【解決手段】手術用運搬装置10は、体内から切除された採取物が格納される収納部111が先端部に形成され、操作部112が基端部に形成されたロッド部110と、ロッド部110が挿通される外筒部120とを備えている。このロッド部110は、操作部112を押し込むと外筒部120から収納部111が現れ、操作部112を引き込むと収納部111が外筒部120に内部に隠れる。ロッド部110および外筒部120が、直線状の円筒状に形成されていることで、棒状の手術用運搬装置10を軸線に沿って挿入し、ロッド部110を押し出し、回収した後に、ロッド部110を引き込んで、そのまま手術用運搬装置10を軸線に沿って引き抜くだけなので、簡単な操作で確実に採取物を回収することができる。
前記ロッド部は、前記操作部を押し込むと前記外筒部の先端から前記収納部が現れ、前記操作部を引き込むと前記収納部が前記外筒部の内部に隠れる請求項1記載の手術用運搬装置。
前記ロッド部は、前記ロッド部の開口部を前記外筒部に形成された開口部に位置を合わせることで前記収納部が現れ、前記ロッド部または前記外筒部を軸回転させて、前記ロッド部の開口部と前記外筒部の開口部との位置をずらすことで、前記収納部が内部に隠れる請求項1記載の手術用運搬装置。
前記ロッド部は、前記ロッド部の開口部を前記外筒部に形成された開口部に位置を合わせることで前記収納部が現れ、前記操作部を軸線に沿って移動させて、前記ロッド部の開口部と前記外筒部の開口部との位置をずらすことで、前記収納部が内部に隠れる請求項1記載の手術用運搬装置。
前記外筒部には、前記収納部の開口部が前記外筒部により塞がれるときに、体内と繋がった状態の運搬物としての採取物の接続部を、前記収納部の縁部との間で挟んで切り離す刃部が形成されている請求項1から7のいずれかの項に記載の手術用運搬装置。
前記ロッド部と前記外筒部との間の隙間を塞ぐ閉鎖部材が、前記ロッド部または前記外筒部のいずれか一方、または両方に形成されている請求項1から8のいずれかの項に記載の手術用運搬装置。
前記閉鎖部材は、前記外筒部の内壁面に配置され、前記ロッド部が引き抜かれると、小片が重なりあって前記外筒部の内部空間を閉鎖する請求項9記載の手術用運搬装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の外科手術用回収装置では、ポーチに採取物を入れ、引き紐を引いて、ポーチを支持部材から分離した後に、引き紐を切断し、そして、別のアクセスチューブに通して、ポーチのための把持具を挿入して、支持アセンブリの近くで引き紐を掴み、組織サンプルを含むポーチを引き抜いて回収する手順となっており、採取物を回収するための操作が煩雑である。
【0006】
また、特許文献2に記載の生体組織回収具では、複数の吸引口により採取物に吸着した状態で、体腔内から抜去されるため、採取物が、体腔内の他の器官に接触したり、体腔から引き抜く際に孔縁に接触したりして、脱落するおそれがある。また、採取物が収納されずに搬出されるため、腫瘍組織や汚染組織が体内に散布される危険性が高い。
【0007】
更に、施術者は、外科手術中には、縫合するための手術用針を、体外から体内へ、幾度と無く持ち込んで手術を行う。施術者は、手術用針と手術用縫合糸となどの手術用器具を、体内に傷付けることなく、搬入する必要がある。
従って、手術用運搬装置は、採取物や手術用器具などの運搬物を、体外と体内との間で、簡単な操作で、安全に運搬できることが大事である。
【0008】
そこで本発明は、簡単な操作で確実に、かつ安全に、体内から採取物を搬出したり、体外から手術用器具を搬入したりすることができる手術用運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の手術用運搬装置は、体外と体内との間で運搬される運搬物が格納される収納部であって、開口部を有する収納部が、先端部に形成され、操作部が基端部に形成されたロッド部と、前記ロッド部が挿通され、前記ロッド部の開口部を塞ぐ蓋となる外筒部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の手術用運搬装置によれば、ロッド部に形成された収納部に運搬物が格納され、ロッド部が挿通する外筒部により収納部の開口部で蓋をして、体内から引き抜いたり、体内へ差し込んだりすることで、採取物を散布あるいは他の器官に接触させることなく体外へ運搬したり、手術用器具などの運搬物を体内へ運搬することができる。
【0011】
前記ロッド部は、前記操作部を押し込むと前記外筒部から前記収納部が現れ、前記操作部を引き込むと前記収納部が前記外筒部の内部に隠れるようにするのが望ましい。
ロッド部を外筒部から押し出せば収納部が現れて、体内から切除された採取物を格納することができ、ロッド部を外筒部に引き込めば、収納部を外筒部に収めることができる。そして、本発明の手術用運搬装置を体内から引き抜けば、収納部内に格納された採取物は、収納部の開口部が外筒部により蓋がされた状態で回収できる。
【0012】
前記ロッド部の先端が円弧面により形成されていると、体内を進行させる際に器官への引っ掛かりが少ないのでスムーズに体内を進行させることができる。
【0013】
前記ロッド部は、前記ロッド部の開口部を前記外筒部に形成された開口部に位置を合わせることで前記収納部が現れ、前記ロッド部または前記外筒部を軸回転させて、前記ロッド部の開口部と前記外筒部の開口部との位置をずらすことで、前記収納部が内部に隠れるのが望ましい。
外筒部に開口部が形成されていれば、ロッド部の開口部を外筒部に形成された開口部の位置に合ったときに、収納部を現れさせることができる。そして、前記ロッド部または前記外筒部を軸回転させると、ロッド部の開口部と外筒部の開口部との位置がずれるため、外筒部を蓋にして収納部を内部に隠すことができる。
【0014】
前記ロッド部は、前記ロッド部の開口部を前記外筒部に形成された開口部に位置を合わせることで前記収納部が現れ、前記操作部を軸線に沿って移動させて、前記ロッド部の開口部と前記外筒部の開口部との位置をずらすことで、前記収納部が内部に隠れるのが望ましい。
外筒部に開口部が形成され、ロッド部の開口部を外筒部に形成された開口部の位置に合っていれば、収納部を現れさせることができる。そして、操作部を軸線に沿って移動させると、ロッド部の開口部と外筒部の開口部との位置がずれるため、外筒部を蓋にして収納部を内部に隠すことができる。
【0015】
前記外筒部は、先端が円弧面により形成されているのが望ましい。外筒部がロッド部を覆って体内を進行するときには、外筒部の先端が円弧面に形成されていることで、器官への引っ掛かりが少ないのでスムーズに体内を進行させることができる。
【0016】
前記外筒部には、前記ロッド部を基端方向へ付勢する付勢部材が形成され、前記ロッド部と前記外筒部とに、前記外筒部の開口部から前記ロッド部の前記収納部が現れた状態で、記ロッド部と前記外筒部とを固定する固定手段が形成されているのが望ましい。
運搬時には付勢部材により、ロッド部の収納部が外筒部に隠れた状態とすることができる。また、運搬物を収納部から取り出す、または運搬物を収納部に格納するときには、収納部を外筒部から現れさせ、固定手段によりロッド部と外筒部とを固定することで、施術者がロッド部から手を離しても、収納部の位置が固定されるので、操作性を向上させることができる。
【0017】
前記外筒部には、前記収納部の開口部が前記外筒部により塞がれるときに、体内と繋がった状態の運搬物としての採取物の接続部を、前記収納部の縁部との間で挟んで切り離す刃部が形成されていると、採取物が体内から切除された状態でなく、体内に繋がった状態であっても、刃部によって採取物と体内とを繋ぐ接続部を切断することができる。
【0018】
前記ロッド部と前記外筒部との間の隙間を塞ぐ閉鎖部材が、前記ロッド部または前記外筒部のいずれか一方、または両方に形成されているのが望ましい。体内に導入されたガスが、ロッド部と外筒部との間の隙間を逆戻りして、体外に漏れることを、閉鎖部材により防止することができる。従って、膨らんだ体腔内の空間を維持することができるので、施術者は容易に採取物の切除作業を行うことができる。
【0019】
前記閉鎖部材は、前記外筒部の内壁面に配置され、前記ロッド部が引き抜かれると、小片が重なりあって前記外筒部の内部空間を閉鎖するのが望ましい。ロッド部が外筒部から引き抜かれても、閉鎖部材の小片が重なりあって外筒部の内部空間を閉鎖するので、ガスによって膨らんだ体腔内の空気が外筒部から漏れ、萎んでしまうことを防止することができる。
【0020】
前記収納部に、運搬物を保管するための収納容器が配置されていると、施術者は運搬物を収納容器に格納し、体内から体外へ、または体外から体内へ運搬物を運搬した後に、収納容器ごと取り出せば、運搬物の取り出しが容易である。また、施術者が直接採取物に触れないため、運搬物として採取物が検体であれば変質を抑えることができ、採取物が異物であれば衛生的である。
【0021】
前記収納部または前記収納容器にいずれか一方に凸部が形成され、他方に前記凸部に嵌合する凹部が形成されていると、収納部の開口部が下方を向いた状態で、収納部が外筒部から現れても、収納容器が落下することを防止することができる。
【0022】
前記収納部は、前記ロッド部の長さ方向に沿って2以上形成されていると、体外から体内へ運搬物として手術用器具を搬入するときには、それぞれの収納部に分けて格納することができる。
【0023】
前記収納部と、該収納部に隣接する収納部とに渡る溝が形成されていると、手術用器具として、手術用針と手術用縫合糸とを繋いだ状態としていても、手術用縫合糸を溝に通すことで、それぞれの手術用器具を、収納部を分けて格納することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の手術用運搬装置は、ロッド部を外筒部に対して出し入れするだけで、収納部の開口部が外筒部により蓋がされた状態で、収納部内に格納された運搬物を体外へ回収したり、体内へ搬入したりすることができるので、簡単な操作で確実に、かつ安全に運搬物を運搬することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る手術用運搬装置を、図面に基づいて説明する。なお、本明細書においては、基端は施術者側、先端は体腔内側を示す。
図1に示すように、手術用運搬装置10は、体腔内に挿入され、体内から切除された異物や検査のための検体などの採取物を運搬物として、体外に取り出して回収するためのものである。
手術用運搬装置10は、ロッド部110と、外筒部120とを備えている。
【0027】
ロッド部110は、長尺状のステンレス製の筒状部材により形成されている。ロッド部110は、先端部に、体内から切除された採取物が格納される収納部111が形成されている。また、ロッド部110は、基端部に、操作部112が形成されている。
図2(A)に示すように、収納部111は、内部空間を収納部111とするための開口部111aが形成されている。また、収納部111は、開口部111aに合わせて内部空間を仕切る仕切り壁111bが配置されている。従って、ロッド部110の内周面と、仕切り壁111bとに囲まれた空間Sが収納部111となる。ロッド部110の先端は、円弧面により形成されている。本実施の形態1では半球状に形成されている。
【0028】
図2(B)に示すように、操作部112は、施術者がロッド部110を体腔内に押し込んだり、引き込んだりするために把持するところである。本実施の形態1では、施術者の操作性を高めるために樹脂製のグリップ112aがロッド部110の基端部に設けられている。
【0029】
図1に示すように、外筒部120は、ロッド部110が挿通されるもので、ロッド部110より短い長尺状のステンレス製の筒状部材により形成されている。外筒部120は、基端部に被せて、ロッド部110の外周面との間の隙間を塞ぐ環状壁部121aが形成されたゴム製の閉鎖部材121が配置されている。
図3に示すように、閉鎖部材121は、外筒部120との密着部121bの外径が細く、ロッド部110との密着部121cに向かって徐々に拡径する円錐台形状に形成されたパッキンである。
【0030】
図1に示すように、外筒部120の先端には、収納部111の開口部111aが外筒部120により塞がれるときに、体内と繋がった状態の採取物の接続部を、収納部111の縁部との間で挟んで切り離す刃部120aが形成されている。本実施の形態1に係る外筒部120の刃部120aは、ロッド部110が、外筒部120の先端の開口部から引き込まれるため、外筒部120の先端の円形状の開口縁部に形成されている。
【0031】
刃部120aは、外筒部120の管厚を先端方向に向かって徐々に薄くすることで形成することができる。また、薄板状の刃を外筒部120の開口部の内周面に沿って取り付けて、刃部120aとすることもできる。
【0032】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る手術用運搬装置10の使用状態について、図面に基づいて説明する。なお、
図4(A)および
図4(B)では、予めスリーブ20に装着したトロッカー(図示せず)を被施術者の体内に挿入した後、トロッカーのみを引き抜き、スリーブ20を差し込んだ状態とすることで、手術用運搬装置10の挿入口を形成した状態である。また、スリーブ20のストップコック21のポートに、送気用チューブを接続して、ガス(気腹ガス等)を体腔内に導入することで、体腔内に空間ができた状態である。
【0033】
図4(A)に示すように、施術者は、図示しない内視鏡を見ながら、スリーブ20の外套管22を案内管として、手術用運搬装置10を進める。ロッド部110の先端が、円弧面による半球状に形成されていることで、体内を進行させる際に器官への引っ掛かりが少ないのでスムーズに進行させることができる。
このとき、手術用運搬装置10は、外筒部120の先端位置に、ロッド部110の先端位置を合わせているため、ロッド部110の収納部111は外筒部120に隠れた状態である。
【0034】
また、スリーブ20からのガスは、スリーブ20の外套管22と、手術用運搬装置10との間の隙間を通じて、体腔内に導入されるが、手術用運搬装置10のロッド部110と外筒部120との間の隙間は、閉鎖部材121により閉鎖されているため、体腔内のガスがロッド部110と外筒部120との間の隙間を逆戻りして、体外に漏れることを防止することができる。従って、膨らんだ体腔内の空間を維持することができるので、施術者は容易に採取物の切除作業を行うことができる。
【0035】
なお、本実施の形態1では、閉鎖部材121が外筒部120に装着しているが、閉鎖部材はロッド部110に装着していてもよい。ロッド部110に閉鎖部材を取り付けるときには、例えば、パッキンをロッド部110の外周面に装着したOリングとすることができる。また、ロッド部110と外筒部120とのいずれか一方だけでなく、ロッド部110と外筒部120との両方に閉鎖部材を装着すると、密閉性をより一層向上させることができる。
【0036】
図4(B)に示すように、施術者が内視鏡を見ながら、図示しない鉗子により採取物を切除する。施術者はロッド部110の操作部112を押し込むと、ロッド部110が進行して、外筒部120からロッド部110の収納部111が現れる。
鉗子が保持した採取物の位置に対して、収納部111の開口部111aの向きが適切でない場合には、外筒部120内で、ロッド部110を軸回転させて、収納部111の開口部111aを採取物に向ける。外筒部120とロッド部110が直線状の円筒状の部材により形成されているため、外筒部120の軸線の方向を変更することなく、ロッド部110の収納部111の向きを、ロッド部110の軸回転により変更することができる。
【0037】
施術者は採取物を収納部111に格納すると、操作部112を引き込み、外筒部120に収納部111を隠れさせる(
図4(A)の状態に戻る。)。そして、スリーブ20から手術用運搬装置10を軸線に沿って引き抜くことで、採取物を体腔内から飛散させることなく回収することができる。
【0038】
採取物が体内から切除されたものでなく、組織によって体内に繋がった状態で、収納部111に格納される場合がある。しかし、本実施の形態1に係る手術用運搬装置10では、外筒部120の先端に刃部120aが形成されている。そのため、ロッド部110を外筒部120に引き込んで、収納部111の開口部111aを外筒部120により塞ぐときに、収納部111aの縁部と刃部120aとの間で、採取物を体内に繋ぐ組織により形成された接続部を挟んで切断することができる。従って、施術者は必ずしも採取物を体内から切除した状態としなくても、採取物だけを収納部111に格納して体外へ取り出すことができる。
【0039】
収納部111内に格納された採取物は、収納部111の開口部111aが外筒部120により蓋がされた状態で回収されるので、採取物が他の器官に接触することなく回収することができる。また、回収操作は、棒状の手術用運搬装置10を軸線に沿って挿入し、ロッド部110を押し出し、回収した後に、ロッド部110を引き込んで、そのまま手術用運搬装置10を軸線に沿って引き抜くだけなので、簡単な操作で確実に採取物を回収することができる。
【0040】
また、ロッド部110が、筒状部材の先端部に開口部111aを設けて、内部空間を収納部111としているため、ロッド部110を簡単な構造で構成することができる。
【0041】
なお、本実施の形態1に係る手術用運搬装置10はグリップ112aと閉鎖部材121以外は生体適合性を有するステンレス製としているが、生体適合性があればチタン製や他の金属製としてもよい。また、金属製以外に、本発明の手術用運搬装置は、生体適合性のポリマーでも製造することができる。
【0042】
次に、採取物回収装置10の閉鎖部材121の変形例について、図面に基づいて説明する。
図5に示す閉鎖部材122は、
図5に示すように帯状の連結部122aと小片部122bとを備えている。本実施の形態では、
図6(A)に示すように、小片部122bを4枚としている。
図6(B)に示すように、連結部122aを外筒部120の内壁面に取り付け固定すると、小片部122bが重なり合い、外筒部120が閉鎖される。
従って、採取物を収納部111に格納したロッド部110を体外から取り出す際に、ロッド部110が外筒部120から引き抜いても、外筒部120の内部空間は閉鎖部材121により閉鎖され蓋をした状態になるため、ガスによって膨らんだ体腔内の空気が外筒部120から漏れ、萎んでしまうことを防止することができる。
【0043】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る手術用運搬装置について、図面に基づいて説明する。なお、
図7(A)および同図(B)については、
図1から
図4と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7(A)に示す手術用運搬装置10xは、外筒部120xの先端部が円弧面に形成されて塞がっており、開口部123が形成されている。この開口部123は、ロッド部110の開口部111aより軸線方向の長さが短く形成されている。
この手術用運搬装置10xは、ロッド部110が、ロッド部110の開口部111aを、外筒部120xに形成された開口部123に位置を合わせることで収納部111が現れる。施術者は、この状態で、開口部111a,123から、採取物を収納部111に収納することができる。
そして、
図7(B)に示すように、施術者は、採取物を収納すると、操作部112(
図1参照)を軸回転させて、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123との位置をずらすことで、収納部111が、外筒部120xを蓋にして外筒部120xの内部に隠れる。なお、操作部112を軸回転させることでロッド部110を軸回転させてもよいし、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123とが相対的にずれればよいので、外筒部120xを軸回転させてもよい。採取物が小さく、ロッド部110を軸回転させると落下するようであれば、外筒部120xを軸回転する。
【0045】
本実施の形態2では、外筒部120xの開口部123の軸線(長さ方向)に沿った縁部に刃部120bが形成されている。この刃部120bは、実施の形態1の刃部120aと同様に、外筒部120の管厚を薄くしたり、薄板状の刃を外筒部120xの開口部123の内周面に沿って取り付けたりすることで形成することができる。
【0046】
このように刃部120bが外筒部120xの開口部123に形成されていることで、採取物が組織によって体内に繋がった状態でも、ロッド部110を外筒部120xに対して軸回転させて、収納部111の開口部111aを外筒部120xにより塞ぐときに、収納部111aの縁部と刃部120bとの間で、採取物の接続部を挟んで切断して、採取物だけを収納部111に格納することができる。
【0047】
施術者は、手術用運搬装置10xを軸線に沿って体内から引き抜くことで、採取物を体腔内から回収することができる。なお、このとき、施術者は、ロッド部110のみを低抜いてもよいし、ロッド部110と外筒部120xとを一緒に引き抜いてもよい。
【0048】
本実施の形態2に係る手術用運搬装置10xでは、ロッド部110の先端は、外筒部120xにより覆われるため、外筒部120xの先端が円弧面に形成されている。外筒部120xの先端が円弧面に形成され、半球状に形成されていることで、手術用運搬装置10xが体内を進行するときに、器官への引っ掛かりが少ないのでスムーズに体内を進行させることができる。
【0049】
図7(A)および同図(B)では図示していないが、ロッド部110と外筒部120xとの体外から見える位置に、開口部111a,123の位置を示す目印が形成されている。
施術者は、内視鏡により開口部111a,123の位置を確認できるが、目印が形成されていることにより、手元でも開口部111a,123の確認できるので、採取物の格納時に開口部111a,123の位置を合わせたり、ずらしたりすることが、簡単にできる。
【0050】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る手術用運搬装置について、図面に基づいて説明する。なお、
図8(A)および同図(B)については、
図7(A)と同図(B)にて示す実施の形態2に係る手術用運搬装置と同じ構成である。
【0051】
実施の形態2では、ロッド部110と外筒部120xとのいずれか一方を軸回転させて、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123とがずれるようにしているが、実施の形態3では、ロッド部110を外筒部120xに対して引き上げることで、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123とがずれるようにしている。
【0052】
図8(A)に示す手術用運搬装置10xでは、ロッド部110の開口部111aが外筒部120xの開口部123と、位置が合った状態である。施術者は、この状態で、開口部111a,123から、採取物を収納部111に収納することができる。
そして、
図8(B)に示すように、施術者は、採取物を収納すると、操作部112(
図1参照)を引き上げ、ロッド部110を軸線に沿って移動させて、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部との位置をずらすことで、収納部111が、外筒部を蓋にして外筒部120xの内部に隠れる。
【0053】
本実施の形態3では、外筒部120xの開口部123の軸線(長さ方向)と直交する幅方向(円周方向)に沿った縁部に、刃部120cが形成されている。この刃部120cは、実施の形態1,2の刃部120a,120bと同様に、外筒部120xの管厚を薄くしたり、薄板状の刃を外筒部120xの開口部123の内周面に沿って取り付けたりすることで形成することができる。
【0054】
このように刃部120cが外筒部120xの開口部123に形成されていることで、採取物が組織によって体内に繋がった状態でも、ロッド部110を外筒部120xに対して軸線に沿って引き込み、収納部111の開口部111aを外筒部120xにより塞ぐときに、収納部111aの縁部と刃部120cとの間で、採取物の接続部を挟んで切断して、採取物だけを収納部111に格納することができる。
施術者は、手術用運搬装置10xを軸線に沿って体内から引き抜くことで、採取物を体腔内から回収することができる。
【0055】
このように、外筒部120xに開口部123xが形成されている場合に、ロッド部110を軸線に沿って基端側に移動させることで、収納部111を外筒部120xにより蓋をすることができる。
【0056】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る手術用運搬装置について、図面に基づいて説明する。なお、
図10(A)および同図(B)に示す本実施の形態4に係る手術用運搬装置は、収納容器以外、
図7(A)と同図(B)にて示す実施の形態2に係る手術用運搬装置10x、および
図8(A)と同図(B)にて示す実施の形態3に係る手術用運搬装置と、同じ構成である。
【0057】
図9に示す収納容器30は、細長に形成され、上面が開口した容器本体31と、容器本体31の開口を塞ぐ蓋部32とを備えている。蓋部32は、容器本体31の一端部にヒンジ部33を介して接続されている。
収納容器30の容器本体31の長さは、ロッド部110の収納部111の半分程度である。また、蓋部32の長さは、ロッド部110の収納部111の半分程度である。このようにして、収納容器30が形成されていることで、容器本体31から蓋部32を開いた状態で、収納部111に配置することができる。
【0058】
図10(A)に示すように、この収納容器30をロッド部110の収納部111に配置する。施術者は、採取物を収納容器30に格納した後に、同図(B)に示すように、ロッド部110を引いて外筒部120により蓋をして、手術用運搬装置10xを体外へ取り出す。
次に、施術者は、ロッド部110を押してロッド部110の開口部111aと、外筒部120xの開口部123とを位置合わせして、収納容器30を取り出す。
そして、施術者は、容器本体31に蓋部32を被せることで、採取物に触れることなく、体外に運搬することができる。また、施術者が直接採取物に触れないため、採取物が検体であれば変質を抑えることができ、採取物が異物であれば衛生的である。
このように、施術者は、採取物を回収する際に、収納容器ごと取り出せば、採取物の取り出しが容易である。
【0059】
なお、本実施の形態4では、収納容器30を、実施の形態2,3に係る手術用運搬装置10xに配置しているが、実施の形態1に係る手術用運搬装置10に配置することもできる。
【0060】
(実施の形態4の変形例)
本発明の実施の形態4に係る手術用運搬装置の変形例について、図面に基づいて説明する。なお、
図11においては、
図2および
図9と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
実施の形態4では、
図9に示す収納容器30を、
図10に示す実施の形態2,3に係る手術用運搬装置10xに配置したが、
図2に示す実施の形態1に係る手術用運搬装置10に配置するときに、収納容器が落下することを防止するために、収納容器30と収納部111とに凹凸を形成して嵌合させている。
【0061】
例えば、
図11に示すように、収納容器30の容器本体31には、長手方向の両端面に、凹部34が形成されている。収納容器30の長さは、収納部30に格納したときに、収納容器30の対向する仕切り壁111bの間隔に合わせて形成されている。
【0062】
ロッド部110の収容部111は、仕切り壁111bに、凹部34に嵌合する凸部111eが形成されている。
また、ロッド部110には、収納容器30の蓋部32を載せるための切り欠き部113が、開口部111aに隣接して形成されている。
このように収納容器30およびロッド部110が形成されていることで、この収納容器30を、収納部111に格納すると、仕切り壁111bの凸部111eが、収納容器30の凹部34に嵌合して、収納容器30が仕切り壁111bの間で保持される。従って、収納部111の開口部111aが下方を向いた状態で、収納部111が外筒部120から現れても、収納容器30が落下することを防止することができる。
【0063】
なお、本変形例では、収納容器30に凹部34が、仕切り壁111bに凸部111eが形成されているが、収納容器30に凸部が、仕切り壁111bに凹部が形成されていてもよい。
【0064】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る手術用運搬装置について、図面に基づいて説明する。なお、
図12においては、
図1および
図7と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態5に係る手術用運搬装置10yは、外筒部120xの内側の先端部に、ロッド部110を基端方向に付勢する蛇腹状の板ばね部材124が配置されている。また、ロッド部110の基端部に形成されたグリップ部112bには、閉鎖部材121に嵌め込む嵌合穴112cが形成されている。
この嵌合穴112cは、内径が奥側に向かうに従って大きくなるように形成されていることで、閉鎖部材121を嵌まり込ませるように形成されている。本実施の形態5に係る手術用運搬装置10yでは、グリップ部112bと閉鎖部材121とで、ロッド部110と外筒部120xとを固定する固定手段として機能させている。
【0065】
手術用運搬装置10yが被施術者の体内に挿入される前の状態では、板ばね部材124がロッド部110を基端方向に付勢しているため、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123との位置が不一致な状態である。従って、ロッド部110の収納部111が外筒部120xに隠れた状態である。
【0066】
施術者は、被施術者の体内に挿入して、グリップ部112bを押し込むと、板ばね部材124が縮小して、ロッド部110を先端方向が進行する。そして、ロッド部110の開口部111aと外筒部120xの開口部123との位置が合った状態で、グリップ部112bの嵌合穴112cが閉鎖部材121に嵌め込まれる。そうすることで、施術者は、グリップ部112bから手を離しても、ロッド部110と外筒部120xとは、開口部111a,開口部123の位置が一致した状態で維持される。
【0067】
そして、施術者が採取物を収納部111に収納すると、グリップ部112bを引き、グリップ部112bの嵌合穴112cから閉鎖部材121を引き抜く。この引き抜きにより、ロッド部110の開口部111aが外筒部120xの開口部123からずれ、収納部111が外筒部120xの内部に隠れる。施術者は、手術用運搬装置10yを、この状態で、被施術者から引き抜くことができる。
【0068】
このように、本実施の形態5に係る手術用運搬装置10yによれば、非採取時には板ばね部材124により、ロッド部110の収納部111が外筒部120xに隠れた状態とすることができるので、非採取時に収納部111を露出させてしまい、不要なものが収納されてしまうことを防止することができる。また、採取時には、収納部111を外筒部120xから現れさせ、グリップ部112bを閉鎖部材121に嵌め込むことで、ロッド部110と外筒部120xとを固定することで、施術者がロッド部110から手を離しても、収納部111の位置が固定されるので、操作性を向上させることができる。
【0069】
また、板ばね部材124がロッド部110を外筒部120x内に押し込んでいる状態では、板ばね部材124が外筒部120x内の先端部から開口部123を通過して、更に奥部まで伸張しているため、外筒部120xの開口部123が板ばね部材124により閉鎖された状態である。従って、外筒部120xの開口部123から血液が、外筒部120x内に浸入し難くすることができる。
【0070】
なお、本実施の形態5では、板ばね部材124によりロッド部110を付勢しているが、コイルばねなどの付勢部材を使用してもよい。また、グリップ部112bの嵌合穴112cにより閉鎖部材121を嵌め込み、ロッド部110を外筒部120xに固定しているが、グリップ部に爪部を設けて、閉鎖部材121に引っ掛けるようにしてもよい。
【0071】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る手術用運搬装置について、図面に基づいて説明する。なお、
図13から
図15においては、
図1と
図2、および
図4と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施の形態6に係る手術用運搬装置は、運搬物として、手術用器具を体外から体内へ搬入するものとして機能させている。
手術用器具を体外から体内へ搬入ときは、実施の形態1から5に係る手術用運搬装置10,10x,10y(
図1,
図7,
図8および
図12参照)を用いて、採取物の代わりに手術用器具を収納部111に格納して、採取物を回収するときと反対の動作を行う。そうすることで、施術者は、手術用運搬装置10,10x,10yにより、手術用器具を体外から体内へ搬入することができる。
【0073】
しかし、手術用器具として、手術用針と手術用縫合糸と繋いだ状態で、体内へ搬入するときには、1つにまとめて、収納部111に格納すると、手術用針が手術用縫合糸に絡まって体内で解くのが困難になることが心配される。
そこで、本実施の形態6に係る手術用運搬装置では、収納部を2以上備え、それぞれの収納部に、手術用器具を分けて格納することを特徴とするものである。
【0074】
図13および
図14に示すように、手術用運搬装置10zは、ロッド部110zと、外筒部120とを備えている。ロッド部110zは、長尺状のステンレス製の筒状部材により形成されている。ロッド部110zは、先端部に、体外から体内へ搬入するための収納部111が、ロッド部110zの長手方向に沿って2つ形成されている。この2つの収納部111には、それぞれ開口部111aが形成されている。
【0075】
本実施の形態6では、
図14に示すロッド部110zの先端側に位置する収納部111を第1収納部111A、第1収納部111Aより基端側に位置する収納部111を第2収納部111Bと称する。
第1収納部111Aと第2収納部111Bとは、それぞれ長手方向の長さを適宜決定することができる。
【0076】
それぞれの収納部111(第1収納部111A,第2収納部111B)のそれぞれには、開口部111aに合わせて内部空間を仕切る仕切り壁111bが配置されている。第1収納部111Aと第2収納部111Bとの仕切る仕切り壁111b同士の間には、収納部111のそれぞれの空間Sを連通する溝111dが形成されている。
【0077】
このように構成された手術用運搬装置10zの使用状態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態6では、手術用器具として、手術用針と手術用縫合糸とを体内に搬入することを例に説明する。
施術者は、手術用縫合糸42に手術用針41を繋げた状態で、第1収納部111Aに、手術用針41を格納し、溝111dに手術用針41を渡して、第2収納部111Bに、巻かれた状態の手術用縫合糸42を格納する。
そうすることで、手術用針41と手術用縫合糸42とを、第1収納部111Aと第2収納部111Bとに分けた状態で格納することができる。
【0078】
次に、
図4(A)にて説明した場合と同様に、予めスリーブ20に装着したトロッカー(図示せず)を被施術者の体内に挿入した後、トロッカーのみ引き抜き、スリーブ20を差し込んだ状態とすることで、手術用運搬装置10zの挿入口を形成した状態とする。また、スリーブ20のストップコック21のポートに、送気用チューブを接続して、ガス(気腹ガス等)を体腔内に導入することで、体腔内に空間ができた状態とする。
【0079】
図15(A)に示すように、施術者は、図示しない内視鏡を見ながら、スリーブ20の外套管22を案内管として、手術用運搬装置10zを進める。ロッド部110zの先端が、円弧面による半球状に形成されていることで、体内を進行させる際に器官への引っ掛かりが少ないのでスムーズに進行させることができる。
このとき、手術用運搬装置10zは、外筒部120の先端位置に、ロッド部110zの先端位置を合わせているため、ロッド部110zの収納部111(第1収納部111A,第2収納部111B)および溝111dは、外筒部120に隠れた状態である。従って、手術用針41が第1収納部111Aに格納され、巻かれた状態の手術用縫合糸42が第2収納部111Bに格納され、溝111dに手術用縫合糸42が渡された状態でも、外筒部120により、手術用針41と手術用縫合糸42とが外に落下することはない。
【0080】
図15(B)に示すように、施術者はロッド部110zの操作部112を押し込むと、ロッド部110zが進行して、外筒部120から、ロッド部110zの第1収納部111Aおよび第2収納部111Bが現れる。
施術者は、内視鏡を見ながら、図示しない鉗子により、第1収納部111Aに格納された手術用針41を取り出し、引っ張る。そうすることで、手術用針41に繋がり、溝111dを渡る手術用縫合糸42と、第2収納部111Bに格納された手術用縫合糸42とが、取り出される。
【0081】
このようにして、手術用運搬装置10zは、手術用針41を第1収納部111Aに格納した状態で、体外から体内へ搬入することができるので、簡単な操作で確実に、かつ安全に、体外から手術用器具を搬入することができる。
また、手術用針41が第1収納部111Aに、手術用縫合糸42が第2収納部111Bに、それぞれ分けて格納されているため、手術用針41と手術用縫合糸42とを体内へ搬入する際に、手術用針41と手術用縫合糸42とが絡まった状態とならない。
更に、施術者が、手術用針41を第1収納部111Aから引き上げ、引っ張ることで、第2収納部111Bに格納された手術用縫合糸42に絡まらせることなく手術用針41を第1収納部111Aから取り出すことができる。
【0082】
本実施の形態6に係る手術用運搬装置10zでは、収納部111を2つ形成されているが、3つ以上としてもよい。このときでも、それぞれの収納部111を溝111dで繋げるのが望ましい。