による指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置の製造方法は、(a)金属シートの成形過程において、その表面に凹凸を形成する凹凸形成ステップを含む。
【0012】
本発明による指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法は、(b)凹凸表面のめっき処理によってめっき層が形成されるめっき層形成ステップをさらに含む。
【0013】
ステップ(a)で、金属シートは圧延工程によって形成され、圧延工程で使用されるローラは粗い表面を有するように形成される。
【0014】
凹凸の形成は、金属シートの片側または1領域だけで発生する。
【0015】
本発明による指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造方法は、(c)凹凸の一部分を平滑化する後処理ステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明による指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置およびその製造方法は、以下の効果を有する。
【0017】
第一に、金属シートの表面の一部または全部に凹凸を形成することにより、金属シートの表面上の指紋の残留および引掻き傷を効果的に防止できる。
【0018】
第二に、凹凸の半光沢めっき処理により、金属シートの表面上の指紋の残留および引掻き傷をさらに効果的に防止できる。
【0019】
第三に、金属シートの形成後の後処理工程によって凹凸部分を形成するのではなくて、金属シートを形成する圧延工程で凹凸を形成するので、凹凸を形成するための別の工程の必要がなく、結果的に製造コストを縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照して本発明による指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置およびその製造方法を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明による指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の写真であり、そして
図2は
図1に示された金属カバーの断面である。
【0023】
本発明による指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置は、下側部分でカードを覆うと共に上側部分でカードの挿入および取出しを可能にする金属カバー(1)を備える。
【0024】
この種の金属カバー(1)は上側部分でのカードの挿入または取出しの過程で指紋の残留または引掻き傷の発生の危険にさらされる可能性があるが、金属カバー(1)の指紋および引掻き傷防止構造により、指紋または引掻き傷の発生の危険性がない。
【0025】
金属カバー(1)は、金属シート(10)、凹凸部分(20)、およびめっき層(30)を備える。
【0026】
金属シート(10)は、ローラの間を通過する間に金属原料が圧延される圧延工程によって製造される。
【0027】
凹凸部分(20)は、凹凸表面が形成された加圧ローラによって金属シート(10)を形成する工程で、金属シート(10)の表面に0.7〜2.5の表面粗さを有するように形成される。この凹凸部分(20)は、金属プレート(10)の表面全体に、または片側または1領域だけに形成されてもよい。
【0028】
めっき層(30)は、凹凸部分(20)の表面の半光沢めっき処理によって形成される。プレート材料は、凹凸部分(20)の凹部を満たすことはなく、むしろ均一な厚みで凹部および凸部の両方を覆い、その結果、凹凸部分(20)の表面粗さが維持される。このめっき層(30)は、凹凸部分(20)上のみに形成されてもよく、または凹凸部分(20)が形成されていない部分に形成されてもよい。めっき処理材料には、ニッケル(Ni)、金(Au)、または錫(Sn)が使用され得る。
【0029】
凹凸部分(20)の表面粗さが0.7Ra未満の場合、指紋および引掻き傷防止効果は実質的にゼロになり、一方表面粗さが2.5Raを超えると、見栄えが大きく損なわれる。
【0030】
以下、本発明による指紋/引掻き傷防止表面を有する電気装置の製造工程を検討する。
【0031】
最初に、粗い表面を持つローラの間に金属原料を通す加圧圧延工程を金属原料に施す。圧延工程で使用されるローラには、その表面全体またはその一部分のみに凹凸が形成され得る。
【0032】
さらに、上方および下方からシートを加圧するローラは、両方に凹凸が形成されてもよく、または一方だけに凹凸が形成されてもよい。このように、2つのローラに形成された凹凸の形式に従って、多様な結果を選択的に得ることができ、形成された金属シートの両側、片側、または1領域だけに凹凸が形成される。
【0033】
凹凸は、このようにして圧延によって金属シート上に形成されてもよく、あるいはダイキャストなどのいくつかの他の方法による金属原料の成形で凹凸を形成してもよい。
【0034】
凹凸部分(20)を有する金属シート(10)の形成後、凹凸部分(20)の表面の半光沢めっき処理によってめっき層(30)を形成する。めっき層(30)は、凹凸部分(20)が形成されたシートの一部分のみに形成される、あるいは金属シート(10)の表面全体にわたって形成される。めっき層(30)は、凹部を満たすことなく、凹凸部分(20)の凹部および凸部の両方にわたって均一な厚みで形成される。めっき層(30)の形成は任意である。言い換えれば、金属プレート(10)がPCBにはんだ付けされる場合に、めっき層が形成されるが、そうでない場合は、めっき層を省略することができる。
【0035】
必要に応じて、別の後処理工程を使用して小さな領域内の印刷処理の目的などのために凹凸部分の一部分を平滑化してもよい。この後処理工程は必須工程ではなく、必要に応じて実行される任意の工程である。この後処理工程は、めっき処理の前または後のいずれかで実行される。
【0036】
以上、好適な実施形態に基づいて、本発明による指紋/引掻き傷防止構造を有する電気装置およびその製造方法を説明したが、しかしながら、本発明は特定の実施形態に限定されず、関連分野の当業者であれば、この特許請求の範囲で開示された範囲から逸脱することなく様々な方法でこれらの実施形態を変更することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:金属カバー 10:金属シート
20:凹凸部分 30:めっき層
【外国語明細書】