特開2015-12841(P2015-12841A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-12841(P2015-12841A)
(43)【公開日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20141219BHJP
【FI】
   A01G31/00 601C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-142136(P2013-142136)
(22)【出願日】2013年7月5日
(71)【出願人】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】池内 博
(72)【発明者】
【氏名】大西 憲男
(72)【発明者】
【氏名】平松 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 陽介
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA70
2B314PB20
2B314PB22
2B314PB45
2B314PB49
2B314PB68
2B314PB70
(57)【要約】
【課題】植物の根元に養液を含む霧を供給すると共に、該霧を栽培ボックス内に均等に充満させるファンを備える植物栽培装置において、前記ファンの回転駆動軸が付着する養分で回転停止が生じるのを防止する。
【解決手段】ノズルから噴霧する養液を含む霧を所要の流速で前記栽培ボックス内に流通させるファンユニットを、該ファンユニットは栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付けるモータと、該モータに連結して前記栽培ボックス内に突出させる回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端に連結して前記栽培ボックス内で回転させる噴霧加速用回転羽根を備え、前記設置用開口の周縁から前記栽培ボックス内に縮径させて突出する噴霧漏れ防止用のカバーを設け、該カバーの突出端に設ける中央貫通穴に貫通させた前記回転駆動軸の先端に前記噴霧加速用回転羽根を取り付け、前記カバーで前記栽培ボックス内の前記養液を含む噴霧が前記モータと前記回転駆動軸との連結部側に漏れて付着するのを防止する構成としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に養液を噴霧するノズルと、
前記養液を含む噴霧を所要の流速で前記栽培ボックス内に流通させるファンユニットを備え、
前記ファンユニットは前記栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付けるモータと、該モータに連結して前記栽培ボックス内に突出させる回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端に連結して前記栽培ボックス内で回転させる噴霧加速用回転羽根を備え、
前記設置用開口の周縁から前記栽培ボックス内に縮径させて突出する噴霧漏れ防止用のカバーを設け、該カバーの突出端に設ける中央貫通穴に貫通させた前記回転駆動軸の先端に前記噴霧加速用回転羽根を取り付け、
前記カバーで、前記栽培ボックス内の前記養液を含む噴霧が前記モータと前記回転駆動軸との連結部側に漏れて付着するのを防止する構成としていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記カバーの中央貫通穴の内周面と前記回転駆動軸の軸方向の中間位置の外周面との間にシールベアリングを介在させ、前記養液を含む噴霧が前記モータ側へ漏れるのを封止すると共に、外気を導入しない構成としている請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記回転駆動軸の軸方向の中間に外気吸引用回転羽根を取り付け、前記外気吸引用回転羽根を前記中央貫通穴に隙間をあけて挿通し、または、
前記中央貫通穴の周縁から折り返して形成した筒部の中空の貫通穴あるいは前記カバーの内周面から突設した筒部の中空の貫通穴と前記中央貫通穴を同軸上に連通させ、前記筒部の中空の貫通穴に前記外気吸引用回転羽根を隙間をあけて挿通し、
前記外気吸引用回転羽根の外周側の隙間は1mm〜10mmとし、外気を導入する構成としている請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記モータは前記設置用開口の内部または該設置用開口の外面側に設置し、該モータに基端を連結する前記回転駆動軸の長さは100mm〜400mm、該回転駆動軸の直径は5mm〜20mmとし、回転速度は1000rpm〜4000rpmである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記ファンユニットの回転駆動軸の先端に設ける前記噴霧加速用回転羽根の外径より、該回転駆動軸の中間位置に設ける前記外気吸引用回転羽根の外径を小さくし、
該噴霧加速用回転羽根の外径(R1)と前記外気吸引用回転羽根の外径(R2)とはR1:R2=2:1〜12:1の範囲に設定している請求項1または請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記カバーを縮径して突出した閉鎖部を囲むように前記設置用開口の周縁より突出し、先端側内周面を前記噴霧加速用回転羽根の外周面に摺接または近接して位置させるネット材又は多孔質材からなる外筒を備えている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
1つの前記ファンユニットと1つの前記ノズルとを前記栽培ボックス内の対角位置に設置し、前記ノズルからの噴霧方向を前記ファンユニットの噴霧加速用回転羽根で逆方向として、前記栽培ボックス内で噴霧を循環させている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記ファンユニットの設置側の一側部と前記ノズルの設置側の他側部を仕切る仕切壁を前記栽培ボックス内に設置し、前記仕切壁を挟む両側部に栽培植物を配置し、または、前記ノズルの設置側に栽培植物を配置する一方、ファンユニット設置側には栽培植物を配置していない請求項7に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関し、詳しくは、栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内にノズルより養液を噴霧すると共に、該噴霧をファンにより所要の流速で流通させる植物栽培装置において、養液によりファンの目詰まりが発生しにくい構造とし、メンテナンス性を向上するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の植物栽培装置として、本出願人は特開2012−223127号公報で、図8(A)(B)に示すように、栽培植物Pの根部Prが下垂する中空の栽培ボックス100内にノズル101より養液を噴霧すると共に、該噴霧をモータ駆動の循環用のファン102により所要の流速で流通させる植物栽培装置を提供している。
【0003】
前記特許文献1の植物栽培装置は、栽培ボックス内の湿度を近飽和状態に保持しているため、密植や連作が可能となり、栽培植物を大量かつ迅速に育成でき、営農用の栽培装置として好適に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−223127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記植物栽培装置では、栽培ボックス100内に設置されたファン102の駆動部に養液を含む霧の成分が付着する。詳しくは、ファンの回転駆動軸とモータの軸受部からなる連結部に粘性を有する養液が固着し、生産性を上げるためにノズルからの養液の噴霧とファンの回転を休止せずに続けると、堆積する養液の固着量が迅速に増加し、ファンの回転停止が短時間で発生する。その結果、メンテナンス回数が増加し、ファンモータの交換も必要となり、維持コストが増加する問題がある。
【0006】
本発明は前記問題を鑑みてなされたもので、ファンの回転駆動軸とモータの連結部に養液の噴霧が付着しないようにして、該養液付着によるファンの回転停止の発生を低減・防止し、メンテナンス性の向上を図って営農コストを低減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に養液を噴霧するノズルと、
前記養液を含む噴霧を所要の流速で前記栽培ボックス内に流通させるファンユニットを備え、
前記ファンユニットは前記栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付けるモータと、該モータに連結して前記栽培ボックス内に突出させる回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端に連結して前記栽培ボックス内で回転させる噴霧加速用回転羽根を備え、
前記設置用開口の周縁から前記栽培ボックス内に縮径させて突出する噴霧漏れ防止用のカバーを設け、該カバーの突出端に設ける中央貫通穴に貫通させた前記回転駆動軸の先端に前記噴霧加速用回転羽根を取り付け、
前記カバーで、前記栽培ボックス内の前記養液を含む噴霧が前記モータと前記回転駆動軸との連結部側に漏れて付着するのを防止する構成としていることを特徴とする植物栽培装置を提供している。
【0008】
前記のように、本発明では、ファンユニットの噴霧加速用回転羽根は栽培ボックス内に突出させて、栽培ボックス内にノズルから噴霧される養液を含む霧を栽培ボックス内に流通させている。一方、該噴霧加速用回転羽根の回転駆動軸と連結するモータは栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付け、該モータと噴霧加速用回転羽根との間に噴霧漏れ防止用のカバーを突設し、該カバーにより栽培ボックス内の養液を含む霧がモータと回転駆動軸との連結部側に漏れて該連結部に付着するのを低減・防止している。これにより、養液の付着によりファンの回転が停止するのを低減・防止でき、メンテナンスによる休止時間を短くして生産性を高めることができると共に、ファンの交換頻度も低減し、維持コストを低下することができる。
【0009】
前記栽培ボックスの外壁に設ける設置用開口の内部に前記モータを設置し、または該設置用開口を囲む外壁周縁にモータを取り付けて該設置用開口内に前記回転駆動軸を挿通している。
前記噴霧漏れ防止用のカバーは樹脂製または金属製とし、前記設置用開口の内周面、内面側周縁または外面側周縁に固定する固定筒部と、該固定筒部の栽培ボックス側先端から前記栽培ボックス内に縮径して突出する共に突出端に中央貫通穴を設けた閉鎖部を備えた形状としている。
【0010】
前記カバーの中央貫通穴の内周面と前記回転駆動軸の軸方向の中間位置の外周面との間にシールベアリングを介在させ、前記養液を含む噴霧が前記モータ側へ漏れるのを封止すると共に、外気を導入しない構成としてもよい。
【0011】
または、前記回転駆動軸の軸方向の中間に外気吸引用回転羽根を取り付け、前記外気吸引用回転羽根を前記中央貫通穴に隙間をあけて挿通し、または、
前記中央貫通穴の周縁から折り返して形成した筒部の中空の貫通穴あるいは前記カバーの内周面から突設した筒部の中空の貫通穴と前記中央貫通穴を同軸上に連通させ、前記筒部の中空の貫通穴に前記外気吸引用回転羽根を隙間をあけて挿通し、
前記外気吸引用回転羽根の外周と前記カバーの内周の間の隙間は1mm〜10mmとし、該隙間を通って外気を栽培ボックス内に導入する構成としてもよい。
【0012】
前記のように、回転駆動軸の中間に外気吸引用回転羽根を取り付ける場合、該外気吸引用回転羽根の外周面と前記カバーの筒部の内周面との間に1mm〜10mmの微小な隙間をあけることが好ましい。これは、隙間が1mm未満であると、外気吸引用回転羽根の回転によりボックス内から養液を含む噴霧をファンユニット内に吸い込む負圧が発生しやすくなるためである。
【0013】
前記のように、本発明の植物栽培装置では、噴霧加速用回転羽根を先端に固定する回転駆動軸の軸方向の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付けて外気導入型にする場合と、取り付けずに外気導入をしない場合があり、それに応じて前記噴霧漏れ防止用のカバーの関係を下記(1)〜(4)のいずれかで規定している。
【0014】
(1)ファンの回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付けず、カバーの中央貫通穴の周縁と前記回転駆動軸の軸方向の中間位置の外周面との間を液漏れ防止のためにシールする。その際、前記のように、シールベアリングを介在させることが好ましいが、中央貫通穴の内周面に回転駆動軸の外周面を摺接させてもよい。
この場合、外気導入はないが、前記カバーによりモータ側への噴霧漏れの防止を図ることができる。
【0015】
(2)回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの突出端の中央貫通穴に前記外気吸引用回転羽根を配置する。
(3)回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの突出端の中央貫通穴の周縁を折り返して形成した筒部内に前記外気吸引用回転羽根を配置する。
(4)ファンの回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの先端の中央貫通穴に前記外気吸引用回転羽根と先端の噴霧加速用回転羽根の間の回転駆動軸を遊挿して比較的大きな隙間をあけ、該カバーの内周から突設した筒部内周面に前記外気吸引用回転羽根の外周を沿わせる。
前記(4)のタイプの外気吸引用回転羽根の外径は前記(2)(3)の外気吸引用回転羽根の外径より大きくし、外気導入量を前記(2)(3)より多くすることが好ましい。
【0016】
前記モータは前記設置用開口の内部または該設置用開口の外面側に設置し、該モータに基端を連結する前記回転駆動軸の長さは100mm〜400mm、該回転駆動軸の直径は5mm〜20mm、回転速度は1000rpm〜4000rpmが好ましい。
【0017】
前記ファンユニットの回転駆動軸の先端に設ける前記噴霧加速用回転羽根の外径より、該回転駆動軸の中間位置に設ける前記外気吸引用回転羽根の外径を小さくし、
該噴霧加速用回転羽根の外径(R1)と前記外気吸引用回転羽根の外径(R2)とはR1:R2=2:1〜12:1の範囲に設定することが好ましい。
前記のように、外気吸引用回転羽根の外径を噴霧加速用回転羽根の外径より小さくすることで、前記カバー先端の中央貫通穴に養液を含む噴霧が入るのを確実に低減・防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の植物栽培装置では、前記カバーのテーパ状の遮蔽筒部を囲むように前記設置用開口の周縁より突出し、先端側内周面を前記噴霧加速用回転羽根の外周面に摺接または近接して位置させるネット材又は多孔質材からなる外筒を設置してもよい。
前記のように、外筒により噴霧加速用回転羽根を保護でき、外筒の材質をネット材又は多孔質材としているため、通気性を確保して、噴霧加速用回転羽根による中空部内の噴霧の循環の促進を保持できる。
【0019】
前記ノズルとして二流体ノズルが好適に用いられる。該二流体ノズルは、例えば、ノズル本体の気体供給路および液体供給路のいずれも供給路途中に流路断面積を縮小したオリフィスを設けず、噴射側に向けて流路断面積を縮小して流体圧を高め、かつ、該気体供給路と液体供給路をノズル本体の先端に開口する混合流体噴射穴に面する気液混合部で合流させ、かつ、前記ノズル本体の先端側の外面から1本のJ形状の衝突用ピンを突設し、該衝突用ピンは軸線方向に延在する脚部と、該脚部の先端から前記混合流体噴射穴に向けて折り返す衝突部を備え、該衝突部に前記混合流体噴射穴から噴射する混合流体が衝突して超音波が発生し、該超音波で衝突した液滴が微粒化される超音波二流体ノズルとしている。
【0020】
本発明の植物栽培装置では、前記ノズルからの養液を含む霧の噴霧量および前記ファンにより与える霧の流速と、前記栽培ボックスの容積と、前記栽培ボックス内の湿度との相関関係より予め測定したデータに基づいて該栽培ボックス内の湿度が所要範囲となるように設定し、該設定値に基づいてノズルおよびファンを制御する制御装置を備えていることが好ましい。
具体的には、前記栽培ボックス内に前記ノズルから、養液をレーザー法での測定値で平均粒子径5〜10μmの霧として噴霧すると共に噴霧量を2〜3リッター/時間で噴霧し、
前記栽培ボックスの内容積がノズル1個当たり最大6m3の割合となるように、該栽培ボックスの形状に応じて前記ノズルの個数および配置位置を設定し、かつ、該ノズルから噴霧で前記栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるように前記制御装置で制御することが好ましい。
【0021】
ノズルから噴霧する養液でボックス内部の湿度を95%以上にすると、該ボックス内部に垂下する栽培植物の根に常時養液を供給して栽培植物の成長を促進できる。その結果、栽培植物の収穫回数が増加し、営農用の植物栽培装置として有効となる。
また、本発明の植物栽培装置は営農用を対象としているため、最も経済的と判断できる栽培ボックスとして例えば長さ6m、巾1m、高さ0.4mの大型栽培ボックスが好適に用いられる。この大型の栽培ボックスの中空内に平均粒子径が5〜10μmのドライフォグを均等に充満させて湿度95%以上としている。かつ、この湿度95%以上を保持するために、噴霧量が2〜3リッター/時間のノズルを用いると、ノズルの設置個数を低減できる。
【0022】
前記のように、栽培ボックス内の湿度を95%以上に保持すると、前記ファンの回転駆動軸とモータとの連結部に養液が付着して、ファンの回転停止が起こり易い。よって、本発明では、前記のように、噴霧液漏れ防止用のカバーを設置して、ファンの回転駆動軸とニータとの連結部への液漏れを防ぎ、液の付着によるファンの回転停止を低減・防止している。
【0023】
前記ファンユニットと前記ノズルとを前記栽培ボックス内の対角位置に設置し、前記ノズルからの噴霧方向を前記ファンユニットの噴霧加速用回転羽根で逆方向として、前記栽培ボックス内で噴霧を循環させることが好ましい。
【0024】
前記ファンユニットの設置側の一側部と前記ノズルの設置側の他側部の間の中間部を仕切る仕切壁を前記栽培ボックス内に設置し、該仕切壁の回りに噴霧の環状循環通路を形成し、前記仕切壁を挟む両側部に栽培植物を配置し、または前記ノズルの設置側に栽培植物を配置する一方、ファンユニット設置側には栽培植物を配置しない構成としてもよい。
【0025】
前記のように、仕切壁を設けて、養液を含む霧の循環通路を形成すると、栽培ボックス内の霧の循環をより促進することができる。
なお、仕切壁の位置は限定されず、栽培植物によって仕切壁の位置を変更してもよい。
【0026】
前記栽培ボックスの上面開口を、栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で閉鎖して前記中空部を形成している。
前記ノズルからの噴霧は間欠的または連続的に自動または手動のオン・オフの切り替え操作で行っている。
さらに、前記栽培ボックスの底部に滞留した養液の残留を養液槽に回収し、新しい養液と混合して再噴霧養液としてもよい。
【0027】
本発明の植物栽培装置では、サラダナ、リーフレタス、ベビーリーフ、ミズナ、大葉、ケーキキャベツ、ハーブ、バジルなどの葉菜、トマト、イチゴ、メロン、マンゴーなどの果菜、ジャガイモ、ラディッシュなどの根菜、豆、粟、麦、稲等の穀物等の栽培が可能であり、花卉類を栽培することもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の植物栽培装置では、ファンの駆動用のモータを養液が噴霧されている栽培ボックス内部に設置せず、外壁に設けた設置用開口に設置し、かつ、該モータと連結する回転駆動軸の先端に設ける噴霧加速用回転羽根は栽培ボックス内の中空部に配置すると共に、噴霧加速用回転羽根とモータとの間に噴霧漏れ防止用のカバーを介在させている。該カバーにより、養液を含む霧が回転駆動軸とモータの連結部に付着することを低減・防止して、ファンの回転停止を低減防止でき、メンテナンス性を向上して、ランニングコストを低減できる。また、ファンユニットの噴霧加速用回転羽根で栽培ボックス内に突出させているため、養液を含む霧をボックス内に効率よく充満できると共に循環できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態の植物栽培装置の全体構成を示し、(A)は長さ方向の垂直断面図、(B)は水平断面図、(C)はファンユニットとノズルの配置を示す説明図である。
図2】本発明の第1実施形態のファンユニットを示し、(A)は断面図、(B)は(A)の右側面図、(C)は要部拡大図である。
図3】ノズルの一部断面図である。
図4】栽培ボックスと霧供給装置の関係を示す図面である。
図5】第2実施形態の断面図である。
図6】第3実施形態の断面図である。
図7】第4実施形態の断面図である。
図8】(A)(B)は従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の植物栽培装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1図4に第1実施形態を示す。
植物栽培装置は図1(A)〜(C)に示すように、横長な栽培ボックス1を設け、該栽培ボックス1の上面は開口として植物支持材2で閉鎖し、栽培ボックス1の内部を略密閉した中空部3としている。該中空部3内の幅方向の中間部に長さ方向に沿って仕切壁4を設置して前後室1a、1bに仕切っている。該仕切壁4の左右両端は栽培ボックス1の左右外壁1w1、1w2との間に空間C1、C2をあけ、前後側室1a、1bに養液を含む霧Mが矢印で示すように循環できるようにしている。
【0031】
栽培ボックス1の前側室1aの図中右側の外壁の内面からノズル5を突設し、対称位置となる後側室1bの左端側の外壁にファンユニット10を設置している。
【0032】
前記栽培ボックス1の前後室1a、1bには仕切壁4に沿って長さ方向Lに所要の間隔を空けると共に、前後室1aと1bとでは千鳥配置となるように植物Pを植えるようにしている。前記栽培ボックス1を複数設け、植物工場内、ビニールハウス、あるいは屋外に複数を設置している。家庭で庭やベランダに設置してもよい。
【0033】
前記栽培ボックス1の上面に載置する植物支持材2は発泡スチロールからなる基板の上面に遮熱板を固着している。該植物支持材2に植付穴を所要間隔であけ、該植付穴に栽培植物Pを植え付けたスポンジ材を押し込んで植物支持材2で支持し、中空部3内に植物支持材でフロート支持された栽培植物Pの根部Prを垂れ下げている。
【0034】
前記栽培ボックス1に取り付けるノズル5は図3に示す後述する二流体ノズルを用いている。該ノズル5から、肥料を水により所要倍率で希釈した養液を空気と混合して平均粒径5〜10μmのドライフォグの霧Mを噴霧している。該噴霧(M)は図1(B)に示すように、前側室1aで図中右端側より左側へと流れるようにしている。
【0035】
前記栽培ボックス1に取り付けるファンユニット10は図2(A)(B)に示す構成としている。
ファンユニット10はモータ11と、該モータ11の出力軸11aと連結する回転駆動軸12と、該回転駆動軸12の先端に固定した噴霧加速用回転羽根13を主たる構成要素としている。さらに、モータ11と回転駆動軸12との連結部(A)にノズル5から噴霧する養液が付着するのを防止する噴霧漏れ防止用のカバー20を設けている。
【0036】
栽培ボックス1の外壁1w1に円形穴からなる設置用開口14を設け、該設置用開口14内にモータユニットを嵌合固定している。該モータユニットはモータ11と、該モータ出力軸11aと回転駆動軸12の連結部(A)を支承する軸受16を保持する支持部品17を備えている。前記モータ11の出力軸11aと連結固定して回転させる回転駆動軸12は外壁1w1の内面から栽培ボックス1の後側室1bに突出する。該回転駆動軸12の突出端に噴霧加速用回転羽根13を固定し、所要の回転速度で回転させ、ノズル5から噴射される霧に所要の流速を与えている。
前記モータ11に連結する回転駆動軸12の長さは100mm〜400mm、該回転駆動軸12の直径は5mm〜20mmとし、回転速度は1000rpm〜4000rpmとしている。
【0037】
前記噴霧漏れ防止用のカバー20は回転駆動軸12の長さ方向の中間部まで覆うように設けている。該カバー20は樹脂製あるいは金属製とし、前記設置用開口14の内周面に嵌合する固定筒部21と、該固定筒部21の栽培ボックス側先端から栽培ボックス1内に円錐状に縮径して突出する共に突出端に中央貫通穴22を設けた閉鎖部23を備えた形状としている。
【0038】
前記カバー20の中央貫通穴22に前記回転駆動軸12を貫通させて先端を栽培ボックス1内に突出させ、その先端に前記噴霧加速用回転羽根13を固定している。前記中央貫通穴22の内周面と前記回転駆動軸12の外周面との間に図2(C)に示すように、シールベアリング24を介在させている。該シールベアリング24を介在させることで、回転駆動軸12は回転自在に突出させると共に、栽培ボックス1の内部に充満している養液を含む霧Mがカバー20の内部に漏出するのを防止している。該カバー20で前記モータユニットの軸受16、支持部品17をカバーし、モータの出力軸11aと回転駆動軸12との連結部(A)に霧に含まれる養液が付着するのを防止している。
【0039】
さらに、カバー20を囲むように前記設置用開口14の周縁より、ネット材なる円筒状の外筒30を設置している。該外筒30、カバー20の固定筒部21、モータユニットとは図2(A)に示すように、設置用開口14の内周面に積層して固定している。
栽培ボックス1内に突出する外筒30の先端30aを前記噴霧加速用回転羽根13の外周面に小さい隙間をあけて位置させている。該外筒30をネット材で形成しているため、外筒30の内部に栽培ボックス1内に充満している霧Mを矢印で示すように、噴霧加速用回転羽根13の背面側に流入させている。該噴霧加速用回転羽根13は図2(B)に示すように4枚羽根からなり、中心に固定した回転駆動軸12の回転により噴霧加速用回転羽根13に所要の流速を与えて、栽培ボックス1内に循環流れを与えている。本実施形態では、栽培ボックス1内を循環する霧Mに0.7m/s以上の流速を付与している。
【0040】
養液を噴霧する前記ノズル5は図3に示す形状の2流体ノズルを用いている。該ノズル5は図4に示すように、圧力空気供給管7bとサクションチューブからなる養液供給管7aを接続している。圧力空気供給管7bから導入する空気により養液供給管7aから養液を吸引し、図3に示すノズル5のノズル本体5aの内部で混合し、ノズル本体5aの先端に設けた噴口5bから噴射している。該噴口5bと対向位置の外部に噴口からの噴霧が衝突して超音波振動を発生させる衝突用ピン51からなる外部衝突部材を有する構成とし、超音波振動で粒子をより微細化している。該二流体のノズル5は2〜3リッター/時間で平均粒子径5〜10μmの超微細な霧の噴霧が行えるノズルとしている。
【0041】
前記ノズル5からドライフォグを噴霧し、これにより栽培ボックス1内に植えた栽培植物Pの根部Prにドライフォグを直接に吹き付け、根部Prを揺らせると共に養液の液滴を根部Prに接触させて養液を吸収させている。
【0042】
前記ノズル5からの噴霧の開始および停止は、栽培ボックス1の外部に配置した制御装置で自動的に行い、前記圧力空気供給管7bへの空気の供給と停止を図4に示すように、電磁開閉弁43を開閉して行っている。詳細には、コンプレッサー42にエアータンク46を介在させて接続した配管45と前記圧力空気供給管7bとを電磁開閉弁43を介して接続し、該電磁開閉弁43を制御装置81からの信号で間欠的に開閉している。
養液供給側では、液肥タンク47にポンプ48を介在させて接続した配管49を供給液タンク33の内に配置したフロート弁31と接続している。供給液タンク33内のフロート弁31は供給液タンク33内に貯溜する養液に浮上させ、設定量以下となるとポンプ48を駆動して配管49から養液を供給液タンク33に供給するようにしている。
【0043】
前記のように、電磁開閉弁43をオン・オフ制御し、または、コンプレッサー42をオン・オフにして、ノズル5からの噴霧を開始および所要時間後に停止して、栽培ボックス1内の湿度を95%以上100%以下の範囲で設定した湿度となるように保持している。 前記ノズル5からの噴霧量は、栽培ボックスの容積、噴霧量、噴霧速度および栽培ボックス内の湿度の相関関係を予め測定しておき、該測定したデータに基づいて、栽培ボックス1内の湿度を95%以上100%以下となるに必要な前記ノズル5からの1日の噴霧量を求めている。この求めた噴霧量に応じて、前記制御装置81から電磁開閉弁43に開閉信号を送付して、間欠噴霧または連続噴霧を行っている。
【0044】
前記構成とした植物栽培装置では、栽培ボックス1の中空部3内に、ノズル5から2〜3リッター/時間で養液を供給することで中空部3内を湿度95%以上100%以下に保持している。また、ノズル5から噴霧の平均粒子径を5〜10μmの超微細な霧であるドライフォグとしているため、水滴として凝集して落下するのを防止でき、大型の栽培ボックス1内を湿度95%以上100%以下の近飽和状態に保持することができる。このように微細化した養液の霧とすることで、栽培植物が養液を吸着しやすくし、同時に空中の酸素、窒素の触取も容易に行えるようにしている。かつ、近飽和状態を維持することができるため、栽培植物が常時養液を吸着することで、栽培植物の成長を促進させて経済的な営農を可能にしている。
かつ、中空部内に養液を含む霧を充満させることで、養液を無駄なく植物に吸収させることができるため、肥料および水の供給量を低減でき、密植栽培や連作を忌避する植物の栽培も可能にでき、コストの低減を図ることができる。かつ、養液や水の貯留設備、配管設備を簡素化でき、設備コストも低減できる。
【0045】
特に、ファンユニット10において、モータ11を栽培ボックス1の内部とカバー20で遮蔽し、モータ11と回転駆動軸12との連結部(A)に養液を含んだ霧Mが付着するのを防止し、回転駆動軸12の回転停止を低減・防止している。その結果、噴霧加速用回転羽根13の回転を継続して栽培ボックス1の内部に養液を含んだ霧Mを均等に充満させて、植物の生育を均等に促進することができる。かつ、ファンユニットのメンテナンス頻度および交換の期間を大幅に遅らせて、ランニングコストの低下を図ることができる。
【0046】
図5にファンユニット10とカバー20の構成を相違させた第2実施形態を示す。
図示のように、先端に噴霧加速用回転羽根13を取り付け、基端をモータ11に連結した回転駆動軸12の長さ方向の中間位置に外気吸引用回転羽根40を取り付けている。カバー20−Aは設置用開口14に固定するブラケット34に固定筒部21の基端に設けた座部21aを固定し、該固定筒部21の先端から、円錐の先端に設けた中央貫通穴22を囲む筒部22bを設けた遮蔽筒部23を突出している。該中央貫通穴22の内周面と外気吸引用回転羽根40の外周面との1mm〜10mmの隙間C5をあけている。前記カバー20−Aの固定筒部21にパンチングメタル、穴あき樹脂板等からなる円筒状の外筒30を設置し、該外筒30の先端を噴霧加速用回転羽根13の外周と隙間をあけて配置しており、該構成を含め、他の構成は前記第1実施形態と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
前記のように、回転駆動軸12には外気吸引用回転羽根40と噴霧加速用回転羽根13の2つの回転羽根を固定し、モータ11により所要の回転速度で回転させている。
噴霧加速用回転羽根13の外径(R1)と外気吸引用回転羽根40の外径(R2)とはR1>R2とし、かつ、R1:R2=2:1〜4:1の範囲に設定している。
【0048】
前記第1実施形態では、ファンユニット10の設置箇所では、カバー20により外部と遮蔽して、外気を導入していない。これに対して第2実施形態では、カバー20−Aによる遮蔽を完全に行わず、回転駆動軸11に外気吸引用回転羽根40を固定して外気を吸引し、外筒30の穴から栽培ボックス1の内部に外気を導入している。このように、カバー20−Aの中央貫通穴22と外気吸引用回転羽根40との間に隙間C5があるため、吸引した外気を前記のように栽培ボックス1の内部へ導入できる一方、栽培ボックス1内に充満する養液を含む霧Mは、隙間C5を通過してモータ11側へ侵入しようとしても跳ね返されて、モータ11側に侵入できず、モータ11と回転駆動軸12の連結部に養液が付着するのを防止できる。
【0049】
図6に第3実施形態を示す。
第3実施形態は第2実施形態と同様に、ファンユニット10の回転駆動軸12の中間位置に外気吸引用回転羽根40を取り付けおり、第2実施形態とはカバーの形状を変えている。カバー20−Bは先端の中央貫通穴22の周縁から折り返して筒部20mを形成し、該筒部20mに外気吸引用回転羽根40を配置している。他の構成は第1実施形態と同様であり、作用効果は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
図7に第4実施形態を示す。
第4実施形態も第2実施形態と同様に、ファンユニット10の回転駆動軸12の中間位置に外気吸引用回転羽根40を取り付けおり、第2、第3実施形態とはカバーの形状を変えている。カバー20−Cは遮蔽部23の円錐部の先端から中央貫通穴22を囲む筒部20mを突出し、円錐部の内面側からモータ側に向けた筒部20kを突出し、該筒部20kの中空部を中央貫通穴22と同軸に連通させている。該筒部20kの中空部に外気吸引用回転羽根40を配置し、外気吸引用回転羽根40の外周面と筒部20kの内周面との間の隙間C5をあけている。該第4実施形態の作用効果は第2、第3実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
本発明は前記実施形態に限定されず、例えば、ノズルの構成を変えてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲でファンユニットおよびカバーの構成を変えてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 栽培ボックス
5 ノズル
10 ファンユニット
11 モータ
12 回転駆動軸
13 噴霧加速用回転羽根
20 カバー
22 中央貫通穴
40 外気吸引用回転羽根40
P 植物
M 養液を含む霧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8