【課題】表層シートと中間シートとを均一に軟化させて所望の形状に真空成形できる真空成形用中空ボードを用いて形成された立体造形物、及び立体造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】対をなす表層シート間(バックシート21、ライナーシート22)に中間シート(キャップシート23)を介在させた樹脂製の中空ボード2であって、各表層シートの2〜10μmの赤外線透過率が平均25%以上であり、中間シートに色剤を添加することにより、各表層シートを透過した平均25%以上赤外線が、中間シートまで届き、着色層で赤外線を取り込んで適切に発熱させることができる。そのため、表層シートを軟化させ過ぎることなく、かつ、中間シートを適切に軟化させて、所望の形状に真空成形することができる。
請求項1、2または3記載の真空成形用中空ボードを赤外線ヒータにより加熱する工程と、加熱され変形可能な真空成形用中空ボードの真空引きを行う工程とを備えた立体造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について
図1〜
図8を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の立体造形物たる容器1は、真空成形用中空ボード2を真空成形することにより作られたものである。
【0018】
真空成形用中空ボード2は、
図1及び
図2に示すように、対をなす表層シート間に中間シートを介在させた樹脂製のものである。具体的には、この真空成形用中空ボード2は、3層構造をなすいわゆる気泡ボードであり、前記中間シートが、一面側に開放された多数の突起24を有するキャップシート23であり、一方の表層シートが、前記突起24の開放側に添設されるバックシート21であり、他方の表層シートが、前記突起24の先端側に添設されるライナーシート22である。
【0019】
キャップシート23は、
図1及び
図2に示すように、平面視円形状をなす多数の突起24を備えた立体構造をなすものであり、各突起24は幅方向に沿って一列に並んでいるとともに、流れ方向に沿って千鳥配置されている。本実施形態のキャップシート23は、突起が成形されてない箇所の厚み寸法が約500μmであり、突起24の高さ寸法が約5mm、直径が約10mmである。なお、キャップシート23の突起が成形されてない箇所の好ましい厚み寸法は、480μm〜520μmであり、突起24の好ましい高さ寸法は、4mm〜6mmであり、突起24の好ましい直径は10mm程度である。キャップシート23は、合成樹脂製で、具体的にはポリエチレンが30重量%、ポリプロピレンが70重量%の割合で配合されたものである。なお、ポリエチレンが20〜40重量%、ポリプロピレンが80〜60重量%の割合で配合されたものが好ましいが、本発明のキャップシート23はこれに限られず、ポリプロピレン100%のものであってもよい。キャップシート23は、色剤を添加したものである。本実施形態では、前記色剤がカーボンであり、キャップシート23は黒色に着色されている。しかして、キャップシート23は、2〜10μmの赤外線の透過率が例えば平均1%未満であり、本実施形態では前記透過率が平均0.97%に設定されている。
【0020】
バックシート21は、
図1及び
図2に示すように、前記キャップシート23の一面に添接される平坦なもので、キャップシート23の突起24と協働して密閉空間である多数の気泡25を形成する。本実施形態のバックシート21は、キャップシート23と同じ厚み寸法、具体的には500μmの厚み寸法を有する。なお、バックシート21の好ましい厚み寸法は、480μm〜520μmである。バックシート21は、合成樹脂製で、具体的にはポリエチレンが30重量%、ポリプロピレンが70重量%の割合で配合されたものである。なお、ポリエチレンが20〜40重量%、ポリプロピレンが80〜60重量%の割合で配合されたものが好ましいが、本発明のバックシート21はこれに限られず、ポリプロピレン100%のものであってもよい。バックシート21は、色剤を添加していないものである。しかして、バックシート21は、2〜10μmの赤外線の透過率が平均25%以上であり、本実施形態では前記透過率が平均26.7%に設定されている。
【0021】
ライナーシート22は、
図1及び
図2に示すように、前記キャップシート23の他面に添接される平坦なものである。本実施形態のライナーシート22は、キャップシート23及びバックシート21と同じ厚み寸法、具体的には500μmの厚み寸法を有する。なお、ライナーシート22の好ましい厚み寸法は、480μm〜520μmである。ライナーシート22は、合成樹脂製で、具体的にはポリエチレンが30重量%、ポリプロピレンが70重量%の割合で配合されたものである。なお、ポリエチレンが20〜40重量%、ポリプロピレンが80〜60重量%の割合で配合されたものが好ましいが、本発明のライナーシート22はこれに限られず、ポリプロピレン100%のものであってもよい。ライナーシート22は、色剤を添加していないものである。しかして、ライナーシート22は、2〜10μmの赤外線の透過率が平均25%以上であり、本実施形態では前記透過率が平均26.7%に設定されている。
【0022】
次に、この真空成形用中空ボード2を用いて
図3に示すような容器1を製造する方法について説明する。
【0023】
まず、
図5に示すように、真空成形用中空ボード2の両面側に配置された赤外線ヒータ3、4を用いて真空成形用中空ボード2を加熱する。すなわち、真空成形用中空ボード2は、後述する雌型6及び雄型7を備えた成形型5にセットする前に、赤外線ヒータ3、4で加熱される。ここでの加熱は、合成樹脂製の中空ボード2の融点を超えない直前の温度及び時間で行われる。
【0024】
赤外線ヒータ3、4により加熱され柔らかくなった真空成形用中空ボード2は、
図4に示すように、真空引きを行う雌型6と、この雌型6の成形面62に対して前記中空ボード2を押し付ける雄型7とを用いて真空成形される。
【0025】
雌型6は、成形すべき容器1の形状に凹陥されたものである。具体的には、雌型6は、凹陥部61に形成された底壁63と、この底壁63と滑らかに連続する内側壁64と、凹陥部61の開口65と同じ高さ位置に形成された載置面66とを主体に構成されたものである。底壁63には、真空成形するための吸引孔67が多数形成されている。本実施形態では、底壁63と内側壁64とが前記成形面62を形成している。
【0026】
雄型7は、例えば前記雌型6の凹陥部61に嵌り合う形状をなしたもので、雌型6の底壁63に対面する底面71と、雌型6の内側壁64に対面する外周面72とを主体に構成されている。雄型7は、雌型6に対してアクチュエータ等により上下方向に移動可能なものである。なお、雄型7は、雌型6の凹陥部61に嵌り合う形状をしたものには限られない。換言すれば、雄型7は必ずしも雌型6に対して一定のクリアランスを介するように作られているものではなく、立体成形時に成形しにくい箇所や、加熱時に変形しやすい箇所のみを押圧して整えるようなものであってもよい。
【0027】
具体的には、まず、
図6に示すように、凹陥部61の開口65を塞ぐように真空成形用中空ボード2を下側の成形型5である雌型6の上にセットし、下側の内面の吸引孔67を減圧する。すると、雌型6の成形面62側に形成された複数の吸引孔67から空気が吸引されて、真空成形用中空ボード2は雌型6の凹陥部61の形状に沿った形に成形される。この真空引きと同時またはこの後に、
図7に示すように、上側の成形型5である雄型7を雌型6に接近させて、雌型6と雄型7との間で真空成形用中空ボード2を挟み込む。この際、雌型6と雄型7との間に真空成形用中空ボード2の厚み寸法と同程度のクリアランスを設けてプレスする。なお、本実施形態では、真空成形用中空ボード2のライナーシート22側を雌型6に対面するように配するとともに、バックシート21側を雄型7に対面するように配している。
【0028】
真空成形用中空ボード2の温度が所定値以下になった後、
図8に示すように、雄型7を上昇させて雌型6から離間させ、雌型6から真空成形後の中空ボード2を取り外す。そして、雌型6と雄型7とで挟み込まれていない部分に生じたバリ13を取り除くトリミング加工が施された後、底壁11及び周壁12を備えた容器1が完成する。
【0029】
以下、真空成形用中空ボード2の一実施例及び比較例1、2、3に関して説明する。まず、実施例及び比較例1、2、3における実験方法の共通事項と個別の設定事項について列挙する。
【0030】
<共通事項>
・真空成形用中空ボード2の原反厚み:6mm
・真空成形用中空ボード2の原反の単位面積当たり重量:1400g/m
2
・真空成形用中空ボード2の構造:バックシート21、ライナーシート22、キャップシート23からなる3層構造
・バックシート21、ライナーシート22、キャップシート23の各厚み寸法:500μm
・バックシート21、ライナーシート22、キャップシート23の合成樹脂の配合割合:ポリエチレン30重量%、ポリプロピレン70重量%
・上側のヒータ3の温度(ヒータ3の表面温度実測値):380度
・下側のヒータ4の温度(ヒータ4の表面温度実測値):185度
・雌型6の凹陥部61の内法寸法:幅350mm*長さ420mm*高さ60mmの直方体、角部R40mm
・成形する容器1の外法寸法:幅350mm*長さ420mm*高さ60mmの直方体、角部R40mm
【0031】
<実施例>
・バックシート21:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
・ライナーシート22:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
・キャップシート23:色剤(カーボン1.2重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均0.97%
【0032】
<比較例1>
・バックシート21:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
・ライナーシート22:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
・キャップシート23:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
【0033】
<比較例2>
・バックシート21:色剤(チタン5.0重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均14.9%
・ライナーシート22:色剤(チタン5.0重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均14.9%
・キャップシート23:色剤(カーボン1.2重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均0.97%
【0034】
<比較例3>
・バックシート21:色剤(チタン5.0重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均14.9%
・ライナーシート22:色剤(チタン5.0重量%)添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均14.9%
・キャップシート23:色剤無添加。2〜10μmの赤外線の透過率は平均26.7%
【0035】
次いで、前述した実施例及び比較例1、2、3の真空成形用中空ボード2を用いて真空成形を行った結果について、
図9〜
図12を用いて説明する。ここで、「型への追従」については「○」と「×」の2段階で評価しており、型への追従が「○」とは、雌型6及び雄型7への追従が良好である状態、型への追従が「×」とは、雌型6及び雄型7への追従が不良である状態を言う。次に、「CAP膨張」については「◎」〜「×」の4段階で評価しており、CAP膨張が「◎」とは、キャップシート23とバックシート21との間に形成された気泡25の膨張がない良好な状態、CAP膨張が「○」とは、気泡25の膨張が若干のみある状態、CAP膨張が「△」とは、気泡25の膨張がある状態、CAP膨張が「×」とは、主にバックシート21が破損して気泡25に穴があいてしまう状態を言う。また「型からの剥離」については、「○」〜「×」の3段階で評価しており、型からの剥離が「○」とは、真空成形後に雌型6及び雄型7の少なくとも一方に中空ボード2の一部または全部が全く付着しない良好な状態、型からの剥離が「△」とは、真空成形後に雌型6及び雄型7の少なくとも一方に中空ボード2の一部または全部が若干付着してしまう状態、型からの剥離が「×」とは、真空成形後に雌型6及び雄型7の少なくとも一方に中空ボード2の一部または全部が付着してしまう状態を言う。
【0036】
<実施例>
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が30秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が40秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が50秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が60秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が70秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が80秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「△」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が90秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
【0037】
<比較例1>
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が30秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が40秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が50秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が60秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が70秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が80秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「△」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が90秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
【0038】
<比較例2>
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が30秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が40秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が50秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が60秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が70秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「△」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が80秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が90秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
【0039】
<比較例3>
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が30秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が40秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「◎」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が50秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「○」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が60秒では、型への追従が「×」、CAP膨張が「○」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が70秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「△」、型からの剥離が「△」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が80秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
・真空成形用中空ボード2のヒータ3、4による加熱時間が90秒では、型への追従が「○」、CAP膨張が「×」、型からの剥離が「×」であった。
【0040】
以上の結果から、実施例については、加熱時間が50秒で、「型への追従」、「CAP膨張」及び「型からの剥離」のいずれもが良好なものとなった。すなわち、実施例では、加熱時間の条件を成形すべき成型物に適切に合わせれば、実用的な容器1を作ることが可能になった。一方、比較例1、2、3では、加熱時間をどれだけ変えても良好な結果が得られなかった。
【0041】
また、このような実験結果から、以下のことも推測される。
【0042】
まず、「型への追従」については、加熱時間が短ければキャップシート23が十分に温まらないため不良となる。一方、加熱時間が長ければキャップシート23が十分に温まるため良好なものとなる。なお、実施例では、比較例1、2、3に比べて短い加熱時間で型への追従を良好なものとすることができたが、これは以下のような理由によると考えられる。すなわち、バックシート21やライナーシート22に色剤が添加されたもの(比較例2、3)では内部のキャップシート23まで熱が届きにくい。一方、内部のキャップシート23まで熱が届きやすいバックシート21及びライナーシート22に色剤が添加されていない場合であっても、キャップシート23に色剤が添加されていないもの(比較例1)では、キャップシート23も赤外線が通過してしまうためキャップシート23が温まりにくい。
【0043】
また、「CAP膨張」については、加熱時間が短ければバックシート21やキャップシート23が温まり過ぎることがなく、密閉空間(気泡25)が膨張せずに良好なものとなる。一方、加熱時間が長ければバックシート21が軟化し過ぎて膜を維持できなくなったり、バックシート21やキャップシート23が温まり過ぎて密閉空間(気泡25)の体積が不当に大きくなったりして、バックシート21に穴があくため不良となる。なお、実施例及び比較例1では、比較例2、3に比べてCAP膨張が生じない時間を長く確保することができたが、これは以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、バックシート21に色剤が添加されていないもの(実施例、比較例1)ではヒータ3、4から受け取った熱を透過させやすく、バックシート21に色剤が添加されたもの(比較例2、3)よりもバックシート21で受け取って発熱する量が少ないためである。
【0044】
さらに、「型からの剥離」については、加熱時間が短ければバックシート21及びライナーシート22が軟化し過ぎることがないため、真空成形後に型に付着しにくく剥離が良好なものとなる。一方、加熱時間が長ければバックシート21及びライナーシート22が軟化し過ぎて、真空成形後に型に付着して剥離が不良となる。なお、実施例及び比較例1では、比較例2、3に比べて型からの剥離を良好なものとすることができる時間を長く確保することができたが、これは以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、バックシート21やライナーシート22に色剤が添加されていないもの(実施例、比較例1)ではヒータ3、4から受け取った熱を透過させやすく、バックシート21やライナーシート22に色剤が添加されたもの(比較例2、3)よりもバックシート21及びライナーシート22で受け取って発熱する量が少ないためである。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態によれば、対をなす表層シート間に中間シートを介在させた樹脂製の中空ボード2であって、前記各表層シートが、2〜10μmの赤外線透過率が平均25%以上のものであり、前記中間シートが色剤を添加したものである。具体的には、本実施形態では、表層シートであるバックシート21及びライナーシート22に色剤を添加せず、対して中間シートであるキャップシート23のみに色剤を添加した。このようなものであれば、バックシート21及びライナーシート22には色剤を添加しないことによって赤外線透過率が比較的高くなり、これらバックシート21及びライナーシート22の加熱速度を遅くすることができる。これと同時に、バックシート21及びライナーシート22を透過した赤外線がキャップシート23に照射されることにより、キャップシート23の加熱速度を早くすることができる。この際、キャップシート23への赤外線照射量を多くしたとしても、遠赤外線がキャップシート23を透過または反射してしまっては、キャップシート23の加熱速度の顕著な上昇が見込めないが、本実施形態では、キャップシート23には赤外線吸収率が高い色剤を添加しているため、キャップシート23でしっかり赤外線を受けて発熱できる。
【0046】
前記色剤が、カーボンであるので、中空ボード2のキャップシート23が黒色に着色され、赤外線の吸収率を高めることができるとともに、容器1を形成した際に内容物を外側から好適に隠蔽できる。
【0047】
また、前記中間シートが、一面側に開放された多数の突起24を有するキャップシート23であり、一方の表層シートが、前記突起24の開放側に添設されるバックシート21であり、他方の表層シートが、前記突起24の先端側に添設されるライナーシート22であるので、このような内部に密閉空間を備えた中空ボード2を用いて容器1を形成すれば、緩衝作用に優れたものとすることができる。
【0048】
なお、従来、このような内部に密閉空間(気泡25)を備えた中空ボード2を用いて立体成形するものは、密閉空間を備えない中空ボード2を用いて立体成形するものに比べて非常に困難であった。詳述すれば、従来から真空成形の材料として用いられてきた密閉空間を備えたいわゆる気泡ボードは、赤外線ヒータにより少なくとも一方の表面から加熱された後、真空引きされるが、キャップシートが成形可能となる温度まで気泡ボード全体を加熱すると、表層のバックシート及びライナーシートが溶けて、製膜を維持できなくなる。そして、バックシートに穴があくと、キャップ内の空気が抜けてしまい、気泡ボードの所望の中空状態を維持できなくなっていた。もしくは、バックシートに穴があく前に、キャップ内の空気が加熱により膨張することによって表層のバックシートが風船状に膨張し、気泡ボードの平滑な表面を損なっていた。そして、本発明者らは、以上のような不具合が、キャップシートの成形可能温度までの加熱時間とバックシート及びライナーシートの成形可能温度までの加熱時間との間に生じる差に起因するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本実施形態に示した真空成形用中空ボード2であれば、中空ボード2の加熱時間が従来のものよりも短縮され、真空成形を行ってもバックシート21及びライナーシート22に穴があかず、バックシート21及びライナーシート22の平滑性も損なわない真空成形製品を得ることができる。
【0049】
なお、バックシート21やライナーシート22が色剤により着色されたものであると、赤外線の透過率が低下するため、バックシート21やライナーシート22が色剤無添加のものに比べてキャップシート23の加熱に時間を要し、上述した不具合がより顕著に現れていた。しかしながら、本実施形態では、バックシート21及びライナーシート22は、色剤による着色を施していないため、加熱時間を比較的短時間に抑えることができる。
【0050】
特に、本実施形態では、中空ボード2の各シート21、22、23の組成が、ポリエチレンを30重量%、ポリプロピレンを70重量%配合したものであるため、綺麗な外観を有する容器1を形成することができる。詳述すれば、このような中空ボード2を真空成形して立体形状に変形させた際には、バックシート21とライナーシート22との間で厚み方向に立設するキャップシート23の起立壁部分に大きな力が加わってこの部分が伸びるが、本実施形態のようにポリエチレンを30重量%、ポリプロピレンを70重量%配合したものであると、ポリプロピレン100%のものに比べて、前記起立壁部分の伸びの均一化を実現することができる。すなわち、ポリプロピレン100%のものはキャップシート23が適切に伸びず、変形部分の気泡25の大きさが均一でなくなってバックシート21やライナーシート22の破損を引き起こしてしまうことがあるが、ポリエチレンを30重量%、ポリプロピレンを70重量%配合したものは適切にキャップシート23が伸びて変形し、変形部分の気泡25の大きさを略一定にすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、表層シートであるバックシート21の厚み寸法とライナーシート22の厚み寸法とを同じにしているため、加熱や真空成形により前述したキャップシート23の起立壁部分に大きな力が加わった際に、一方のシート21、22のみが破損してしまうことを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態の容器1は、前記真空成形用中空ボード2を真空成形することにより作られたものであるので、真空成形を行ってもバックシート21及びライナーシート22に穴があかず、バックシート21及びライナーシート22の平滑性も損なわないため、機能的であって、かつ、美観に優れた容器1とすることができる。
【0053】
本実施形態の容器1の製造方法は、真空成形用中空ボード2を赤外線ヒータ3、4により加熱する工程と、加熱され変形可能な真空成形用中空ボード2の真空引きを行う工程とを備えたものである。そして、本実施形態では、真空成形に適するようにバックシート21、ライナーシート22、及びキャップシート23の色をそれぞれ調整したので、赤外線ヒータ3、4による加熱の効率を上げることができる。
【0054】
また、本実施形態の容器1は、前記真空成形用中空ボード2の真空引きを行う雌型6と、この雌型6の成形面62に対して前記中空ボード2を押し付ける雄型7とを用いて真空成形することにより作られたものであるので、雄型7で成形をアシストすることにより、雌型6のみで成形するときよりも所望の形状により近付けることができる。また、雄型7で中空ボード2の一面側を押し付けることにより、キャップシート23とバックシート21及びライナーシート22との剥離を抑制するとともに、雄型7で押圧された面を平滑なものとすることができる。また、加熱した中空ボード2の両面が成形型5に接触するため、片面だけを接触させる場合に比べて、中空ボード2の冷却効率が向上し、冷却時間の短縮化を図ることができる。
【0055】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0056】
例えば、中空ボードは、表層シートの樹脂と中間シートの樹脂とを異なる樹脂組成にすることができるものであればどのようなものであってよい。すなわち、上述した実施形態では、中空ボードの具体的な一態様として、多数のキャップ状の突起を有するキャップシートと、このキャップシートを挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート及びライナーシートとを備えた3層状の気泡ボードを用いて説明したが、中空ボードとして、このプラスチック気泡ボードに替えて、「プラスチック段ボール」または「プラスチック折り畳みハニカムボード」を適用しても構わない。すなわち、中空ボードは、中間シートと表層シートとが協働して内部に密閉空間を形成するもののみならず、密閉空間を形成しないものであってもよい。
【0057】
「プラスチック気泡ボード」とは、本実施形態で説明したように、例えば、ポリプロピレン等の樹脂をダイから溶融した状態で押し出したシートに、多数のキャップ状の突起を真空形成し、このキャップシートの底面と頂面にそれぞれ平坦なバックシート及びライナーシートを融着させて中空構造の板としてなる成形品をいう。
【0058】
「プラスチック段ボール」とは、プラスチックの溶融押し出しにより形成された2枚のシートとそれらを連結して平行に走る直線状または曲線状の多数のリブとからなる成形品をいう。また、「プラスチック折り畳みハニカムボード」とは、プラスチックシートに所定ピッチで垂直方向の部分を与え、長手方向に順次折り重ねることによって形作られるハニカム構造を有する成形品をいう。
【0059】
また、中間シートは立体形状を備えたものであればどのようなものであってもよく、1層のみから形成されるもののみならず、複数層で形成されてもよい。すなわち、中間シートは、いわゆるツインコーン構造のように中間シートの複数の層がそれぞれ個別の立体形状に成形されており、それら複数の層が重ね合わされて厚みのある立体形状を形成したものや、また、樹脂を共押し出し等によりシート状に成形して多層化されたものを立体形状に成形したものであってもよい。
【0060】
各表層シートは、複数層で形成されているものを含む。すなわち、各表層シートが、それぞれ樹脂を共押し出し等によりシート状に成形して多層化されたものであってもよい。
【0061】
さらに、本発明の表層シート及び中間シートは熱可塑性樹脂であればどのようなものであってもよく、上述した合成樹脂には限られず種々変更可能である。また、各表層シート及び中間シートは、樹脂の他、抗酸化剤、紫外線吸収剤、滑剤等を添加したものであってもよい。
【0062】
本発明の真空成形用中空ボードを用いて真空成形を行って3次元成形される立体造形物は、上述した内部に収納空間を有する容器やトレイ、アタッシュケース等に限られず、例えば自動車内装材や産業機器を構成する各部品等にも適用できる。また、雄型を用いることなく立体造形物を形成してもよい。
【0063】
中間シートに添加される色剤は、カーボン以外にも種々変更可能である。例えば、チタンを用いて白色に着色してもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。