【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に養液を噴霧するノズルと、
前記養液を含む噴霧を所要の流速で前記栽培ボックス内に流通させるファンユニットを備え、
前記ファンユニットは前記栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付けるモータと、該モータに連結して前記栽培ボックス内に突出させる回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端に連結して前記栽培ボックス内で回転させる噴霧加速用回転羽根を備え、
前記設置用開口の周縁から前記栽培ボックス内に縮径させて突出する噴霧漏れ防止用のカバーを設け、該カバーの突出端に設ける中央貫通穴に貫通させた前記回転駆動軸の先端に前記噴霧加速用回転羽根を取り付け、
前記カバーで、前記栽培ボックス内の前記養液を含む噴霧が前記モータと前記回転駆動軸との連結部側に漏れて付着するのを防止する構成としていることを特徴とする植物栽培装置を提供している。
【0008】
前記のように、本発明では、ファンユニットの噴霧加速用回転羽根は栽培ボックス内に突出させて、栽培ボックス内にノズルから噴霧される養液を含む霧を栽培ボックス内に流通させている。一方、該噴霧加速用回転羽根の回転駆動軸と連結するモータは栽培ボックスの外壁に設けた設置用開口に取り付け、該モータと噴霧加速用回転羽根との間に噴霧漏れ防止用のカバーを突設し、該カバーにより栽培ボックス内の養液を含む霧がモータと回転駆動軸との連結部側に漏れて該連結部に付着するのを低減・防止している。これにより、養液の付着によりファンの回転が停止するのを低減・防止でき、メンテナンスによる休止時間を短くして生産性を高めることができると共に、ファンの交換頻度も低減し、維持コストを低下することができる。
【0009】
前記栽培ボックスの外壁に設ける設置用開口の内部に前記モータを設置し、または該設置用開口を囲む外壁周縁にモータを取り付けて該設置用開口内に前記回転駆動軸を挿通している。
前記噴霧漏れ防止用のカバーは樹脂製または金属製とし、前記設置用開口の内周面、内面側周縁または外面側周縁に固定する固定筒部と、該固定筒部の栽培ボックス側先端から前記栽培ボックス内に縮径して突出する共に突出端に中央貫通穴を設けた閉鎖部を備えた形状としている。
【0010】
前記カバーの中央貫通穴の内周面と前記回転駆動軸の軸方向の中間位置の外周面との間にシールベアリングを介在させ、前記養液を含む噴霧が前記モータ側へ漏れるのを封止すると共に、外気を導入しない構成としてもよい。
【0011】
または、前記回転駆動軸の軸方向の中間に外気吸引用回転羽根を取り付け、前記外気吸引用回転羽根を前記中央貫通穴に隙間をあけて挿通し、または、
前記中央貫通穴の周縁から折り返して形成した筒部の中空の貫通穴あるいは前記カバーの内周面から突設した筒部の中空の貫通穴と前記中央貫通穴を同軸上に連通させ、前記筒部の中空の貫通穴に前記外気吸引用回転羽根を隙間をあけて挿通し、
前記外気吸引用回転羽根の外周と前記カバーの内周の間の隙間は1mm〜10mmとし、該隙間を通って外気を栽培ボックス内に導入する構成としてもよい。
【0012】
前記のように、回転駆動軸の中間に外気吸引用回転羽根を取り付ける場合、該外気吸引用回転羽根の外周面と前記カバーの筒部の内周面との間に1mm〜10mmの微小な隙間をあけることが好ましい。これは、隙間が1mm未満であると、外気吸引用回転羽根の回転によりボックス内から養液を含む噴霧をファンユニット内に吸い込む負圧が発生しやすくなるためである。
【0013】
前記のように、本発明の植物栽培装置では、噴霧加速用回転羽根を先端に固定する回転駆動軸の軸方向の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付けて外気導入型にする場合と、取り付けずに外気導入をしない場合があり、それに応じて前記噴霧漏れ防止用のカバーの関係を下記(1)〜(4)のいずれかで規定している。
【0014】
(1)ファンの回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付けず、カバーの中央貫通穴の周縁と前記回転駆動軸の軸方向の中間位置の外周面との間を液漏れ防止のためにシールする。その際、前記のように、シールベアリングを介在させることが好ましいが、中央貫通穴の内周面に回転駆動軸の外周面を摺接させてもよい。
この場合、外気導入はないが、前記カバーによりモータ側への噴霧漏れの防止を図ることができる。
【0015】
(2)回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの突出端の中央貫通穴に前記外気吸引用回転羽根を配置する。
(3)回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの突出端の中央貫通穴の周縁を折り返して形成した筒部内に前記外気吸引用回転羽根を配置する。
(4)ファンの回転駆動軸の中間位置に外気吸引用回転羽根を取り付け、カバーの先端の中央貫通穴に前記外気吸引用回転羽根と先端の噴霧加速用回転羽根の間の回転駆動軸を遊挿して比較的大きな隙間をあけ、該カバーの内周から突設した筒部内周面に前記外気吸引用回転羽根の外周を沿わせる。
前記(4)のタイプの外気吸引用回転羽根の外径は前記(2)(3)の外気吸引用回転羽根の外径より大きくし、外気導入量を前記(2)(3)より多くすることが好ましい。
【0016】
前記モータは前記設置用開口の内部または該設置用開口の外面側に設置し、該モータに基端を連結する前記回転駆動軸の長さは100mm〜400mm、該回転駆動軸の直径は5mm〜20mm、回転速度は1000rpm〜4000rpmが好ましい。
【0017】
前記ファンユニットの回転駆動軸の先端に設ける前記噴霧加速用回転羽根の外径より、該回転駆動軸の中間位置に設ける前記外気吸引用回転羽根の外径を小さくし、
該噴霧加速用回転羽根の外径(R1)と前記外気吸引用回転羽根の外径(R2)とはR1:R2=2:1〜12:1の範囲に設定することが好ましい。
前記のように、外気吸引用回転羽根の外径を噴霧加速用回転羽根の外径より小さくすることで、前記カバー先端の中央貫通穴に養液を含む噴霧が入るのを確実に低減・防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の植物栽培装置では、前記カバーのテーパ状の遮蔽筒部を囲むように前記設置用開口の周縁より突出し、先端側内周面を前記噴霧加速用回転羽根の外周面に摺接または近接して位置させるネット材又は多孔質材からなる外筒を設置してもよい。
前記のように、外筒により噴霧加速用回転羽根を保護でき、外筒の材質をネット材又は多孔質材としているため、通気性を確保して、噴霧加速用回転羽根による中空部内の噴霧の循環の促進を保持できる。
【0019】
前記ノズルとして二流体ノズルが好適に用いられる。該二流体ノズルは、例えば、ノズル本体の気体供給路および液体供給路のいずれも供給路途中に流路断面積を縮小したオリフィスを設けず、噴射側に向けて流路断面積を縮小して流体圧を高め、かつ、該気体供給路と液体供給路をノズル本体の先端に開口する混合流体噴射穴に面する気液混合部で合流させ、かつ、前記ノズル本体の先端側の外面から1本のJ形状の衝突用ピンを突設し、該衝突用ピンは軸線方向に延在する脚部と、該脚部の先端から前記混合流体噴射穴に向けて折り返す衝突部を備え、該衝突部に前記混合流体噴射穴から噴射する混合流体が衝突して超音波が発生し、該超音波で衝突した液滴が微粒化される超音波二流体ノズルとしている。
【0020】
本発明の植物栽培装置では、前記ノズルからの養液を含む霧の噴霧量および前記ファンにより与える霧の流速と、前記栽培ボックスの容積と、前記栽培ボックス内の湿度との相関関係より予め測定したデータに基づいて該栽培ボックス内の湿度が所要範囲となるように設定し、該設定値に基づいてノズルおよびファンを制御する制御装置を備えていることが好ましい。
具体的には、前記栽培ボックス内に前記ノズルから、養液をレーザー法での測定値で平均粒子径5〜10μmの霧として噴霧すると共に噴霧量を2〜3リッター/時間で噴霧し、
前記栽培ボックスの内容積がノズル1個当たり最大6m
3の割合となるように、該栽培ボックスの形状に応じて前記ノズルの個数および配置位置を設定し、かつ、該ノズルから噴霧で前記栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるように前記制御装置で制御することが好ましい。
【0021】
ノズルから噴霧する養液でボックス内部の湿度を95%以上にすると、該ボックス内部に垂下する栽培植物の根に常時養液を供給して栽培植物の成長を促進できる。その結果、栽培植物の収穫回数が増加し、営農用の植物栽培装置として有効となる。
また、本発明の植物栽培装置は営農用を対象としているため、最も経済的と判断できる栽培ボックスとして例えば長さ6m、巾1m、高さ0.4mの大型栽培ボックスが好適に用いられる。この大型の栽培ボックスの中空内に平均粒子径が5〜10μmのドライフォグを均等に充満させて湿度95%以上としている。かつ、この湿度95%以上を保持するために、噴霧量が2〜3リッター/時間のノズルを用いると、ノズルの設置個数を低減できる。
【0022】
前記のように、栽培ボックス内の湿度を95%以上に保持すると、前記ファンの回転駆動軸とモータとの連結部に養液が付着して、ファンの回転停止が起こり易い。よって、本発明では、前記のように、噴霧液漏れ防止用のカバーを設置して、ファンの回転駆動軸とニータとの連結部への液漏れを防ぎ、液の付着によるファンの回転停止を低減・防止している。
【0023】
前記ファンユニットと前記ノズルとを前記栽培ボックス内の対角位置に設置し、前記ノズルからの噴霧方向を前記ファンユニットの噴霧加速用回転羽根で逆方向として、前記栽培ボックス内で噴霧を循環させることが好ましい。
【0024】
前記ファンユニットの設置側の一側部と前記ノズルの設置側の他側部の間の中間部を仕切る仕切壁を前記栽培ボックス内に設置し、該仕切壁の回りに噴霧の環状循環通路を形成し、前記仕切壁を挟む両側部に栽培植物を配置し、または前記ノズルの設置側に栽培植物を配置する一方、ファンユニット設置側には栽培植物を配置しない構成としてもよい。
【0025】
前記のように、仕切壁を設けて、養液を含む霧の循環通路を形成すると、栽培ボックス内の霧の循環をより促進することができる。
なお、仕切壁の位置は限定されず、栽培植物によって仕切壁の位置を変更してもよい。
【0026】
前記栽培ボックスの上面開口を、栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で閉鎖して前記中空部を形成している。
前記ノズルからの噴霧は間欠的または連続的に自動または手動のオン・オフの切り替え操作で行っている。
さらに、前記栽培ボックスの底部に滞留した養液の残留を養液槽に回収し、新しい養液と混合して再噴霧養液としてもよい。
【0027】
本発明の植物栽培装置では、サラダナ、リーフレタス、ベビーリーフ、ミズナ、大葉、ケーキキャベツ、ハーブ、バジルなどの葉菜、トマト、イチゴ、メロン、マンゴーなどの果菜、ジャガイモ、ラディッシュなどの根菜、豆、粟、麦、稲等の穀物等の栽培が可能であり、花卉類を栽培することもできる。