特開2015-128485(P2015-128485A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人東京女子医科大学の特許一覧

特開2015-128485細胞シート積層体の製造方法及び装置
<>
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000003
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000004
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000005
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000006
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000007
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000008
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000009
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000010
  • 特開2015128485-細胞シート積層体の製造方法及び装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-128485(P2015-128485A)
(43)【公開日】2015年7月16日
(54)【発明の名称】細胞シート積層体の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20150619BHJP
【FI】
   A61L27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-549(P2014-549)
(22)【出願日】2014年1月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(72)【発明者】
【氏名】黒田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝則
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鶴山 晋平
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡野 光夫
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、細胞シートを損傷させることなく簡便に移送することができ、かつ移送後に部材の除去の必要がない、細胞シートの移送及び積層手段を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、細胞シートを移送する方法であって、(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、(d)標的部位の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを標的部位上に移す工程を含む、前記方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞シートを移送する方法であって、
(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、
(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、及び
(d)標的部位の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを標的部位上に移す工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
細胞シート積層体を製造する方法であって、
(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、
(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、
(d)別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す工程、及び
(e)工程(a)〜(d)を繰り返すことにより細胞シートを積層させる工程、
を含む、前記方法。
【請求項3】
シート状基材が分断部分に切断線を有することにより分断可能に構成されており、工程(b)において、切断線を跨ぐように細胞シートをシート状基材に接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)が、シート状基材を帯電させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
シート状基材が可撓性を有するフィルムからなり、細胞シートを接触させる側の表面が撥水性である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
細胞シート積層体を製造するためのシステムであって、
(A)シート状基材を帯電させる帯電処理部、
(B)培養容器内の細胞シートを、帯電したシート状基材と位置合わせして接触させ、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出す、細胞シート回収部、及び
(C)回収された細胞シートを、別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部に位置合わせし、シート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す細胞シート積層部、
を備える、前記システム。
【請求項7】
細胞シートを移送するための器具を製造する方法であって、
シート状基材に分断部分を形成する工程、及び
シート状基材を帯電させる工程、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞シート、特にヒト及び動物の疾病、傷病の治療に用いる細胞シートの移送及び積層操作を簡便に行うための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から細胞生物学の分野では細胞培養が不可欠である。近年、幹細胞研究や再生医療研究が盛んになるに伴い、ますます細胞培養の技術開発の重要性が高まっている。
【0003】
細胞をシート状に培養し、トリプシンなどの酵素を使用せずに温度を低下させるだけで細胞をシート状に回収する「細胞シート工学」という技術が再生医療分野で注目されている。その際に使用されるのが、温度応答性ポリマーを結合させた温度応答性培養基材である。特許文献1には、温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養基材上において、細胞を温度応答性ポリマーの上限臨界溶解温度未満又は下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上又は下限臨界溶解温度未満にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる方法が記載されている。
【0004】
細胞シート工学によって得られる細胞シートは角膜や歯周組織などの再生医療で既に一定の治療効果も確認され欧州で既に臨床研究や治験が進められている。また、複数の種類からなる細胞シートを積層することによる三次元組織モデルの作製や血管組織を伴う成熟した組織を生体外で作製することも可能であり今後ますます本技術をベースにした研究や治療が期待される。
【0005】
このような細胞シートを、目的とする患部(移植部位)に移植するには、例えば、細胞シートの端部をピンセット等で摘んで、細胞シートを包装容器から取り出し、患部まで移送し、その患部に移植(貼付)するといった一連の操作が必要となるが、細胞シートは、物理的強度が低く、皺、破れ、破損などが生じ易いことから、この一連の操作には高度な技術が要求され、かつ細心の注意を払う必要がある。
【0006】
そこで、細胞シートの強度を補うため、親水性PVDF膜、ニトロセルロース膜を用いた支持体やヒトフィブリノゲン等を足場とした支持体が知られ、さらに細胞シートを対象とした移動治具や運搬投与器具が提供されており、前述の温度応答性培養基材に対応した細胞シートのための支持体が市販されている。また、デバイスの回収面にゼラチンゲルなど(支持材)を固定し、細胞シートを生着させることを繰り返して積層化細胞シートを得るためのゼラチンスタンプも知られている。
【0007】
しかし、ゼラチンスタンプは作製に時間がかかる点や最後にゼラチンを溶解させる必要がある点が課題であった。またPVDF膜は、ゼラチン法に比べ簡便ではあるものの、移植や積層後に膜を除去する必要がある点が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許1972502号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、細胞シートを損傷させることなく簡便に移送及び積層することができ、かつ移送後に部材の除去の必要がない、細胞シートの移送及び積層手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、シート状基材を帯電させて細胞シートに接触させることにより、細胞シートをシート状基材とともに、シート形状を維持したまま回収し、移送できることを見出した。さらに、シート状基材に分断部分を設け、分断部分を跨ぐように細胞シートを接触させ、細胞シートをシート状基材とともに移動させて、標的部位の上部でシート状部材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを損傷させることなく簡便に移送及び積層できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)細胞シートを移送する方法であって、
(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、
(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、及び
(d)標的部位の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを標的部位上に移す工程、
を含む、前記方法。
(2)細胞シート積層体を製造する方法であって、
(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、
(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、
(d)別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す工程、及び
(e)工程(a)〜(d)を繰り返すことにより細胞シートを積層させる工程、
を含む、前記方法。
(3)シート状基材が分断部分に切断線を有することにより分断可能に構成されており、工程(b)において、切断線を跨ぐように細胞シートをシート状基材に接触させる、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)工程(a)が、シート状基材を帯電させる工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)シート状基材が可撓性を有するフィルムからなり、細胞シートを接触させる側の表面が撥水性である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)細胞シート積層体を製造するためのシステムであって、
(A)シート状基材を帯電させる帯電処理部、
(B)培養容器内の細胞シートを、帯電したシート状基材と位置合わせして接触させ、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出す、細胞シート回収部、及び
(C)回収された細胞シートを、別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部に位置合わせし、シート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す細胞シート積層部、
を備える、前記システム。
(7)細胞シートを移送するための器具を製造する方法であって、
シート状基材に分断部分を形成する工程、及び
シート状基材を帯電させる工程、
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、細胞シートを損傷させることなく簡便に移送することが可能になり、細胞シート積層体を簡便かつ迅速に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の方法の一実施形態を側面図で示す概略図である。
図2】本発明の方法の一実施形態を上面図で示す概略図である。
図3】本発明で用いるシート状基材の一実施形態の側面図を示す概略図である。
図4】本発明で用いるシート状基材の一実施形態の上面図を示す概略図である。
図5】本発明で用いるシート状基材の一実施形態の上面図を示す概略図である。
図6】本発明で用いるシート状基材の一実施形態の上面図を示す概略図である。
図7】本発明の方法の工程の一実施形態を側面図で示す概略図である。
図8】細胞シート積層体を製造するためのシステムの一実施形態を示すブロック図である。
図9】細胞シート積層体を製造する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の細胞シートの移送方法は、例えば、図1及び図2に示すように、
(a)分断部分1で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材2を準備する工程、
(b)培養容器3内の細胞シート4を、分断部分1を跨ぐようにシート状基材2と接触させ、シート状基材2とともに培養容器3から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シート4を、シート状基材2とともに移動させる工程、
(d)標的部位5の上部でシート状基材2を分断して引き抜くことにより、細胞シート4を標的部位5上に移す工程、
を含む。
【0015】
本発明の細胞シート積層方法は、標的部位を別の細胞シート又は細胞シート積層体として、上記工程(a)〜(d)を繰り返すことにより細胞シートを積層させる工程を含む。
【0016】
本発明は、分断部分で分断可能に構成されたシート状基材を、細胞シートの移送に用いることを特徴とする。シート状基材は、好ましくは可撓性(柔軟性)を有するフィルムを含む。例えば柔軟性を有する素材や形状記憶素材などを用いることにより、平時には略平面状であり、力を加えることで曲面状に変化し、力を加えるのを止めると再度略平面状に戻るようなシート状基材とすることができる。シート状基材はまた、多孔質材料から構成されていてもよい。
【0017】
本発明は、さらに帯電したシート状基材を用いることを特徴とする。シート状基材に電化を付与し帯電させることにより、細胞シートを静電的に吸着させることができ、シート状基材とともに移送することができる。細胞は、通常、負の電荷を有することから、シート状基材は好ましくは正の電荷を付与して、正に帯電させることが好ましい。シート状基材を帯電させる処理方法は、特に制限されず、公知の種々の方法にしたがって行うことができる。例えば、コロナ放電やパルス状高電圧を加える方法や、シート状基材の両面を誘電体で保持し、両面に直流高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)、シート状基材にγ線や電子線等の電離放射線を照射してエレクトレット化する方法(ラジオエレクトレット化法)、などが挙げられる。エレクトロエレクトレット化法のより具体的な例としては、直流高圧電源に繋がった印加電極とアース電極の間にシート状基材を固定する方法か、又は通過させる方法が望ましい。主電極は針状のものを等間隔で無数に配置するか金属ワイヤーを使用し、対電極には平な金属板か金属ロールを使用することが望ましい。
【0018】
本発明において帯電処理は、コロナ放電処理であることが好ましい。例えば、直流コロナ放電処理は、主電極(印加電極)と対電極(アース電極)を直流高圧電源に繋げた装置を用い、対電極上にシート状基材を設置し、主電極と対電極の間に直流高電圧をかけることで発生するコロナ放電により、シート状基材に電荷を注入する処理である。両極間に印加する電圧は、シート状基材の電気特性、主電極と対電極の形状や材質、主電極と対電極の間隔により決定されるものであるが、具体的には1〜100KVが好ましく、3〜70KVがより好ましく、5〜50KVが更に好ましく、10〜30KVが特に好ましい。コロナ放電装置の出力は、好ましくは0.1〜1kWとし、好ましくは5〜10m/minで処理する。主電極の極性はプラスでもマイナスでも良いが、主電極側をマイナス極性にした方が比較的安定したコロナ放電状態となるため好ましい。主電極と対電極の材質は、導電性の物質から適宜選択されるが、鉄、ステンレス、銅、真鍮、タングステンなどの金属製又はカーボン製のものが好ましい。
【0019】
シート状基材を構成する材料は帯電させることが可能な材料であれば特に制限されず、金属、ガラス、セラミック、シリコン等の無機材料、ならびに公知又は市販のプラスチックを適用できる。プラスチックとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
シート状基材は、透明なシートであることが好ましい。シート状基材の上部から細胞シートや標的部位を目視することができるため、分断部分を跨ぐようにシート状基材を細胞シートに正確に接触させることができ、また、標的部位の上部に細胞シートを正確に配置して所望の位置に細胞シートを送達できるからである。また、シート状基材は、摩擦の少ない表面を有することが好ましい。シート状基材を分断して引き抜く際に、細胞シートが損傷するのを防止できるからである。
【0021】
シート状基材は、その表面の少なくとも一部が撥水性であることが好ましい。例えば、シート状基材の少なくとも一部に撥水処理層を配置することで、その表面を撥水性とすることができる。あるいは撥水性材料でシート状基材を構成してもよい。撥水性の表面に細胞シートを接触させることにより、細胞シートが滑動することができ、送達の際に、細胞シートが基材表面に付着するなどの原因で物理的に損傷することを防止できる。
【0022】
撥水性表面の水接触角は典型的には90°以上、好ましくは100°以上、より好ましくは105°以上であれば、表面に細胞シートを接触させたときに、細胞シートが滑動することができると考えられる。撥水性表面の水接触角は、好ましくは150°以下である。なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角をさす。
【0023】
撥水処理は、長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤やフッ素系のシランカップリング剤などでコーティングすることにより実施できる。
【0024】
撥水性材料の具体例としては、例えばフッ素及び酸素を含有する材料、及びパーフルオロカーボン材料等が挙げられ、具体的には、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]の共重合体であるナフィオン(登録商標)等のイオン性フッ素高分子等が挙げられる。
【0025】
シート状基材は、分断部分で分断可能に構成されている。好ましくはシート状基材が切断線を有することにより、容易に分断可能に構成されている。切断線とは、例えば、いわゆるミシン目などの断続的に切断された線やハーフカットなどの外力によって線に沿って切断可能に形成された部位を意味する。切断線には、シート状基材に溝や切れ目が形成された部位も包含される(図3)。その場合、溝や切れ目は、シート状基材のいずれの面に形成されていてもよい。切断線は、分断可能である限り、直線でもよいし、波線などの曲線でもよく、分岐していてもよい。
【0026】
分断可能に構成としては、切断線以外にも、シート状基材に細長い孔を形成する構成(図4)などが考えられ、分断部分を跨ぐように細胞シートを接触及び吸着させることが可能な限り特に制限されない。細長い孔を形成する場合、孔の形状は、細胞シートが吸着可能な幅であるが、外力によって分断可能なように、十分な長さを有することが好ましい。このようなシート状基材に形成された孔は、排液孔としても機能しうる。なお、細胞シートを吸着させたシート状基材の移送は、ピンセット等を用いて行われる場合もあることから、分断可能とは、ピンセットなどを用いて外力を加えることによっても分断可能であることが好ましい。ミシン目、溝、切れ目、及び細長い孔等は認識が容易で、細胞シートを、分断部分を跨ぐように配置しやすい点でも好ましい。
【0027】
切断線のパターンは、特に制限されないが、シート状基材の中央に、シート状基材を二等分するような直線状の切断線を形成するパターンが好ましい(図1〜3)。シート状基材の中央に切断線を形成することにより、シート状基材に対し左右に外力を加える、すなわち左右に引っ張ることにより、容易に中央部分でシート状基材を分断することが可能であり、細胞シートを標的部位に容易に移すことができる。
【0028】
切断線のパターンは、シート状基材を3以上に分断するようなパターンであってもよい。例えば、図5に示すように、シート状基材の中央から放射線状に広がる3本の切断線を形成してもよい。このような切断線を有するシート状基材は、例えば3方向に引っ張ることにより、シート状基材を中央部から3つに分断することができ、シート状基材を引き抜くことで、細胞シートを中央部の下に配置された標的部位に移すことができる。
【0029】
分断部分は、分断後にシート状基材が完全に分断されて2以上のシートに分断されるように構成されていてもよいし、分断後にシート状基材が部分的に分断されるように構成されていてもよい。シート状基材が部分的に分断される場合は、細胞シートを標的部位に移すことが可能なように、分断部分は十分な長さを有するものとする。例えば、図6に示すように、シート状基材の中央に、シート状基材の幅の9割程度まで切断線を形成することにより分断部分を構成することができる。
【0030】
なお、切断線は、外力を加えてシート状基材を引き抜いたときに、細胞シートの上にシート状基材が残存しないようなパターンで形成することが好ましい。細胞シートの上にシート状基材が残存してしまうと、これを取り除く必要が生じるからである。
【0031】
シート状基材の大きさや形状は、移送しようとする細胞シートを吸着して移送可能なように選択される。好ましくは、細胞シートの面積より少し大きい面積、例えば1.2〜3倍程度とすることできる。シート状基材の厚みは、分断部分で分断可能な厚みであれば特に制限されないが、通常5〜300μm、好ましくは50〜150μmである。この範囲より薄いと把持が困難となり、この範囲より厚いと切断線を設けることが困難な場合がある。
【0032】
シート状基材は、ハンドル部6を備えていてもよい。ハンドル部は異なる部材であってもよいし、シート状基材と一体成型されていてもよい。ハンドル部の形状は、いかなる形状であってもよい。シート状基材を培養容器等の容器に入れたときに、ハンドル部が容器から出るように構成されていることが好ましい。ハンドル部を操作することで、培養容器中のシート状基材を操作することが可能になり、培養容器内に収容された細胞シートにシート状基材を接触させやすい。
【0033】
細胞シートの回収は、培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより実施する。細胞シートは、通常、培養容器に細胞を接着させて培養液中で培養することにより製造される。そして、細胞シートが形成されたら、酵素処理により培養容器から剥離することができる。ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドなどの温度応答性ポリマーを結合させた培養容器で細胞を培養して細胞シートを作製した場合は、温度変化により細胞シートを培養容器から剥離することができる。細胞シートが、移送前の状態において、培養液などの液体中に遊離している場合は、例えば図7に示すように、培養容器から培養液を除去し、培養容器の底部に細胞シートを配置し、シート状基材を細胞シートと接触させることが好ましい。こうして培養容器の底部に配置された細胞シートは、底部に結合していないため、シート状基材に接触させて吸着させることにより、シート状基材とともに容易に取り出すことができる。一実施形態においては、培養容器から培養液を除去した後に、酵素処理や温度変化により細胞シートを培養容器から剥離してもよい。その場合は、シート状基材を細胞シートへ接触させる工程は、細胞シートを培養容器から剥離する前に行ってもよいし、剥離した後に行ってもよい。
【0034】
帯電したシート状基材を細胞シートに接触させると、細胞シートがシート状基材に吸着することから、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から引き上げて取り出すことにより、細胞シートを回収することができる。この方法であれば、細胞シートをシート状に保ったまま移送でき、かつ細胞シートに対する損傷も抑制できる点でも好ましい。さらに、細胞シートに皺ができるのを抑制できる。本発明では、培養容器に配置された細胞シートの露出面にシート状基材を接触させ、吸着力を利用して細胞シートを回収することから、細胞シートをシート状基材の上に載せて移送するよりも操作が簡便である点でも有利である。すなわち、細胞シートをシート状基材の上に載せる場合は、細胞シートが分断部分を跨ぐように正確に載せるのは困難な場合もあるが、本発明では、培養容器に配置された細胞シートにシート状基材を接触させるだけでよいので、細胞シートとシート状基材の位置合わせが容易であり、細胞シートが分断部分を跨ぐようにシート状基材を接触させることも容易である。
【0035】
続いて細胞シートをシート状基材とともに標的部位の上部まで移動させる。標的部位は、生体内のものでも生体外のものでもよい。標的部位としては、別の細胞シート、及び複数の細胞シートが積層された細胞シート積層体が挙げられる。また、生体から採取された生体外の組織や器官、ならびに生体内の組織や器官も標的部位としてその表面に細胞シートを移送することができる。本発明により、細胞シートやその積層体の上にさらに細胞シートを積層させる工程や、その他組織や器官の表面に細胞シートを移送し、場合により積層する工程を簡便に実施できる。したがって、標的部位としての細胞シートや細胞シート積層体は、生体内のものでもよく生体外のものでもよい。
【0036】
細胞シートをシート状基材とともに移動させた後、標的部位の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、換言すれば細胞シートに対してシート状基材をスライドさせることにより、細胞シートを標的部位上に移すことができる。すなわち、シート状基材を標的部位の上部に移動させ、外力を加えることによりシート状基材を分断することができる。シート状基材を完全に引き抜く前、又はシート状基材を分断する前に、細胞シートの少なくとも一部を標的部位に接触させることが好ましい。細胞シートの一部を標的部位に接触させた後で、シート状基材を引き抜くことにより、細胞シートと標的部位の接着力により、引き抜く際に細胞シートがシート状基材に引きずられるのを抑制でき、細胞シートの標的部位への送達をより容易に実施できる。また、細胞シートを目的の位置に正確に送達することができる。分断されたシート状基材の引き抜きは、分断された部分のそれぞれを同時に引き抜いてもよいし、一つ一つ順番に引き抜いてもよい。
【0037】
本発明はまた、細胞シート積層体の製造方法に関する。上述の細胞シートの移送方法に従って、細胞シートを標的部位としての別の細胞シートやその積層体上に移す操作を繰り返すことにより、細胞シート積層体を製造することができる。すなわち、本発明の細胞シート積層体の製造方法は、
(a)分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程、
(b)培養容器内の細胞シートを、分断部分を跨ぐようにシート状基材と接触させ、シート状基材とともに培養容器から取り出すことにより回収する工程、
(c)回収された細胞シートを、シート状基材とともに移動させる工程、
(d)別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部でシート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す工程、
(e)工程(a)〜(d)を繰り返すことにより細胞シートを積層させる工程、
を含む。
【0038】
本発明はまた、細胞シートを移送するための器具を製造する方法に関し、該方法は、
シート状基材に分断部分を形成する工程、及び
シート状基材を帯電させる工程、
を含む。上述の工程(a)、すなわち、分断部分で分断可能に構成され、かつ帯電したシート状基材を準備する工程は、この細胞シートを移送するための器具を製造する方法であってもよい。
【0039】
さらに本発明は、細胞シート積層体を製造するためのシステムに関し、例えば図8に示すように、該システム80は、
(A)シート状基材を帯電させる帯電処理部81、
(B)培養容器内の細胞シートを、帯電したシート状基材と位置合わせして接触させ、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出す、細胞シート回収部82、
(C)回収された細胞シートを、別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部に位置合わせし、シート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移す細胞シート積層部83、
を備える。
【0040】
帯電処理部としては、シート状基材を帯電させることが可能な公知の装置を使用でき、例えば、上述のコロナ放電装置、パルス高電圧付与装置、エレクトロエレクトレット化装置、電離放射線照射装置などを使用できる。帯電処理部は、ロールから巻き出されたシート状基材を連続的に帯電処理する構成でもよく、あるいはカットされたシート状基材を枚葉処理する構成でもよい。連続処理の場合は、さらにカット部を有することが好ましく、カット部は、細胞シート回収部より前であって、帯電処理部の後に設置することが好ましい。
【0041】
細胞シート回収部は、好ましくは、細胞シートを収容した培養容器を配置するためのステージ部と、帯電したシート状基材を培養容器内の細胞シートと位置合わせするアライメント装置と、シート状基材を保持する保持部と、シート状基材と細胞シートとを接触させ、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出すように保持部とステージ部の動作を制御する制御部とを備える。細胞シートを収容した培養容器を配置するためのステージ部は、温度を変化させて、培養容器の温度応答性ポリマーに接着した細胞シートを剥離するための、加温装置、冷却装置、及び温度制御装置を備えていてもよい。細胞シート回収部は、さらに、細胞シートを収容した培養容器をステージに設置する装置や、培養容器内の培養液を除去するためのノズルを備えていてもよい。
【0042】
細胞シート積層部は、好ましくは、標的部位としての別の細胞シート又は細胞シート積層体を配置するためのステージ部と、回収された細胞シートを、別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部に位置合わせするアライメント装置と、細胞シートともにシート状基材を保持する保持部と、シート状基材を分断して引き抜くように保持部の動作を制御する制御部とを備える。
【0043】
本発明のシステムは、さらに、シート状基材に分断部分を形成するための分断部分付与部を備えていてもよい。分断部分付与部は、帯電処理部より前に設置してもよいし、帯電処理部より後に設置しもよいが、細胞シート回収部より前に設置するこのが好ましい。あらかじめ分断部分が形成されたシート状基材を用いる場合は、分断部分付与部はなくてもよい。分断部分付与部としては、例えば切断線を付与可能な公知の装置を使用でき、具体的には炭酸ガスレーザーカッター装置を例示できる。
【0044】
上記の細胞シート積層体を製造するためのシステムを用いた積層体の製造方法の一実施形態を図9のフロ−チャートに示す。図9に示すように、細胞シート積層体の製造方法は、シート状基材を帯電処理部で帯電処理する工程91、細胞シート回収部において、培養容器内の細胞シートを、帯電したシート状基材と位置合わせして接触させ、シート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出すことにより細胞シートを回収する工程92、回収された細胞シートを、別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部に移動させる工程93、及び細胞シート積層部において、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体の上部で位置合わせし、シート状基材を分断して引き抜くことにより、細胞シートを別の細胞シート又は細胞シート積層体上に移して積層する工程94を含む。これらの工程91〜94を繰り返すことにより、細胞シート積層体を製造することができる。
【0045】
細胞シート積層体の製造方法は、さらに、シート状基材に分断部分を形成するための分断部分付与工程を含んでいてもよい。分断部分付与工程は、帯電処理工程より前に実施してもよいし、帯電処理工程より後に実施してもよいが、細胞シートの損傷を回避する観点から、細胞シート回収工程より前に実施することが好ましい。分断部分は、細胞シートを積層するたびに分断されてしまうため、分断部分付与工程を含む場合は、工程91〜94と同時に当該工程も繰り返すことが好ましい。あらかじめ分断部分が形成されたシート状基材を用いる場合は、分断部分付与工程は実施しなくてもよい。細胞シート回収工程92は、細胞シートを収容した培養容器をステージに配置する工程921、培養容器内の培養液をノズルで除去する工程922、及びシート状基材を細胞シートとともに培養容器から取り出す工程923を含むことが好ましい。
【0046】
細胞シートを構成する細胞としては、生体に存在するあらゆる組織とそれに由来する細胞を用いることができる。具体的には、生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々組織に存在する幹細胞、さらには骨髄細胞、ES細胞等を用いることができる。細胞は、1種類のみであってもよく、2種類以上用いるものであってもよい。細胞が由来する動物も特に限定されず、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどが含まれる。
【0047】
細胞シートは、通常、可撓性(柔軟性)を有しているが、これに限らず、例えば、やや硬質なものであってもよい。細胞シートはいわゆる温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養基材(例えば、特公平6‐104061号公報参照)上で培養されて剥離されたものでもよいが、これ以外の手法で得られたものであってもよい。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
(細胞シート作製)
底面がポリ−N−イソプロピルアクリルアミドでコーティングされた市販の温度応答性培養容器を用いてマウス骨格筋芽細胞を所定量播種し、37℃、5%COで培養した。培養3日後に、培養容器を低温インキュベータに移し変え、30分静置した。その結果、細胞がシート状に剥離し、細胞シートが得られた。
【0049】
(細胞シート回収)
切断線が設けられたポリスチレンフィルム(厚み50μm)を準備した。水接触角は60°であった。切断線は、炭酸ガスレーザーカッター装置(レーザーワークス社VLS2.30)を用いて付与した。出力は10Wとした。一般的なコロナ放電装置で0.2kWで5m/minで処理し、フィルムに正電化を付与して帯電させた。帯電の前後で水接触角の変化はなかった。上述の方法で得られた細胞シートを含む培養容器の培養液を慎重に除去し、細胞シートが培養容器の底面中央に配置されるようにした。細胞シートを回収するために、切断線が設けられたフィルムの切断線が細胞シートの中央あたりに配置されるように、細胞シートの上部からフィルムと細胞シートを接触させ、細胞シートを回収した。
【0050】
(細胞シート積層)
上述の方法と同様に、別の細胞シートを作製して温度変化により培養容器から剥離した。培養液を慎重に除去し、細胞シートを培養容器底面中央に配置した。フィルムとともに回収した細胞シートを、標的部位としての細胞シートの上部にフィルムごと移送し、フィルムの面に平行で切断線と垂直な方向に外力を加え細胞シートを標的部位上に積層した。
【0051】
[実施例2]
(細胞シート作製)
実施例1と同様にして細胞シートを作製した。
【0052】
(細胞シート回収)
切断線が設けられたフッ素樹脂フィルム(厚み1000μm)を準備した。水接触角は110°であった。切断線は、炭酸ガスレーザーカッター装置(レーザーワークス社VLS2.30)を用いて付与した。出力は10Wとした。一般的なコロナ放電装置で0.2kWで5m/minで処理し、フィルムに正電化を付与して帯電させた。帯電の前後で水接触角の変化はなかった。上述の方法で得られた細胞シートを含む培養容器の培養液を慎重に除去し、細胞シートが培養容器の底面中央に配置されるようにした。細胞シートを回収するために、切断線が設けられたフィルムの切断線が細胞シートの中央あたりに配置されるように、細胞シートの上部からフィルムと細胞シートを接触させ、細胞シートを回収した。
【0053】
(細胞シート積層)
上述の方法と同様に、別の細胞シートを作製して温度変化により培養容器から剥離した。培養液を慎重に除去し、細胞シートを培養容器底面中央に配置した。フィルムとともに回収した細胞シートを、標的部位としての細胞シートの上部にフィルムごと移送し、フィルムの面に平行で切断線と垂直な方向に外力を加え細胞シートを標的部位上に積層した。
【0054】
ポリスチレンフィルムを用いた場合よりも、フッ素樹脂フィルムを用いた場合の方が、細胞シートの移送性の点で優れていた。
【0055】
[比較例1]
(細胞シート作製)
実施例1と同様にして細胞シートを作製した。
【0056】
(細胞シート回収)
切断線が設けられたポリスチレンフィルム(厚み50μm)を準備した。水接触角は60°であった。切断線は、炭酸ガスレーザーカッター装置(レーザーワークス社VLS2.30)を用いて付与した。上述の方法で得られた細胞シートを含む培養容器の培養液を慎重に除去し、細胞シートが培養容器の底面中央に配置されるようにした。細胞シートを回収するために、切断線が設けられたフィルムの切断線が細胞シートの中央あたりに配置されるように、細胞シートの上部からフィルムと細胞シートを接触させ、細胞シートを回収しようと試みたが、細胞シートがすべりおち、うまく回収することができなかった。
【0057】
[比較例2]
(細胞シート作製)
実施例1と同様にして細胞シートを作製した。
【0058】
(細胞シート回収)
切断線が設けられたフッ素樹脂フィルム(厚み1000μm)を準備した。水接触角は110°であった。切断線は、炭酸ガスレーザーカッター装置(レーザーワークス社VLS2.30)を用いて付与した。上述の方法で得られた細胞シートを含む培養容器の培養液を慎重に除去し、細胞シートが培養容器の底面中央に配置されるようにした。細胞シートを回収するために、切断線が設けられたフィルムの切断線が細胞シートの中央あたりに配置されるように、細胞シートの上部からフィルムと細胞シートを接触させ、細胞シートを回収しようと試みたが、細胞シートがすべりおち、うまく回収することができなかった。
【符号の説明】
【0059】
1:分断部分
2:シート状基材
3:培養容器
4:細胞シート
5:標的部位
6:ハンドル部
80:細胞シート積層体製造システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9