【解決手段】枕10に設けられたセンサによって枕10の使用者(被験者)の生体情報が自動的に取得され、生体情報記録サーバ30に記録される。そのため、被験者が自ら測定器具を操作して生体情報を取得しなければならない従来の方法に比べて、被験者の負担を大幅に減らすことが可能となる。また、睡眠期間において被験者の生体情報が取得されることから、長時間に渡って連続的に生体情報を得ることが可能となり、短時間の断片的な生体情報に比べて、より正確に被験者の健康状態を把握することが可能となる。
前記センサ部は、前記枕の1箇所又は複数箇所に加わる前記使用者の頭部の圧力、前記枕の振動、前記枕の温度、前記使用者が発する音、前記使用者の血圧、及び、前記使用者の脳波の少なくとも1つを前記生体情報として取得する、
請求項1に記載の生体情報収集システム。
前記生体情報記録サーバは、記録した前記生体情報の開示を求める開示要求を受けた場合、当該開示要求元の認証処理を行い、当該認証処理において開示要求を許可すると判断したならば、前記生体情報を当該開示要求元へ送信する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生体情報収集システム。
使用者の生体情報を取得するセンサ部が内部若しくは外部に配置されており、当該センサ部において取得された前記生体情報を所定の生体情報記録サーバへ送信するように構成された枕。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイタルデータを一元的に収集する方法として、血圧計や体重計などの生体情報をモバイル端末に転送し、モバイル端末からネットワーク上(インターネット等)のサーバに送信して記録する方法が一般的に採用されている。しかしながら、この方法では、血圧計や体重計などの計測器具をわざわざ被験者が操作して生体情報を取得しなければならず、そのような操作を毎日行うことは被験者にとって大きな負担になるという問題がある。また、人間は一日のうちで必ず睡眠の時間を持っているが、被験者による計測器具の操作が必要な従来の方法では、睡眠時の貴重な生体情報を収集できないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者に負担をかけることなく生体情報を収集できる生体情報収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る生体情報収集システムは、枕の内部若しくは外部に配置され、前記枕の使用者の生体情報を取得するセンサ部と、前記センサ部から前記生体情報を収集して記録する生体情報記録サーバとを有する。
【0007】
好適に、前記センサ部は、前記枕の1箇所又は複数箇所に加わる前記使用者の頭部の圧力、前記枕の振動、前記枕の温度、前記使用者が発する音、前記使用者の血圧、及び、前記使用者の脳波の少なくとも1つを前記生体情報として取得する。
【0008】
好適に、前記センサ部は、前記取得した生体情報を無線信号として送信する無線通信部を含む。
【0009】
好適に、前記センサ部から無線信号として送信された前記生体情報を一時的に記録し、当該記録した生体情報を定期的に前記生体情報記録サーバへ転送する中継装置を有する。
【0010】
好適に、前記生体情報記録サーバは、記録した前記生体情報の開示を求める開示要求を受けた場合、当該開示要求元の認証処理を行い、当該認証処理において開示要求を許可すると判断したならば、前記生体情報を当該開示要求元へ送信する。
【0011】
本発明の第2の観点に係る枕は、使用者の生体情報を取得するセンサ部が内部若しくは外部に配置されており、当該センサ部において取得された前記生体情報を所定の生体情報記録サーバへ送信するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、枕に設けられたセンサによって生体情報が取得され、生体情報記録サーバに記録されるため、利用者に負担をかけることなく生体情報を収集できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る生体情報収集システムを説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る生体情報収集システムの一例を示す図である。
図1に示すシステムは、生体情報を取得するセンサを備えた枕10と、その枕10から生体情報を収集して記録する生体情報記録サーバ30を有する。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る枕10の一例を示す図であり、枕10の断面を表す。
図2(A)の例において示す枕10は、枕本体11と、その枕本体11の内部に配置されたセンサ部15を有する。センサ部15は、枕本体11に頭を置いた使用者の生体情報を取得する種々のセンサを備える。
【0016】
例えば、センサ部15は、枕10に加わる使用者の頭部の圧力を検出する圧力センサを備える。この圧力センサの情報により、枕10に使用者の頭部が置かれた時刻(就寝時刻)と、枕10から使用者の頭部が離れた時刻(起床時刻)が検出されるとともに、就寝期間の途中でトイレ等に行くために起き上がった時刻と回数が検出される。また、枕10の複数の位置に圧力センサを設けることにより、それらの圧力センサの情報から寝返りの時刻と回数が検出される。
【0017】
センサ部15は、枕10に生じる振動を検出する振動センサを備えてもよい。この振動センサの情報に基づいて、使用者の頭部が一定時間以上静止したか否かを判定することにより、寝付きの時刻が推定される。
【0018】
センサ部15は、枕10に置かれた使用者の頭部の温度を検出する温度センサを備えてもよい。温度センサが検出した頭部の温度に基づいて、使用者の体温が推定される。
【0019】
センサ部15、枕10の内部の湿度を検出する湿度センサを備えてもよい。湿度センサの検出結果に基づいて、睡眠期間における使用者の発汗の状態が推定される。
【0020】
センサ部15は、使用者が発する音を入力するマイクを備えてもよい。マイクが入力した音に基づいて、いびきの有無やその大きさ、長さ、いびきの性質などに関する情報が得られる。
【0021】
また、センサ部15は、使用者の血圧を検出する血圧計や、使用者の脳波を検出する脳波計を備えてもよい。これらの計測器は、例えば枕本体11の外側で使用者の腕や頭部に装着されており、信号ケーブルによってセンサ部15のメイン基板に接続される。
【0022】
センサ部15は、上述の各センサにおいて検出された生体情報を無線信号として送信する無線通信部を有する。この無線通信部は、例えば携帯電話機等の通信網に設けられた基地局5との間で無線通信を行い、インターネット等の通信ネットワーク9を介して生体情報記録サーバ30にアクセスする。
【0023】
なお、センサ部15は、
図2(B)において示すように、枕本体11の外側に取り付けられたカバー15に配置してもよい。これにより、枕本体11を簡単に交換できる。
また、センサ部15は、カバー15から取り外せるようにしてもよい。これにより、カバー15を他のもへ簡単に交換できる。
【0024】
生体情報記録サーバ30は、インターネット等の通信ネットワーク9を介して通信可能なコンピュータであり、枕10のセンサ部15から送られてきた生体情報の記録・管理を行う。また、生体情報記録サーバ30は、通信ネットワーク9に接続される他のコンピュータからの要求に応じて、生体情報を提供する処理も行う。
【0025】
図3は、生体情報記録サーバ30の構成の一例を示す図である。
図3に示す生体情報記録サーバ30は、処理部31と、通信部32と、記憶部34と、作業メモリ35と、操作部36と、ディスプレイ37とを有する。
【0026】
通信部32は、処理部31の制御に従って、センサ部15の無線通信部と通信を行い、センサ部15の各センサにおいて検出された生体情報を受信する。例えば通信部32は、通信ネットワーク9を介して所定の規格に適合した通信を行うための信号処理や制御、有線や無線で伝送される信号の変調・復調、データの符号化・復号化、パケットの処理、送受信のタイミング調整などを行う。
【0027】
操作部36は、ユーザの命令・指示を電気信号等に変換して処理部31に入力するためのユーザインターフェースであり、例えばキーボードやマウス、タッチパネルセンサ、キーバット、操作ボタンなどを含む。
【0028】
ディスプレイ37は、処理部31から入力される表示信号に応じた映像を表示する。例えばディスプレイ13は、液晶ディスプレイ、ELパネルディスプレイ、CRTなどの表示デバイスと、表示デバイスに供給する画像信号の処理を行うグラフィック・コントローラを含む。
【0029】
記憶部34は、処理部31において処理を実行させるためのプログラムやデータを記憶する装置であり、例えば電源がオフのときもデータを保持する不揮発性の記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリ、光磁気ディスク装置等)を含む。記憶部34は、例えばオペレーティングシステム,BIOS,アプリケーションプログラムなどを記憶する。
作業メモリ35は、処理部31において実行されるプログラムコードや、処理の過程で一時的に利用されるデータ等を記憶する装置であり、DRAMやSRAM等の比較的高速な記憶装置によって構成される。
【0030】
処理部31は、記憶部34に記憶されるプログラムに従って処理を実行する回路であり、生体情報記録サーバ30の全体的な動作を制御する。例えば、処理部21は、プログラムに基づいて処理を行うプロセッサ(CPU)、周辺ハードウェアとデータをやり取りするためのバス、バスを制御するバスブリッジ回路、キャッシュメモリなどを含んで構成される。処理部31は、作業メモリ35に処理対象および処理途中のデータを適宜記憶させながら、プログラムの命令を順次に実行する。
【0031】
処理部31は、枕10の無線通信部から送信された生体情報を受信すると、その生体情報を各使用者の識別情報(個人ID)に関連付けて記憶部34に記憶する。例えば、枕10のセンサ部15の記憶部には、枕10の個体毎の識別情報(枕ID)が登録されており、枕10から送信される生体情報には、この枕IDが添付される。処理部31は、枕10から生体情報と枕IDを受信すると、記憶部34に予め記憶される枕IDと個人IDとの対応付けテーブルを参照して、枕IDに対応する個人IDを取得し、この取得した個人IDと生体情報とを関連付けて記憶部34に記憶する。
【0032】
また、処理部31は、通信ネットワーク9を介して他のコンピュータから生体情報の開示の要求を受けた場合に、その要求に応じて生体情報を提供する処理を行う。例えば、処理部31は、Webサーバとしての機能を備えており、通信ネットワーク9を介して接続される他のコンピュータに対して、Webページの構成データ(HTMLデータ,画像データ等)を提供する処理を行う。
【0033】
処理部31は、Webページにアクセスするコンピュータから生体情報の開示を求める要求を受けた場合に、そのコンピュータの認証処理(例えばIDとパスワードの確認)を行う。処理部31は、この認証処理において開示要求を許可すると判断したならば、生体情報を表示させるWebページの構成データを生成し、要求元のコンピュータに提供する。これにより、枕10の使用者自身やその家族、医療関係者や介護者などが、個人の健康の状態を具体的かつ詳細に把握することができる。
【0034】
処理部31は、生体情報を開示するWebページにおいて、時系列の生体情報グラフ化して表示する。例えば、処理部31は、グラフの形態や表示内容(生体情報の種類)、表示期間の幅、時間スパンなどを、利用者の設定に応じて任意に変更する。
【0035】
上述した生体情報収集システムの動作について説明する。
【0036】
枕10のセンサ部15は、例えば枕10に加えられた圧力や振動などの情報に基づいて、枕10が使用中か否かを監視する。枕10の使用が開始されたと判定すると、センサ部15は、各センサによって検出された生体情報を生体情報記録サーバ30へ随時送信する。
【0037】
生体情報記録サーバ30は、枕10のセンサ部15から生体情報を受信すると、この生体情報を使用者の個人IDに関連付けて時刻情報とともに記録する。生体情報記録サーバ30は、枕10のセンサ部15から受信した一連の生体情報とその記録時刻に基づいて、1回の睡眠の期間(就寝時刻と起床時刻)を特定し、その就寝期間中の起床回数や寝返り回数などを算出する。
【0038】
生体情報記録サーバ30は、通信ネットワーク9を介してアクセスする他のコンピュータから生体情報の開示要求を受けると、そのコンピュータの認証処理(IDとパスワードの確認など)を行う。認証処理において開示要求を許可すると判断した場合、生体情報記録サーバ30は、そのコンピュータに対して生体情報を例えばWebコンテンツとして提供する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、枕10に設けられたセンサによって枕10の使用者(被験者)の生体情報が自動的に取得され、生体情報記録サーバ30に記録される。そのため、被験者が自ら測定器具を操作して生体情報を取得しなければならない従来の方法に比べて、被験者の負担を大幅に減らすことが可能となる。また、睡眠期間中に生体情報が収集されることから、生体情報の収集のために時間を割く必要がなくなり、被験者の負担を軽減できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、睡眠期間において被験者の生体情報が取得されることから、長時間に渡って連続的に生体情報を得ることが可能となり、短時間の断片的な生体情報に比べて、より正確に被験者の健康状態を把握することが可能となる。
【0041】
枕は人間が毎日必ず使う必要不可欠なものであり、しかも人間にとって最も重要な頭部や顔の近くにあるという性質がある。また、枕は、1日の約3分の1という非常に長い時間、頭に触れ続けている。従って、人体に関する情報を取得する場所として、枕は極めて適していると言える。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0043】
図1に示す生体情報収集システムでは、枕10のセンサ部15から生体情報記録サーバ30へ生体情報が随時送信される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば
図4において示すように、枕10のセンサ部15において取得された生体情報を中継装置20に一旦記録し、中継装置20から通信ネットワーク9を介して生体情報記録サーバ30に生体情報を送信するようにしてもよい。
【0044】
図5は、中継装置20の構成の一例を示す図である。中継装置20は、
図3に示す生体情報記録サーバ30における処理部31,通信部32,記憶部34,作業メモリ35,操作部36,ディスプレイ37と同様な構成要素として、処理部21,通信部22,記憶部24,作業メモリ25,操作部26,ディスプレイ27を有する。また、中継装置20は、枕10のセンサ部15と一般的な無線LANなどの通信方式を用いて無線通信を行う通信部32を有する。
【0045】
中継装置20の処理部31は、例えば、枕10のセンサ部15から受信した一連の生体情報とその記録時刻に基づいて、1回の睡眠の期間(就寝時刻と起床時刻)を特定し、特定した一睡眠期間の生体情報をまとめて生体情報記録サーバ30に送信する。また、処理部31は、特定した一睡眠期間における生体情報(圧力センサの情報等)に基づいて、その就寝期間中の起床回数や寝返り回数などを算出し、その結果を生体情報記録サーバ30に送信してもよい。
このように、生体情報を一時的に蓄積する中継装置20を設けることによって、通信ネットワーク9に通信障害が起きた場合に生体情報が欠落してしまうことを効果的に防止できる。
【0046】
上述した実施形態では、生体情報記録サーバ30に記録された生体情報を取得するために認証処理を行う例を挙げているが、本発明はこの例に限定されない。例えば、被験者(枕10の使用者)の事前の許可がある場合には、個人が特定されないように処理された生体情報を一般向けに公開してもよい。
【0047】
また、生体情報記録サーバ30は、膨大な数の被験者から収集された生体情報(バイタルデータ)を所謂ビッグデータとして解析し、そのビッグデータの解析によって得られた各種の病気の生体情報に関連する特徴や傾向を参照することにより、各被験者の体調変化や病気の兆候を生体情報に基づいて判定してもよい。例えば、生体情報記録サーバ30は、各被験者の体調変化や病気の兆候を生体情報に基づいて判定し、その判定結果に基づく助言のレポートを自動的に生成してもよい。あるいは、生体情報記録サーバ30は、このような判定を団体や地域単位で行い、その判定結果に基づく助言や統計的傾向のレポートを自動的に生成してもよい。
また、生体情報記録サーバ30は、生体情報に基づいて所定の異常が出ていることを判定した場合に、被験者の家族や病院等の機関へ自動的に警告メッセージを通知したり、被験者自身にその異常の内容を通知するようにしてもよい。
【0048】
生体情報記録サーバ30は、上記のような健康状態の判定だけでなく、枕の形状やサイズ等が使用者に合っているか否かを生体情報の特徴・傾向に基づいて判定してもよい。
【0049】
更に、生体情報記録サーバ30は、生体情報の閲覧可能範囲(本人のみ、本人と家族、本人と家族と医療関係者等)を利用者毎に設定できるようにしてもよいし、生体情報の保存期間の制限や拡張を利用者毎に設定できるようにしてもよい。この場合、例えば、生体情報記録サーバ30は、利用者が加入するプラン(有料)に応じて、上記のような利用者毎の設定に制限を設けてもよい。
【0050】
このような生体情報記録サーバ30は、例えばクラウドコンピューティングによって実現させることが可能である。生体情報記録サーバ30は、その機能の一部若しくは全部を1台のコンピュータによって実現させてもよいし、複数台のコンピュータを協同させることによって実現させてもよい。
【0051】
また、本発明に係る枕には、上述の実施形態において挙げたセンサ以外にも、被験者の体の状態を調べる種々のセンサを組み込むことが可能である。例えば、本発明に係る枕は、その表面上にセンサを組み込むことにより、頭部や肌の状態、頭皮の状態、育毛の状態などを検出し、その検出結果を生体情報記録サーバへ送信するようにしてもよい。
また、枕のセンサ部分をマットレスや布団にまで拡張することにより、枕でのバイタルデータの検出に加えて、体重や体脂肪などの体全体に関わる計測も行うことが可能である。