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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-128871(P2015-128871A)
(43)【公開日】2015年7月16日
(54)【発明の名称】缶の印刷用凸版及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20150619BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20150619BHJP
   B41C 1/05 20060101ALI20150619BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20150619BHJP
【FI】
   B41N1/12
   B41M1/28
   B41C1/05
   B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-1692(P2014-1692)
(22)【出願日】2014年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩明
【テーマコード(参考)】
2H084
2H113
2H114
3E062
【Fターム(参考)】
2H084AA05
2H084AA30
2H084AE05
2H084BB04
2H084BB16
2H084CC01
2H113AA02
2H113AA04
2H113BA01
2H113BB10
2H113BB24
2H113CA25
2H113DA41
2H113EA07
2H113EA15
2H113FA42
2H114AA01
2H114AA10
2H114AA23
2H114BA10
2H114EA04
2H114FA06
2H114GA31
3E062AA04
3E062AC03
3E062DA02
3E062DA09
(57)【要約】
【課題】高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶に印刷することができる缶の印刷用凸版、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】インキが付着する画像部分50に、複数の突起体41aが配設された網点部41と、前記網点部以外の部分42と、を有する缶の印刷用凸版40であって、前記網点部41のうち、前記突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた部分は、前記突起体41aの頂部高さHが、前記網点部以外の部分42の頂部高さHに比べて低くされ、かつ、前記網点部以外の部分42の頂部高さHと前記突起体41aの頂部高さHとの差△hが、0.03mm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキが付着する画像部分に、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有する缶の印刷用凸版であって、
前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた部分は、前記突起体の頂部高さが、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くされ、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hが、0.03mm以下であることを特徴とする缶の印刷用凸版。
【請求項2】
請求項1に記載の缶の印刷用凸版であって、
前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hが0mmであることを特徴とする缶の印刷用凸版。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の缶の印刷用凸版であって、
前記網点部は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されたことを特徴とする缶の印刷用凸版。
【請求項4】
インキが付着する画像部分に、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有する缶の印刷用凸版を製造する方法であって、
前記網点部をレーザーにより彫刻するレーザー彫刻工程を有し、
前記レーザー彫刻工程では、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされる部分は、前記突起体の頂部高さを、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くし、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hを、0.03mm以下とすることを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の缶の印刷用凸版の製造方法であって、
前記レーザー彫刻工程では、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hを0mmとすることを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の缶の印刷用凸版の製造方法であって、
前記レーザー彫刻工程では、前記網点部を、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻することを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶の印刷用凸版及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、缶の外周面に印刷を施す缶の印刷装置として、例えば、図4に示されるようなオフセット印刷装置Aが知られている。このオフセット印刷装置Aは、インキ付着機構Bと、缶移動機構Cと、を有している。
インキ付着機構Bは、インキを供給するインカーユニット1と、インカーユニット1に接触してインキを写し取った後、缶(缶胴)20の外周面に接触して該インキを印刷する(転写する)ブランケット9を外周に備えたブランケットホイール8と、を有している。
【0003】
インカーユニット1は、インキ源2と、インキ源2に接触してインキを受け取るダクティングロール3と、ダクティングロール3に接続する複数のローラからなる中間ローラ4と、中間ローラ4に接続するゴムローラ5と、ゴムローラ5に接続するシリンダ6と、を備えており、シリンダ6は、印刷装置Aのシャフト部に回転自在に支持されている。
【0004】
また、シリンダ6の外周面には、図5及び図6に示されるような円筒状のスリーブ印刷版30が着脱可能に嵌合しており、該スリーブ印刷版30の外周面には、缶20に転写する画像パターンと同形状に形成された画像部分を有する缶の印刷用凸版(以下、凸版と省略することがある)100が、スリーブ印刷版30の軸線O回り(周方向)に互いに間隔をあけて複数設けられている。
【0005】
また図4において、ブランケットホイール8の外周面には、ブランケット9が複数枚設けられており、これらブランケット9は、シリンダ6の外周面に装着されたスリーブ印刷版30の凸版100に接触し、また缶20にも接触するように構成されている。
【0006】
缶移動機構Cは、缶20を印刷装置Aに取り入れる缶シュータ10と、缶シュータ10から供給された缶20を回転自在に保持するマンドレル11と、マンドレル11に装着された缶20を、順次インキ付着機構Bへ向かわせるように回転移動させるマンドレルターレット12と、を有している。
【0007】
このような構成とされたオフセット印刷装置Aにおいては、複数のインカーユニット1のインキ源2から各々異なった色のインキが、ダクティングロール3、中間ローラ4、ゴムローラ5を介して、シリンダ6の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版100に付着させられ、これら各色のインキが、回転するブランケットホイール8上のブランケット9に画像パターンとして乗せられ、この画像パターンがマンドレル11に保持された缶20に接触しつつ印刷されるようになっている。
【0008】
例えば下記特許文献1、2に、従来の缶の印刷用凸版が開示されている。本明細書に添付の図7(a)(b)に示されるように、従来の缶の印刷用凸版100は、インキが付着する画像部分に、複数の突起体101aが配設された網点部101と、網点部以外の部分102と、を有している。前記網点部以外の部分102には、ベタ部(広範囲にインキが付着されてベタ塗りに用いられる部分)や線画部(線画の中でも太線及び太線による文字や記号等)が配設されており、網点部101の突起体101aは、前記網点部以外の部分102よりも凸版100の厚さ方向Tに後退させられた基底部103に突設されている。また、このような網点部101は、レーザー彫刻により形成される。
【0009】
下記特許文献1、2においては、網点部101の突起体101aの頂部高さ(凸版100の厚さ方向Tに沿う突起体101aの基底部103からの突出高さ)Hが、ベタ部(画像部分のうち網点部以外の部分)102の頂部高さ(厚さ方向Tに沿うベタ部102の基底部103からの突出高さ)Hよりも低くされており、これにより、網点部101のドットゲイン(点太り現象)を抑制して、画像パターンの高精細化に対応するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−183888号公報
【特許文献2】特開平5−11438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の缶の印刷用凸版100では、ベタ部102の頂部高さHに対して網点部101の突起体101aの頂部高さHが低くされる位置が適正とは言えず、そのため網点部101における版面の押圧力が弱くなり、該網点部101からブランケット9にインキが転移しきれず残りやすくなって、残留したインキが突起体101a同士の間に溜まる現象(所謂「目詰まり現象」)が生じることがあった。特に、突起体101a同士が密集配置されて間隔が狭く設定された、精細度の高い網点部101においては、このような目詰まり現象が生じやすく、缶20の印刷品質を安定して維持することが難しかった。
よって従来の缶の印刷用凸版100では、印刷の高精細化に応じて、印刷品位(精度)をより向上させるとともに、良好な印刷品位を安定して維持することに改善の余地があった。
【0012】
ここで、上述した問題について、図8図12により具体的に説明する。図8図12は、缶の印刷用凸版100による印刷手順、及び目詰まり現象について説明している。
まず、図8において、弾性を有するゴムローラ5に対して、凸版100の版面が押圧されることで、該ゴムローラ5から、前記版面のうち画像部分である網点部101及びベタ部102に、インキIが付着(転移)させられる。
【0013】
次いで、凸版100においてインキIが載せられた画像部分(網点部101及びベタ部102)に対して、図9に示されるようにブランケット9が押圧されることで、凸版100の画像部分からブランケット9に、インキIが付着(転移)させられる。
ここで、金属製の缶20の印刷において、光沢のある金属面(缶20の外周面)に陰ぺい性高く(隙間なく)インキIを印刷するには、インキIの供給量(付着量)を多く確保することが望ましいことから、図9に示されるように、ブランケット9は、撓む程度にまでベタ部102に対して強く押圧される。一方、網点部101はベタ部102より厚さ方向Tに一段後退しているため、ベタ部102に比べて弱い力でブランケット9に押圧される。
【0014】
ところが、ブランケット9が強く押圧されるベタ部102に比べて、網点部101では、インキIを凸版100からブランケット9に転移させるのに十分な押圧力が得られず、図10に示されるように、網点部101のインキIの一部が突起体101aの外周面に残インキIsとして残ってしまう。
【0015】
このような残インキIsが網点部101に徐々に蓄積していき、図11に示されるように目詰まり状態(突起体101a同士の間に残インキIsが充満した状態)となり、突起体101a同士の間に残インキIsを保持できなくなった時点で、残インキIsはブランケット9にまとめて転移されることになる。
ここで、図12(a)に示される画像パターンは、凸版100の画像部分(ベタ部102及び網点部101)からブランケット9に正常にインキIが転移した場合の缶20の印刷状態(正常な印刷状態)を表しており、図12(b)に示される画像パターンは、網点部101に上記目詰まり現象が生じたことで、凸版100の画像部分からブランケット9に意図しない残インキIsが転移して、網点同士が連結された、異常な印刷状態を表している。
【0016】
また近年では、画像パターンの高精細化が要求されているのにともない、網点部101を構成する各突起体101aの頂部面積が非常に小さくなり、かつ網点部101の単位長さ(1インチ)あたりの線数(突起体101aが並ぶ列数)が80〜250LPI(線/インチ)の間で細かく設定される(つまり単位面積あたりの線数が多く設定される)場合がある。このような高精細化にともなって、上述した問題(目詰まり現象)がより生じやすくなっている。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶に印刷することができる缶の印刷用凸版、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の発明者は缶の印刷用凸版について鋭意研究を重ねた結果、網点部のうち、特に目詰まり現象が生じやすい高精細な画像パターンの部分、つまり突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた部分においては、突起体の頂部高さが、ベタ部等の網点部以外の部分の頂部高さよりも0.03mm以下の範囲内で低くされていることで、目詰まり現象を顕著に抑制できるという知見を得るに至った。
【0019】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、インキが付着する画像部分に、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有する缶の印刷用凸版であって、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた部分は、前記突起体の頂部高さが、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くされ、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hが、0.03mm以下であることを特徴とする。
また本発明は、インキが付着する画像部分に、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有する缶の印刷用凸版を製造する方法であって、前記網点部をレーザーにより彫刻するレーザー彫刻工程を有し、前記レーザー彫刻工程では、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされる部分は、前記突起体の頂部高さを、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くし、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hを、0.03mm以下とすることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る缶の印刷用凸版及びその製造方法によれば、該凸版におけるインキが付着する(インキが載せられる)画像部分において、複数の突起体が配設された「網点部」のうち、突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた高精細な画像パターンの部分では、突起体の頂部高さが、ベタ部等の「網点部以外の部分」の頂部高さに比べて低くされ、かつ、網点部以外の部分の頂部高さと突起体の頂部高さとの差△hが、0.03mm以下に設定されているので、下記の効果を奏する。
【0021】
すなわち、網点部のうち、突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた高精細な画像パターンの部分(以下、「高精細な部分」と省略)では、例えば本発明とは異なり突起体の頂部高さを網点部以外の部分の頂部高さと同一に設定した場合に、ドットゲイン(点太り現象)が生じやすくなったり、網点部の摩耗が早期に進行しやすくなったりして、印刷品位(精度)を確保できないおそれがある。
そこで本発明のように、網点部のうち前記高精細な部分に対しては、突起体の頂部高さを網点部以外の部分の頂部高さよりも低くすることで、ドットゲインや網点部の摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
【0022】
その一方で、網点部の前記高精細な部分における突起体の頂部高さを単純に網点部以外の部分の頂部高さよりも低くすると、上述した目詰まり現象による印刷精度低下の問題が生じるおそれがある。
そこで本発明のように、網点部のうち前記高精細な部分において、網点部以外の部分の頂部高さと突起体の頂部高さとの差△hを、0.03mm以下とすることで、網点部の前記高精細な部分でもブランケット等のインキ付着対象物に対する押圧力を確保しつつ、版面頂点(突起体の頂部)に乗ったインキを確実にインキ付着対象物に転移させることができ、印刷精度が安定的にかつ高品位に維持されることになる。
【0023】
尚、網点部の前記高精細な部分は、レーザー彫刻により形成できるが、前記高精細な部分の突起体の頂部は非常に小さく形成されるため、該レーザー彫刻により頂部が溶けて半球状に形成される場合がある。そこで、本発明でいう「突起体の頂部面積」とは、突起体の頂部における最頂点から所定の高さだけ後退した高さ位置(印刷後に所期の点太さが得られる突起体の高さ位置)における該突起体の断面積を表している。前記所定の高さとは例えば数μmであり、具体的な一例としては2μmである。
また、「突起体の頂部高さ」は、突起体の頂部における最頂点の高さを表している。
【0024】
以上のように、本発明に係る缶の印刷用凸版及びその製造方法によれば、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶に印刷することができる。
尚、網点部のうち、突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分については、弱い印圧であってもインキ付着対象物との接触面積を確保しやすく、目詰まり現象(インキ溜り)が生じにくいことから、前記差△hは0.03mmより大きくても構わない。ただし、印刷精度を安定して確保する上では、突起体の頂部面積が1.4×10−3mmより大きい部分についても、前記差△hが0.03mm以下とされて、0mmにより近い設定とされることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版において、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hが0mmであることとしてもよい。
また、本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法において、前記レーザー彫刻工程では、前記網点部のうち、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hを0mmとすることとしてもよい。
【0026】
網点部のうち、突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされる部分に比べて、突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、ドットゲインが生じることや、網点部の摩耗が早期に進行する可能性は低くなる。
そこで上記構成のように、網点部のうち突起体の頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、インキ付着対象物に対する接触面積及び押圧力を安定して確保し、かつインキを確実に転移させる目的で、突起体の頂部高さを網点部以外の部分の頂部高さに合わせる(つまり△h=0mmに設定する)ことが好ましい。これにより、印刷精度を高品位にさらに安定して維持することができる。
【0027】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版において、前記網点部は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されたこととしてもよい。
また、本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法において、前記レーザー彫刻工程では、前記網点部を、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻することとしてもよい。
【0028】
この場合、画像部分の網点部をレーザー彫刻することで、画像パターンを所期の模様、図柄、文字、記号等に応じて細密に精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る缶の印刷用凸版及びその製造方法によれば、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る缶の印刷用凸版の要部を拡大して示す側断面図(縦断面図)である。
図2】本発明の一実施形態に係る缶の印刷用凸版の一例を説明する図であり、(a)画像パターン(印刷デザイン)全体を表す画像、(b)画像パターンのうちレーザー彫刻される部分(網点部等)を表すレーザー彫刻画像、(c)画像パターンのうちレーザー彫刻されない部分(ベタ部や太い線画等)を表す画像、である。
図3】レーザー彫刻後の突起体の頂部形状の一例を示す図である。
図4】缶に印刷を施すオフセット印刷装置の概略構成を説明する図である。
図5図4のオフセット印刷装置に用いられるスリーブ印刷版を示す斜視図である。
図6図4のオフセット印刷装置に用いられるスリーブ印刷版を軸線方向から見た正面図である。
図7】従来の缶の印刷用凸版を示す(a)上面図、(b)側断面図、である。
図8】従来の缶の印刷用凸版における印刷手順、及び目詰まり現象を説明する図である。
図9】従来の缶の印刷用凸版における印刷手順、及び目詰まり現象を説明する図である。
図10】従来の缶の印刷用凸版における印刷手順、及び目詰まり現象を説明する図である。
図11】従来の缶の印刷用凸版における印刷手順、及び目詰まり現象を説明する図である。
図12】缶の外周面に、(a)画像パターンが正常に印刷された状態を説明する図、(b)目詰まり現象により、画像パターンが異常に印刷された状態を説明する図、である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る缶の印刷用凸版40及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態の缶の印刷用凸版40は、図5及び図6に示されるスリーブ印刷版30の外周面に設けられるものであり、該スリーブ印刷版30は、図4に示されるオフセット印刷装置Aのシリンダ6に、着脱可能に嵌合される。オフセット印刷装置Aの概略構成は前述した通りであり、ここではその説明を省略する。
【0032】
図5及び図6において、スリーブ印刷版30は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ支持体31と、スリーブ支持体31の外周側に配設された版材32と、を備えている。尚、本実施形態では、版材32はスリーブ支持体31に一体に形成されている。
【0033】
スリーブ支持体31は、例えば繊維強化プラスチック(FRP)やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等で形成されており、本実施形態においては、スリーブ支持体31はFRPで形成されている。本実施形態ではスリーブ支持体31は、例えばその外径Dが100mm≦D≦250mm、軸線O方向に沿う長さLが50mm≦L≦500mm、外径Dと軸線O方向長さLとの比L/Dが0.2≦L/D≦2、に設定されている。また、スリーブ支持体31の肉厚tは、例えば0.25mm≦t≦2mmとされている。
【0034】
版材32は、レーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり、例えば肉厚が0.5mm〜1.0mmとされた円筒状をなしている。この版材32の外周面には、レーザー加工(レーザー彫刻)によって形成された画像パターン(印刷デザイン)を有する缶の印刷用凸版40(以下、凸版40と省略することがある)が、軸線O回り(スリーブ印刷版30の周方向)に互いに間隔をあけて複数刻設されている。尚、本実施形態では、図6に示されるように、版材32の外周面に2つの凸版40が設けられており、これら凸版40同士が軸線Oを挟んで互いに背向する位置(背中合わせの位置)に配置されている。
【0035】
図1及び図2(a)に示されるように、凸版40は、その画像パターンとされる版面に、インキが付着される画像部分50と、インキが付着されない非画像部分51と、を有している。
また、インキが付着する画像部分50は、複数の突起体41aが配設された網点部41(図2(a)において灰色で示される網点画像部)と、網点部以外の部分42(図2(a)において黒色で示されるベタ画像部)と、を有している。尚、図2(a)に示される画像パターン(印刷デザイン)は、あくまで本実施形態を説明するための一例であり、本発明の構成を限定するものではない。
【0036】
画像部分50のうち、前記網点部以外の部分42には、ベタ部(広範囲にインキが付着されてベタ塗りに用いられる部分)や線画部(線画の中でも太線及び太線による文字や記号等)が配設されている(図2(c)に黒塗りで示される部分を参照)。以下、前記網点部以外の部分42を、単にベタ部42ということがある。
【0037】
図1において、画像部分50のうち、網点部41の突起体41aは、ベタ部42よりも凸版40の厚さ方向Tに後退させられた基底部43に突設されている。本実施形態では、突起体41aは、基底部43から厚さ方向Tに沿って頂部側(図1における上側、スリーブ印刷版30における径方向の外側)へ向かう従い漸次縮径する円錐台状又は角錐台状(つまり截頭錐体状)をなしており、該突起体41aの頂部は、その上側から見て円形状又は多角形状をなしているが(図3を参照)、突起体41aの頂部形状は、本実施形態で説明したものに限定されない。
【0038】
網点部41には、複数の突起体41aが規則的に又は不規則に集合して配置(配列)されており、また突起体41aの集中度が画像部分50の各部で互いに同一とされたり、互いに異なったりして、網点画像が形成されている。
具体的に本実施形態の凸版40は、複数の突起体41aの配列が規則的とされ、突起体41aの頂部(頂点)面積や形状が互いに異なることで濃度が表現される、AMスクリーン印刷用凸版であるが、これに限定されるものではない。すなわち凸版40は、突起体41aの頂部面積や形状が互いに同一で、配列が不規則とされる(集中度(密度)が変化する)ことにより濃度が表現される、FMスクリーン印刷用凸版であってもよい。
【0039】
網点部41には、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数(網点線数、スクリーン線数、又は精細度)が80〜250LPIとされ、網点濃度(網点面積率)が0%を超え15%以下(具体的には、0.2〜15%)とされた高精細な画像パターンの部分(以下「高精細な部分」と省略することがある)が含まれている。尚、前記「1.4×10−3mm」は、例えば直径0.0422mmの円の面積に相当する。
突起体41aの頂部面積は、例えば、80線・網点濃度10%の時で頂部面積10×10−3mm、250線・網点濃度1%の時で頂部面積0.1×10−3mmとなっている。また、網点部41の前記高精細な部分において、隣り合う突起体41a同士の画像間距離(網点画像間距離)は、0.3mm以下とされている。
【0040】
ここで、前記「突起体41aの頂部面積」とは、基本的には各突起体41aの円形平面状又は多角形平面状をなす頂面の面積を表しているが、網点部41の前記高精細な部分において、例えば突起体41aの頂面の面積が9×10−3mmよりも小さく設定される場合には、図3に示されるように、突起体41aをレーザー彫刻したときに頂部が溶けることで半球状に形成される場合がある。この場合、印刷により所期(所望)の網点太さが得られる突起体41aの頂部位置は、該突起体41aの最頂点から所定の高さHだけ厚さ方向Tに後退した高さ位置となる。そこで本明細書においては、「突起体41aの頂部面積」とは、該突起体41aの最頂点から所定の高さHだけ厚さ方向Tに後退した高さ位置における、この突起体41aの頂部横断面の面積と定義する。尚、本実施形態では、前記所定の高さHを2μmとした。
また、前記線数(LPI)とは、版面の1インチ(25.4mm)あたりに網点(突起体41aの頂面)が並ぶ列数(線/インチ)を表している。
また、前記網点濃度とは、単位面積あたりにインキが盛られる面像面積の割合を表している。
また、前記画像間距離とは、隣り合う突起体41aの前記頂部横断面(面像)同士の間の距離(間隔)を表している。
【0041】
そして図1において、本実施形態では、網点部41のうち、前記高精細な部分における突起体41aの頂部高さ(つまり凸版40の厚さ方向Tに沿う基底部43から突起体41aの頂部(頂面)までの高さ)Hが、ベタ部42の頂部高さ(厚さ方向Tに沿う基底部43からベタ部42の頂部(頂面)までの高さ)Hに比べて低くされ、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△h(ビローサーフェス)が、0.03mm以下(つまり0mm<△h≦0.03mm)とされている。
尚、前記「突起体41aの頂部高さH」とは、図3に示されるように、突起体41aの頂部における最頂点の高さを表している。
【0042】
また、特に図示していないが、網点部41のうち、前記高精細な部分以外の部分、つまり突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、前記差△hが0mmとされている。
尚、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hが0mmでなくてもよく、例えば、0mm<△h≦0.03mmであってもよい。ただし、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分の前記差△hが、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分の前記差△hに比べて小さくされていることが好ましい。
【0043】
また本実施形態では、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分(高精細な部分)と、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分(高精細な部分以外の部分)と、が含まれる網点部41について説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分のみによって網点部41が形成されていてもよい。
【0044】
また網点部41は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されて形成されている。
【0045】
また、非画像部分51には、画像部分50よりも高さが低い基底部43が形成されており、上述の網点部41とは異なりこの基底部43には、突起体41aは形成されていない。
【0046】
次に、このような構成とされた缶の印刷用凸版40を製造する方法について説明する。
本実施形態に係る缶の印刷用凸版40の製造方法では、レーザー彫刻機により、スリーブ印刷版30の版材32にレーザー彫刻を施して、画像部分50及び非画像部分51を有する凸版40を形成(刻設)する。
【0047】
そして、この凸版40の製造方法は、少なくとも画像部分50の網点部41をレーザーにより彫刻するレーザー彫刻工程を備えており、このレーザー彫刻工程では、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされる部分については、突起体41aの頂部高さHを、ベタ部42の頂部高さHに比べて低くし、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△hを、0.03mm以下とする。
【0048】
また、前記レーザー彫刻工程において、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分については、前記差△hを0mmとする。尚、上述したように、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分をレーザー彫刻する際には、前記差△hを、0mm<△h≦0.03mmの範囲としてもよい。
さらに、前記レーザー彫刻工程では、網点部41とともに(同一パスで)、又はこれとは異なるパスで、非画像部分51をレーザー彫刻する。
【0049】
また本実施形態の凸版40の製造方法では、レーザー彫刻工程において、画像部分50の網点部41、及び非画像部分51を、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻する。
【0050】
ここで、図2(b)は、レーザー彫刻機によるレーザー彫刻画像を示しており、図中に黒色で示された部位に対してレーザー光が照射され、彫刻が施される。このレーザー彫刻により、網点部41、非画像部分51及び細い線画部(線画の中でも細線及び細線による文字や記号等)が彫刻される。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る缶の印刷用凸版40及びその製造方法によれば、該凸版40におけるインキが付着する(インキが載せられる)画像部分50において、複数の突起体41aが配設された「網点部41」のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた高精細な画像パターンの部分(高精細な部分)では、突起体41aの頂部高さHが、ベタ部(広範囲にインキが付着されてベタ塗りに用いられる部分)や線画部(線画の中でも太線及び太線による文字や記号等)が配設された「ベタ部(網点部以外の部分)42」の頂部高さHに比べて低くされ、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△hが、0.03mm以下に設定されている。また、網点部41の前記高精細な部分では、網点濃度(網点面積率)が0%を超え15%以下(本実施形態では0.2〜15%)とされ、隣り合う突起体41a同士の画像間距離(網点画像間距離)が、0.3mm以下である。
このような本実施形態では、下記の効果を奏する。
【0052】
すなわち、網点部41のうち前記高精細な部分では、例えば本実施形態とは異なり突起体41aの頂部高さHをベタ部42の頂部高さHと同一に設定した場合に、ドットゲイン(点太り現象)が生じやすくなったり、網点部41の摩耗が早期に進行しやすくなったりして、印刷品位(精度)を確保できないおそれがある。
そこで本実施形態のように、網点部41のうち前記高精細な部分に対しては、突起体41aの頂部高さHをベタ部42の頂部高さHよりも低くすることで、ドットゲインや網点部41の摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
【0053】
その一方で、網点部41の前記高精細な部分における突起体41aの頂部高さHを単純にベタ部42の頂部高さHよりも低くすると、上述した目詰まり現象による印刷精度低下の問題が生じるおそれがある。
そこで本実施形態のように、網点部41のうち前記高精細な部分において、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△hを、0.03mm以下とすることで、網点部41の前記高精細な部分でもブランケット(インキ付着対象物)9に対する押圧力を確保しつつ、版面頂点(突起体41aの頂部)に乗ったインキを確実にブランケット9に転移させることができ、印刷精度が安定的にかつ高品位に維持されることになる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る缶の印刷用凸版40及びその製造方法によれば、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶20に印刷することができる。
尚、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分については、弱い印圧であってもブランケット9との接触面積を確保しやすく、目詰まり現象が生じにくいことから、前記差△hが0.03mmより大きくても構わない。ただし、印刷精度を安定して確保する観点からは、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmより大きい部分についても、前記差△hが0.03mm以下とされて、0mmにより近い値に設定されることが好ましい。
【0055】
また本実施形態では、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、前記差△h=0mmとしたので、下記の効果を奏する。
すなわち、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされる前記高精細な部分に比べて、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい前記高精細な部分以外の部分では、ドットゲインが生じることや、網点部41の摩耗が早期に進行する可能性は低くなる。
そこで上記構成のように、網点部41のうち突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、ブランケット9に対する接触面積及び押圧力を安定して確保し、かつインキを確実に転移させる目的で、突起体41aの頂部高さHをベタ部42の頂部高さHに合わせる(つまり△h=0mmに設定する)ことが好ましく、これにより、印刷精度を高品位にさらに安定して維持することができる。
【0056】
また本実施形態では、網点部41が、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されている。このように、画像部分50の網点部41をレーザー彫刻することで、画像パターンを所期の模様、図柄、文字、記号等に応じて細密に精度よく形成することができる。
【0057】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、前述の実施形態では、凸版40を備えた版材32が、スリーブ支持体31に一体に形成されていると説明したが、これに限定されるものではなく、版材32が、スリーブ支持体31に着脱可能に配設されていてもよい。つまり、スリーブ支持体31の外周面に、該スリーブ支持体31とは別体の版材32が装着(積層)されたスリーブ印刷版30であってもよい。
また、スリーブ支持体31及び版材32の材質や寸法、スリーブ支持体31に設けられる版材32の数や配置等は、前述の実施形態で説明したものに限定されない。
【0059】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及び尚書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0061】
[目詰まり現象確認試験]
本発明の構成による効果を試験により確認するため、凸版40として10cm×10cmのテストチャートを用意し、インキ供給量、版の押圧力、温度等の条件を一定(所定値)として、本発明の実施例と比較例とで、印刷結果の画像内に発生する目詰まりの数と程度を比較した。
【0062】
具体的に、本発明の実施例として、テストチャートに設けた網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数が80〜250LPIとされた部分(高精細な部分)では、突起体41aの頂部高さHをベタ部42の頂部高さHに比べて低くし、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△h(ビローサーフェス)を0.03mm以下とした。また、実施例のテストチャートの網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分(高精細な部分以外の部分)では、前記差△hを0mmとした。
一方、比較例のテストチャートでは、網点部41のうち前記高精細な部分について、前記差△hを0.03mmよりも大きくした。また、比較例のテストチャートでは、網点部41のうち前記高精細な部分以外の部分について、前記差△hを0mmに限らず種々に設定した。
【0063】
尚、網点部41の線数については、80〜250LPIの間で選択した所定値(80LPI、100LPI、133LPI、200LPI、250LPI)として各テストチャートを作製し、それぞれ実施例1〜5及び比較例1〜5とした。
また、ベタ部42の頂部高さH、すなわちベタ部42の頂面と基底部43の底面との厚さ方向Tに沿う距離(レリーフ深度)は、すべて0.5mmとした。
【0064】
試験の結果を表1及び表2に示す。尚、これら表1、表2に示される「網点面積」とは各突起体41aの頂部面積を表しており、「濃度」とは網点濃度(網点面積率)を表している。尚、実測の版面上の網点面積は、レーザー顕微鏡を用いて20個の網点の面積を測定し、算術平均を用いて求めた。また、ビローサーフェス△hが小さくなると、ドットゲインにより印刷後の網点が版面の網点(突起体41aの頂部面積)より大きくなることから、経験値により予めその値を踏まえて、印刷結果(印刷物)が目標とする網点濃度となるように、版面の網点を小さく彫刻した。
また目詰まりの評価については、下記の通りとした。
「◎」:目詰まりの発生が無かったもの。
「○」:10cm×10cmの範囲で連結する網点が3点以下(つまり連結数3点以下)の目詰まりが3箇所以下、かつ、連結数4点以上の目詰まりの発生が無いもの。
「△」:10cm×10cmの範囲で連結する網点が3点以下の目詰まりが5箇所以下、かつ、連結数4点以上5点以下の目詰まりが1箇所以下のもの。
「×」:10cm×10cmの範囲で連結する網点が3点以下の目詰まりが6箇所以上、又は、連結数4点以上の目詰まりが2箇所以上のもの。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[評価]
目詰まり現象確認試験の結果、本発明の実施例においては、網点部41の前記高精細な部分における目詰まりが「◎」又は「○」となり、目詰まり現象が効果的に抑制されることが確認された。また、網点部41の前記高精細な部分以外の部分については、目詰まりがすべて「◎」となり、目詰まり現象が格別顕著に抑制された。
一方、比較例においては、網点部41の前記高精細な部分における目詰まりがすべて「×」となっていた。また、網点部41の前記高精細な部分以外の部分については、目詰まりが「○」、「△」又は「×」となり、「◎」の評価は得られなかった。
【符号の説明】
【0068】
40 缶の印刷用凸版
41 網点部
41a 突起体
42 ベタ部(画像部分のうち網点部以外の部分)
50 画像部分
網点部の突起体の頂部高さ
ベタ部(網点部以外の部分)の頂部高さ
△h ベタ部の頂部高さと、網点部の突起体の頂部高さとの差
I インキ
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図2